音盤狂日録


12月31日(金): 

 今年最後の買い物。通販サイトBarnes&Nobleから荷物が届いた。
 ここはもともと書籍の通販サイトだったが、ふと、CDも扱っているのに気付き、検索してみたところ、他のサイトで見かけないものがあるのでオーダーしたもの。
 主力はまだBack Order中だが、とりあえず3枚が発送されたのである。

ジュリアス・カッチェン(P)アナトール・フィストゥラーリ(指揮)ロンドン新響ほか、ラフマニノフ;P協第2番・パガニーニ狂詩曲ほか(DUTTON)
かねて畏友かとちぇんこKlassischer Platzさんが、一押しピアニスト・カッチェンのベスト盤として御推奨、ぜひ聴いてみたいと思っていた。
いつの間にか店頭で見かけなくなっていたので、通販でオーダーしたもの。
パガニーニ狂詩曲と、ドホナーニ;童謡の主題による変奏曲は、エイドリアン・ボールト(指揮)ロンドン・フィルの付け。
P協は1951年4月、その他は1954年5月のDECCA録音。
 
ローラ・チスレット(Fl)デヴィッド・ミラー(P)「フルートの印象〜ロマン派音楽集〜」(Walsingham Classics)
リリー・ブーランジェ全録音蒐集プロジェクトの一環としてオーダーしたもの。
レーベルはオーストラリア所在、そのせいで、これまでアンテナにかからなかったのだろう。
収録曲は、「夜想曲」「行列」「春の朝に」
フルートによる「夜想曲」演奏は多いが、「行列」は初めて入手、「春の朝に」も2枚目と珍しい。
ブーランジェ以外では、ロパルツブロッホ、未知の名前でPijper(1894〜1947)、Binet(1893〜1960)、そして女性作曲家オギュスタ・オルメス(1847〜1903)の作品を収録。
余談だが、オルメスはフランクの弟子、彼の名作P五重奏曲はオルメスへの道ならぬ恋情に由来し、初演の際にはフランク夫人ほかの不興を買ったという話がある。
 
クリフォード・カーゾン(P)シューベルト;Pソナタ第21番&シューマン;幻想曲(Orfeo)
カーゾンの変ロ長調ソナタには、DECCAへのスタジオ録音があり架蔵しているが、演奏は、この1974年8月24日のザルツブルグ音楽祭でのライヴ録音が優れているというので、探していた。
これもいつの間にか店頭から姿を消したようで、今回、オーダーしたもの。

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ、3日目。

今日は、年の終わりに因んで最後の曲、第6番ニ長調BWV1012である。
昨日同様、演奏者の生年順にコメント。
 
ポール・トルトゥリエ(EMI)(1914年生)
この曲も、さすがと納得させる大きさと説得力の名演。
プレリュードは、風格と滋味を有する名演だが、いつもの力強さには少し欠ける。
続くアルマンドが、まさにバッハの慈愛の音楽。この暖かさに心打たれぬものはあるまい。
快活なクーラントのあと、サラバンドの歌が素晴らしい。この音楽は、これだけの大きさを持っているのだと、聴く者を納得させる。技術的にも、とても70歳とは思えぬしっかりした見事な音。
ガヴォットIは重すぎず軽くなく、適度な弾力性を持ち、ガヴォットII後半の重音も美しい。ジーグの剛毅さも良かった。
(アルマンドの後半の反復を省略)
 
ヤーノシュ・シュタルケル(BMG)(1924年生)
昨日までトルトゥリエに一歩を譲ってきたシュタルケル、↑の名演の前には今日も分が悪いと思ったが、なんのなんの、この曲に関しては他を圧してのベスト盤
雄大・豪壮、誠に仰ぎ見るべき名演である。
この曲は通常の4弦のチェロでは高音域を多用して運指も苦しく、凡庸なチェリストは音を出すことだけで四苦八苦するのだが、シュタルケルはそのレベルは軽くクリア、余裕をもって「音楽」している。
プレリュードの立派さ、寄せては返す波のように、音楽が昂揚する。
アルマンドクーラントも素晴らしいが、朗々と鳴るサラバンドの歌は実に感動的。
更にガヴォットIは、力強いが重くない、豪快な男の遊びである。ガヴォットII後半のクレッシェンドには胸がすく。ジーグも同様に豪気な出来。
(アルマンドの後半の反復を省略)
 
アンナー・ビルスマ(Sony Classical)(1934年生)
5弦のチェロ・ピッコロによる演奏。確かに、プレリュードなど、楽々と演奏しているのが聴き取れる。クーラントでも速いテンポに自然に楽器が鳴っている。
ただ、この楽器、どうにも響きがちんまりしているというか、音色が貧相なのである。ビルスマ自身は「とても美しい音色」と言っているが…(『ユリイカ』1996年1月号114頁)。
というわけで、どうも音楽を味わう以前に意気阻喪してしまった。
(ガヴォットIIの後半の反復を省略)
 
ラルス・ブロムベリ(Tonart)(1935年生)
技巧至難の第6番ゆえ、ブロムベリには厳しいかなと思ったが、予想を覆して気魄溢れる凄演であった。
高音の音程に辛いものがあるのと、速いパッセージに苦しそうなときもあるが、唸りというか気合とともに、精神力でそれを跳ね返すような、大袈裟にいえば鬼気迫らんばかりの演奏なのである。
プレリュードは、かなり速いテンポで弾ききる。ちょっと走ってしまうところもあるが、41〜43小節の頭の音符や98〜99小節の三和音に込められた「心」に圧倒される。
アルマンドクーラントも立派な音楽。
サラバンドは、精神力で乗り切るには苦しすぎるが、17〜20小節の、テンポと音量を落とした、はかなく懐かしげな歌い方には涙を誘われる。
ガヴォットジーグも技巧的には苦しく、ガヴォットIIに入る時の大きなパウゼは痛々しい。
それでも8小節での大きなリタルダンドや、後半の重音部分の強いクレッシェンドは、彼の気骨を示したものだろう。ジーグの53・54小節の頭の付点四分音符に込められた「力」も。
 
ラルフ・カーシュバウム(Virgin)(1946年生)
プレリュードが素晴らしい。速いテンポで一気呵成に弾ききった勢いに圧倒される。これだけ取れば、トルトゥリエを超え、シュタルケルと肩を並べる。
アルマンドでは、甘い美音で伸びやかに歌い、どこか憧憬に似た感情を伝えるのが楽しい。
キッパリしたクーラント、やはり美しく歌うサラバンドも良い。
残念なのは、ガヴォットIが力みすぎというか、なにやら力こぶが入ったようなリズムになっていること。ジーグも同傾向。
 
ミシャ・マイスキー(DGG)(1948年生)
プレリュードでエコー効果を活かしているのが面白いが、高音の音程は辛そうだし、何となく「どっこらしょ」と言っているかのようなフレージングも気になる。
11分21秒という超スローテンポのアルマンドは、舞曲を崩しきって、完全に歌謡楽章にしてしまった。淡い、かすれたような、モノトーンの音で、綿々と歌い抜くのである。
ここまで徹底すれば、それはそれで構わないかもしれない。斉諧生的には、すこし単調に思えたが。
 
ユリウス・ベルガー(WERGO)(1954年生)
5弦チェロによる演奏。
やはり猛烈に面白い
プレリュードは、強拍をうんと強めて、実にアグレッシヴな音楽。
歌を拒否したようなアルマンドは疑問だが、疾風迅雷のクーラントには快哉をあげたい。
サラバンドは息が短く、和音の響きも今ひとつ美しくなくて残念。
速めのテンポのガヴォットIIは可憐で美しく、一気呵成に運んだジーグがリズミックで楽しい音楽であった。
5弦チェロによる演奏の中では、最も鳴りが良かったが、高音域が少しメタリックに響くのが気になった。
 
ヨーヨー・マ(Sony Classical)(1955年生)
プレリュードでは楽器の響きというか音色が今ひとつ美しくないのが気になった。ヨーヨー・マらしくない。
音楽になだらかな起伏をつけているが、ちょっとピンとこない。後半の追い込みは良かったが。70〜73小節の頭のイ音に付されたアクセントも格好いい。
弓を軽く使い、和音は大きめに開いたアルマンドは、はかないものを慈しむような歌を奏でて感動的。同じように軽い音で弾かれたクーラントは、うつろいやすい悦びの歌か。
音の軽さはサラバンドでも同様、夢見るような切ない気分を醸し出す。
ガヴォットも軽やか、ジーグに至ってようやく少し力強く。
プレリュード以外は、とにかく徹底して軽い音を使用した演奏で、そのことによってバッハの楽譜から新しい感情を掘り起こしたことを評価したい。やはり天才的な表現者だと思う。
ただ、ただ…、ヨーヨー・マとマイスキーという、2人で現代を代表する(と一般的には言われる)チェリストに、揃って「裏技」を使われると、少々、辛い感じがする。
今回の聴き比べで、カザルストルトゥリエの直系というべきバッハを奏でる人がいないことに、クラシック音楽の将来をめぐる若干の懸念を感じるのである。
 
鈴木秀美(BMG)(1957年生)
1995年9月録音。
↑のビルスマ(鈴木の師でもある)同様、5弦のチェロ・ピッコロによる演奏。
楽器の鳴り・音色が、ビルスマ盤よりずっと良く、まずまず5弦のメリットを享受できた。
演奏者の意識は、古楽派というより、むしろ現代楽器の奏者に接近しているように思える。斉諧生的にはその方がありがたい。
アルマンドなど、10分を超える演奏時間が示すように、かなり遅いテンポによる、やや憂いの色を帯びた歌が感動的な音楽であった。
速いテンポのガヴォットIでは20小節に、繰り返しのたびに異なる装飾が加えられたのが、実に美しかった。力強いジーグでは、5弦の高音がビーンとした響きで快感。
(ガヴォットIIは、後半の繰り返しを省略して前半をもう一度反復するという処理。=AABBではなくAABAという形)
 
長谷川陽子(VICTOR)(1970年生)
プレリュードのエコー効果はマイスキーより美しく発揮されている。14小節の頭の音符に付されたテヌートも誠に美しく、終結(102〜103小節)の繊細な美も長谷川さんならでは。
アルマンドの優しい歌や、クーラントの楽しげな歌も良い。後者の7小節でヘ音・ト音にアクセントを置いて2拍子にしてしまう遊びも素晴らしい。
サラバンドはしっかり歌っているが、ちょっと表現自体は薄くなってしまったように思う。
一転、素晴らしいのがガヴォットで、愛らしい曲調にぴったりした優雅な音楽、ガヴォットIIの重音の美しさにも目を見張らされる。
ジーグでは、珍しく高音の音程に疑問が残る。
美しいところも多々あるのだが、11月の実演の記憶に照らすと、少し残念。ライヴ的なミスもあったが、音楽はもっと生命に満ちていた。

 最近入手した音盤の情報を、ステンハンマル 作品表とディスコグラフィリリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィに追加。


12月30日(木): 

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ、2日目。

今日は、第3番ハ長調BWV1009である。
昨日同様、演奏者の生年順にコメント。
 
ポール・トルトゥリエ(EMI)(1914年生)
実に剛毅な音楽、英雄の風格がある。
プレリュード冒頭の一音の強烈なこと! 下降音型の最低音も、それに呼応して、盤石の趣。
アルマンドでは、アクセントを効かせて、決然としたボウイング、実に輪郭がくっきりした音楽である。クーラントも同様。
朗々たる心の歌を聴かせるサラバンド、武骨な喜びを歌うブーレIと寂しさの漂うブーレIIも素晴らしい。
思うに、これがカザルス直伝のバッハ観の表現であろう。
 
ヤーノシュ・シュタルケル(BMG)(1924年生)
↑のトルトゥリエ同様、スケール雄大な音楽である。
もっとも、トルトゥリエが正統派英雄なのに対し、シュタルケルの演奏は、どこか乱世の梟雄、曹操や斎藤道三を連想させる。(笑)
まあこれは、ちょっと高音の詰まった響き、やや腰の重いリズム(ブーレなど)が、斉諧生的好みに合わないに過ぎないのだろう。
 
アンナー・ビルスマ(Sony Classical)(1934年生)
かなり速めのテンポで弾かれるプレリュードだが、その中で加速・減速やアゴーギグの揺らし等、けっこう、アレコレやっている。
アルマンドでも、微妙な音価の伸縮など実に愉しく、クーラントも速い中に緩急が存在する。
ロマン的な情感を排して舞曲のリズム感を生かしたサラバンド、猛スピードのブーレ(これはあまり楽しくない)、一転してレガート気味のフレージングが美しいジーグ
古楽的アプローチの規範たりうる演奏である。
 
ラルス・ブロムベリ(Tonart)(1935年生)
プレリュードの前半、分散和音がもう一つ滑らかでないのは演奏者の技巧的限界か、病気の影響か。
その不満も、後半45小節から60小節に向けて、グッとクレッシェンドしていく音楽の強さで雲散霧消する。
またサラバンドの見事なこと! この楽章に関してはトルトゥリエに勝るとも劣らない。折々に見せるテヌートも決まって、万感の思いを生じる。
ブーレIも美しく、ブーレIIでは思い切った減速で、「侘び」の佇まい。
 
ラルフ・カーシュバウム(Virgin)(1946年生)
プレリュードアルマンドを通じて聴こえるのは、英雄の強さではなく、優しい歌である。
軽やかに楽しいクーラント、優しい慰めの歌サラバンド
活発で賑やかなブーレIと軽い音が侘びしげに響くブーレII。それに続くジーグはリズミカルで軽快だ。
この優しさを良しとするか、飽き足りないとするかが、評価を分けよう。
 
ミシャ・マイスキー(DGG)(1948年生)
強烈な音で始まるプレリュード、なかなかいい音を出している。相変わらず振幅は大きいが、崩しは目立たない。
サラバンドの表現は素晴らしい。前半・後半とも繰り返しでは音量を落としてひっそりと歌うのは感動的。
また、前半の最後の音と後半の最初の音をつないでしまうアイデアも秀逸。
ブーレでの装飾の入れ方、アイデアに富む。
一方、アルマンドクーラントでは、リタルダンド―ア・テンポの動きが頻出するのが、思い入れといえば思い入れだろうが、やや煩わしい。
音程が跳躍するところでは、必ずといっていいくらい、テヌートしてブレーキを踏むのも、味といえば味だろうが、疑問を拭えない。
舞曲だからといって几帳面にリズムを刻む必要はなく、ビルスマのように音価の伸縮によって音楽に生命を与える演奏もありうるが、マイスキーの場合、微妙にその矩(のり)を踰(こ)えてしまったように、斉諧生には思えるのである。
 
ユリウス・ベルガー(WERGO)(1954年生)
プレリュード冒頭の音階を下降する音型は、カザルス以来、「太陽のように輝かしく」演奏されるのが常であった。
ところがベルガーは、やや沈んだ色合いで弾き始める。あるいは意識的なアンチテーゼであろうか。
面白いのは、45〜60小節でト音を基礎にした分散和音が連続する部分で、開放弦を実に豪快に鳴らして、ドローンのような響きを聴かせる。気に入った!
決然としたフレージングが心地よいアルマンド、舞曲のリズムが崩れる一歩手前で踏み止まった猛スピードのクーラント
それに続くサラバンドでは、古楽派の影響らしく、音を切る。ところが、↓のブルンスと違って、横の線は維持されているように聴こえるのだ! まさに絶妙のコントロール、曲趣が見事に表出されている。
ブーレIIのスル・ポンティチェロ風の音色感も面白く、愉しげなブーレIが回帰する瞬間の開放感を演出する。
ジーグの終結、107小節では思いっきり和音をテヌートさせた響きが快感を呼ぶ。ベルガーの音楽性の勝利だ。
次に何が出るか楽しみな演奏である。
 
ヨーヨー・マ(Sony Classical)(1955年生)
完璧な演奏。何をかいわんや、である。
音的には好みでないし、ジーグの重音の楽句(33小節以下)など、やや響きが浅いと感じる。
しかしながら、好みを超えて、この演奏は素晴らしい。技術的にも音楽的にも。
プレリュードの分散和音の連続も一瞬たりとも弛まず退屈させず、軽やかに音が舞うアルマンド
クーラントの完璧さには言葉がないし、サラバンドの歌の美しさ、ブーレIの優雅さ、ブーレIIの愁いを収めた流麗さ、力強いジーグ
問題があるとすれば、カザルストルトゥリエ的な「英雄」が姿を消してしまったことだろう。
それがクラシック音楽の新しい地平なのか、生命感を失った蒼白い姿なのか…?
 
