音盤狂日録


7月31日(金): 昨日買ったヴィターリー・フォミーン『評伝 エヴゲニー・ムラヴィンスキー』@春秋社を読む。
 原著は1983年の出版、ペレストロイカ以前のこととて、あたかも聖人伝のごとき筆致、突っ込んだ挿話等もなく、まず資料的価値に留まろう。
 監訳者はムラヴィンスキー来日時に通訳か何か、ずっと付き添った人で、家族的な交際もあったとか。その人の「ムラヴィンスキーの想い出」と題する章のみ、わずかに素顔のムラヴィンスキーを伝える。
 巻末の「演奏作品リスト」、「ディスコグラフィ」にも資料的価値はあるが、索引が付いていないのは、この種の本としては大きな欠陥であろう。

 

エフゲニー・ムラヴィンスキー(指揮)レニングラード・フィル、シベリウス;交響曲第7番&モーツァルト;交響曲第39番ほか(BMG)
1965年2月23日モスクワ音楽院大ホールでのライヴ、LP時代から有名な録音である。
中古音盤堂奥座敷試聴会でシベリウス;交響曲第4番を議論しているのだが、7番ではムラヴィンスキー盤を推す方が多いので、聴き直してみようとしたところ、どうもCDでは持っていないし、LPも実家に置き去りにしたようなので、リマスタリング盤を買ってみた。
なお、上記『評伝〜』によれば、ムラヴィンスキーが指揮したシベリウス作品は、
  交響曲第3番…4回(1963年10月26日のソ連初演含む)
  交響曲第7番…6回
  トゥオネラの白鳥…9回
のみ。ヘルシンキから見ればレニングラードはストックホルムより近いのだから、もう少し演奏していても良さそうなものだが、そこがムラヴィンスキーたる所以かもしれない。
なにせ、ショスタコーヴィッチの交響曲でさえも、第1〜4番と13・14番は、演奏記録に無いのだから。
ヨーゼフ・クリップス(指揮)フィルハーモニア管、ブラームス;管弦楽曲集&R・シュトラウス;「薔薇の騎士」組曲ほか(TESTAMENT)
ウィーンの名匠の一人、クリップス。コンセルトヘボウ管と録音したモーツァルトの交響曲は実に典雅で、かつ、充実した名演奏だった。
また、何かのインタビューでグレン・グールドがクリップスを絶讃していたのを読んだ記憶がある。
ストラヴィンスキー;「火の鳥」組曲もカプリングされているが、やはりウィーンの音楽、ブラームスとシュトラウスに名演を期待したい。
いずれも1963年の録音、フィルハーモニア管が一旦解散する少し前のものである。

7月29日(水): ネット通販の古本屋から丸山桂介『プロメテウスのシンフォニー 精神史としてのベートーヴェン春秋社が届く。
 発売時の定価3,200円、今はたしか品切中のもの、帯付き美本で送料消費税込1,800円は安い。もちろん代金は商品到着後に郵便振込み。
 音楽書の在庫は、必ずしも豊富とはいえないが、一度、Webpageを訪問されればいかがだろうか。

 

ジョシュア・ベル(Vn)ジョン・ウィリアムズ(指揮)ロンドン響、「ガーシュウィン・ファンタジー」(Sony Classical)
いつの間にかベルがSony Classicalへ移籍しているのに驚いた。
何やら青年実業家風になっているが(つまりガーシュウィンの時代の恰好なのだろう)、ジョン・ウィリアムズを従えて、「ポーギーとベス」抜粋の協奏曲風編曲(アレクサンダー・クーレイジ)やソングの編曲を弾いている。
「ポーギーとベス」には目がない斉諧生、思わず購入の巻。
ジェルジ・パウク、澤和樹(Vn)バルトーク;無伴奏Vnソナタ&44の二重奏曲(NAXOS)
パウクはハンガリー出身、イギリスで活躍する実力歴々たる大ベテラン。フバイやシゲティの流れを汲む、現在では貴重な系譜に連なる人である。
バルトークは十八番ゆえ、このCDもずっと気になっていたのだが、先日サラサーテさんのお薦め記事を読んで、ぜひ聴いてみたいと思い購入したもの。
ニクラス・シヴェレーフ(P)ステンハンマル;P作品集(NAXOS)
NAXOSからのステンハンマル作品は交響曲第2番についで2枚目、「3つの幻想曲」op.11「晩夏の夜」op.33等を収録。
シヴェレーフはスウェーデン出身、1968年生れ。ラフマニノフ、ルトスワフスキ、リゲティ等やスウェーデンの現代作品を得意とする、とライナーノートにある。
ステンハンマルは全録音蒐集プロジェクト中の作曲家ゆえ、録音情報に接して以来待ちかねていたリリース、直ちに購入。
アムステルダム・ギター・トリオ、バッハ;ブランデンブルグ協第2・3・5・6番(BMG)
LPで出ていたような気もする、1985年のデジタル録音の、バジェット・プライスでの再発。
5番のみチェンバロを加えるが、他はギター3本用の編曲。
ブランデンブルグ協は、全部とはいわないが(^^;、なるべく集めるようにしており、中でも好きな3・6番が入っているので、買ってみた。

 今日のステンハンマルのCDの情報とジャケット画像を、ステンハンマルの頁の「作品表とディスコグラフィ」に追加する。


7月27日(月): 『管球王国』第9号@ステレオサウンドが発売、宇野*尊師*の連載「名演奏家と管球アンプ」、第2回はワルターの録音を取り上げているが、内容は既に方々で書いていることばかり。困ったものなり。

 やはり買ってしまった…

朝比奈隆(指揮)北ドイツ放送響、ベートーヴェン;交響曲第6番ほか(ODE CLASSICS)
オレグ・マイセンベルク(P)朝比奈隆(指揮)北ドイツ放送響ほか、ベートーヴェン;交響曲第2番&P協第4番(ODE CLASSICS)
朝比奈隆(指揮)北ドイツ放送響、ムソルグスキー(ラヴェル編);「展覧会の絵」ほか(ODE CLASSICS)
朝比奈隆(指揮)北ドイツ放送響、フランク;交響曲(ODE CLASSICS)
朝比奈隆(指揮)北ドイツ放送響、ラヴェル;スペイン狂詩曲&レスピーギ;ローマの祭ほか(ODE CLASSICS)
過日の大フィル東京定期、ブルックナー;第5交響曲天覧演奏会となったという、朝比奈隆@文化勲章の90歳記念、北ドイツ放送響シリーズの残り5枚が一挙店頭に並んだので、ついつい全部購入。
こんなことなら前に2枚買わずに、今日まで待って箱物にしておけば、国内盤新譜1枚分くらいの差額が出たのに…と、少々後悔モード。
以下、収録日とライナーノート寄稿者を挙げる。
ベートーヴェン;交響曲第6番は、1961年5月15日、ムジークハレ・ライヴ。
(ライナーノートは、元ベルリン・フィルのティンパニ奏者、ヴェルナー・テーリヒェン)
ベートーヴェン;交響曲第2番は、1960年1月18〜20日、スタジオ録音。
ベートーヴェン;P協第4番は、1990年3月15日、ムジークハレ・ライヴ。
(元北ドイツ放送響ヴィオラ奏者、カール・ハインツ・ヴェシュハウプト)
ムソルグスキー;展覧会の絵は、1961年5月15日、ムジークハレ・ライヴ。(上記「田園」と同日)
(『夕刊ハンブルク』の演奏会評)
フランク;交響曲は、1966年2月1〜4日、スタジオ録音。
(北ドイツ放送響トロンボーン奏者、ヨーゼフ・ココット)
ラヴェル;スペイン狂詩曲は、1962年1月16〜19日、スタジオ録音。
レスピーギ;ローマの祭は、1969年2月24〜25日、スタジオ録音。
(元北ドイツ放送響コンサートマスター、ヴォルフガング・バーテルス)
ラヴェルとレスピーギの盤は、買おうか買うまいか迷ったのだが、7枚中6枚だけというのは中途半端、という悪魔の囁きに負けてしまったのであった。(^^;;;
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)ベルリン・フィル、シベリウス;交響曲第4・7番(DGG)
ここのところ中古音盤堂奥座敷試聴会でシベリウス;交響曲第4番を議論しているのだが、他の同人が異口同音に、この盤(1965年録音)を賞讃されるので、買ってみた。
メジャー嫌いの斉諧生、昔はカラヤンは1枚たりとて手に取らない、というポリシー。その後「原則としてフィルハーモニア管又はウィーン・フィルとの初期録音に限る」と規制緩和したものの(^^;、DGGのベルリン・フィル録音を買うのは、誠に珍しい。
で、思い出したが、この前にフィルハーモニア管とのモノラル録音(1953年)があり、こちらは既に架蔵している。

7月26日(日): 

