音盤狂日録


このほど、当「斉諧生音盤志」が100,000アクセスに到達いたしました。
これもひとえに皆様日頃の御愛顧の賜であります。
近頃本業多忙につき、十万件記念企画どころか
リンク集掲載のお約束すら果たせぬていたらくでございますが、
不日その責めを果たす覚悟でおりますので、
今暫くの御猶予をお願い申し上げます。
併せて、今後とも変わらぬ御愛顧を頂戴できますよう、
恐々謹言、乞い願い上げ奉ります。  <m(_ _)m>
平成12年7月18日
斉諧生   

7月29日(土): 

 中古盤に収穫あり。

スティーヴン・イッサーリス(Vc)ユハ・カンガス(指揮)オストロボスニア室内管ほか、ボッケリーニ;Vc協・Vcソナタ集(Virgin)
注目しているチェリストの一人、イッサーリスの未架蔵盤を見つけたので購入。彼のVirgin録音は、最近あまり店頭で見かけなくなったので貴重だ。
協奏曲は有名な変ロ長調(G482)と、そのグリュッツマッヒャー編曲版で緩徐楽章が流用されたト長調(G480)
協奏曲のバックが、カンガス&オストロボスニア室内管というのも嬉しい(1990年2月、フィンランド・ヤルヴェンパーのシベリウス・ホールでの収録)。
3曲を収めるソナタ(1988年11月、ロンドン録音))では、マギー・コールがチェンバロを弾いている。
 
ライフ・ウーヴェ・アンスネス(P)パーヴォ・ベリルンド(指揮)オスロ・フィル、ラフマニノフ;P協第3番ほか(Virgin)
これまた注目している北欧の俊秀ピアニスト、アンスネスの未架蔵盤を2点購入。
ベリルンド(ベルグルンド)が珍しくオスロ・フィルを振っている。
練習曲集「音の絵」から5曲をフィルアップ(op.33から4曲とop.39から1曲)、1995年3月のライヴ録音。
 
ラース・アネルス・トムテル(Va)ライフ・ウーヴェ・アンスネス(P)ブラームス;Vaソナタ第1・2番ほか(Virgin)
こちらはノルウェーのヴィオラ奏者トムテルとの共演盤。録音は1991年。
シューマン;おとぎ話をカプリング。

7月23日(日): 

 WOWOWの放送を視聴。

エサ・ペッカ・サロネン(指揮)スウェーデン放送響ほか、シベリウス;交響曲第6番・「クッレルヴォ」
スウェーデン放送協会が全曲を収録したものを3回に分けて放送する、第3回。
今年2月27日に第1回(第1・2・7番)、6月11日に第2回(第3・4・5番)の放送があったもの。
これまで2回とも極めて高い水準の名演が続いており、今日の2曲にも期待したい。
収録は第6番が1998年12月、「クッレルヴォ」が1995年1月。
 
交響曲第6番の静謐な美しさは斉諧生が愛惜してやまないところだが、案に相違せぬ素晴らしい演奏であった。
第1楽章冒頭から、それはそれは美しい弦合奏。単に響きが整っているというだけではなく、心の内側に感じている熱さ・はかなさが、聴いている者の胸にじわっと伝わってきたのである。全曲の終結での高揚と沈潜!
第2楽章第3楽章で印象的なモチーフを吹く木管も清澄な音色が素晴らしく、なかんずくフルートは絶佳。
更に金管の厳しい強奏やティンパニの迫力ある打ち込み、すべてがシベリウスの音楽に適っており、疑問に感じる音は一つもなかったと言っていい。
特に第4楽章で主題が戻ってくるところ(練習番号L)、アレグロ・アッサイの指定に従って採る速めのテンポに乗った、音楽の素晴らしい推進力には感嘆するほかなかった。
楽譜に記されたアクセントやディミヌエンドの緻密な活かし方も光り、理想的なシベリウス演奏と言えるだろう。
 
北欧の指揮者のわりにシベリウス録音が少ないサロネンだが、「クッレルヴォ」には1992年にロスアンジェルス・フィルを振ったCDがある。
ソプラノ歌手と合唱は、それと共通しており、マリアンナ・ロールホルムヘルシンキ大学男声合唱団(YL)
バリトンはヨルマ・ヒュンニネンに代えてペーター・マッテイ
 
CDも好演だったが、今日の放送の演奏は更に上をいく。
ロス・フィルも悪くないのだが、スウェーデン放送響の森厳たる響きは、更にシベリウスの作品世界にふさわしい。
初期作品の演奏でありがちなチャイコフスキー風・ワーグナー風に陥らず、後期作品との統一性を保っていた。
第1楽章後半の弦合奏が低音域でテーマを広々と鳴らす響き、その後の金管の強奏を加えた決然たる音楽、また第5楽章の粛然たる雰囲気、いずれも肌に粟を生じる。
男声合唱もCD録音を上回る歌唱。
とにかく巧いこと巧いこと、人数を感じさせない声・音程の揃い方である。しかも、巧さだけでなく、熱い心を感じさせる点が素晴らしい。
 
もっとも、途中に挿入された実写映像は、あらずもがなだったと思うが。
 
このチクルス、毎回書いているが、DVDか、せめて音声だけでもCD化されれば、ベストを争う全集になると思う。何とか商品化されないものか。

 電網四方八通路に新規サイトを掲載。多くは相互リンクをお約束していたところである。各Webmaster・Webmistressには、遅くなったことをお詫び申し上げたい。m(_ _)m


7月22日(土): 

 通販業者等からLPが届いた。

ネーメ・ヤルヴィ(指揮)ヨェーテボリ響、ステーンハンマル;交響曲第2番・序曲「高みへ!」(瑞BIS、LP)
もちろんCDでは架蔵済みだが、なにぶん全録音蒐集を心願とするステーンハンマルゆえ、初出のLPでも架蔵しておきたく、オーダー。
1983年9月、ヨェーテボリ・コンサートホールでのライヴをデジタル録音したもの。
 