ペーター・ブルンス(OPUS111)(1963年生)
1996年5月録音。
ブルンスはシュターツカペレ・ドレスデンの首席奏者だが、ガット弦を使用した古楽奏法によっているようだ。
古楽系のバッハとして、それなりの完成度には達しており、聴いている分には楽しめるが、「彼ならでは」という特色は薄いように思う。
あえて横の線を切り、フレーズフレーズを独立させたようなフレージングが、少々ギクシャクした、落ち着きのない聴感を与える。
 
長谷川陽子(VICTOR)(1970年生)
カザルストルトゥリエの流れを汲む長谷川さんらしく、プレリュード冒頭は、やはり輝いている。
その後はじっくりと、美しく弾いていく。45小節以下でも低弦の美しい響きの上にバランス良く和音を鳴らす。
アルマンドは喜ばしげな舞曲、繰り返しの5小節で一瞬、レガートになる微笑みの美しさ。
伸びやかなクーラントに続くサラバンドの深い深い歌…。
軽やかに楽しく歌うブーレIと密やかなブーレII
圧巻はジーグ、冒頭の2音を和音にして粘る力強さ! 和音の響きが快い終結まで、この楽章の力感は、他を圧して素晴らしい。
しかも、80小節で、フッと力を抜いた繊毛のような美音を響かせる至芸まで備えているのだから、感嘆するほかはない。
 
以下は、バッハ以外で。
 
トビアス・リンボリ(Vn)ニクラス・ヴィレン(指揮)スウェーデン室内管、ステンハンマル;2つのセンチメンタル・ロマンス(NAXOS)
リンボリの音色が素晴らしい。輝きのある高音から、唸らず美しい低音まで、むらがない。愛情ある歌い方にも好感が持てる。
オーケストラも、独奏の思い入れに寄り添ってくれるのは嬉しいが、響きにやや透明感を欠くのが残念。
 
バーバラ・ボニー(Sop)アントニオ・パッパーノ(P)北欧歌曲集(DECCA)
ステンハンマルの曲だけ取り出して聴く。
彼の曲が、これほど美しい声に歌われたことが、かつてあったろうか?
「逢い引きから帰ってきた女の子」は、同じ詞に付曲したシベリウスの作品と続けて収録されているので、そちらも聴いてみた。
洗練さ、立派さではシベリウスの方が上だろう、公平に見て。
でも、抒情味では、ステンハンマルが、まさっているように思う。

12月29日(水): 今日から1月3日まで、年末年始の休日である。

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ
 手元の盤を全部集めると、20種類くらいあるのだが、とても全部は無理なので、10種に絞った。
 現代楽器によるデジタル録音から8種を選び、古楽器ではビルスマの新盤は落とせないのでこれを加え、あと1種は日替わりということにした。

今日は、第2番ニ短調BWV1008である。
以下、演奏者の生年順。
 
ポール・トルトゥリエ(EMI)(1914年生)
1983年録音、トルトゥリエ70歳の再録音である。
技術的にはしっかりしており、音程は普通の若手・中堅チェリスト以上に確か。
気迫・精神力では随一、他を圧する。
ただ、やはり高齢からか、どことなく音に限界を感じなくもない。ちょっとしたトリルの甘さとか、クレッシェンドの頭打ち感とか(これは録音のせいかもしれない)。この点がなければ、文句なしにベスト盤なのだが。
印象深かったのは、プレリュードに漂う孤独の嘆きと、じっくり弾いて滋味溢れるサラバンド
内に昂揚する精神が、外に表現されきらないとき、それが「滋味」となる…ということかもしれない。
 
ヤーノシュ・シュタルケル(BMG)(1924年生)
1992年6月の録音。
往年の超技巧派が年輪を重ねて、自在の境地に遊ぶ感がある。
快速テンポで突進するのかと思いきや、プレリュードの冒頭3音は実に重々しく弾き始め、その後もじっくりしたテンポ、あたかもモノローグの如し。サラバンドも、しみじみしたもの。
ただ何となく…これは斉諧生の個人的問題でシュタルケルの問題ではないと思うが…音楽の流れに乗り切れない。
プレリュード22小節での減速や、アルマンドでのブツブツ切れるフレージングなど、しっくりこないのである。
メヌエットは速めのテンポでキビキビと格好いい。シュタルケル法師の衣の下の鎧が見えた感じ。ここは気に入った。
楽譜の扱いには独自のものがあり、トリルや装飾音の処理はかなり異なる。プレリュードの最後の5つの和音のうち、中の3つはカデンツァ処理なのも耳を惹いた。
 
アンナー・ビルスマ(Sony Classical)(1934年生)
トルトゥリエなどとはまったく異なり、ロマン的な感情要素はない。
プレリュードにさえ舞曲的な要素を感じているかのように、横の旋律線より縦のリズムを基本に据えている。もちろんサラバンドは言うに及ばず。
「歌い上げる」よりも「語りかける」感じ…とでも言おうか。
とはいえ、テンポの伸縮や昂揚―沈潜の振幅は結構大きく、音楽は決して萎縮していない。強い説得力を感じる。
 
ラルス・ブロムベリ(Tonart)(1935年生)
無名のチェリストだと思うが、「白鳥の歌」というか、遺言のような録音。
レコーディングを始めた1992年には、既に手術をしており、休息を挟みながら1994年までかけて録音を完成させたが、その冬には病が篤くなり、翌1995年に没したという。
プレリュードは淡々と明るめの響き。「白」の境地。
最も感動的なのはサラバンドだろう。切々たる思いのこもった音楽であり、終結での思い入れに心打たれぬものはあるまい。
名人上手ではないし、部分的にこなれていない感じを受けるところもないではないが、自分が奏でるバッハへの確信、音楽の真実性を感じる。
 
ラルフ・カーシュバウム(Virgin)(1946年生)
1993年1月の録音。
これは気に入った。音色・音程が好みに合うし、表現は模範的
プレリュードでは、虚無の響きが慰藉に解決していく。
リズミカルなアルマンドや快調なクーラントにも、自ずと愁色が漂う。呼吸の深いサラバンドの情感!
これでメヌエットに力みがなくて、ジーグに力強さがあったら、斉諧生的にはベストだったのだが。
 
ミシャ・マイスキー(DGG)(1948年生)
1999年7〜8月の最新録音である。
プレリュードが猛烈に面白い。
出だしは弓を軽く当てて、虚しさの漂う音色を表出、そのあと、音楽をすごく揺らし、起伏をつける。この楽章のクライマックス、42〜48小節では、物凄いアゴーギグをつける。終結も思い入れたっぷり。
大袈裟といえば大袈裟だが、これはこれで面白い。ちょっと↑のビルスマの表現を拡張したような趣もあるが。
ところが、アルマンド以下の舞曲系の曲も、同様のアプローチなのには疑問がある。
テンポの揺らしや、ギクシャクしたリズムの崩しが目立ち、斉諧生的には恣意的な印象を受ける。二流の細工ではないか。
もちろんサラバンドは伸縮・緩急の振幅を大きくとった詠嘆調。…そのわりには真実味に乏しく感銘を受けない。
 
ユリウス・ベルガー(WERGO)(1954年生)
1995〜96年の録音。
現代音楽演奏で知られるベルガーだが、ここでは古楽器派以上に過激な表現で聴く者の度肝を抜く。
音価を端折って猛スピードで駆け抜けるクーラントなど、眉を顰める人がいるかもしれない。サラバンドも、ポキポキしたフレージング。
それでも、妙に納得してしまう。「変わっている」けれど「変」ではない。崩しが無いからだろうか。
プレリュードアルマンドの「玄(くろ)い」音楽も印象深い。
 
ヨーヨー・マ(Sony Classical)(1955年生)
1994〜97年の録音。
ヨーヨー・マの音色・音程は、実は斉諧生的には好みではない。
その印象は変わらないが、やはり偉いと思える音楽である。
虚しさ…というか、「寂滅」という言葉を思い起こすプレリュードの響き。48小節のパウゼの意味深さや、54小節以下の寂しい足取りが印象的。
それを慰藉するアルマンドや、軽い疾走の中にデモーニッシュなものを感じるクーラントサラバンドの嘆きの歌、軽やかなメヌエットなど、大家の芸術だと思う。
 
アントニオ・メネセス(Philips)(1957年生)
真摯で好感の持てる音楽だが、ちょっと息が短いのが気に障る。
カザルス遺愛の銘器ゴフリラーを使用…というのが売り文句の一つだが、音的な魅力もイマイチ。
 
長谷川陽子(VICTOR)(1970年生)
1999年4〜5月の録音。
このところ長谷川さんの音が、少し変わってきた。テンションの高い熱演風の、したがってちょっと硬い音から、無理なく美しい音に。
このバッハでも、一つ一つの音や和音が、実に美しい
プレリュードは思い入れをたっぷり込めて、じっくり弾いている。↑シュタルケルとは違って、斉諧生的には、抵抗なく気持ちにピッタリと聴けるものだ。
速めのテンポをとるクーラントと、息の長いサラバンドの対比も見事。後者の21〜22小節の和音の美しいこと!
優美なメヌエットと力強いジーグも、素晴らしい。後者の19〜20小節での微笑みは、誠に魅力的。
トルトゥリエヨーヨー・マを凌ぐとは言わないが、斉諧生的には、シュタルケルより上位に置きたい。
ただ、いささか慎重になりすぎた感じはある。11月の実演は、もっと思い切りのいい、表現の大きな名演だった。

12月27日(月): 

 

「アンドレ・ヴァンデルノートの芸術」
またまた大物を買ってしまった(自滅)。
広告の謳い文句は「伝説の指揮者ヴァンデルノートの最晩年のライヴ」と言うことになるのだが、はたして、どれくらいの人がこの指揮者を知っているのだろう?
一般には、エリック・ハイドシェックがEMIに録音したモーツァルト;P協集の指揮者としてくらいしか、知られていないのではないか。
斉諧生は、かつて、米コマンド盤LPで、彼がパリ音楽院管を指揮した幻想交響曲を聴いたことがある。
木管をクローズアップし、また、けっこう力感溢れる、なかなか面白い演奏だったという印象が残っている。
これは晩年の手兵ベルギー・フランス語放送(RTBF)響を指揮したライヴ録音の集成。遺族の承認を得た、正規発売である。
曲目は、
ベルリオーズ;幻想交響曲・序曲「ローマの謝肉祭」(1990年11月23日)
ベートーヴェン;交響曲第4・7番(1990年1月12・27日)
マーラー;交響曲第1番(1988年9月10日)
モーツァルト;序曲「フィガロの結婚」・P協第21番・交響曲第35番(1991年1月12日、1987年10月21日、1991年1月12日)
  P独奏は、アブデル・ラーマン・エル・バシャ
チャイコフスキー;交響曲第5番・序曲「1812年」(1989年10月8日、1989年3月5日)
残念ながら、ブックレットは二つ折りの簡素なもの、オーケストラの関係者によるヴァンデルノートの小伝である。
 
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)ザールブリュッケン放送響、ブルックナー;交響曲第4番(ARTE NOVA)
あるいは*次*の「最後の巨匠」とも噂されるスクロヴァチェフスキ、彼のブルックナーは聴き逃せない。
第4番は、以前、ハレ管を指揮したIMP盤があった。これはイマイチだったような印象もあるが、ともかくMr.Sのブルックナーには期待したい。
録音は1998年10月。なお、使用している版についての記載がないのは残念。
 
ハンス・グラーフ(指揮)ザルツブルグ・モーツァルテウム管、ブルックナー;交響曲第8番(ノヴァーク版)(VFMO)
オーケストラの友の会(Verein der Freunde des Mozarteum Orchesters Salzburg)製作になるCD。オーストリア放送協会が録音した音源の模様。
そういえば、ハンス・グラーフも↑のヴァンデルノートと同じく、ハイドシェックモーツァルトで指揮していた人だった。
そこでもわりと好印象が残っているので、曲もブルックナーの8番だし、興味津々で買ってみた。
1994年8月18日、フェルゼンライトシューレでの収録なので、たぶん、ザルツブルグ音楽祭の実況だろうか?
グラーフの首席指揮者在任は1984年から1994年8月31日まで、これが彼の最後の演奏会だったらしい。
 
パスカル・ロジェ(P)イザイQ、フォーレ;P四重奏曲第1番・P五重奏曲第1番
先日、新譜で出た第2番どうしのカプリングを購入したばかりだが、チラッと聴いた感じではなかなか良さそうだったので、既出の第1番どうしのを購入。
 