 このところ毎週シベリウス;交響曲第4番を聴いているが、今日も4点ほど同曲異盤を聴き比べ、また、関連してシベリウスを色々聴くことに。

ジョージ・セル(指揮)クリーヴランド管、シベリウス;交響曲第4番(クリーヴランド管自主製作盤)
セル生誕百年記念の自主製作盤(7枚組)に収められた、1965年12月のセヴェランス・ホールでのライヴ録音。聴衆が盛んに咳きこんでいるのが季節を感じさせる。(^^;
セルのシベリウス録音というと、Philipsにコンセルトヘボウ管と録れた2番しか知られていないが、実演では盛んに演奏したようで、前に出たクリーヴランド管75周年の記念盤には3番(1946年)と2番(1970年、東京文化会館)が、今回のセットには同年の7番「エン・サガ」が収録されている(この2曲については↓)。
第1楽章冒頭のチェロ独奏が、ややぼやけ気味の録音でガッカリさせられたが、その後の静謐さは素晴らしい。
弦合奏の透明感はライヴとは思えない素晴らしさ、これは全曲を通じて感心。第3楽章のクライマックスでも第4楽章でも極めて美しい。このコンビの演奏芸術の高みを思い知らされる。
あるいは第4楽章で轟然と鳴りつつも見事に整理された音響、セルのオーケストラ捌きの非凡さを示すものだろう。
惜しむらくは、管楽器の音色感が、少々、生暖かいこと。
第3楽章冒頭のフルート独奏など、ちょっと入れこみすぎで煩わしい。金管のフォルティッシモも、もう少し厳しければと思われる。
第4楽章の鉄琴にチューブラー・ベルを重ねているのは感心しない。
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)フィンランド放送響、シベリウス;交響曲第4番(芬FINLANDIA、LP)
ベルグルンドは同曲を4回録音しているが、そのうち最初のもので、1968年5月のヘルシンキ録音。オリジナルは英DECCAらしく、手に入れたいものだが、まだ見たことがない。
もう30年前、ベルグルンドも39歳(1929年生れ)の演奏だが、既にシベリウスとしては完成されたスタイルを持っている。
冒頭のチェロ独奏は、ずっと聴いてきた第4の中でも絶佳、実に凛とした素晴らしいソロを、第3楽章等でも聴かせてくれる。
音色からすると、ひょっとして若き日のアルト・ノラスではないかと思うのだが、彼の経歴にはオケにいたことなど出てこないので、あるいは知られざる名手がいるのかも。
オーケストラ全体に緊張感がみなぎり、雄渾といっていい音楽が終りまで続く。
聴かせどころのヴァイオリン(第3楽章で主題が2回目に出る直前とか、第4楽章でグロッケンシュピールがフォルテで鳴るクライマックスのあととか)は絶美、木管はいずれも北欧の音色感で可憐そのもの、特にフルートが素晴らしい(オーボエが少し弱いか)。
試聴したのはLPだが、FINLANDIAからCD化されているので、一度、聴いていただきたいと思う。
なお、第4楽章では鉄琴を使用。
ジョン・バルビローリ(指揮)ハレ管、シベリウス;交響曲第4番(EMI)
LP時代に親しんだ、1969年録音の名盤である。珍しく国内盤、"HS-2088 Remaster Series"というもの。
イギリスのオーケストラからか、バルビローリのヒューマニティか、弦合奏は暖かめの音色。
それでいてティンパニの打ち込みは厳しく(第1楽章真ん中あたり)、金管の「バリッ」という咆哮も鋭く凄まじい。
ただ、弦にdolceの指定があるところで、ちょっと甘い表情がつくのは疑問。また第3楽章のクライマックスで、弦合奏の高揚感は素晴らしいが、裏の木管が掻き消されるのは残念。
第4楽章では鉄琴を使用しているが、一部でスコアに無いところで叩かせているのが気になった。
ジェイムズ・レヴァイン(指揮)ベルリン・フィル、シベリウス;交響曲第4番(DGG)
1994年録音、いろいろ言われているが、こうやって各盤と聴き比べると、やはりベルリン・フィルは名人揃いだと思う。
特に木管には感心、中でもオーボエ(あるいはシェレンベルガーか)は、最美。第2楽章のソロはもちろん、第4楽章最後の下降跳躍音型も、見事に決める。
弦合奏も、ハーモニーが美しい。ヴィブラートを大きめに掛けた時でも、掛け方が揃っているからか、音が濁らない。
問題は予想どおり(^^; レヴァインの指揮で、dolceやespressivoの指定があると、すぐ甘ったるい表情をつけるし、第3楽章のクライマックスの弦合奏など、ほとんどブラームスの第3交響曲の第3楽章みたいな盛り上がらせ方。
第4楽章は主題を歌いすぎてリズムが甘く、肝心の鉄琴にも意味を感じていないようで、音が弱すぎる。
開放的で壮麗な音響を良しとする向きには好適だが(オケも上手いし)、後期シベリウスの凝集した音楽世界は再現されない。
クルト・ザンデルリンク(指揮)ベルリン響、シベリウス;交響曲第6番(Berlin Classics)
ザンデルリンクは、ドイツ系指揮者の中ではシベリウスへの適性を持っている人だと思う。
ETERNAから出ているシベリウスの交響曲の録音データを見ると(マルPの年で代用したのもあり)、
  1964年 #2(ガラグリ)
  1969年 #4(ケーゲル)
  1970年 #7(ガラグリ)、#6(ベルグルンド)、#3(ザンデルリンク)
  1971年 #1(ガラグリ)、#5(ザンデルリンク)
と、4人の指揮者で全曲録音しておいて(これだけ集中的にやったのだから、意図的なプロジェクトだったろう)、
  1974年 #2#6#7
  1976年 #1
  1977年 #4
と、ザンデルリンクで再録音し、1人の指揮者による全集を完成している。
冒頭から弦合奏が実に美しい。実演であれば、陶然としてしまうに違いない。LPで聴いてみたいところだ。
木管の色彩感を消し、重めのリズム、鬱然とした北欧の冬のイメージだろうか。
斉諧生がこの曲に持っているイメージとは少々食い違うが、先週聴いた第4よりは、ずっと感心した。
ジョージ・セル(指揮)クリーヴランド管、シベリウス;交響曲第7番&交響詩「エン・サガ」(クリーヴランド管自主製作盤)
「エン・サガ」が素晴らしい。
これはシベリウスの交響詩の中では最も早い時期の作品で、1892年作曲、1901年改訂(cf.第1交響曲:1899年作曲、1900年改訂)。
上記の第4交響曲演奏で気になった管楽器の音色感が、むしろ初期作品にマッチし、また、セルの力感に満ちたメリハリのある音楽運びが曲想に合致して、ワーグナーかチャイコフスキーにも似た興奮を催す。
ああ、これで第1交響曲を聴きたかった!
第7番の交響曲は、演奏旅行先のヘルシンキでのライヴ、モノラルで、聴きやすくはあるが、レンジが狭い。
室内楽のようなと言われたバランスとアンサンブルの妙は聴き取れるが、この曲の要であるトロンボーン独奏を抑えているのと、終結の付け方に幻想味が乏しいのが残念。
デヴィッド・ジンマン(指揮)チューリヒ・トーンハレ管、ベートーヴェン;交響曲第8番(ARTE NOVA)
ライナーノートに記されたメンバー表を数えると、第1Vnから12-10-8-6-4の小編成。もちろん、管は2人ずつのみ。
キビキビしたテンポ、弾むリズム。弦の刻みを猛然と弾かせ、木管を溶けこませない。
アクセントを敏感に付すフレージング、ティンパニや金管の強奏で迫力を刻む。
なるほど、古楽器派の影響歴然たる表現である。
内声を強調しているので(メヌエットのトリオではホルンよりチェロが目立つほど)、立体感はある。まずまず新鮮な音楽が聴けることは間違いない。
ただ、いかにもヴァイオリンの音色が浅く、残響の多さとともに、聴いていて少々愉しめなかった。
「古楽器演奏の影響を強く受けながら、それを完全に自分自身の個性に消化しつくしている。…未来は明るくなったと言えよう。」@宇野*尊師*とは、ちょっと話が大きすぎると思われる。
カプリングの第7番に期待を繋いでおきたい。
イェフディ・メニューイン(指揮)シンフォニア・ヴァルソヴィア、モーツァルト;序曲集(後半)(CLASSIC fM)
前半を聴いた12日の項に書いたとおり、メニューインの音楽は素晴らしいが、オーケストラの音が美感を欠き、ディスクとしての出来は芳しくない。
どこかの会社が、彼の芸術をきちんと録音してほしいものだ。
ミヒャエル・ギーレン(指揮)バーデン・バーデン南西ドイツ放送響、シェーンベルク;「ペレアスとメリザンド」(Intercord)
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ドレスデン・フィルほか、シェーンベルク;「グッレの歌」(一部)(Berlin Classics)
いずれもシェーンベルク初期の作、ケーゲルのシベリウスを考える比較材料として聴いてみた。
最近聴いている「浄夜」(弦楽六重奏版)等と同様、このあたりはまだまだわからない。もっと聴かねば…。
エンリケ・バティス(指揮)メキシコ・シティ・フィル、レブエルタス;「マヤ族の夜」(ASV)
23日の項に書いた『クラシック名盤大全 管弦楽曲篇』@音楽之友社を拾い読みして、面白そうだと思った曲のディスクを架蔵していることに気付いたので(シェリングのポンセ;Vn協が入っているから)、聴いてみた。
ちょっと、期待外れ。
ジョン・ウィリアムズ(G)エサ・ペッカ・サロネン(指揮)武満徹;「夢の縁へ」&「虹へ向かって、パロマ」(Sony Classical)
ジュリアン・ブリーム(G)サイモン・ラトル(指揮)武満徹;「夢の縁へ」(EMI)
サロネンとラトルの同一レパートリー対決を試みた。
うーん、現代音楽に弱い斉諧生、聴き比べても良し悪しが判別できぬ。
強いて言えば、ウィリアムズの音の方が、癖が無い分、好もしい、という程度。
むしろ、「虹へ〜」の方が、オーボエ・ダモーレの艶やかな響きが美しく、印象に残った。

7月23日(木): クラシック名盤大全 管弦楽曲篇』@音楽之友社を購入、ざっと目を通す。
前の『交響曲篇』でも思ったのだが、レベルが低くなったと思う。

  1. 音楽之友社の編集能力の欠如
    執筆者が挙げてきた盤を配列しただけ、メンデルスゾーン;「真夏の夜の夢」組曲が13枚! 並んでいるのにラヴェル;「ダフニスとクロエ」は5枚(+全集所収のもの3枚)。
  2. 執筆者の恣意的選曲の横行
    例えば片山杜秀あたり。現代曲啓蒙の姿勢はいいとしても、中には、下手物を挙げておもしろがっているとしか思えないものがある。
  3. 執筆者の質の低下
    最近、『レコ芸』の「相談室」でも、回答者の誤りが、しばしば指摘されているが、不勉強な人が増えたと思う。ステンハンマル;「管弦楽のためのセレナード」で、いくら何でもヤルヴィ旧盤を選ぶとは…。

 

マルタ・アルゲリッチ(P)シャルル・デュトワ(指揮)モントリオール響、プロコフィエフ;P協第1・3番&バルトーク;P協第3番(EMI)
EMIから、この顔合せが出たのは驚きだが、アルゲリッチ久々の協奏曲録音、買わざるべからず。
まだ2人でDGGに録音してた頃、たしか東京公演の時に夫婦喧嘩して、アルゲリッチだけさっさと出国した、なんてことがあったような。
バランス・エンジニアはジョン・ダンカーリー、この人もDECCAの人だと思っていたのだが…?

