12月31日(水): 平成9年を振り返るに、ネットにはまり込んだ1年だったとしか言い様がない。年明け早々から当ページの構想を練っていたし、3月にオーサリング・ソフトとデジタル・カメラを購入、当初ゴールデン・ウィーク公開を目指したが作業が進まず延期。7月から中古音盤堂奥座敷に参加、同人の方々に叱咤激励されて8月にようやく公開。その後は御承知のとおり、夜な夜な、週日はを、休日にはを執筆。一方でネットサーフやメール書きをしていたのだから、すっかり寝不足傾向が定着してしまった。
 何はともあれ、今年の御愛顧に感謝申し上げるとともに、よいお年をお迎えくださるよう祈念申し上げます。

 次回の中古音盤堂奥座敷試聴会で取り上げる2盤を聴く。

ポール・パレー(指揮)デトロイト響、ベルリオーズ;幻想交響曲(Mercury)
これは斉諧生からの推薦。
セルジュ・チェリビダッケ(指揮)ミュンヘン・フィル、チャイコフスキー;交響曲第5番(EMI)
これは山下@Espressivoさんが推薦された盤。
セルジュ・チェリビダッケ(指揮)ミュンヘン・フィル、チャイコフスキー;交響曲第6番「悲愴」(EMI)
これは選定外だが、上記の5番に圧倒されたので、幻想か5番の聴き比べよりも、こちらをどうしても聴きたくなった。25分を要する第1楽章が最も素晴らしい。
曲頭、「ため」のある弦の弾き出しが心地好い。主部に入ってFlも上手い。もちろんテンポは遅いが、もたれる感じがないのは偉とするに足る。第2主題も甘ったるくなく、初めてVnに出るところでは(130小節〜)、フルトヴェングラーあたりのブラームス;交響曲第4番の曲頭の情趣を連想させる。再現部に入ってもテンポを上げず、実に堂々たる音楽を構築、凄絶なクライマックスを迎える(277〜304小節)。その直後の第2主題の再現では浄化の音楽、これは『ニーベルングの指環』の大団円のごとし。コーダでは弦のピツィカートと最弱音のTrbの美しい和音が感動的。
この後に続く音楽としては、チャイコフスキーが書いた第2〜4楽章は密度が低い。第2楽章など、チェリビダッケも料理のしようがなくて困ったように淡々と進む。
もちろん第4楽章の演奏は感動的で、とりわけコーダでのCbが延々と刻む律動は心拍のように響く。

12月29日(月): 昔は歳末・正月になるとNHKでは来日オーケストラ演奏会の放送・再放送が目白押しで、ビデオ・テープを1ダースほども使ったものだが、近頃は随分寂しくなってしまった。そういえば、「音楽ハイライト」(1年間の楽壇の動き、来日演奏家等の回顧番組)が消滅したのはいつだったろう?

 買ったままで気になっていたディスクが少し聴けた。

シギスヴァルト・クイケン(指揮)ラ・プティット・バンド、ハイドン;交響曲第104番「ロンドン」(DHM)
第1楽章冒頭から、古楽器アンサンブル特有のオルガン的和音の迫力が凄まじい。この部分はモダン・オーケストラでは絶叫調になってしまってうるさく感じるから、これだけで気に入ってしまった。その後の静かな部分の緊張感も素晴らしい。主部に入ってからの推進力・立体感も最高で、展開部の迫力など、なまじのモダン・オーケストラ録音をはるかに上回る。再現部を始める前の*間*の取り方もセンスを感じる。第2楽章では木管・ホルンが美しい。特に終結のホルン! 第3楽章では主部のリズムの軽快さに驚かされる。トリオへの入りはちょっと芸がない感じ。フィナーレは第1楽章と同様、立体感と迫力に満ちたもので、とりわけティンパニの強打が効果的。古楽器アンサンブルのティンパニは、いかにもケトルという音をたてるのが常だが、ラ・プティット・バンドはちゃんとタイコの音がしている。これは是非お聴きいただきたい録音。
フィリップ・ヘレヴェーヘ(指揮)シャンゼリゼ管木管アンサンブル、モーツァルト;セレナーデ;第10番「グラン・パルティータ」・12番「ナハト・ムジーク」(HMF)
これは中古音盤堂奥座敷「奥座敷同人 1997年の5盤」で鈴木@Syuzo's Homepageさんが第4席に推された盤。これらの曲は古楽器アンサンブルのメリットが大きく、CDも多種あるが、これが最美ではないか。すっきりと抜け切った音色だけで、「モーツァルトを聴く幸福」が身に沁みる。
エドゥアルド・ファン・ベイヌム(指揮)アムステルダム・コンセルトヘボウ管、ドビュッシー;夜想曲(Philips)
1958年ステレオ初期の録音。フォルテはさすがに辛く、テープ・ヒスも盛大に聞こえるが(これは敢えてカットしていないのだろう)、周波数レンジは十分広く、全盛期のコンセルトヘボウを偲ばせる美しい音を聴くことができた。特に木管群の音色にはパステル・カラー的な色合いが感じられる。
ベイヌムの音楽は実に明晰、普通なら埋もれてしまう木管などの細かな動きもくっきりと耳にすることができる。さりとて雰囲気も失わず(これはオーケストラの音色も素晴らしい)、とりわけ「雲」が素晴らしい出来栄え。「祭り」は中間部がややミリタリー調、「シレーヌ」は女声の音型の扱いに疑問なしとしない。
ジャック・ズーン(Fl)コンバッティメント・コンソート・アムステルダム、ヴィヴァルディ;Fl協奏曲作品10全曲ほか(Canyon)
この笛は素晴らしい。使用楽器は木製というだけで詳細明かでないが、古雅な音色と十分に感じた音楽を堪能した。この曲集では有田正広盤と双璧といえよう。
チー・ユン(Vn)ヘスス・ロペス・コボス(指揮)ラロ;スペイン交響曲&サン・サーンス;Vn協奏曲第3番(DENON)
こういう外向的な面白さが魅力の曲だとチー・ユンの良さが出にくいようだ。ラロの1楽章など、「背伸びをしても手が届かない」感じを受ける。中では2楽章の小粋さが光っていた。
サン・サーンスの方が、まだしも彼女向きで、美質の一つである魅力的な節回しも、こちらの方がより良く発揮できていた。
なお、ロペス・コボスの伴奏も、ルーティン・ワークでない、メリハリをつけた見事な出来。
カール・シューリヒト(指揮)ウィーン・フィル、モーツァルト;レクイエム(archiphon)
1962年6月19日、ウィーン・聖シュテファン大聖堂での伝説的ライヴ録音。この演奏には鈴木@Syuzo's Homepageさんも浮月斎@Pseudo-POSEIDONIOSさんも高い評価を与えておられるが、もう、至高の名演と呼ぶしかないように思われる。
冒頭のひきずるような音型から、ウィーン・フィルの哀しみを感じきった音色が胸を打つ。ディエス・イレの迫力も凄まじく、ラクリモサやアニュス・デイの慰藉の音楽も深い。
独唱が少し古風な、身振りの大きい歌唱なのが残念。

