音盤狂日録


8月31日(日):25日(月)に出会った友人が来宅、ディスク談義に数刻を過ごす、また愉しからずや。

ヴァッサ・プシホダ(Vn)ファン・ケンペン(指揮)、ドヴォルザーク;Vn協(A Classic Record)
細部まで個性的な秀演。これで音が良ければベストを争うだろう。なるほどスークあたりとは格の違うヴァイオリニストだ、ということが良くわかる。残念なのは、プシホダらしい「天馬空を往く」趣が乏しいこと。やや鈍重な伴奏に足を取られたのか、戦時中のベルリンの空気がそうせしめたのか、それともオーケストラとの合わせに向いていない人なのか。

 吉本多香美さんのプロフィールとインタビューを発見したので、「名匠列伝」の目次からリンクを張る。


8月30日(土):TBS系で放映されていた『ウルトラマン・ティガ』が最終回。吉本多香美さん(回を追うごとに髪が長くなってきた)は、この後、どこで見ればよいのだろうか。ソッチ系のWebページで探してみよう。

 通販業者からLPが届く。

トルトゥリエ(Vc)岩崎淑(P)アンコール集(EMI)
英EMI盤だが、1972年の日本録音。「白鳥」等のお馴染みの小品の他、ヴァレンティーニのソナタやトルトゥリエ自作も。
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)ラヴェル;歌劇「スペインの時」(Vox)
「シェーンベルクの聖パウロ」ことレイボヴィッツのラヴェル。1950年代初めのイギリス盤だが、直訳すれば「フランス放送局パリ放送交響管弦楽団」とでもなるオーケストラが、よくわからない。レイボヴィッツのページも、そのうち作らないとねぇ。

トリオ・リチェルカーレ、モーツァルト;ディヴェルティメントK563(Ricercar)
ちょっと期待外れ。責任の過半はフランソワ・フェルナンデスというVnにある。ガット弦の癖を丸出しにしたちょっと鼻づまり気味の高音をはじめ音が美しくなく、その上、どうにも歌心が無い。あの心弾むはずのフィナーレの主題が、どうにも味気ない。寺神戸亮がVaをつきあっていて、音はVn寄りのものながら、さすがに美しいが、3人の和音が綺麗にハモらないのは内声に責任があるのでは。
ユィルク・ヴィッテンバッハ(指揮)シェルシ;アナイ(Accord)
いきなり法螺貝が鳴り出した? と思ってしまった。単音が長く長く引き延ばされながら、ゆらゆらと変化してゆく。メロディのような動きは薬にしたいほどもないし、独奏ヴァイオリンといっても1人でシングル・トーンを出しているだけで全く協奏曲的なものではない。なるほどコスミックなイメージを喚起する曲だ。
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)ラヴェル;歌劇「スペインの時」(Vox)
音は新鮮そのもの、最高級のモノラル。女房コンセプシオンを歌うJanine Lindaの声も美しく魅力的だし、男声陣も美声揃い。正体不明のオーケストラだが、管楽器のソロなど陶然としてしまう。レイボヴィッツの音楽もシャキシャキしていて、オペラ好きはどういうか知らないが、私にとっては名演。
トルトゥリエ(Vc)岩崎淑(P)ヴァレンティーニ;Vcソナタ第10番(EMI)
こういうバロック期の小品をスタイリッシュに弾いて且つ味わいにも欠けないのが、ヴァイオリンならミルシテイン、チェロでトルトゥリエではなかろうか。
カザルス(Vc)アンコール(SonyClassical)
聴いてびっくり、1915年録音のヘンデルのラルゴ(いわゆる「オンブラ・マイ・フ」)が、何とオーケストラ(というか器楽アンサンブル)伴奏。音色の弁別も怪しいアコースティック録音だし、「指揮」と呼べる行為をしていたかどうかは確認できないが、とりあえず、現存する最古のカザルスの指揮盤と見ておきたい。