7月22日(水): ステラ』7/31号@NHKにFM「現代の音楽」出演の白石美雪さんが紹介されている。

 なんだかんだ言って、夜な夜なCD屋をうろつく日々が復活しつつあるが、今日は中古屋で掘出し物1点を購入。

「シカゴ交響楽団の100年」(シカゴ響自主製作)
原タイトルは、"CHICAGO Symphony Orchestra, the First 100 Years"
1990年に発行された(一応)非売品の12枚組・特別仕様盤、一部既出音源を含むが、ほとんどは放送局による演奏会録音。
最近、ニューヨーク・フィルとかクリーヴランド管とか、オーケストラがアニヴァーサリーに演奏会録音をCD化することが珍しくないが、これは、そのはしりともいえる企画だった。
当時はまだインターネット環境がなかったが、たしか『レコ芸』に広告も出たし(それでもシカゴに直接注文するのだったと思う)、一部の輸入盤店の店頭にも並んでいた。
当時、たしか40,000円前後の値付け、ちょっと手が出なかった。
今日、ふと中古屋に立ち寄ると、超安値(@700円強)で売りに出ているのに遭遇、ここで逢うたが百年目、と購入。
2代音楽監督フレデリック・ストックなんてのもあるし、もちろんショルティは大量に入選しているが、斉諧生的にめぼしいところは次のようなもの(録音年順)。
フリッツ・ライナー(指揮)プロコフィエフ;交響曲第5番(r.1958)
フリッツ・ライナー(指揮)サティ;ジムノペディ第1・3番(r.1960)
ピエール・モントゥー(指揮)ベルリオーズ;序曲「ローマの謝肉祭」(r.1961)
ジャン・マルティノン(指揮)マーラー;交響曲第10番(クック版)(r.1966)
レオポルト・ストコフスキー(指揮)ショスタコーヴィッチ;交響曲第10番(r.1966)
イシュトヴァン・ケルテス(指揮)バルトーク;「不思議なマンダリン」組曲(r.1968)
ダニエル・バレンボイム(P)カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮)ブラームス;P協第2番(r.1977)
ラファエル・クーベリック(指揮)ルーセル;交響曲第3番(r.1983)

7月21日(火): 退勤後、久し振りに映画を見る。この前映画館に行ったのがいつか、思い出せないくらいだ。
 作品は、『D坂の殺人事件』(実相寺昭雄監督)
 何をいまさら…と思われるかもしれないが、京都では初公開である。しかも、昼間は夏休みの子供向け映画を掛けている館の夜間1回のみの上映、今日が初日にも関わらず観客わずか30名程度。
 実相寺調の奇矯な画面・語法が、やや後退し、全編を通じて緊張感が途切れない佳作であった。

三輪ひとみの小林少年−これが*お目当て*との説を作す者あり−の中性的存在感がもう少し出ていれば、終結場面がもっと生きたのにとも思うが、それはそれで話の運びを滞らしたろう。うーむ。

 緊張感を大いに演出したのが音楽であった。シンセ系で安上がりに作った音かと思っていたら、終結後の字幕で紹介されたのが「原田節(オンド・マルトゥノ)」。いや、失礼しました。

 映画の前に、1枚だけ購入。

デヴィッド・ジンマン(指揮)チューリヒ・トーンハレ管、ベートーヴェン;交響曲第7・8番(ARTE NOVA)
ピエール・モントゥーに指揮を師事した人は、ネヴィル・マリナーからアンドレ・プレヴィンエリック・カンゼルまで多士済々だが、ジンマンもその一人。
モントゥーは斉諧生御贔屓の名匠だが、その縁で買ったわけではない。
『レコード芸術』8月号の月評で、宇野*尊師*が「古楽器演奏の影響を強く受けながら、それを完全に自分自身の個性に消化しつくしている。…未来は明るくなったと言えよう。」と絶讃。
最近、尊師はずいぶん点が甘くなっているので、半分は眉に唾するとしても、残り半分は、やはり聴いてみたいもの。

7月20日(祝): 現在、東京のセゾン美術館「ディアギレフのロシア・バレエ」展が開かれている。
 ディアギレフについては当「畸匠列伝」中、「マルケヴィッチとディアギレフ」の頁を御覧ください。
 東京までは見に行けない、と地団駄踏んでいたのだが、関西でも開かれることが判明した。
 滋賀県立近代美術館で、期間は8月22日(土)−10月11日(日)。滋賀県立琵琶湖ホールのオープン記念企画らしい。
 所在地等の詳細は同美術館の公式ホームページを御覧ください。

 7月4日の項に書いた、『ノルディックサウンド広島』に注文していたステンハンマルの未架蔵CDが届いた。
 全部で8枚だが、ほとんどは1枚にステンハンマルは1曲、演奏時間にすれば、全部合わせても30分強。(^^;;;

ソルヴェイグ・ファリンイェル(Sop)グスタフ・ユープフェバッカ(P)「ヨーハン・ルードヴィグ・ルーネベリ」(proprius)
これがいちばん曲数が多く、歌曲6曲(作品4、作品8から)を収録。
J・L・ルーネベリの詩による歌曲を集めたCDで、ステンハンマルのほかシベリウス、ラングストレム等の曲を収める。
ソルヴェイグ・ファリンイェル(Sop)ナネッテ・ノヴェルス・ステンホルム(P)「ソルヴェイグの歌」(Swedish Society)
「月の光」(作品20-4)を収録。
アルバム・タイトルは、グリーグ;劇音楽「ペール・ギュント」中の「ソルヴェイグの歌」を収めているのと、歌手の名前とを掛けたもの。副題は「スカンジナヴィア歌曲の精華」、アルヴェーンやペッタション・ベリエル、ニールセン等の曲を収録。
エリーザベト・ゼーダーシュトレーム(Sop)スティーグ・ヴェステルベリ(P)「スウェーデンの歌をうたう」(Swedish Society)
「アダージョ」(作品20-5)を収録。指揮者のヴェステルベリがピアノを弾いている。
ショーグレンやペッタション・ベリエル等の曲を収録。
ユッシ・ビョルリンク(T)ニルス・グレヴィリウス(指揮)「スウェーデンの歌」(Swedish Society)
ホーカン・ハーゲゴール(Br)シェル・インゲブレトセン(指揮)「オペラのアリア、スウェーデンのバラードと歌曲」(CAPRICE)
イェスタ・ヴィンベリ(T)ほか「スウェーデンのテノール」(Swedish Society)
ソニー・ヴァレンティン(T)王立スウェーデン陸軍軍楽隊、「スウェーデンを少々」(proprius)
以上4枚は、いずれもステンハンマルの最も有名な曲「スヴァーリエ」(作品22-2)を収めているもの。
ビョルリンクは最晩年の録音。
ハーゲゴールは2枚のLPから編集したCDで、前半はワーグナー;「夕星の歌」(タンホイザー)はじめヴェルディ、モーツァルト等の有名アリアを収める。
ヴィンベリは、ビョルリンク、ゲッダという、スウェーデン出身の3人のテノール歌手のオムニバス・アルバム。
最後は吹奏楽が伴奏している珍品だが、別にミリタリー調になっているわけではない。(^^)
ペール・フレムストレム(Fl)マッツ・ベリストレム(P)ほか「北欧の春」(Swedish Society)
ト短調のピアノ・ソナタ(番号無し)の第2楽章ロマンツェをフルートとギターに編曲したものを収録。
ペッタション・ベリエルやシベリウス、ニールセン等の小品をヴァイオリンとギター、フルートとギターに編曲した曲集。