ミクロシュ・ペレーニ(Vc)ヤーノシュ・フェレンチク(指揮)ハンガリー国立管ほか、R・シュトラウス;交響詩「ドン・キホーテ」ほか(洪HUNGAROTON、LP)
この盤、先だって某通販業者のカタログで発見、こういう大物が残っていたとは…と驚喜してオーダーしたものの売り切れで手に入らず、臍を噛んだ。
ところが、音盤探索に天才的と言っていい手腕を発揮する知人が一度に2枚を発見、1枚を割愛していただくことになった。あらためて感謝申し上げたい。
ヴィオラ独奏はラスロ・バルソニュという人、経歴等は不詳。
「サロメの七つのヴェールの踊り」をフィルアップ。録音年月は明記されていないが、マルPは1981年。
 
豊田耕児(Vn)豊田元子(P)「古典Vnリサイタル」(日ビクター、LP)
近年、国際的に活躍する日本人ヴァイオリニストは数多いるが、その先駆者と言えるのが豊田氏である。
1952年にフランスへ留学、パリ音楽院でエネスコグリュミオーに学び、1962年にベルリン放送響のコンサートマスターに就任した。
近年群馬響等を指揮したCDがあるが、もとよりヴァイオリニストとしての録音も多い。
中では師グリュミオーと共演したバッハ;2本のVnのための協奏曲(Philips)が知られているが、その筋によればバッハ;無伴奏Vnのためのソナタとパルティータが素晴らしいという評判。
それは未架蔵だが、今回、18世紀前半に活躍した作曲家の作品を集めたLPがカタログに掲載されていたのでオーダーしたもの。
収録曲は、
ヘンデル;Vnソナタ第1・4・6番
エックレス;Vnソナタ ト短調
ヴェラチーニ;コンチェルト・ソナタ ホ短調
と、有名どころである。
 
和波孝禧(Vn)山川園松(箏)山川園松;即興幻想曲ほか(日ビクター、LP)
和波さんのヴァイオリンは好きでずっと集めているが、こういう録音があったとは知らなかった。御本人の著書等にも出てこない。おそらく純邦楽のジャンルで扱われているためだろう。
山川園松という人のことは不案内だが、LPのタイトルは「山川園松作品集(4)」とあり、かなり有名な人らしい。後天的に失明された人のようで、そのあたりから和波さんとの共演が実現したのであろうか。
即興幻想曲は昭和25年の作品、当初は箏独奏、のちに尺八を加えて二重奏とし、ヴァイオリンやチェロ等でも演奏可能とのこと。演奏時間は12分半程度。
その他、箏合奏曲、箏独奏曲、合唱曲を収録。録音年月は明記されていないが、マルPは1980年と表記されている。
 
エミール・ナウモフ(P)ストラヴィンスキー;「火の鳥」ほか(独WERGO、LP)
どうもあまり正統的なピアニストではないようだが、斉諧生的には興味を惹かれる人、ナウモフ。
これは、1981年7月、バイエルン放送局によるデジタル録音で、彼としては初期のもの。
収録曲は標記のもの以外に
ドビュッシー;映像第1集
フォーレ;夜想曲第6番
自作;Pソナタ(1980)
「火の鳥」は、作曲者自身によるP版から「さわり」11分弱程度をナウモフが抜粋したもの。CDでOrfeoからも出ていたが、あれは別録音だったかしら?
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・フィルほか、グルック;歌劇「アルチェステ」(米Oceanic、LP)
多岐にわたるレイボヴィッツの活動のうち最も不可解な部分、グルック録音。
どうして十二音音楽の使徒が初期古典派オペラを録音したのだろうか? それもライナーノートを自分で執筆する熱の入れ方。
録音年は明記されていないが、マルCは1952年、作りもSPアルバム風の古いもの。
なんとジャン・ピエール・ランパルの名がクレジットされており、終幕のバレエ音楽でソロを吹いている。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・フィルほか、オッフェンバック;喜歌劇「地獄のオルフェウス」(米Renaissance、LP)
レイボヴィッツが盛んに録音した分野の一つが、フランス・オペラ。中でもオッフェンバックのオペレッタの全曲録音は3種を数える。
これは「天国と地獄」とも呼ばれる最も有名な作。
 
エリーサベト・セーデルストレム(Sop)ケシュティン・メイエル(Sop)ヤン・エイロン(P)スウェーデン歌曲集(瑞Swedish Society、LP)
ステーンハンマル全録音蒐集プロジェクトの一。
セーデルストレムの歌唱で「牧歌と警句」より、2つの歌op.4を、
メイエルの歌唱で「森の中で」歌曲集「歌と唄」より「船は行く」歌曲集「歌と印象」op.26よりを収める。
いずれもCDでは架蔵済み。
その他、ラングストレムフルメリニューストレムの作品が収録されている。

 最近入手した音盤の情報を、ステーンハンマル 作品表とディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。


7月21日(金): 

 

エフゲニー・ムラヴィンスキー(指揮)レニングラード・フィル、ベートーヴェン;交響曲第4番ほか(Altus)
 
エフゲニー・ムラヴィンスキー(指揮)レニングラード・フィル、ショスタコーヴィッチ;交響曲第5番(Altus)
この夏一番の話題盤、ムラヴィンスキーの東京ライヴ2枚を早速購入。
このコンビの初来日、1973年5月26日、東京文化会館でNHKが収録したものを、マスターテープから丁寧に復刻したもの。少し聴いてみたが、音質は極上、近年の録音と遜色ないと言ってもいいほどである。
アンコールも含めた当日の全曲目を2枚に収めている。
レーベルのWebpageは→ここを押して
この調子でNHK保存の貴重なライヴ音源が日の目を見てほしいものである。
 
