音盤狂日録


公開2周年の御挨拶

「斉諧生音盤志」を公開いたしましたのが、平成9年8月8日深更。それから2年が経ちました。「もう」とも、「まだ」ともいう気がいたしますが、よく続いたものと思います。
 これもひとえに皆様方から頂戴した望外の御贔屓のゆえでございます。
 最近は、毎日、百数十のアクセスをカウントするようになり、8月11日には累計5万件に到達いたしました。
 篤い御愛顧に対し、謹んで感謝を申し上げます。<_o_>
 なお、本来ならば2周年&5万アクセス記念企画を賑々しく催すべきところでございますが、いかんせん本業が少々多忙でありますので、どうぞ御容赦下さりませ。<m(__)m>

 平成11年8月14日
 斉諧生 謹白

8月31日(火): 

 電網四方八通路に、マイナー・オーケストラ3件を新規に掲載。
 また、既に掲載しているオーケストラのWebpageについて、リンク切れを修正。また、行方不明になっているものとCLASSICAに掲載されたもの合わせて6件を削除した。
 昨日届いたCDの情報を、リリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィに追加。


8月30日(月): 

 CD屋を廻って帰ってくると、CD UNIVERSEからCD1枚が届いていた。

ベルンハルト・パウムガルトナー(指揮)モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカ、モーツァルト;交響曲第28・33番ほか(Salzburger Festspiele)
この人も日本では「忘れられた指揮者」と言っていいのかもしれない。
シャーンドル・ヴェーグが指揮していたモーツァルテウム音楽院のアンサンブルを、長年にわたって率い、味わいの濃いモーツァルトを指揮していた。
むしろ、カラヤンの経歴の中に、「パウムガルトナーに指揮を学び…」と出てくることで知られているのかもしれない。全然、影響を感じないが。(^^;
斉諧生は、この人のモーツァルト演奏が好きで、かねてLP・CDを蒐集している。新しい音源が出たというので、さっそく購入。
いずれもザルツブルグ音楽祭のライヴ録音で、28番は1962年7月29日、33番は1961年7月30日の、それぞれモーツァルテウム音楽院大ホールでの演奏。
モノラル録音で、音質は、まずまず…といったところ。
加えて、1967年7月26日、音楽祭開幕に当たっての式辞「ザルツブルグ音楽祭の使命」の録音が収録され、CDの半分弱を占めている。
それというのも、このディスク、1996年にパウムガルトナーの没後25周年ということで発行された、記念盤なのである。
 
クリスタ・ルートヴィヒ(M-S)カール・ベーム(指揮)ウィーン・フィル、ベートーヴェン;交響曲第4番&シューマン;交響曲第4番ほか(Orfeo)
ウィーン・フィルの1960年代のライヴ演奏なら、ぜひ聴いてみたいと購入。
去年のセルとの壮絶なベートーヴェン;交響曲第5番は、1969年8月24日の演奏。
これは、その1週間前、8月17日のライヴ録音である。
ベームについても、60年代のライヴならば、さぞかし…と期待したい。
ルートヴィヒとはマーラー;さすらう若人の歌を演奏。
ちょっと、ローカルな話題で失礼。
このディスク、最初、タワーレコード@京都で見かけて、試聴機でチェックしてみたらひどい音だったので、買わなかった。
その足で寄った十字屋三条店の試聴機で聴き直すと、まずまず良い音がしている。慌ててレジへ持って行った。
タワーレコードの試聴機には気を付けた方がいいようだ。
 
レイフ・オーヴェ・アンスネス(P)パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)バーミンガム市響、ブリテン;P協&ショスタコーヴィッチ;P協第1番ほか(EMI)
ショスタコーヴィッチは集めている曲なので、即、購入。
ましてや、北欧の俊秀アンスネスとあらば…。
トランペット独奏はホーカン・ハーデンベルガー。彼との二重奏でエネスコ;伝説をフィルアップ。
ブリテンとショスタコーヴィッチは個人的にも仲良しだったから(あの冷戦の時代に!)、このカプリングは面白い。
 
和波孝禧(Vn)土屋美寧子(P)プロコフィエフ;Vnソナタ集(ART UNION)
数多いる日本人ヴァイオリニストの中で、最も肩入れしている和波さんの新譜。
公式ページでリリースされたことは把握していたが、ようやく店頭(十字屋三条店)で見つけたので、これまた、即、購入。
Vnソナタ第1・2番無伴奏Vnソナタを収録。
プロコフィエフのVn音楽を世に広めたのは、戦前はシゲティ、戦後はオイストラフだが、和波さんはその両者に師事したのだ。
もっとも、ライナーノートで「プロコフィエフをみてもらったことはないですから」と正直に語っているのも、和波さんの人柄を偲ばせる。
 
キャサリン・マルケイゼイ(Fg)エミール・ナウモフ(P)「バスーン・リサイタル」(GEGA NEW)
この盤がCD UNIVERSEから届いたもの。前にまとめてオーダーしたとき「バックオーダー」になっていたのが、入荷した。
これは、リリー・ブーランジェ全録音蒐集プロジェクトの一環。
リリー・ブーランジェ;夜想曲を演奏しているのだ。
実は、このファゴット奏者の名前は、前に見たことがあった。
リリー・ブーランジェのページでお薦めしているナウモフ盤に参加しているのだ。
そこで彼女が吹いているのは、ナウモフのオリジナル曲「リリー・ブーランジェの追憶に」(FgとPのための)なのだが。
そのナウモフが伴奏をつとめるリサイタル盤。見かけないレーベルだが、ブルガリアの会社である。
ブーランジェ作品のほか、ドヴィエンヌサン・サーンスのソナタや小品を収録し、拍手のあとにバッハ;アリアを演奏している。どうやらライヴ収録らしい。
なお、このニューヨーク生まれの奏者の名前、原綴は"Marchese"で、辞書を引くと標記の発音が示してあるので、とりあえずそのように記す。

8月29日(日): 

 中古音盤堂奥座敷試聴会の準備に、ブルックナー;交響曲第8番を聴き比べ。
 ふう…(@_@;)

ヤシャ・ホーレンシュタイン(指揮)ロンドン響(BBC)<ハース版>
これが課題盤。そのため、議論のログが公開されるまで、コメントは非掲載といたします。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ライプツィヒ放送響(PILZ)<ハース版>
久しぶりに聴き直したのだが、ワクワクして、ドキドキして、本当に嬉しかった。
約80分の演奏だが、「短く感じる」どころか、いつまで聴いていてもいい、何回繰り返しがあってもいい、そんな気分。
 
何よりまず、弦合奏が非常に美しく、また声部間のバランスが非常によい。
これは第1楽章の冒頭から明らか。通常は音程が乱れがちな第3楽章の主題提示(ヴァイオリンのG線の高い音なのだ)も、素晴らしい響きである。
美しいのは弦だけでなく、木管・金管もである。合奏体として、実にいい音程で鳴っている。強奏しても、ちっとも煩わしくない。
ケーゲルは、金管を大いに咆哮させ(しかし音程は良い)、ティンパニを厳しく打ち込む。
第1楽章最初の聴きどころは140〜167小節(ハース版による。第1楽章とスケルツォはノヴァーク版も同じ。)で、ホルン・オーボエ・ワーグナーチューバ合奏が応答する部分だが、ここのオーボエの素晴らしい表情! 149小節からのディミヌエンドが、なんとも感動的だし、ソレを支えるヴァイオリンの刻みが、指定どおり、147小節でpppへスッと弱めるのも、みごとに美しい。
クライマックス(225〜249小節)での金管の和音も綺麗だ。それが静まった後、リズムを吹くトランペットの音色も、ドイツ的な素晴らしいもの。
340小節のフェルマータを思い切り長く延ばすのも心を打つ。
終結へ向けて盛り上がるところ(368小節〜)のティンパニの打ち込みや、最後に残るホルンとトランペットの吹奏も壮絶!
スケルツォ冒頭のヴィオラとチェロの動機は、わりとなだらかに奏される。ここはカクカクとした方が好きなので、ちょっと不満だが、後で管楽器に出るときと揃えたのであろうか。
もちろん、スケルツォ主部は堂々たるもの。実に満足。
37〜39小節で2つの動機が並行するが、両方を同等に活かすバランスが良い。
また、ケーゲルは、ブルックナーの分厚いオーケストレーションに埋もれがちな、ちょっとした対位法や装飾句の活かし方にも優れている。
97〜101小節、フルートとクラリネットの合奏が同じ音型を繰り返す下で、ファゴットがソロで反行する音型を吹くが、これがちゃんと聴こえてくる。
この楽章のトリオに、全曲を通じて最も心打たれた箇所がある。
トリオ16小節、ホルンと第2ヴァイオリン以下の弦は八分休符になって、第1ヴァイオリンの二分音符だけが残るところが、それである。
少し長めに延ばして、はかなげな・名残惜しげなディミヌエンドをかける。これは、ケーゲルが知る「もののあはれ」だ!
彼を狂人のように言う向きもあるが、この音を聴け!と言いたい。
38小節以降、ハープのアルペジオに合いの手を入れるヴァイオリンの繊細さ、トリオを締めくくるフルートの音色も実に佳い。
アダージョの主題提示は、先に書いたように実に美しい。無理やり唸らさず、p指定に従って、きれいに奏されている。
繰り返し登場するヴァイオリンの低音の旋律も、ヴィオラ以下も同じだが、いい音程で、美しい音色で演奏される。もちろん、25小節以降・43小節以降(ノヴァーク版同じ)での高弦も繊細で美しいことは言うまでもない。
58〜63小節・144〜145小節(ノヴァーク版同じ)のヴァイオリン・ソロもくっきりと出る。こうした部分は、ブルックナー彫心鏤骨の「華」なので、合奏の音に埋もれては困るのだ。
161小節以降(ノヴァーク版同じ)のワーグナーチューバの「至福のソロ」@misteriosoと、それに続くホルンも最高。
177〜184小節(ノヴァーク版同じ)で、ラレンタンドとディミヌエンドがかかる部分の美しさも素晴らしい。他の指揮者も同じことをする部分だが、ケーゲルが最も感動的だ。
206〜208小節(ノヴァーク版同じ)のホルンが、くっきりと雄々しく吹かれるのも良い。
ノヴァーク版ではカットされる部分、216〜218小節のオーボエ・ソロの美も、初めて耳にするような心地だ。
2回シンバルが鳴る手前のリタルダンドも、それぞれ思い切った大きなもの。こういう表現が、ブルックナー・ファンには、たまらなく嬉しいのだ。
そのあとの弦合奏が美しいのは勿論。楽章終結へ向けての美しさも、筆舌に尽くしがたい。
フィナーレ。もう、素晴らしさの限りを尽くす。
主題が大きく提示された後、「ダダン・ダダン・ダダン」と打ち込まれるティンパニの、格好いいこと! なかなか、こうはいかない。
普段は目立たない、143〜149小節(ノヴァーク版同じ)でワーグナーチューバとトランペットの内声が効果的。
159小節からヴァイオリンが「神々の黄昏」の終結を思わせる旋律を奏するところ、実にゆったりしたテンポが、良い。
231小節(ノヴァーク版215小節)からのホルン合奏の美しいこと!
247小節(ノヴァーク版231小節)の柔らかい弦合奏と、応答するホルンの雄々しい吹奏の対照も効果的。
303〜304小節(ノヴァーク版283〜284小節)のリタルダンドも、ファン垂涎。
367〜371小節(ノヴァーク版347〜351小節)の、何ということのないヴァイオリンも実に美しいし、370小節のクレッシェンドを活かす効果も素晴らしい。ここからのヴァイオリンをはじめ弦合奏の美しさは、ケーゲルの真骨頂だ。
689〜708小節(ノヴァーク版651〜669小節)でワーグナーチューバがくっきりと奏され、後半で強奏されるのも良い。
そして、終結(716小節以降、ノヴァーク版678小節以降)では、金管の最強奏、ティンパニの最強打が、ゾクゾクするような―本当に鳥肌が立った―心からの歓喜を生みながら、「ミ・レ・ド」の大きなリテヌートに至るのだ。
 