 エサ・ペッカ・サロネンのCDがたくさん買ったままになっているので、まずニールセン;交響曲第5番を聴いたら、他の指揮者の演奏と比べたくなってしまった。

エサ・ペッカ・サロネン(指揮)スウェーデン放送響、ニールセン;交響曲第5番(Sony Classical)
ラファエル・クーベリック(指揮)デンマーク国立放送響、ニールセン;交響曲第5番(EMI)
レナード・バーンスタイン(指揮)ニューヨーク・フィル、ニールセン;交響曲第5番(Sony Classical)
トーマス・イェンセン(指揮)デンマーク国立放送響、ニールセン;交響曲第5番(DUTTON)
ユッカ・ペッカ・サラステ(指揮)フィンランド放送響、ニールセン;交響曲第5番(FINLANDIA)
まず演奏時間の比較表を掲げる。
1(1) 1(2) 2(1) 2(2) 2(3) 2(4)
サロネン('87) 9:41 10:29 5:47 2:53 5:10 2:52 36:52
クーベリック('83) 11:42 9:41 6:21 3:14 4:32 3:11 38:41
バーンスタイン('62) 9:45 8:50 5:11 2:38 4:21 2:27 33:12
イェンセン('54) 10:28 8:26 5:31 2:43 3:41 2:38 33:27
サラステ('97) 10:49 8:31 5:45 2:40 4:09 2:41 34:35
サロネン盤
表に示すとおり、第1楽章前半は5盤中最速、スマートかつ鮮烈な音楽である。
この楽章の特徴である、スネア・ドラムの「タンタタタタタンタンタン」のリズムに先導されたマーチ風の音楽では、むしろティンパニと低弦のピツィカートによる4拍子の基本リズムを強調して、キッパリした行進曲に仕立てている。盛り上がりも緊張感に満ちており、最も好感が持てた。
第1楽章後半は、逆に最長を記録している。この部分前半の慰藉の歌をたっぷりと歌い上げ、感動的なクライマックスを築くとともに、後半はスネア・ドラムのカデンツァを存分に叩かせるとともに、トロンボーンの響きを中心に、圧倒的なクライマックスに至る。
楽章結尾のクラリネット・ソロは、音色に嫌味がなく、美しい弦の和音に支えられて、溶けるように終わっていく。5盤中、最高の第1楽章である。
第2楽章第1部のアレグロは良いテンポで始まり、後半ではテンポを上げるが、やや冷静、熱狂には至らない。
第2部のプレストは、やや遅め、弦の響きは美しいが、他盤に比べると盛り上がりに欠ける。
第3部は、演奏時間が示すように、かなり遅いテンポで、夢幻的に美しく弦が歌う。フルート・ソロもヴィブラートを抑えた渋い音色が最高。美しく盛り上がる。
第4部はバランスよく、堂々たるテンポで進行。終結では木管の音型も生かしながら、見事なコードが響き渡る。
クーベリック盤
唯一のライヴ録音であり、ちょっと分が悪かった。
第1楽章後半は暖かい歌が聴けるし、第2楽章も熱気に満ちて、終結では実演的な盛り上がりを見せる。
他の盤に比べると特徴に欠け、この指揮者の珍しい録音としての価値に留まろう。
バーンスタイン盤
上表のとおり、最速の演奏。
ニールセンはバーンスタインお得意のレパートリーで、2・3・4・5番の録音が残っているが、その中でも真っ先に録音したのが、この5番。
わりと主旋律中心のバランスで、表情も濃厚。
スネア・ドラムは猛然と響き渡り、第2楽章第1部後半では猛烈なアッチェランドがクライマックスへ導く。
とにかく、聴いていて実に面白いが、北欧的情緒は吹き飛んでおり、何やらコープランドでも聴いているような気もしてくる。(^^;
ファースト・チョイスには薦められないが、この曲の演奏を語るときには落とせない1枚だろう。
イェンセン盤
指揮者はニールセンの棒でチェロを弾いていたという経歴の持主で、特にテンポ感は作曲者譲りだという。
別にお墨付きだからというわけではないが、特に第2楽章のテンポは、一番ぴったり来る
第1部は快速で始まり、後半ではアッチェランドをかけてクライマックスへ持って行くし、第2部のプレストもバーンスタインに次ぐ速さ。第3部から第4部も速いテンポで畳みかけ、熱狂的に盛り上がって終結する。
音色的にもバーンスタイン盤のような違和感がなく、総合的には第一にお薦めしたい演奏である。
モノラルではあるが、復刻がきわめて良好、あまりハンディを感じさせない。
サラステ盤
最新録音だけあって、オーケストラの響きは実にクリア。
第1楽章冒頭のファゴットは、最も憂愁の趣を湛える。それに続くフルート・ソロも清澄の極み。
後半は、他盤に比べると、やや迫力に欠け、スネア・ドラムのカデンツァも、ちょっと工夫がない。
第2楽章も、第3部の弦や木管の清澄な美しさが光るが、熱や迫力の点では、他盤に一歩を譲る。
終結ではホルンの響きを中心にしているのが面白い。
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ストックホルム室内管、ハイドン;交響曲第82番「熊」(Sony Classical)
敏感な音楽で、小気味よい進行が快感である。
内声部の音をひとつ取っても、いっさい無意味な音がなく、聴いていて感心させられる。
2楽章アレグレットは心弾むリズム、3楽章メヌエットの主部は堂々たる響き。
サロネンの録音は近現代中心だが、古典派のレパートリーを増やしてくれることを心から期待したい。
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)フィルハーモニア管、シベリウス;交響曲第5番(Sony Classical)
フィルハーモニア管でシベリウス;第5交響曲といえば、ラトルの本格デビューもそうだった。どうも、この2人、因縁を感じさせる。
冒頭のホルンや木管の音は、フィルハーモニアらしからぬ、北欧風のいい音で感じ入ったのだが…
聴き進むにつれて、どうも、斉諧生のイメージするシベリウスの音楽よりも、重いのが気になり出した。
弦の刻みが克明なのは面白いが、ほんの僅か、リズムが重い。
第1楽章終わりのトランペットの音色にも、もう少し透明感が欲しい。
第2楽章の弦合奏の音も暖色系よりで、テンポの変動や音楽の流れが、渋滞する感じあり。
第3楽章では、肝心のホルンやトランペットの音にコクがなく、どうも欲求不満のまま終わってしまった。
録音は1986年、比較的初期の録音のせいだろうか。あるいは、フィルハーモニア管という素材からくるものだろうか。
あるいは、斉諧生のシベリウス演奏への好みが、偏っているせいかもしれない。
ともあれ、サロネンには、編成を小さめにしたロサンジェルス・フィルで、シベリウスの全交響曲を録音してくれることを期待したい。その時には、ベルグルンド&ヨーロッパ室内管の全集を超える、最高の演奏が生れるだろう。
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ロサンジェルス・フィル、バルトーク;管弦楽のための協奏曲(Sony Classical)
第1楽章の冒頭、ゆっくりひきずって入ってくる。フルート・ソロの、何という繊細さ!
ヴァイオリンの刻みからは、夜の音楽、バルトークの「闇」が立ち上ってくる。このあたりの雰囲気は、他の盤を大きく凌駕するだろう。最高!
弱音の木管の絡みや、それを支えるハープや弦の密やかな響きも実に美しく、サロネンの音楽性とオーケストラ・コントロールの確かさを実感させる。
金管もうまいのだが、民俗的な旋律にどうも味がなく、バルトークのそういう面には、どうもサロネンはあわないのかもしれない。
第2楽章はリズムが見事、各木管楽器の二重奏と弦楽器の合いの手も小気味よい。
音色のコントロールも上乗、素晴らしい演奏である。
第3楽章では、オーボエがppでレガートを吹くという難易度の高い技を見事に決め、フルートやピッコロの音色も甲高くなく、むしろ東洋的な無常感を思わせる渋い音色。
ただ、ffで奏される弦の激情的旋律には、もうひとつ豊かさが欠け、第1楽章と同じことを感じた。
第4楽章は、やはり木管や弦の音色が素晴らしい。
第5楽章は、猛烈なスピード感が光る。全曲を通じてのことだが、木管や、弱音器付きの金管の音色の見事さは、おそらく現在の世界のオーケストラでもトップクラスだと思う。
中間部でのリズムの弾みも心地よく、終結ではティンパニがバッチリ決めてくれた。
ラデク・バボラク(Hrn)イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮)シェック;Hrn協奏曲ほか(Supraphon)
チェコ・フィルからミュンヘン・フィルに移籍した、フレンチ・ホルンの名手の初のソロ録音。
フレンチとしては重めのコクのある音色が素晴らしい。まるでサキソフォンのように、軽々と滑らかに音をコントロールするのに舌を巻く。
シェックの曲では第2楽章が、晩年のR・シュトラウスのような、夕暮れの美しい境地で、気に入った。
モーリス・アッソン(Vn)イアン・ブラウン(P)「ヴァイオリンの華麗なショウピース集」(英ASV、LP)
やはり弦楽器はアナログ録音をLPで聴くのが美しい。
いわゆる美音には分類されないだろうが、なかなかに魅力的な音色、節回しも上手い。粋や懐かしさがそこここに漂う。
ブラームス;スケルツォ(いわゆるFAEソナタ)では、師シェリング譲りの立派な音楽、忘れられないヴァイオリニストである。

 今日のステンハンマルのCDの情報とジャケット画像を、ステンハンマルの頁の「作品表とディスコグラフィ」に追加する。


7月19日(日): 

 このところ、中古音盤堂奥座敷試聴会でヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響、シベリウス;交響曲第4番(Berlin Classics)を議論しており、今日も2点ほど同曲異盤の聴き比べ。