 上記のカザルス・アンコールの3曲をディスコグラフィに追加。


8月29日(金):メーラーをMS-IMからBecky!に交換、ブラウザはNN(ver.3)からNC(ver.4)へ完全移行。

スティーヴン・イッサーリス(Vc)クリストフ・エッシェンバッハ(指揮)シューマン;Vc協ほか(BMG)
昔、hyperionにフォーレを録音してた頃から注目のチェリスト。カデンツァと終結の初稿を別途収録し、エッシェンバッハのピアノで「民謡風の五つの小品」等をカプリングし、シューマンのVc作品全集にするなど凝った作りだが、妙なピクチャーCDになっているのだけは悪趣味だ。
ミドリ(Vn)マクドナルド(P)エルガー&フランク;Vnソナタ(SonyClassical)
デビューした頃のパガニーニやドヴォルザークの凄まじさに比べ、近年のCDにはちょっと伸び悩みを感じていたが、久々の新譜で、しかもフランク、どんな境地を聴かせてくれるか。
ヴァッサ・プシホダ(Vn)第3集(Podium)
ヴァッサ・プシホダ(Vn)第5集(Podium)
最近注目しているプシホダ。2枚ともドヴォルザーク;「4つのロマンティックな小品」とパガニーニを中心にした小曲集。
カザルス(Vc)アンコール(SonyClassical)
数年前に出た「カザルス・エディション」の中の小品集。前半8曲は1915年頃のアコースティック録音の復刻だが、後半5曲は1950年代前半の収録で、うち「鳥の歌」とバッハ「アリア(BWV590から編曲)」の2曲はオーケストラ伴奏。つまりカザルスが独奏と指揮を兼ねているわけで、これは指揮者カザルスのディスコグラフィに加えずばなるまい。

8月27日(水):今日は今日で楽譜を買ってしまった。オネゲル;交響曲第3番、メシアン;「世の終わりのための四重奏曲」、ドビュッシー;ヴァイオリン・ソナタ、ドヴォルザーク;ヴァイオリン・ソナチネ といったところ。

Music BoulevardからCDが届く。

ユィルク・ヴィッテンバッハ(指揮)ポーランド・クラコフ放送管他、シェルシ;アナイ・ウアクサクタム(Accord)
いったんは"not available"で返ってきたが、その後入荷したらしい。「アナイ(Anahit)」は独奏ヴァイオリンと室内管のための協奏的作品だが、野々村さんは「彗星が夜空を流れていくようなこの世のものとは思えない世界」と表現しておられた。どんな音楽なのか、興味津々。

8月26日(火):こういうのを弱り目に祟り目というのか、またまた大物を買ってしまった。

モントゥー(指揮)サン・フランシスコ響、「モントゥーの日曜音楽会」放送録音1941〜52年(M&A)
何と10枚組であるが、大好きなモントゥーの未知の音源なら、買うしかない。スタンダード石油提供の日曜夜のラジオ番組の録音。スポンサーの意向で原則1曲20分以内とされたために、さながらオーケストラ名曲集(スーザからメシアンまで)。大物はハイドン;交響曲第88番、モーツァルト;交響曲第35番、メンデルスゾーン;交響曲第4番、フランク;交響曲くらいか。R・シュトラウスとワーグナーで約3枚を費やしているのも特徴。W.カペルのモーツァルト(K414)が2・3楽章だけだが、聴けるのも珍しい。
バーンスタイン(指揮)ニューヨーク・フィル、ハイドン;パリ交響曲集(SonyClassical)
例のチャールズ皇太子の絵のシリーズのうち買いそびれていたパリ・セットをバーゲン・プライスで購入。
マリス・ヤンソンス(指揮)ウィーン・フィル、ショスタコーヴィッチ;交響曲第5番・室内交響曲op110a(EMI)
今年のザルツブルグ音楽祭ではヤンソンスとオスロ・フィルが好評らしいが、これはウィーン・フィルとのライヴ録音。5番だけなら見送るが、愛惜佳曲書に掲げたop110aが収録されているので購入。
ロバート・ファーノン(指揮)ロンドン・フェスティヴァル・オーケストラ、ガーシュウィン;管弦楽曲集(DECCA)
「ポーギーとベス」の管弦楽組曲はガーシュウィン自編、ラッセル・ベネット編のものが有名だが、この盤はファーノン編という珍しいもの。当り外れは聴いてみてのお楽しみ。

8月25日(月):しばらくCD屋に行っていなかったので覗いてみると、古い友人とばったり出会った。彼に刺激されてか、ついつい、たくさん買ってしまったが、彼にもバルビローリのブルックナー交響曲第8番(BBC)とセルの「魔笛」(Orfeo)を買わせることに成功した。

