ヤラスのこと
ユッシ・ヤラスは1908年6月23日、フィンランド・ユアスキュラ(Jyuaskyula)に生まれた。オーストリア、フランス、ドイツ、イタリアに遊学し、指揮はパリでピエール・モントゥーに学んだ。
1944〜51年にシベリウス・アカデミーで指揮を教え、1945年からフィンランド国立歌劇場の指揮者として活躍し、1958〜73年には首席指揮者を務めた。フィンランドの作曲家による歌劇多数を上演したという。また、1966年、来日して日本フィルを指揮したとのことである。
彼自身が作曲家であり、またピアニストとしても活動した。
こうした履歴以上に、彼はシベリウスの娘婿として知られている。作曲家の四女・マルガレータと結婚したのは1929年、二人は同年生れだから、新郎新婦21歳のことであろうか。 シベリウスの葬儀(1957年)では、彼がピアノで「テンペスト」を演奏し、翌年には「クッレルヴォ」の蘇演を行った。
従って、彼が遺した録音には、シベリウスの作品が多くを占める。
1950年代、米REMINGTONレーベルにベルリン放送響を指揮した交響曲第1・5番を、1970年代前半にDECCAにハンガリー国立響を指揮した管弦楽曲集を録音している。
岳父の作品以外では、マデトヤ;歌劇「ユハ」がフィンランドOndineレーベルからCDでリリースされている。また、ピアニストとしては1963年、チェリストペンティ・ラウタヴァーラとベートーヴェン;Vcソナタ全曲をフィンランド放送に録音し、うち2曲がFINLANDIAレーベルからLPでリリースされた。
彼について、斉諧生は現時点でこれ以上のことは把握していない。
とにかく情報のない人で、彼の記事を掲載している音楽辞典や指揮者の紹介書は皆無ではないか。
没年についても、『フィンランドの音楽』(オタヴァ)には1987年とされており、『北欧音楽入門』(音楽之友社)もそれに従っているが、Webを検索してみると1985年とする資料が多い。ここでは後者に従っている。
斉諧生がヤラスの音楽に接したのは、今から10年ほど前、東京で音盤屋廻りをしているときのことだった。知らない指揮者のシベリウス;交響曲第1番のLPを見つけ、レジに坐っていた店主とおぼしい人に、「ちょっと聴かせてもらえますか」と頼んだら、「聴いて解りますか」と嫌味を言われた。
めげずに第1楽章からかけてもらったところ、冒頭のクラリネット独奏の見事な表情、店内の空気が一変した。嫌味な店主も沈黙。
勘定を済ませながら、斉諧生が内心快哉を叫んだこと、言うまでもない。(笑)
なお、念のため注記しておくが、この店はその後閉店して今はない。
ディスコグラフィ (シベリウス編)
(1) シベリウス;交響曲第1番 |
(米VARESE SARABANDE、
VC81043、LP) |
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- a 交響曲第1番
- b Vnのための5つのユモレスク
- op.87-1・2、op.89-2・3・4
- アニヤ・イグナチウス(Vn)
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- ベルリン放送響
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- 録音;1954年1月、ベルリン
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1970年代末の再発盤。原盤は米REMINGTON。 |
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(2) シベリウス;交響曲第5番 |
(米REMINGTON、
R-199-201、LP) |
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- a 交響曲第5番
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- ベルリン放送響
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- 録音;1953年頃、ベルリン
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(3) シベリウス;組曲「ペレアスとメリザンド」 |
(米URANIA、
URLP 7038、LP) |
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- a 組曲「ペレアスとメリザンド」
- (全7曲)
- b 組曲「カレリア」
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- ベルリン放送響
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- 録音;1952年頃、ベルリン
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「ユッシ・ブルムステット」と表記されているが、旧姓らしい。 |
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(4) シベリウス;管弦楽曲集 Vol.1 |
(米LONDON、
CS 6824、LP) |
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- a 組曲「テンペスト」第1番
- 全9曲(前奏曲を含まない)
- b 組曲「テンペスト」第2番
- 全10曲
- c 劇音楽「スカラムーシュ」
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- ハンガリー国立響
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- 録音;1972年、ブダペシュト
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(5) シベリウス;管弦楽曲集 Vol.2 |
(米LONDON、
CS 6955、LP) |
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- a 4つの伝説曲
- b 「イン・メモリアム」
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- ハンガリー国立響
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- 録音;1974年頃、ブダペシュト
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(6) シベリウス;管弦楽曲集 Vol.3 |
(米LONDON、
CS 6956、LP) |
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- a 交響詩「フィンランディア」
- b 組曲「クオレマ」
- 「ロマンティックなワルツ」
- 「カンツォネッタ」
- 「鶴のいる情景」
- 「悲しきワルツ」
- c 組曲「歴史的情景」第1番
- d 組曲「歴史的情景」第2番
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- ハンガリー国立響
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- 録音;1974年6月
- ブダペシュト、トゥロコ教会
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(7) シベリウス;管弦楽曲集 Vol.4 |
(米LONDON、
CS 7005、LP) |
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- a 組曲「クリスチャン2世」
- 全6曲(「道化の歌」を含む。)
- b 組曲「白鳥姫」
- 全7曲
- c 「アンダンテ・フェスティーヴォ」
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- ハンガリー国立響
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- 録音;1975年6月、ブダペシュト
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(8) シベリウス;管弦楽曲集 |
(英DECCA、
448 267-2、CD) |
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- a 組曲「テンペスト」第1・2番
- b 組曲「クオレマ」
- c 組曲「クリスチャン2世」
- d 組曲「歴史的情景」第1・2番
- e 劇音楽「スカラムーシュ」
- f 組曲「白鳥姫」
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- ハンガリー国立響
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- 録音;1972〜75年、ブダペシュト
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上記LPからの集成 |
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(9) シベリウス;歌曲集 |
(芬FINLANDIA、
FACD 807、CD) |
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- a 「黒い薔薇」op.36-1
- b 「おののく胸から」op.50-4
- c 「3月の雪の上のダイヤモンド」op.36-6
- d 「ユダヤの娘の歌」op.51(2b)
- e 「泳げ、泳げ、青い鴨」
- f 「川面の木屑」op.17-7
- g 「タイスへの讃歌」
- h 「海辺のバルコニー」op.38-2
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- アウリッキ・ラウタヴァーラ(Sop)
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- 録音;1949年(a、b)、
- 1952年(c〜h)、ヘルシンキ
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a、bはピアノ伴奏、オーケストラ名は不詳。 |
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(10) シベリウス;「クッレルヴォ」より |
(芬ONDINE、
ODE 945-2、CD) |
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- a 「クッレルヴォの嘆き」
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- マルッティ・タルヴェラ(Bs)
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- フィンランド放送響
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- 録音;1964年
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(11) シベリウス;歌劇「塔の乙女」 |
(A.N.N.A.、
Private Record、LP) |
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- マリアンネ・ヘッガンデル(Sop)
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- フィンランド放送響
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- 録音;1981年
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関連リンク集
- シベリウス・データベース
- このページに掲げた肖像写真は、ここから拝借している。フィンランド語のみ。
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- マルガレータ・ヤラス
- 上記シベリウス・データベースの記事。ユッシとの結婚のいきさつが書いてあるようだが、フィンランド語ゆえ判読不能。2003年末と言われる英語版の公開を待ちたい。
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- フィンランド国立歌劇場
- 長く首席指揮者を務めた。
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