12月28日(日): クリスマスは上記の見出し文字でお茶を濁してしまったので、新年には初春にふさわしいトップページを御覧に入れたいと思い、種々試作中です。
 なお、中古音盤堂奥座敷に「奥座敷同人 1997年の5盤」がアップされました。7人の同人が一癖も二癖もあるセレクションを競って(?)います。どうぞ御覧ください。

 聴いておきたいディスクは山ほどあるが、雑事にかまけて、なかなか思うようには進まない。

フランス・ブリュッヘン(指揮)18世紀オーケストラ、ハイドン;交響曲第90番(Philips)
1984年の録音というから、18世紀オーケストラの初期の録音である。この頃からライヴ録音だが、後のものと違って、演奏会的雑音が盛大に入っている。あるいはそれと同じことかもしれないが、各楽器の音が実に瑞々しい。木管楽器あたりのミクスチュアが、とても美しく聴こえるのである。このコンビを始め、古楽器アンサンブルの録音が出回り始めた頃の感激を、久し振りに思い出させてくれた。弦楽器の合奏能力も、最近よりも上だったのではないか? とりわけ第4楽章のスウィング感が素晴らしい。
シギスヴァルト・クイケン(指揮)ラ・プティット・バンド、ハイドン;交響曲第103番(DHM)
曲頭のティンパニは、最初に強烈なアクセントを置いてゆっくりデクレッシェンドしていく奏法。序奏のテンポも随分ゆっくりである。主部に入ると強拍を効かせたフレージングがフレッシュな音楽を奏でてゆく。ロンドン・セットは現代楽器の大編成で堂々とやるとベートーヴェンに近く響くが、この演奏では正反対。第2楽章の主題はノン・ヴィブラートの弦が美しく、合いの手の木管も魅力的な音色を聴かせる。
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)レオポルト・ハーガー(指揮)モーツァルト;協奏交響曲K364ほか(DENON)
これまで聴いてきたこのシリーズではカントロフのヴァイオリンに満足してきたが、K364くらいになると、清楚端正だけでは表現しきれない内容を曲が持っているように感じる。これはヴィオラのウラディミール・メンデルスゾーンについても同様。
花岡和生&篠原理華(Rec)ブラヴェ編;「小品集」(trout)
まことに心安まる音楽である。リコーダーの重奏というと音程の不安定さが気になるのが普通だが、ここではあまりそれを感じさせない。バス・リコーダーなど扱いづらかろうと思うのだが、立派なもの。曲の方も、フランス・バロックらしく地味ながらも美しい旋律がどんどん紡ぎ出されてゆくという趣である。巧まずして「癒し」系のディスクになっている感じ。アルト・リコーダーでは甲高くなってしまうかもしれないから、楽器の選択時点で成功しているといえよう。

12月26日(金): 明日から1月4日まで年末年始の休日。溜っていた大物ディスクを聴くこと、表の更新をすること等が課題である。曜日の関係で休みが長い分、年明けの仕事の日程は、きつくなる模様。

 今年最後になるはずのCD屋回り。

ジョス・ファン・インマゼール(指揮)アニマ・エテルナ、シューベルト;交響曲第6・8番(Sony Classical)
このコンビがChannel Classicsで録音したメンデルスゾーンにはあまり感動しなかったので、新譜の時は見送ったのだが、『レコード芸術』1月号のレコード・アカデミー賞選考記事で、宇野功芳氏が「聴けば聴くほど素晴らしい名演」「『未完成』はワルターやムラヴィンスキーのステレオ盤と並ぶベスト3」と絶讃しておられた。斉諧生は永らく宇野師の評論の信奉者だったが、『レコ芸』で交響曲評に異動されてからというもの、ちょっと首を傾げることが多くなり(例えば、中古音盤堂奥座敷で酷評したティーレマンのベートーヴェンに、宇野さんはかなり好意的な評を執筆していた。)、近頃は推薦盤も特に買わなくなってきている。しかし、シューリヒトを抑えてベスト3に挙げるといわれれば、ちょっと聴いてみなければと思い、購入したもの。
ハンス・ツェンダー(指揮)ザールブリュッケン放送響、マーラー;交響曲第7番(cpo)
ハンス・ツェンダー(指揮)ザールブリュッケン放送響、フェルドマン;協奏作品集(cpo)
ツェンダー・エディションは、前にモーツァルト・ベートーヴェン・シューマンのほかマーラー;交響曲第9番を購入、しかし未聴のまま。中古音盤堂奥座敷同人の間で評判のよかったマーラーの7番とフェルドマンを追加購入。このエディションについては『In Tune』誌1/2月合併号に詳しい記事があり(ツェンダーのインタビューも掲載)、この2枚も好評であった(評者はヒューウェル・タークイ)。
佐渡裕(指揮)コンセール・ラムルー管、イベール;管弦楽曲集(NAXOS)
6月29日にザ・シンフォニー・ホールで佐渡さんが大阪センチュリー響でイベールのディヴェルティスマンを振ったとき、前説で「ラムルーとイベールを録音して、今秋発売予定」と喋っていたので、店頭に並ぶのを待っていたもの。NAXOSだが、ライナーノーツがフランス語のみ。しかし国内発売も近いだろう。「バッカナーレ」「ディヴェルティスマン」「祝典序曲」「海の交響曲」「寄港地」を収録。
ヨハンナ・マルツィ(Vn)バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ全曲(レキシントン、LP)
中古音盤堂奥座敷同人による「今年の5盤」というコンテンツが今日明日にも公開されるが、そこで鈴木@syuzo's homepageさんが第1位に推しておられたので是非にと思い、購入。EMI原盤を日本のレーベルがライセンスを取得してLP3枚に復刻したディスク。CDでも現役だが、ヴァイオリンはできることならLPで聴きたいので探してみたところ、京都・四条烏丸の”La Voce”さんで在庫しておられた。さすが。
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響・合唱団、シューベルト;ミサ曲第2番D167&ブルックナー;テ・デウム(PILZ)
24日に書いたPILZのケーゲルがもう1点、手に入った。ともに1979年4月3日のライヴ録音である。
アストル・ピアソラ(バンドネオン)「レジーナ劇場のピアソラ」(アルゼンチンBMG)
これも中古音盤堂奥座敷同人による「今年の5盤」で工藤さんが強力に推薦された1枚。この録音は、かねて野々村さんもピアソラのベストを争うものとして御推奨、一部は9月に購入した国内盤「アストル・ピアソラ・ベスト」に収録されていた。これはオリジナル(?)のアルゼンチン盤。1970年5月19日のレジーナ劇場ライヴの9曲と1973年頃録音の4曲を収録。