マルティン・ジークハルト(指揮)リンツ・ブルックナー管、ブルックナー;交響曲第8番(DENON)
ミラン・トルコヴィッチに付けたモーツァルト;Fg協ほかのOrfeo盤以来、ドイツの若手の有望株と注目しているジークハルト(1951年生まれ)。
彼がいよいよ大曲を録音し始めた。しかも曲がブルックナー;第8交響曲とあらば買わざるべからず。使用楽譜はノヴァーク版。
オーケストラは、ジークハルトが1992年からこの夏まで首席指揮者を務めてきた手兵。
なお、この団体は、リンツ市立劇場のオーケストラから発展してきたもので、第二次世界大戦末期に同地で組織された幻のオーケストラ、ナチス・ドイツによって「世界制覇の暁に各地を演奏旅行して国威を発揚する」ことを企図して創設されたと言われる帝国ブルックナー管と直接の関係はない。
 
小林研一郎(指揮)チェコ・フィル、マーラー;交響曲第7番(Canyon)
コバケンのマーラー、買わざるべからず。
思えば、第7番はこのオーケストラが作曲者の指揮で初演したもの(1908年)、小林さんはチェコ・フィルの初演90周年記念演奏会に起用されたとか。
彼はレパートリーの拡大には極めて慎重、第1・5番は繰り返し録音してきたが、7番は初めてではないか。
第9番の指揮は「極端に拒んでいる」と伝えられるが、録音済みという第3番等は早期に発売してもらいたいものである。
 
クイケンQ、寺神戸亮(Va)モーツァルト;弦楽五重奏曲第1・6番(DENON)
寺神戸さんの新譜、買わざるべからず。
1995年の第3・4番以来、2年に1枚のペースで録音されてきたシリーズの完結編である。
面白いのは録音場所が3枚とも異なる点。
第3・4番…オランダ、ナイメヘン(1995年6月)
第2・5番…スペイン、サラマンカ(1997年8月)
第1・6番…スイス、ラ・ショー・ド・フォン(1999年7月)
 
花岡和生(Bfl)福沢宏(Gamb)クヴァンツ;無伴奏小品集(トラウト)
曲も演奏も録音もデザインも、それはそれは美しい花岡氏の個人レーベル、トラウトレコードの3枚目のCDが店頭に並んでいたので購入。
フリードリヒ大王に仕えたフルート奏者・作曲家クヴァンツとその周辺の作品25曲を、ヴォイス・フルート(D管のリコーダー)とバス・リコーダーで演奏したもの。一部、ヴィオラ・ダ・ガンバがピツィカートで伴奏する。
 
宇野功芳(指揮)アンサンブル・フィオレッティほか、日本抒情名歌名作選(MUSIKLEBEN)
宇野氏のオーケストラ指揮には優れた成果も疑問もあるところだが、合唱指揮にかけては問題なく賞賛できると考えてきた。
代表作は「幻のコンサート 昭和59年10月30日」(ART UNION)だろうが、それと同様の小品集が発売されたので、飛びついて購入。
2000年3月12日、7年振りという合唱指揮リサイタルのライヴ録音(石橋メモリアル・ホール)。
収録曲は17曲、多くは昭和10〜20年代の歌謡曲、国民歌謡、童謡である。
CDでも3回目の録音になる杉山長谷夫;花嫁人形をはじめ、大中寅二;椰子の実中田喜直;夏の思い出中田章;早春賦といった馴染みの曲も含まれているが、黎錦光;夜来香見岳章;川の流れのようにが歌われているのには少々吃驚。
また宇野氏自身「日本人でこの曲を知っている人はごくごく少ないと思われる」と書く服部良一;母は青空(昭和18年)、堀内敬三;新鉄道唱歌(昭和12年)等も「名作を後世に遺す」気組みで取り上げている。
8人からなる女声アンサンブルに跡見学園女子大学の合唱団のメンバー3人を加え、P伴奏は宮下恵美

7月20日(祝): 

 MikrokosmosからLPが届いた。

ヤーノシュ・フェレンチク(指揮)ハンガリー国立管、ベートーヴェン;交響曲第3番(洪HUNGAROTON、LP)
畏友かとちぇんこ@Klassischer Platzさんが熱心に紹介しておられるフェレンチク、このところ聴き直したいと思っており、中でも最晩年の「英雄」・「幻想」を探していたところ、前者がカタログに出ていたのでオーダー。
亡くなる約半年前、1983年12月のデジタル録音、国内盤では最初からCDで出た。こういうものは、できればCDで聴きたいところ。
特にこの曲の場合、LPでは第2楽章の途中で盤をひっくり返さなくてはならず、興をそぐのだが、CDはなぜか入手難、とりあえずやむを得ない。
 
カレル・アンチェル(指揮)トロント響、ベートーヴェン;交響曲第6番(加CBC、LP)
こういう音源があるとは知らなかった。
1972年1月19日、トロントのマッシー・ホールでのライヴ録音。トロント響50周年記念シーズンの演奏をカナダCBC放送が収録したもの。
アンチェルは、1968年「プラハの春」事件をきっかけに亡命、翌69年から小澤征爾の後を襲ってトロント響の音楽監督を務めたが、1973年7月に没した。
THARAから出た一連のライヴ、特にシューベルト;交響曲第9番ハイドン;交響曲第93番の1枚には、いたく感銘を受け、彼のドイツ音楽は聴き逃せない…と思っていたので、早速オーダー。
 
ピエール・アモイヤル(Vn)クラウディオ・シモーネ(指揮)イ・ソリスティ・ヴェネティ、タルティーニ;Vn協集(仏ERATO、LP)
アモイヤルの美音はLPで聴きたいと、かねがね集めているところ、未架蔵盤がカタログに掲載されていたのでオーダー。
ホ短調D.56ト長調D.82ホ長調D.48の3曲を収める。
1975年頃、ピーター・ウィルモースの手になる録音。
 
ミクロシュ・ペレーニ(Vc)ラスロ・メゼー(第2Vc)アルバート・サイモン(指揮)リスト音楽院管、ヴィヴァルディ;Vc協集(洪HUNGAROTON、LP)
ペレーニの録音は断簡零墨まで集めたいところ、ヴィヴァルディがカタログに掲載されたのでオーダー。
変ホ長調ト短調ロ短調ト長調の4曲を収める。ト短調の曲が2本のチェロのためのもの。
録音年月は明記されていないが、マルPは1978年。

7月18日(火): 

