10月31日(金): 仕事で和歌山へ出張した帰りに大阪・心斎橋で買物。ポケット・スコアを2点購入。

ショーソン;交響曲
バターワース;管弦楽のための狂詩曲「シュロップシャーの若者」

 心斎橋はタワー・レコードもHMVもクラシック売場が淋しくなってきている。

ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)レオポルト・ハーガー(指揮)ネーデルラント室内管、モーツァルト;Vn協第6・7番(DENON)
「カントロフのモーツァルト全集を中古かバーゲンで揃えるプロジェクト」、第3弾。第6・7番とも、モーツァルトの真作か疑わしいとされ、特に6番はエックという人の作というのが定説となっている模様。とはいえ、これはこれで美しい曲で、SP時代から第6番はティボー、第7番は若き日のメニューインの録音が知られていた(いずれもBidduphからCD復刻)。
イリヤ・カーラー(Vn)アントニ・ヴィット(指揮)ポーランド国立放送響(カトヴィツェ)、ショスタコーヴィッチ;Vn協第1・2番(NAXOS)
なかなか決定盤が見つからないショスタコーヴィッチの両曲を、ロシアの実力派ヴァイオリニスト、カーラーで買ってみる。ヴィットはシマノフスキも良かった。なおカトヴィッツェは、先日文庫化された辺見庸『もの食う人びと』に登場、どうやら斜陽の炭鉱町らしい。
アラン・ダミエン(Cl)マリヴォンヌ・ル・ディゼ(Vn)ピエール・ローラン・エマール(P)バルトーク;コントラスツ&ストラヴィンスキー;「兵士の物語」組曲ほか(ADDA)
独奏は当時のアンサンブル・アンテルコンテンポランの首席奏者(1989年録音)。本当はメシアン;世の終わりのための四重奏曲が欲しいのだが、どうにも手に入らない。ベルク;室内協奏曲のアダージョ、アミ;三重奏曲をカプリング。

10月30日(木): 10月23日の項に書いた京響の音楽監督解任騒動は地元紙・京都新聞が今日の夕刊で全面を使って特集、また朝日新聞(たぶん大阪版)夕刊にも取り上げられた。井上道義いわく「市は若杉弘さんを後任に打診したが断られた。云々」。京響友の会会長も井上擁護らしいが、何せ桝本市長も担ぎ出しての解任劇だけに、京都市側が屈伏する可能性は(残念ながら)薄いというのが斉諧生の予想。
 あとは後任の常任指揮者の人選に皆が納得するかどうかだが、井上談話では「市は京響を振ったこともない外国人指揮者を呼んできて形だけつけようとしている」とか。果たして誰だろう? 京都市が「この人を呼んでくるならば、井上を切っても市民の納得が得られるだろう」と判断するに足るだけのネームバリューのある指揮者で、京響を振ったことがない人、ということになるのだが…。

 こう毎日では、「最近本業が忙しくて」と言っても信じてもらえないだろうなぁ。

ペーター・マーク(指揮)パドヴァ室内管、モーツァルト;交響曲第31・33・34番(ARTS)
前に35〜41番でマークの徹底した音楽づくりに感心した。今回も34番あたり、セル&コンセルトヘボウ(Ph)という名盤の塁を摩する出来栄えを期待したい。
オスモ・ヴァンスカ(指揮)ラハティ響、シベリウス;「カレリア」全曲、「クレオマ」原典版ほか(BIS)
ヴァンスカのシベリウス録音が続く。「カレリア」は組曲(作品11)で有名になったナンバーを含む、野外劇の付随音楽(1893年)を、一部はカレヴィ・アホの補作によって全曲を復元したもの。「クレオマ」は有名な「悲しきワルツ」をオリジナル版で演奏するとともに、通用の改訂版もフィル・アップで収録している。こういう力の入った企画は、シベリウス・ファンとして是非買わなければ。
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)ジャック・ルヴィエ(P)フィリップ・ミュレ(Vc)ラヴェル;P三重奏曲ほか(DENON)
先日、トルトゥリエの管弦楽編曲盤を買ったので、次の三連休に原曲ともども聴いてみたいと思い、中古屋で見つけた機会に購入。
ヨーヨー・マ(Vc)バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(SonyClassical)
10月21日の項に書いたように、長谷川陽子さんが『レコード芸術』11月号に熱烈なオマージュを執筆されているので、輸入盤を待たずに購入(というかCD屋のスタンプ・カードのポイントが溜った分で交換)したもの。全6曲とも映像作品として収録されたもので、うち坂東玉三郎との第5番はLDも発売済みだが、第6番が、あのトーヴィル&ディーンとのコラボレーション。サラエボ冬季五輪(でしたよね)で、このアイス・ダンス・ペアがラヴェル;ボレロを舞って金メダルを獲得したのは、今も記憶に鮮かである。あのときの演技は、「ボレロ」に内在する官能性(許光俊風に言えば、スケベな音楽ということ)を、世界中に赤裸々に提示したのだ。TV中継を見ていて、「ここまでやって、ほんまにええんかいな」と思ったくらいだ。2人にインスパイアされたヨーヨー・マの演奏が楽しみである。
ピエール・ローラン・エマール(P)リゲティ;ピアノ作品集(SonyClassical)
リゲティ・エディションの第3巻、次回の中古音盤堂奥座敷の選定盤である。

10月29日(水): 今日はインターネット関係雑誌が(なぜか)一斉に発売される日である。”日経net n@vi”と”internet ASCII97”を購入。ネットナビは「秋の夜長を過ごすインターネット蘊蓄ページ」、アスキーは「97年 Best Web Selection」を特集している。で、クラシック系のWebページで紹介されているのは

"net n@vi"
  CLASSICA
  a-nezu(Muse)
  The Piano Page
"internet ASCII"
  The CLASSICAL MIDI ARCHIVES
  CLASSICA
  FMIDICLA

の各3つ。
 当「斉諧生音盤志」を紹介してくれと言うつもりも自信もないが、それにしても、もう少し凝ったセレクションができないものか。

 

キム・カシュカシュアン(Va)ロバート・レヴィン(P)ブラームス;Vaソナタ集(ECM)
期待しているヴィオリスト、カシュカシュアンのブラームスが出たので購入。1・2番のVaソナタのみで、カプリングは無し、収録時間は44分ほど。明快といえば明快なコンセプトではあるが、何か+αが欲しいもの。
ミシェル・ポルタル(Cl)リシャール・ガリアーノ(Accord)「ブロウ・アップ」(DREYFUS)
おや、こんなところでポルタルがバス・クラリネットやソプラノ・サキソフォンでピアソラや自作を吹いている。曲によってはバンドネオンに持ち替えているのにも驚く。このところ好調のガリアーノとのインタープレイに期待したい。