ギュンター・ヴァント(指揮)北ドイツ放送響、ブラームス;交響曲第1・2・3番(BMG)
レコード会社によって何人めかの「最後の巨匠」にされて神格化された感もあるヴァント。過大評価に私は多少批判的ではあるが、新譜が出れば買わずにはいられない。
オスモ・ヴァンスカ(指揮)ラハティ響、シベリウス;交響曲第5番(1915年版・1919年版)(BIS)
1915年版は一昨年に発売済みの演奏だが、現行版を新録音したといわれれば、買わずにはいられない。
ストコフスキー(指揮)ニュー・フィルハーモニア管、チャイコフスキー;交響曲第5番(DECCA)
カプリングのグラズノフVn協(独奏はシルヴィア・マルコヴィッチ)は初CD化かもしれないが、なんといってもメインの「チャイ5」、あの度肝を抜く演奏が「Phase4」シリーズでリマスタリングされたとあっては、前のCDがあろうとも、買わずにはいられない。
カザルス(Vc、指揮)1929〜30年のHMV録音(独奏)と1928年のロンドン響録音(指揮)(Pearl)
昨日アップロードしたカザルス・ディスコグラフィに乗せ損ねたCDを見つけたからには、情報充実のため、買わずにはいられない。
ナタン・ミルシテイン(Vn)W.スタインバーグ(指揮)、ベートーヴェン&ブラームス;Vn協(EMI)
ナタン・ミルシテイン(Vn)、メンデルスゾーン・ブルッフ・プロコフィエフ;Vn協(EMI)
ナタン・ミルシテイン(Vn)V.ゴルシュマン(指揮)、ラロ;スペイン交響曲(EMI)
ミルシテインのスタイリッシュで切れのいいヴァイオリンが好きな私としては、まして同曲ベストかもしれないプロコフィエフの1番がCD化されたとあっては、いくらモノラルであろうが3枚もあろうが、買わずにはいられない。
アン・アキコ・マイヤース(Vn)ドミトリ・キタエンコ(指揮)、プロコフィエフ;Vn協第1・2番(BMG)
別にマイヤースがスケスケかつラメ入りのドレスを着たジャケット写真が気に入っているわけではないが、プロコフィエフの1番は愛惜の曲ゆえ、やっと輸入盤が入荷したとあっては、買わずにはいられない。
ヨハンネス・ヴァルター(Fl)、フランス・Fl曲集(BerlinClassics)
浮月斎大人も御推奨の、イベール・マルタン・ジョリヴェ・ドビュッシーを収めたこの盤をやっと見つけたからには、買わずにはいられない。
A.シフ(P)塩川悠子(Vn)M.ペレーニ(Vc)、シューベルト;ピアノ・トリオ集&アルペジオーネ・ソナタ(Teldec)
我らが長谷川陽子さんが、ヨーヨー・マ(アイドル)とアルト・ノラス(師匠)の次に惚れこんでいるペレーニが、あのアルペジオーネ・ソナタを録音したからには、2枚組もなんのその、買わずにはいられない。
鈴木雅明(Cem)、バッハ;ゴルトベルク変奏曲(KING)
この人のバッハは全部揃える、と決めているので、国内盤フルプライスといえども買わずにはいられない。
アンドレ・プレヴィン(P)、ジャズ・アット・ザ・ムジークフェライン(Verve)
この人のジャズ・アルバムを見つけたからには、何枚買った後でも、買わずにはいられない。

8月24日(日):当ページ公開以来、最初の本格的更新がようやく完成。

 指揮列伝中、名匠列伝パブロ・カザルス小伝(指揮者としての)とディスコグラフィ(LPジャケット画像付き)を掲載。(8月25日附記:忘れていたCDがあったりしたので、ちょっと手直ししました。)

 先日から中古音盤堂奥座敷に参加された工藤さんのWebページを電網四方八通路に追加。

 

ヴィットリオ・グイ指揮デ・ロス・アンヘレス(Sop)他、ロッシーニ;セヴィリアの理髪師(第1幕第1場)(EMI)
歌唱の良し悪しは正直よく分からないが、グイの棒には一驚した。序曲の序奏の伸びやかな歌! 
マイスキー(Vc)ギリロフ(P)、ブラームス;ヴァイオリン・ソナタ第1番(チェロ編)ほか(DGG)
歌曲をチェロで演奏したものとヴァイオリン・ソナタのカプリングだが、やはりこういうセンチメンタルに歌うのは、マイスキー向きだ。とはいえ、前のシューベルトも含めて同工異曲、いつまでこれを続ける気か。
メッツマッハー(指揮)バンベルク響、ハルトマン;交響曲第4番(EMI)
1947年の作品だそうだが、書法としては30年代終り頃の感じがする。弦楽合奏が実に重厚に書き込まれており、聴き応え十分。1楽章の終りではヴァイオリン・ソロが活躍するが、ちょっとベルクのヴァイオリン協奏曲を思い起こさせるものがあり、ホロッとした。
ヴァレリー・ポリャンスキー(指揮)ロシア国立響、ショスタコーヴィッチ;交響曲第15番(CHANDOS)
2楽章での金管の表現力などは今一歩を望みたいが、4楽章の悲劇性(というか、もう、どうにも救いのない世界へどんどん入りこんでいくような趣き)は、よく出ていた。ポリャンスキーは技術的には未だしのようだが、音楽に訴えるものを持っており、今のロシア系の指揮者の中では最も将来を期待する人だ。前に聴いたチャイコフスキーも良かった。
クレーメル(Vn)他、ショスタコーヴィッチ(デレヴィアンコ編);交響曲第15番(ピアノ・トリオと打楽器のための編曲)(DGG)
これは中古音盤堂奥座敷の試聴会選定盤。ポリャンスキーを聴いたのは、実はこれを聴くための「予習」。
アファナシェフ(P)、「オマージュ&エクスタシー」(DENON)
これも試聴会選定盤。