 最近入手した音盤の情報を、ステーンハンマル 作品表とディスコグラフィパレー・ディスコグラフィに追加。


7月16日(日): 

 通販業者からLPが届いた。

「アトス山の復活祭 第2巻」(独Archiv、LP)
長いあいだ捜していた「アトス山の復活祭」全3巻が、ようやく揃った。
このレコードのことを知ったのは、今は無い『週刊FM』立花隆氏が執筆した記事でだった。氏も東方教会音楽の美しさに魅せられた一人である。
ギリシアのアトス半島には約20の修道院があり、ギリシア正教の聖地として特別な地位を保ち、ビザンチン時代の宗教文化が、壁画や写本のみならず、儀式や音楽といった無形のものも保存されている。
俗世間との接触が厳しく制限されてきたため、聖地を実際に訪れる巡礼者しか耳にすることができなかった、アトスの典礼を、1978年、独アルヒーフがクセノフォントス修道院でライヴ録音し、3枚組のLPとして発売した。
聖金曜日から復活祭当日まで3日間の典礼のうち、最もドラマチックで哀切きわまりない、受難の日・聖金曜日の音楽を含むのが、この第2巻。
そのためだろう、この巻はカタログでも見ることが無かった。ようやく掲載されたので直ちにオーダー、入手することができた。
もっとも、既にCD2枚組で発売されているので、音源としては架蔵済みなのだ。LPで持つことに執着するのも…やはり「業」か。(苦笑)

 昨日の演奏会の記録を、演奏会出没表に追加。


7月15日(土): 今日は日帰りで東京へ。帰りは「のぞみ」の最終便。

 今日の目的は、広上淳一(指揮)日本フィル@サントリー・ホールを聴くこと。
 「20世紀の作曲家たち」第18回演奏会「日本のシンフォニック・ウェーヴII」と題した演奏会である。

今日の曲目は、
山田耕筰;音詩「曼陀羅の華」
外山雄三;Vn協(Vn独奏;戸田弥生)
尾高尚忠;Fl協(Fl独奏;佐久間由美子)
矢代秋雄;交響曲
というもの。
尾高と矢代作品はかねて愛惜し音盤を蒐集している曲、しかも日本人指揮者の中では最も期待する一人、広上淳一の指揮とあらば、聴かざるべからず。
 
山田耕筰;音詩「曼陀羅の華」は、サキソフォンまで動員した分厚いオーケストレーション。
いかにも後期ロマン派的な、うねうねとした音楽が続くが、これから耽美が盛り上がる…と思ったところで、ふっつり終わってしまい、拍子抜けだった。
 
外山雄三;Vn協では、初めて生演奏を聴く戸田さんのヴァイオリンに期待した。
音の出し方は、いかにもジュリアードで学んだ人の感じ、これで曲がチャイコフスキーならさぞかし…と思わせる。
ところが、どうにも音楽が重い。リズムがベッタリした「乗り」の悪い演奏。節回しも含めて、外山らしい沸き上がるような音楽的エネルギーが感じられない。頑張ってはおられるのだが。
思うに、素材・下敷きとなっている日本民謡を、よく御存知ないのだろう。
一方、管弦楽は、広上さんらしく、外山氏の作風を知り尽くした、実に「乗り」のいいもの。指揮の身振りからは盆踊りさえ連想された。(笑)
 
これに対して尾高尚忠;Fl協では、さほど違和感なく、曲の佳さを、あらためて味わい直すことができた。
これは、おそらく、民謡素材をほとんど生で使う外山氏に対して、尾高氏は西洋音楽の書法に消化しなおして用いていることから来る、違いだろう。
何といっても、この曲にはランパルの録音さえあるくらいだから…。
佐久間さんも嫌みのない音色で、立派な再現。
また、第2楽章での弦楽器のコル・レーニョの音色感など、演奏会ならでは。
 
矢代秋雄;交響曲は、1981年の渡邉暁雄さんと日フィル以来の実演。
このときのライヴ録音はCDでも発売されている(VICTOR)。
 
じっくりした音楽の運びから、曲が内包する緊張感を見事に表出した、素晴らしい演奏だった。
ややゆっくり目のテンポで、管楽器や打楽器の音型を丁寧に扱っていたのが特徴的。
中でも第2楽章が凄まじい「怒り」のスケルツォになっていたのは、音楽の真面目を明らかにしたものだろう。
突き刺すようなピッコロや、終結のグラン・カッサの一撃が耳朶に残っている。
 
この曲のことを、ずっと「フランス近代音楽の流れをくむウェルメイドな交響曲」と思っていたが、今日の演奏で、やはり冷戦や政治的緊張の色濃い時代(作曲は1958年)を反映した音楽であると感得した。やはり、ただ者ではない指揮者だ。
 
今日の曲目、録音してもらいたいものである。

 演奏会の前に音盤屋に立ち寄る。

ポール・パレー(指揮)デトロイト響、ビゼー;「カルメン」組曲・「アルルの女」組曲(米Mercury、LP)
パレーが残した名演の一つのオリジナル盤。
1956年11月の録音、マーキュリー・レーベルのステレオ盤最初の番号"SR90001"を与えられており、おそらく当時から期待された演奏であったのだろう。
「カルメン」組曲はパレー自身が6曲を抜粋して自由に配列、「アルルの女」は第1・第2組曲を収める。
もちろん廉価盤LPとCDでは架蔵済みの音源。運良くリーズナブルな価格で見つけたので購入したもの。
 
レイモンド・コーエン(Vn)アニシャ・レイル(P)ベートーヴェン;Vnソナタ全集(DUO)
未知のヴァイオリニストのベートーヴェン全集が、CD3枚組ながら中古格安、1枚分の値段で売られていたので興味を惹かれて購入。
コーエンはカール・フレッシュ国際コンクールの第1回優勝者、ロイヤル・フィルほかロンドンのオーケストラのコンサートマスターを歴任したとか。
ピアニスト(発音は自信なし、原綴は"Anthya Rael")とは夫婦で、チェリストロバート・コーエンは彼らの息子だそうだ。
1991年頃の録音。

