音盤狂日録


6月30日(土): 

 jpcからCDが、Parnassus RecordsからLPが届いた。
 なお、前者からは書籍も1冊購入。
 タイトルは"ANTONIO JANIGRO - Musiker mit Leib und Seele"。チェリスト・指揮者アントニオ・ヤニグロの評伝である。

ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮)モスクワ放送チャイコフスキー響、ブルックナー;交響曲第8番(RELIEF)
このコンビがブルックナーを録音するとは意表を突かれた。
しかもノヴァーク第1稿(1887年版)というのだから凝っている。これは聴き逃すべからずとオーダーしたもの。
同時にラフマニノフ;交響曲第2番もオーダーしていたのだが、なんと品番間違いで別なディスクが入っていた。交換できるまで、まだしばらく待たねばならない。(涙)
 
トーマス・ツェートマイヤー(指揮&Vn)カメラータ・ベルン、シェーンベルク;「浄められた夜」&バルトーク;ディヴェルティメントほか(ECM)
ツェートマイヤーも指揮に進出したらしい。
ともあれ、好きなバルトークの新録音ゆえ買わざるべからずとオーダーしたもの。
実は今日の到着分をオーダーしたのは5月初め、国内の輸入盤店に並ぶよりも早く聴けると思いきや、2月近く待たされることになり、既に国内盤も発売済み。(苦笑)
ヴェレシュ;4つのトランシルヴァニア舞曲をフィルアップ。
 
ボリス・ベレゾフスキー(P)トマス・ダウスゴー(指揮)スウェーデン室内管、ベートーヴェン;P協第1・2番ほか(SIMAX)
本国では疾うに発売されているのに、なぜかなかなか国内の輸入盤店に並ばないSIMAXのベートーヴェン;管弦楽曲全集。
ロシアの俊秀ベレゾフスキーを独奏に迎えたP協集の第1巻も、ノルディックサウンド広島には早くから入っていたらしいが、地元の音盤屋には入荷しないので、jpcにオーダーしたもの。
1999年5月の録音で、ロンド変ロ長調をフィルアップ。
 
フランコ・グッリ(Vn)エンリカ・カヴァッロ(P)タルティーニQ、ショーソン;P、Vnと弦楽四重奏のための協奏曲ほか(stradivarius)
見つけ次第買っているショーソンの佳曲、未知の演奏がカタログにあったのでオーダー。
海賊系ライヴ音源の多いレーベルだが、これは1997年のスタジオ録音である。
独奏VnとPは高名なイタリアのソリストだが、四重奏の方はスロヴェニアの団体で、録音場所もリュブリアナである。
同じ作曲家の弦楽四重奏曲をカプリング。
 
スザンヌ・メンツァー(M-S)クレイグ・ルーテンバーグ(P) 「永遠に女性的なるもの」(KOCH)
もちろんゲーテの一節を引用したタイトルで、クララ・シューマンアルマ・マーラーから現存作家まで、11人の女性作曲家の歌曲を集めたアルバム。
となれば斉諧生のお目当てはリリー・ブーランジェ
彼女の歌曲分野の代表作「空のひらけたところ」から3曲が抜粋されている(全13曲中、第6〜8曲)。
 
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮)ストックホルム・フィル、シベリウス;交響曲第5番&ブラームス(シェーンベルク編);P四重奏曲第1番ほか(蘇MELODIYA、LP)
シベリウスの後期交響曲の珍しい盤、しかもオーケストラが北欧の団体とあらば、買わざるべからず。
1979年2月9〜10日、レニングラード・フィルハーモニック大ホールでの録音とある2枚組。
ロジェストヴェンスキーはストックホルム・フィルの首席指揮者を1974〜77年の間つとめており、その関係から、この年のソ連楽旅に帯同したのであろう。
アルヴェーン;牛飼いの娘の踊り歌劇「山の王」より
ショスタコーヴィッチ;バレエ音楽「ボルト」
をフィルアップ。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ放送響ほか、リムスキー・コルサコフ;歌劇「モーツァルトとサリエリ」(米OCEANIC、LP)
レイボヴィッツの珍曲レパートリーの一。
これまで後年の再発盤でしか架蔵していなかったが、ようやくオリジナルのOCEANIC盤を見つけたのでオーダーしたもの。
 