朝比奈隆(指揮)北ドイツ放送響、R・シュトラウス;アルプス交響曲(ODE CLASSICS)
1990年3月19日のムジークハレ・ライヴ、録音はオーディオ・ファイル的鮮烈さはないが、十分良好。
演奏は、オーケストラの楽員連中が気持ちよさそうに弾いたり吹いたりしている感じが伝わってくる。ライヴにつきものの傷を別にすれば、堂々たる再現。
「頂上にて」でテンポを緩めるスケールの大きさなど、欧米の指揮者には今どきいないかもしれない。
こういう調子でブラームスとかブルックナーとかの録音があれば、と思わずにはいられない。
エルネスト・アンセルメ(指揮)スイス・ロマンド管、シベリウス;交響曲第4番(英DECCA、LP)
嘘みたいな録音だが、実在する。カプリングは交響詩「タピオラ」、この他に交響曲第2番の録音もある。
およそ雰囲気のない演奏で、特に木管の音に違和感が大きい。ヴィブラートをかけすぎるフルート、妙に音の震えるクラリネット、フランス式のファゴットは音が軽すぎる。
、シベリウスはこの曲あたりから、ベートーヴェン以来の交響曲書法(ソナタ形式とか第1主題と第2主題の対比とか)を解体して、独自の世界を構築しているのだが、「数学者」アンセルメには、どうも、そういう問題意識がないようだ。
第2楽章は通例のスケルツォに引きつけていて、フルート独奏など、"Tranquillo"指定にもかかわらず、速いテンポでリズミックに吹かせている。
第4楽章では、何とかフィナーレらしく盛り上げようと一生懸命、弦や金管のffなど乱暴なくらいに奏させるのだが、それではシベリウス(特に後期)の世界は沈黙してしまう。
なお、第4楽章では全面的にチューブラー・ベルを使用している。
クルト・ザンデルリンク(指揮)ベルリン響、シベリウス;交響曲第4番(Berlin Classics)
第1楽章冒頭の弦合奏は、同じ東独のケーゲルに比べ、クリアな鳴らし方。全体に、あまりオーケストラを轟々と鳴らさず、すっきりした和音を指向しているようで、北欧らしさ乃至伝統的シベリウス演奏を意識しているように思われる。
とはいえ、やはりお里が知れるというか、ドイツ音楽の語法が顔を出す
例えば、弦の刻みが来ると、小節の頭にアクセントを置いて、拍節感を強調する。シベリウス的には、逆に拍節感をぼかして、「森のざわめき」にしてほしいところだ。
その他、ディミヌエンド指定があると、ついリタルダンドしてしまうとか、金管やティンパニを抑えめにするバランスを取りがち、とか。
オーケストラの個性もあるのかもしれない。北欧のオーケストラとの演奏でも聴ければ面白いかも。
なお、第4楽章は鉄琴使用。
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ドレスデン・フィル、アルビノーニ;アダージョ(LASER LIGHT)
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ドレスデン・フィル、シベリウス;悲しきワルツ&グリーグ;2つの悲しき旋律(DENON)
いずれも絶品、小品でますます冴えるケーゲルの表現力。
シベリウスでの節回しの妙、グリーグの第2曲でスル・ポンティチェロの音色を生かした透明感。
圧巻はアルビノーニで、鋭く磨き上げた弦合奏から透徹した悲しみと慟哭が突き抜けてくる
このページでも繰り返し書いているが、ケーゲルのことを「爆演」指揮者と思うのは、大きな誤りであることを、力説しておきたい。
アナトリー・ヴェデルニコフ(P)ベートーヴェン;Pソナタ第30番(DENON)
これは良かった。
明るめの音色、速めのテンポ、誇張を避けた表情、それでいて隅々までコントロールされたニュアンス…、絶好調のシューリヒトみたいな音楽、と聴いた。
もっともピアノ音楽に疎い斉諧生、「ピアノのシューリヒト」ではヴェデルニコフの真価にはまだ不足、と叱られるかもしれない。

7月18日(土): 昨日で祇園祭も山を越え、今日の京都は注目したいコンサートが3つ。
 京都コンサート・ホールの大ホールでは、ジャン・ギュー;パイプ・オルガン・リサイタルムソルグスキー;「展覧会の絵」のオルガン版。
 同じく小ホールでは、パリ留学中の村治佳織嬢が一時帰国してのリサイタル・シリーズ。都合さえつけば、これは是非行きたかったところ。(「聴きに行くのか見に行くのかどっちだ!」ですって? (^^))
 そして、斉諧生が参じたのは…

 京都C.モンテヴェルディ合唱団第21回定期演奏会(指揮:当間修一)@京都府立府民ホール「アルティ」
 アマチュアというよりノン・プロに近い合唱団(Webpageあり)だと思うが、なぜこっちに来たかというと、一にも二にも、モンテヴェルディ;「聖母マリアのための夕べの祈り」(以下「ヴェスプロ」と書く。)が演奏されるから。
 しかも、「通奏低音版」と告知されているから、終曲の「マニフィカト」は、ふだん演奏される7声のものではなく、斉諧生鍾愛の6声の方に違いない。
 さして大きくないホールだが(500席くらい)、2階席を閉めているにもかかわらず、空席が目立つ。開演10分前くらいに駆け込んだのだが、いいところに座れた。周りを見渡すと、ほとんどは団員の家族・友人と覚しい。
 最初にマドリガーレ集から3曲ほど。あらずもがなと思うが、発声練習の代わりか遅刻者救済用か。
 さて、メインの「ヴェスプロ」、「通奏低音版」というのは、やはり「6声のマニフィカト」の編成を全曲に当てはめたものだそうな。
 その通奏低音はチェロ、ポジティヴ・オルガン、コントラバス、リュート。これはアンサンブル・シュッツのメンバー。
 合唱団は、総勢36名ほど(ソリスト含む)。手にしている楽譜は、遠目にもソレとわかる、黄色のオイレンブルク版。「ヴェスプロ」は数種類のスコアが出版されているが、何がいいのかわからなかったので買わずにいたのだが、今度、捜してみようと思う。
 さて、開曲劈頭のファンファーレは、もちろん無し。リュートがちょっと分散和音を爪弾いて、合唱が歌い出す。
 合唱団、ソリストとも、なかなかの歌唱を聴かせる。もちろんCDに聴くヨーロッパの団体のようにはいかず、特に高音域では合唱の音色が硬く、和音も決まりにくいし、ソリスト(団員もしくは当間氏系団体のメンバー)の技量もメリスマの技術など聴き劣りする。
 とはいえ、モンテヴェルディの音楽の素晴らしさを再現するだけの水準は十分にクリアしており、大きな不満も感じずに、全曲を聴き通すことができた。
 讃歌「めでたし海の星」からは舞台後方、2階左翼席、2階右翼席にも合唱を配置し、文字どおり立体的な音楽づくり。これは、もともとモンテヴェルディがヴェネツィアの聖マルコ大聖堂の構造を当て込んで、空間的効果を発揮するように書いているのである。
 終曲にして全曲のクライマックス、「マニフィカト」の冒頭は、"Magnificat"が4回繰り返される。
 最初は2階左翼席のソプラノだけ、順々に編成を拡大しながら繰り返されて、4回目は四方から包み込むようにクレッシェンド。この響きが聴けただけでも、実演に足を運んだ甲斐があった。
 舞台上の合唱が定旋律系の声部を、後方・2階席の合唱が装飾音系の声部を担当、モンテヴェルディを聴く醍醐味を堪能させてもらった
 アンコールは「グロリア」(「ヴェスプロ」とセットで出版された、ミサ「その時イエスは」からだろう)ほか1曲。

 演奏会前にCD屋を廻る。久しぶりに"La Voce"へ行った。

クリスティアン・ティーレマン(指揮)フィルハーモニア管、シューマン;交響曲第2番ほか(DGG)
前に中古音盤堂奥座敷の第1回試聴会でベートーヴェンを酷評したティーレマン。その後は何も買う気がしなかった。
ところが、本日発売の『レコード芸術』8月号の特集で、宇野*尊師*がこの演奏を第2位に推しておられ(1位はシューリヒト)、やはり聴かねばと思っていたところ、CD屋のワゴン・セールで見つけ、半額程度になっていたので購入したもの。
ヘルマン・シェルヘン(指揮)フランス国立放送管、マーラー;交響曲第5番(HMF)
3楽章以降に大幅なカットを施し、終演後に物凄いブーイングが聞こえることで有名な、シェルヘンのライヴ録音(1965年)。
斉諧生はこの曲が苦手で、どうしても冗長にしか聴こえない。そこで、第3楽章など3分の1に縮めているというシェルヘン盤ならと思い、捜していたところ、"La Voce"に在庫があったので買い求めたもの。
モーリス・アッソン(Vn)イアン・ブラウン(P)「ヴァイオリンの華麗なショウピース集」(英ASV、LP)
アッソンはフランス生れ、パリ音楽院を卒業後、シェリングに出会って師と仰いだ(バッハ;複協奏曲でセコンドを弾いている)。師匠同様、南米に移住し(→ヴェネズエラ。シェリングはメキシコ)、当地の音楽大学で教鞭を執っていた。
ディスクの数は少ないが、CFPに録音したブラームス;Vn協(ロッホラン指揮)が良く、それ以来、注目している。
このLPは1977年頃の録音、パガニーニやサラサーテ、ヴィニャフスキ等の技巧的な曲を収めたもの。
武久源造(Fp)シューベルト;即興曲集(コジマ録音)
武久は、ヴァイオリンの和波孝禧と同様、盲目の音楽家。素晴らしい音楽性の持主であることも、また共通している。
柴田南雄先生が『シフォーチの別れ』(AEOLIAN)を「演奏・選曲・楽器の音色と音律のいずれもまことに快い」と絶讃されて以来、彼のCDは出れば買うことにしている。
今回の「鍵盤音楽の領域」シリーズ第4巻は、初めてフォルテピアノを使用し、シューベルトの作品90と作品142両方の8曲を収録。
使用楽器はシュタイン製のオリジナル(1820年頃)、武久自身の執筆になるライナーノートで「とにかくよく歌う」と評している。
ヒリヤード・アンサンブル、ラッスス;レクイエムほか(ECM)
ひところ、ルネサンスのポリフォニーに凝った時期があったが、最近は足が遠のいていた。
この盤、ヒリヤードのラッスス録音というので気になっていたのだが、そういうわけで買いそびれていた。
ところが『レコード芸術』8月号の月評で皆川達夫氏が「ちかごろ稀有なルネサンス・ポリフォニーの名演奏として高く評価したい」、服部幸三氏も「男声クヮルテットが達しえる最高の境地」と絶讃、これはひとつ聴いてみようと買ってみたもの。
ウィリアム・クリスティ(指揮)レ・ザール・フロリサン、モンテヴェルディ;「聖母マリアのための夕べの祈り」(ERATO)
今夜の演奏曲目の新譜を見つけた。録音情報に接して以来、待望していた盤である。
この曲は、出れば買うことにしているので、もちろん購入。
「マニフィカト」は、7声のものだけを収録。どうして6声の方も一緒に入れてくれないのかなァ。

 今日の演奏会を演奏会出没表に追加する。


7月15日(水): 