7月12日(水): 

 

シャンタル・ジュイエ(Vn)トルルス・モルク(Vc)ほか、コダーイ;VnとVcのための二重奏曲ほか(EMI)
このところ蒐集している
若手チェリストの中では随一の注目、「チェロの貴公子」ことモルクの新譜ゆえ、即購入。
1998年夏、アメリカ・サラトガ音楽祭でのライヴ録音。
カプリングは既出のマルタ・アルゲリッチの演奏で、
バルトーク;コントラスツ
リスト;2台Pのための悲愴協奏曲
昨年の初発売時にはプロコフィエフ;五重奏曲で出た盤の、カプリング替え再発売である。
妙な商売の仕方だが、斉諧生的にはモルクの演奏を聴けるのが有り難い。

7月10日(月): 

 帰宅すると、Swedish Music ShopCompact Disc Connectionから荷物が届いていた。
 前者は最近オープンしたサイトで、初めて利用する。お馴染みのスウェーデン音楽情報センターのトップページからリンクしてある姉妹ページ(?)のようだ。
 近頃いつもそうなのだが、ユビュ王の食卓さんで知ったもの。この場を借りて感謝申し上げたい。

クラウス・テンシュテット(指揮)ベルリン・フィル、ワーグナー;管弦楽曲集(EMI)
ニーベルングの指環からの抜粋1枚、序曲・前奏曲集1枚の2枚組。
斉諧生がクラシックを聴き始めた1981年頃、テンシュテットは「カラヤンが無名の中年指揮者をベルリン・フィルの後継候補に挙げた!」というので大いに話題になり、EMIが売り出しにかかっていた。
この「指環」抜粋も、当時、店頭で盛んに流されていたのを耳にしたのだが、実は、ピンとこずに買わずに見送ったのである。
ずっとそのままになっていたのだが、先日、An die Musik「ニーベルングの指輪」管弦楽曲抜粋盤を聴く その2 ベルリンフィル編で、
「派手さはないが、指揮者とオケの集中力は猛烈で、一音一音にエネルギーが凝縮されているようだ。(略)「葬送行進曲」など、ものすごいスケールである。この雄大なスケールにどうして私は気がつかなかったのだろうか。」
「騙されたと思ってこのCDを買って聴いてみていただきたい。この部分(*)を聴くだけでも元が取れるだろう。本当にすごい。」(* 斉諧生注、「ワルハラへの神々の入城」でドンナーが槌を打つ場面)
等々と絶讃されていた。
今聴けば、あるいは斉諧生も「どうして気がつかなかったのだろう」と嘆じることになるのでは…と思い、Compact Disc Connectionにオーダーしたもの。
 
セミー・スタールハンメル(Vn)イヴェッタ・イルカ(P)「オペラ」(nosag)
以下の4枚はSwedish Music Shopから。
スタールハンメルは、世間的には無名だが、斉諧生的には大贔屓のヴァイオリニスト。ストックホルム王立歌劇場管のコンサートマスターである。
音は綺麗だし、センスも抜群。
このレーベルから出た「世紀の変り目」シリーズの第1巻で惚れ込み、第2巻に収められていたステンハンマル;2つのセンチメンタル・ロマンスも素晴らしかった。
今回の新譜は、オペラから編曲された小品を集めた2枚組、29曲を演奏している。
多くは古くからヴァイオリニストが愛奏してきたもので、
グルック;精霊の踊り(クライスラー編)
ゴダール;「ジョスラン」の子守歌
マスネ;「タイス」の瞑想曲(マルシック編)
R・コルサコフ;熊蜂の飛行
といったところから
シマノフスキ;ロクサーヌの歌(コハンスキ編)
プロコフィエフ;「3つのオレンジへの恋」の行進曲(ハイフェッツ編)
ガーシュウィン;「ポーギーとベス」の6つのメロディ(ハイフェッツ編)
等を収め、またヴァイオリニスト自編で
コルンゴルト;「死の都」から「マリエッタの歌」
といったものも加えている。
 
セミー・スタールハンメル(Vn)ヨーラン・アグデュル(P)「夜明けの大地」(nosag)
スタールハンメルが、もう1枚見つかったのでオーダーしたもの。
ヨーラン・アグデュル(Göran Agdur)という初耳の作曲家とのコラボレーション。
10曲約21分という収録内容だが、スウェーデンの民俗音楽やポピュラー音楽の影響を強く受けた、ロマンティックな作品ということである。
 
フォルケ・アルム(指揮)ヴァーベリ室内合唱団;合唱曲集(FUSION)
ステンハンマル全録音蒐集プロジェクトの一環で購入。
3つの無伴奏合唱曲の第2曲「後宮の庭園に」が収録されている。
北欧の合唱曲のほか、バードダウランド、黒人霊歌なども歌っている。
 
エトヴァス・アンダース、「イージー・ダズ・イット」(IMOGENA)
これはジャズのアルバムなのだが、なぜか1曲目がステーンハンマル歌曲集「歌と印象」op.26第7曲「なぜ急いで眠ろうとするのか」
ライナーノートによると「完璧なジャズのバラードになっている」という。
試聴してみたところ、静かなリズム・セクションの上で、テナー・サックスがメロディをほぼそのまま歌っている。
こういうのを見つけることができるのが、通販サイトで検索する面白さだ。
エトヴァス・アンダース"Etwas Anders"は、1983年にスウェーデン・ヨェーテボリで結成されたグループで、これは1993年録音のファースト・アルバム。
"etwas anderes"ならばドイツ語で「何か違ったもの」の意味。
トマス・グスタフション(Sax)、アンデシュ・ペアション(P)、アンデシュ・ヨルミン(Cb)、アンデシュ・セーデルリン(drums)と、メンバー4人のうち3人までが"anders"というファースト・ネームを持つことに因んだグループ名だろう。
全9曲を収録、オリジナルの他、クラシック音楽やトラディショナルからも曲を採っている。
 