アルトゥーロ・トスカニーニ(指揮)ウィーン・フィルほか、モーツァルト;歌劇「魔笛」(NAXOS)
1937年、ザルツブルグ音楽祭での録音である。
常々「魔笛」に目がないと公言しているわりに、これを買うのは遅くなってしまった。(^^;;;
戦前のライヴゆえ、音の状態が不安で二の足を踏んでいたのだが、どうやらけっこう良好らしく、購入することにした。
ちょっと聴いてみたが、なるほど、悪くない。
歌手のほとんどは知らない名前だが、ザラストロをアレクサンダー・キプニスが歌っている。
また、アントン・デルモータが「2人の鎧を着た男」を、ケルステン・トルボルイが「第3の侍女」に顔を出しているのが面白い。
なお、この年のザルツブルグには、トスカニーニの他、クナッパーツブッシュフルトヴェングラーワルターワインガルトナーロジンスキが来演したとか。最初で最後の、凄い夏になったわけだ。
翌年春にオーストリアがナチス・ドイツに併合され、トスカニーニとワルターは出演できなくなったのである。
もっとも、トスカニーニとの協演の成果を高く評価しているオットー・シュトラッサー『栄光のウィーン・フィル』(音楽之友社)によると、
「『魔笛』は、いくらか幻滅であった。多くの細かな箇所では優れていたのだが、どういうものか全体として、曲の解釈に心の落ち着きというものが欠け、とりわけ、いささか早すぎるテンポの中にそのことが表明された。」
とあるが…。
 
バーバラ・ボニー(Sop)アントニオ・パッパーノ(P)北欧歌曲集(DECCA)
リリース情報は知っていたが、ステンハンマルが含まれているとは!
「逢い引きから帰ってきた女の子」(Op.4b-1)「フュリア」(Op.16-4)「アダージォ」(Op.20-5)「スヴァーリエ」(Op.22-2)「森の中で」と、有名なところが収められている。
これは、歓喜!
その他、グリーグシベリウスアルヴェーンショーベリを歌っている。

12月26日(日): 年末年始のあれこれに精を出す。
 プライヴェートでは年賀状、「斉諧生音盤志」的にはトップページの正月ヴァージョンの準備、等々。
 「今年のベスト盤」的な企画はないのか?というお尋ねをいただいたりもするのだが、それは中古音盤堂奥座敷で「1999年の5盤」という企画があるので、そちらに譲る。
 …といいつつ、実は、今日、その原稿を執筆しておりました。

 CD TeleshopからCDが届く。
 ここはオランダの業者で、cgiが重い・検索結果が見づらい・ギルダー建てでわかりづらいという欠点はあるが、アメリカ系通販サイトでは見かけないCDが入手できるのが貴重。

テオ・オロフ(Vn)ジェラール・ヴァン・ブレルク(P)モーツァルト;VnソナタK.526&フォーレ;Vnソナタ第1番&グリーグ;Vnソナタ第3番(Erasmus)
これは、上記の「検索結果が見づらい」に*半分*騙された1枚(笑)。
23日の項にも書いた、『クラシック輸入盤パーフェクト・ガイド』に、この人のフランスVn作品集が紹介されており(46頁)、それが欲しくて、地元・オランダならあるだろうと、CD Teleshopで捜してみた。
だいたいこれだろうと見当を付けてオーダーしたところ、これが届いたというわけ。
まあ、モーツァルトのK.526は好きな曲なので、悪くはない。
 
テオ・オロフ(Vn)バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(VANGUARD)
上記の盤について検索したとき、これが出てきた。
ヴァイオリニストの試金石というか金字塔というか、この曲集には実力を存分に発揮しているに違いなく、ぜひ聴いてみたいとオーダーしたもの。
入荷を待っているうちに、『レコード芸術』1月号の「海外盤試聴記」のページにこのCDの紹介が出たので、吃驚した。
そこにもあるとおり、1979年4月に録音されたものが、オロフ75歳を記念してCD化されたもの。
オロフは1924年ボン生まれ、1933年にアムステルダムに移り、11歳の時、ワルター(指揮)コンセルトヘボウ管の演奏会でパガニーニを弾く。
1951〜71年にハーグ・レジデント管の、1974〜85年にコンセルトヘボウ管のコンサートマスターを務め、1982年までは王立ハーグ音楽院の主任教授でもあった。
しかしこの曲集、いったい何種集まったことやら…(^^;;;
 
ワルター・ヴァン・ハウヴェ(Bfl)「脱出の梯子 3」(ATTACA)
『パーフェクト・ガイド』(95頁)
学生の頃、ブロックフレーテを吹こうとしたことがある。マンロウの録音などで、古楽に興味を持ち始めた頃だ。
ちょうど、アルバイトでまとまった金が手に入りそうだったこともあり、楽器のカタログを集める等、かなり乗り気になっていた。
ところが、思ったほどの額でなかった上、LP代の支払いに追われてそれどころではなくなり(自滅)、挫折してしまった。
とはいえ、爾来、この楽器には因縁を感じて、気になった音盤は買っている。
ハウヴェは当時からブリュッヘンの高弟として著名、これは1988年に録音したもので、古楽・民族音楽からベリオヴァレーズ等に至るまでを無伴奏で吹ききった1枚。
中には日本の伝統音楽も含まれており、「刈干切唄」「しんのむかいじ」(どういう漢字を当てるのだろう? 13世紀の音楽だそうだが…。尺八の曲?)という名前が上がっている。
妙なタイトルだが、ライナーノートによれば、「その楽器の限界からの『脱出の梯子』を展望する音楽家」を紹介するシリーズの第3弾、ということだそうである。
コメントは磯田健一郎氏、「眩暈クラクラの超絶技巧と至高の音楽性(略)発見したら速攻ゲットだ!」
なお、氏のコメントに「トータル75分の快作」とありジャケットにもそう表示されているが、実測では61分であった。

 

デューク・エリントン(P)と彼の楽団、グリーグ;「ペール・ギュント」組曲(抜粋)(Columbia)
猛烈に面白かった。(^o^)
グリーグのメロディを、ちょっとジャズふうに触った…というようなものではない。完全に換骨奪胎、ビッグバンド・ジャズの世界に溶かし込んでいる。
コンガが刻むリズムの上にテナー・サックス、バリトン・サックスが妖しく歌う「朝」…北欧の朝どころか、アフリカの夜の雰囲気である。
「山の魔王の宮殿にて」では、アップテンポのリズムにホーンが格好良く決まって、何やら自動車が疾走するシーンに似合いそうな。
ミュートを付けたトロンボーンが侘びしく歌う「ソルヴェイグの歌」。クラリネットのカデンツァ(ってクラシック用語だなァ…)も上手い。
柔らかな管の響きが美しい「オーゼの死」。これは見事!
「アニトラの踊り」は、ゴキゲンな(死語かな)スウィング・サウンド。
デューク・エリントン本人の録音は初めて聴いたが、やはり、さすがだといえよう。
 
"1001Nights"(ビーム・エンタテイメント、DVD)
公開時には映画館の歪みっぽい音響設備が気になって楽しめなかったのだが、あらためて視聴すると、まさしく豪華絢爛たる映像と音楽が一体となって五官に押し寄せてくる感がある。
ストーリーは明確にされず、ナレーションで示されるとおりに「夢」のような、色彩の奔流とイメージの飛翔。
それに音楽がシンクロして、めくるめくような官能的情動を視聴する者に呼び起こす。
24分、あっという間だった。

12月25日(土): 

 通販業者からLPが届く。

ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮)北ドイツ放送響ほか、ヴェルディ;歌劇「椿姫」(抜粋)(独DGG、LP)
あっと驚く方もおられるかもしれない。
ベートーヴェンやブラームス等、ドイツの交響曲演奏で著名なイッセルシュテットのイタリア・オペラ録音(1958年2月)。
オーケストラと合唱は手兵のハンブルクの連中だし、歌手がマリア・シュターダー(Sop)、エルンスト・ヘフリガー(Ten)とくれば、バッハの宗教曲が始まってもおかしくないくらいだ。
歌唱はドイツ語により、抜粋のみの録音。こうしたディスクは、1950〜60年代にドイツで盛んに製作された。
イッセルシュテットは戦前、テレフンケン・レーベルでオペラの序曲やアリアをあれこれ録音しており、その線からすると不思議ではないことになるが…。
この演奏、実はモノラル盤で架蔵しており、「乾杯の歌」の序奏がまるでウィンナ・ワルツなのに爆笑したりしていた。
長くステレオ盤を捜していたところ、ようやく入手することができた。待望の一枚である。
なお、「乾杯の歌」のみ、「エルンスト・ヘフリガーの芸術」という11枚組のボックスでCD化されている(さすがに未架蔵)。

 最近入手した音盤の情報を、レイボヴィッツ・ディスコグラフィステンハンマル 作品表とディスコグラフィに追加。


12月24日(金): 

 クリスマス・イヴだというのに一人で音盤屋廻りである。これも「行」か、「業」か。

飯守泰次郎(指揮)東京シティ・フィル、モーツァルト;交響曲第35・38・41番(Fontec)
先だってブルックナー;交響曲第4番に感心した、このコンビのシリーズの第2弾が発売されていたので購入。
帯によれば、飯守はカール・ベームからモーツァルトについて薫陶を受けたというが、さて、演奏はどんなものか。期待してみたい。
いずれもライヴ録音で、収録は
第35番;1999年4月8日、サントリー・ホール
第38番;1998年3月30日、サントリー・ホール
第41番;1999年1月29日、東京芸術劇場

12月23日(祝): 

 通販業者からCDが届く。
今回は、ちょっと枚数が多くなったので、関税600円と手数料200円を徴収されてしまった(配達時に郵便局に支払い)。
 今日の荷物の大半は、先だって刊行されたONTOMO MOOK『クラシック輸入盤パーフェクト・ガイド』(音楽之友社)に掲載されたCDで興味を惹かれたもの。
 該当のCDのコメントでは『パーフェクト・ガイド』と略記し、掲載頁を付す。

エサ・ペッカ・サロネン(指揮)スウェーデン放送響、ニールセン;交響曲第2番「四つの気質」ほか(Sony Classical)
現在は北欧に留まらない活躍の目覚ましいサロネンだが、キャリアの初期には、やはり北欧曲の録音が中心だった。
ラトル同様、「全集」の完成には無頓着な彼には珍しい仕事が、ニールセン;管弦楽曲全集。交響曲のすべてと、主要な管弦楽曲・協奏曲を録音している。
ステンハンマルベルワルドで示した手腕をニールセンでも期待したいところ。
ボチボチと買い集めてきたが、もう店頭で見ることは少なくなったので、残ったものを通販でオーダー。
これは1988〜89年に録音されたもので、「パンとシランクス」組曲「アラディン」をカプリング。
 
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)スウェーデン放送響、ニールセン;交響曲第3・6番(Sony Classical)
上記第2番同様の事情でオーダーしたもの。
第3番は1989年6月、第6番は1990年9月の録音である。
これで、交響曲・管弦楽曲集5枚と協奏曲集2枚が、すべて集まった。
 
ジゼル・ベン・ドール(指揮)サンタ・バーバラ響ほか、レブエルタス;バレエ音楽「ラ・コロネーラ」ほか(KOCH)
『パーフェクト・ガイド』(24頁)
前にヒナステラの名演に接した女性指揮者、ベン・ドールにレブエルタス録音があるとは知らなかった。さっそくオーダー。
「旅程」「コロリーネス」をフィルアップ、後者はイギリス室内管の演奏。
サンタ・バーバラ響の公式ページは→ここを押して
コメントは濱田滋郎氏、「出色の女性指揮者が溌剌として神経濃やかな快演だ。」
なお、Conifer盤ヒナステラ集のジャケット写真では左手に指揮棒を持っていたが、この盤では右手。前のが裏焼きだったのか。
 
フレデリック・フェネル(指揮)クリーヴランド・シンフォニック・ウィンズ、ヴォーン・ウィリアムズ;イギリス民謡組曲&グレインジャー;「リンカーンシャーの花束」(Telarc)
『パーフェクト・ガイド』(27頁)
斉諧生の周囲のクラシック・ファンやWebmasterには、吹奏楽出身者が少なからずいる。
彼らが懐かしそうに語る吹奏楽の名曲、一度は耳にしておきたいと思っていたのだが、音盤屋の吹奏楽コーナーの前に立つと、それはそれで膨大なCDの海があり、もう一つ決めかねていた。
今回、演奏・録音・選曲の三拍子が揃っていそうなアルバムが掲載されていたのでオーダーしたもの。
標記の2曲の他、コープランド;コマンドー・マーチスーザ;「星条旗よ永遠なれ」J.シュトラウス;ラデツキー行進曲等、全部で12曲を収める。
演奏者はクリーヴランド管の管楽セクションを中心にした精鋭部隊。
1978年12月・1979年11月、テラーク初期のデジタル録音。テラークが新興レーベルとして意気壮んな時期だった。
コメントは磯田健一郎氏、「これを聴かずしてバンド音楽を語るなかれ! 絶品である。」
 
フレデリック・フェネル(指揮)クリーヴランド管・シンフォニック・ウィンズ、ホルスト;組曲第1・2番ほか(Telarc)
上記の盤のコメントの中で触れられていたもので、録音は1978年4月だから、こちらが先になる。
標記のホルストは、かねて、ぜひ聴きたかったのでオーダーしたもの。
バッハ;ファンタジアヘンデル;王宮の花火の音楽をカプリング。
 
エイドリアン・ボールト(指揮)ロンドン・フィルほか、「マーチ名曲集」(Sony Classical)
『パーフェクト・ガイド』(29頁)
ボールトのスーザ
こういうディスクに気がついていなかったのは恥ずかしい。"Essential Classics"という、一時期、輸入盤店の店先に溢れていたバジェット・プライスのシリーズなのに…。
収録曲は、
スーザ;「ワシントン・ポスト」、「エル・カピタン」、「星条旗よ永遠なれ」
J.F.ワーグナー;「双頭の鷲の旗の下に」
アルフォード;「ボギー大佐」
シュテフェ&ハウ;「リパブリック讃歌」
コーツ;「ダム・バスターズ」
タイケ;「旧友」
ジンマーマン;「錨を上げて」
など14曲。1968年の録音である。
なお、オーマンディレーンによるクラシック音楽系の行進曲(妙な言い方だが)6曲をフィルアップ。
そうそう、この手のシンフォニック・マーチでは、フェリックス・スラトキン(レナードの親父殿)の名盤もあり(CD化されている)、探求中。
 