12月25日(木): 職場の忘年会、2次会はお決まりのカラオケ・スナック。なぜかクリスマス・ソングが多く入っており、「ホワイト・クリスマス」のあと「Joy to the World(諸人こぞりて)」を頼んだら、異様にアップ・テンポのロック風アレンジで、息が上がってしまった。(@_@)

 忘年会の行き掛けに中古CD屋で1枚購入。

小澤征爾(指揮)水戸室内管、ラヴェル;「クープランの墓」&ストラヴィンスキー;「プルチネルラ」組曲ほか(Philips)
小澤には、さほど思い入れがあるわけではないが、こういうレパートリーには期待が持てる感じがする。水戸室内管−ほとんどサイトウ記念室内管−にも同様に期待したい。なお、ゲスト奏者にはfgのダグ・イェンセンやhpの吉野直子らの名前も見える。

 御降誕祭


12月24日(水): 書店のCD−ROM本コーナーに『山藤章二の戯画テイメント−ブラック・アングル76〜96−』というのが並んでいたので買ってきた。
 もちろん、「週刊朝日を後ろから開けさせる」と異名をとった「山藤章二のブラック・アングル」のCD−ROMヴァージョン。20年間約1,000枚から秀作約750点を収録、年代・人物・発想・絵画手法・キーワードの5とおりの検索が可能。
 試みに「人物=金丸信」でサーチすると、15点が出てきた。彼は作者をして「どんな動物にでも似せて描ける」と感歎させたモデルだった。
 画質も優秀、モデル当てクイズ等の余興もあり、楽しめそうなソフトである。ただし、定価5,800円はチト割高感あり。

 カップルの波を掻き分けてCD屋を回る。

ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響、モーツァルト;交響曲第40番&ブラームス;交響曲第2番(PILZ)
消滅したはずのPILZのCDが2点、店頭に並んでいた。ともにケーゲルで、このディスクとブルックナー;交響曲第8番。両方とも最初出たときに買ったのだが、モーツァルト&ブラームスは、ろくに聴かないまま中古屋に売り払ってしまって、後から臍を噛んだもの。
なお、ブルックナーの8番は、痛快なまでに金管とティンパニが鳴りわたる快(怪)演であったと記憶している。特に、いわゆる「ブルックナー指揮者」のブルックナーが苦手な方にお薦め。
花岡和生&篠原理華(Rec)ブラヴェ編;「小品集」(trout)
ブリュッヘンに師事した花岡と、その弟子の篠原(東京大学医学部出身とか)によるバス・リコーダー又はヴォイス・フルート(アルトとテナーの中間の音域を持つリコーダー)二重奏。ブラヴェが、自作、クープラン、ラモー等の曲をリコーダー二重奏に編曲した曲集である。
以前、『レコード芸術』誌上で皆川・服部両氏が褒めていたので、ずっと探していたのだが店頭では見つからなかった。先日、AVANTIのサイトで販売の案内を見つけ、E-mailで申し込んだところ送付されてきたもの。代金は郵便振替後払い。troutというのは花岡氏のプライヴェート・レーベルだそうだ。なお、前記AVANTIのサイトには篠原嬢のWebpageもある。
アルディッティSQ、リゲティ;弦楽四重奏曲第1・2番(Sony Classical)
中古音盤堂奥座敷でリゲティ・エディションの第3巻に当たるエマール(P)の練習曲集を議論していたところ、この弦楽四重奏の録音(エディション第1巻)が良いとのお薦めがあったので購入。

12月23日(祝): 立花隆『インターネットはグローバル・ブレイン』を読了。内容のメインは『Views』誌に連載された「インターネットはどこでもドア」(電網上にも「立花隆の電脳広場」としてアップされている)の加筆再録。他に雑誌での対談の類を収録、特にビル・ゲイツとのものが面白い。
 「フォン・ノイマン型コンピュータは早晩物理的限界に達する。そのブレイク・スルーは何か。ニューロ・コンピュータはどうか。」と迫る立花に対し、「『半導体のマジック』はこれからも続き、限界は来ない。」と言い張るゲイツ。
 それはそうだろう、フォン・ノイマン型コンピュータの限界=ウィンテル帝国の黄昏に違いない。

 東京・銀座の「ハンター」の地方出張セールへ行く。本当は初日の一昨日に行きたかったが、風邪気味で自粛していたもの。やはり客も少なく、収穫も薄かった。いつものCD屋を覗いて帰ると、追いかけるように通販業者からLPが届いた。