10月28日(火): 日本シベリウス協会(会長:館野泉)の会報が届いた。今回から吉松隆・同協会理事が編集を担当されている。
 作曲家の名を冠した協会組織は、日本にどのくらいあるのだろうか? 珍しいところでは日本スーザ協会というのもある(友人が会員になっている)。

 

クリストファー・リンドン・ギー(指揮)アーンヘム・フィル、マルケヴィッチ;管弦楽曲全集Vol.3(MARCO POLO)
待望のマルケヴィッチ管弦楽曲全集、早くも第3巻が出た。今回は1931年の「謎々」と1933年の「讃歌」を世界初録音。
ウト・ウギ(Vn)ヴィヴァルディ;Vn協集(BMG RICORDI)
日曜に聴いたウギの新譜を1枚買い足す。雑多な選曲だが、「和声と創意の試み」第11番、「恋人」、「調和の霊感」第8番等を収録。CD屋に置いてあったチラシでは、来年3月に来日するらしいが、京都では「四季」ほかというプロらしい。ちょっと失望。
エレーヌ・グリモー(P)デイヴィッド・ジンマン(指揮)ボルチモア響、ガーシュウィン&ラヴェル;P協(ERATO)
グリモーはラヴェルを前にロペス・コボスの付けでデンオンに録音していたが、それが良かった記憶があるので、新盤を購入。ガーシュウィンとのカプリングというコンセプトも面白いし、近年評価を上げているジンマンとボルチモア響の組合せも聴き欲をそそるものがある。ジンマンはモントゥー門下だし。
和波孝禧(Vn)土屋美寧子(P)北本秀樹(Vc)ほか、シューベルト;P三重奏曲第1番、P五重奏曲「鱒」(EPSON)
和波さんは、京都付近での演奏会はできる限り聴きに行き、ディスクは見つけたら買うヴァイオリニスト。室内楽の録音は初めてだと思うが、大いに期待したい。

 上記のマルケヴィッチのディスクの情報をマルケヴィッチ略年譜(1)作曲家時代に追加。


10月26日(日): 大阪で「ひまわり〜長谷川陽子とチェロ好き広場〜」のミーティング「ひまわり広場in関西」が開かれたので、出席。3回目を数えるそうだが、斉諧生は初参加。詳細は「ひまわり」ホームページに掲載されると思うので、そちらを御覧ください。

 長谷川さんと斉諧生

 長谷川さんに直接お目にかかるのはもちろん初めてだが、放送等で拝見していたとおりの御誠実なお人柄にあらためて感銘を受けた。あるいはお疲れだったかもしれないのに(昨日は大阪でザ・シンフォニー・ホールに御出演)、50人以上の出席者の自己紹介に、一々、丁寧に対応されていたのである。
 斉諧生も、御厚意に甘えて、二三、質問を試みた。不躾ながら「シューベルトはお弾きにならないのですか」とお尋ねしたところ、「あと5、6年したら、また弾いてみようかと…」とあっさりかわされてしまった。いや、どうも失礼しました。m(__)m
 長谷川さんがおっしゃっていた来年2月のショスタコーヴィッチ(関西フィル、協奏曲第1番)は、必ず聴きに行くつもり。大いに期待したい。
 想像と違ったのは、本当に小柄かつ華奢でいらっしゃること。それでいて音は凄いのだから、何やら不思議な…見えざる力が働いているような気さえしてくるのである。

 大阪のCD屋を覗く。

ハンス・ツェンダー(指揮)ザールブリュッケン放送響、モーツァルト;交響曲第32・36・41番(CPO)
ハンス・ツェンダー(指揮)ザールブリュッケン放送響、シューマン;交響曲第2・4番(CPO)
ツェンダー・エディションがずらっと並んでいたが、上記の2枚のみ購入。ツェンダーなら自作ほかの現代音楽、せめてシェーンベルクでも、とお叱りの声が飛んできそうだが、まぁ、自分としては、こういう曲で新鮮な演奏が聴ければ最高なわけである。
ルドルフ・バルシャイ(指揮)モスクワ室内管、ヴィヴァルディ;「四季」ほか(Revelation)
これは工藤庸介さんがHPで取り上げられていた1枚。ちょっと聴いてみたが、1967年のライヴだが完璧な仕上がりといっていい。今時分、こういうモダン楽器でハードに決めたヴィヴァルディが、かえって新鮮で心地好いのだから面白い。
イヴリー・ギトリス(Vn)ベルク・ヒンデミット・ストラヴィンスキー;Vn協(STRAD)
ギトリス壮年期のスタジオ録音の復刻である。このうちストラヴィンスキーはLPでも架蔵しているが、実に面白い、名演である。ベルクもヨアヒム・ハルトナック『20世紀の名ヴァイオリニスト』(松本道介訳、白水社)で取り上げられていた録音。大いに期待したい。
デヴィッド・オッペンハイム(Cl)ブダペスト四重奏団、ブラームス;Cl五重奏曲ほか(SONY CLASSICAL)
オッペンハイムはCBSのプロデューサーとしての方が高名だが、実はストルツマンの師匠であるらしい、大クラリネット奏者。前にモーツァルトの五重奏を聴いて、とても良かったので(ベストを争う名演だ)、ブラームスも探していたもの。この曲を聴くと、秋が身に沁みる。
ヨゼフ・スーク(Vn)パウル・バドゥラ・スコダ(P)ブラームス;Vnソナタ全集(LOTOS)
チェコのレーベルで、1997年3月の録音。スークも歳じゃないかなと思ったのだが、店頭の試聴機で聴いてみると、まだまだしっかりしている様子なので、購入。3番のアダージョあたりに心揺るがす名演を期待したい。
デュファイ・コレクティヴ、アルフォンソ賢王;聖母マリアのカンティガ(CHANDOS)
この団体は未だ聴いたことがないが、「聖母マリアのカンティガ」は見つけ次第買うことに決めているので、迷わず購入。で、買って吃驚、パッケージがすごい。あなたがディスク・マニアなら、ぜひお買い求めください。おそらく、空前絶後の構造だと思います。演奏にも期待したい。