ヤーノシ・アンサンブル、「ラプソディ」(HUNGAROTON)
クラシック招き猫で、バルトーク;ルーマニア民俗舞曲が話題になった折り、民族楽器のアンサンブルで演奏した盤があるという情報が寄せられたのに興味を持って、Compact Disc Connectionにオーダーしたもの。
チェロの代わりにコントラバスを入れた弦楽四重奏を基本に、ツィンバロンや打楽器、歌を入れてのアンサンブルで、リストバルトークが各種の狂詩曲や舞曲に採った民族音楽の原曲を演奏している…という。

7月9日(日): 

 評論家宇野功芳師が指揮するアマチュア・オーケストラアンサンブルSAKURA大阪特別演奏会@いずみホールを聴く。

今日の曲目は、オール・ベートーヴェン・プロで、
「コリオラン」序曲
交響曲第8番
交響曲第3番
というもの。
悪趣味との譏りを受けるかもしれないが、宇野師のオーケストラ・リサイタル@新星日響は実演も聴いてきたし、生を聴かずにCDだけで批評するのもいかがなものかと考えた。
客席はほぼ満員。京都の音盤屋の担当者の顔もチラホラと見える。
 
オーケストラはほぼ室内管編成、チェロは7人、コントラバスは4人だが、その4人目が奥田一夫@大阪センチュリー響の友情出演というのが凄い。
 
「コリオラン」冒頭の和音がズッシリした佳い響きで感心…と思ったとたん、3小節目で驚天動地のティンパニ最強打!
ここは1997年の新星日響とのライヴ(KING)では普通、同じアンサンブルSAKURAでも1998年のライヴCD(自主製作)では少し強めから7小節・11小節へ音量を増していくのだが、今日は最初の音から、もう皮も破れよとばかりの打撃である。
当日配布のプログラムから察するに、このコンビでは名物的な表現のようだが、少々行き過ぎ、非楽音の領域に踏み込んだような響きには疑問を感じた。
 
13・14小節の和音を思いっ切りずらすのは、いつもの手法。更に14小節でディミヌエンドして15小節の主題提示(p指定)に連結するのは98年盤から見られる表現だが、オーケストラの呼吸が合わず、腰砕けになったのは惜しまれる。
 
主部に入って、遅めのテンポはいいとしても、リズムに間延びした感じがあるのは宇野さんの通弊。
アマチュア・オーケストラに技術的なあら探しをするのは申し訳ないのだが、それでも終結のピツィカートが3つとも、コンサートミストレスが一人飛び出す結果になったのは、あまりにも気の毒だった。
 
クナッパーツブッシュ張りのスロー・テンポを予想した交響曲第8番は、意外なことに、ほぼまともなテンポ・表現。
いずみホールの豊かな残響も手伝って、素直に聴いていられた。
第3楽章で、ゆったりめのテンポに典雅な感じが伴わないのは、やはりリズムがよくないのと、管楽器に音的な魅力が薄いせいだろう。
第4楽章279・81小節で低弦がモチーフをバッチリ決めたあと、ニ短調の部分で大きくテンポを落としたのは面白い表現と思う。
376〜78小節のトゥッティの和音で大きくルバートするのも宇野さんらしい。
次に期待したのは、シューリヒトがsfをずらす404小節以降だが、強拍が不明瞭で、何かしたのかしなかったのか、正直いって、よく聴き取れなかった。
 
メインの交響曲第3番は、残念ながら、虚しい気分で聴くことになってしまった。
調性のせいか、弦楽器の音程の悪さが目だち、響きが和音にならないのである。例えば、第1楽章の展開部のクライマックス、sfが連続する部分では、テンポを大きく落として巨大な音楽を構築しようとするのだが、弦合奏の響きがバラバラになってしまっては、どうにも悲惨としか言いようがない。
葬送行進曲も、コリオラン同様、間延びしたリズムでは感動につながらない。
採るとすれば、第1楽章の提示部終わり(もちろんリピートしない)から展開部冒頭にかけての深沈とした表現と、同じく再現部冒頭418〜22小節でヴァイオリンのピツィカートを強奏させた目覚ましい効果か。
 
強烈な表現意欲も、それに必要なだけの技術的な裏付けがないときは、空疎な結果に終わってしまう。
 
第3・4楽章も同様で、冗長に感じた。
 
もちろん、全曲を通じて、オーケストラの強烈な集中力、一丸となって指揮者の表現についていく精神力には感心した。
なかんずく、最強打し続けるティンパニ奏者の果敢さには最高の敬意を表したい。
 
アンコールは、シューベルト;「ロザムンデ」間奏曲第3番
 
なお、アマチュア・オーケストラの演奏会なので、演奏会出没表には掲載しない。

 コンサートの前後に音盤屋を覗く。中古屋で収穫多し。

フランソワーズ・グローベン(Vc)レオポルト・ハーガー(指揮)RTL響、エルガー;Vc協&ショスタコーヴィッチ;Vc協第1番(ルクセンブルク総合銀行)
妙なCDを中古屋で見つけた。どうも銀行の創立75周年記念に、1994年に製作されたものらしい。
それはともかく、エルガーとショスタコーヴィッチの1番はチェロ協奏曲の中でも一、二を争う愛好曲ゆえ、買ってみた。
チェリストは若い女性、ライナーノートから察するに(フランス語なので読めないのだが固有名詞を拾い読み)、ボリス・ペルガメンシコフらに学び、チャイコフスキー・コンクールに入賞(?)、この銀行の後援を受けていて、楽器(ゴフリラー)を貸与されているようだ。1991年には東京のカザルス・ホールでリサイタルをしたとか。
オーケストラは、現ルクセンブルク・フィル、ハーガーは録音当時の音楽監督。
 
キム・カシュカシュアン(Va)キース・ジャレット(Cem)バッハ;ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1〜3番(ECM)
買いそびれていたカシュカシュアンのバッハを購入。
共演者にちょっと恐れをなしていたのだが、特に変なこともしていないらしい。(笑)
しかし収録時間38分半というのは…。
 