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)コンセール・ラムルー管、ハイドン;交響曲第103・104番(仏Philips、LP)
1958年頃の録音。マルケヴィッチはEMIにフランス国立放送管と101・102番を録音していた。廉価盤しか持っていなかったので、仏オリジナル盤を購入したもの。マルケヴィッチは、この頃、Philipsにベートーヴェン;交響曲第1・5・8・9番を録音しているので、このハイドンともども良質なCD復刻を望みたい。
若杉弘(指揮)ザールブリュッケン放送響、ブルックナー;交響曲第2番(ARTE NOVA)
若杉のブルックナーは、現在、N響との全集がBMGで進行中だが、これと9番がARTE NOVAから出ている。N響盤には今のところ上出来のものがないが、以前、TVで視聴した京都市響との8番が良く(もちろん京都ローカルの放送)、マーラーよりもブルックナーに適性を示す人ではないかと期待している。
ユージン・オーマンディ(指揮)フィラデルフィア管、シベリウス;交響曲第4・5番(CBS、LP)
ジャケットに作曲者の生誕90年記念とあるので、1955年頃の録音であろう。もちろんモノラル。ハンターで見つけたのだが、この盤は通販業者のカタログでオーダーしたら売れていた、ということを2回やっているので、ようやく入手できて嬉しい(しかも1,500円と格安)。なお、オーマンディは、生前のシベリウスから高く評価されていたと伝えられており、後年、RCAで1・2・5・7番のステレオ録音を果たしていた。
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)レオポルト・ハーガー(指揮)モーツァルト;協奏交響曲K364ほか(DENON)
「カントロフのモーツァルト全集を中古かバーゲンで揃えるプロジェクト」、久々の第5弾。コンチェルトーネK190をカプリング。ハンター。
チー・ユン(Vn)ヘスス・ロペス・コボス(指揮)ラロ;スペイン交響曲&サン・サーンス;Vn協奏曲第3番(DENON)
若手女流ヴァイオリニストは浜の真砂と星の数ほど出現しているので、あまり買わないのだが、チー・ユンは何となく全録音を揃えている。趣味の良さを感じる人だ。なお、電網上に公式サイトあり(→Violinist Chee-Yun)。ハンター。
マーカス・トムソン(Va)デヴィッド・エプスタイン(指揮)マルタン;ヴィオラ・ダ・モーレと弦楽オーケストラのためのソナタ・ディ・キエザほか(TURNABOUT、LP)
愛惜佳曲書」に取り上げたマルタン;オーボエ・ダ・モーレとオルガンのためのソナタ・ディ・キエザの異版で、当初のオルガン・パートを1952年に弦楽合奏に編曲したもの。他にヒンデミット;シュヴァーネンドレーアー、ブロッホ;ヘブライ組曲を収録。1970年代中葉の録音で、当時多かったクオドラフォニック・エンコードである。ハンター。
ギドン・クレーメル(Vn)ユーリ・スミルノフ(P)コレッリ;Vnソナタ&ショーソン;詩曲ほか(MELODIA、LP)
1970年のモスクワ録音。クレーメルの初期録音は、最近は演奏しなくなった曲を含んでいるので、なかなか見落とせない。ショーソンは再録音があるが、コレッリ(作品5の1)やハイドン(変ホ短調ソナタ)はたしか唯一の録音。ハンター。
セルジュ・ブラン(Vn)アントニオ・ルイズ・ピポ(P)アリアーガ;ハンガリー風変奏曲&グラナドス;Vnソナタほか(ARION、LP)
「スペインの音楽」と題されたアルバム。18〜20世紀の曲を収める。お目当てはアリアーガ。この夭折の作曲家(1806〜1826)の、そのまた初期作品らしい。アリオンの優秀録音にも期待。ハンター。
ジャック・ズーン(Fl)コンバッティメント・コンソート・アムステルダム、ヴィヴァルディ;Fl協奏曲作品10全曲ほか(Canyon)
ボストン響の首席に就任するズーンによる作品10。以前、『レコ芸』でヴィヴァルディには点が辛い皆川達夫氏が珍しく褒めていたので気になっていた。ハンター。
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)アンサンブル、ピュイグ;「痕跡」(BYG、LP)
レイボヴィッツの変な録音をハンターで見つけたので購入。1930年生れのミシェル・ピュイグ(Michel Puig)という作曲家の1961年の作品で、秋山邦晴氏の解説によれば(なんと国内盤なのである)、「<ワルシャワの生き残り>のアルジェリア版」らしい(当時、フランスはアルジェリアで独立運動側と内戦状態にあった)。なお、このBYGというレーベル、アーチー・シェップなどジャズ系の録音が多いようだが、何故か「ビリケンさん」をマークにしている。

 早速何枚かを聴く。

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)コンセール・ラムルー管、ハイドン;交響曲第104番(仏Philips、LP)
マルケヴィッチはラムルー管のフランス的だらしなさに手を焼いたらしいが、この録音を聴く限りでは、なかなかに気合の入った演奏を聴かせる。ベートーヴェン的といっていい、硬派のハイドンである。
ユージン・オーマンディ(指揮)フィラデルフィア管、シベリウス;交響曲第5番(CBS、LP)
入手に苦労した盤というのは、えてして演奏に感激しないものだが、これもそう。1955年当時にこれだけの水準のシベリウスを振っていたのだから偉いといえば偉いけれど、どうしても先日のベルグルンド盤と比較してしまう。
マーカス・トムソン(Va)デヴィッド・エプスタイン(指揮)マルタン;ヴィオラ・ダ・モーレと弦楽オーケストラのためのソナタ・ディ・キエザ(TURNABOUT、LP)
これは、シェレンベルガー盤に及ばない。奏者・指揮者の力量不足であろう。例えばECMのキム・カシュカシュアンとD・R・デイヴィスの組合せなどで、聴いてみたい。
ラルフ・ホームズ(Vn)リチャード・バーネット(FP)フンメル;Vnソナタ集(AMON RA)
先日聴いたディーリアスが良かったホームズの演奏を聴く。このフンメルは1983年のデジタル初期録音で、当時としては珍しい歴史的楽器による演奏。ホームズは1736年のストラディヴァリ、バーネットは1826年のグラーフを使用。曲は、これといった濃い特徴はないが、それなりに美しい旋律に彩られ、ホームズも趣味のよい音楽を聴かせる。
セルジュ・ブラン(Vn)アントニオ・ルイズ・ピポ(P)アリアーガ;ハンガリー風変奏曲&グラナドス;Vnソナタほか(ARION、LP)
期待のアリアーガは、やはり若書きで、交響曲や弦楽四重奏のような味わいには欠ける。むしろグラナドスがよかった。意外なことに、民俗色は抑えられており、フランス近代作のような淡彩の美。
タスミン・リトル(Vn)ピアース・レイン(P)ディーリアス;Vnソナタ(CONIFER)
習作ソナタ(1892年)を聴く。なかなかに充実した作品で、番号付きのソナタにひけをとらない出来といえよう。田園牧歌的な旋律に、ディーリアスの個性がくっきりと刻印されている。タスミン嬢の独奏も、他の曲同様、きちんとしたもの。

12月21日(日): 伊丹十三氏の訃報に接する。クラシック音楽にも造詣が深く(『タンポポ』ではリスト;交響詩「前奏曲」がうまく使われていた。)、自らヴァイオリンをよくした。黒沢清監督『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(洞口依子のデビュー作、加藤賢崇がはりきっていた)では、伊丹氏扮する心理学教授がヴァイオリンを演奏するシーンが、わざわざ挿入されていたものだ。