 帰宅してから少しだけ聴けた。

ウト・ウギ(Vn)「悪魔のトリル」(BMG RICORDI)
開巻劈頭、パガニーニのラ・カンパネッラ(協奏曲第2番の終楽章)でライヴとは思えない美音の洪水に圧倒される。一方、ツィゴイネルワイゼンはライヴ的なスリル満点、手に汗握る演奏である。Vn好きの人には、ぜひ推奨したい。この人を忘れるのは、ちょっと勿体ない。

10月25日(土): 久しぶりにディスク三昧の休日。

 通販業者からLPが届く。

ルネ・ヤーコプス(指揮&Alt)バーゼル・スコラ・カントールム、ゼレンカ;「預言者エレミアの哀歌」(DHM)
これは浮月斎大人のpseudo-POSEIDONIOSで取り上げられていたディスクで、中古音盤堂奥座敷の賓客連にも好評であったもの。CDでは廉価で出ているのだが、通販業者のカタログで輸入盤LP2枚組を見つけたので、つい注文してしまった。アナログ録音は、できればLPで聴くのを原則としているので。

 今日は管楽器をたくさん聴いた。

小林研一郎(指揮)チェコ・フィル、スメタナ;「わが祖国」より「ヴィシェフラド」・「ヴルタヴァ」(CANYON)
プラハは曾遊の地で、ヴルタヴァを控えたプラハ城の佇まいなどを思い出すが、その対岸に聳えていたのがルドルフィヌム(芸術家の家)。傍まで行って写真を撮ってくるだけで、入場など出来なかったが、このディスクはそのドヴォルザーク・ホールで録音されたもの。HDCDエンコードと関係があるのか、すごい残響で、ちょっと好みから外れる。さて演奏の方は、比較的息の短い旋律の歌わせ方や、「ヴルタヴァ」の夜景部分の弦合奏の密やかな磨き抜かれた音色に、コバケンの息遣いを感じて、ファンとしては嬉しい。とはいえ、「わが祖国」の全曲盤として声を大にして推奨し得るかというと、ちょっと違うだろう。(でも聴いてほしいなぁ、ファンとしては。)
モーリス・アラール(Fg)イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)コンセール・ラムルー管、モーツァルト;Fg協(DGG)
これは前から架蔵している輸入廉価盤LP。立風書房『200CD 管楽器の名曲・名盤』で勉強したのだが、ファゴットでもフランス式のものは全然楽器が違うのだそうな。アラールはフランス式最後(?)の名手とのこと、聴いてみると確かに音も全然違う。軽やかで、悪戯者めいた艶が好もしい。
マルティン・ハーゼルベック(指揮)ウィーン・アカデミー、モーツァルト;協奏交響曲K297B(NOVALIS)
古楽器で演奏したK297Bのロバート・レヴィン補筆版は初めてだ。これまでマリナー盤(Philips)、ローラ盤(というよりランパル盤、CBS)、ペシェク盤(Supraphon)と聴いてきたが、すべてモダン楽器によるものであった。やはり楽器間のバランスなどがかなり異なるので戸惑う。また、ソリストがあまり上手くないように思えるし、ハーゼルベックの棒も(意図的なのかもしれないが)リズムが重い。せっかく取り寄せたディスクだが、残念ながらマリナー盤の牙城を脅かすものではなかった。
ヴェラ・ツウ(Vn)ユー・ロン(指揮)ゴルトマルク;Vn協(NAXOS)
端正な音色による丁寧な演奏だが、残念ながら、それ以上のものではなかった。やはりパールマン盤を推す。
マリー・ルイーゼ・ノイネッカー(Hrn)インゴ・メッツマッハー(指揮)R・シュトラウス;Hrn協第1番(EMI)
男勝りと噂の高いノイネッカーのHrnだが、力づくで吹きまくるのではなく、軽々と鮮かに、というタイプ。
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ストックホルム室内管、R・シュトラウス;メタモルフォーゼン・ClとFgのための二重小協奏曲(CBS)
冒頭の弦の音が、もう他の指揮者と全く違う、実に繊細なものだったので息を呑んだ。独奏も上手いし、よくやっていると思うが、サロネンの音楽のレヴェルには達していないようだ。
ハンスイェルク・シェレンベルガー(Ob)ヘドヴィヒ・ビルグラム(Org)ObとOrgのための作品集(DENON)
これがオーボエとはとても思えない、勁い音楽がオルガンに拮抗する。したがって、テレマンではチト愛嬌に乏しいが、それよりもマルタン;オーボエ・ダモーレとオルガンのためのソナタ・ディ・キエザが名曲の名演。マルタンらしい十二音的な旋律に、惻々とした現代的情感が載せられている。これが埋もれているのはもったいない。大いに推奨したい。
ザ・スターク・バンド、ヴォイシィズ(VICTOR)
吾等が長谷川陽子さんが出演とはいうものの、ちょっと聴くのが辛い音楽だな、こういうのは。
ルネ・ヤーコプス(指揮&Alt)バーゼル・スコラ・カントールム、ゼレンカ;「預言者エレミアの哀歌」より聖金曜日の部(DHM)
上記のLPを早速聴いてみた。滋味豊かな音楽だが、斉諧生が「エレミア哀歌」に持っている哀切きわまりないイメージとは随分異なる。ちょっと期待外れ(というか思い込みが過ぎるのですね。)。

10月24日(金): 古い本だが、ナージャ・サレルノ・ソネンバーグ『わが道をゆく』(晶文社)を読む。ジュリアード音楽院でドロシー・ディレイに学んだ、というのが通常、ナージャの経歴として言われることだが、その前にガラミアンにも学んでいた(実際にはアシスタントにレッスンを受けていた)そうだ。また、学生時代に、バスク地方に近いラヴェル音楽アカデミーのフェスティヴァルに毎年のように参加し、そこでクリスチャン・フェラスにも学んだとのこと。
 斉諧生は、ディレイをガラミアンの後継者とばかり思っていたが、ナージャによれば、ディレイはガラミアンと違う道を歩んだ、とのこと。「ガラミアン・メソッドは演奏家を型にはめる」と彼女は言い、ディレイの包容力を賞賛している。

