ステーンハンマル お薦めの3曲

「管弦楽のためのセレナード」op.31(1913、19改訂)
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  推薦盤 エサ・ペッカ・サロネン(指揮)スウェーデン放送響
(Musica Sveciae MS626)
           
  こんな曲です  1907年、イタリア滞在中の作曲者が「美しく、こわれやすい南についての詩を北国の人間にしかできないようなやり方で書きたい」と着手した曲、透明な明るさとほの暗い北の抒情が交錯する佳曲である。
 とりわけ第4楽章「ノットゥルノ」の美しさ! フルート独奏の余情、ホルンのこだま、弦の繊細な歌…  
           
  お薦め盤は  サロネンは最も透明感に満ちた、繊細な演奏「チトラ」がカプリングされているのも嬉しい。弦楽合奏とチェレスタの響きが清澄の極みなのだ(この曲は、7楽章版よりルーセンベリ編の3楽章版がよい)。
           
  思い出話です  何といってもステーンハンマルとの出逢いの曲。
 10数年前のことになるが、京都の十字屋四条店の輸入盤売場(もちろんLP)で新着盤を漁っていたら、お店の永井さん(今は独立して"La Voce"の御主人)が近寄ってきて、「これ買うてください、もう、絶対よろしいで。」と薦めてくださったのが、この曲のクーベリック盤。
 永井さんの言うことならと買い求めて、一聴たちまちその抒情に魅せられてしまい、その後も「Stenhammar」と見れば買うようになった。
           
「スヴァーリエ」op.22-2(1905)
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  推薦盤 スティグ・ヴェステルベリ(指揮)スウェーデン放送響
(CAPRICE CAP21340)
           
  こんな曲です  「スヴァーリエ」とはスウェーデン語で「スウェーデン」のこと。
 ステーンハンマルの抒情ここに極まる、という感のある、それはそれは美しい旋律と和声の無伴奏合唱曲である。シベリウスの「フィンランディア讃歌」を、もっと清冽にしたような…
 この曲を含むカンタータ「ひとつの民族」自体は、あまりに政治的な歌詞のために、すっかり演奏されなくなったらしいが、「スヴァーリエ」はスウェーデンの第2の国歌として愛唱され続けているのも、まことに頷ける。
 もっとも詩人(ヴェルナー・フォン・ヘイデンスタム、1916年のノーベル文学賞だそうな)は、もっと勇ましく、もっと天上的な音楽をイメージしていたので、この曲には不満であったとか(贅沢なやっちゃ!)。  
           
  お薦め盤は  名歌手が独唱している盤もあるが、これはどうあっても無伴奏合唱でお聴き願いたい。
 たくさん出ているが、なかではヴェステルベリ盤が、速めのテンポで(2'27)、高声部寄りのバランスで清澄な音色を響かせている分、斉諧生の好み。これにはカンタータ「歌」の間奏曲も入っており、ディーリアスを思い出させるような甘美な佳曲を聴くことができる。
 合唱が実に豊かに響いているシェークヴィストの両盤も良い。
           
  思い出話です  これはステーンハンマル第2の出逢いの曲。
 京都の中古盤屋(半地下にあったちょっと妖しげな店)の店頭でたまたま発見、試聴してみたところ、その美しさに腰を抜かした。なぜ、こんな曲が知られていないのか、これは自分だけの名曲、と心に決めて買い求めて帰り、ライナーノートをよく読めば、スウェーデンでは「第2の国歌」扱いとか、ちょっと拍子抜け。
           
「2つのセンチメンタル・ロマンス」op.28(1910)
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  推薦盤 アーヴェ・テレフセン(Vn)スティグ・ヴェステルベリ(指揮)スウェーデン放送響
(CAPRICE CAP21358)
(追加) セミー・スタールハンメル(Vn)ルーヴェ・デルヴィンエル(P)
(nosag CD 033)
           
  こんな曲です  3つめは難しいが、ヴァイオリン好きの斉諧生としては、これ。
 ベートーヴェンの「ロマンス」2曲にも似て、全編、美しいメロディが次から次から繰り出される。
           
  お薦め盤は  管弦楽伴奏による3盤、いずれも甲乙つけ難いが、「北欧のオイストラフ」ことテレフセンを挙げておく。
 これはカンタータ「歌」の全曲がメインの盤なので、トラック2の冒頭で「間奏曲」を聴くことができる。
(追加)  ピアノ伴奏盤ながら、素晴らしい演奏が出た。
 スタールハンメルは、ストックホルム王立歌劇場管のコンサートマスターだが、音は綺麗だし、センスも抜群。
 美しいメロディを、誠に美しく、歌い抜いてくれる。
           
次点1 交響曲第2番op.34(1915)
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  推薦盤 ネーメ・ヤルヴィ(指揮)ヨェーテボリ響
(DGG 445 857-2)
           
  こんな曲です  やっぱり3つだけには絞れないので、次点を。
 やや晦渋かもしれないが、シベリウスの後期やブルックナーに馴染んでいる人には、すぐ良さをわかってもらえると思う。
 第1楽章冒頭、素朴な歌謡主題が弦のユニゾンで出るところから、そのあとの運び具合など、シベリウスの第3によく似ているし、終楽章でフーガを導入して、壮大なクライマックスを築くのは、ブルックナーの第5のようだ。
 「管弦楽のためのセレナード」あたりのような甘美な抒情はやや後退しているが、ブラームスやブルックナーに近い交響世界が、ある。
           
  お薦め盤は  この曲は、やはり初演し、作曲者から献呈を受けたヨェーテボリ響で聴くというのはどうでしょうか。
 2枚組で、交響曲第1番とセレナードも聴けます。
           
次点2 弦楽四重奏曲第6番op.35(1916)
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  推薦盤 コペンハーゲン弦楽四重奏団
(CAPRICE CAP21339)
           
  こんな曲です  彼が書いた弦楽四重奏6曲のうち、この曲種に求めたい、求心的な厳しさ、含蓄の深さを最も備えた曲。抒情の美しい第3楽章と、同音反復が不思議な味わいの第4楽章。
           
  お薦め盤は  コペンハーゲン盤とセッタークヴィスト盤では、一長一短だが、男性的な厳しさ、第4楽章の緊張感で勝る前者を採りたい。
 カプリングで、平明な曲調に民俗的要素が織り込まれ(特に詠嘆調の第2楽章「バラータ」)、親しみやすい第5番が聴けるのもメリット。
           
次点3 ピアノ協奏曲第2番op.23(1907)
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  推薦盤 クリスティーナ・オルティーズ(P)ネーメ・ヤルヴィ(指揮)ヨェーテボリ響
(BIS CD476)
           
  こんな曲です  3つめになっても「次点」というのかどうか… (^^;
 第1楽章冒頭が地味で損をしているが、後上がりに壮麗になっていく。ステーンハンマル自身、ピアノの名手だっただけに、聴きばえのする仕上がりである。 
           
  お薦め盤は  各盤一長一短だが、ピアノの音が最も美しく響いているのが、オルティーズ盤。

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