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2005年03月21日

名曲名演名録音:今井信子のテレマン

今井信子(Va)
テレマン;12の幻想曲(EPSON)
↓に書いたように、試聴した瞬間に心打たれた演奏だが、全曲を聴き通して感嘆三嘆した次第。
金管楽器のように輝かしい高音から木質感の強い低音まで多彩な音色が実によく伸びて、音程も心地よく、音を聴くだけでも堪能させられる。
過去数多の名盤を生んだスイスのホールでの優秀録音も与って功多し。
テレマンというと「ハンブルクの潮の満ち干」だとか「食卓の音楽」とか、とかく描写音楽、娯楽音楽と軽く見られがちなのだが、ヴィオラの渋い音色が音楽に重みを与えて、あたかもバッハやヘンデルの未知の曲集を聴く思いがする。
例えばCDでは2曲目に入っている第8番冒頭の、王者の風格のある優雅で美しい旋律はヘンデルに肩を並べよう。
あるいは3曲目の第2番、重音の響きが美しいアンダンテは、バッハの「G線上のアリア」の塁を摩するものだ。
ゆっくりしたテンポの陰翳深い音楽や舞曲のリズムは、バッハの両無伴奏曲集を髣髴とさせる。
全12曲、いずれも傑作と呼びたくなるが、とりわけ第7番(CD5曲目)は聴きごたえがあった。
慰藉のラルゴ、上機嫌なヴィヴァーチェ、孤絶の足取りのサラバンド、そして短いが気の利いたプレスト。
今井さんの演奏も、切れの良いリズム、エッジの利いたフレージング、ヴィオラという楽器の発音の重さを微塵も感じさせないスピード感溢れる弓捌き。
弦楽を愛する人には残らず耳にしていただきたい、名曲名演名録音といえよう。

投稿者 seikaisei : 2005年03月21日 21:36

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