オーケ・オロフション(Vc)マルゴット・ニューストレム(P)ヘッグ;Vcソナタ&ショーグレン;Vcソナタほか(proprius)
北欧音楽の、あまり見かけないディスクが、中古格安で出ていたので購入。
ヘッグは初めて聞く名前だし、ショーグレンもVnソナタは知っていたがVcソナタがあるとは知らなかったくらい。
ヘッグは1850年生まれ、ニルス・ゲーゼに学んだ後ドイツに留学、このVcソナタもドレスデンで初演(1872年)、グリュッツマッヒャーも愛奏したという。
ソナタの他、2人の小品や歌曲からの編曲、またヤーコブソン(1835〜1909)の歌曲編曲をフィルアップ。
チェリストはナヴァラカサドカザルスに学び、1950〜86年の間、ストックホルム・フィルスウェーデン放送響に在籍し、D・オイストラフとはブラームス;二重協奏曲を録音したという。
propriusの録音にも期待したい。
 
ジェラール・プーレ(Vn)クリストフ・ヘンケル(Vc)バルトーク;無伴奏Vnソナタ&コダーイ;VnとVcのための二重奏曲(Harmonic)
この春、実演にも接して感心した、プーレの未架蔵盤が店頭にあったので購入。
本来、フランス人のバルトークというと敬遠するのだが、彼ならば例外を期待できるのではないかと考えた。
チェロのヘンケルもプリュデルマシェとの共演で知られる名手。
録音は1987年、シャルランタイプのダミー・ヘッドに2本のB&Kマイクを装着したワン・ポイント録音だそうである。
 
エンリコ・マイナルディ(Vc)バッハ;無伴奏Vc組曲(DENON)
この人の名前は前から知っていたが、最近はミクロシュ・ペレーニの師匠ということで関心を持っており、ペレーニのバッハ演奏の淵源を確認してみたいと購入。
前に1957年のライヴで第1〜3番があったが(Orfeo)、これは1960年代のスタジオ録音。チェリストは1897年生まれなので、ちょっと高齢になるが…。
終わりにマイナルディの談話(ドイツ語、約2分半)が収録されている。ブックレット掲載の翻訳によれば、この組曲を最初に公開演奏したのは、なんと1913年とのこと(第3番)。
中古格安。
 
田部京子(P)シベリウス;P曲集(CHANDOS)
録音情報が伝えられて以来、鶴首していた音盤がついに入荷、買わざるべからず。
田部さんの音がCHANDOSの録音で聴けるのも楽しみ。
収録曲は、
5つのロマンティックな小品op.101
5つの小品(「樹の組曲」)op.75
5つの小品(「花の組曲」)op.85
5つのスケッチop.114
5つの性格的小曲集op.103
というもの。

7月8日(土): 

 

フリッツ・ライナー(指揮)アンサンブル、バッハ;ブランデンブルク協第3・5番(米Columbia、LP)
1949年の録音ゆえ、多少状態が悪いのはやむを得ない。
フルトヴェングラーあたりと異なり、あまり巨匠風でないバッハ。むしろ一昔前のバロック演奏的な、カチャカチャとリズムを刻む趣がある。
その点で第3番は、あまり楽しめる演奏ではなかった。
一方、第5番は、フルート(ジュリアス・ベイカー)とヴァイオリン(フェリックス・エイル)が素晴らしい。
やや古風で中欧的な音のヴァイオリンと、木質感のある音色と端然とした音楽のフルート、いずれも今日の演奏家からは、なかなか聴くことができない。
こういうのもMasterworks Heritageシリーズで復刻してくれないものか。
 
ヴィクター・アラー(P)フェリックス・スラトキン(指揮)コンサート・アーツ弦楽オーケストラ、ショスタコーヴィッチ;P協第1番(加Capitol、LP)
まずもって、弦合奏の美しさに感心した。編成は小さめのようだが、しなやかで、生き生きとしている。やはり弦楽器の名手が振っているからだろうか。
独奏ピアノは、強烈な個性はないものの、十分に巧く満足できる。特に第3楽章のしみじみした味わいがよかった。
両端楽章でアゴーギグに少し崩しがみられるのと、第1楽章のクライマックス(112小節以降)が空振りになっているのは残念。
また、トランペットにはもう少し明るく輝く音色を求めたい。
全体としては、ほぼ模範的と言っていい完成度であり、これまたCD復刻してもらいたい演奏である。
 
アウリンQ、バルトーク;弦楽四重奏曲第4番(Accord)
中古音盤堂奥座敷試聴会の課題曲を聴く。
第1楽章は、他の演奏に比べると遅めのテンポだが、四分音符=110の指定だと、こんなものだろうか。コーダで120に加速するところも、くっきりしている。
それ以上に、何とも怪しげというか、危険さを湛えた雰囲気がよい。
第2楽章では、音色の作り方に工夫があり、聴いていて楽しい。
145小節以下でのスル・ポンティチェロの鋭さは他の団体でも聴けなくはないが、67小節や100小節のsfpでの虚無的な響きは特筆したい。
アルペジオの処理が面白い第4楽章(63小節以降)、勢いのいい第5楽章も聴き応えがあった。
若い団体のバルトーク録音には、問題意識や独自性の感じられないものが、まま見られるのだが、アウリンQには個性味というか、オリジナルな音楽を目指している姿勢があり、好ましい。買ってよかった。
注文を付けるならば、第3楽章にハッとさせるものがないことと、両端楽章で音が少し鳴りきっていないところ。後者は楽器の質の問題かもしれない。
 
その他、バルトークの諸盤を、あれこれ摘み聴き。

7月7日(金): 