8月23日(土)アンプTAP3一昨日から製作していた真空管アンプが完成。上杉佳郎氏設計の「TAP-3」(ステレオサウンド社『管球王国』第5号所収)で、上杉研究所からパーツ・シャーシ一式を購入したもの。

2段NFアンプ:12AU7×2
インプット・トランス・ドライブ
終段:EL34(三極管接続)プッシュプル(NFBなし)

という構成。

MusicBoulevardからCDが届く。

ヴィットリオ・グイ指揮デ・ロス・アンヘレス(Sop)他、ロッシーニ;セヴィリアの理髪師(全曲)(EMI)
実は野々村さん推薦のシェルシ「Anahit」が欲しかったのだが、「not available」で返ってきてしまった。グイはグラインドボーン音楽祭管を振ったモーツァルト(音楽之友社)も良かったし、ロッシーニをちゃんと(序曲だけじゃなくて)聴いてみたくなったので。

8月21日(木):エピック・ソニー社からワインを頂戴した。古澤巌のCD「タイフーン・ドリーム」の販促プレゼントに当選したもののごとし。ラベルも「Iwao Furusawa」と特製。音盤狂いの極めて稀な副産物なり。(貰っておいて文句を言うのも何だが、配送中にホコホコに温もっていたので味が台無し。真夏なんだからクール何とかなりチルド何とかなりにしておいてほしいものなり、せっかくの企画も「画竜点睛を欠く」というもの。おっと、「畫龍點睛を缺く」かな? でもこれじゃまるでポセイドニオス堂。)


8月20日(水):『CLASSICA』のリンク集が更新され、当「斉諧生音盤志」も掲載の栄に浴した。誠に有難く、多謝深謝。

仕事は今日から3日間の夏休みをいただいた。「音盤狂日録」以外の本格的更新を準備中。

新譜試聴録 更新作業と並行して、東方教会音楽を流しっぱなしにしておく。

ベドロス・パパツィアン(指揮)ソフィア・アルメニア合唱アンサンブル、「アルメニアの礼拝聖歌」(JADE)
一昨日書いたとおり、19世紀に再構成されたものを歌っていて、あまり美しくない。同じ19世紀のロシア正教のものによく似ている。
「アルメニア 1-中世の礼拝聖歌と器楽音楽-」(OCORA)
これは以前から架蔵しているCDだが、きわめて美しく、お薦めできる。長岡鉄男ファンお馴染みのOCORAレーベルで、独特の生々しい音がする。
リクルゴス・アンゲロプーロス指揮ギリシャ・ビザンチン合唱団、聖ヨハネ・クリソストモ典礼(Opus111)
これもずっと前に買って、そのままになっていたCD。「聖ヨハネ・クリソストモ典礼」とはカトリック教会のミサに相当する儀式。アルメニアに次いではギリシャの教会音楽が美しいと思う。
「コプト正教会の礼拝-聖週間-」(CHRISTOPHORUS)
エジプトに残存したコプト正教会の聖週間(キリストの受難と復活の1週間)の音楽。バッハの「マタイ」「ヨハネ」を持ち出すまでもなく、この期間のために書かれた音楽には傑作が多い。1人が先導し男声のユニゾンが続く、というグレゴリオ聖歌に似たパターンが多いが、発声や節回しは、むしろ声明に近い。妙に耳を引きつける、興味尽きないCD。