 中古音盤堂奥座敷の各同人が、それぞれ「今年の5盤」を選定するとの企画があり、いろいろ聴き返しながら想を練る。

パーヴォ・ベルグルンド(指揮)ヨーロッパ室内管、シベリウス;交響曲第5番(Finlandia)
異色の、しかし誠に重要な演奏である。
この曲は元来、自分の生誕50年祝賀演奏会のために書かれたもので、金管のファンファーレ音型を中心に祝祭的な雰囲気を強調した録音も少なくない。
ベルグルンドとヨーロッパ室内管は、比較的小編成をとり(第1Vnから12−10−8−6−4)、管楽器も含めて、各声部が極めてクリアに響く。幻想味やフィンランドの風土感が表出されていた前回のヘルシンキ・フィルとの録音よりも、純粋にシベリウスの清冽な音楽世界が立ち現れる。
前記のように、この曲には祝祭的性格や、ほの暗い幻想、北欧の自然の音化といった要素も捨てがたくあることから、このディスクがベスト盤とは断言しづらいが、シベリウスの交響曲第5番を聴く上で欠かすことができない、極めて重要な録音であると言える。
惜しまれるのは、フィナーレ終結のあたり、金管の音色が生々しく、奏者の共感がやや不足するかと思える点である。なお、弦・木管は全曲を通じて見事な出来栄えだ。
タスミン・リトル(Vn)ピアース・レイン(P)ディーリアス;Vnソナタ全集(CONIFER)
第1〜3番を聴く。やはり晩年の作である3番が佳い。民謡風の主題が懐かしく、自然への想いが伝わってくる。ただ、タスミン嬢の独奏がやや健康的にすぎるか、と思えたので、バランチック盤(EMI)、ジョーンズ盤(Meridian)のCD2点とホームズ盤(Unicorn)のLPを聴いてみた。
独奏ではホームズが群を抜いている。曲への共感の度合いがまったく違うのである。次いではリトル盤。メカニックがしっかりしているのと、変に出しゃばらないレインのピアノも好もしい。ジョーンズ盤は、いかにも女性的な味があり、人によってはリトル盤の上に置くだろう。
ホームズ盤はCDになっているはずなので、お聴き願えればと思う。ピアノはエリック・フェンビー、使用楽器はディーリアス遺愛のものとか。

12月19日(金): 『レコード芸術』1月号を購入。レコードアカデミー賞が発表されているが(詳細は音楽之友社のサイトでどうぞ)、どうもパッとしない顔ぶれ。

 CD屋でNAXOSのサンプラーを貰った。サンプラーは場所塞ぎになるだけなので謝絶するのだが、これはCD-ROMとしても使えるというので、有難く頂戴。
 ところが、何のことはない、カタログとレーベルの歩み(いずれも英語)がPDFファイルで入っているだけだった(御丁寧にAcrobat Readerまで付いている。)。

ルイ・フレモー(指揮)ロンドン響、ベルリオーズ;幻想交響曲(Collins)
一時期のCollinsはアレクサンダー・ギブソンや、このフレモーといったようなあまり日の当たらないベテラン指揮者を起用してくれていた。このディスクも以前から気になっていたが買わずにきていたところ、中古格安で見つけたので購入。実は、来月の中古音盤堂奥座敷・試聴会で、パレー指揮の幻想交響曲を取り上げることになっており、比較試聴の材料に、という目論見もある。
ザ・サワー・クリーム、「理性の情熱」(GROSSA)
フランス・ブリュッヘン、キース・ベーケ、ワルター・ファン・ハウヴェのリコーダー三人衆「ザ・サワー・クリーム」に佐藤豊彦(Lute)とイザベラ・アルヴァレズ(Sop)が加わったCD2枚組。1993・94年の録音で、ギョーム・ド・マショーの「我が終りは我が始まり」(音楽の回文として有名)に始まり、ブリュメル、コーニシュ、タイ、ジル、イザーク、ジャヌカン等ときて大バッハで締め括っている。どうもベーケが企画の中心にいるようで、バッハの項にはベーケ編らしい"Eclipse"という曲が加わっている。

12月15日(月): 『MJ無線と実験900号記念別冊 300Bパワーアンプ傑作選』(誠文堂新光社)が書店に並んだので早速購入。中味の大半は、300Bアンプの製作例を『無線と実験』のバックナンバーから再録したもの(図版・写真は文字どおりの復刻)。伊藤喜多男、浅野勇など故人となられた老大家の記事も読むことができる。
斉諧生の現用アンプはプリ、メインとも真空管の自作(ただしキット)であるが、球派としては、やはり「いつかは300B」。
 直熱三極管シングル・アンプでフルレンジ・スピーカーを鳴らすというのをやってみたいものだが、まぁ、その前に専用リスニングルームを備えた*家*が必要だろう。

 ベーレンライター社の輸入楽譜が20%引きというので、新モーツァルト全集のポケット・スコアでK299K361を購入。近頃ちょいちょい、こうしたセールをやっているので有難いが、常日頃の値段は何なんだという気もしないではない。

タスミン・リトル(Vn)ピアース・レイン(P)ディーリアス;Vnソナタ全集(CONIFER)
タスミン嬢はEMIにポピュラー名曲、DECCAにディーリアスのVn協等のイギリス音楽を録音していたが、今回はCONIFERに登場。ディーリアスのソナタなら、通常は(といっても録音は多くない)第1〜3番を収録するのだが、このディスクは1892年作曲の習作を含めているのが*売り*。まぁ、とにもかくにもディーリアスのVn曲ならば買うしかない。(習作のソナタは、前にmeridianから出たVnとPのための曲全集にも入っていた。)
それにしてもイギリスのヴァイオリニストが少なくなったと思う。皆、古楽器方面へ流れていったのだろうか。ラルフ・ホームズの早世が惜しまれる(Unicornに録音したディーリアスのVnと管弦楽のための曲集、特に「伝説曲」は是非御一聴を。泣かせます。)。
注) ヴァイオリニストの名前の原綴はTasmin Little、ファースト・ネームの読みは「タズミン」かもしれないが、とりあえず清音で記した。

12月14日(日): 昨日に引き続き、家人のPCのセットアップに午後までかかってしまった。
 キャノンのワープロ・ソフトは、なかなか面白く、特にワープロ専用機のFDが読み書きできるのには目を見張った。斉諧生も平成3年頃まではキャノワードを愛用していた。その後、職場で東芝ルポやリコーも使ったが、専用機ではキャノンが一番だったと思う。