 仕事の帰りにCD屋を回る。また、CompactDiscConnectionからCDが届く。

ハンス・ツェンダー(指揮)ザールブリュッケン放送響、ベートーヴェン;交響曲第1・6番・Vn協(CPO)
ハンス・ツェンダー(指揮)ザールブリュッケン放送響、マーラー;交響曲第9番・「子供の不思議な角笛」(CPO)
ツェンダー・エディションとして14枚のリリースが予告されているが、そのうち2枚をCD屋で見たので、早速購入。作曲家の指揮は、伝統に囚われないユニークな解釈・表情を見せることがあり、ついつい手を出してしまう。ベートーヴェンの第1交響曲あたりにユニークなものが聴けるかもしれない、と期待。また、ベートーヴェンのVn独奏はヘンリク・シェリング。1982年の録音なので、ハイティンクとのスタジオ録音よりも晩年のものということになる。さらに深い境地を聴かせるのではないか、と期待。1979年録音の「角笛」の歌はファスベンダーとフィッシャー・ディースカウ。
オイゲン・ヨッフム(指揮)アムステルダム・コンセルトヘボウ管、ブルックナー;交響曲第5番(TAHRA)
1986年12月のライヴ録音。コンセルトヘボウを振った最後の演奏会だったそうだ。演奏会出没表の外国のオーケストラの部に記したように、この年の9月にヨッフムがコンセルトヘボウを率いて来日、大阪ではブルックナーの第7を演奏している。
マルティン・ハーゼルベック(指揮)ウィーン・アカデミー、モーツァルト;協奏交響曲K297Bほか(NOVALIS)
K297Bのロバート・レヴィン補筆版は、愛惜佳曲書・協奏曲の部に取り上げた曲。見つけたら買うようにしているが、このディスクは立風書房『200CD 管楽器の名曲・名盤』で存在を知り、CD屋で探したが見つからず、CompactDiscConnectionに注文したもの。ソリストがFlとHrnしか明記していないのが不親切。
マリー・ルイーゼ・ノイネッカー(Hrn)インゴ・メッツマッハー(指揮)R・シュトラウス;Hrn協第1・2番&ブリテン;セレナード(EMI)
最近世評の高きノイネッカーを聴かむと欲して中古盤で購入。前にハルトマンの交響曲で良かったメッツマッヒャー・バンベルク響のサポートにも期待。
ヨーゼフ・パーレニチェク(P)ヤナーチェク;コンチェルティーノ・カプリッチオほか(SUPRAPHON)
中古音盤堂奥座敷で浮月斎大人・野々村大通御両所が一致して誉めておられたパーレニチェクのヤナーチェク。大いに期待したい。これもCD屋で探したが見つからず、CompactDiscConnectionに注文したもの。AAD表示だが、マルCは1990年、よくわからぬ。
プリース・チェロ・オクテット、ヴィラ・ロボス;バッキアーナス・ブラジレイラス第1・5番ほか(HYPERION)
ヴィラ・ロボスもすっかりメジャーになった。LP末期に自作自演の「バッキアーナス・ブラジレイラス」全曲盤が出たころは、よほど詳しい人でないと名前すら知らなかったのに(ギター畑の人は別だったかも)。これは浮月斎大人のpseudo-POSEIDONIOSで取り上げられていたディスクで、これもCD屋で探したが見つからず、CompactDiscConnectionに注文したもの。
フランソワ・ルルー(Ob)プーランク;Obソナタ&ブリテン;オヴィディウスによる6つのメタモルフォーシスほか(HMF)
これも立風書房『200CD 管楽器の名曲・名盤』で存在を知り、CD屋で探したが見つからず、CompactDiscConnectionに注文したもの。同書ではブリテンの曲は「〜6つの変容」と表記されているが、これは考えもの。オヴィディウスの代表作は、英語ではMetamorphosis、日本語では『転身譜』と訳すのが常道、ブリテンのタイトルもいわば懸詞になっているのだから、機械的に「変容」と訳すのはいかがなものか。

10月23日(木): 京都新聞によると、京都市は井上道義を京都市交響楽団の音楽監督から解任する方向で折衝中とのこと。「7年は長すぎる」というのが理由だそうだが、あまり説得力はない。お隣の大フィルに比べれば…。
 たぶん、この間のヨーロッパ演奏旅行等、大きな財政負担を伴う企画を連発するのが重荷になったのだろう。井上の着任以来、京響が演奏力をメキメキと向上させたのは衆目の一致するところなのに。
 当面、後任は置かず、外国人指揮者を常任に招くとの案があるそうだが、井上すら重荷に思う京都市のことであるから、どうにも期待できない。

 仕事の帰りにCD屋で1枚購入、また、MusicBoulevardから追加が1枚届く。

エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ストックホルム室内管、R・シュトラウス;メタモルフォーゼン・ClとFgのための二重小協奏曲ほか(CBS)
19日に届いた2枚と同時に発注したCD。ソニーに買収される前のCBSのものである。入荷が遅れたのは、そのせいだろうか。これは「二重小協奏曲」のために購入したもの。愛惜佳曲書・協奏曲の部に記したように、この曲はシュトラウス最晩年の名品である。サロネンが、淡彩の美を発揮していることを望む。
前橋汀子(Vn)「感傷的なワルツ」(SONY)
前橋汀子は、小品向きの演奏家だと思う。構成力はイマイチだが、独特の妖しい輝きのある音色と歌い回しは、ツボにはまれば天下一品である。宇野功芳さんが変に肩入れするものだから、潔癖なファンに敬遠されているのは、もったいないと思う。

10月22日(水): 

 週日にCD屋を覗くのも久しぶりだ。それに、こんなに国内盤を買うのも珍しい。

広上淳一(指揮)日本フィル、伊福部昭;Vnと管弦楽のための協奏風狂詩曲ほか(KING)
「伊福部昭の芸術」第5巻。前に第1〜4巻が出たときも、すぐに買い揃えた。指揮が広上淳一なので、なおさらである。今回カプリングの「Pと管弦楽のための協奏風交響曲」は大友直人の棒だが、独奏が館野泉さんなので、差引きトントンというところか。
ウト・ウギ(Vn)「悪魔のトリル」(BMG RICORDI)
イタリアのヴァイオリニストというとアッカルドばかりが有名だが、美音家ウト・ウギも忘れてはならない人である。標題のタルティーニのほか、パガニーニ;カプリス(シューマンによるP伴奏版、4曲)、ブラームス:ハンガリー舞曲(2曲)、ドヴォルザーク;4つのロマンティックな小品、バルトーク;ルーマニア民俗舞曲などを収録した小品集。でもRICORDIがBMG傘下になっていたとは知らなかった。
ヴァレリー・アファナシェフ(P)シューベルト;Pソナタ第19〜21番(DENON)
アファナシェフのシューベルトは、前にECMから21番が出ており、これが超名演だったので、新盤を無視するわけにはいかない。先日の「オマージュ&エクスタシー」は中古音盤堂奥座敷での評価が芳しくなかったが、十八番のシューベルトには大いに期待したい。
ザ・スターク・バンド、ヴォイシィズ(VICTOR)
ブルース・スタークが自身もピアノかシンセで参加した作品集。普段はこういったポップ・クラシカル系の現代作品など絶対に手を出さないのだが、これは例外。理由は唯一つで、吾等が長谷川陽子さんのソロが聴けるから。

