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2005年10月08日

リリー・ブーランジェの歌曲を聴く

京都フランス歌曲協会によるレクチャー・コンサートを聴きに行く。
会場は関西日仏学館内の稲畑ホールという、100人程度収容の小ホール。
「稲畑」とは、この会館の建設に尽力した稲畑勝太郎氏の名を採ったもの。
余談だが、稲畑勝太郎は京都市出身、染色の研究のためフランスに派遣され、帰国して染料や染色機械の輸入販売を行う稲畑染料店(現稲畑産業)を創業した。
氏は大阪商工会議所の会頭を務めるなど実業界で活躍したが、フランスとの文化交流にも熱心に取り組んだのである。
また、この人は日本に初めて映画を持ち込み上映した人物としても有名。
 
閑話休題、今夕のテーマは「フランス近代の女性作曲家たち」
シャミナードタイユフェールリリー・ブーランジェの作品が演奏されるというので、馳せ参じたもの。
京都フランス歌曲協会は、かねて彼女の作品をたびたび演奏しておられるのだが、なかなか都合が合わず、今回、初めてコンサートに伺ったのである。
 
なお、解説は中村順子さん、大阪大学・神戸大学で仏文学・音楽学を専攻され、現在甲陽音楽学院で教鞭を執られているとのこと。
 
前半はセシル・シャミナードの音楽。
解説の主旨は、「シャミナードというとサロン音楽という評価だったが、その機知やユーモア、歌曲での旋律と韻律の一致など、芸術音楽としての再評価が必要。」というもの。
演奏されたのは、ピアノ独奏曲2作品と歌曲9作品。
全体に、屈託のない明るさがあり、たしかにまだまだ評価されてよい作曲家だと思われる。
演奏者では歌曲の後半5曲を歌われた緋田芳江さんの繊細な美声が印象に残った(略歴。バッハ・コレギウム・ジャパンにも参加されているとのこと)。
 
後半の初めはジェルメーヌ・タイユフェール
フランス六人組の紅一点として有名だが、作品はそれほど聴かれているとは言えない。
解説によれば「歌曲の代表作」である「6つのフランスの歌」と「晩年の代表作」というピアノ独奏のパルティータが演奏された。
前者は、題名からは想像がつきにくい、女性の奔放な官能を歌った作品。歌手(津山和代)の声質も少し陰のあるものでふさわしかった。
音楽はいずれも「シンプルで軽やか」(解説より)、「パルティータ」の第2曲「夜曲(ノットゥルノ)」でも深刻にはならない。
 
最後にリリー・ブーランジェ;「空のひらけたところ」から5曲が歌われた。
当日のプログラムでは曲名を「空のぽっかり明るい場所」と表記。
第1曲冒頭の和音が響いただけで、他の2人とは次元の違う芸術性が感じられる。
歌われたのは第1・4・5・9・12曲だったが、もう何というか、聴いているだけで幸せ(笑)。
できれば冒頭の和音が再現する第13曲で締めくくってほしかったところ。もっとも9分以上かかる長大な曲なので、構成上、難しかったのかもしれない。
歌唱は下田和恵さんというソプラノの方。初めは少し硬いかな?と思ったが、音楽が進むにつれ、不満を忘れさせる出来栄え。
 
聴くたびに思うことだが、「女性作曲家」という括りでは片付けられない、音楽の深さ・強さを持っているのが、ブーランジェの音楽である。
いつか、「空のひらけたところ」全13曲がまとめて演奏される機会の訪れることを願ってやまない。
終演後に伺ったお話では、歌手には相当な負担がかかる曲集らしい。

投稿者 seikaisei : 2005年10月08日 23:57

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コメント

まことに厚かましいのですが、感想を気長に待ちます。

投稿者 加藤博昭 : 2005年10月10日 09:30

加藤さん、こんにちは。
 
まことに申し訳ありませんが、しばらくお待ちくださいませ。
 
とりあえず曲目等は、同協会のWebpageでごらんくださいませ。

投稿者 斉諧生 : 2005年10月10日 19:50

遅くなりましたが、ようやく執筆できました。<(_ _)>
 
曲目の詳細は、演奏会出没表 をごらんくださいませ。

投稿者 斉諧生 : 2005年10月30日 20:00

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