 退勤後、祇園祭の人混みを掻き分け掻き分け、大急ぎでCD屋を廻る。またしても@590円セールで買い込んだ。

朝比奈隆(指揮)北ドイツ放送響、R・シュトラウス;アルプス交響曲(ODE CLASSICS)
朝比奈隆(指揮)北ドイツ放送響、ショスタコーヴィッチ;交響曲第5番(ODE CLASSICS)
北ドイツ放送のセイウチ印入り、"Authorized by Maestro Takashi Asahina"と記された、堂々の正規盤である。「90歳の誕生日に」と献辞付き。
シュトラウスは1990年3月19日のムジークハレ・ライヴ、ショスタコーヴィッチは1960年1月18〜20日のスタジオ録音。
ライナーノートもシュトラウスはシカゴ響支配人のヘンリー・フォーゲル、ショスタコーヴィッチは北ドイツ放送響創設以来の第1ヴァイオリン奏者ウルリヒ・ベンティエンが朝比奈讃を執筆。
朝比奈隆にはドイツのオーケストラを振ってほしいと願っている斉諧生、ハンス・シュミット・イッセルシュテットの手兵北ドイツ放送響贔屓の斉諧生にとっては、是非盤である。
あと5枚、フランクやムソルグスキーが楽しみである。
セルジュ・ボド(指揮)リヨン国立管、デュティユ;交響曲第1番(HMF)
@590円盤。
以前、浮月斎Pseudo-POSEIDONIOS大人、野々村さんからお薦めのあった盤を、ワゴン・セールで見つけたので購入。
トルトゥリエ盤も放ってあるから、聴かないとなァ。
マイケル・ティルソン・トマス(指揮)ボストン響ほか、ストラヴィンスキー;春の祭典(DGG)
これも@590円。
1972年録音、今を時めくMTTのデビューか2枚目かの録音、LP時代には、かなりマニアックな「知る人ぞ…」的演奏で、不思議なことに宇野功芳*尊師*出谷啓が揃って褒めていたものだ。
今の耳で聴いたら、どんな感じがするだろう? そう思って買ってみた。
LP初出時に「こんな演奏もできるのか!」と新鮮に感激したものも、今となっては手垢じみた表現に聴こえる、ということがよくある。シャイー(指揮)チャイコフスキー;第5交響曲など、そのクチだ。
LP初出時にA面のトップに入っていたカンタータ「星の王」が、後ろに回されているのは疑問。
なお、カプリングにデュトワ(指揮)「ペトルーシュカ」。これも彼がまだ「アルゲリッチの売れない亭主」と見られていた頃の代表盤(1975・76年録音)。
アルフレート・カンポーリ(Vn)ほか、ブルッフ;Vn協第1番ほか(Pearl)
@590円盤、続く。
イギリスで人気のあった美音家、カンポーリのブルッフ(付けはワルター・ゲール)と、珍しいSP期の「四季」(ボイド・ニール管)、サン・サーンス;序奏とロンド・カプリチオーソほか。
レジ・パスキエ(Vn)ブルーノ・パスキエ(Va)ほか、モーツァルト;Vn協第5番&協奏交響曲K364(Valois)
@590円盤。
新しい録音でコレというのになかなか出会わないK364、パスキエ兄弟ならどうだろうか。
伴奏はピエール・バルトロメー(指揮)リェージュ・フィル
アナトリー・ヴェデルニコフ(P)ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮)ソヴィエト国立放送響、モーツァルト;P協第15・23番(DENON)
アナトリー・ヴェデルニコフ(P)ベートーヴェン;Pソナタ第30・31・32番(DENON)
浮月斎Pseudo-POSEIDONIOS大人、野々村さんが揃って絶讃のヴェデルニコフ、お薦めいただいたベートーヴェン;後期ソナタと、これは斉諧生の趣味でモーツァルトの協奏曲を買ってみた。
ピアノ音楽には疎い斉諧生、ベートーヴェン;後期ソナタで聴いたことのある録音というと、イヴ・ナット、ソロモン、ユーラ・ギュラー…。うーん、マイナーもいいところだ。(^^;
メナヘム・プレスラー(P)エマーソン弦楽四重奏団、ドヴォルザーク;P五重奏曲&P四重奏曲(DGG)
これも中古音盤堂奥座敷同人のお薦めから。
I・SASAKICD三昧日記さんが、「奥座敷同人 1997年の5盤」の第2席に推されたもの。
長らく探していたが、ようやく、今日、ふと目を遣った棚に発見したもの。

7月12日(日): 京都では祇園祭が日一日と盛り上がってきているが、そろそろ真空管アンプが暑苦しい季節になってきた。
 Tシャツに短パン、扇風機で風を送って…と悪戦苦闘している。

 今日はドイツ音楽の日、という感じ。

オットー・クレンペラー(指揮)バイエルン放送響、メンデルスゾーン;交響曲第3番(EMI)
クレンペラーの「スコットランド」は、フィルハーモニア管とのスタジオ録音も名演の誉れ高い盤だが、晩年のライヴでは、さらに幽玄の境地を聴かせてくれるのでは、と期待してスタート。
冒頭から仄暗い雰囲気でいい感じ、と思ったが、どうも弦合奏にツヤがない。やはり60年代の放送用録音で、音が曇りがちなのは残念。
細部の処理はフィルハーモニア盤によく似ているが、スケールは更に大きく、生で聴いていたら大感激だったろう。また、木管楽器の素晴らしい音色も、フィルハーモニア管を凌駕する。
ところが4楽章のコーダ近くまできて吃驚仰天、楽譜とまるで違う! 通常なら新しい明るい楽想が出て締めくくりになるのだが、悲劇的なムードのまま終わってしまうのだ。
なるほど、ジャケット裏には「(Coda:Otto Klemperer)」とあるし、ライナーノートをよく読めば、そのあたりの事情も明らかである。
とはいえ、これは一種のトンデモ盤だといえよう。あァ、びっくりした。
ポール・パレー(指揮)デトロイト響、メンデルスゾーン;交響曲第5番(Mercury)
第1楽章冒頭のドレスデン・アーメン、チェロとヴィオラの粘り気のある音色、続いてはフルートの清澄な音色にトランペットの煌めきを添える絶妙のバランスに感動。
序奏部終結のファンファーレも、金管が有機的というのか、決してけたたましくない渋い響き。
主部に入るや英雄的歩みから猛然とダッシュ、展開部など実にスピーディな運びを見せる。
もともと速い第2楽章を経て、第3楽章では、速めのテンポに乗せた素っ気ない表情に、自ずから愁色が浮ぶ趣。
第4楽章、主部のアレグロ・ヴィヴァーチェには、もっと鮮かに飛び込んでほしかったが、全体には溢れる活力が素晴らしい。
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー(指揮)ザールブリュッケン放送響、ブルックナー;交響曲第6番(ARTE NOVA)
斉諧生按ずるに、第6番はブルックナーの交響曲中、最もつまらないものではなかろうか。よく第6番から録音を始める指揮者がいるが、それだけでも彼がブルックナーに適性を有しないことを示すように思う。
Mr.Sは、これまで第3・4・5・7・8・9と録音しており、その点は大丈夫。
ここでも冒頭から、実に安心できるブルックナー・サウンド、ヴィブラートを掛けないフルートの音色も素晴らしい。
金管はあくまで朗々と鳴る。スケルツォでの切れ味の鋭さは天下一品。
この曲で最も出来のよい第2楽章でも、安心してブルックナーの音楽に浸ることができる。善哉善哉。
録音の良さも特筆したい。同じバジェット・プライスでもNAXOSとはえらい違いだ。
朝比奈隆(指揮)大阪フィル、ブルックナー;交響曲第7番(大阪フィル自主製作CD)
タワーレコード限定(?)の、朝比奈隆8枚目の第7。平成9年7月31日第310回定期演奏会(フェスティバルホール)のライヴ録音である。
全体に、前回のキャニオン盤に近い表現だが、細部には初めて聴かれる表現もあり、朝比奈の演奏姿勢に頭が下がる。
朝比奈らしい堂々とした歩みに、テンポの揺らし−遅くする方に限られているわけだが−が加わり、一段と大きなスケールを獲得している。
とりわけ第4楽章は進境著しいものがあり、冒頭のリズムの弾み、263小節から273小節や306小節から314小節までの巨大さには圧倒された。
問題は録音で、フェスティバルホールにしては美しく録れていると思うが、あのホールらしからぬソフト・フォーカスな音で、弦合奏は得をしているが、金管の吹奏の迫力が減退しているのはマイナス。
特に、fffの迫力が出ないのは困る。アダージョのクライマックスが不発に終わったり、スケルツォ主部で天地も崩れんばかりの鳴動とならないのは、演奏の問題ではない。
また、そのせいか、荘重さに傾斜したブルックナーに聴こえ、愉しさというか、心弾むものに乏しい。
オーケストラも頑張っており、フルートなど大フィルには珍しい健闘ぶりだが(^^;、やはりソノリティは日本のオーケストラで、今一つ美感に欠ける。
こういう演奏ができる人なのだから、一度、ドイツのオーケストラ−バンベルク響とか−で、入念な録音セッションによる決定的な録音をしてほしいものである。
ライヴ録音しかやらないのは、ある意味で「逃げ」ではないのか?
エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム(指揮)アムステルダム・コンセルトヘボウ管、ブルックナー;交響曲第8番(Philips)
実に面白い演奏だった(^^)
金管の吹奏や弦合奏に透明感が乏しく、オーボエはどうもマーラー風な音色。
旋律というか音楽の運びの息が短く、第4楽章で出るワーグナー;指環の「愛の救済の動機」に似た旋律など、全然歌ってくれない。
アッチェランドや強奏時のテンポの駆け出しが見られ、休符は端折りがち…
こういう演奏は、ブルックナーならクナシューリヒト朝比奈隆…という斉諧生には、本来我慢ならないものであるはずなのだが、最後まで、わくわくしながら聴き通すことになってしまった。
第1楽章ではコーダの「死の時計」の迫力、とりわけティンパニが凄まじく、第2楽章も鋭いチェロとティンパニの打ち込みに快哉を叫び、第4楽章ではホルンの強奏が効果的。
変に粘ったりせず、媚を見せないのがよいのだろうか。耳障りだったのはスケルツォのトリオ冒頭の弦がポルタメント気味に動くところだけ。
録音は古さを感じさせるが、それなりにバランスは良く、木管やハープもくっきり聴こえる。
ハース版使用。
なお、先日発売された『名指揮者120人のコレを聴け!』@洋泉社のベイヌムの項には、この盤について「猟奇的モダニズム」「見事に壊れた演奏」などと書かれているが、とんでもない藪睨みだ。
イェフディ・メニューイン(指揮)シンフォニア・ヴァルソヴィア、モーツァルト;序曲集(CLASSIC fM)
テンポは快速、アクセントはくっきり、湧き立つリズムに乗った流動感、内声の刻みや対位法を生かした立体的な音楽づくり。
メニューインは、カザルスに似て、その芸境を遙かな高みへ上らせつつある。
残念なことには、オケが下手。というか、弦合奏の音が、あまりにも美感を欠く。録音も音場の奥の方に変な残響が付着していて、聴きづらい。
ヨーロッパ室内管あたりで、思う存分の演奏を録音してほしいものだ。
ラサールQ、シェーンベルク;浄められた夜(DGG)
弦楽六重奏版で聴く「浄められた夜」。弦楽合奏版よりも、ずっとインティメイトな音楽になって、下敷になったデーメルの詩にふさわしい。
作曲家は合奏版編曲の楽譜からは詩を削除したそうだが、さもありなん。
もう少し聴き込まないと、この屈折した心理描写を味わえるところまでは行かないようだが、とにかく、この曲は六重奏版でお聴きいただきたいと、声を大にしたい。
キョンヘ・キム(Hp)デュセック;ハープ・ソナタ集(MANDALA)
モーツァルトにも似た、美しい旋律が次から次へと繰り出される。デュセックという作曲家、もう少し注目されてもよいのではないか。
もっともCD1枚聴き続けると飽きが来るのも事実。やはり、ハ短調ソナタ1曲で留めるのを最上とする。