カトリーン・ショルツ(Vn、指揮)ベルリン室内管、モーツァルト;Vn協第4・5番ほか(Berlin Classics)
『パーフェクト・ガイド』(33頁)
若手女流ヴァイオリニストは星の数ほどいることから、店頭で新しい名前を見かけただけでは買わないことにしている。何か、きっかけでもないと…。
このモーツァルトも、新譜では見送っていた。
芳岡正樹氏のコメント「ヴィブラートの少ない気品高い音と、しなやかなフレージング(略)馥郁としたモーツァルト」というのが気になってオーダーしたもの。
ひょっとしたら、シモン・ゴールトベルクF.P.ツィンマーマンに匹敵するようなヴァイオリンが聴けるかもしれない、そんな期待がある。
アダージョK.261ロンドK.269ロンドK.373をフィルアップ。
オーケストラは、前にヘルムート・コッホが率いていた団体。
これが良かったら、残り3曲も買ってみたい。
 
トビアス・リンボリ(Vn)ニクラス・ヴィレン(指揮)スウェーデン室内管、「スウェーデン・ロマン派のVn協」(NAXOS)
リリースを待望していた1枚。これはノルディックサウンド広島さんから届けていただいたもの。
何と言っても、ステンハンマル;2つのセンチメンタル・ロマンスが収録されているのが、斉諧生的には重要。
また、ベルワルド;Vn協アウリン;Vn協第3番といった比較的録音の珍しい曲も貴重だ。
独奏者は1973年ストックホルム生まれ、ヘルマン・クレバースイーゴリ・オイストラフに学んだという。
なお、オーケストラの公式ページは、→ここを押して
 
マッシモ・アンフォッシ(P)マリオ・ヴァシレフ(Vn)ジュリオ・グラヴィナ(Vc)チレア;室内楽作品集(AGORA)
『パーフェクト・ガイド』(39頁)
歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」でのみ有名なチレアによる、弦楽器とピアノのための作品を集めた盤。
VcソナタVcとPのための3つの小品PトリオVnとPの組曲を収録。
コメントは濱田滋郎氏、「いずれもメロディが美しく、かつイッサイの饒舌を排して簡明に書かれているのがいい。」
この文章に惹かれてオーダーしたようなもの。
 
ジョゼフ・シルヴァースタイン(Vn)デレク・ハン(P)モーツァルト;Vnソナタ全集(Verdi)
『パーフェクト・ガイド』(42頁)
シルヴァースタインは1932年生まれ、1962〜83年の間、ボストン響のコンサートマスターとして令名を馳せた。
こういう、やや古い世代のヴァイオリニストのモーツァルトは聴いておきたいところだ。
1995年10月、アムステルダム・コンセルトヘボウでのライヴ録音とある。
CD5枚にK.296〜K.547までのソナタ19曲と変奏曲等3曲を収めて27.47ドル、お買い得である。
ただし、2枚用のケースに5枚が放り込まれ、3枚は傷だらけになっていた。
コメントは芳岡正樹氏、「陰影深い弦の響きに浸っているだけで幸せである。」
 
ロベルト・ノフェリーニ(Vn)ブルーノ・カニーノ(P)バッツィーニ;Vn小曲集(BONGIOVANNI)
『パーフェクト・ガイド』(48頁)
ピアノ伴奏にブルーノ・カニーノの名前があるディスクには、いつも期待してしまう。
彼が共演する演奏者には、「外れ」がないという印象があるからだ。
ノフェリーニは1973年ボローニャ生まれ、グリュミオーアッカルドに教えを受けたとある。
バッツィーニは「妖精の踊り」が有名なヴァイオリニスト・作曲家。その小品集3セットを収めたCD。
なお、ピアノの上、ヴァイオリンの横に盤を置いてチェスをしているジャケット写真が笑える。
コメントは濱田滋郎氏、「この種のものとして疑いなく一級品。旋律美、洒落た才気が出色」。
 
セミー・スタールハンメル(Vn)エリザベス・ブストレム(P)「スウェーデンにおける世紀の変り目 1900 III&IV」(nosag)
世間的には無名であろうが、斉諧生的には大贔屓のヴァイオリニスト、セミー・スタールハンメル。ストックホルム王立歌劇場管のコンサートマスターだそうだ。
音は綺麗だし、センスも抜群。特に、北欧音楽独特の不安定な和声の活かし方が上手い。
この「世紀の変り目」シリーズの第1巻で惚れ込み、第2巻に収められていたステンハンマル;2つのセンチメンタル・ロマンスが素晴らしかった。
その続編が2枚組で出ると報せていただいた、ノルディックサウンド広島さんに、早くからオーダーしていたもの。
アウリンハクイニウスフォン・コッホオルションペルガメントペッタション・ベリエルラングストレムルーセンベリショーグレン等の曲を収める。
…北欧音楽ファン以外は知らない名前だろうなァ。
 
リチャード・タッカー(Ten)フランツ・アラーズ(指揮)コロンビア響ほか、「オペレッタの精髄」(Sony Classical)
『パーフェクト・ガイド』(64頁)
"Essential Classics"シリーズの1枚。
これは、この本に*半分*騙されて(笑)、買ったもの。
コルンゴルトがオーケストレーションしたJ.シュトラウスが入っている、というのに興味を惹かれたのである。
どうも斉諧生は編曲ものには弱いらしい。
届いたのを開封してみると、その曲は僅かに3分半ほど。これはちょっと…(泣)。
レハールを中心に、O.シュトラウスホイベルガースッペといったウィーンのオペレッタに加え、ロンバーグJ.カーンらアメリカのオペレッタ等の中の有名な歌が22曲、収められている。
ちょっと驚いたのは、「ウィーンの名花」と謳われたリーザ・デラ・カーザが登場して、
レハール;「メリー・ウィドゥ」から「ヴィリアの歌」・「ワルツ」
を歌っていること。これはちょっと儲けものだったかも。
ただし、歌唱はすべて英語。
1960年代初めのニューヨーク録音、オーケストラはワルターのものではないので念の為。
コメントは満津岡信育氏、「浮遊感に富んだゴージャスなオーケストレーションの味わいは、筆舌に尽くしがたい。」
 
マシュー・グリーノール(指揮)イリージャン・シンガーズ・オヴ・ロンドンほか、ディーリアス;パート・ソング全集(SOMM)
『パーフェクト・ガイド』(67頁)
エルガーやディーリアスによる合唱のための小品に美しいものが多々あることは有名だ(…と思う…)が、CD自体は多くない。
店頭ではあまり見かけないレーベル、さてこそと思ってオーダーしたもの。
初期の作品から、「イルメリン」「村のロメオとジュリエット」等のオペラに含まれる合唱曲、神品「夏の夜、水の上にて歌える」等々、晩年の作まで20曲を作曲年代順に配列している。
グリーノールは1960年生まれ、オックスフォードと王立音楽院に学び、1986年にオックスブリッジの各合唱団から選抜したメンバーで、このイリージャン・シンガーズを創設したという。
コメントは山尾敦史氏、「ファン垂涎の構成(略)管弦楽作品に魅了されているディーリアス・ファンには、絶対に聴いて欲しい一枚。」
 
キャシー・バーベリアン(M-S)ブルーノ・カニーノ(P)「失われた音楽を求めて」(RNE)
『パーフェクト・ガイド』(74頁)
スペイン国立放送が製作しているCDで、データ不詳ながら、リサイタルのライヴ録音のようである。
ライナーノートがスペイン語だけで読めないのだが、何やら妙な曲ばかり集めているらしい。
ベートーヴェン;交響曲第5番2楽章・Pソナタ第14番1楽章に歌詞を載せたもの等々…。
最後のロッシーニ;猫の二重唱では、ピアノのカニーノが「ミャオミャオ歌っている」とのこと。
ちょっと興味を惹かれてしまって(上記のとおりカニーノも好きな人だし)、オーダーしたもの。
コメントは鈴木淳史氏、「彼女は徹底的にエンターテイナーぶりを発揮するのだ。(略)これほど楽しめるリサイタル盤も少ない。」
 
レナード・バーンスタイン(P、解説)ほか、「バーンスタイン・オン・ジャズ」(Sony Classical)
『パーフェクト・ガイド』(95頁)
これは昔から有名な盤。
バーンスタインが自分でピアノを弾き、あるいはルイ・アームストロングマイルス・デイヴィスにサンプル演奏をさせながら、ジャズの原理や歴史について解説したもの。
1956年、アメリカCBSのTV番組のための録音であったはず。
去年くらいにCD化されたが、いつでも買えると思っているうちに店頭で見なくなり、今回、オーダーしたもの。
コメントは北村晋氏、「ふだんクラシックしか聴かない方は、ぜひ聴いていただきたい。」
 
デューク・エリントン(P)と彼の楽団、「3つの組曲」(Columbia)
『パーフェクト・ガイド』(158頁)
またまた編曲物に弱いところが出てしまった。(^^;;;
デューク・エリントンがチャイコフスキー;「胡桃割り人形」組曲を、ビッグ・バンド・ジャズに換骨奪胎した見事なアレンジで演奏しているというので、どうしても聴いてみたくなりオーダーしたもの。
エリントン自身の録音を買うのは、これが初めてだと思う。
他の人の演奏なら、先だってもプレヴィンのエリントン・アルバムを買ったところだが。
チャイコフスキー以外には、
グリーグ;「ペール・ギュント」組曲(抜粋)
エリントン&ストレイホーン;木曜日組曲
を収録。グリーグも楽しみである。
コメントは満津岡信育氏、「ビッグ・バンドの魔術師としてのエリントンの魅力が実感できる」。

12月22日(水): 

 

小林研一郎(指揮)日本フィル、ブラームス;交響曲第1番ほか(EXTON)
まだまだ出る小林研一郎の新譜、今月はブラームスの第1番。とにかく彼の録音は買わざるべからず。
これは、今年4月23日、サントリー・ホールでのライヴ録音。
10月にリリースされた第2番は4月22日の録音とクレジットされていたから、初日と2日目ということになろう。
8月23日に同じくサントリー・ホールで収録されたハンガリー舞曲第5番をフィルアップ。
 
ベンジャミン・ブリテン(指揮)イギリス室内管ほか、ショスタコーヴィッチ;交響曲第14番&ブリテン;夜想曲(BBC Music)
指揮者としてのブリテンの表現力には無視できないものがあると以前から思っており、手に入るかぎりで集めるようにしている。
ましてや、共感・親交の深かったショスタコーヴィッチの14番であるからには見逃すことはできない。
1970年6月14日、モールティングスでの録音というから、オールドバラ音楽祭のライヴ録音か。
独唱はガリナ・ヴィシネフスカヤ(Sop)、マルク・レシェーチン(Bs)、これはロストロポーヴィッチ&モスクワ・フィル盤と同じ顔合わせ。
カプリングの夜想曲は念友ピーター・ピアーズ(Ten)の独唱。1967年11月27日、クイーン・エリザベス・ホールでのライヴ。
 
ベンジャミン・ブリテン(指揮)イギリス室内管ほか、チャイコフスキー;幻想序曲「ロメオとジュリエット」・交響幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」&ファリャ;「恋は魔術師」(BBC Music)
ブリテンのチャイコフスキーやファリャ、ちょっと想像しにくいが、どんなものだろうと購入。
「ロメオ〜」は1968年6月16日、「フランチェスカ〜」は1971年6月16日、ファリャは1972年6月19日、それぞれモールティングスでのライヴ。
ファリャではアンナ・レイノルズ(M-S)の独唱が入る。
 
ウラディスラフ・ツァルネッキ(指揮)プフォルツハイム南西ドイツ室内管、ガーデ;弦楽のためのノヴェレッテほか(ebs)
この北欧の佳曲のCDが少しづつ増えてきたのは誠に喜ばしい。1998年10月の録音。
指揮者はチェコ生まれ、ヴィオラ奏者の出身とか。東京で放送録音をしたこともあると紹介されている。1986年以来、このオーケストラの指揮者を務める。
東欧の指揮者がドイツの団体を振った北欧の曲、過大な期待は禁物かもしれないが、この曲の録音は買わねば!
コールリッジ・テイラー;4つのノヴェレッテ(1903年作曲)をフィルアップ。
 
パスカル・ロジェ(P)イザイQ、フォーレ;P四重奏曲第2番・P五重奏曲第2番(DECCA)
今年春に中古音盤堂奥座敷の合評会で聴いて好きになった五重奏曲第2番の新譜が出ていたので、購入。
この曲の録音は、残念ながらあまり多くないので、新録音は貴重だ。
演奏の要たるべきロジェのピアノには、先日のプーランク他の実演に感銘を受けたばかりであり、期待したい。
第1番どうしをカプリングした盤も以前に出ており、これが良ければ、そちらも買いたいもの。
 
シュピラー・トリオほか、ルクー;Pトリオ・P四重奏曲(未完)(ARTS)
ルクーはVnソナタで有名だが、それ以上に美しいと思うのが未完のP四重奏曲。
フォーレの後期室内楽が好きな人なら、きっと気にいるだろう佳曲ゆえ、「未完」にこだわらず、もっと演奏され・聴かれてほしい。
アナログ時代には秘曲中の秘曲、SP・モノラル・ステレオ初期に各1種ずつの録音があるきりだったが、CD時代に入って(少なくとも)8種類の録音が出た。
いずれ、じっくり聴き比べをしたいと思っていたら、9つめがリリースされたので、是非ともと購入。
演奏者はミュンヘンに本拠を置くグループ、アントニオ・シュピラー(Vn)、オスカー・リジィ(Va)、ウェン・シン・ヤン(Vc)は、いずれもバイエルン放送響の首席奏者である。
 
エレナ・ザニボニ(Hp)デュセック;ハープ作品集(ARTS)
愛惜佳曲書に掲げたハープ・ソナタ ハ短調の新しい録音を見つけたので購入。
演奏者はイタリアを中心に活躍している人らしい。

12月19日(日): 今日は日帰りで東京へ行く。
 
 東京駅から秋葉原へ直行し、CDウォークマン用のヘッドホンを購入。
 アメリカ・KOSS社PORTA PROという製品である。
 
 月曜にCDウォークマンを買ってから、ネットでいろいろヘッドホンに関する情報を探してみたところ、熱烈なファンがいるEtymoticResearch社ER-4Sが目に付いた。(日本語では、ヘッドホン紹介ページに詳しいレビューがある。)
 この製品については東越谷通信さんが紹介されており、音質の素晴らしさは疑い得ないところだ。
 ただ、3万円近い価格は別にしても、斉諧生的には耳の穴に挿入するという装着方法が、ちょっと辛い。「頭から掛ける」式が好ましいのである。
 
