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2004年09月01日

金子鈴太郎・チェロリサイタル

金子鈴太郎(Vc) 本田真奈(P)
ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ
バッハ;無伴奏Vc組曲第1番(予告されていた第5番から変更)
ドビュッシー;Vcソナタ
ブラームス;Vcソナタ第1番
もう何年も前になるが公式Webpageを拝読し始めた頃は、ハンガリーに留学中だった金子氏が、昨年秋から大阪シンフォニカーの首席Vc奏者に就任された。
まだオーケストラでの演奏に接したことはなく、今年2月の無伴奏リサイタルは本業の都合で逃してしまったのだが、ようやく実演を聴きに伺うことができた。
 
標記のように、かなり重量級のプログラム。
バッハが第1番に変更になってホッとした(笑)。
リスト音楽院でツァバ・オンツァイ教授に師事し、ミクローシュ・ペレーニマリオ・ブルネロジャン・ギアン・ケラスらのレッスンを受けてきた俊英の演奏が楽しみである。
 
会場は京都市・桂のバロック・ザール。座席数200の小さな、しかし美しいホールである。
入りは6~7割といったところか。音楽学生ないし若手演奏家風の人が多かった。
 
ショスタコーヴィッチは、手堅いけれども少しスケールが小さくはないか…という感想。
「ここはもう少し音を張ってほしい」とか「ここはもう少し激しくアタックしてほしい」といったフラストレーションを覚える箇所が多かった。
奏者が「感じている」ことはよくわかったので、趣味の問題かもしれないが、この曲に関しては更に突き抜けた表現、ツボを押さえてメリハリを付けた演奏を求めたい。
 
金子氏は、先月、第八回松方ホール音楽賞を受賞されたばかりだが、その本選でバッハ;無伴奏Vc組曲第1番を演奏されたとのこと。
自撰のプログラム解説に、
本日のバッハは皆様に何かを語りかけたいと思います。
と書かれていたとおり、音楽を完全に手の内に収めた自在なダイナミクスやフレージングで、まさに語りかけるようなバッハ。
ときに聴き慣れない装飾音の処理等がみられたが、あるいは演奏者独自の工夫であろうか。
ただ、ちょっと音楽が内向きに過ぎるような印象を受けた。
速めのテンポや軽めの音作りだからといって直ちに否定するつもりはないが、バッハの音楽が持つ、いきいきとした生命感や、聴いていて胸の内に歓びが湧き上がってくるような心地を感得するには至らなかった。こちらの鈍感さのゆえかもしれないが…。
 
休憩後のドビュッシーでは前半の印象を払拭、多彩で大胆な表情を楽しめた。
またブラームスも、こみ上げる熱い思いがじわじわと伝わってくるような音楽、底光りのするロマンティシズムが、しっかり表現されていたと思う。
 
技術的には申し分なく、例えばショスタコーヴィッチ第2楽章など、鮮やかに弾きこなされ、間然とするところのない出来だった。
表現をスケールアップさせることや、音色を一層洗練させることなど、更に精進を求めたい部分は残っているが、将来の大成が期待できる若い奏者に出会えたことを素直に喜べる演奏会であった。
 
アンコールはガーシュウィン;3つの前奏曲より第1曲
ハイフェッツによるVn用編曲をもとに演奏されたとのこと。

投稿者 seikaisei : 2004年09月01日 19:28

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