作曲者 曲名 推薦盤 簡単なコメント
アウリン 4つの水彩画 セミー・スタールハンメル
(nosag)
牧歌・ユモレスク・子守歌・ポルスカの4曲、次から次へと美しく愉しい旋律が紡ぎ出される。中でも子守歌の懐かしさには、思わずCDに合わせて口ずさまずにはいられないだろう。そしてスタールハンメルの綺麗な音! ぜひぜひ生で聴きたい人だ。
ナディア・ブーランジェ チェロとピアノのための3つの小品
トリオ・アペルト
(Talent)
作曲者はリリー・ブーランジェの姉で、教育者として著名な人。変ホ短調の第1曲では、目に涙をいっぱいに溜めたような、愁いを帯びたメロディが実に美しい。どこか寂しげな人形の踊りを思わせるカノン風の第2曲(イ短調)を挟み、第3曲ではリズミックな主題が高揚する(嬰ハ短調)。
デュセック ハープ・ソナタ ハ短調
ニカノール・サバレタ
(DGG)
疾走するロンドが突然短調に転じ、哀感胸をうつ。もし、モーツァルトがハープ・ソナタを書いていたら、こんな曲だったかもしれない。
フランク 前奏曲、フーガと変奏 アナトリー・ヴェデルニコフ
(DENON)
ピアノ版ながら曲のイメージを完全に塗り替える超名演。前奏曲のゆっくりした美しいカンタービレから立ち上る、深い深い情感。どうしようもない寂寥と、希望への信頼と…。フーガの巨大な歩みと、最後の和音の中から変奏曲の最初の音型が響いてくる見事さ! 前奏曲が弱音で再現する儚い美しさ、それに絡む対位旋律のバランスと味わいの絶妙!
「前奏曲」部分のMIDIファイルです。とてもヴェデルニコフの世界を伝えるものではありませんが…。(約3分30秒)→
ヒナステラ パンペアーナ第2番
長谷川陽子
(VICTOR)
曲名は「パンパ(アルゼンチンの草原地帯)の歌」の意。牧童が長嘯する民謡を思わせる序奏、モダンなリズムの上を勇壮な歌が疾走する主部、ピアノの神秘的な響きに宇宙の無限を思わせるチェロの調べが絡む中間部、いずれもヨーロッパの音楽からは聴けないユニークな独創が刻印されている。
クライスラー レシタティーヴォとスケルツォ ヘンリク・シェリング
(Mercury)
クライスラーには珍しく無伴奏ヴァイオリンによるシリアスなムードの曲。さすがにシェリングが上手い。
モンポウ 「歌と踊り」第6番
アリシア・デ・ラローチャ
(BMG)
この曲は、前半「歌」の部分が管弦楽編曲されてテレビの旅行番組のタイトル音楽に使われたことから聴き覚えた。カタロニア民謡等を素材とし、翳りの濃い哀感が胸に迫る「歌」と、スペインの風土を感じさせる特徴的なリズムを持つ「踊り」からなる。楽譜をかなり自由に扱った作曲者自演盤(ensayo)も面白いが、普通の意味で巧いのは標記スペインの名手によるもの。
モーツァルト ロンド K.511 ヴィルヘルム・バックハウス
(DECCA)
玲瓏玉のような美しさと哀しさと高貴さと… この曲を言葉で説明するのは諦めます。
ピアソラ タンゴの歴史 スアレス・パス & オダイール・アサド
(GHA)
本来はフルートのための曲でタンゲディア・デュオ盤(RIVOALTO)に不足はないが、ピアソラと共演を重ねたスアレス・パスのヴァイオリンが心をかきむしる、熱いタンゴ空間から抜け出すことは難しい。
シベリウス マリンコニア
エルッキ・ラウティオ
(Canyon)
曲名は「メランコリー」の意、三女を病に失った深い悲しみの中で書かれたという。慟哭を音化したようなチェロのモノローグに始まり、ピアノ・ソロでは嵐が吹き荒れる。旋律美と悲劇性を兼ね備えたメロディが高揚するのは、はたして心の深淵の葛藤であろうか、それとも運命との闘争であろうか? やがてそれはピアノが弔鐘を打つ中に息絶えていく…。
シンディング 組曲 op.10 ヘニング・クラゲルード
(NAXOS)
独奏ヴァイオリンが無窮動風に動く中から管弦楽が北欧の風土感を浮かび上がらせる第1曲、優しい詩をヴァイオリンが歌いぬく第2曲、力強く舞曲を奏でる第3曲。ハイフェッツやパールマンの録音もあるが、北欧の若手による清潔な歌を採る。
ヴィターリ シャコンヌ アルテュール・グリュミオー
(Philips)
竹宮恵子の問題作『変奏曲』で、主人公エドゥアルド・ソルティ(ゲオルグと違って凄い美少年の天才ヴァイオリニスト)が、この曲を倍ぐらいのテンポで弾ききって登場する。グリュミオーの美音!