 そこで浮上したのがKOSS社のPorta Pro。上記のヘッドホン紹介ページでも「耳乗せ型ポータブルヘッドホンの決定版!」とされており、その他、いろいろ検索してみると、購入した人達に好評である。
 日本ではTEACが代理店になっており、同社のWebpageにPorta Proの紹介もある。
 TEACの営業所に電話で取扱店を問い合わせ、更にお店に電話して、在庫がないか・試聴できないか尋ねてみた。
 その結果、石丸電気本店7階のオーディオ売場で試聴でき、在庫も十分あるというので、今日、行ってみたのである。
 
 試聴機で鳴っていたのはロック系の音楽だったが、音の鮮烈さ・レンジの広さは一聴して明らか、これは凄い!
 さっそくレジへ行って購入。税込み8,232円。
 電車の中で包装を開け、すぐに聴いてみたが、クラシックでも納得の音質である。
 もちろん軽くて装着感も良いし、折り畳むと丸まってしまうのも面白い。
 
 斉諧生はポータブル用に使うのだが、ホームユースにも十分、堪えるものと思われる。
 これはお薦めの逸品。

 今日の主目的は、シャルル・デュトワNHK交響楽団を指揮する特別演奏会@NHKホール。
 値段のわりに音が良いという、3階バルコニーの最前列に座ってみた。

今日の曲目は、
ダラピッコラ;歌劇「囚われ人」
フォーレ;レクイエム
というもの。
間に休憩を置かず、2曲を1つの作品として上演するという趣向。
 
ダラピッコラ;歌劇「囚われ人」は、夙にサロネン盤があり、それで「予習」を重ねてきた。
囚人に与えられた希望こそが最後の拷問であった、というパラドキシカルなシチュエーションの中に、「ファシズムとユダヤ人排斥への抗議の意」を込めた作品と言われる。
無調に十二音音楽を加味した作曲技法だが、ときにイタリア・オペラの伝統を感じさせる音の快感や、開放的な旋律も駆使されており、埋もれてしまうには惜しい音楽である。
この人やマルタンらの音楽は、もっと演奏されていいはずだ。
 
主な登場人物は3人。
囚われ人;デイヴィッド・ピットマン・ジェニングス(Br)
囚われ人の母;フィリス・ブリン・ジョンソン(Sop)
看守/異端審問官;ハワード・ハスキン(Ten)
ブリン・ジョンソンとハスキンは、サロネン盤でも歌っている。
 
舞台上を横切って回廊が組まれ、その上を歌手が移動できるようにされている。
回廊の上面に接して檻が吊り下げられ、その中に囚われ人が横たわっているところから開幕。
囚われ人が逃れる地下トンネルは、その回廊で表現され、最後に捕らわれる杉の木は、舞台上方から垂らされた布によって表現された。
 
オーケストラはピットに位置し、指揮者も含めた全員が黒のタートルネックとズボンを着用。
仕方のないこととはいえ、上に反響板のないピットからの音響は、ちょっと貧しかった。鳥肌の立つような音の絡み合いを期待していただけに、やや欲求不満が残る。
サキソフォンやピアノ、各種の打楽器も動員した、かなりの大編成。この作品が上演されにくいのは、このあたりにも事情があるだろう。
 
オペラの上演は、まずまず悪くない感じ。十分な緊迫感と劇性が表出されていた。
欲を言えば、母と看守は声量が不足気味に感じられ、囚われ人はやや力ずくの歌唱だったと感じた。
広いホールに加えて、ときにオーケストレーションが分厚く、歌手には気の毒な環境だったかもしれない。
 
演出にも抵抗はなかったが、背景に映写された画像には疑問が残る。こちらが3階席にいたせいかもしれないが、何の絵(写真)かわからないものが多かったのである。
一方、字幕がプロセニアム上方に映写され、非常に見やすかった。対訳も、サロネン盤の国内盤に添付されたものより、はるかに優れたものであった。
 
オペラの幕切れ、おそらく火刑台に連れられるだろう囚われ人の「自由? La libertà?」という力無い問いかけのあと、合唱が移動する時間だけを置いて、
 
フォーレ;レクイエムに入る。
回廊の上から投げ落とされた囚われ人の死骸が舞台中央に安置され、彼の葬儀という思い入れである。
合唱(二期会)もマント風の衣裳をまとい、曲ごとに舞台や回廊の上を移動する。
オペラの序盤に登場した囚われ人の母も、出ずっぱり。看守も最後のあたりで登場する。
ソプラノ独唱(中嶋彰子)は赤い衣裳を着て(囚われ人の恋人という設定か?)舞台の上を動く。
バリトン独唱は囚われ人が歌い、あるいは死者として、あるいは司祭(?)として振る舞う。
曲の最後に、バリトンは上半身裸体となって、回廊中央で十字架にかかるようなポーズを取る。
こうした演出(高島勲)には、やや煩わしいものを感じた。
終了後に、僅かながら執拗なブーイングが演出家に飛んだのも、そういったあたりの問題ではなかったか。
 
もちろん、通常の合唱曲のように演奏すべし、演技・演出はフォーレの傑作への冒涜、などというのではない。
斉諧生的には、もう少し*抑制*した演出が好ましかった、ということである。
 
演奏自体は、優れたものであった。
オーケストラの柔らかい、いかにもフォーレという響きは素晴らしかったし、
あちこち動かされた合唱も、けっして乱れず、見事なアンサンブルだった。
 
ソプラノ独唱は、ややオペラティックなものではあったが、優れた歌唱だったし、バリトン独唱も疲れを感じさせない立派な声。
ただし、斉諧生的には、この曲の独唱は、もっと端正な方が好き。
 
最後の音が止んだ後、舞台が暗転したのだが、拍手もブラボーも出ず、再び照明が点るまで静寂が維持されたのも、実に素晴らしいことだった。
 
聴き終わってみると、やはりフォーレの印象が圧倒的。
デュトワは最初、モーツァルト;レクイエムを提案したそうだが、もしそうなっていたら、もっとダラピッコラの影が薄くなったろう。
ダラピッコラの音楽は、ある程度、折衷的な側面もあり、台本のテーマほどには深いものではないと思う。
フォーレの曲が持つ、ある種の*甘さ*が、ちゃんとそれに見合っていたのではないか。
 
なお、聴衆の中に若杉弘井上道義を見かけた。

 出発直前に、通販業者からLPが大量に届いた。
 演奏会後のミニ・オフ会に当たって音盤屋に集合、その際に少々買い物。
 また秋葉原でDVDを2点購入。

 
まず、LPから。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)フィルハーモニア管、ブラームス;ハイドン変奏曲(米RCA、LP)
この音源の存在は知らなかったので、驚喜してオーダー。
モノラル時代のマルケヴィッチとフィルハーモニア管のコンビは、史上最強を争う演奏力を有しており、全録音が不滅の価値を持つ…少し大袈裟に言えば、そう考えている。
曲も有名なのに、どうしてこれまで気づかず、またEMIやTESTAMENTのCD化から漏れていたのだろうか?
もちろん英EMI音源と思われるが、提携関係にあった米RCAから発売されたもので、プレスはカナダで行われている。
なお、カプリングはイッサイ・ドブロウェン(指揮)チャイコフスキー;序曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」
ジャケット裏面の広告に、プロコフィエフ;「ピーターと狼」チャイコフスキー;「胡桃割り人形」をカプリングした盤が掲載されており、これも捜さねば…。
「胡桃割り〜」はTESTAMENTからCD化されているが、プロコフィエフは未見である。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)ソビエト国立響ほか、「子供の主題による音楽作品集」(露MELODYA、LP)
マルケヴィッチは一時期、モスクワ音楽院で指揮法を教えたことがある。
この盤も、1964年録音とあるので、その頃の演奏であろう。
妙なタイトルだが、収録されているのは次の3曲。
チェレプニン(編);「タチ・タチ」
伝ハイドン;玩具の交響曲
ビゼー;組曲「子供の遊び」
1曲目は、ボロディン、キュイ、リァドフ、リムスキー・コルサコフ、リストの作品に現れる可愛らしい主題を用いて、チェレプニンが自由に編曲・オーケストレーションしたもの、とある。
それにしても、モスクワくんだりまで行って、「玩具の交響曲」を録音していたとは…。マルケヴィッチの活動も、多岐にわたるというか、不可思議というか。
なお、ハイドンとビゼーは、ソビエト国立放送響の演奏。
 
ジェルジ・ガライ(Vn)ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響、ベルク;Vn協・歌劇「ヴォツェック」からの3つの断章・「ルル」組曲から「アダージョ」(独ETERNA、LP)
これは驚いた。ケーゲルのベルク;Vn協が2種あったとは!
ケーゲルは、Berlin ClassicsからCDがかなり出ているが、復刻の音質があまり良くない場合もあり、なるべく元のLPで聴きたいと思っている。
これもそういう観点でオーダーしたもので、音源としては全てCDで架蔵できていると思っていた。
ところが、既に「BC1012-2」でCD化されている演奏は、ソリストがマンフレート・シェルツァー、オーケストラはドレスデン・フィル、1980年の録音である。
これは、ソリストもオーケストラも異なる。浮月斎さんのA Discography of Hebert Kegelにも記載されていない。
カプリングの「ヴォツェック」断章と「ルル」組曲は、既に「0090202BC」としてCD化されており、その記載によれば1965年7月の録音となっている。おそらく、Vn協も同時期の録音であろう。
従ってステレオ収録のはずだが、残念ながら届いたのはモノラル盤。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ドレスデン・フィルほか、ヒンデミット;管楽器のための協奏曲集(独ETERNA、LP)
ケーゲルはヒンデミットを数多く録音しており、CDにもなっている。
このLPには3曲が含まれている。
ルートヴィヒ・ギュトラー(Trp)エッカルト・ケーニヒシュテット(Fg)Trp&Fg協(1949年)
ペーター・ダム(Hrn)Hrn協(1949年)
ハンス・デトレフ・レヒナー(Cl)Cl協(1947年)
斉諧生の手元にはTrp&Fg協が入ったCD(0090542BC)しかなく、上記の浮月斎さんのディスコグラフィでも同様だが、他でCD化されていたりするのだろうか?
なお、録音は、Hrn協が1981年、他の2曲が1982年とある。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響、シェンカー;管弦楽のための「風景画」(独NOVA、LP)
ケーゲルの未架蔵音源をオーダーしたもの。
ただし、CDにはなっているらしい。(上記の浮月斎さんのディスコグラフィによる。)
シェンカーは1942年生まれの作曲家。「風景画」は1974年の作品で、4楽章から成り、演奏時間は11分強。
他の演奏家による他の作曲家の作品2つをカプリング。
レーベル名は異なるが、ETERNA音源であろう。1975年10月・1976年1月の録音。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響ほか、ウェーバー;カンタータ「戦争と勝利」(米URANIA、LP)
ケーゲルの未架蔵音源をオーダーしたもの。
聴いたことのない曲だが、作曲者はけっして旧東独の現代作曲家ではなくて(笑)、歌劇「魔弾の射手」のウェーバー。
1950年代初期の録音とおぼしい。
上記の浮月斎さんのディスコグラフィによれば、FORLANEレーベルからCD化されているとのこと。
 
アルフス室内管、ガーデ;弦楽のためのノヴェレッテ(丁PAULA、LP)
これは愛惜佳曲書に掲載したガーデの美しい美しい弦楽合奏曲の、おそらく最も美しい演奏。
掲載しているのはCDで聴いた分で、1981年の録音だが、アナログ収録の表示「AAD」があったので、オリジナルのLPをずっと捜していた。
ようやくカタログに見つけたので驚喜してオーダーしたもの。
北欧の森の緑が美しいジャケットも、LPサイズでは更に美麗、嬉しい限りである。
 
ミクロシュ・ペレーニ(Vc)ヤーノシュ・ローラ(指揮)フランツ・リスト室内管、ハイドン;Vc協第1・2番(洪HUNGAROTON、LP)
ペレーニのLPは全部を集めたいと思っており、持っていないものは見つけ次第オーダーしている。
ハイドンは既にLASERLIGHTからCD化されており架蔵もしているが、1980年頃のアナログ収録のようなので、LPが入手できて、非常に目出度い。
ただし、CDには「DDD」の表示がある。
 
ミクロシュ・ペレーニ(Vc)カルマン・ベレケシュ(Cl)ゾルタン・コチシュ(P)ベートーヴェン;Clトリオ&ブラームス;Clトリオ(洪HUNGAROTON、LP)
ペレーニにこういう曲の録音もあったとは!
油断も隙もない…というと御本人には悪いのだが、捜す方からすると厄介である。(^^;;;
1980年6月23〜24日の録音、アナログ末期の収録のようだ。
なお、クラリネット奏者は1952年生まれ、ジュネーヴ国際コンクール(1972年)で2位入賞、ハンガリー国立歌劇場管とブダペシュト・フィルの両方で首席奏者を務める、とライナーノートにある。
 
リリアナ・イサカーゼ(Vn)アレクサンドル・ラザレフ(指揮)ソビエト国立響、シベリウス;Vn協&シェーンベルク;Vn協(露MELODYA、LP)
イサカーゼはオイストラフ門下の女流実力派。
前に聴いたフランク;Vnソナタシベリウス;ロンディーノが良かった。
このシベリウスの協奏曲でも繊細な音と深い情念の名演が聴けるのではないかと期待してオーダー。
カプリング(実際にはA面)が、珍しいシェーンベルクの協奏曲というのも興味深い。このヴァイオリニストが、ただ者でないことがよくわかる。
1980年の録音。
 
ペーター・ルーカス・グラーフ(Fl)シャンドール・ヴェーグ(Vn)ライナー・モーク(Va)レーガー;Flのためのセレナード(瑞CLAVES、LP)
こんなところでヴェーグが録音していたとは!
彼のヴァイオリンも聴き逃せないので、オーダー。
レーガーはイマイチ苦手だが、そうも言ってはいられない。
ニ長調の作品77aとト長調の作品141aを収録、1980年の録音。
 