 中古音盤堂奥座敷の試聴会で取り上げるリゲティを聴く。

ピエール・ローラン・エマール(P)リゲティ;「練習曲集」ほか(Sony)
1985年以降の「練習曲集」と1950年代初めの「ムジカ・リチェルカータ」を収録。前者はナンカロウの自動ピアノやアフリカ民俗音楽のポリ・リズム等の影響を受けた作品、後者はバルトークやストラヴィンスキーの延長線上の曲集と、リゲティらしくない(?)作風で統一されているディスクである。ライナーノートはリゲティ自身が執筆。
エマールはアンサンブル・アンテルコンテンポランの首席ピアニストだった奏者、音色の多彩さでは凡百のピアニストを凌ぐと思われる。前記のとおり作風も*ゲンダイオンガク*らしくないものなので、ピアノ好きの人にはお勧めしたい録音である。
ピエール・モントゥー(指揮)ボストン響団員、ドリーブ;「コッペリア」抜粋(英EMI、LP)
そういえば、この曲など新録音の話をさっぱり聴かない。昔はポピュラー名曲扱いだったものだが。斉諧生が在籍した高校にはオーケストラ部があり、毎年の文化祭の大トリを飾っていたが、あるとき、これを取り上げたところ、場内放送を担当した某先生が(普段から読み違えの多い人だったのだが)、「ペッタリコ」とアナウンスしたという。
モントゥーの指揮は古き佳き時代を偲ばせるゴージャスなもの、音響的には少々寂しいものの、ソロなどは味わい十分。

電網四方八通路」に、中古音盤堂奥座敷の賓客に加わられた山下さんの"Espressivo"を追加。


12月13日(土): 家人の職場にネット環境が整備されたことから、ボーナスで自分のPCを買うと言い出し、今日は日本橋へおつき合い。周囲との関係もあって、98ノートを買うことにし、アウトレット価格のPC9821Nr15/S10(Pentium150MHz)を購入しました。
 これまでキャノンのワープロ専用機を使っていた関係で、同社が出しているワープロ・ソフトが欲しいとのこと、日本橋中を探し回って、やっと見つけました。
 御本人はPC経験がないので、セットアップは人任せ。今、これを書きながら、横に置いて、作業しています。

 

尾高忠明(指揮)読売日響、武満徹;Twill by Twilight&松村禎三;P協第2番ほか(ASV)
尾高さんはBBCウェールズ響とCHANDOSに録音していたが、読響とASVに登場したので、店頭で見つけて驚いた。表記の曲以外に三善晃;NOESIS、吉松隆;朱鷺に寄せる哀歌を収録。武満の世界初録音はともかく、松村さんの曲の新録音はぜひ聴きたいと思って購入(Pは野島稔)。
クリフォード・カーゾン(P)ジョージ・セル(指揮)ブラームス;P協第1番ほか(DECCA)
第1番はあまり好きな曲ではない。冒頭の音型が、どうも恫喝的−というか虚仮威し−なのが気に入らず、通して聴いたこともほとんど無い。しかしながら浮月斎大人はじめ中古音盤堂奥座敷では高い評価の演奏なので、期待して購入。
アレクサンダー・マルコフ(Vn)ヴュータン;Vn協第2・4・5番(ERATO)
マルコフという人は全く知らないが、ヴュータンとかヴィニャフスキといったロマン派のショウ・ピース的協奏曲が最近流行らなくなっているところ、敢えて録音した心意気を買って、出来栄えに期待して購入。
「モーリス・ジャンドロンの芸術」(Ph)
カザルスの高弟であり、晩年は指揮者としても活動した(カメラータに群響を振ったブラームス;交響曲第4番他がある)ジャンドロンの、1960年代の演奏を収録したCD3枚組。作曲家ジャン・フランセをPに迎えてのアルペジオーネ・ソナタ、ドビュッシー;Vcソナタ等に期待して購入。
グスタフ・シュマール(Vn)ギュンター・コーツ(P)ブラームス;Vnソナタ全集(BerlinClassics)
シュマールという人も知らないが、旧エテルナでかなりの曲を録音しており、ひとつ聴いてみようと購入。
ローラン・コルシア(Vn)イザイ;無伴奏Vnソナタ全集(LYRINX)
キャノンのワープロ・ソフトを探して日本橋をうろうろしたあげく、ヤマギワのソフト館(電器街の北端です)まで行って、やっと見つけた。その1FがCD売場になっていて、輸入盤@900円のワゴンセールをやっていて、そこで見かけたもの。コルシアというのも知らない人で、イザイの無伴奏とは、近頃の流行に便乗した気味もあるが、LYRINXは結構面白いレーベルなので、そのあたりに期待して購入。
サー・ジョン・バルビローリ(指揮)ヴェルディ;歌劇「オテロ」(EMI)
タイトル・ロールはジェイムズ・マクラッケン、デスデモーナはギネス・ジョーンズ、イヤーゴはディートリヒ・フィッシャー・ディースカウという、とてもイタリア・オペラらしからぬ顔合せだが、バルビローリの棒に期待して購入。
シャルル・ラヴィエ(指揮)"Liturgie pour un Dieu mort"(INA)
これもヤマギワのワゴンで。正体不明の曲だが(斉諧生はフランス語が解らないのです)、ラヴィエはルネサンス期の合唱曲で名盤をつくった指揮者なので(ピエール・ド・ラ・リューのレクイエムとか、シャンソン集が佳かった)、美演を期待して購入。
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響ほか、オルフ;「カルミナ・ブラーナ」(BerlinClassics)
ケーゲルの「カルミナ」といえば、3部作を収めた2枚組もあるが、それは1974年録音。このCDは1960年頃に単独で録音したもので、浮月斎大人によれば聴き応えは新録音を上回るという。大いに期待して購入。

12月12日(金): CLASSICAさんがリンク集を更新された。今回はオーケストラの追加はない模様なので、当「電網四方八通路」も、とりあえず、そのまま。

 CLASSIC COMPACT DISCS というアメリカの会社からDECCAやRCAのステレオ初期録音のCD復刻(正規ライセンス)が出ている。20ビットADコンバーター、24金蒸着CD、オリジナル・ジャケット使用という凝りようだが、店頭では3,000円近い値付けで少々顰蹙もの。あまり手を出さずにいたが、今日覗いたCD屋で@1,000円で特売中、3枚買ってきた。

ペーター・マーク(指揮)ロンドン響、メンデルスゾーン;交響曲第3番「スコットランド」ほか(CLASSIC COMPACT DISCS)
DECCA録音。LP時代、この曲の代表盤の地位を守り続けた演奏だった。
ジャン・マルティノン(指揮)ロンドン響、ショスタコーヴィッチ;交響曲第1番・バレエ組曲「黄金時代」(CLASSIC COMPACT DISCS)
RCA録音。フランス人指揮者は一般にロシア物も得意とする。マルティノンもステレオ初期にVPOと録音した「悲愴」が有名だが(「だったが」かな?)、スラヴ色に寄り掛からないシャープな演奏を聴かせる。「黄金時代」も面白い曲だったと記憶する。
ダヴィード・オイストラフ(Vn)ブルッフ;スコットランド幻想曲&ヒンデミット;Vn協(CLASSIC COMPACT DISCS)
DECCA録音。ブルッフはハイフェッツ盤と双璧の代表盤で、ヒンデミットは作曲者の指揮。
ギル・シャハム(Vn)ミハイル・プレトニョフ(指揮)グラズノフ;Vn協&カバレフスキー;Vn協ほか(DGG)
これは新譜。シャハムに特別な思い入れはないが、カバレフスキーが珍しい。この曲がメジャーから出るのは、デビューした頃のズッカーマンのCBS録音以来ではないだろうか。