 電網四方八通路掲載のオーケストラのうち3つが、今回『CLASSICA』リンクに採用された。そこで、新たに3つのオーケストラを追加した。


8月18日(月):先日から中古音盤堂奥座敷に、現代音楽の大通、野々村禎彦さんが参加されている。野々村さんのお薦め盤を中心に、


Y・P・トルトゥリエ(指揮)BBCフィルハーモニック、デュティユ;交響曲第1番・第2番(CHANDOS)
Y・P・トルトゥリエはチェリストの息子。昔はヴァイオリンを弾いていたが、「指揮者デビュー後の方が、ずっと光っています。」と野々村さん談、期待高し。
アモイヤル(Vn)ハレル(Vc)デュトワ(指揮)、デュティユ;Vn協・Vc協(DECCA)
それぞれ副題が「夢の木」(Vn協)、「遥かな遠い国....」(Vc協)と付けられている。「繊細なオーケストレーションが印象的な『夢の木』」(野々村さん)、どんな響きがするのか、期待高し。
ガヴリーロフ(Vn)他ブーレーズ(指揮)、リゲティ;Vn協・Vc協・P協(DGG)
御健在でしたかガヴリーロフ先生! 戦後ヨーロッパで現代Vn曲を一手に引き受けたサシコ・ガヴリーロフ。野々村さんによれば、リゲティは「バルトークの無伴奏を協奏曲に仕立てたような重厚な世界。」とのこと、期待高し。
メッツマッハー(指揮)、ハルトマン;交響曲第4番(EMI)
「若い世代の指揮者の中で私が一番高く買っているのは、(中略)メッツマッハーです。」と言い切る野々村さん。ハルトマンでは第6番の交響曲をお薦めだったが、弦楽合奏好きの斉諧生は第4番を買ってしまった。「弦楽オーケストラのための」交響曲に、期待高し。
黒沼ユリ子(Vn)若杉弘(指揮)、諸井誠;ヴァイオリンとオーケストラのための協奏組曲(DENON)
野々村さんが「(Vn協の)日本人作品では、諸井誠『協奏組曲』 (1963)と三善晃(1965)がいまだに突出していると思います。」と言われるからには*音*だけではあるまいと、購入に踏み切った長岡鉄男推薦盤。カプリングの外山雄三「管弦楽のためのラプソディ」にも、こっそり期待高し。

このあとの2枚は、斉諧生の好みで、

ジギスヴァルト・クイケン(指揮)ラ・プティット・バンド、ハイドン交響曲第103番・第104番(DHM)
このシリーズとのおつき合いも長かったが、ついに「ロンドン」に到達。最初はヴァージンから出てたなぁ。
ベドロス・パパツィアン(指揮)ソフィア・アルメニア合唱アンサンブル、「アルメニアの礼拝聖歌」(JADE)
実は斉諧生は声明と東方教会聖歌が好きなのです。東方教会の中でもアルメニア教会の音楽に惹かれておりますが(昔、今はなき『週刊FM』に立花隆が書いていたのがきっかけ)、ライナーを読むと19世紀に再構成されたものを歌っている様子で、ちょっとがっかり。

16日(土)に感動したプシホダの演奏を求めて大手CD店を探したが見つからなかった。そこでプシホダに詳しい永井さん(新聞みたいな言い回しだ)が経営する「ラ・ヴォーチェ」へ。実はしばらく無沙汰をしていたのだが、「プシホダ」と言うと、目の色を変えて薦めていただいたのが次の3枚。

ヴァッサ・プシホダ(Vn)第4集(Podium)
永井さん第一のお薦めが、このCD所収のチャイコフスキーの協奏曲。1949年北西ドイツ放送響との放送用録音。ドヴォルザークのソナチネ(1951年南西ドイツ放送収録)もカプリングに。
ヴァッサ・プシホダ(Vn)ファン・ケンペン(指揮)、ドヴォルザーク;Vn協(A Classic Record)
第二次大戦中のDGGのSP録音の復刻CD。ドヴォルザークを得意にしたプシホダにはVn協も複数の録音があるが、まずこれから聴いてほしい、とのこと。カプリングはケンペンの付けでデ・ヴィートのブラームス。
ヴァッサ・プシホダ(Vn)リサイタル(Supraphon、LP)
A面がDGGのSP復刻、B面が1956年のチェコスロヴァキア・ラジオの録音。A面のツィゴイネルワイゼンが凄いらしい。演奏時間が、僅か6分41秒(手許のハイフェッツの1937年録音が8分32秒、たぶんカットがあるのだろうが、それにしても速い。)。なおB面はタルティーニ「悪魔のソナタ」とドヴォルザークのソナチネ。

次の1枚も「ラ・ヴォーチェ」で。これは斉諧生の好みで、

ローラ・ボベスコ(Vn、指揮)イザイ弦楽合奏団、モンテヴェルディ・ヴィヴァルディ・グリーグ(Duchesne、LP)
1976年のライヴ録音。ボベスコは好きなヴァイオリニストでヴィヴァルディ(作品3-3)ではソロも弾いているが、これを選んだのは、グリーグの「ホルベルク組曲」が入っているから。

永井さんとのおつき合いも長くなったが、この人の推薦盤は滅多に外れません。京阪神の方、ぜひ「ラ・ヴォーチェ」へ。東京その他の方も京都にお越しの節は1時間でも工面して、「ラ・ヴォーチェ」をお訪ねください。