10月21日(火): 『レコード芸術』11月号が発売された。以前のようには「推薦盤」を買うことも少なくなり、ほとんど広告と新譜情報くらいしか参考にしていないのだが、今月号では、なんと吾等が長谷川陽子さんが、ヨーヨー・マのバッハ;無伴奏チェロ組曲の新録音に、熱烈なオマージュを執筆しておられる! 輸入盤が出るまで購入を控えるつもりだったが、これは考え直さねばならないか…。

 さて、その長谷川さんの文章だが、つぎのような表現、どこかで読んだことありませんか?

「泉が湧き出るようなプレリュード、続くゆっくり人生を歩むようなアルマンド」(第1番)
「静けさの中に潜む雄弁さ」(第2番)
「生まれたての赤ちゃんのように人生に何の罪もお荷物もない、純粋で健気でまさに透き通った」(第3番)
「浄化と彼の生への力強い喜び」(第4番)
「『人間は結局は一人である』といった孤独を感じさせる」(第5番)
「世にあるあらゆる感情を淘汰した天上の音楽」(第6番)

 これは、もう、ほとんど宇野功芳先生の語彙ですね。


10月19日(日): 更新が途絶えてすみませんでした。1週間、残業の嵐だった上に、週末は職場の親睦旅行に行っておりましたもので…。

旅行のメインは、今日の倉敷市内自由行動だったのですが、うちのボスは、倉敷市立公民館の音楽資料室を2時間、1人で占領して、珍しいディスクをとっかえひっかえ掛けさせてきたそうです。何でも、相当な量の、しかも偏ったコレクションで、えらく面白かったとか。

 親睦旅行の解散後、CD屋を回ってきました。帰宅したら、MusicBoulebardからCDが2枚届いておりました。

小林研一郎(指揮)チェコ・フィル、スメタナ;「わが祖国」全曲(CANYON)
全曲を1枚に収録、しかもHDCDエンコード。コバケン・ファンとしては嬉しい録音だが、やっぱり「チェコ・フィルが『円の力』に屈した」と思われるのかなぁ。下種の勘ぐりを吹き飛ばす、快演、名演であってほしい。
ジョージ・セル(指揮)クリーヴランド管、R・シュトラウス;「ドン・キホーテ」・「ドン・ファン」ほか(SONY CLASSICAL)
大好きなHeritage Seriesの新譜。「ドン・ファン」は最上の演奏ではないかと思う。セルは丁寧な復刻で全部出してほしいものだ。
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)スウェーデン放送響、ラーション;「偽装の神」・「田園組曲」・Vn協(SONY CLASSICAL)
Vn協の独奏は「北欧のオイストラフ」ことアルヴェ・テレフセン。ラーションは第一級の作曲家とは言えないと思うが、サロネンのアプローチに期待したい。国内盤の再販期限切れ2割引で購入。
アルトゥール・ルービンシュタイン(P)ラフマニノフ;パガニーニの主題による狂詩曲&ファリャ;「スペインの庭の夜」ほか(BMG)
これも大好きなLiving Stereoシリーズの新譜。ラフマニノフの付けはライナー&CSOなので、買うしかないディスク。ルービンシュタインはライナーを嫌ったらしいが(ソリストを自由にしてくれない)、芸術的成果には素晴らしいものがある。
ミハエル・ボーダー(指揮)ベルリン・フィル・ホルン四重奏団(Hrn)シューマン;4本のホルンと管弦楽のためのコンチェルトシュトゥックほか(KOCH SCHWANN)
立風書房『200CD 管楽器の名曲・名盤』で存在を知った録音。ゲルト・ザイフェルトを筆頭にしたBPOのホルン・セクションによる超絶技巧名演とのこと。カプリングはHarald Gentzmer、Paul Coenenという現代作曲家のもの。MusicBoulevardで購入。
カイヤ・サーリケットゥ(Vn)シベリウス;VnとPのための後期作品集(FINLANDIA)
シベリウスの後期の小品には、オーケストラ物、Vn物とも佳品が多い。期待したい。
キム・カシュカシュアン(Va)ロバート・レヴィン(P)ヒンデミット;無伴奏Vaソナタ・VaとPのためのソナタ全集(ECM)
奏者で期待しているのは1にバシュメト、2にカシュカシュアン、3に今井信子。もう古くなった録音だが、ずっと気になっていたのをバーゲン・プライスで見つけたので購入。
ハンスイェルク・シェレンベルガー(Ob)ヘドヴィヒ・ビルグラム(Org)ObとOrgのための作品集(DENON)
これもベルリン・フィルの首席奏者による管楽器のディスクだが、上記の立風書房の本で存在に気がついた録音。バッハやテレマンも魅力的だが、これを買ったのは一にも二にもマルタン;オーボエ・ダモーレとオルガンのためのソナタ・ディ・キエザを聴きたかったため。MusicBoulevardで購入した逆輸入品。
ペーター・ヤブロンスキー(P)グリーグ;P作品集(DECCA)
ピアノ・ソロは滅多に買わないが、ヤブロンスキーはマークと録音したグリーグの協奏曲も良かったし、好きな「ホルベルク組曲」のピアノ原曲版を収録しているので、迷わず購入。
ディミトリ・ミトロプーロス(指揮)NYPほか、ベルク;歌劇「ヴォツェック」&シェーンベルク;「期待」ほか(SONY CLASSICAL)
これもHeritage Seriesの新譜で、ミトロプーロスの伝説的名演。「ヴォツェック」は、ちゃんと聴かねばと思っている作品で、ケーゲル盤も買ったし、音楽之友社から出ている対訳+解説本も買ったのだが、まだきちんと聴けていない。今度こそ…
グナール・レツボール(Vn)ビーバー;ロザリオのソナタ(ARCANA)
バッハ以前のVn曲では1、2を争う名作の新録音。CD屋の試聴機でちょっと聴いてみたら、期待できそうなので購入。