ああ、いっぱい書いてしまった。(^^;;;
このCD、8番のベスト5か、ひょっとしたらベスト3に数えてもいいと思う。
PILZレーベルは、いま入手困難だが、バーゲンか何かで見かけたら、ぜひ、お買い求めいただきたい。また、この名演が、きちんとCD化され、いつでも手に入る状態になることを、強く希望する。
なお、この演奏を一部の評論家が「金管とティンパニが炸裂する*爆演*」のようにコメントしてきたが、それはきわめて一面的。
ここで何度も繰り返すように、ケーゲルは、至極真っ当な音楽をちゃんとオーケストラにやらせるという、言うのは簡単だが行うのは困難なことを、可能にする稀有な指揮者だったのである。
 
セルジュ・チェリビダッケ(指揮)ミュンヘン・フィル響(EMI)<ノヴァーク版>
とびきり美しい。これだけ、いい音程でオーケストラが鳴るのは初めて耳にするような気がする。とてもライヴ録音とは思えない。
ケーゲル盤と同じく、美しい和音で金管が吹奏され、弦合奏が響く。埋もれがちな音型が効果的に活かされる。
テンポの遅さが非難されるが、気になるのは第1楽章くらいだ。スケルツォは、ほぼ通常のテンポになる。
アダージョとフィナーレは、普通の演奏より10分くらい長いが、もう響きの美しさに酔いしれてしまう。この美に文句を付けてはいけない!
とにもかくにも、この気持ちいい響きの中では、演奏時間が100分を超えようが、長いという感じはしない。
ただ、ケーゲル盤と違って、興奮しないのである。やはり、ある程度の「速さ」が必要なのだ。
繰り返すが、とても人間業とは思えない美しさだ。あるいはブルックナーの音楽とは違う…と言えるかもしれないが、これを聴かずにおくのは、あまりに惜しい。
一点だけ特筆しておきたいのは、フィナーレ618〜623小節で第1楽章の主題が現れるときの巨大さ! まるで怪獣のようだ。
 
ミヒャエル・ギーレン(指揮)バーデンバーデン南西ドイツ放送響(INTERCORD)<ハース版>
このオーケストラも、実に美しい。どんな強奏の箇所でも、良く「ハモった」美しい響きだ。聴いていて、これまた誠に心地よい。
声部間のバランスは絶妙、「スコアを透かし彫りにするような…」という形容詞は、この演奏のためにある。
ただ、これがまた、まるで「感動」からは程遠いのである。
「箱庭」的というのだろうか。
同じ「音程が良くて美しい管弦楽」といっても、ケーゲルやチェリビダッケと違って、オーケストラの音が「薄い」のである。録音も、そういう印象に輪をかける。
あるいは、「コク」や「カロリー」を殺すことで、バランスの妙を得たのだろうか。
とにかく他に類例がなく、その意味で、この曲を聴く上では欠かすことができない盤だと思う。

8月28日(土): 遅くなったが、公開2周年を記念して、新しいページを掲載する。
 今回は、ハンガリー生まれで、北欧のオーケストラを中心に活躍した指揮者、カール・フォン・ガラグリを取り上げた。

 小伝お薦め盤ディスコグラフィをアップ。

 およそ忘れられた指揮者といっていいと思うが、斉諧生は、この人のシベリウス録音を高く評価している。
 無名に近い人ゆえ、わからないことも多く、また、北欧諸語にはきわめて不案内ゆえ、間違いも多いと思われるが、お気づきの点があれば、どうぞ、御教示をたまわりたい。<(_ _)>

 通販業者からLPが届いた。

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)コンセール・ラムルー管、モーツァルト;交響曲第35番&ハイドン;協奏交響曲ほか(独DGG、LP)
「ハフナー」交響曲は、当「斉諧生音盤志」に立伝しているマルケヴィッチの未聴の音源ゆえ、飛びついてオーダーしたもの。
まあ、あまりモーツァルトが得意な人ではないのだが、曲調からするとマルケヴィッチ向きかもしれない。
ハイドンは米盤を架蔵しているが、独DGGのオリジナル(もしくはそれに近い)盤で聴けるのは歓迎したい。
グルック;シンフォニア(ト長調)をフィルアップ。
1950年代終わりのモノラル録音である。
 
ドゥヴィ・エルリ(Vn)カレル・フサ(指揮)セント・ソリ管、バルトーク;組曲「不思議なマンダリン」、狂詩曲第1・2番(仏Musidisc、LP)
現代チェコの作曲家として著名なフサの指揮によるバルトークに興味を惹かれ、オーダーしたもの。
現代音楽のスペシャリストとして知られるエルリのヴァイオリンにも期待したい。
 
ジョアン・カルロス・マルティンス(P)エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)ボストン響、ヒナステラ;P協・協奏的変奏曲(英RCA、LP)
ヒナステラは集めている作曲家、その上、ラインスドルフ&ボストン響という顔触れに興味が湧き、オーダーしたもの。
ピアニストの名前は初耳だったが、ライナーノート等によると、この曲が1961年に初演されたときのソリストに他ならない(録音は1968年頃)。これは期待できるかも。
初演といえば、「協奏的変奏曲」の初演を指揮したのはマルケヴィッチだったのである。
この曲については、トランペットのギターラ等、ボストン響の首席奏者連中の名前もクレジットされており、名人芸が愉しめそうである。

 列伝の更新やアンプのトラブル対応などで、落ち着いて聴けない日になってしまった。残念。

フレデリク・プラッシー(Vn)ジャック・フランシス・マンツォーネ(指揮)プラハ・スーク室内管、モーツァルト;Vn協第3・4・5番(BNL)
この人は、バリバリ弾くタイプではなく、ゆったり・のびのびと上品に美しく歌うところに美質が発揮される。
それは、各曲の緩徐楽章で、とりわけ顕著である。最近の傾向より、かなりゆっくりしたテンポをとり、実にゆったりと歌っていく。
ちょっと細身にとった音色も誠に美しく、酔わされる。特に高音の、絹糸を引いたような、けっして金属的にならない響きは、比類がないものといえよう。
3曲の中で、いちばん優れているのは第5番か。曲との相性が良いのかもしれない。
第3番の終楽章中間部で、とりわけゆったりしたテンポから漂う愁いの気配に、心打たれたことも特筆しておきたい。
各曲での自作のカデンツァも、まずまず形になっている。
 
ガスパール・カサド(Vc)ジョネル・ペルレア(指揮)ほか、シューベルト(カサド編);アルペジオーネ・ソナタ(VOX)
これは感心しなかった。
管弦楽編曲がどうこうという以前に、ソロ・伴奏ともに大幅に改変を加え、変に派手な(技巧的な)音楽にしている。これでは楽しめない。
また、メカニカルな衰えも耳につく。
もっとも第2楽章の歌い方は、しみじみと美しく、大家の芸を感じた。
やはりこの人はSP時代の録音を聴くべきかもしれない。

 逸匠列伝カール・フォン・ガラグリを掲載。


8月27日(金): 

 フランスの通販サイトCD-MAILAlapageから相次いで荷物が届いた。

フレデリク・プラッシー(Vn)ジャック・フランシス・マンツォーネ(指揮)プラハ・スーク室内管、モーツァルト;Vn協第3・4・5番(BNL)
ちかごろ御贔屓のプラッシーを引き続きオーダー。
これは1991年録音だから、19歳のときの演奏。カデンツァはすべて自作だから、なかなか偉いといえよう。
 
フレデリク・プラッシー(Vn)ビストリク・レジュハ(指揮)スロヴァキア国立コシュツェ響、ドヴォルザーク;Vn協&チャイコフスキー;Vn協(BNL)
プラッシーのスラヴ音楽は、今のところこれだけなのだが、どういう演奏か興味を惹かれる。
 
フレデリク・プラッシー(Vn)ゴルダン・ニコリク(Vn)ジャン・マリー・トロテロー(Vc)ジョルジュ・ベソネ(Org)モーツァルト;教会ソナタ集(BNL)
1998年の録音なので、ブラームス;Vn協ほかに次いで、新しいものということになる。
K.67・68・69・144・145・212・224・225・241・244・245・274・328・336の14曲を収録。
 
このところ買ったもの以外に、プラッシーの録音ではバッハの無伴奏とソナタ、フランク・フォーレ・ドビュッシーのソナタがあるので、是非手に入れたいものである。
 
アルマン・ジョルダン(指揮)新フランス国立放送フィルほか、ショーソン;歌劇「アーサー王」(ERATO)
これは浮月斎さんからお薦めをいただいていたもの。
一頃は、どこの輸入盤屋の棚でも見かけたが、探してみると姿を消しており、通販サイトでもなかなか見かけなくなっていた。
主な歌手は、
グィネヴィア;テレサ・ツィリス・ガラ
アーサー王;ジノ・キリコ
ランスロット;イェスタ・ヴィンベリ
といったところ。
 
ヴァンサン・ヴァルニエ(Org)ジャン・スーリス(指揮)ジャン・スーリス声楽アンサンブル、フランク&フォーレ;合唱曲集(Syrius)
最近、あれこれ買っているスーリスとヴァルニエだが、フォーレ;ラシーヌの雅歌があるとなれば、手に入れないわけにはいかない。愛惜佳曲書掲載の佳曲である。
その他の収録曲は、
フランク;パニス・アンジェリクス
 同  ;小カンタータ「レベッカ」(抜粋)
フォーレ;タントゥム・エルゴ
等である。
 
なお、上記ショーソンとこれは、前にAlapageにオーダーしたら品切れ、今回CD-MAILから入荷したもの。
 
オイゲン・ヨッフム(指揮)バイエルン放送響団員、モーツァルト;セレナード第13番(DGG)
一番最後に掲げたのは、これはCD-MAILの特典盤としてタダで貰ったものだから。
オンライン・オーダーを進めていくと、途中で選択するところがある。前回注文時には気づかずに通り過ぎたため、わけのわからないものが届いた。
今回は、気を付けておいて、これを送ってもらった。LP時代、この曲の一方の「決定盤」的存在だったが、ろくに聴いたことがなかったので。
DGGの"ORIGINALS"シリーズの販促用に、フランス・ポリグラムが作成・配布した物らしい。ジャケットも薄型のもの。
そういえば、あのシリーズ、もっとヨッフムを出してほしい(もう終わってしまったのかしら?)。ステレオ初期、ベルリン・フィルとのベートーヴェン;交響曲集とか。

8月26日(木): いつもお世話になっているAn die Musikさんの昨日付けの更新で、当「斉諧生音盤志」を御紹介いただいている。
 金子建志編『200CD オーケストラの秘密』(立風書房)に触れた分なのだが、当該記事はここを押して