7月11日(土): 

 昨日は急いでいたので、あらためてCD屋のバーゲンを、ゆっくり漁りに行く。バーゲン品以外に沢山見つけてしまった。(^^;;;

ホルスト・シュタイン(指揮)バンベルク響、ブラームス;交響曲全集(KOCH)
シュタインは贔屓の指揮者というわけではないが、バンベルク響との組み合わせ、生粋のドイツ訛りを聴かせてくれるだろうと期待して購入。
1997年7月(2・3番)、9月(1・4番)のライヴ録音、ところもバンベルクの「ヨーゼフ・カイルベルト・ザール」
なお、このCD、バイエルン放送との共同製作で製盤はオーストリアなのだが、裏ジャケットには日本語でタイトルが印刷してある。
キリル・コンドラシン(指揮)コンセルトヘボウ管、ボロディン;交響曲第2番&ストラヴィンスキー;バレエ音楽「ペトルーシュカ」(Philips)
@590円のバーゲン品でコンドラシンの遺産のうち買い損ねていたものを1点見つけたので購入。
ボロディンは1980年6月、ストラヴィンスキーは1973年2月のライヴ録音。
コンドラシンは1981年3月没なので、ボロディンは最晩年の録音、前に小石忠男氏が著書の中で「驚異的な秀演で、凄いほどの緊張感をもち、とくに第1楽章は劇性と旋律のロシア的な民俗色を実に的確に表出している」等と絶讃していたので、気になっていたもの。
ヘルマン・クレバース(Vn)ベルナルト・ハイティンク(指揮)コンセルトヘボウ管ほか、ブラームス;Vn協&ブルッフ;Vn協第1番ほか(Philips)
ヘルマン・クレバース(Vn)ヴィレム・ヴァン・オッテルロー(指揮)ハーグ・レジデンティ管ほか、パガニーニ;Vn協第1番&ヴュータン;Vn協第4番ほか(Philips)
ヘルマン・クレバース(Vn)ティボール・デ・マヒューラ(Vc)ほか、ブラームス;二重協&バッハ;2Vn協ほか(Philips)
オランダ・フィリップスから出ている"Dutch Masters"シリーズで、コンセルトヘボウ全盛期のコンサートマスター、ヘルマン・クレバースの独奏が3枚セットで出ていたので購入。クレバース75歳の記念企画でもあるらしい。
シベリウスの初期室内楽第2巻(ONDINE)
1875〜1890年頃、シベリウスの青少年期の作品を収める。
新譜で出たときには習作に躊躇したのだが、今回は@590円、買っても損はない。
なお、演奏陣はペッカ・クーシスト新井淑子ら実力十分。
モーゲンス・ヴェルディケ(指揮)ウィーン国立歌劇場室内管ほか、バッハ;マタイ受難曲(VANGUARD)
マタイとあらば買わずにはいられない。
1959年のムジークフェライン・ザール録音で、オーケストラにはヴィリー・ボスコフスキー(Vn)、ユルク・シェフトライン(Ob)等、昔のウィーン・フィルのメンバーの名前が見える。
主な歌手は、ウノ・エブレリウス(福音史家)、ハンス・ブラウン(イエス)、テレーザ・シュティッヒ・ランダル(S)、ヒルデ・レッスル・マイダン(A)、ヴァルデマール・クメント(T)、ヴァルター・ベリー(Bs)。
もっともこの演奏、礒山雅I教授の家『マタイ受難曲』によれば、「ウィーンの伝統的なイメージに頼ったもの…歌手たちにもどこかゆるみが感じられ、ヴェルディケがどんな音楽をやろうとしているのかが、はっきり伝わってこない」と酷評されている。
なお、同書は1968年録音としているが、歌手の顔触れからいっても、CDのデータが正しいと思われる。
ミヒャエル・ギーレン(指揮)バーデン・バーデン南西ドイツ放送響ほか、バッハ;マニフィカト&カンタータ第10番(Intercord)
ミヒャエル・ギーレン(指揮)バーデン・バーデン南西ドイツ放送響ほか、ヤナーチェク;グラゴル・ミサ&狂詩曲「タラシュ・ブーリバ」(Intercord)
これも@590円のバーゲン品、Intercordのギーレン・エディションも品切れだか廃盤だかの憂き目を見ているそうで、買い損ねていたものを2点見つけたところを購入。
特にグラゴル・ミサは中古音盤堂奥座敷の同人、浮月斎@Pseudo-POSEIDONIOS大人、野々村さんが揃って御推奨。ぜひ聴いてみたいと思っていた。
ヤナーチェクの合唱はブラティスラヴァ・スロヴァキア・フィル合唱団、バッハはフライブルク・アントン・ウェーベルン合唱団。

7月10日(金): 

 CD屋もバーゲン・シーズン、慌ただしく覗いて回る。

オットー・クレンペラー(指揮)バイエルン放送響、ベートーヴェン;交響曲第4・5番(EMI)
オットー・クレンペラー(指揮)バイエルン放送響、メンデルスゾーン;交響曲第3番&シューベルト;交響曲第8番(EMI)
噂のクレンペラーのライヴ録音。過去に海賊系レーベルででていた音源のようで、「正規盤初発売」とある。
ベートーヴェンは1969年5月30日、メンデルスゾーンは同年同月23日、シューベルトは1966年4月1日の、いずれもヘルクレス・ザールでのライヴ。
どの曲もクランペラーの十八番中の十八番、晩年の巨大な世界を期待したい。
ハルトムート・ヘンヒェン(指揮)オランダ・フィル、ベートーヴェン;交響曲第8番&ドヴォルザーク;交響曲第8番(VANGUARD)
旧東ベルリンで室内管を振っていたヘンヒェンだが、近頃はオランダで活動しているらしい。
「8番づくし」というか、何とも面白いカプリングなのに惹かれて買ってみた。
なにより、バーゲンで@590円だったもので…。
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ロンドン・シンフォニエッタ、ストラヴィンスキー;プルチネッラほか(Sony Classical)
サロネンのストラヴィンスキー、先日の「ペトルーシュカ」にノック・アウトされてしまったので、春祭や火の鳥も探しているのだが、とりあえず@590円で見つけたこの盤を購入。
ブルーノ・メッツェナ(Vn)フランコ・メッツェナ(P)ピツェッティ;Vnソナタ&レスピーギ;Vnソナタ(Arcobaleno)
@590円コーナーで大発見、ピツェッティのVnソナタの未知の録音である。これはレギュラー・プライスでも文句なく買うだろう。
近代Vnソナタの中でも名曲に数えられるべき曲ながら、なぜか演奏・録音頻度が低い。近年、少しづつ録音が出てきているのは心強い。本格的復活を期待したいもの。

7月6日(月): 

 退勤時にCD屋を覗き、帰ってくるとCD Teleshopから1枚届いていた。

イェフディ・メニューイン(指揮)シンフォニア・ヴァルソヴィア、モーツァルト;序曲集(CLASSIC fM)
イェフディ・メニューイン(指揮)シンフォニア・ヴァルソヴィア、ロッシーニ;序曲集(CLASSIC fM)
先日MUZA盤で聴いた、このコンビのモーツァルト;交響曲第35番ほかが良かったので、新録音(1998年1月、ワルシャワ)を買ってみる。
メニューインのロッシーニ、妙な取り合わせだが、果たして?
キョンヘ・キム(Hp)デュセック;ハープ・ソナタ集(MANDALA)
CD Teleshopから届いた1枚。レーベルの名称は東洋風だが、フランスのHMF系レーベル。
デュセックは愛惜佳曲書にハ短調のソナタを掲載、昨日もカーリンガー盤を聴いたところ。
ところが、このディスク、ソナタ5曲とソナチネ6曲を収めるものの、お目当てのハ短調は収録されていない。ガッカリ。