10月13日(月): 今日発売の『AERA』10月20日号のカバーはケント・ナガノ。いちおう1ページのインタビュー記事が入っているが、同誌の常で、内容は薄い。

 今日もMusicBoulebardからCDが届く。

ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)アルスター管、サン・サーンス;交響曲第2・3番(CHANDOS)
今日の荷もトルトゥリエ。切れ味の鋭い演奏を期待したい、サン・サーンス。オルガンは、ジリアン・ウィーア女史。
ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)アルスター管、ラヴェル;「ダフニスとクロエ」全曲・「ラ・ヴァルス」(CHANDOS)
10月5日の項に記した「スペイン狂詩曲」が素晴らしかったので、トルトゥリエのラヴェルを4枚とも買い揃えることにした。彼のスタイルならば「ダフニス」に最上の結果がもたらされるのではないか、と期待。
ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)アルスター管、ラヴェル;「高雅で感傷的なワルツ」・「クープランの墓」・「マ・メール・ロワ」全曲ほか(CHANDOS)
「マ・メール・ロワ」を(組曲でなく)全曲録音するのは、意外に珍しいのでは? いつも思うのだが、”Le Tombeau de Couperin”は、「クープランを偲んで」とか「クープランへの挽歌」とでも邦訳すべきではないのかな。普通「クープランの墓」と表記されるが、音楽の印象を不当に暗くするようで、どうも抵抗がある。

10月12日(日): 3連休の最後の日を、やっとディスク聴きに確保できたと思ったら、月初めからの風邪気味が、いよいよ悪化して寝たり起きたり状態。

 MusicBoulebardからCDが届く。

ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)BBCフィルハーモニック、ヒンデミット;交響曲変ホ調・組曲「いとも気高き幻想」ほか(CHANDOS)
昨日も買ってきたばかりだが、最近集めているトルトゥリエが3枚到着。詳しくは『In Tune』誌11月号掲載のインタビューを参照されたい。ヒンデミットの交響曲は都響でも振ったそうだが、トルトゥリエは「『画家マティス』よりもはるかに優れたシンフォニーです」と言っている。斉諧生は『画家マティス』をヒンデミットのベストと思っているので心安からず、それなら聴いて確かめてやろうじゃないの、と注文したもの。カプリングも2番目に好きな「いとも気高き幻想」だし(これはクレンペラーも愛奏した曲)。
ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)アルスター管、ラヴェル;シェヘラザード・序奏とアレグロ・ピアノトリオ(トルトゥリエ編)ほか(CHANDOS)
トルトゥリエはラヴェル管弦楽曲集をCHANDOSにCD4枚で録音しているが、この盤のメインはトルトゥリエ自身がオーケストレーションしたピアノ・トリオ。これも上記のインタビューで経緯に触れているが、父君(もちろんVc)・姉上(P)と演奏しているうちに(EMIに録音あり、カプリングはサン・サーンスのピアノ・トリオ)、ここはフルート3本、ここは金管のファンファーレ、この旋律はコントラファゴットにふさわしい…などとイメージが膨らんでいったのだそうな。
ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)アルスター管、ミヨー;「屋根の上の牡牛」・「世界の創造」&プーランク;組曲「牝鹿」&イベール;ディヴェルティスマン(CHANDOS)
ミヨーの2曲、とりわけ「世界の創造」はジャズ風の味付けで、以前から好きな曲。これがよければガーシュウィンも買ってみるつもり。イベールは夏に佐渡裕&大阪センチュリー響で実演に接したが(佐渡さんの前説つき。彼は、イベールの管弦楽曲集を録音済みで秋には発売云々と言っていた。)、楽しい曲である。この演奏は浮月斎大人御推奨。
モーリス・アブラヴァネル(指揮)サティ;管弦楽曲集(Vanguard)
アブラヴァネルには何でも屋さんの印象が強く、あまり聴いたことがない。これはPseudo-POSEIDONIOSで浮月斎大人が奨めておられたので。サティのまとまった管弦楽曲集といえば、LP時代にオーリアコムブ盤を聴いたことがあるくらい。

 作曲家・演奏家 生没年 対比年表を修訂増補。作曲家34人、指揮者1人、器楽奏者36人を追加。


10月11日(土): しばらく本業が忙しく、以前のようなペースではCD屋に行ったり、更新したり出来なくなってきました。しかしながら、細く長く続けていきますので、どうぞ相変わらぬ御愛顧をお願い申し上げます。
 で、昨日・今日と休日出勤をするはめになったが、今日は帰りにCD屋に寄ることができた。どこのCD屋でも「展覧会の絵」(もちろんチェリビダッケの)が掛かっているような気がする。

 某CD屋が輸入盤・輸入楽譜20%引きセール。楽譜売場ではラヴェル;「道化師の朝の歌」バルトーク;「舞踏組曲」を購入。ラヴェルはトルトゥリエ盤、バルトークはI・フィッシャー盤に触発されたため。

ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)BBCフィルハーモニック、ルトスワフスキ;オーケストラのための協奏曲ほか(CHANDOS)
ここのところ集め出しているトルトゥリエ。実はMusicBoulebardにも多数注文中。ルトスワフスキは前にドホナーニ盤で聴いて面白かったので、トルトゥリエには大いに期待したい。
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)ストラヴィンスキー;兵士の物語(Philips)
普通の意味でのマルケヴィッチの代表盤ということになるのだろうが、今までCDは買っていなかった。24ビット復刻盤を中古格安で発見したので購入。ここでジャン・コクトーが語り手(とジャッケット装画)でつきあっているのは、ディアギレフのサークル以来の友達だから。(この盤の印象が強くて、「兵士の物語」はコクトーのテクストによる、と思い込んでいる人も多いようだ。正しくは、シャルル・ラミューズで、これもディアギレフの周囲にいた人。)
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)レオポルト・ハーガー(指揮)モーツァルト;カッサシオンK63、セレナードK203(DENON)
カントロフのモーツァルト;Vnと管弦楽の作品集第6巻。中古格安で購入。帯にはオーケストラ(オーヴェルニュ室内管)にギー・トゥーヴロンらが参加、とあるが、ライナーノートには一言もない。
ヴェラ・ツウ(Vn)ユー・ロン(指揮)コルンゴルト&ゴルトマルク;Vn協(NAXOS)
ゴルトマルクは愛惜佳曲書:協奏曲の部で取り上げているが、見つけたら買うようにしている曲である。ソリストも指揮者も上海生れ、(オーケストラはスロヴァキアらしい)。ツウはジュリアードでドロシー・ディレイらに学び、今は香港フィルの准コンサートマスター(女性だから「〜ミストレス」と呼ぶべきか?)とのこと。
ピーター・ウィスペルウェイ(Vc)パオロ・ジャコメッティ(P)プーランク&ショパン;Vcソナタほか(CHANNEL CLASSICS
ウィスペルウェイも好きなチェリストの一人だ。えらく時代が下ってきたので、ちょっと不安だったが、CD屋の店頭試聴機でカプリングのフォーレを一聴して購入を決めた。滋味溢れる音色が優秀録音で収録されているのが判る。
鈴木雅明(指揮)BCJ、バッハ;カンタータ全集第5巻(BIS)
このコンビで全巻を揃えるつもりのバッハ;カンタータ、今回はBWV18・143・152・155・161。アンサンブルには寺神戸亮(Vn)、鈴木秀美(Vc)のほか、マルセル・ポンセレ(Ob)の名前も見える。