 通販業者からLPが届いた。また、外出のついでにCDを購入。

オラツィオ・フルゴニ(P)ポール・パレー(指揮)プロ・ムジカ室内管、ベートーヴェン;ピアノ協奏曲変ホ長調(米VOX、LP)
パレーの未架蔵盤ゆえ、オーダーしたもの。
VOXのオリジナルではなく、フランスでポリドールが録音した音源の模様。録音時期はよくわからないが、あるいは1940年代末か?
ピアニストは1921年生まれのイタリア人、カセッラに学んだとのこと。
曲は、ベートーヴェンがボンで作曲修業を始めた頃、1784年に書いた習作。
最近、この曲の録音は見かけない。Vn協のP編曲を弾く人は結構いるが…。
なぜか、レイボヴィッツにも、この曲の録音がある。
 
ガスパール・カサド(Vc)ジョネル・ペルレア(指揮)ほか、シューベルト(カサド編);アルペジオーネ・ソナタ&ドヴォルザーク;Vc協ほか(VOX)
チェリストについてはガスパール・カサドのWebpageを御覧いただきたい。
お目当ては、カサド自ら管弦楽に編曲したアルペジオーネ・ソナタ
その他の収録曲は、
シューマン;Vc協
チャイコフスキー;ロココ変奏曲
ドヴォルザーク;ロンド、森の静けさ
レスピーギ;アダージョと変奏曲
管弦楽は、シューベルトとシューマンがバンベルク響、その他はウィーン・プロ・ムジカ管
 
西村美香(Fl)林佳勲(P)「華のパリ」(MUSIC GALLERY)
京都出身、パリでクリスチャン・ラルデに学んだフルーティストによるフランス曲集。
デジレ・エミール・アンゲルブレシュト;「日時計」・「森の精」が収められており、見逃すことはできないと購入。
その他、ラヴェル;マ・メール・ロワサン・サーンスフォーレドビュッシー等の作品を収録。
 
オリジナル・サウンドトラック、古関裕而;「モスラ」(SLC)
もちろん、あの東宝特撮怪獣映画である。(^^;
どこかで片山杜秀氏が、「モスラ」での古関裕而の管弦楽法について「もっと注目されてよいものだ」と書いていたこともあり、前から気になっていた。
何しろ、古関氏と言えば、「六甲颪(おろし)」「栄冠は君に輝く」といった優れた歌曲(あ、両方とも甲子園関係だ(^^;)の作曲家としてのみ知っていたからである。
今日、中古屋のサントラの棚で見つけ、これ幸いと購入。
帯に曰く、「もちろん、ザ・ピーナッツ『モスラの歌』の歌もたっぷり入ってます。」

 さっそく聴いてみた。

西村美香(Fl)林佳勲(P)デジレ・エミール・アンゲルブレシュト;「日時計」・「森の精」(MUSIC GALLERY)
「日時計」はゆったりした、「森の精」は飛び跳ねるような、というテンポの違いはあるが、どちらも、それはそれは可愛らしい曲である(きわめて単純ではあるが)。
Flは、とびきりの美音というわけではないけれども、音色に木質感があって、ヴィブラートを控えめにした、斉諧生好みのもの。
2曲で僅か4分弱しかないが、嬉しい思いをしたCD。
 
オリジナル・サウンドトラック、古関裕而;「モスラ」(SLC)
↑で触れた片山氏がライナーノートにも文章を寄せており、「主題歌やインファント島民の舞踊歌は、まさにこれ、古関版『シェヘラザード』であり、モスラの幼虫が東京を驀進する音楽は古関版ストラヴィンスキーに他ならない。」と書いている。
期待して聴いたのだが、結果は…う〜ん。
曲想が、チト貧相なのである。
「モスラの驀進」の音楽など、「ダフニスとクロエ」での「ドルコンの踊り」にそっくり。
インファント島民の踊りも、コンガ風の太鼓は耳珍しいが、リズムは単純陳腐。
やはり、この映画音楽の魅力は、一に懸かって「モスラの歌」にある。
「♪モスラ〜ヤ モスラ〜、ドゥンガンカサ〜クヤン、インドゥムウ…」
ザ・ピーナッツの歌声も美しい。

 最近見つけたマイナー・オーケストラのWebpage等を、電網四方八通路に追加。
 また、今日入手したCD・LPのデータ・画像を、パレー・ディスコグラフィアンゲルブレシュト・ディスコグラフィに追加。


8月25日(水): 

 

ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ブルックナー;交響曲第9番ほか(DECCA)
ようやく輸入盤が店頭に出てきたので、購入。
遅くなったお詫び(?)に、国内盤には収録されていなかったアダージョ(弦楽五重奏曲から)(シュタットルマイヤー編の弦楽合奏版)がフィルアップされている(この編曲、ツァグロセクがOrfeoに全曲を録音している)。
ブロムシュテットのブルックナーは、デジタル初期にシュターツカペレ・ドレスデンとの第4番・第7番があり、いずれも優れた演奏だったので、これも期待したいところだ。
しかし、3年前に国内盤が出たときには、さっぱり話題にならなかった。これも宇野*尊師*の影響力だったか。
ふと気が付いたのだが、これまで輸入盤の「DECCA」マークを隠すために貼ってあった「LONDON」のシールが無くなっている。
 
小林研一郎(指揮)名古屋フィルほか、サン・サーンス;交響曲第3番ほか(G.face)
小林研一郎の「オルガン付き」は、先だってチェコ・フィル盤が出たが、やはり買わずにはいられない。
1998年7月20日のサントリー・ホールでのライヴ録音、オルガンは小林英之
フィル・アップにスメタナ;交響詩「わが祖国」(前半3曲)

8月23日(月): 遅まきながら、岩城宏之『作曲家・武満徹と人間・黛敏郎』(作陽ブックレット)を買ってきた。
 生前、あれだけ仲良くしていた岩城が「黛の作曲が減ったのは、ヨーロッパで仕入れたタネが切れたから。作曲家としての本当のオリジナリティはなかった」等と書いた…というので、話題になった一本である。
 見つけてみれば、60頁ほどの小冊子。くらしき作陽大学の公開講座の講演録である。
 しかも50頁までは、「山本直純は滅多に芸大に来なかったが、代返を雇ってまんまと卒業した」、「武満徹は黒澤明に連れられて三船敏郎邸の門に立小便をしたことがある」、「黛敏郎を銀座のマキシムに招待したら1本十何万のワインを2、3本空けられた」とか、その手の想い出(暴露)話ばかり。
 武満と黛を比較しているのは最後の10頁で、「タネ切れ」「本当のオリジナリティーはなかった」と言っているのは事実だが、「黛さんが新しい手法を仕込んだことで、日本の音楽界の隆盛があった」「情報をつかんで発信する天才だった」という ことを言わんがための前フリである。
 …それでも作曲家に対しては十分な悪口かもしれない。(苦笑)
 斉諧生的に納得がいかないのは、黛をそう評価しておいて、他方、柴田南雄さんを「日本の戦後の前衛音楽を強力に引っ張ってきて、いささかの妥協もない作品を書きつづけた作曲家」と書いているところ。
 斉諧生自身は柴田さんの作品を好むが、黛との相対関係では、二人の作風の軌跡を考えるとき、いささかアンフェアな評価ではないだろうか?
 柴田さんが「戦後の前衛音楽を強力に引っ張った」のは欧米作曲界の新しい動向の紹介者としてであったし、後年、力を注いだシアターピース系列の作品は民俗音楽素材や西洋音楽史を用いた一種のコラージュと言えなくもない。黛に対してと同様(又はそれ以上に)、「本当のオリジナリティはなかった」としなければ、論旨に一貫性を欠く。
 あるいは「今の世の中、武満を持ち上げて黛を腐しておけば安全」という計算なのかと疑ってしまう。もちろん、見当違いの濡れ衣かもしれないが。

 

ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)渡邊暁雄(指揮)東京都響、チャイコフスキー;Vn協ほか(DENON)
1977年、カントロフが、まだまだ「将来有望な若手」だった頃の録音(当時32歳)。
カントロフは集めることにしているので、実はLPで架蔵しているのだが、CD化されたので購入。
シベリウス演奏を通じて敬愛する渡邊暁雄さんが指揮しているのも見落とせない。
「憂鬱なセレナード」をフィルアップ。
なお、これは草創期のデジタル録音。この頃には、まだDENONレーベルくらいしか取り組んでいなかったものである。今昔の感深し。
 
ジュリアス・カッチェン(P)ヨゼフ・スーク(Vn)ヤーノシュ・シュタルケル(Vc)ブラームス;P三重奏曲全集ほか(DECCA)
 
ヨゼフ・スーク(Vn)ジュリアス・カッチェン(P)ブラームス;Vnソナタ全集(DECCA)
昨日聴いたカッチェンのピアノをもう少し…と思って、CD屋の棚を見ていたところ、このところ見ないなぁ…と思っていた盤を発見したので、即、購入。
とりわけ、スークとのソナタは是非、聴いてみたかったもの。できれば英DECCAのLPが欲しいが、贅沢は言うまい。
また、トリオは2枚組で、Vcソナタ第2番FAEソナタ;スケルツォをカプリングしてある。斉諧生的にはこちらの方が嬉しいところ。
いずれも1967〜68年、特にスークは全盛期に当たる頃なので、期待したい。

8月22日(日): 

 

ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮)北ドイツ放送響、ブラームス;交響曲第4番(独Artiphon、LP)
まず、既発盤との聴き比べ。
やはり、このオリジナル盤が最良。次いでACANTA盤、やや離れて日本PHILIPS盤。
もちろん、1960〜70年代前半の放送用ライヴ録音ゆえ、限界があるが…。
さて、演奏の方は…、これが説明に困るのである。
何一つ目をひくようなことはしていないが、それでいて、ズッシリとブラームスの音楽が心に残るような演奏…こんな文章を書いても、読み手に何も伝えられないではないか!
斉諧生は、なるべくスコアを参照しながら聴くことにしており、耳新しい表現は書き込みを入れるようにしているのだが、この演奏については、ほとんど書き入れることがなかった。
小細工が一切なく、右顧左眄しない、確信に満ちた表現…今の斉諧生には、そう表現するほかない。
国内盤が出たとき、故・福永陽一郎氏が「ただ頭を垂れるのみ」と評されたものだが、あらためて頷かされた。
あえて記すなら、
重厚な響きを持つといわれるハンブルク・ムジークハレにふさわしく、堂々としたテンポ。とりわけ第2楽章は、最近の演奏に比べると、少し遅めに感じられるほどであった。
…くらいか。(苦笑)
オーケストラも素晴らしい。
特筆したいのは、ホルンの男性的な響き。ウィーン・フィルより剛直な音色で、雄々しい吹奏を聴かせる。そういえば、ホルンを活かすのはイッセルシュテットの得意技だった。
また、味の濃い木管の音色、目のつんだ弦合奏、ライヴとは思えない完成度である。
このオーケストラは最近ヴァントと全集を出したが、演奏力は、この当時の方が上だろう。
 
カール・フォン・ガラグリ(指揮)イェーテボリ響、ラングストレム;ディヴェルティメント・エレジアコ(瑞Caprice、LP)
弦楽合奏曲である。
北欧の弦楽合奏曲には佳品が多いが、これも美しい曲であった。
ラングストレムはプフィッツナーに学んだそうだが、作風はきわめて穏健でロマンティック。
とりわけ、第1楽章「幻視的な前奏曲」の、まさしくエレジアックな味わいが心に残った。
ガラグリの指揮も、弦合奏に生命を吹き込んでおり、この指揮者の力量と音楽性を発揮している。CDに復活させてほしいものだ。
 