 帰宅するとamazon.ukから荷物が届いていた。

ヴァンサン・ヴァルニエ(Org)イアン・デ・マッシーニ(指揮)ケンブリッジ・ヴォイシズほか、デュリュフレ;レクイエムほか(Herald)
大好きなデュリュフレのレクイエムの新盤を購入。
この盤は、かねて参考にさせてもらっているデュリュフレのレクイエムというページでリリースを知ったもの。
コメントは→ここを押して 又は→ここを押して
指揮者のデ・マッシーニは、かつてケンブリッジ・キングス・カレッジ聖歌隊に所属、1981年にフィリップ・レッジャーが指揮した、この曲のレコーディングに参加してデュリュフレの音楽に魅了された。
その後、デュリュフレ未亡人の知遇を得て、作曲家所縁のサン・テツィエンヌ・デュ・モン教会で毎年、ミサ曲を演奏することとなり、そのために結成したのがこの合唱団ということである。
デュリュフレ没後10年(1996年)の万霊節には、このレクイエムを歌い、更に1999年3月、いよいよ録音することとなった。
作曲家も愛奏したこの教会のオルガンを弾いているのは、1996年以来、教会付きオルガニストを務めているヴァンサン・ヴァルニエ、彼はジャン・スーリス盤(Syrius)でも演奏している。
カプリングは、
デュリュフレの「主の祈り」と、
指揮者自作の「デュリュフレの名によるデプロラシオン」「主よ、願わくば」「永遠の生命」
なお、デ・マッシーニは多芸多才、かのクラシック・バスカーズのアコーディオン奏者でもある。そっちではイアン・ムーアと名乗っているようだが。→ここを押して

7月6日(木): 

 今日は映像2点を購入。

オットー・クレンペラー(指揮)ニュー・フィルハーモニア管ほか、ベートーヴェン;交響曲第9番(LD、東芝EMI)
これは前から欲しかったもの、中古格安で発見したので購入。
1964年10月27日、ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ録画である。
合唱はヴィルヘルム・ピッツ率いるニュー・フィルハーモニア合唱団
独唱はアグネス・ギーベルマルガ・ヘフゲンエルンスト・ヘフリガーグスタフ・ナイトリンガーと純ドイツ勢。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)CBC響、デュカ;「魔法使いの弟子」&ブリテン;青少年のための管弦楽入門ほか(ビデオテープ、VAI)
このところ興味深い映像を発売しているVAIから、なんとなんと、マルケヴィッチが発売されたので、驚喜して購入。
カナダ放送協会による1955年3月10日の収録、マルケヴィッチの全盛期である。
彼は1950年代後半、モントリオール響のポストに就いていたので、その関連で録画が実現したのかもしれない。
標記2曲の他、ワーグナー;ジークフリート牧歌を演奏。
曲目はチト食い足りないが、"Vol.1"とあることから、続編にも期待したい。春の祭典あたり、出てこないものか。

7月5日(水): 

 

オリヴィエ・シャルリエ(Vn)ジャン・ユボー(P)ヴィオッティQ、ピエルネ;P五重奏曲・Vnソナタ(ERATO)
フランスの名手(パリ音楽院教授)シャルリエの、買いそびれていたCD(1990年頃?)を中古音盤屋で見つけたので購入。
カプリングの五重奏の方は、1983年のアナログ録音。こちらはLPで架蔵済み。

7月4日(火): 

 

アウリンQ、バルトーク;弦楽四重奏曲全集(Accord)
中古音盤堂奥座敷の合評会、課題盤エマーソンQ、バルトーク;弦楽四重奏曲第4番(DGG)の比較盤として購入。
この団体は、前に奥座敷の合評会でフォーレ;P五重奏曲第2番を取り上げた折りにペーター・オルトとの共演盤(cpo)を聴き、変にフランスぶらず堂々と自分達の音楽語法で弾ききった姿勢に好感を持った。
今回の合評に当たり、ずっと店頭にあって興味を惹かれていた彼らの全集盤を、迷った揚句とうとう購入したもの。
録音は1994年11月〜95年8月、ケルン放送局との共同製作。作曲者の没後50年記念に全曲を6回のチクルスで演奏する企画が局側から提案され、それと前後して録音された模様。
なおアウリン(Auryn)はミヒャエル・エンデ『果てしない物語』に登場する護符の名前だそうだ。

7月1日(土): 

 

ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮)モスクワ放送チャイコフスキー響、チャイコフスキー;交響曲第5番(RELIEF)
これは素晴らしいチャイコフスキー。
ライヴということもあって相当な熱演、第1楽章では縦の線が危ないときさえあるほど。
熱演といっても、あまり粘らない。全休止に付されたフェルマータなど、ほとんど無視して、さっさと進める。
特に終楽章のコーダでは、かなり速めのテンポをとることから、非常に晴朗な趣がある。これには胸がすいた。
また、この楽章ではティンパニが大活躍、230小節、425〜26小節、462〜71小節での打ち込みには快哉を叫ばざるべからず。
それ以上に素晴らしいのが第2楽章で、冒頭のホルンの郷愁や、その後のチェロ合奏と木管が絡む部分のエスプレッシーヴォ、85小節以下のフルートの熱っぽい吹奏など、まことに感動的。
全曲を通じて、フレージングやアクセントの付け方に、ちょっとした訛りのようなものがあるのだが、これが何ともいい味わいを出している。
残念なのは、録音がイマイチ冴えないことで、時に金管の迫力を欠く。
 
ジョシュア・ベル(Vn)エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ロサンジェルス・フィル、シベリウス;Vn協&ゴルトマルク;Vn協(Sony Classical)
ちょっと珍しいカプリングだが、聴いてみて成る程と思った。アプローチが共通しているのである。
すなわち、ベルの特長である細身の端正な美音を活かして、力まず、甘美に歌い抜く…というもの。サロネンの指揮も、そうした独奏を繊細にサポートする。
その点で、斉諧生としてはゴルトマルクが非常に気に入った。この曲のベストを争う録音だと思う。
一方、シベリウスは、ちょっとのんびりした感じに聴こえてしまい、音楽よりは演奏者を感じさせられた。
シベリウスに北欧の清冽な抒情と厳しい自然を、ゴルトマルクにむせ返るような官能を求める向きは、失望されるかもしれない。
サロネンの棒は、独奏者をたてて控え目ながら、素晴らしいもの。とりわけ、シベリウスの第1楽章でフルートが美しく囀る直前、トランペットとトロンボーンが高らかに鳴るところでは、鳥肌立つ思いがした。

平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。

平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。

平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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