10月8日(水): しばらくぶりでCD屋を覗いたら、ついに出たのですね。チェリビダッケの正規盤とダイアナさん葬儀ライヴ。

 またまた@500円セールで。

シュナイト、エストマン、若杉(指揮)ハイドン;交響曲第39・44・71番(ARTE NOVA)
3人の取り合わせが珍だが、それぞれ聴いてみたいと思わせる。シュナイトは愛聴しているモンテヴェルディ「聖母マリアの晩課」のARCHIV盤の指揮者だし、若杉さんもハイドンをどう振るかには多大な興味あり。
アルヴァロ・カッスート(指揮)ポルトガル新響、アリアーガ;交響曲ほか(Movieplay)
アリアーガの交響曲は愛惜佳曲書:交響曲の部で取り上げているが、見つけたら買うようにしている曲である。
ジョルジュ・オクトール(指揮)ワロン室内管、ストラヴィンスキー;ニ調の協奏曲&ショスタコーヴィッチ;室内交響曲op.110a&バルトーク;弦楽のためのディヴェルティメント(CYPRES)
このカプリングには弱い、ついつい買わずにいられない。ワロン室内管はローラ・ボベスコが創設した「ブリュッセル・ソロイスツ」というアンサンブルを改組したものとか。
ヴァイオリンの巨人たち(Supraphon)
ユリアン・シトコヴェツキー(ドミトリの父親)のシベリウス;Vn協、レオニード・コーガンのショスタコーヴィッチ;Vn協1番ほか。

10月5日(日): 芦屋小雁『シネマで夢をみてたいねん』(晶文社)を読む。小雁ちゃん(といっても1933年生れだが)は映画ファン、とりわけ怪奇SF映画のコレクター(フィルムから集めるのである)として著名。「誰某と何某が共演したんは、あれとこれの2本だけ」みたいな言い方、マニアはどこへ行ってもおんなじやねぇ。そういえば、小雁も京都生れやった。
 で、この本で紹介された映画で1本、びっくりしたのがある。デルマー・デイヴィス監督『ハリウッド玉手箱 Hollywood Canteen(1944年アメリカ)。戦争中の兵隊さん慰問映画で、当時のハリウッド・スターが所属会社の枠を越えて総出演、次から次へとお得意の芸を披露するという映画らしいが(似た趣向のは日本軍もこしらえた)、何に驚いたかいうたら、出演者の中にヨーゼフ・シゲティの名前があるんや。同姓同名やない、もちろんヴァイオリニスト本人。
 スチール写真が載ってるのやが、ハリウッドの綺麗どこがずらっとミニ・スカートはいて足あげて、レビューをやってるというシーンや。シゲティの爺ィさん、どんな顔して何ィ弾きよったんやろ? やっぱりバッハか。…ンなアホな!

 

マルティン・ジークハルト(指揮)リンツ・ブルックナー管、モーツァルト;交響曲第25・36番「リンツ」ほか(ARTE NOVA)
素直で美しいモーツァルト。水曜日に怪演を聴いたので、ホッとする。オーケストラの名前で大編成かと思ってしまうが、実際にはかなり小編成。こころもち金管やティンパニが目立つのは古楽器派の影響か。マーク&パドヴァ室内管(ARTS)のような個性派ではなく、25番も荒れ狂うわけではないが、曲を知るのに過不足はない、ジークハルトには、じっくり大きく伸びてほしいものだ。
山田一雄(指揮)新日本フィル、ブラームス;交響曲第2番(東芝・山野楽器)
1978年藤沢市民会館ライヴ。月曜の項に書いたように、ライナーノートで宇野さんが4楽章を絶讃しているが、斉諧生は前半2楽章の方が出来が良いと考える。基本テンポを遅めにとって、大きなリタルダンドを用いるなど、まことに悠々たるブラームスである。オーケストラも健闘しており、これならば、ぜひ実演を聴きたかったものだ。後半は、たしかに熱のこもった演奏ではあるが、オーケストラがやや乱れを見せて鳴りきらず、スカッとする出来栄えではない、残念ながら。別な日のモーツァルト・プロ等もテープが残っているとのこと、ぜひ聴いてみたい。
ヤン-パスカル・トルトゥリエ(指揮)アルスター管、ラヴェル;スペイン狂詩曲・道化師の朝の歌(CHANDOS)
これは素晴らしい演奏。トルトゥリエはパリ生れ、パリ音楽院で学び、プラッソンの下でトゥールーズ・キャピトル管のリーダーや准指揮者を勤めたという経歴からすると、いかにもフランス風の、しかも二代目らしい微温的な演奏に思えるかもしれない。ところが、音の扱いは、けっこう非伝統的、「こんな音がまだ書いてあったの?!」と驚かせ続ける。ちょっとスペイン情緒には乏しいが、ラヴェルの書いた音彩が、鮮かに、生き生きと再現される。アルスター管が、こんなに上手いとは正直驚き。迫力にも欠けず、「道化師〜」の終結の畳みかけなど、舌を巻く。ぜひ御一聴を。
ヤン-パスカル・トルトゥリエ(指揮)アルスター管、ドビュッシー;夜想曲(CHANDOS)
ラヴェルが良かったので、逆にドビュッシーが心配になった。マーラーとブルックナーみたいなもので、よくセットで論じられるが、両方とも出来のよい指揮者は、まずいないものである。トルトゥリエも、やはりラヴェルと同じ方法論で指揮しており、これはドビュッシーにはちょっと合わないと思う。聴き慣れない音が聴こえてくるので、面白いことは面白いが。「シレーヌ」の女声合唱の扱いも独特で、波間から誘いかける海の精というより、天上から響く天使の歌声のようである。
サー・エイドリアン・ボールト(指揮)ロンドン・フィル、バッハ;ブランデンブルグ協第3・6番(RoyalClassics)
これは前から架蔵しているCDだが、久しぶりにボールトの滔々としたバッハが聴きたくなったので。第3番の1楽章と2楽章の間は楽譜どおりの弦の和音にチェンバロの装飾音が絡むのだが、前後の演奏とは釣合いが悪い。この盤は妙なところで義理堅く、4番等でもデイヴィッド・マンロウのリコーダーを使っている。もっと堂々とロマンティック・バッハをやればよかったのに。
ゲルハルト・タシュナー(Vn)ゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフム(指揮)ブルッフ;Vn協第1番(EMI)
骨太の、ネトネトしない、いかにもドイツ風のブルッフは、当節貴重だと思う。Vn好きの人には、ぜひ耳にしてもらいたい。放送局の音源で、モノラルながら録音は上乗。
ダン・ラウリン(Rec)テレマン;リコーダー作品集(BIS)
斉諧生は、あまり古楽に詳しくないが、まずまず楽しく聴けた。録音も美しく、オーディオファイル向けにも好適か。