12月11日(木): ここ数日、どうもネットが混雑しているのではないか。特に、アメリカのサイトに接続しにくくなっているような気がする。

 ひさしぶりに”La Voce”を訪ねる。モントゥーやマルケヴィッチらの初期盤が何点か入荷していた。ここはそう高くはないが、それでも欲しいだけ買うわけにはとてもいかない。そうそう、アンセルメのワーグナー集なんてのも見かけた(DECCAのSXLシリーズ)。

ピエール・モントゥー(指揮)ボストン響団員、ドリーブ;「シルヴィア」・「コッペリア」各抜粋(英EMI、LP)
原盤はもちろん米RCAで、英EMIがライセンスを得てプレスしたもの(ALP1475という番号が付いている)。モノラル録音だが、グルーヴガード(盤の縁の盛り上がり)があるので、最初期のプレスではない可能性が高い(そのためか値段も手頃だった)。
モントゥーはディアギレフのロシア・バレエ団で活躍するなど、バレエ指揮の経験も豊富だったから、お得意のレパートリーが聴ける録音というわけである。
これまで疑似ステレオの安っぽい再発盤しか架蔵していなかったので、良質の英盤に買い換えたもの。

12月10日(水): 書店には雑誌の新年号が並び、新聞には1年の回顧が掲載されるようになってきた。当「斉諧生音盤志」も何か考えねば。

 

「サー・トーマス・ビーチャム アメリカ・コロンビア録音集成−1942〜1952−」(Sony Classical)
Heritageシリーズの新譜。2枚組だが、目玉はニューヨーク・フィルを振ったシベリウス;交響曲第7番(r.1942)だろう。同曲の初録音はクーセヴィツキー&BBC響(r.1933、Biddulph等でCD復刻)だが、それに次ぐものではないだろうか。なお、ビーチャムはステレオ最初期にロイヤル・フィルで再録音している(EMI)。
その他には、メンデルスゾーン;交響曲第4番、チャイコフスキー;イタリア奇想曲(2種)、ビゼー;カルメン組曲等を収録。いずれも彼の十八番だ。
ロッテ・レーニャ、ヴァイル;「7つの大罪」ほか(Sony Classical)
Heritageシリーズの新譜。ロッテ・レーニャは、言うまでもなく、作曲者クルト・ヴァイルの夫人で、ヴァイルの歌の多くを創唱した。このCDにはブリュックナー・リュッゲベルク指揮の「大罪」のほかに「モリタート」(いわゆる「マック・ザ・ナイフ」)、「海賊ジェニー」、「ビルバオ・ソング」等12曲を収録している(録音は1955〜56)。

12月8日(月): 円安もついに1$=130円に。おかげでCD屋の輸入盤価格もジリジリと上昇、レギュラー・プライス2,300円水準に戻りつつある。マイッタなぁ。

 

「北ドイツ放送響の50年−ハンス・シュミット・イッセルシュテット時代1945〜1971−」(NDR)
昨日の記事にも書いたシュミット・イッセルシュテットと北ドイツ放送響の、26年間の録音記録のダイジェストを収めたCD2枚組。創設50年記念とすれば一昨年の製作の筈だが、日本で出回ったのは最近かもしれない。ともあれ、ずっと知らなかったところ、"syuzo's homepage"の鈴木さんに情報をいただいたので、探してみたら京都のCD屋の棚にも納まっていた。いやはや、シュミット・イッセルシュテット・ファンとして恥ずかしいことであった。
14曲が収録されているが、すべて抜粋で、しかも正確な録音年月日がわからないのは残念。それでも、エルナ・ベルガーのコンスタンツェで「後宮からの誘拐」、「ペトルーシュカ」、ホルヘ・ボレットのリスト;P協第1番、モーツァルト;交響曲第40・41番などを聴くことができる。
これに限らず、放送局音源が、どんどん*正規に*発売されることを望みたい。
オスモ・ヴァンスカ(指揮)ラハティ響、シベリウス;交響曲第6・7番&交響詩「タピオラ」(BIS)
BIS2回目のシベリウス;交響曲全集がこれで完結。今回の録音の使用楽譜は、特別なものではなく、通常の出版譜の模様。でもこの全集、買ったものの聴けてない曲が大半。正月にでも集中して聴いてみようかと思う。雪でも積ってくれると気分が出るのだが。(^^;
ラハティ響のWebpageもありますので、どうぞ御訪問を。
イヴリー・ギトリス(Vn)アナ・マリア・ヴェラ(P)ブラームス;Vnソナタ第3番&ベートーヴェン;Vnソナタ第9番ほか(Voicelle)
ギトリスが新録音(1996年)を出すとは思わなかった。しかも、ブラームスの3番と「クロイツェル」という大曲の組合せで! (あとヒンデミットをカプリングしている。)ひょっとするとヨレヨレかもしれないとも思いつつ、これを聴き逃すわけにはいかない。
なお、Art Houseという名古屋の会社の製作で、碧南市エメラルド・ホールでのスタジオ録音(tel:052-203-9018)。
鈴木雅明(指揮)BCJ、シュッツ;「ガイストリッヒェ・コアムジーク」・「十字架上のイエス・キリストの7つの言葉」(BIS)
BCJがシュッツを録音、しかも名作中の名作2曲の組合せ! いずれもルドルフ・マウエルスベルガー&ドレスデン聖十字架教会合唱団の名唱が忘れられないし、「やはりシュッツはドイツ人でないと…」説もあるが、いやいや、BCJによる新時代の名演を期待したい。