ジュリアス・カッチェン(P)ヤーノシュ・フェレンチク(指揮)ロンドン響、ブラームス;P協第2番(DECCA)
かねていろいろ教えていただいている、かとちぇんこKlassischer Platzさんからカッチェンをお薦めいただいているので、手持ちのCDを聴いてみた。
実は、この曲はあまり聴いたことがなく、聴きどころというか、着眼点がつかみ切れていない(第1番は、もっと苦手だ)。
耳に馴染みがあるのはバックハウス&ベーム盤の第3楽章(これは美しさの極み)とギレリス&ライナー盤の第1楽章(これは凄い剛速球)くらい。
カッチェンのピアノは、力感的な部分では轟然と、抒情的な部分では嫋々と、はったりやケレン味のないものと聴いた。
とりわけ、中音域の木質感のある円やかな音色の美しさが、印象に残った。
フェレンチクの指揮も立体感とコクがある立派なもので、あらためて感心した。
もとの録音の問題か、CD化の問題か、少々、ピアノの音がこもりがちなのと(弱音の粒立ちが悪く、また、音像が木管の奥に位置する)、弦合奏の高音が金属的に響くのが残念。
 
ニカノール・サバレタ(Hp)ジャン・マルティノン(指揮)フランス国立放送管、タイユフェール;Hp小協奏曲(独DGG、LP)
昨日聴いたジョー・アン・ファレッタ(指揮)ウーマンズ・フィルハーモニック盤(KOCH)に、この曲が入っていたので、サバレタ盤を取り出してみた。カプリングのヒナステラばかり聴いていたので、こちらを聴くのは実は初めて。
快活で機知に富む曲。第3楽章にコントラバスから始まる小さなフーガがあるが、ここなど実に洒落ている。
「フランス6人組」の紅一点として(のみ)有名な人だが、ラヴェルに学んだという経歴が肯ける、才気溢れる音楽である。
第2楽章レントの味わいも面白い。
 
スティーヴン・イッサーリス(Vc)オッリ・ムストネン(P)ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ(BMG)
BBSサロ様と彩ちゃんの部屋で伴奏ピアノの極意(?)について質問してみたところ、このコンビが良かろう…ということだったので、聴き直してみた。
なるほどピアノは引っ込みすぎない…というより、表現意欲十分、ほとんど対等に振る舞う趣で、これは録音の妙もあろうが、感心した。
問題は、チェロの表情で、アルト・ノラス長谷川陽子さんで聴き込んできた斉諧生にとっては、ちょっと違和感が大きい。
言葉は悪いが、「この曲は、こんな軟弱じゃない!」という気がしてしまうのである。
まあ、逆に聴くと「こんなガチガチの曲じゃない!」っていうことになるのかもしれないが。

8月21日(土): 

 通販業者からLPが届いた。

アンタル・ドラティ(指揮)ストックホルム・フィル、ベルワルド;交響曲第2番ほか(英RCA、LP)
ドラティが一時期(1966〜74年)、首席指揮者を勤めたストックホルム・フィルとの録音。
ベルワルドの交響曲はなるべく揃えるようにしている上、ドラティ、ストックホルム・フィルと御贔屓の指揮者・オーケストラとあれば、買わざるべからず。
その他、
ブロムダール;組曲「シジフォス」
ルーセンベリ;間奏曲「鉄道フーガ」歌劇「アメリカへの旅」より
を収録。
なお、ストックホルム・フィルのディスコグラフィによれば、この録音は1967年10月16〜21日に行われたもの。このセッションではシベリウス;交響曲第2番も収録され、同様にRCAから発売されている。
 
カール・フォン・ガラグリ(指揮)イェーテボリ響、ラングストレム;ディヴェルティメント・エレジアコほか(瑞Caprice、LP)
ガラグリは全録音を蒐集したい指揮者なので、見つけたからには是非とも購入。
1977年8月12日の録音なので、彼の仕事としては晩年のものだ。
イェーテボリ響は若い頃にコンサートマスターを勤めた古巣である(1923〜30年)。
ラングストレムの作品(1918年)は演奏時間15分ほど、残りは別な指揮者で
ニストレム;海辺の歌
ヨハンソン;ニッケルハルパ協奏曲
が収録されている。
なお、「ニッケルハルパ」という楽器については、北欧クラシックCDに紹介があるので参照されたい。
 
オッド・グリューナー・ヘッゲ(指揮)オスロ・フィル、トヴェイト;「ハルダンゲルの100の民謡旋律」第1組曲(諾EMI、LP)
この曲は昨年、BISからオーレ・クリスティアン・ルー盤が出て、その美しさに魅せられたものだ。
グリューナー・ヘッゲに録音があったとは知らず、ぜひ聴いてみたいとオーダーしたもの。
録音時期未詳だが、モノラルである。
 
ロバート・アーヴィング(指揮)コンサート・アーツ管、スカルラッティ(トマシーニ編);「上機嫌な貴婦人達」&バッハ(ウォルトン編);「賢い乙女達」(英Capitol、LP)
この演奏は、以前に浮月斎さんが取り上げておられ、気になっていたもの。
いずれも、バロック曲をバレエ音楽として編曲したものである。前者はもちろんスカルラッティのチェンバロ曲、後者はバッハのカンタータから。
CDでも出ているのだが、英EMIプレスのLPが安く出ていたのでオーダーしてみた。
 
ナサニエル・ローゼン(Vc)アンソニー・ニューマン(Cem)バッハ;ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1〜3番(米Cum laude、LP)
何となく気になって集めてしまっているチェリスト、ナサニエル・ローゼン。
必ずしも好みのチェロではないのだが、カザルスが振っていた頃にマールボロ音楽祭管のメンバーだったことが引っ掛かっているのだろうと思う。(笑)
才人ニューマンとのコンビで、バッハのガンバ・ソナタを録音したものが出ていたので、ついついオーダーしてしまった。
Cum laudeはVOX系のレーベル、これは1982年6月に録音されたもの。

 先日届いたリリー・ブーランジェ関係のCDを聴く。

ジョー・アン・ファレッタ(指揮)ウーマンズ・フィルハーモニック、リリー・ブーランジェ;「春の朝に」・「悲しみの夕べに」(KOCH)
予想以上に立派なオーケストラ(失礼!)。
前に書いたように、オーケストレーションの違いもあるので一概には比較できないのだが、やや淡彩な演奏で、これはこれで好もしい感じがする。
ただ、1枚だけ採るなら、トルトゥリエ盤か(CHANDOS)。
 
ロレーヌ・マッカスラン(Vn)ナイジェル・クレイトン(P)リリー・ブーランジェ;「夜想曲」・「行列」(Collins)
「夜想曲」は、ポルタメントを多用するのが煩わしい。ラヴェルかファリャのような雰囲気になってしまい、リリーの抒情が散ってしまう。
この曲はシャルリエ盤(MARCO POLO)がベスト。
「行列」は、輝きのある音色と切れのいい弓捌きが華やかな曲想を生かしており、あるいはこれがベストかもしれない。
 
マイニンガー・トリオ、リリー・ブーランジェ;「夜想曲」・「春の朝に」(Bayer)
リリーの世界を表現しようと真摯に取り組んでいるのは良いのだが、どうにも非力なのは否めない。
「夜想曲」のフルート版、なかなかいいものなく、手持ちの中ではロビソン盤(MUSIC MASTERS)がベストだが、まだまだ満足はできない。
なぜか、フランス系フルーティストの録音がないのも不思議。
 
モニカ・ポンス(P)リリー・ブーランジェ;「古い庭で」(ARS HARMONICA)
これも、やや非力。録音も、あまりよくない。
この曲は、遅めのテンポをとったナウモフ盤(MARCO POLO)の謎めいた響きが面白い。

8月20日(金): 

 17日に届いたCDの情報を、リリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィに追加。


8月19日(木): 

 

小林研一郎(指揮)九州響ほか、ベートーヴェン;交響曲第9番(EXTON)
小林研一郎のCDとあらば、買わざるべからず。ましてや「合唱」とあらば…。
意外に、彼のベートーヴェンは聴いたことが少ない。LP・CDも無かったし、実演でも大阪センチュリー響との「エロイカ」くらいだった。
独唱は、高橋薫子(Sop)、栗林朋子(A)、伊達英二(T)、直野資(Bar)。合唱は合唱連盟福岡支部合同合唱団
1998年12月21・22日、福岡サンパレスでのライヴ録音である。
なお、九響を聴くのは、ライヴはもとよりCDでも初めて。
(訂正)
小林研一郎のベートーヴェンのCDは、「田園」が出ている。
日本フィルの定期演奏会(1991年7月11日)のライヴ録音(サントリー・ホール)で、『CD付名曲えほん ベートーベン 田園交響曲』(雨田光弘・絵、ばるん社、1992年)の形で発売された。(8月21日)

8月17日(火): 

 CD屋を廻って国内盤を1枚買って帰ると、H&B Recordings DirectからオーダーしていたCDが届いていた。
 ここは初めて利用した。Order Statusが検索できないこと、発送等のメール連絡がないこと等、きめ細かさでは見劣りするのだが、何といっても、クラシック専門と銘打つだけあって、CDnow等では出てこないマイナーなものが出てくる。。
 もっとも、マイナーすぎるのか、10枚オーダーしたうちの5枚しか届かなかった。すべて、リリー・ブーランジェ全録音蒐集プロジェクト関連。
 最近のフェミニズムの潮流の中で、女性作曲家のアンソロジーが多く録音され、その際、「女性初のローマ大賞受賞者」あるいは「名教師ナディア・ブーランジェの妹」として、リリー・ブーランジェが取り上げられる…という図式のようだ。
 「夜想曲」等の小品ばかりなのが残念。せめて「ピエ・イェズ」を…と思うのだが。

小林研一郎(指揮)チェコ・フィル、マーラー;交響曲第5番(Canyon)
小林研一郎の新譜とあらば、買わざるべからず。
とはいえ、実は、この曲は苦手なマーラーの中でも、更に不得手な曲。
一昨年9月に、このコンビの来日公演で聴いたときも、オーケストラの巧さには感嘆しつつ、曲の世界には、まるで入り込めなかった。
まあ、もう少し聴き重ねていきたい。
なお、小林の同曲CDは2枚目、前回は日本フィルとの1991年録音であった(Canyon)。
 
ジョー・アン・ファレッタ(指揮)ウーマンズ・フィルハーモニックほか、リリー・ブーランジェ;「春の朝に」・「悲しみの夕べに」ほか(KOCH)
これは6月にカセット・テープで購入したのと同じ音源。CDを見つけたからには、これもオーダーせずにはいられない。
女性指揮者が女性奏者によるオーケストラ(本拠はサンフランシスコ)で女性作曲家による楽曲を録音する…という企画。
「春の朝に」「悲しみの夕べに」の管弦楽版は、ストリンジャー盤(Timpani)・トルトゥリエ盤(CHANDOS)が出たが、これも貴重な音源。
録音年月は明記されていないが、マルPが1992年なので、あるいは管弦楽版による初録音かもしれない。
トルトゥリエ盤の試聴録(15日の項)に書いた、オーケストレーションの差異の問題について、この盤のライナーノートに重要な記載があった。
「作曲時点で、彼女の健康状態が悪化していたことは、悲しいかな、手稿そのものに歴然としている。特に『悲しみの夕べに』は、判然としない無数の書き換えや棒線で消した間違いがあり、筆跡も全体に弱々しさが見て取れる。」
「ダイナミックス、アーティキュレーション等の細部は、リリーが完成したのではなく、ナディアによって書き込まれた。その他の演奏上必要な細部は、オーケストラのスタッフが付け加えた。」
やはり、手稿から演奏譜を起こす過程で、差異が生じているようだ。
なお、ブーランジェの他、
クララ・シューマン;P協(独奏アンジェラ・チェン)
タイユフェール;Hp協(独奏ジリアン・ベネト)
ファニー・メンデルスゾーン;序曲
を収録。
 
