作曲者 曲名 推薦盤 簡単なコメント
バッハ ヴァイオリン・ソナタ第5番 寺神戸亮 & シーベ・ヘンストラ
(DENON)
第3楽章ではヴァイオリンが重音を延々と引き続け、チェンバロがさざ波のような細かい音型で彩る。このヴァイオリンの和音の美しいこと! 多くのヴァイオリニストが早めのテンポで切り抜けるが、寺神戸は、一つ一つの和音を慈しみながら、情感豊かに歌う。
ドヴォルザーク ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ ヴァッサ・プシホダ & オットー・グラーフ
(Podium)
ドヴォルザーク特有の親しみやすい旋律が次から次へとあらわれる楽しい曲。中には東北民謡のようなメロディも登場。この曲を弾きこんだプシホダの、確信に満ちた節回しと切れのいいボウイングが魅了する。
フランク ピアノ五重奏曲 スヴィヤトスラフ・リヒテル & ボロディンQ
(Philips)
フランクは交響曲とヴァイオリン・ソナタが代表作とされているが、彼の最も深いものは、この曲の第2楽章(レント)にあると思う。
ヘンデル ヴァイオリン・ソナタ第4番
ジョルジュ・エネスコ & サンフォード・シュリュッセル
(オーパス蔵)
大らかで高貴な、それでいて親しみやすいヘンデルの名作。古今の名ヴァイオリニストが競って録音しており、近年は古楽器派の録音も盛んだが、あえてエネスコのSP復刻を掲げる。その世界の大きく深いこと!
コダーイ チェロ・ソナタ op.4
ミクローシュ・ペレーニ & デネシュ・ヴァーリョン
(Hungaroton)
無伴奏チェロ・ソナタの陰に隠れて目立たない佳曲。ペレーニの演奏で聴くと、冒頭の自在なモノローグからは「望郷」という想念が胸をかすめ、第一楽章「幻想曲」の自在な節回し、また第二楽章の切れ味鮮やかな民族舞曲を満喫できる。
ルクー ピアノ四重奏曲(未完) DOMUS
(RICERCAR)
24歳で病死した作曲者が「僕は自分の魂のすべてを音楽に注ぎ入れよう」と書き送った、文字どおり彫心鏤骨の遺作。左記盤では、第1楽章の熱に浮いた感じなど、雰囲気が良く出ている。
ルクー ヴァイオリン・ソナタ アルテュール・グリュミオー
(Philips)
この夭折の天才の代表作には、熱烈な愛好家が多い。グリュミオーにモノラル(カスタニョーネ)とステレオ(ヴァルシ)の2種の録音があり、どちらが優れているかは、永遠の論争となっている。
マルタン オーボエ・ダモーレとオルガンのためのソナタ・ディ・キエザ ハンスイェルク・シェレンベルガー & ヘドヴィヒ・ビルグラム
(DENON)
1938年の作曲、十二音技法を取り入れているが、1930年代の作品に特徴的な、不安と緊張感を基調にした真実味のある美しい音楽である。
モーツァルト ヴァイオリン・ソナタ K.526 シモン・ゴールトベルク & ラドゥ・ルプー
(DECCA)
「ドン・ジョヴァンニ」と並行して書かれた曲。ヴァイオリン・ソナタでも初期のものと違って、両方の楽器ともが充実した書法になっている。もっと有名になってもいい名曲なのに。ニックネームがないとだめなのかな(「スプリング」みたいに)。
プーランク フルート・ソナタ ジャン・ピエール・ランパル & フランシス・プーランク
(Ades)
ランパルの音の素晴らしいこと! 黄金の粒々がまぶされているような感じ。吹奏はいたって無造作に聴こえるのだが、そのままセンス抜群の音楽になっている。まさしく天衣無縫、天才の業と言わざるべからず。
ラヴェル ヴァイオリン・ソナタ ジャン・ジャック・カントロフ & ジャック・ルヴィエ
(DENON)
第2楽章がジャズを採り入れたブルースになっていることで有名。第1楽章の抒情美、第3楽章の運動性も楽しい。
シューベルト 弦楽五重奏曲 ウィーン・フィルハーモニーQ & リヒャルト・ハラント
(DECCA)
交響曲第9番よりも天国的なハ長調。ボスコフスキーがリードするこの盤が、硬すぎず緩すぎない、一番の演奏。
シューベルト ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 リカルド・オドノポソフ & エドゥアルド・ムラチェク
(Berlin Classics)
ヴァイオリンが、それはもう嫋々とシューベルトのメロディを歌い抜く(テンポの速い部分もあるけれど)。満足できる演奏に巡り合えていないが、とりあえず往年のウィーンの名手の演奏で。
シューベルト アルペジオーネ・ソナタ ミクローシュ・ペレーニ & アンドラーシュ・シフ
(TELDEC)
上の2曲と同じく、シューベルトのメロディに満ちあふれた曲。ペレーニは独特の塩辛い中低音と音程のいい高音が魅力的。シフのピアノも良い。ヴィオラのバシュメト盤も推薦。
ショスタコーヴィッチ ヴィオラ・ソナタ ユーリ・バシュメト & スヴィヤトスラフ・リヒテル
(VICTOR)
ショスタコーヴィッチ最期の作品。全体に沈痛な雰囲気が漂う。
ショスタコーヴィッチ チェロ・ソナタ アルト・ノラス & タパニ・ヴァルスタ
(FINLANDIA)
嵐が吹きすさぶような第2楽章と、深くて暗い第3楽章。この録音は作曲者も生前愛聴したそうだ。