7月5日(日): 

 先週に引き続き、中古音盤堂奥座敷試聴会の次回課題盤、ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響、シベリウス;交響曲第4番(Berlin Classics)に向け、同曲異盤の聴き比べ。

アレクサンダー・ギブソン(指揮)スコットランド国立管、シベリウス;交響曲第4番(CHANDOS)
第1楽章の所要時間が8分3秒、かなり短い。ケーゲル盤では10分23秒と9分6秒、デイヴィス盤では10分55秒。冒頭のチェロ独奏は、このテンポに乗った、ぶっきらぼうな表情。変に濃いよりは良いが、ちょっと感じが出ていない。
全体に不満はないが、これでなければというところも少ない。中では第4楽章のグロッケンの音色は、現在のところ、この盤がベスト。鉄琴ではなく小さな鐘のような感じである。
弦合奏の押し出しはあるが、逆にもう少しクリアに響いてほしい場面もある。木管はやや非力、金管は強力で良い。
コリン・デイヴィス(指揮)ロンドン響、シベリウス;交響曲第4番(BMG)
冒頭のffが、ずいぶん柔らかい。チェロ独奏は音色は佳いが音量が弱すぎる。
オーケストラは上手いのだが、木管やティンパニは、*意味*を感じさせない。緊張感のある運びだが、スカッと抜けた透明な抒情ではなく、湿潤の憂愁に傾斜している。
壮大といえば壮大だが、どうも鈍重な感じ。残響が多めで音像がやや遠い、ソフト・フォーカスな録音が、その印象に輪を掛けている。
この演奏で、この曲を好きになる人はいないのではなかろうか。デイヴィスは、むしろ前期の交響曲(第1番〜第3番)に適性のある人だと思う。
第4楽章はチューブラー・ベルと鉄琴を打ち分けたり重ねたりしているが、ちょっと細工が煩わしい。
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)ヨーロッパ室内管、シベリウス;交響曲第3番(FINLANDIA)
昨日買ってきた新譜である。
冒頭の低弦は極めて軽快、アーティキュレーションも明快である。
音楽の運びもノリがよく、第3を聴く醍醐味が味わえる。
小編成が生きていて、ヴィオラの刻みの効果や、ドルチェ指定のヴァイオリンの表情など、実に見事。弦合奏に関しては、すべてのディスクに冠絶する出来栄えといえよう。
また木管がくっきり聴こえるのも効果的。フルートの音色は清澄の極み、オーボエやファゴットも、北欧の空気感を漂わす。
首を傾げるのは金管で、先週聴いた第4同様、どうも非力。第1楽章や第3楽章の終結など、どうも解放感がない。第2楽章冒頭などの弱音は美しいのだが…
ティボール・ヴァルガ(Vn、指揮)ティボール・ヴァルガ音楽祭管、バッハ;Vn協第2番(瑞シオン・ティボール・ヴァルガ音楽祭協会、LP)
一度CDで聴いている演奏だが、やはり素晴らしい。
第2楽章の慈愛と憧れ心に陶然となる。
エステル・ペレーニ(Vn)ギョルギー・ケルテス(Vc)デボラ・シプカイ(Hp)アッテルベリ;トリオ・コンチェルタンテ(Marco Polo)
珍しい編成のトリオ。元はVnとVcの複協奏曲らしい。
曲の構造がもう一つつかめないが、最初に3つほど提示される主題はいずれも魅力的、とりわけハープに支えられてVnが歌う2つめの主題は素晴らしい。
とはいえ演奏はイマイチ。音程がどうも肌に合わないのと、ベッタリしたリズムが曲を損なっているように感じられてならない。デッドで生硬な録音がその印象を助長する。
ウェルナー・カーリンガー(Hp)デュセック;ハープ・ソナタ(カメラータ・トウキョウ)
落ち着いたテンポ、煌めく音色と高い表現力で、この魅力的な曲をひときわ魅力的に演奏している。
愛惜佳曲書に掲載した、天衣無縫のフォンタン盤には一籌を輸するものの、それにつぐ演奏といえよう。
スティーヴン・クレオバリー(指揮)ケンブリッジ・キングズ・カレッジ合唱団、フォーレ;ラシーヌの雅歌(DECCA)
聴いてがっかり、遅めのテンポでリズムも重め、低声中心で、歌唱は上手ながらもまったくフォーレらしからぬ演奏。

7月4日(土): 「北欧クラシカルCDストア」と銘打った店が、もうすぐ、広島で開店する。
 その『ノルディックサウンド広島』に、ステンハンマルの未架蔵CDについて問い合わせていたところ、懇切丁寧なお返事をいただき、在庫分数点は取り置き、残りも可能な限り手配してもらえることになった。
 同好の士は、下記へ問い合わせられればよいと思う。

 730-0016 広島市中区幟町14-2 ウエセン幟町401
 ノルディックサウンド広島
 tel.(082)502-9600 fax.(082)502-9601

 外出してCD屋を回る。また、通販業者からLPが届く。

ティボール・ヴァルガ(Vn、指揮)ティボール・ヴァルガ音楽祭管、バッハ;Vn協第2番&シューベルト;交響曲第5番(瑞シオン・ティボール・ヴァルガ音楽祭協会、LP)
ティボール・ヴァルガ(Vn、指揮)ティボール・ヴァルガ音楽祭管、バッハ;2つのVn協&R・シュトラウス;変容(瑞PHILHARMONIA、LP)
先年、CLAVESからCD4枚組の「ティボール・ヴァルガへのオマージュ」が発売され、このハンガリー出身(のちスイス在住)の名ヴァイオリニストの高い芸境を知ることができた。
それ以来、主に彼が主催する音楽祭の記念LPを、店頭やカタログで見るたびに購入しているが、いずれも素晴らしい音楽を聴くことができる。
今回、協奏曲は上記CDに収録されているのと同じ音源と思われるが、シューベルトとシュトラウスはCD化されていない貴重なもの。
エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム(指揮)アムステルダム・コンセルトヘボウ管、ブルックナー;交響曲第8番(Philips)
エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム(指揮)アムステルダム・コンセルトヘボウ管、ブルックナー;交響曲第9番(Philips)
ベイヌム時代のコンセルトヘボウは、アンサンブルといい、音色といい、きわめて魅力的。もちろんメンゲルベルク時代の方が上だったのかもしれないが、この頃にようやく録音技術が、それを享受できるレベルに達した感じ。
このブルックナー、LP期にも出ていたし、CD("The Early Years"シリーズ)が出たときにも気付いていたが、も一つ気乗りがしなかった。
先日、中古音盤堂奥座敷の同人、I・SASAKIさんCD三昧日記で取り上げられて以来、どうしても聴きたくなっていたのだが、ずっと手に入らなかった。
今日、ふと目を止めたブルックナーの棚で発見、2曲とも購入したもの。
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)ヨーロッパ室内管、シベリウス;交響曲第1・2・3番(FINLANDIA)
待望のベルグルンドの3回目の全集が完成。
3番は10-8-6-5-4とこれまで同様の小編成だが、1・2番は14-12-10-8-6と通常編成へ拡大している。曲想を考えれば当然の選択かもしれない。
もっとも小編成の第1・第2を聴いてみたかった気もするが。
ピーター・フィリップス(指揮)タリス・スコラーズ、デュアルテ・ロボ;レクイエム(Gimell)
ロボは、モンテヴェルディと同じころにポルトガルで活躍した作曲家。
皆川達夫によれば、ロボのポリフォニー楽曲は、鎖国前の日本のキリスト教会で歌われていた可能性もあるとか。
島田雅彦/大友良英;『ミイラになるまで』(クリエイティヴマン・ディスク)
中古音盤堂奥座敷試聴会、次々回はこのディスク。
同人野々村さん「奥座敷同人 1997年の5盤」の第1席に推されたもの。
「島田雅彦の短編小説の朗読に大友良英の指揮するアンサンブルの音楽が寄り添う。内橋和久・高良久美子ら即興音楽界の顔役たちに石川高らクロスオーバーな邦楽器奏者や原田節のオンドマルトノも加わって、朗読は佐野史郎という超強力メンバー。新宿ピットインのライブでは失神者も出た」
とのこと、楽しみ楽しみ。
なお、これはCDブック仕様。斉諧生は版元から直接通販で取り寄せたが、書店からでも入手可能らしい。その際の発売元はアップリンク。

7月2日(木): 神戸楽譜から、ステンハンマル;弦楽四重奏曲第5番のポケット・スコア(Carl Gehrmans)が届いた。
 冒頭に、第2楽章"バラータ"のもとになったスウェーデン民謡を採譜したものが掲げられている。
 巻末のカタログにはステンハンマルの交響曲第2番も掲載されており、いつかは入手したいものである。

 Music BoulevardからCDが届く。

シクステン・エールリンク(指揮)アッテルベリ;交響曲第3番(CAPRICE)
エステル・ペレーニ(Vn)ギョルギー・ケルテス(Vc)デボラ・シプカイ(Hp)ほか、アッテルベリ;Vnソナタ&トリオ・コンチェルタンテ(Marco Polo)
先日、サロ様と彩ちゃんの部屋がアッテルベリの話で賑わった折りに薦める人があったので、発注したもの。
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ロスアンジェルス・フィル、ハーマン;映画音楽集(Sony Classical)
サロネンの珍しいレパートリー。斉諧生は映画はあまり見ないので原作を詳らかにしないのだが、「サイコ」の弦楽合奏組曲や「華氏451度」の弦楽合奏、ハープと打楽器のための組曲など、面白そう。

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