ロレーヌ・マッカスラン(Vn)ナイジェル・クレイトン(P)リリー・ブーランジェ;「夜想曲」・「行列」ほか(Collins)
ハイフェッツのSP録音以来、ヴァイオリニストのアンコール・ピースとして演奏されている2曲を演奏している。
アルバムとしてのタイトルは『20世紀作品によるリサイタル』、
ヤナーチェク;Vnソナタ
メシアン;主題と変奏
マルティヌー;Vnソナタ第3番
をメインに、ブーランジェ作品を挟んで、
ラヴェル;ハバネラ形式の小品
フォーレ;子守歌
が収録されている。
 
マイニンガー・トリオ、リリー・ブーランジェ;「夜想曲」・「春の朝に」ほか(Bayer)
マイニンガー・トリオは、クリスティアーネ・マイニンガー(Fl)、ウルリケ・ツァーフェルベルク(Vc)、クリストファー・アルピン(P)という編成。
この2曲は、FlとPで演奏されている。
アルバム・タイトルが『女性作曲家によるフルートのための室内楽曲』。
ルイーズ・ファランクLouise Farrencの三重奏曲をメインに、マルセル・ド・マンツィアリMarcelle de Manziarly、ソフィア・グバイドリーナSofia Gubaidulina、ケイト・ワリングKate Waringの作品を収録。
 
モニカ・ポンス(P)リリー・ブーランジェ;「古い庭で」ほか(ARS HARMONICA)
ポンスはバルセロナ生まれのピアニスト、レーベルもスペインのものである。
アルバム・タイトルは『COMPOSITIO』、ジャケットでは真ん中の"O"が"♀"(Female)に置き換えられている。
ブーランジェの他、エリザベート・ジャケ・ド・ラ・ゲールマリアンネ・マルティネスファニー・メンデルスゾーンクララ・ヴィークルイーズ・ファランクといった『女性作曲家列伝』(小林緑編、平凡社)所収の作曲家や、フローレンス・ベアトリス・プライスマドレーヌ・ドリングの作品が収録されている。
 
『著名な女性作曲家』(KOCH)
原タイトルは『WOMEN OF NOTE』、"note"に「名声」と「音符」を懸けている。
エイミー・ビーチからメレディス・モンクまで、15人の作品を収めたもの。
リリー・ブーランジェ;「春の朝に」は、残念なことに、上記ファレッタ盤と同じ音源。
まあ、ナディア・ブーランジェ;VcとPの3つの小品第3曲が未架蔵の音源で入っているので、良しとしておこう。
もっとも、この盤の音源は、すべて既発のCDから採られているのかもしれないが。

8月16日(月): 今日の京都は、「五山の送り火」、夕刻から続々と観光客が集まってくるが、それを尻目にCD屋を廻って、早めに引き上げた。

 ラ・ヴォーチェさんで頼んでいたLP4枚組を引き取る。

ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮)北ドイツ放送響ほか、ブラームス;交響曲全集ほか(独Artiphon、LP)
レーベル名がArchiphonと紛らわしい。(^^;;;
この音源を買うのは、3度目である。最初は、1981年6月に日本フォノグラムが@1,500円で売り出した国内盤LP、次に独ACANTAのLPで(ヌヴーとのVn協付きの5枚組。ヌヴーのおかげか、けっこう高かった)。
先日TAHRAから出たブルックナーの組物のブックレット掲載のディスコグラフィによれば、ArlecchinoからCDが出ているとか。これは未架蔵。
あえて3セット目のLPを買ったのは、これが唯一の正規音源で、既発のどの音源より抜群に音が良いという情報だったので。
何でも、ずっと北ドイツ放送かどこかの倉庫で眠っていたものの放出だという。レーベルにも、マルP1980と印刷されている。
収録曲のデータは次のとおり。
交響曲第1番(1967年6月5日)
交響曲第2番(1967年10月30日)
交響曲第3番(1969年2月4-5日)
交響曲第4番(1973年5月21日)
大学祝典序曲(1970年9月2-4日)
ハイドン変奏曲(1962年9月24日)
運命の歌(1971年9月13-14日)
ハンブルク・ムジークハレでの録音である。第4番は指揮者が急逝する7日前、最後の演奏会とのこと。
なお、イッセルシュテットのブラームスの交響曲は、北ドイツ放送響との第2番(米Capitol)と第4番(米VOX)、それに実体はフィラデルフィア管という変名オーケストラとの第4番(英BRL)があったが、いずれも未CD化。
上記ディスコグラフィには、北ドイツ放送の私家盤に別音源の第2番があるというが、これは現物を確認していない。
 
フレデリク・プラッシー(Vn)クリストフ・シモーネ(P)ブラームス;Vnソナタ全集(BNL)
昨日、協奏曲を聴いて、なかなか感心したプラッシーのソナタが、店頭にあったので、購入。
1990年の収録なので、ヴァイオリニストは18歳、おそらく前年のモーツァルト;ソナタ集に続く、2枚目の録音である。
ソナタ3曲のほか、スケルツォ@FAEソナタを収める。

8月15日(日): 

 

ヤシャ・ホーレンシュタイン(指揮)ロンドン響、ブルックナー;交響曲第8番(BBC)
本日随一の大物だが、これは中古音盤堂奥座敷の次回課題盤であるため、その議論のログが公開されるまで、コメントは非掲載。
付け加えておけば、この演奏(1970年9月10日、ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ録音)、ハース版に拠っている。
 
高関健(指揮)大阪センチュリー響、ブラームス;交響曲第1番(いずみホール)
いずみホールでのライヴ録音であるが、特にCD化を意識していなかったとみえて、音像がセンター奥に集まってしまう等、あまり収録条件が良くない。
もちろん、いわゆる「一発録り」のため、演奏にライヴ的な傷があるのもやむを得まい。木管合奏の響きに熟していないところが少し目立つは、気になるが。
高関らしい、真っ当で、スコアに忠実な演奏である。第1楽章提示部を繰り返しているし、第4楽章で慣習的な改変を加えることもしていない。速度や強弱に関する細部の指示も遵守している。
オーケストラ編成の小ささを感じさせないスケールの大きな演奏で、ズッシリしたカロリーのある響きが一貫し、全曲の終結へ向けての重量感のある盛り上がりは、なかなか素晴らしい。「ブラヴォー」の嵐が収録されているのも、むべなるかなである。
なお、8月7日の項に記した、第1楽章冒頭のコントラバスは、やはり、いい音程でしっかり響き、和音の底を支えていた。
ティンパニの気迫ある打ち込み、第2楽章でのコンサートマスターの美しい独奏も、特筆しておきたい。
 
レイフ・オーヴェ・アンスネス(P)サイモン・ラトル(指揮)バーミンガム市響、シマノフスキ;交響曲第4番(EMI)
曲の面目を一新する演奏といえよう。
楽器の音色を複雑に絡ませたオーケストレーション、乱舞するリズムの面白さ…、そうした要素が、これまでのどの演奏より(CDでは11種あると思う)、見事に表出されている。
一例を挙げれば、第1楽章再現部冒頭で、ヴィオラとチェロが2本づつになって、スル・ポンティチェロで刻みの音型を奏するが、この音色感の生かし方が、実に鋭い。
また、頻出する非定型リズムの決め方のカッコイイこと!
アンスネスのピアノも美しいタッチだが、残響の多い録音が、打楽器的に扱われたときのリズムの圭角を丸めてしまった感があるのは惜しい。
また、第1楽章カデンツァの後半は、もっとガガガガッと弾いてほしかったが、これは斉諧生の好みが偏しているのかもしれない。
 
フレデリク・プラッシー(Vn)ペーター・フェラネツ(指揮)スロヴァキア国立コシュツェ響、ブラームス;Vn協&ショーソン;詩曲(BNL)
昨日、ヘンデルを聴いて良かったプラッシーが、パワーも要求されるブラームスでどういう演奏をするか、聴いてみた。実を言うと、かなり心配していたのだが…
ところが、これが立派も立派なブラームスである。
もちろん音色は太くないが、力感が要求されるところでは堂々と立ち向かう姿を見せる。終楽章93小節からの昂揚した踏み込みには、目を見張らされた。
もちろん、旋律を歌うところでの音色は、メジャー・レーベルの売れっ子よりも、はるかに美しい。第1楽章136小節で、初めて独奏ヴァイオリンが第1主題を出すところで、もう、完全にノックアウトされてしまった。
ただ、音域によっては、鳴りの悪い音を出すときがある。素人の藪睨みかもしれないが、D線の高域が苦手なのではないか?
オーケストラ(公式Webpageは→ここを押して)も予想以上に上手く、美しい響きであった。録音も優れている。
なお、ブックレット記載の指揮者のプロフィールに、東京交響楽団に客演したことがある…とあった。
 
ヘンリク・シェリング(Vn)ミンドゥル・カッツ(P)フランク;Vnソナタ(Cembal d'amour)
プライヴェートな録音のようで、レンジが狭く、音像が遠いが、聴きづらいところはなく、十分に鑑賞に堪える音質である。
シェリングのヴァイオリンは絶叫することなく、しかし感興豊かに、フランクの音楽を奏でる。
第1楽章冒頭のしみじみした弱音の美、"molto lento"と指定された終結での思い入れを感じさせる引っ張り方。
第2楽章では113〜114小節・120〜121小節で付されたアクセントがみごとに決まる音楽性。
第3楽章後半(52小節以降)は、この曲を弾く人なら誰しもが最も素晴らしい演奏を聴かせようとする部分だが、シェリングも最高に素晴らしい。音程が大きく跳躍するときに付くポルタメントが、少し耳ざわりなのは残念。
第4楽章ではリラックスして、ライヴ的な心の躍動を感じさせる。
 
クリスチャン・フェラス(Vn)ピエール・バルビゼ(P)ルクー;Vnソナタ(DGG)
第1楽章冒頭から、ゆったり歌い出すフェラスの美音に酔いしれる
この曲の演奏としては少しじっくり目に弾いていくため、作品が持つ、ちょっと熱っぽいところがよく出て、昂揚感がみごとである。
第1楽章の終結で大きくテンポを落とし、美しい低音で、幅広く歌い上げるところなど、感動的。
第2楽章でもフェラスの音は素晴らしい。演奏時間で約5分が経過したあたりでの少し曇らせた音色には、胸にジンと来るものがある。
ハイテンションで突入する第3楽章、中間部に入るところのガッとした音色とリズムが新鮮。終結の昂揚も、まったくみごととしか言いようがない。
この演奏が、輸入盤としてさえ、日本で販売されないのは惜しいと思う。とりあえず、フランスの通販サイトAlapageでは買えるのだが。
 
ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)BBCフィルほか、リリー・ブーランジェ;詩篇第24番・「春の朝に」・「悲しみの夕べに」(CHANDOS)
これは素晴らしい演奏である。
「ピエ・イェズ」が収録されていないことを除けば、ブーランジェを初めて聴くCDとしても、自信を持ってお薦めできるものだ。
詩篇第24番の輝かしさ! オーケストラも合唱も上手く、録音も良いので、ブーランジェの才能が、ひときわ輝く。
この曲には姉ナディアの録音もあり、年内に正規音源からの発売が予定されているので(BBC)、楽しみである。こちらは、もう少し「旧約」的な陰影を帯びた演奏である。
「春の朝に」は、ヴァイオリン独奏で聴くのも美しいが、このキラキラしたオーケストレーションも実に愉しい。これが、彼女の死を目前にした時期の作品とは…。
ストリンジャー盤(Timpani)もあるが、そちらはオーケストラの性格(編成?)もあって、もう少し厚ぼったい響き。また、どうもオーケストレーションの細部が違うような気がする。
出版譜はヴァイオリン(又はフルート)版のみ、管弦楽版は手稿しかないので、演奏譜に起こすときに差異が生じたのかもしれない。
「悲しみの夕べに」は、まさしく死を前に自ら葬送行進曲を賦した趣の曲想。
トルトゥリエの演奏は、ティンパニの連打が「死の時計」を思わせ、特に身に迫るものがある。

8月14日(土): 

 

フレデリク・プラッシー(Vn)ヴァンサン・ヴァルニエ(Org)ヘンデル;Vnソナタ集(BNL)
プラッシーの高音は、絹糸のように涼やかに美しい。ちょっと音が浮き気味に鳴るときもあるが、あるいは楽器(弓?)の問題であろうか。
比較的古楽寄りの、折り目正しい音楽である。ヘンデルの伸びやかな旋律美が、晴れ晴れと響く。
ヴァルニエのオルガンも美しく、好もしい。
注目したいヴァイオリニスト、オルガニストである。
 
天台聲明音律研究会(式衆)「密厳浄土 天台聲明 合行曼陀羅供」(EBISU)
お盆だからというわけではないが(笑)、聲明を聴く。
やはり、良い。なんとも言えぬ心地よさ。
なお、トラック6「法則(ホッソク)」で、その日の法要の趣旨を唱えているのだが、「浜離宮朝日ホールにて云々」というのが可笑しい。

 今週、入手したCDの情報を、アンゲルブレシュト・ディスコグラフィリリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィに追加。


8月13日(金): 今日は盆休みである。

 海外の通販サイトからドサドサと荷物が届いた。びっくりした…そりゃ、オーダーしているのだから届くのは当たり前だが、たまたま休みを貰った日に集中して来るとは!

チョーリャン・リン(Vn)エサ・ペッカ・サロネン(指揮)フィルハーモニア管・スウェーデン放送響、シベリウス;Vn協&ニールセン;Vn協(CBS)
このCD、ずっと架蔵していると思いこんでいた。
林昭亮は嫌いなヴァイオリニストではないし(モーツァルトなども良かった)、シベリウスとニールセンという北欧曲のカプリングならば、見逃すはずはない。
ところが、先だって、サロネンのCDを整理したときに、この盤が見当たらないので驚いた。
あちこち探してみても見当たらず、これは恐らく、買ったつもりになっているだけだろうと判断して、オーダーしたもの。
フィルハーモニア管とのシベリウスは1987年、スウェーデン放送響とのニールセンは1988年の録音である。
 
フレデリク・プラッシー(Vn)ヴァンサン・ヴァルニエ(Org)ヘンデル;Vnソナタ集(BNL)
先日、デュリュフレ;レクイエムが良かったヴァルニエを、フランスの通販サイトAlapageで検索したところ、興味深いものが見つかったのでオーダーしたもの。
これも少し前から聴いているヴァイオリニスト、プラッシーと組んだヘンデルのソナタ集である。
演奏されているのは、HWV358、359a、364、368、370、373の6曲。最も有名なHWV371(旧全集「第4番」)や、それに次ぐHWV361(同「第3番」)は収められていない。
また通常は、寺神戸亮盤(DENON)のように通奏低音を用いるが、オルガンを採用したことについて、プラッシーは、自筆のライナーノートで、ヘンデルの作品が持つ和声の豊かさを強調するのが主目的である、と述べている。
使用されたオルガンについての詳しい説明はないが、"l'orgue Michel Giroud de l'Eglise de St-Ismier"と記されている。
 
ヘンリク・シェリング(Vn)ミンドゥル・カッツ(P)ブラームス;Vnソナタ第3番&フランク;Vnソナタ(Cembal d'amour)
『レコード芸術』誌の今年3月号の「海外名演CD化案内」のページで紹介されており、ずっと探していたが、店頭で見ることがなかった。
先日、アメリカの通販サイトCDnowで、ふと検索したところ出てきたので、オーダーしたもの。
何といってもフランクは、シェリングが正規録音を遺さなかった曲だし、ブラームスは得意のレパートリー。
1970年代初め、同じ日にイスラエル・フィルと共演したことがきっかけで意気投合した両者が、1973年6月にイギリスで顔を合わせたときに録音したものだという。
カッツは、英PRTレーベルにバルビローリベートーヴェン;P協第5番を録音しており、なかなかいい演奏であった。
彼は1978年1月30日、イスタンブールでベートーヴェン;Pソナタ第17番「テンペスト」を演奏中に急逝した。これは、未亡人が保存していたテープのCD化。
 
クリスチャン・フェラス(Vn)ピエール・バルビゼ(P)フランク;Vnソナタ&ルクー;Vnソナタほか(DGG)
AlapageでルクーのCDを探してみたところ、この盤がヒットしたので驚いた。
フランス・ポリグラムの"DOUBLE"シリーズ(2枚組)自体は店頭でよく見かけるが、この盤は見たことがなかった。マルCは1997年となっている。
フランス・ポリグラムの独自企画で発売されたため、輸出禁止商品になっていて、日本には来なかったのだという。
収録曲は、標記2曲以外に、
ブラームス;Vnソナタ第1〜3番
シューマン;Vnソナタ第1番
シューマン;3つのロマンスop.94
フランクとルクーのみLPで架蔵しているが、シューマンなども、ぜひ聴いてみたく、オーダーしたもの。
録音は、ブラームスが1968年、その他は1966年。
 
ジャン・ポール・ドゥシー(Vc)ボヤン・ヴォデニチャロフ(P)ルクー;Vcソナタほか(Cypres)
上記フェラス盤同様、ルクーの未架蔵盤がヒットしたのでオーダーしたもの。
Vcソナタは1888年の作品で、演奏時間50分近い大作。録音は比較的珍しい。
カプリングは、これも珍しいPのための3つの小品。RICERCARレーベルの全集以来の録音ではないか。
ドゥシーの経歴ははっきりしないが、作曲家・指揮者でもあり、シェルシの弦楽曲の全集を録音しているという。
ヴォデニチャロフは寺神戸亮ベートーヴェン;Vnソナタ集を録音している。また、この3人で古楽器によるモーツァルトのトリオを録音しているとライナーノートにあるが、CDは未見。
なお、レーベルの公式サイトがある。→ここを押して
 
デジレ・エミール・アンゲルブレシュト(指揮)フランス国立放送管ほか、ラロ;歌劇「イスの王」(MALIBRAN)
アンゲルブレシュトの未架蔵音源を見つけたので、オーダーしたもの。
「スペイン交響曲」で有名なラロによる3幕のオペラの、CD1枚分の抜粋盤である。
「イス」は原綴"Ys"の地名で、「椅子」ではない。フランス・ブルターニュ地方の、水没した都市をめぐる伝説をオペラにした…ということらしい。
CDには1943年にマルセイユで録音されたとある。当然、ヴィシー政権下での仕事(連合軍によるマルセイユ占領は1944年8月末)。
演奏は"Orchestre NATIONAL et Choeurs"と表記されている。本来はパリで創設されたオーケストラだが、戦時中、マルセイユに疎開していたらしい。
標準的なSP復刻の音質。
 
モニカ・グロープ(M-Sop)ユハ・カンガス(指揮)オストロボスニア室内管、バッハ;カンタータ第170・35・169番(FINLANDIA)
ちかごろ御贔屓のオストロボスニア室内管を検索してみたらバッハが出てきたので、これは聴いてみたいとオーダーしたもの。
いずれもアルト独唱用のカンタータで、「満ち足れる安らい、うれしき魂の悦びよ(BWV170)」「霊と心は驚き惑う(BWV35)」「神にのみわが心を捧げん(BWV169)」と題されたもの。
このCD、後で気がついたのだが、国内盤でも発売されていたのである。『レコ芸』新譜月評にも掲載済み。
これまで弦楽合奏曲しか録音していないので、「室内管」とはいうものの実体は弦楽アンサンブル…と思っていたのに、今回の録音には管楽器が加わっていることには驚いた。
また、BWV170と35ではオルガン独奏(ホーカン・ヴィクマン)が加わる。
 
ヴァンサン・ヴァルニエ(Org)ジャン・スーリス(指揮)ジャン・スーリス声楽アンサンブル、バッハ;オルガン小曲集(コラール付き)(BNL)
コラール付きの「オルゲルビューヒライン」BWV.599〜644は、先月、ハーフォード盤(DECCA)を購入したが、その際、オルガンに造詣の深い浮月斎さんから、このディスクを御教示いただき、探していたもの。
スーリスとヴァルニエの顔合わせは、先だってもデュリュフレ;レクイエムで聴いており、それもなかなか良かったので、これは買い。
ヴァルニエは今年31歳になるはずの若いオルガニスト、使用楽器は、マセヴォー(Masevaux)の聖マルタン教会に設置されているアルフレート・ケルンによる1975年建造の大オルガン。

8月12日(木): 本を2冊買った。

NHK「トップランナー」制作班編『トップランナー』第12巻(KTC中央出版)
金曜夜のNHK総合TVで放送されている番組を活字に起こしたシリーズの最新刊。番組の公式ページは→ここを押して
今年2月19日放送分、村治佳織さんの回が収録されているので、購入したもの。
村治ファンなら知らぬ者のない(?)パリの焼肉屋と「宇宙戦艦ヤマト」のエピソードも、ここで語られたものである。
放送されていない収録後のインタビューで、司会の益子直美さんが
「すごく大人っぽいイメージがある反面、可愛くて品の良いお嬢さんというイメージもあって、不思議な魅力を感じました」
「何を隠そう、私は村治さんがギターを弾いている顔を見てホレましたね(笑)。女のわたしからみても、ドキッとするような表情があって。」
と語っているのも注目したい。
なお、斉諧生は、益子さんが共栄学園高校から「春の高校バレー」に出場した時以来のファンなのである(^^;
バレー選手としては小柄な彼女が、ジャンピング・サーブを連打していた健気な姿が、今も目に浮かぶ。
彼女本人のWebpageは→ここを押して
 
吉田光司『クナッパーツブッシュ・ディスコグラフィ』(キング・インターナショナル)
方々の掲示板等で話題になっている「クナ本」である。準公式ページは→ここを押して
京都のタワーレコードで購入したが、おいおい主な輸入盤取扱店に並ぶようだ。
それにしても立派な御仕事である。斉諧生音盤志のディスコグラフィの類など、及びもつかない。
斉諧生は、「同じ音源でも形態が違えば買い揃える」ところまでは情熱がない。同一の音源については、一番音の良い状態のものがあればそれでいい、と思ってしまうのである。

8月11日(水): 

 