ハンス・ロスバウト(指揮&Cem)パリ音楽院管ほか、ラモー;歌劇「プラテー」(仏EMI、LP)
1956年のエクス・アン・プロヴァンス音楽祭での上演を録音したもの。
この演奏については、1970年代の再発盤LPと先日出たCDも架蔵しているが、初発の仏パテ盤が安くカタログに載っていたのでオーダーしたもの。
ブックレットは写真版やイラストを多数掲載した美麗なもの、緑色の綴じ紐も色鮮やかなままである。
なお、この曲は、30ほどもあるラモーのオペラのうち、ギリシャ神話に題材を得たもの。
タイトルロールをミシェル・セネシャル(T)が歌うほか、ニコライ・ゲッダ(T)ジャック・ジャンセン(Br)ジャニーヌ・ミショー(Sop)らが名を連ねている。
ロスバウトも妙な人、いわば、音楽史の*両端*しか相手にしなかった…ということか。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・フィルほか、モーツァルト;歌劇「ツァイーデ」(米Polymusic、LP)
レイボヴィッツ・ディスコグラフィに「未詳」として掲載していた「ツァイーデ」の全曲盤がカタログに載っていたので、驚喜してオーダーしたもの。
ブックレットには「1952年」の表記があり、ボックスの造りもSPを思わせる古めかしさ。
独唱には、ユグ・キュエノー(Ten)、マッティヴィルダ・ドブス(Sop)らが名を連ねている。
この指揮者も、色々なところで色々な仕事をした人だ。捜す方にとっては、きわめて厄介。(^^;;;
 
エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮)ソビエト国立響ほか、エルガー;オラトリオ「ジェロンティアスの夢」(露MELODYA、LP)
スヴェトラーノフの珍品として有名な録音。
つとに藤野竣介氏の文章や、はやしさんのスヴェトラーノフのページで、その存在は知っていた。
「落涙を禁じ得なかった…知られざる名盤」(藤野氏)、「イギリス人でもここまで共感に溢れた演奏を成し得るだろうか?」(はやしさん)とのこと、これは聴いてみたくて仕方がなかった。
ようやくカタログに発見してオーダーしたもの。
詳細は上記はやしさんのページに詳しいコメントがある。
1983年4月21日のモスクワ録音だが、独唱と合唱はイギリス勢を招いており、合唱指揮はリチャード・ヒコックス
 
以下はCD。
 
カール・シューリヒト(指揮)ウィーン・フィル、ブルックナー;交響曲第3番(PREISER)
1965年12月2〜4日、ムジークフェライン・ザールでの録音。すなわちEMI音源のリマスターである。
独EMI盤で架蔵しているが、音質の改善を期待して購入。
(附記)軽く聴いてみたが、両盤の音には多少の違いはあるが、目立った改善とは言えない程度であった。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ新交響協会管ほか、シェーンベルク;グッレ・リーダー(LYS)
レイボヴィッツの出世作と言える録音の、待望のCD化である。
この曲は、SP時代にストコフスキーの録音があったが収録時間・再生技術的にはお話にならず、LP時代にこの録音が登場して初めて、一般に聴かれるようになったといっていい。
前に米VOXの廉価盤を買ったことがあるが、音質的にはかなり貧しいものであった。オリジナルのハイドン協会盤を探しているのだが、まだ入手できていない。
そんな中で、先日、ネットの通販サイトでこのCDを見かけたが、そこがEU域外には販売しないサイトであったため、涙を呑んでいた。
ようやく日本に入荷、喜ばしい限り。
録音は1953年10月と記載されている。エンジニアは有名なアンドレ・シャルラン
 
佐藤豊彦(Lute)山田千代美(Sop)大竹尚之(Rec)、『諧謔音楽 出島のオランダ音楽』(BRAIN MUSIC)
江戸時代初期、1641年に開設された出島で、オランダ人達によって演奏された「かもしれない」、当時のヨーロッパで広く演奏されていた楽曲を収めたCD。
スヴェーリンクモーリーダウランドの作品、「アマリリ麗し」「涙のパヴァーナ」をめぐる楽曲を、ソロ、合奏、声楽入りで演奏している。
現在、世界の古楽演奏の第一線で活躍する日本人奏者は多いが、その草分けの一人、佐藤豊彦さんのリュートは、演奏・録音とも美しいものが多く、LP・CDを集めている。
これは国内製作盤だが、録音はオランダの教会で行われており、エンジニアはCHANNEL CLASSICSのスタッフ。
演奏者もCHANNEL CLASSICSから「アルバ・ムジカ・きょう」としてCDが出ているアンサンブルと共通している。
ライナーノートは佐藤氏が執筆しているが、どこが「諧謔」なのか疑問が残ったのは残念。
 
以下は、DVDディスク。
ジョン・ブアマン(監督)ほか、映画『エクスカリバー』(ワーナー・ホーム・ビデオ)
ブアマンといえば『エクソシスト』で有名な人だが、これは1981年製作のアメリカ映画。("The Internet Movie Database"のデータは→ここを押して)
斉諧生は、この映画を日本公開時に封切りで見ている。実は、この映画が、ワーグナーに「はまる」きっかけだったのだ。
イギリスのアーサー王伝説を映画化したもので、タイトルは王が所持していた聖剣の名前である。
脚色に当たって、この聖剣を、ワーグナーの『ニーベルングの指環』に登場するジークフリートの剣「ノートゥング」に重ね合わせ、筋書きに『パルジファル』の聖杯伝説を組合せているのがミソ。
それによって、英独に通底するゲルマン神話の世界が描き出されたのである。
音楽はトレヴァー・ジョーンズの担当だが、全編にわたってワーグナーの音楽が用いられている。
中でも、幕切れ、アーサー王の死の場面に当てられた、「ジークフリートの葬送行進曲」は映像と相俟って誠に感動的。
トランペットが「ノートゥングの動機」を吹くところに、聖剣エクスカリバーが湖の乙女の手に戻って日の光に輝きながら水没する…というシーンが被さり、いっぺんに「ワーグナーの毒」に捕らえられてしまった。
映画館を出た足で筋向かいのレコード屋に駆け込み、その曲を収めたLPを買った。それが、ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)ウィーン・フィルのDECCA盤だったのである。
今回、エンド・クレジットをよく見ると、ワーグナーの音楽はノーマン・デル・マー(指揮)ロンドン・フィルが、この映画のために録音した…とあった。
ワーグナーなどドイツ音楽を得意にしたデル・マー、さすがの演奏であったろう。
なお、劇中、聖杯によって精気を取り戻したアーサー王と彼の騎士達が、王国を駆けめぐって春をもたらす場面では、オルフ;「カルミナ・ブラーナ」から"O, Fortuna"が当てられていた。
やはりエンド・クレジットによると、これはケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響のレコード音源を使用していたとのこと。
これまた凄い人選である。吃驚した。
 
"1001Nights"(ビーム・エンタテイメント)
これは説明するのが難しいディスクだが…。
天野喜孝が基本デザインをしたアニメーションにデヴィッド・ニューマンが作曲し、エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ロサンジェルス・フィルが演奏した音楽をシンクロさせて、映像と音楽の新たな結合「Filmharmonic」を創造した…という触れ込みである。
映像と生演奏による世界初演は、ロス・フィルの定期演奏会(!)で行われたとか。
今年の春に日本でも公開され、斉諧生も大阪まで見に行ったのだが、映画館のオーディオが貧しく、まったく楽しめなかった。
DVD発売で、もう一度見直してみようというわけである。
本編は24分ほどだが、それに41分のメイキング画像がついている。
また、アニメ・ファン向けと見えて、CD−ROM1枚と美麗ブックレット付き、大型ボックス入り仕様という豪華なもの。
 
まあ、斉諧生が云々するより、BBSサイトサロ様と彩ちゃんの部屋を訪れていただく方が、早いかもしれない。(^o^)

12月18日(土): 

 通販業者からLPが届く。

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)シンフォニー・オヴ・ジ・エア、ベートーヴェン;交響曲第3番「英雄」(独COLLECTION、LP)
CDでは架蔵しているが、独盤LPが安く出ていたので購入。
この演奏では、第1楽章コーダで、トランペットが主題を吹くところでの、マルケヴィッチ流の処理が聴きもの。
もちろんオリジナルはDGGだが、おそらく系列の通販(?)レーベルからの再発。60年代中頃のものか。
CDのデータによれば録音は1956年12月〜1957年1月。DGGが初めてアメリカに進出して製作したものという。
オーケストラは、もちろんトスカニーニのNBC響の残党。どういう観点で、マルケヴィッチと彼らが組み合わせられたのか、興味津々である。
両者の共演にはブラームス;交響曲第1番もあるが、それ以上には発展しなかった。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)ベルリン・フィルほか、ハイドン;オラトリオ「天地創造」(独DGG、LP)
1950年代、マルケヴィッチがBPOと盛んに録音していた時期の代表盤の一つ(録音は1958年頃)。
これもCDでは架蔵済みだが、オリジナルに近い独盤LPがカタログに出たので購入。いつも見かけるのは2枚組だが、これは3枚組。
歌唱は
イルムガルト・ゼーフリート(Sop)
リヒャルト・ホルム(Ten)
キム・ボルイ(Bs)
聖ヘドヴィヒ教会合唱団
 
デニス・スティーヴンス(指揮)アンブロジアン・シンガーズほか、モンテヴェルディ;「聖母マリアの夕べの祈り」(米VANGUARD、LP)
大好きな「ヴェスプロ」の、これまで知らなかった盤を見つけたのでオーダーしたもの。1960年代中頃の録音の模様。
当時のモンテヴェルディ演奏というとちょっと怖い(^^;気もするが、半分は演奏史上の資料的興味もあって、購入。
スティーヴンスは、アンブロジアン・シンガーズの創設者・指揮者とのこと。
 
ミシェル・コルボ(指揮)ローザンヌ声楽器楽アンサンブルほか、モンテヴェルディ;「マニフィカト」(仏ERATO、LP)
これも「ヴェスプロ」から、2種の「マニフィカト」のみを収めた盤。
コルボの同曲には1966年頃の旧録音と1982年の新録音(デジタル)があるが、これは旧録音の3枚目を、そのまま独立させたもの。1970年代半ばのリリースの模様。
実は、カタログで見たときには、「マニフィカト」だけの別録音かと期待してオーダーしたので、ちょっとガッカリ。
とはいえ、旧録音は国内盤LPしか架蔵しておらず、曲中で最も好きな「マニフィカト」を輸入盤で持てることは、まずまず歓迎したい。
なんといっても、コルボ旧録音こそ、この曲を音楽ファンに広く知らしめた記念碑的演奏だから。

12月17日(金): 

 今日は、11月25日の定期演奏会の名演の記憶も新しい、ズラタン・スルジッチ(指揮)大阪教育大学教養学科芸術専攻音楽コースクリスマス・チャリティ・コンサート@大阪府立ドーンセンター を聴きに行く。

なお、純益は、「読売光と愛の事業団」に寄託されるとのこと。
今日の曲目は、前半が
モーツァルト;Pと管弦楽のためのコンサート・ロンドK.382
  ピアノ独奏;志賀美津夫
ドヴォルザーク;スラヴ舞曲第1・8・10番
デュカス;交響詩「魔法使いの弟子」
後半は、声楽専攻生による合唱を入れてのクリスマス名曲集
  バリトン独唱;淵脇和範
というもの。
モーツァルトと名曲集でのソロは、それぞれ教官。
 
終始、楽しい演奏会であった。
モーツァルトでは、中間部のゆったりしたテンポでのそこはかとない哀しみの表出が心を打ち、
ドヴォルザークでは、マエストロには珍しくテンポを揺らせて、懐かしい味わいを聴かせた。
 
おそらくデュカスが今日のハイライトだったろうが、なかなか立派な出来。
木管の音色の出し入れが面白かった。
中では、テーマを吹くファゴットが熱演、コントラファゴット(教官)も面白い音を出していた。
クライマックスの鳴りっぷりも見事。
終結で出る短いヴィオラ・ソロも光っていた。
 
後半のクリスマス・キャロル集は、中学・高校時代に想い出が多い斉諧生にとって、終始、頬が緩むもの。合唱も実に美しかった。
 
歌われた曲は、
(1)オー・ホーリィ・ナイト
(2)リトル・ドラマー・ボーイ
(3)マリアの子守歌
(4)メドレー
   諸人こぞりて
   ああ、ベツレヘムよ
   ヒイラギ飾りて
   聖しこの夜
   樅の木
   荒野の果てに
(5)神の御子は今宵しも
と、有名なものを網羅。
 
これらの曲をフル・オーケストラで聴くのも珍しいだろう。
アレンジも、なかなか凝っていて、面白く聴けた。
中でも金管をバリバリ鳴らした神の御子は今宵しも(アデステ・フィデレス)が楽しかった。
 
アンコールには、まず聖しこの夜が、実にしみじみしたテンポと表情で歌われた。
3コーラス目では、マエストロが客席を向いて、唱和を促されるという暖かい趣向。
 
ところが、これで終わらないところが…(笑)
 
マエストロが指揮棒を振りかぶるや!
 