 電網四方八通路掲載の香港フィルのページを、今日見つけた公式サイトに差し替え。


10月4日(土): 仕事が詰まってきて、日々の更新も滞りがち、3日分まとめてになりましたが、御容赦ください。今日も休日出勤しておりました。

 とはいえ、行き帰りにはCD屋に寄ってしまいます。

マルティン・ジークハルト(指揮)リンツ・ブルックナー管、モーツァルト;交響曲第25・36番「リンツ」ほか(ARTE NOVA)
9月20日の項にも書いたが、ドイツの若手で注目する指揮者、ジークハルト。手兵を指揮してのモーツァルトだが、「リンツ」って、…まんまやないか。
パリ・バスティーユ管楽八重奏団、モーツァルト;セレナード第11・12番&ベートーヴェン;管楽八重奏曲(HMF)
フランソワ・ルルー(Ob)ほかのグループ。このCD、どなたかがホームページで絶讃しておられたのを拝見して以来、気になっていたもの。

1日のルーマニア国立放送管を演奏会出没表に追加する。


10月3日(金): NHK・金曜夜に「トップランナー」という番組がある。司会が大江千里と益子直美さん(斉諧生は、彼女が高校バレーでジャンピング・サーブを連発していた頃からのファンである。)。で、今晩のゲストは佐渡裕

 

ブライデン・トムソン(指揮)ロンドン・フィル、ウォルトン;交響曲第1番ほか(CHANDOS)
『レコード芸術』10月号、「世界のレーベル」で取り上げられていて、聴いてみたくなったので。
ベンジャミン・ブリテン(指揮)バッハ;ヨハネ受難曲(DECCA)
ブリテンの指揮は作曲家の余技を超えている。自作はもとより、バッハ、モーツァルト、シューベルト等に名演奏を残した。「ヨハネ」はハイライトをBELARTで買っていたので、このCDが出たときには買わなかったが、中古格安で見つけたので、迷わず購入。
クイケン3兄弟&グスタフ・レオンハルト、テレマン;パリ四重奏曲(Sony Classical)
見つけたときにはSEONの再発かと思ったが、なんと1996・1997年の新録音。3枚組だが、迷わず購入。
ダン・ラウリン(Rec)テレマン;リコーダー作品集(BIS)
ラウリンは同じテレマンの「12の幻想曲」以来、注目しているリコーダー奏者。その後、数枚のCDが出ているが、デビュー盤を超える出来のものはないように思う。そろそろ飛躍を期待したい。

10月1日(水): 久しぶりに来日オーケストラの演奏会へ。

 ルーマニア国立放送管弦楽団、と言っても、ほとんど天満敦子(Vn)リサイタルのような宣伝だった。
 天満さんのCDは、デビュー盤から愛聴しており、一度、生で聴いてみたいと思いつつ、去年、大阪のいずみホールでのリサイタルは、チケットも買っていたが、仕事の都合で行けなかった。オーケストラ付きで割高だが、今日は仕事が早く切り上げられたので、当日券で入場(ここが京都の良いところ?)。入りは7分ほどで、まずまず。
 オーケストラは、第1Vnから順に8-6-4-3-2という室内管編成、どうも楽器が良くないのか鳴りが悪いし、同じプログラムで14会場をこなすうちの11回目のせいか気合も十分ではない様子。とはいえ、さすがルーマニア、女性奏者は美形揃いである。

ドル・ポポヴィッチ;Codex Caioni
作曲者は1932年生れのルーマニア人。ダルムシュタットでシュトックハウゼンやリゲティに学んだというが、この曲は1932年の作品といっても通りそうな、保守的な弦楽合奏曲。曲名はプログラムでも欧文表記だが、「カイオニ写本」とでも訳すものか。あまり面白い曲ではなかった。バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」でもよかったろうに。
メンデルスゾーン;ヴァイオリン協奏曲
早めのテンポでグイグイ弾いていく。テンポ、フレージング等、かなり自在に変化させるが、それでいて崩れた感じはしない。有無を言わせない強い説得力がある…と書きたいが、一面、細かい音符で音が潰れるのが気になって、音楽に没入しにくいのが難である。右手のメカニックが不十分なのか。
ポルムベスク;望郷のバラード
細かい音符がほとんど無く、ひたすら嫋々と歌い抜くので、音が潰れるのは気にならないが、最初にCDで聴いたときのような感銘が無いのは、こちらが集中力を欠くのか、演奏者の緊張感に差があるのか。
モーツァルト;交響曲第36番「リンツ」
フォルテはゴリゴリ、メロディはコテコテ、どうにも感心しないモーツァルト。まだベートーヴェンの1番か8番くらいなら、少しは聴けたろうに。なお、アンコールはロッシーニ;「アルジェのイタリア女」序曲。

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