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2005年02月19日

ステーンハンマル友の会のコンサート

久々に東京へ出かけ、コンサートを聴く。
目的は、トップページにリンク・バナーを掲げているステーンハンマル友の会によるサロン・コンサート。
昨年10月から始まっているが、シリーズ5回目にしてようやく参じることに。
それというのも今日の曲目は
モーツァルト;Vnソナタ第28番 ホ短調 K.304
ステーンハンマル;Vnソナタ イ短調 op.19
プロコフィエフ;Vnソナタ第2番 ニ長調 op.94bis
ラヴェル;ツィガーヌ
ステーンハンマルのVnソナタが聴ける! これを逃さずにおられようか!!
60人ほどが座れる会場はほぼ満席、北欧音楽MLのメンバーの顔もちらほら見える。
 
演奏は青木 調(Vn)、和田記代(P)のお二人。
青木さんは前にここで2つのセンチメンタル・ロマンスほかを聴いた。…と思って調べたら、平成12(2000)年12月だから、もう4年以上前のこと。
出演者紹介に掲載されているとおり、昨年10月からはNHK響の契約団員として活躍しておられる。
 
和田さんはもちろんステーンハンマル友の会の中心人物。
ちょうど昨年2月にP協第2番の2台ピアノ版を聴かせていただいて以来になる。
 
それぞれ演奏の前に曲の簡単な紹介があり、ステーンハンマルについては
作曲家はピアニストだったが、ピアノが入った室内楽曲は意外に少なく、完成された作品としては、このVnソナタのみ。
息の長いフレーズと和声の移ろいが特長。
演奏者としては、Vnのフレーズが長く不定形な点(4小節、8小節といった規則的な把握ができない)、Pパートが技術的に大変(大きな手が前提になっていると思われる)、といったあたりが難しい。
というコメントがあった。
 
ステーンハンマルとしては初期の作品(1900年完成)で、当時よく共演したVn奏者・作曲家トゥール・アウリンに献呈され、彼ら2人が初演した。
非常に古典的な作風で、ピツィカートは一音もなく、重音奏法も控えめにしか用いられない。
聴いた感じだけでいうと、淡彩のブラームスというか、ハンブルクの巨匠がシューベルトの作風をなぞったような雰囲気がある。
この日は次にプロコフィエフが演奏されたこともあって、特にその印象を強くした。
ただし、上記の演奏者のコメントにあるように、一筋縄ではいかない面もあるようだ。
 
全曲で約20分程度、第1楽章 Allegro con anima は、気持ちのこもった(しかし控えめな)嘆きの歌、 "con intimissimo sentimento" (極めて内面的な感情をもって)と指定された第2楽章 Andantino での心の慰めは、この曲の核心。
非常に歌謡的な楽章で、ちょっとシューベルト幻想曲あたりを思わせる。
心の襞を優しく心地よく掻いてくれるような、いつまでも身も心もゆだねて揺られていたい音楽、とでも言えようか。
第3楽章 Allegro は、かすかに民族調を帯びた愛らしい主題による、弾むような音楽となり、喜ばしげに曲を閉じる。
 
青木さんのヴァイオリンは、前回もそうだったが、端整で美しい音程と音色清潔かつ誠実な音楽が持ち味。
この曲でも、ステーンハンマルの良さをきちんと引き出しておられ、特に第3楽章が立派な出来だった。
欲を言えば、2楽章はもう少し纏綿とした歌が好み。
プロコフィエフの緩徐楽章でも同じ印象を受けたので、それは彼女の行き方ではないのだろう。
 
和田さんのピアノは、雄弁ながら出過ぎない表情が、音楽を立体的にしている。弱音の柔らかく美しい音色も素晴らしい。
独奏では時に感興を抑えきれない情熱のほとばしりに、聴いている側は多少ハラハラすることもあるピアニストだが(失礼お許しを<(_ _)>)、今日のような室内楽ではよくコントロールされている。
上記のコメントどおり、見ているとけっこう忙しそう。聴こえてくる音楽の優しさとは裏腹に、ずいぶん手のこんだ書法になっているようだ。
 
ともかくこれだけの高い水準でステーンハンマルを聴けたのには満足を通り越して歓喜々々。
来る7月3日(日)には、東京オペラシティ・リサイタルホールで、このVnソナタを含む、オール・ステーンハンマル・プログラムの「スウェーデン音楽の調べ Vol.2」が予定されている。
ぜひぜひ一人でも多くの方に足をお運びいただき、実際に彼の音楽を聴いていただきたいと念願する。
他の曲については簡単に…。
モーツァルトでは青木さんの美質が前面に出て、木質感のある美しい中低音に聴き惚れつつ、古典の格調の中に込められた嘆きに心を打たれた。
 
プロコフィエフは当日の白眉。
音楽の振幅の大きさ、多彩な表情(ヴァイオリンもピアノも)。
これと並べると、ちょっとステーンハンマルも旗色は悪いかもしれない…(苦笑)。
ただし、これはもう少し大きな会場で聴きたかったという気もする。
 
ラヴェルも格調高い再現。
曲が曲だけに多少の崩しというか媚態があってもと思うが、それは斉諧生の好みにすぎないだろう。
 
アンコールはドビュッシー;亜麻色の髪の乙女
 

投稿者 seikaisei : 2005年02月19日 22:52

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