ヤシャ・ホーレンシュタイン(指揮)ウィーン・プロ・ムジカ管ほか、ブルックナー;交響曲第8番ほか(VOX)
中古音盤堂奥座敷、次回の課題盤がホーレンシュタインのブルックナー;交響曲第8番―ただしロンドン響盤(BBC)―であることから、比較試聴用に購入したもの。
ロンドン響盤は1970年9月10日のライヴ録音だが、こちらは1950年代初めのスタジオ録音、もちろんモノラルである。
"VOX LEGENDS"シリーズの2枚組で、もう1枚はバーデンバーデン南西ドイツ放送響を振ったリスト;ファウスト交響曲ワーグナー;序曲「ファウスト」が収録されている。
 
ギュンター・ヴァント(指揮)ベルリン・フィル、ブルックナー;交響曲第9番(BMG)
ヴァントのブルックナーは買わざるべからず、「国内盤先行発売」という卑怯な(^^;手にめげず、輸入盤を待っていたもの。
もちろん、昨年9月18・20日のベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音である。
なお、当日、実際にフィルハーモニーでこの演奏会を聴かれた、城多司令官@千駄木音盤要塞の戦記(演奏会評)は→ここを押して

8月9日(月): 

 新譜で大きな収穫がいくつかあった。

レイフ・オーヴェ・アンスネス(P)サイモン・ラトル(指揮)バーミンガム市響ほか、シマノフスキ;交響曲第4番・歌劇「ロジェ王」(EMI)
実質的にはピアノ協奏曲ともいえる交響曲第4番(協奏交響曲)は、愛惜佳曲書に取り上げた曲。前からラトルが録音を計画しているとの情報があり(最初はバレンボイムが独奏ピアノを弾くという話だった)、楽しみにしていた盤なので、即、購入。
ピアノが北欧の俊秀、アンスネスなのも嬉しい。きっと切れ味の良いピアノを聴かせてくれるだろう。
なお、この曲は故井口基成氏が日本初演した。その他にも、いくつかの曲の初演を果たし、さらに1981年に日本シマノフスキ協会を創立に参画して初代会長に就任する等、日本でのシマノフスキ受容に当たって、井口氏が果たした役割は大きい。
ディスクの上ではメインの、オペラ「ロジェ王」の録音は、ミェジェイェフスキ盤(Muza)、ストリージャ盤(Marco Polo)に続いて3つめということになろう。
12世紀のシチリア王ルッジェーロ(ロジェ)2世をモデルに、王が王妃ロクサーナに導かれてキリスト教からディオニュソス神を奉ずる異教に改宗する…という筋書き(らしい)。
タイトル・ロールはトーマス・ハンプソンが歌っている。
 
ペトリ・サカリ(指揮)アイスランド響、シベリウス;「フィンランディア」・組曲「カレリア」・組曲「レミンカイネン」(NAXOS)
サカリのシベリウス;管弦楽曲集の新譜が出たので購入。
このシリーズ、まだあまり気に入った演奏はないが、とにかくフォローしていくつもり。
 
マニュエル・ロザンタール(指揮)モンテカルロ・フィル、オッフェンバック(ロザンタール編);バレエ音楽「パリの喜び」・「オッフェンバッキアーナ」(NAXOS)
これには驚いた。たしかにロザンタールが死んだという話は聞いたことがなかったが、まだ演奏活動をしていたとは!
1904年の生まれ、録音は1996年7月とあるから、92歳の仕事である。
録音データに"Assistant to Manuel Rosenthal: Jean-Luc Tingaud"とあるのは、おそらく副指揮者であろうが、それにしても偉いものだ。
曲目は、いずれもオッフェンバックのオペラ・オペレッタから名旋律・名場面をロザンタールが編んだもの。
ロザンタールは若い頃、作曲をラヴェルに学んだ。回想録の翻訳『ラヴェル その素顔と音楽論』(伊藤制子訳、春秋社)もある。
 
ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮)BBCフィルほか、リリー・ブーランジェ;詩篇第24番・カンタータ「ファウストとヘレネ」・詩篇第130番ほか(CHANDOS)
狂喜感動の1枚である。
リリー・ブーランジェの新録音、しかも、これまでCDでは聴くことができなかった、彼女のローマ大賞受賞作、「ファウストとヘレネ」が発売されたのである。
これが買わずにおれようか。
CHANDOSのWebpageでリリース情報をみたときから、入荷を鶴首待望していたが、予期以上に早く手に入れることができた。
詩篇第24番詩篇第130番「深き淵より」に加え、「春の朝に」「悲しみの夕べに」の管弦楽版を収録。
独唱にはリン・ドーソンアン・マレイら、合唱にはバーミンガム市響合唱団を擁しているのも心強い。
ヤン・パスカル・トルトゥリエ、よくやってくれた!
続編として「兵士の埋葬のために」詩篇第129番、そして白鳥の歌「ピエ・イェズ」の録音を期待したい。

8月8日(日): 

 公開2周年記念に、本格的な更新は無理だが、リンク集「電網四方八通路」の追加を行う。
 オーケストラ7件、演奏家関連1件、音盤批評1件。


8月7日(土): 今日は神戸方面で、サロ様と彩ちゃんの部屋のオフ・ミーティング。
 夕方からはともちゃんトムヤム研究室さんの御紹介のお店で、美味しいワインと料理で楽しい宴会となった。

 オフ絡みで神戸の音盤屋を廻り、いくつか収穫。

高関健(指揮)大阪センチュリー響、ブラームス;交響曲全集(いずみホール)
本日、最大の掘り出し物(中古)。
大阪センチュリー響は好きなオーケストラなので、創立間もない頃に自主製作盤で出たウリ・セガル(指揮)シューマン;交響曲第2番ほかを買ったりしていたが、ブラームスの全集があるとは知らなかった。
1995年9月12日と1996年1月29日、いずみホールでのライヴ録音(曲別の収録日は不詳)。
特に興味があるのは第1番の冒頭の響き。ここのコントラバス・セクションは4人なのだが、けっこう強力。
ところで、この盤に関する情報があるかと思っていずみホールのWebpageを見てみたが、「制作中」だけになっているのは寂しい。
 
ギュンター・ノイホルト(指揮)ブレーメン・フィルほか、マーラー;交響曲第3番(ANTES)
マーラーの交響曲が苦手な斉諧生だが、好き嫌いでいえば、いちばん好きなのがこの3番。
その曲の、新しくて珍しい盤が並んでいたので、即、購入。
1998年9月28・29日、ブレーメン・フィルのシーズン開幕コンサートのライヴ録音である。
イリス・フェアミリオン(M-S)、ジング・アカデミー女声合唱テルツ少年合唱団が共演。
これはタワーレコードで発見。どうして京都店には並ばないのだろう?
 
パスカル・ヴェロ(指揮)新星日響、ドヴォルザーク;交響曲第8番ほか(新星日響)
新星日響は好きなオーケストラ、ヴェロもルーセル;管弦楽曲集(fnac)以来、ちょっと贔屓にしている指揮者なので、購入。
収録曲は、
ベルリオーズ;序曲「ローマの謝肉祭」(1998年2月27日、東京芸術劇場)
ドヴォルザーク;交響曲第8番・スラヴ舞曲第10番(1998年2月19日、サントリー・ホール)
というもの。
山崎達朗氏率いるStudio Frohlaの録音だが、ここのWebpageが消滅しているのは寂しい。
 
ミシェル・コルボ(指揮)ジュネーヴ室内管ほか、モーツァルト;レクイエム(Aria)
ふと、コルボの新しい「モツレク」を見つけたので購入。昨年の発売のようだが、どうして今まで見つけられなかったのだろう?
既にERATO(1975年録音)とCASCAVELLE(1990年録音)からCDが出ているが、これは1995年9月24日、スイス・フリブール音楽祭での録音。
合唱は手兵ローザンヌ・ヴォーカル・アンサンブルエフラト・ベン・ヌン(Sop)、エリーザベト・グラーフ(A)、ジェフリー・フランシス(Ten)、マルコス・フィンク(Bass)という独唱陣である。
版については特記されていない。
 
トール・マン(指揮)ストックホルム・フィル、シベリウス;交響曲第1番(米Capitol、LP)
珍しいシベリウス録音を格安で見つけたので、さっそく購入。
盤は米キャピトルだが、テレフンケンのロゴも入っているので、そちらの音源なのだろう。
オーケストラ名は、LPにはStockholm Radio Symphony Orchestraと表記されているが、↓のエールリンク盤同様、標記が正しい。
調べてみたところ、1943年5月22日のSP録音である。第2次世界大戦中だが、スウェーデンは中立国であった。
なお、音楽とは関係がないが、1943年5月下旬といえば、ヨーロッパ戦線ではドイツ軍の北アフリカ軍団降伏から連合軍のシチリア島上陸までの間、太平洋戦線ではアッツ島の玉砕戦の真っ最中に当たる。
 
クロード・モントゥー(Fl)ピエール・モントゥー(指揮)ロンドン響、モーツァルト;Fl協第2番&バッハ;管弦楽組曲第2番ほか(米London、LP)
モントゥーの親馬鹿ディスク…といえば失礼か(^^;;;
とはいえ、彼の稀少なモーツァルト録音であり、唯一のバッハ録音(編曲ものを除く)であり、長く定評のある演奏。
米盤だが中味はイギリス・プレス、かなり安く出ていたので購入。
グルック;精霊の踊りをフィル・アップ。
 
ポール・トルトゥリエ(Vc)ルイ・フレモー(指揮)バーミンガム市響ほか、サン・サーンス;Vc協第1番ほか(英EMI、LP)
これも親馬鹿ディスク(^^;;;…といって悪ければ、ファミリー録音である。
A面は父トルトゥリエの協奏曲と「白鳥」アレグロ・アパッショナート
B面は息子ヤン・パスカル・トルトゥリエ(Vn、今は指揮者)のカプリス前奏曲「ノアの洪水」、娘マリア・ド・ラ・ポウ(P)の「ウェディング・ケーキ」
音源としてはCDで架蔵しているが、こういう大事にしている演奏家については、アナログ録音のものはLPで聴きたいので(特に弦楽器)、格安とはいかなかったが、見つけたからには購入。
 
ポール・トルトゥリエ(Vc)マリア・ド・ラ・ポウ(P)メンデルスゾーン;Vcソナタ第1・2番(独EMI、LP)
これはトルトゥリエの未架蔵音源なので、即、購入。
できればフランス・プレスを買いたいところだが、とりあえずやむを得ない。

8月5日(木): 

 

天台聲明音律研究会(式衆)「密厳浄土 天台聲明 合行曼陀羅供」(EBISU)
クラシック音楽以外で斉諧生が執心のものに、東方教会音楽と聲明がある。
どちらも豊かに響く男声の、不思議な音階が、妙に心地よい。
ふと純邦楽の棚に目新しい盤を発見。こういうジャンルの新譜情報は入りにくいので、出会いに頼ることが多い。
1997年11月8日、浜離宮朝日ホールでのライヴ収録。
録音は小島幸雄氏の担当なので、音的にも悪くないはずと考え、購入。
ブックレットはごく簡単なものだが、前田常作画伯製作の両界曼陀羅図を封入。

8月4日(水): 

 

今井信子(Va)バッハ;無伴奏Vc組曲(Va版)全曲(Philips)
今井さんのヴィオラは、なるべく買い揃えることにしているので購入。
ましてやバッハ;無伴奏Vc組曲とあらば…。
先行して発売された国内盤ではバラ売り2枚に分けられていたが、輸入盤を待っていたら、1巻にまとめて出してくれた。
 