「ぱぱぱん、ぱぱぱん、ぱっぱっぱ〜ん、ぱ、ぱらぱら、ぱっぱっぱん!」と、ラデツキー行進曲!!!
いきなりニューイヤー・コンサートになってしまった。
もちろん手拍子付き、いや〜、楽しかった。(^o^)
 
それにしても、皆さん、手拍子の仕方を心得ていらっしゃる。
NHKの中継が相当浸透していると見た。
 
ちょっと残念だったのは、ホールの音響。
どうにもデッドで抜けが悪く、このオーケストラの弦が、あれだけ鳴らないのは初めて。
空調の騒音も耳についた。

12月16日(木): 

 

ミシャ・マイスキー(Vc)バッハ;無伴奏Vc組曲全集(DGG)
マイスキーは、デビュー盤がこの曲集で、当時けっこう話題になり、斉諧生的にも好印象を残している。
ただ、近年の彼のチェロには疑問が多く、これも買うかどうしようか迷っていたのだが、某啓示板(笑)で、月我さん@マルティミーノからお薦めをいただいたので、購入。
3枚目にCD−ROMが付いている。PCにインストールすると、全6曲のスコアを見ながら音楽を聴くことが出来るという仕掛け。
 
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(M-S)ベングト・フォルスベリ(P)ほか、コルンゴルト;歌曲&室内楽曲集(DGG)
最近、シュレーカーやコルンゴルトといった、ドイツ「頽廃」音楽に興味を持っているところ、小林さん@北欧のクラシック音楽が12月12日付けの更新で、このディスクを取り上げておられるのが目に留まった。
「今年の新譜の中でも指折りの1枚」とのこと、これは…と思い、購入。
歌曲では、歌劇「死の都」からの「マリエッタの歌」に注目したい。
また、ピアノ五重奏曲ピアノ(左手)四重奏曲にも興味あり。
共演のフォルスベリは、北欧系レーベルで活躍しているピアニストだし、弦楽器にもニルス=エリク・スパルフ(va)やマッツ・リドストレム(vc)といった北欧の実力派の名前が見える。
これは大いに期待したい。

12月13日(月): ふと思い立って、CDウォークマンを購入。
 
 思えば、大学生の時に初代ウォークマンを買って以来である(歳が知れるなァ)。なお、開発秘話(?)は→ここを押して
 電車の中では低音やピアニッシモが聞こえないのと、「聴き流し」になるのを警戒して、ずっと避けてきたのだが、こうも未聴盤が溜まるばかりでは何をしているのかわからないので、通勤時間を音楽に充てることにした。
 また、コンサートの予習系の聴き方には、そういう場面の方が向いているかもしれない。当面、週末に控えた演奏会に備えたいのである。
 
 店頭であれこれ尋ねて、ソニーの中級機を選ぶ。
 あらためて、軽く・小さく・安くなったのに感心。
 附属のイヤホンでは弦合奏の音が貧相なので、いずれヘッドホンも買いたいが、もう少し研究してからにしたい。


12月12日(日): 

 混声合唱団 東大阪第1回定期演奏会@東大阪市立市民会館を聴く。
 アマチュア合唱団の演奏会だが、我らがマエストロ、ズラタン・スルジッチ率いる関西シティ・フィルが共演するとあっては、聴かざるべからず。
 実は、演奏会前半の、ピアノ伴奏等によるプログラムは失礼して、オーケストラが載る直前の休憩時間に会場入り(汗)。
 遠方からの参上ゆえ、お許しあれ。

曲目は、ベートーヴェン;交響曲第9番「合唱付き」第4楽章
合唱は、近隣の団体からのエキストラ出演も加えて、約130人の大部隊。
小耳に挟んだ客席の噂話では、大阪名物『一万人の第九』にも参加した人達だという。
 
最初から最後まで緊張感を失わない、見事な音楽であった。
 
低弦のレシタティーヴォ、猛然とした勢いで熱く弾かせるのでは…と予想していたのだが、これが大外れ、ちょっと優しい感じ。
楽譜の指定は"f"だけなのだから、それも当然か。
マエストロは、けっこう楽譜に忠誠を尽くす人なのである。
「歓喜主題」の提示も、さほど特別な表情は付されなかったが、ヴィオラが加わってからのファゴットのオブリガートが強めに奏されたのが(116小節以下)、弦合奏ともども美しく、印象的だった。
やや木管が強調される傾向は、全曲を一貫していた。
バリトン・ソロに絡むオーボエのソロ(245小節以下)も印象に残る。
 
合唱は、かなり歌いこんで曲をのみこんでいる感じで、心のこもった、熱い、活き活きとした歌唱。ちょっとしたアクセントや、特定声部の瞬間的な強調が、音楽を立体的にする。
音楽を平板にしない、こうした息の吹き込み方・魂の与え方に、マエストロの音楽性を感じた。
 
例の"vor Gott"のフェルマータは、かなり長かった。
オーケストラがデクレッシェンドした記憶はないが、合唱の美しい響きが浮き出してきたイメージが残っている。
合唱がクレッシェンドを見事に美しく決めたのか。
あるいはティンパニのデクレッシェンドが効果的だったのか。
そのあとのパウゼも昨今の指揮者にない大きなもの。
"vor Gott"の強く美しい響きの余韻の緊張感を一杯に湛えた、素晴らしいパウゼだった。
惜しむらくは、客席で大きな物音が発生して雰囲気を壊したこと。
 
アラ・マルチアでは、打楽器を極端に抑え、ピッコロの響きを強めたバランスが趣味の良さをうかがわせた。
テノール・ソロに雄々しさの乏しかったのが残念。
432小節以下、オーケストラのみになる部分での立体感も素晴らしかった。
 
以下も粛々と進み、「申し分ないけれど、このまま終わったのでは物足りないな…」と思っていたところ、終結に向けて、素晴らしい音楽を聴くことが出来た。
 
プレスティッシモに入って、合唱が"〜Goetterfunken!"を繰り返すところ、合間に同じ音形を吹く金管を強奏させた立体的な表現に、まず感銘。
907〜909、912〜915小節。
そしてオーケストラだけになる921小節以降、最後の一音まで、猛然とした追い込み。この部分でこれだけの凝縮された内容を感じたのは、初めてのような気がする。
そんなに速いテンポとか、強烈なアッチェランドとかではなかったが、とにかく緊張感の昂揚が目覚ましかった。
最後の小節で軽いリタルダンドをかけたり、締めくくりをつけてしまうというか、失速する指揮者も多いのだが、そうした気配は毛ほどもなく。
合唱が歌い収めてから後の方が興奮が高まるという、まことに稀有の演奏であった。
 
アンコールに、ヘンデル;「メサイア」から「ハレルヤ・コーラス」。これがまた、素晴らしいもの。
速めのテンポで一気に運び、だれず、駆け出さず、まさしく絶妙の流れ。快哉を叫びたくなる音楽であった。
 
ピアノ(前半のプロで使用したものが舞台に残されていた)でコンティヌオを奏し、ティンパニは小さい硬いヘッドのバチで叩かせるなど、指揮者の見識をうかがわせるものであった。

 終演後、梅田に移動して、昨日のオフに来られて東京へ帰られる一行と再合流。
 その際、またまた買い物。(^^;;;

ヴィトルド・ロヴィツキ(指揮)ワルシャワ国立フィルほか、ハイドン;交響曲第94・104番&ベートーヴェン;交響曲第3・7番(MUZA)
ポーランドの指揮者ロヴィツキ(1914〜1989)については、日本で紹介されたレコードのほとんどが協奏曲の伴奏盤であり、あまりパッとしたイメージがなかった。
せいぜい、ロンドン響を指揮したドヴォルザーク;交響曲全集(Philips)や、手兵ワルシャワ・フィルとのショスタコーヴィッチ;交響曲第5番(DGG)が、好事家に知られていたに留まろう。
今回、没後10年を記念してか、MUZAレーベルから大量にCD復刻された。そのうち3セットを購入。
まず、彼の指揮者としての基本能力を測るべく、ハイドンとベートーヴェンのセット。
ハイドン;第94番 ワルシャワ国立フィル(1968年3月16日)
ハイドン;第104番 ポズナン・フィル(1955年12月29日)
ベートーヴェン;第3番 ワルシャワ国立フィル(1976年6月7日)
ベートーヴェン;第7番 ポーランド国立放送響(カトヴィツェ)(1956年5月19日)
しかし、ブックレットがポーランド語のみなのは困る…(>_<)
 
ヤン・エキエル(P)ワンダ・ウィウコミルスカ(Vn)ヴィトルド・ロヴィツキ(指揮)ワルシャワ国立フィルほか、シマノフスキ;交響曲第4番・Vn協第1番・「スタバト・マーテル」ほか(MUZA)
ついではシマノフスキが収録されたセット。交響曲第4番(協奏交響曲)は、集めている曲なので見逃せない。もちろんVn協も。
交響曲第4番 ヤン・エキエル(P)ワルシャワ国立フィル(1961年5月10〜13日)
これは初CD化ではないか。LPの存在も、『シマノフスキ 人と作品』(春秋社)のディスコグラフィに記載がないなど、忘れられていた模様。
ロヴィツキの再録音もあり(1977年)、こちらはCD化済み(MUZA、PNCD062)。
Vn協第1番 ワンダ・ウィウコミルスカ(Vn)ワルシャワ国立フィル(1961年3月6日)
おそらく何度かCD化されている音源(MUZA、PNCD064又はPNCD142)。国内盤LPも出ていたらしい。もっとも、録音された月のデータがバラバラなのだが。(^^;
スタバト・マーテル ワルシャワ国立フィルほか(1951年4月6日)
これもCD化済み(MUZA、PNCD063)。ただし未架蔵。
その他、ルトスワフスキペンデレツキ等の曲を収める。
 
ワンダ・ウィウコミルスカ(Vn)コンスタンティン・クルカ(Vn)ヴィトルド・ロヴィツキ(指揮)ワルシャワ国立フィルほか、ヴィニャフスキ;Vn協第2番&カルウォヴィチ;Vn協ほか(MUZA)
あとはヴァイオリン協奏曲を収めたもの。
ヴィニャフスキ;Vn協第2番 ワンダ・ウィウコミルスカ(Vn)ワルシャワ国立フィル(1961年5月)
これはLPで架蔵済みだった…(^^;;;
カルウォヴィチ;Vn協 コンスタンティン・クルカ(Vn)ワルシャワ国立フィル(1976年7月1日)
これは未架蔵音源。カルウォヴィチの曲は、ウィウコミルスカとロヴィツキの録音がCD化されており(MUZA、PNCD142)、それを架蔵しているが、なかなかの佳曲である。
その他、モニューシコ等…名前の読めない作曲家の曲を収める。(^^;;;
 
ジノ・フランチェスカッティ(Vn)ほか、フランスVn曲 名演集(Sony Classical)
フランチェスカッティのモノラル期の録音である。
ラヴェル;Vnソナタ・「ツィガーヌ」ほか、アルトゥール・バルサム(P)(1955年)
フォーレ;Vnソナタ第1・2番、ロベルト・カサドシュス(P)(1953年)
フランク;Vnソナタ、ロベルト・カサドシュス(P)(1947年)
ショーソン;Vn、Pと弦楽四重奏のための協奏曲、ロベルト・カサドシュス(P)ギレーQ(1954年)
どれもフランチェスカッティの美音とセンスが楽しみだが、中でもショーソンには期待したい。
 
マッツ・ニルソン(指揮)スウェーデン放送合唱団、「スウェーデンのクリスマス」(日本クラウン)
今年9月に実演で名唱を聴いたスウェーデン放送合唱団のクリスマス・アルバムを発見。
買おうかどうしようか迷ったが、某月間大賞受賞者@大冷界から「スウェーデン買わぬは男の恥」と囁かれたので、ついつい、レジへ走ってしまった。(^^;;;
オ・ホーリィ・ナイト聖しこの夜ハレルヤ・コーラス等々、定番のクリスマス・キャロルのほか、ノルドクヴィストリルエフォーシュ等によるスウェーデンのキャロルも収録。
新譜ではなく、1995年の録音。
 
アンドレ・プレヴィン(P)デヴィッド・フィンク(Cb)「アン・エリントン・ソングブック」(DGG)
アンドレ・プレヴィンについては、斉諧生の中では指揮者として以上にジャズ・ピアニストとしての位置づけが高い。新録は、とにかく買ってしまう。
このデュオでは、前に「ガーシュウィン・ソングブック」があり、これは第2集。
「A列車で行こう」等、エリントンの名作を収める。
 
リシャール・ガリアーノ(アコーディオン)「未発表ライヴ録音集」(DREYFUS)
クラシック系以外の演奏家で買い続けている人は数少ないが、そのうちの一人、アコーディオンのガリアーノの新譜。CD3枚組の大物である。
"SOLO";1998年12月31日、イタリア・オルヴィエトのエミリオ・グレコ劇場でのライヴ。「ウンブリア・冬のジャズ・フェスティヴァル」の一環。
自作がほとんどだが、アンリ・ソーゲ;Les forainsというのが目を惹く。
"DUO"ミシェル・ポルタル(Cl)との共演。
この2人は、同じレーベルのアルバム「ブロウ・アップ」でも素晴しい演奏だったので、大いに期待。
それぞれの自作のほか、ピアソラの作品等を演奏。
1998年10月29日、北ドイツ放送局でのスタジオ・ライヴ。
"TRIO"Daniel Humair(Drum)、Jean-François Jenny-Clark(Cb)との共演。
1996年7月10日、「モントルー・ジャズ・フェスティヴァル」でのライヴ。
 
このセット、実は国内盤の方が安いのだが、ついつい輸入盤を買ってしまう。どうしても「音盤原産地主義」。

12月11日(土): 今日は、斉諧生がいつもお世話になっているBBSサイトサロ様と彩ちゃんの部屋通称サロ様城の忘年会、東京ほか遠方からも参加者があり、大変な盛会となった。

 斉諧生の地元京都での開催ということもあり、「音盤屋巡り」もプログラムに組まれ、引率(笑)しつつ、自らも買い物。

ユハ・カンガス(指揮)オストロボスニア室内管、ノアゴー;弦楽合奏作品全集(FINLANDIA)
御贔屓のカンガス&オストロボスニア室内管、これまでは北欧の現代作品の演奏には手を出さなかったのだが、『クラシック輸入盤パーフェクトガイド』(音楽之友社)の紹介記事を読んで、聴きたくなってしまい、購入。
収録曲は、「束の間の夏」「パストラル」「捧げ物」等。
「パストラル」は、映画『バベットの晩餐会』のために書かれた、とか。
青地に白い花一輪をあしらったジャケット装画も、実に美しい。この絵で買ったようなところも、ある。
 
エミール・ナウモフ(P)フォーレ;レクイエム(ピアノ独奏版)ほか(SAPHIR)
CD屋の試聴機に、変なものが入っているのが目に留まった。
「Introit 入祭唱」の冒頭を一聴してみると、なかなか佳い。
ピアノの響きも美しく、何より、真剣な意気込みを感じた。
また、演奏者はリリー・ブーランジェの紹介に力を尽くしてくれている人でもあり、何となく縁を感じてしまった。
編曲は演奏者自身、夜想曲第1・6・7・13番と、「月の光」ほか歌曲3つのピアノ独奏版を収録。
なお、ナウモフについては、「光と風と夢」に紹介がある。→ここを押して
 
ヴィルヘルム・ハーツェルツェット(Fl)バッハ;無伴奏チェロ組曲第1・2・3番(トラヴェルソ版)ほか(GLOSSA)
またしても編曲ものを購入 (^^;;;。どうも弱いのである。
ハーツェルツェットは、旗揚げした頃のムジカ・アンティクワ・ケルンで活躍するなど、腕利きの名手。自編。
オリジナルのFl曲、パルティータBWV1013をフィルアップ。
 
鈴木雅明(指揮)バッハ・コレギウム・ジャパンほか、バッハ;カンタータ全集第11巻(BIS)
BCJのバッハは揃えるつもりなので、購入。
BWV46BWV95BWV136BWV138、を収録。
もっとも最近の巻は、なかなか聴けていないのだが…。(^^;;;

12月10日(金): 

 「女流ソリストによるピアノ三重奏の夕べ」と題された演奏会@京都府立文化芸術会館を聴く。
 出演は、野原みどり(P)、久保田巧(Vn)、長谷川陽子(Vc)という珍しい顔合わせ。
 最近、長谷川さんはパスカル・ロジェ(P)、小林美恵(Vn)とのトリオが多いのだが、ひょっとしたらそれ以上に素晴らしい組合せになるのでは? と期待して会場に赴いた。

今日の曲目は
ドヴォルザーク;ピアノ三重奏曲第2番ト短調
チャイコフスキー;ピアノ三重奏曲「ある偉大な芸術家の思い出に」
というもの。
ドヴォルザークの第2番の実演は、非常に珍しいようで、「おそらく関西初演」とのこと。
 
お三方のドレスは、野原さんが、久保田さんが、長谷川さんがと、華やかな舞台になった。
 
曲としては、やはりチャイコフスキーの方がよほど聴き応えがあり、特に第3楽章でのコンチェルタンテな味わいには、華麗なものがあった。
 
正直言って、斉諧生の耳には、この3人の組合せが成功したアンサンブルとは思えなかった。少なくとも、曲目にふさわしいものではなかったように思う。
ショスタコーヴィッチあたりだったら、また違ったかもしれない。
ヴァイオリンとチェロの歌い方の資質が、まったく異なるのである。
ヴァイオリンは幅の広いヴィブラートで、あたかも波打つような歌い込み、一方、チェロは真っ直ぐに歌い上げる。
また、二人の音程感覚にズレがあり、特にヴァイオリンの高音が、うまく乗らない。
ピアノに、両者を包み込むキャパシティがあれば別な結果になったかもしれないが、かなりドタドタ・ガンガンという響きで、音楽全体に統一性を与えるようなものではなかったと思われる。
チャイコフスキーのメランコリーには、不向きな人ではないか? リストやラフマニノフあたりをバリバリ弾きこなすタイプではないだろうか。
 
こうした印象を助長したのが会場の音響の悪さ。
非常にドライな響きで、弦の音がまったく伸びない。
また、ピアノが変にドンドン響いたのは、舞台の床の構造に問題があるのではないか?
 