8月17日(日):CDの整理続く。その合間に、


バルビローリ(指揮)ハレ管、ブルックナー;交響曲第8番(BBC Classics)
ブルックナーならクナ、シューリヒトという斉諧生ですが、この演奏は楽しめました。もちろん正統的なブルックナー演奏とは全く違いますし、オーケストラも失敗だらけですが、バルビローリの味付けが実にユニークで、「次は何をやるのだろう」と、わくわくしながら聴きました。前にセルとウィーン・フィルのライヴで7番(Sony)を聴いたときは「これはブルックナーではない!」と立腹しましたが、ここまで徹底して、かつ面白いと腹も立ちません。でも、データをよく見ると、1970年5月20日のライヴですから、亡くなる2月前の録音です。最晩年のサー・ジョンがこのような演奏をした心事を考えながら、再度、聴いてみたいと思っています。
セル(指揮)ウィーン・フィル他、モーツァルト;歌劇「魔笛」(Orfeo)
これは良かった。ライヴにつきものの歌唱の傷とかノイズ(足音はともかく、電話か呼び鈴みたいなベルの音は何だろう?)、モノラルというより疑似ステレオみたいな音像を気にしなければ(音自体の質は非常に高い)、魔笛ファン必聴の名盤でしょう。主だった歌手も粒揃いで、特にデラ・カーザのパミーナが光ってます。前日のバトルとは、もう、「役者が違う」。オーケストラ部分も、ライヴとは思えない完璧さ。傷が無いだけでなく、セルが勘どころ勘どころを引き締めて、ルーティンでない音楽を創造しています。セルのことを「完璧主義者で音楽性に欠ける」と誤解している人がいたら、この演奏をお聴きいただきたい! セルとウィーン・フィルの関係も、この上演くらいから打ち解けてきて大半の楽員が尊敬するようになったとか(それまで誰も気づかなかったパート譜の間違いを指摘したそうな。)。
ジェラール・プーレ(Vn)ノエル・リー(P)、フランス・ヴァイオリン・ソナタ集(Arion)
収録曲はラヴェル(有名なのと習作のと両方)、ドビュッシー、ピエルネ。ラヴェルから聴き始めたが、楷書のラヴェルに好感を持った。もちろん、コンセプトの難しい曲で、楷書必ずしもベストではないが、リーの雄弁でラヴェルらしい響きを醸しだすピアノともども、感心しました。次にピエルネ。ティボーのために書いた曲だそうで、ヴァイオリン・パートはよく書けているし、両端楽章はそこそこ盛り上がるし、聴いていて退屈はしません。欲を言えば、緩徐楽章が無いのが物足りないのと、何か真実味に欠けるところ。で、最後に聴いたドビュッシーが一番の出来でした。もともと、このCDの売りは「初演者ガストン・プーレの息子が弾くドビュッシー」らしいが、親の七光りに頼らない立派な演奏です。この人の演奏は、もっと聴いてみたいと思いました。
ハイフェッツ(Vn)スミス(P)、シューベルト;幻想曲(BMG)
ハイフェッツ68歳の録音で、この4年ほど後に引退しますが、とにかく巧い。これだけの演奏ができる人は、現役にもいないかもしれない。本当に空前絶後のヴァイオリニストだったと思います。ただ、この曲から満ち溢れてくるはずの詩情が、ちょっと足りない。感じていないとは言いませんが・・・ ピアニストも上手な人ですが、伴奏に徹し過ぎでしょう。