セシリア・シリアクス(Vn)ベングト・オーケ・ルンディン(P)「スウェーデンのVnソナタ集」(Phono Suecia)
北欧のVn曲ゆえ、店頭で見かけた時から気になっていたところ、北欧音楽MLで話題になったこともあり、購入してみた。
収録曲は、
シグルド・フォン・コッホ;Vnソナタ(1913)
ヒルディング・ルーセンベリ;Vnソナタ第2番(1940)
H・メルフェル・メルフェシュ;Vnソナタ(1928)
なお、上記の人名の読みには、かなり自信がない。

8月1日(日): 斉諧生が良くお世話になっている、北欧音楽CD専門店ノルディックサウンド広島さんの本格的なWebpageが開設された。
 URLは→ここを押して
 お店の概要や通信販売の要領など、基本的な情報に加え、毎月発行しておられるニューズレターのバックナンバーや、北欧レーベルの一部のカタログがアップされている。
 ぜひ、御利用ください。
 
 それにしても…
 昨日今日の暑さ!
 朝、風を通してから、閉め切って、隣室のクーラーをつけて、音楽を聴こうとするのだが、真空管アンプのおかげで、書斎はなかなか冷えてくれない。
 夏バテか冷房病か、体もシャキッとしないので、どうにも集中力に欠ける。
 
 そんなわけで、大曲を聴くより、あれこれ摘み食いの一日にしてしまった。
 というのも…

 金曜日、新刊の金子建志編『200CD オーケストラの秘密』(立風書房)を買ってきた。
 「The Secret of Orchestration」という副題のとおり、名曲のオーケストレーション技法や、楽員側から見た演奏上の妙味や難所を取り上げたもの。
 まさに「重箱の隅つつき」misteriosoなのだが、これはこれで非常に興味深い。
 執筆者7人のうち、実際にオーケストラで演奏しておられるのはヴィオラ、ハープ、ティンパニ、ピアノの4人なのだが、それだけでもこれだけアレコレ面白い話があるのかと感心させられる。
 そこで、本書に「用例」(?)として挙げられたCDで架蔵しているものを中心に、スコアを参照しながら聴いてみた。
 以下、「」内は同書からの引用である。

ギュンター・ヴァント(指揮)北ドイツ放送響、ブルックナー;交響曲第3番(BMG)
終楽章で第1、第2主題提示後の強烈なフォルティッシモの部分を聴いていただきたい。アレグロ、2分の2拍子で中音域以上の楽器が4分音符だけの旋律をひき、低音域の楽器が同じことを8分音符1個分遅れて追いかける。その効果は正に圧倒的で、大伽藍におけるものすごい残響をともなうオルガンのユニゾンといったところだろうか。」
155小節以下の部分である。
ヴァントの明確な演奏だと、オルガン的な効果は少し後退するような気もするが、ホールで聴くと、きっと圧倒的だろうと思わされる。
 
ギュンター・ヴァント(指揮)ベルリン・フィル、ブルックナー;交響曲第4番(BMG)
1楽章で最も素晴らしいオーケストレーションのひとつは、ホルンの主題による呼びかけに応答して『トランペット+トロンボーン+チューバ』が燦然とコラールを奏する箇所だ。この部分も弦が刻む光彩が効果的で、キリスト教徒ではなくても、音楽の中に"神"を感じることができる箇所の一つとなっている。」
これは289〜332小節に当たるが(小節が明記されていないことが多いのは困る)、まさしく第1楽章随一の聴きどころ。
 
ピエール・モントゥー(指揮)シカゴ響、フランク;交響曲(BMG)
第2楽章のテーマを吹く、ハープの伴奏を従えたコーラングレのソロも広く知られた名場面の一つだが、同じ主題の後半楽節を提示するクラリネットとホルンのユニゾンの用法だって見逃せない。巧いオーケストラの手にかかると、サクソフォンかと見まごうような、甘くメロウな響きの融合体が生じる。」
第2楽章32〜48小節、ここでのシカゴ響のクラリネットとホルンの音色の溶け合いは、素晴らしい!
 
サイモン・ラトル(指揮)バーミンガム市響、マーラー;交響曲第4番(EMI)
第1楽章展開部で、フルート4本が吹く伸びやかなモチーフも心憎い。(略)麦畑を渡る風のようなニュアンスが、そこに宿る。1本の笛だと、こうはいかない。」
125〜141小節。ここが4本のユニゾンとは気づかなかった(もちろんスコアには「a 4」と書いてあるのだが、見落としていた)。
確かに、1本では出せない、広がりのある響きだ。美しい。
 
サイモン・ラトル(指揮)バーミンガム市響、シベリウス;交響曲第2番(EMI)
(第4楽章)「そしてコーダの5小節目で、高弦の音量がいきなりmpに落ちることにより、木管が吹くニ長調の和音が鮮やかに浮かび上がる。ほら、空いっぱいの青空。」
ブライトコップ版で練習番号「S」以降の部分。
たしかにラトル盤は、スコアにある強弱等の指示に実に忠実である。最近、ちょっと影が薄くなったが、やはり大事な全集録音だ。
もっとも、ここでは木管の和音の響きが柔らかくて、あまり「青空」のイメージが湧かない。北欧系オーケストラの演奏で聴いてみたいもの。
 
ピエール・モントゥー(指揮)ロンドン響、ブラームス;大学祝典序曲(Philips)
「全曲中たった1カ所、ゲシュトップとノーマルの音が交互に現れる。音楽が折り返し地点に向かっていったん閉じ、そしてまた開く瞬間が、さりげなく際立つ。」
これもスコアが手元になく、小節数は不明だが、演奏時間にして6分10秒の地点。
モントゥーはゲシュトップの音色をあまり強調していないのだが、とにかく、この演奏は素晴らしい。
 
セルジュ・チェリビダッケ(指揮)ミュンヘン・フィル、ドビュッシー;交響詩「海」(EMI)
「何といっても圧巻はこの楽章(注、第1楽章)中間部のチェロ合奏であろう。(略)わずか8小節とはいえチェロ・パート全員が渾身の力をふりしぼるかのようなこの部分の効果は正に圧倒的で、チェロという楽器の表現力の大きさを遺憾なく見せつけてくれる。」
その部分も、もちろん素晴らしいのだが、もっと凄いのは、いわゆる「午前11時45分」(シンバルがフォルテで打ち鳴らされるところ)から終結までの7小節。
例によって、うんと遅いテンポだが、それを意識させない壮麗な響きが圧倒的。
ティンパニの前打音がこれだけくっきり聴こえるのも凄い。
 
小澤征爾(指揮)水戸室内管、ラヴェル;「クープランの墓」(Philips)
(前奏曲の冒頭部分)「エンエンと続くトリッキーな走句がひととおり終わったところで、小澤は演奏を止めて、オーボエ奏者(宮本文昭)に称賛の言葉を投げかける。
すごい。俺、こんなに速いの聴いたことない。だけど、これでできるなら、それが本当のテンポだよ!』」
ボーナスCDに収められているリハーサル風景である。
実際の演奏を聴いてみたが、そんな特別に速いとも思わなかった。…普段この曲を聴くパレー&デトロイト響盤(Mercury)と、ほぼ同じ速さなのである。
まあ、これは両方を褒めるべきなのだろう。
 
フリッツ・ライナー(指揮)シカゴ響、バルトーク;弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽(BMG)
第4楽章後半で急速なテンポのスリル満点の部分を必死でひき終わった後で出現する中心主題は、形は同じながら半音の動きが全音に拡大されていることによって、それまでとは全く異なって滔々たる大河の流れのごとき姿となる。ここでの演奏者の味わう解放感は聴く者のそれに勝るとも劣らないものがあるのだ。」
181小節の「vivacissimo」に始まる部分が、203小節で「Molto moderato」に流れ込む瞬間である。
確かに、ここの解放感、拡がり感は、第4楽章の白眉だろう。
 
イヴァン・フィッシャー(指揮)ブダペシュト祝祭管、バルトーク;バレエ「中国の不思議な役人」(Philips)
「圧巻は、女が役人をたらしこむ場面だ。トロンボーンの盛大な下降グリッサンドを従えて役人が登場し、女とワルツを踊る。やがてしなだれかかる彼女の痴態に、もう我を忘れて抱擁せんとするが…。欲情の爆発。そしてトロンボーン・セクションが、血相を変える瞬間。」
これはスコアが手元にないので、もう一つ特定できなかった。
いちど、バレエの映像を見てみたいものだ。
 
ワディム・レーピン(Vn)ケント・ナガノ(指揮)ハレ管、プロコフィエフ;Vn協第2番(ERATO)
第2楽章の最終小節、ホルンが主旋律を歌い収めた余韻を引き取って深く沈潜していくように楽章を結ぶのはコントラバスのソロである。これなどあまり目立たないが、コントラバス・ソロの使い方としては最も美しいものかもしれない。」
これもスコアが手元にない曲。
コントラバス・ソロというが、管がかぶっていて、もう一つ、その美しさが聴きとれなかった。
 
以下は、本とは関係なく、聴いた新譜。
 
シクステン・エールリンク(指揮)ストックホルム・フィル、シベリウス;交響曲第2番(FINLANDIA)
残念ながら、復刻の状態が思わしくない。
いかにも「板起こし」、SP末期くらいの音になってしまっている。
ダイナミック・レンジが狭く、強奏では歪みっぽくなるし、復刻作業で付け加えたとおぼしい残響が、かえって煩わしい。
オーケストラの力量に、やや頼りない部分も散見されるが、演奏自体は、間然するところのないシベリウス。
引き続き、オリジナルのLPを探していこうと思う。
 
エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮)ロシア国立響、「哀 〜Sorrow」(TRITON)
ブルックナー;交響曲第9番第3楽章以外の6曲を聴く。
スヴェトラーノフだからといって、弦を轟々と鳴らして喚きちらす演奏を予想されては間違いである。この弦合奏は、実に美しい。
アルビノーニバッハグルックグリーグは、静謐な美しさが哀切を訴える、見事な演奏。
特にグルックは、フルートのアンコール・ピース等、BGM的なものが多いので、この痛切な表情を聴かせる演奏は稀少だ。
アルビノーニにはケーゲル盤という凄絶な演奏があるので分が悪いが…。
ベートーヴェンワーグナーの葬送行進曲も、遅めのテンポの深々とした呼吸が素晴らしい。
ベートーヴェンでは、ちょっと、遅すぎて失速を感じる部分もあるが…。
また、135小節以下や166小節以下での金管は、もっと膨らんでほしい(これは朝比奈隆の表現にとらわれすぎているのかもしれないが)。
ワーグナーには、またクナッパーツブッシュ盤(DECCA)という超巨大な名演があるので、これも分が悪い。
41小節でノートゥングの動機を吹き上げるトランペットも、ものすごい頑張りはわかるが、ちょっとヴィブラートがかかって品格を損なっているし、57小節以下のクライマックスには、もっともっと、巨大さがほしいものだ。
とはいえ、先日のN響への客演といい、スヴェトラーノフの芸術に、あらためて感心した。
これまで日本のレコード・ジャーナリズムが彼について植え付けてきたイメージの狭小さに、驚くというより、あきれてしまう。
エフゲニー・スヴェトラーノフ、まだまだ評価が足りない指揮者である。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」に近代フランスの作曲家リリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」に近代スウェーデンの作曲家ステンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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