文化芸術会館を音楽用に使うのは、そろそろ止めた方がいいように思う。
今日は「文化芸術会館・室内楽の会」という歴史のある鑑賞団体の例会(斉諧生は今日だけの「臨時会員」という扱い)。
昔と違って、同じ府立施設で府民ホール・アルティという、比較的音響のいい場所もあるのだから、そちらに例会の会場を移せばいいと思うのだが。
文化芸術会館は、演劇・集会用に特化させるべきだろう。

 

ヨルマ・パヌラ(指揮)トゥルク・フィル、「フィンランド・オーケストラ名曲集」(NAXOS)
収録曲は、定番
シベリウス;「フィンランディア」・「悲しきワルツ」・「アンダンテ・フェスティーヴォ」
に加え、
マデトヤメリカントカスキラウタヴァーラらの名前が並び、最後を
タネリ・クーシスト(パヌラ編);フィンランド人の祈り
で締めるという、なかなか味のある選曲。
サロネンサラステヴァンスカら、最近躍進中のフィンランド人指揮者の師匠、パヌラの1995年の録音。彼のシベリウス演奏は聴き逃せないと購入。
なお、これは、NAXOSでもフィンランドの国内限定リリースということで、通常、日本では入手不可能なもの。
さるシベリウス愛好家(研究者と申し上げるべきか)の御手配により、落手できた。

12月7日(火): 

 

山下和仁(G)尾高忠明(指揮)東京フィル、吉松隆;G協「天馬効果」&野田暉行;G協(RCA)
帰り道、ふと古本と中古CDを扱っている店を見かけて、立ち寄ってみた。
もとよりクラシックの扱い量は微々たるものだが、最近、見かけない(ような気がする)1枚が、格安だったので買ってみた。
吉松隆が、最近のように、変にメジャーになる前(なりつつある頃)、1986年度のレコード・アカデミー賞を受けた盤。

12月6日(月): 

 

アンドルー・マンツェ(Vn)リチャード・エガー(Cem)パンドルフィ;Vnソナタ全集(HMF)
古楽系では寺神戸亮と並んで注目しているヴァイオリニスト、マンツェの新録音を購入。
作曲者については、まったく知らない。17世紀後半に活動した人らしいが、生没年も不詳とのこと。
「作品3」・「作品4」、各6曲づつのソナタには、「星」とか「城」とか、それぞれ副題が付されており、聴いて面白い曲かもしれないと期待。
 
ゼクエンティア、「賢王アルフォンソ10世の音楽」(DHM)
これは中古盤屋で発掘した1枚。
「賢王」と呼ばれたスペインの王、アルフォンソ10世(1221〜1284)に仮託された「聖母マリアのためのカンティガ」。
LP時代には、グレゴリオ・パニアグワらのアンサンブルによる、「スペイン古楽集成」中の1枚くらいしか知られなかったが、CD時代になって、次々と新しい録音が出るようになった。
斉諧生は、パニアグワ盤でこの曲集が好きになり、最初のうちは出るたびに買っていたが、パニアグワ盤を超えるものはなく、むしろアラブ風の味付けが目立ったり、好ましくない方向に流れているような気がしてきたので、最近は買わないようになっている。
このアンサンブルの演奏は何も架蔵しておらず、「ひょっとして…」という期待と、中古格安でもあることから、久しぶりに購入。
なお、この曲集に関する素晴らしいサイトがある。→ここを押して

12月5日(日): 終日、溜まった「音盤狂日録」の執筆。ようやく、滞貨を一掃できた。そのため、少しファイルサイズが大きくなり、重くなっていると思いますが、御容赦ください。<(_ _)>
 いろいろ「ながら聴き」はしていたが、「新譜試聴録」には不掲載。

 最近入手したCDの情報を、パレー・ディスコグラフィステンハンマル 作品表とディスコグラフィに追加。


12月4日(土): 

 西宮市を本拠に活動するアマチュア・オーケストラかぶとやま交響楽団第22回定期演奏会@伊丹アイフォニック・ホールを聴く。
 このオーケストラには中古音盤堂奥座敷同人、工藤さんが参加しておられ、この演奏会でもコンサートマスターを勤められる。

今日の曲目は
ハイドン;交響曲第103番「太鼓連打」
ディーリアス;「夜明け前の歌」
メンデルスゾーン;交響曲第4番「イタリア」
というもの。
一風変わった選曲だが、斉諧生などマニアックな人間には楽しめるプロである。
そもそもこの団体は、
「左手に棒を持つ指揮者」とか
「全員がウィンナ・タイプを吹くホルン・セクション」とか
「ショスタコ@@@のヴァイオリニスト」(あえて名を秘す)とか、
ちょっとした「こだわり」集団なのである。
弦の配置も、1stVn-(Vc+Cb)-Va-2ndVn
 
ハイドンは、ややゆったりめの運びで、ハイドンの音楽美を満喫。
この曲、冒頭のティンパニ連打の処理が問題になる。カデンツァを叩かせたアーノンクール盤などが有名だが、今日はランドン版に従い、「ff→デクレッシェンド」という行き方。
第1楽章終結で、クラリネットがベルアップしたのには驚いた。音響的には絶大な効果だったが。
第2楽章の変奏ではコンサートマスターの絶美のソロを楽しめた。
 
ディーリアスも、立派にそれらしい響き。
6分ほどの小品だが、ディーリアス的な和声の重なりが美しい曲。
 
メンデルスゾーンになると、少し、弦合奏の薄さ(特に低弦)が気になったが、それでも豊かな音楽で、終始、楽しめた。
もちろんアマチュアゆえ、多少の事故は起こっているのだが、音楽の骨格がしっかりしているのと、音を補う指揮者の身振り(広上淳一佐渡裕に見劣りしない!)と、コンサートマスターの奮闘で、実際に鳴っている以上の音楽が、聴き手の胸に響いてくるところがある。
 
アンコールは、なし。

 演奏会前に買い物を少々…けっこう多いか。(^^;;;

宇野功芳(指揮)アンサンブルSakura、ベートーヴェン;交響曲第7番・序曲「エグモント」ほか(URF)
悪趣味と言われようが何と言われようが(^^;;;、宇野さんのディスクはすべて蒐集したいので購入。
(日大管弦楽団との『第九(近衛版)』のCDを入手し損なったのが悔しい…)
これは、1999年7月4日、石橋メモリアル・ホールでのライヴ録音。
シューベルト;「ロザムンデ」間奏曲第3番をフィルアップ。
タワーレコードでは2,180円と、オーケストラから買うのより安い。
 
サルヴァトーレ・アッカルド(Vn、指揮)イタリア室内管、「ヴァイオリンと弦楽のための代表作集」(WARNER FONIT)
最近、メジャー・レーベルでは見なくなったアッカルドだが、まだまだ素晴らしい音を持つ人。
新譜を2点見つけたので購入。
これは、タイトルのとおりで、
バッハ;Vn協ト短調 BWV1056
ハイドン;Vn協ハ長調 Hob.VIIa/1
シューベルト;ロンド イ長調 D438
メンデルスゾーン;Vn協ニ短調
と、まあ、知られてはいるが、比較的録音の珍しい曲を集めたもの。
オーケストラは、1968年、トリノで創設されたが、1972年に飛行機事故で主要メンバーを失ったりして低迷していたところ、1996年にアッカルドが音楽監督に就任して再建した団体であるという。
初めて見るレーベルだが、FONIT CETRAがWARNERグループに入ったものか。
 
サルヴァトーレ・アッカルド(Vn)イタリア室内管、「イタリアのヴァイオリン・ヴィルトゥオーゾ」(WARNER FONIT)
ヴィターリ;シャコンヌ
タルティーニ;「悪魔のトリル」
ロカテッリ;Vn協op.3-12「調和の迷宮」
パガニーニ;「ヴェネツィアの謝肉祭」
レンディーネ;セレナータ
ヴィターリ、タルティーニ、パガニーニはタンポーニ編曲の弦楽合奏版による。
またレンディーネは1954年ナポリ生まれで、セレナータは1996年の作。
 
フィリップ・ヘレヴェッヘ(指揮)コレギウム・ヴォカーレほか、バッハ;マタイ受難曲(HMF)
ヘレヴェッヘの「マタイ」再録音である(旧盤は同じHMFで、1984年録音)。マタイは見つけ次第、購入。
旧盤では合唱にラ・シャペレ・ロワイヤルも参加していたが、今回はコレギウム・ヴォカーレ単独。声楽も器楽も、半分かそれ以上、メンバーが入れ替わっている。
独唱陣は総入れ替え、(内が旧盤)
福音史家;イアン・ボストリッジ(ハワード・クルーク)
イエス;フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ(ウルリク・コルト)
ソプラノ;シビラ・ルーベンス(バーバラ・シェリック)
アルト;アンドレアス・ショル(ルネ・ヤーコプス)
テノール;ヴェルナー・ギュラ(ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ)
バス;ディートリッヒ・ヘンシェル(ペーター・コーイ)
注目はイギリス期待のテノール、ボストリッジの福音史家であろう。ドイツ音楽精神の精華のようなこのパートをイギリス人が歌うのは珍しい。
クレンペラー盤のピーター・ピアースも、あれこれ取り沙汰されたものである。
なお、CD−ROM付きのものも売っていたが、ケースが倍ほど大きくなること、斉諧生のPC環境では動作が懸念されることから、CDのみのセットを購入。
 
ガブリエル・ガリド(指揮)アンサンブル・エリマほか、モンテヴェルディ;聖母マリアの夕べの祈り(K617)
これまた見つけ次第購入する、モンテヴェルディの「ヴェスプロ」。
リリース情報はパリ在住の方から頂戴しており、演奏も良いとのこと、入荷を待望していた。
2つのヴァージョンがある終曲「マニフィカト」を、両方とも収めてくれているのが嬉しい。
通常、(7声+器楽合奏)版が録音され、(6声+通奏低音)版は省略されることが多いのだが、斉諧生的には後者が好みなのである。
指揮者・演奏団体とも、ほとんど知らない名前ばかり。
ガリドはブエノス・アイレス生まれ、音楽的な家庭に育ち、子どもの頃から木製のフルートを吹き、長じてはバーゼル・スコラ・カントルムジョルディ・サヴァールらと共演していたとか。
彼は今もジュネーヴに住み、スイス〜イタリアを中心に活動しているとのこと。
録音は1999年7月18〜26日、「パレルモ・テアトロ・マッシモ『音楽の夏』音楽祭」での上演に際して行われたもの。

12月1日(水): 

 

ジョルジュ・パウク(Vn)ペーター・フランクル(P)モーツァルト;Vnソナタ集(BBC Music)
雑誌"BBC Music"の付録CDが、中古屋に出ていたもの。
好きなヴァイオリニストの一人、パウクのモーツァルトのライヴ盤ゆえ、迷わず購入。
収録曲は、変ロ長調K.454ト長調K.379イ長調K.526
収録は1991年の9〜12月で、雑誌とともに発売されたのは1994年だったようだ。
なお、この組合せのスタジオ録音による全集が米VOXから出ていた。中古LP市場では、結構な値付けがされており、まだ架蔵できていない。
 
武久源造(Org)オルガンの銘器を訪ねてVol.1/カザルスホール(ALM)
「シフォーチの別れ」(AEOLIAN)以来、暖かく美しい音楽を愛聴している武久氏の新盤2点を購入。
ここ数年、日本で建造された特徴的なオルガン、印象に残ったオルガンを訪ねて順々に録音していくという企画だそうである。
第1弾は、ユルゲン・アーレント作のカザルス・ホールのオルガン。
17世紀の北ドイツの様式に、頑固なまでにこだわって建造された楽器で、スヴェーリンク楽派から初期のバッハまで、100年にも満たない期間のドイツ音楽にしか向かないものだそうだ。
「この頑固さが斬新なのである。…このようにターゲットがはっきりしているところがすばらしい」と、自筆のライナーノートに言う。
収録曲も、
バッハ;トッカータ、アダージョとフーガBWV564
ブクステフーデ;コラール幻想曲「テ・デウム」淡野弓子(指揮)シュッツ少年合唱団が共演。
ベーム;「いかに空しき いかにはかなき」
といった、その時期のもの。
更に、ヴィヴァルディ;Vn協「春」の演奏者自編のオルガン独奏版を収める。
 
武久源造(Org)オルガンの銘器を訪ねてVol.2/阿佐ヶ谷教会(ALM)
第2巻は、日本基督教団阿佐ヶ谷教会創立75周年記念と銘打たれている。
同教会のフリッツ・ノアック作のオルガン、バロック時代に的を絞った構造と音色を持つとのこと。
また建物も「理想の礼拝堂」を意図して築造され、程良い残響時間と美しい響きを有するという。
収録曲は、
バッハの作品を前奏曲とフーガBWV544ほか4曲、
モーツァルト;自動オルガンのためのアンダンテK.616
更にブクステフーデらの作品と、ヴィヴァルディ;Vn協「秋」のオルガン独奏版(演奏者自編)。

平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。

平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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