8月16日(土):CDが山積みになっている部屋を片づけた。といっても、ジャンル別に積み直しただけのことだが。

ヴァッサ・プシホダ(Vn)、ドヴォルザーク;ヴァイオリンのためのソナチネ(Podium)
1949年の録音だが、バイエルン放送局の音源で、モノラル期の水準に達した音質。演奏は期待どおりの名演だった。曲を弾きこんだ確信に満ちた節回しと切れのよいボウイングで、この曲の懐かしい味わいが美事に再現される。第2楽章ラルゲットを聴き比べたが、クライスラーだと「インディアン・ラメント」の別名どおり、ウィーンのヴァイオリニストが甘ったるい異国情緒を奏でているのだが、プシホダではボヘミアへの望郷の想いが聴き手の胸まで熱くする。
ピエール・アモイヤル(Vn)、タルティーニ;ヴァイオリン・ソナタ「悪魔のトリル」ほか(ERATO、LP2枚組)
通奏低音付き、原典版による(この曲の有名ヴァイオリニストによる録音は、ほとんどが短縮編曲版)。アモイヤルは、グリュミオーのような美音で端正に演奏しており、現代楽器による原典版の演奏としてベストを争う出来ばえだ。CDの復活が望まれる。
ヨハンネス・ヴァルター(Fl)、バッハ;フルート・ソナタ・ロ短調BWV1030(Berlin Classics)
イゾルデ・アールグリムのチェンバロとともに、バッハを誠実に一音符づつ再現している。きらびやかさを排した太くて重い音色が音楽にマッチしているのだが、ヴィブラートが少々耳障りである。古楽器に慣れたせいだろうか。
ヨハンネス・ヴァルター(Fl)、モーツァルト;フルート四重奏曲・ニ長調K285(Berlin Classics)
バッハの時より音が明るく軽くなり、モーツァルトにはベスト・マッチ(この曲ではヴィブラートは気にならない。)。浮月斎大人が「青磁」にたとえられたのが納得できる音色であり演奏である。廉価盤でもあり、大いに推薦したい。
ヨハンネス・ヴァルター(Fl)、ヴィヴァルディ;フルート協奏曲集(Berlin Classics)
急速楽章では現代楽器は分が悪い。やはり古楽器による演奏、有田正広盤あたりが良い。緩徐楽章では、まずまず楽しめるが。
キャスリーン・バトル(Sop)レヴァイン指揮、モーツァルト;オペラ・アリア集(DGG)
CMでお馴染みの人間離れした美声だが、逆に実存感が薄くなってしまう。歌としては誠に美しいのだが、オペラのキャラクターが立ってこないのだ(伯爵夫人とスザンナとケルビーノが同じ声で歌われても・・・。)。パミーナが死を願う歌も、絶望の影は淡い。まぁ、こういうのを「純粋な音楽美」と褒める向きもあるかもしれない。レヴァイン指揮のMETのオーケストラは巧いが、三人の童子は、いかにも子供の歌。

8月12日(火):
新譜買得録 盆休みで通勤電車も職場もガラガラ。徒然、CD屋に寄ると

ストコフスキー&オーマンディ(指揮)、バッハ;作品集(Sony、2枚組)
ソニー・クラシカルの「Masterworks Heritage」シリーズで、入手しそびれていたもの。こういう凝った作りで比較的レアな録音を復刻してくれると、それだけで嬉しくなって買ってしまう。このシリーズで、カザルスのプラド(ペルピニャン)音楽祭の録音を完全復刻してくれないものか。
ヴァッサ・プシホダ(Vn)・第6集(Podium)
このボヘミア出身のヴァイオリニスト(1900〜1960)の名前の日本語表記は難しいらしいが、とりあえず一番短いので書く。これまで彼の録音は聴いたことがなかったが、物の本で評価されているドヴォルザークの演奏(この盤ではソナチネ)が収録されているので、買ってみることにした。
リリンク(指揮)、モーツァルト;レクイエム(レヴィン版)(haenssler)
大胆な加筆で良くも悪くも評判になったレヴィン版の初録音が、ミドル・プライスの輸入盤で入荷していたので。

8月11日(月):日本スカンジナヴィア音楽センターから『フィンランドの音楽』という冊子(というか新書判290頁ほどの本)を頂戴した。
新譜買得録 虫の知らせか、CD屋に寄ると、次のCDが入荷していた。

マッケラス(指揮)スコットランド室内管、ブラームス;交響曲全集(TELARC)
マッケラスは現役指揮者の中では興味がある方。TELARCのハイドンやモーツァルトは、なかなか聴かせる。今度のブラームスは、室内管編成(第1Vnから順に10-8-6-6-4)で録音。ブックレットにはいろいろ能書があるが(「ヨアヒムがイギリス初演したときの編成と同じ」云々)、小編成になることで一人一人の奏者が一所懸命になる効果に期待したい。

8月10日(日):
新譜買得録 神戸(ハーバーランド方面)へ遠征。PC量販店等あり。「オーガスタプラザ」内の新星堂で次のCDを購入。

シャンタル・ジュイエ(Vn)、コルンゴルト・ヴァイル・クレネック;ヴァイオリン協奏曲集(DECCA)
ヴァイオリン協奏曲の中でも珍しい方のレパートリーなので気になっていたところ、1,780円と安かったため購入。
トリオ・リチェルカール、モーツァルト;ディヴェルティメントK563(Ricercar)
ヴィオラに寺神戸亮が入っているので購入。ヴァイオリンはフランソワ・フェルナンデス、チェロはライナー・ツィッパリングという人。おそらくクイケン系の若い奏者だろうと思われる。
ハイフェッツ(Vn)、シューベルト;幻想曲(BMG)
幻想曲については愛惜佳曲書(室内楽曲の部)に掲載。いずれ、きちんと聴き比べをしてみるつもり。技術力では最右翼のハイフェッツ。例の大エディションのバラが見つかったので購入。
ジェラール・プーレ(Vn)、ピエルネ・ドビュッシー・ラヴェル;ヴァイオリン・ソナタ集(Arion)
ピエルネのディスクは珍しい。プーレはCD三昧日記で教わったバッハの無伴奏もよかったし、購入。