12月7日(日): どうも風邪気味が抜け切らず、調子が上がらない。

 中古音盤堂奥座敷の試聴会でギュンター・ヴァントのブラームスをめぐる議論が賑やかになっているので、ヴァントの旧録音などを聴く。

ギュンター・ヴァント(指揮)北ドイツ放送響、ブラームス;交響曲第2番(1996年録音、BMG)
今回、試聴会の対象になっている新盤(ライヴ録音)。奥座敷では、表現の緻密さを肯定する意見と、木管の弱さや、表現全体の彫りの浅さを指摘する意見とが出ている。
ギュンター・ヴァント(指揮)北ドイツ放送響、ブラームス;交響曲第2番(1983年録音、DHM)
ヴァントが、テンシュテットと喧嘩別れした北ドイツ放送響の音楽監督になってまもなく着手したブラームス全集の1つに当たる、旧盤(スタジオ録音)。
旧盤から新盤まで十数年を経過しているが、やはり表現は酷似している。ヴァントは、その場の感興に応じて音楽を描いていくタイブとは全く異なり、克明なリハーサルを通じて、自分の脳裡にある音楽を緻密に具体化していくタイプであるといえる。また、開放的ではなく求心的な音楽づくりが目立つ指揮者である。
さて、議論になっている木管の弱さ、表現の浅さであるが、新旧両盤を聴いてみて、「これはヴァントが意図したものだ」という感じを持つ。
例えば、3楽章の冒頭は、通常、オーボエの音色を効かした木管合奏の愉しい音楽になるところである(初演時にこの楽章がアンコールされたくらいだ。)。ところが、両盤とも、木管のハーモニーは整っているものの、色彩感はほとんど消えているのだ。
また、同じ楽章の110小節以降では、通常、Flの旋律をメインに聴かせるのだが、両盤とも、FlとOb等の絡み合いの中で旋律は聞こえなくなっている。
また、1番では大活躍していたTimpも、ほとんど鳴りを潜め、通常なら効果的である第4楽章の344・345小節でも、強打させていない。
詰まるところ、ヴァントは2番という曲を、きわめて禁欲的に演奏しようとしているのだと思われるのである。
ギュンター・ヴァント(指揮)ケルン・ギュルツェニヒ管、ブラームス;交響曲第2番(Musidisc、LP)
ヴァントの最初のブラームス全集である。録音年代は表記がないが、おそらくモノラル末期(1950年代後半)と思われる。弦合奏の高域が少々ささくれるが、まずまず明快な録音である。
ヴァントは1912年生れだから40歳代の演奏ということになる。そのせいか、ここでは、木管の色彩感を強調し(録音もかなりオンでとっている)、実に元気な演奏である。終楽章の開放感も、北ドイツ放送響盤とは桁違いに強い。中低声を重視した弦合奏のバランスや、2・3楽章でのやや腰の重い歌わせ方は変わりないが。ヴァントの3種の中では、実は、これが最も気に入った。
なお、ギュルツェニヒ管は、ケルン歌劇場のオーケストラがレコード録音するときの名称で、ヴァントは長くケルン市の音楽監督の地位にあり、このオーケストラやケルン放送響をよく指揮していた。
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮)北ドイツ放送響、ブラームス;交響曲第2番(1967年録音、ACANTA、LP)
北ドイツ放送響の創設者、初代音楽監督(1945〜1971)であるシュミット・イッセルシュテットのブラームス全集の1枚。最初は1980年頃にアルティフォンというレーベルから、ほとんど北ドイツ放送局の私家盤の形で4枚組の交響曲全集(大学祝典序曲、ハイドン変奏曲、運命の歌を併録)が出、国内盤でも1981年に日本フォノグラムが発売した。これはACANTAが、1983年にヌヴーとのVn協を含めた5枚組で再発したもの。すべてハンブルク・ムジークハレでのライヴ録音である。
堂々たる正攻法で、田園牧歌の中に憂愁味を含ませて、間然とするところがない。ちゃんとしたステレオ録音だが、放送局のライヴらしく、ややぼやけ気味。とはいえ、ベース・ラインはきっちり聞こえてくるし、全体としては弦合奏中心のバランスながら、木管も埋もれずに、ちゃんと音色を効かせている。
斉諧生の好みとしては、2番は元気なのが良いのだが、こういう過不足ない名演に接すると、ただただ感心するほかはない。シュミット・イッセルシュテットは好きな指揮者で、「名匠列伝」に取り上げる予定にしているくらいだが、あらためて惚れ直した。
村治佳織(g)ロドリーゴ;g曲集「パストラル」(VICTOR)
繊細な和声が好もしい。早く「アランフェス協奏曲」を録音してほしいものだ。

12月6日(土): 風邪気味が重くなり、ほとんどダウンしていた。「少々の風邪くらい、モーツァルトを聴けば吹き飛んでしまう」という人もどこかにいたが、うーん、早くその境地に到達したいものである。

 

ヨハンネス・ヴァルター(Fl)ドレスデン室内合奏団、クヴァンツ;Fl協集 (BerlinClassics)
上機嫌な曲集の上機嫌な演奏。

 CompactDiscConnectionからCDが届く。

ミハエル・ルディ(P)ラヴェル;P作品集(EMI)
ピアノ独奏は買わないのが原則だが、浮月斎大人が中古音盤堂で褒めておられたので購入。「亡き王女のためのパヴァーヌ」「ラ・ヴァルス」「鏡」「夜のガスパール」を収録。

12月2日(火): いよいよ師走、ベートーヴェン;交響曲第9番の季節、ということになるのだが、生憎、聴きに行く予定は無し。たいてい合唱団がアマチュアなので、どうも切符を買う気になれないのである。

 

ヴォルフガング・サヴァーリッシュ(指揮)NHK響、オルフ;カルミナ・ブラーナ&若杉弘(指揮)バイエルン国立管、ブラームス;交響曲第1番(ZDF、LP2枚組)
中古屋で珍品LPを発掘。昭和59年開催の「ドイツ祭'84」の一環として行われた「日独交歓特別演奏会」のライヴ録音。これはNHKとZDFの共同企画で、指揮者とオーケストラを日・独「たすきがけ」にして、互いに衛星中継、という趣向だった。斉諧生もサヴァーリッシュのカルミナのTV中継を見ていた記憶がある(独唱は故ルチア・ポップ、小林一男、ヘルマン・プライ)。こういうLPが製作されたとは知らなかったが、関係者に配布された記念レコードと覚しく、「独逸連邦共和国大使館」発行の献呈状まで付いていた。
アンドラーシュ・シフ、ピーター・ゼルキン、ブルーノ・カニーノ(P)ほか、バッハ;二重・三重協集(DECCA)
何とも凄い顔合わせ、これにオーレル・ニコレ(Fl)・塩川悠子(Vn)が付き合って、バックはカメラータ・ベルンというのだから、とてもデッカとは思えない! 収録曲はBWV1060〜64と1044。ピアニストの顔見世的な企画を除いて、このあたりをピアノでまじめに録音するのは近年稀ではなかろうか。さて、結果は如何に?

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