結局、買ってばかりで、ろくに聴かない週になってしまった。

新譜試聴録というのも用意してあるのだが、次の週末まで使わないことになりそうだ。恥ずかしい限りだ。


8月9日(土):
新譜買得録通販業者からLPが届く。

ハイフェッツ(Vn)モイセイヴィッチ(P)ベートーヴェン;ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」(英EMI)
1951年ロンドン録音。「クロイツェル・ソナタ」のベストを争う演奏の一つだと思っている。CD復刻されているが(手許にあるのはEMICHS7-64929-2、”Heifetz: Recital”というもの)、モノラル期のイギリス盤を入手できた。

8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。

 『文学界』9月号を読む。お目当ては立花隆の連載「武満徹・音楽創造への旅」である。連載も59回目に達し、そのあいだに作曲家は亡くなってしまった。武満の没後は延々とインタビューの断片や周囲の人々の証言を掲載しつづけている。
 さて、今月号の掘出し物は、高橋源一郎が巻頭随筆で「わたしはクラシック音楽鑑賞少年、正確にいうとクラッシック音楽鑑賞オタクだったのだ。」と告白していることだろう。中学生のときに(!)「新世界」のブラインド・テストをして、ワルターだ、バーンスタインだ、ターリヒだ、などとやっていたらしい。

新譜買得録仕事の帰りにCD5枚を購入。4日の分と合わせると週間10枚になってしまった。ちょっと多いかな・・・

ヨアフ・タルミ指揮イスラエル室内管、グリーグ;ホルベアの時代から、ブロッホ;コンチェルト・グロッソほか(Chandos)
弦楽合奏曲集を見ると、つい手にとってしまう。「ホルベア〜」とか愛惜する曲が入っていると、どうしても買ってしまう。87年のロンドン録音で、店頭在庫を、ふと見つけたもの。
ヨハンネス・ヴァルター(Fl)、ヴィヴァルディ;フルート協奏曲集(Berlin Classics)
ヨハンネス・ヴァルター(Fl)、モーツァルト;フルート協奏曲K313、フルートとハープのための協奏曲K299(CCC)
ヴァルターについては3日の項に記したが、その続きである。
ミシャ・マイスキー(Vc)、ブラームス;ヴァイオリン・ソナタ第1番(チェロ編)ほか(DGG)
マイスキーは必ずしも好きというわけではないが、センチメンタルに歌う曲なら聴いてみたい。輸入盤。
バトル(S)レヴァイン指揮、モーツァルト;オペラ・アリア集(DGG)
アリア集を買うことはめったにないが、FMfanで宇野功芳が褒めていたので、聴いてみるつもり。輸入盤。

8月7日(木): 夏休みを貰って、HPづくり。電網四方八通路の練直しに午後一杯を費やす。


8月4日(月):

新譜買得録

仕事の帰りにCD5枚を購入。

トゥロフスキー指揮イ・ムジチ・ド・モントリオール、ショスタコーヴィッチ;室内交響曲op110a・118aほか(Chandos)
op110aは、愛惜佳曲書(交響曲の部)にも採用した斉諧生愛好の曲ゆえ。新録音ではなくミドル・プライス再発ものだが、カップリング換えが好都合。
ポール・トゥルトゥリエ(Vc)、ヴィヴァルディ;チェロ協奏曲(EMI)
トゥルトゥリエは最も好きなチェリストの一人だが、このヴィヴァルディ(1979年録音)がCD化されていたとは知らず、偶然店頭で発見。
ヨハンネス・ヴァルター(Fl)、JSバッハ;フルート・ソナタ(Berlin Classics)
ヨハンネス・ヴァルター(Fl)、モーツァルト;フルート四重奏曲(Berlin Classics)
ヴァルターについては浮月斎大人がHPで「青磁のようなフルート」と賞讃されていたので、これは聴かずばなるまいと思い、購入してみたもの。
アストル・ピアソラ(バンドネオン)、「ザ・ラフ・ダンサー・アンド・ザ・サイクリカル・ナイト」(American Clave)
ピアソラ最晩年の名録音American Clave3部作のうち未購入だった「ザ・ラフ・ダンサー〜」を見つけたので。ピアソラはブームで続々とライヴ盤等が発売されていて、黒田恭一先生あたりもずいぶん取り上げていらっしゃるが、とりあえず1枚聴いてみるなら3部作の最初の「タンゴ・ゼロ・アワー」(American Clave)。

8月2日(土):

新譜買得録

通信販売業者からLPが届く。

ピエール・アモイヤル(Vn)、タルティーニ;ヴァイオリン・ソナタ選集(ERATO)
有名な「悪魔のトリル」を含む2枚組。アモイヤルは、LPを収集しているヴァイオリニストの一人。

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