サシュコ・ガヴリーロフ(Vn)ジークフリート・パルム(Vc)オーレル・ニコレ(Fl)ほか、ドビュッシー;3つのソナタ(独WERGO、LP)
ガヴリーロフ教授の未架蔵盤をオーダー。
標記3人のほか、ウルリヒ・コッホ(Va)、ウルズラ・ホリガー(Hp)、マリア・ベルクマン(P)という顔ぶれである。
録音は1966年。

6月29日(金): 

 

ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮)モスクワ放送チャイコフスキー響、チャイコフスキー;交響曲第6番ほか(RELIEF)
ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮)モスクワ放送チャイコフスキー響、チャイコフスキー;交響曲「マンフレッド」ほか(RELIEF)
現在来日中のフェドセーエフと手兵モスクワ放響によるチャイコフスキー全集が、ついに完成。「悲愴」のみならず「マンフレッド」もリリースされたのは目出度い限りである。
このコンビは、いま最も聴き逃せない組合せかもしれない。買わざるべからず。
いずれも1999年の録音とあり、前者には歌劇「ヴェイヴォーダ」より序曲と舞曲、後者には交響的幻想曲「テンペスト」がカプリングされている。
店頭には更に2点が並んでいたが、通販でオーダー中のため、そちらの到着を待つことにした。
なお来日公演スケジュールは→ここを押して。7月7日の京都公演は聴きに行く予定である。
 
イヴァン・フィッシャー(指揮)ブダペシュト祝祭管、ドヴォルザーク;交響曲第8・9番(Philips)
このコンビも聴き逃せないので購入。
2000年2〜3月の録音だが、CDのレーベル面が妙にけばけばしい星条旗デザインになっているのは興醒め。

6月28日(木): 

 digilot.comからCDが届く。
 先日3枚オーダーしたうち、既に1枚は到着(6月10日)、これが2枚目。

ホアキン・アチューカロ(P) ブラームス;P曲集(ensayo)
このところブラームスの後期ピアノ曲を集めているが、一部で高く評価されているアチューカロ盤を漏らせないとオーダーしていたもの。
例えば、オントモ・ムック『クラシック名盤大全 器楽曲』諸石幸生氏曰く
「暮色濃いブラームスの世界が実に感動的に再現されている」
「聴き手は繊細微妙に揺れる作品の表情に心奪われ、涙すら誘われる」
op.117〜119の3曲と、シューマン変奏曲op.9を収録。

6月27日(水): 

 

五嶋みどり(Vn)今井信子(Va)クリストフ・エッシェンバッハ(指揮)北ドイツ放送響、モーツァルト;協奏交響曲K.364ほか(Sony Classical)
Midori久々の新譜はモーツァルト、しかも今井信子との共演とあっては聴き逃せない。
国内盤は先行発売されていたが、輸入盤が出回るのを待って購入。
1777年頃の断片(120小節程度)から復元されたVnとPのための二重協奏曲をカプリング。ピアノはもちろん指揮者の弾き振り。
 
ダヴィード・オイストラフ(Vn)ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮)ソビエト放送響ほか、チャイコフスキー;Vn協&シベリウス;Vn協ほか(BMG)
BMGレーベルが発売していた露メロディアが契約切れか何かですべて廃盤になるそうで、安売りに出ている。
斉諧生的にはあまり食指の動かないものが多かった中で、CDでは架蔵していないオイストラフの名演を見つけたので購入。
いずれもLP時代、耳に胼胝ができるほど聴いた、いわゆる「刷り込み」の演奏である。
チャイコフスキーが1968年、シベリウスが1965年の録音である。
もっともオイストラフの演奏としては、オーマンディと共演した旧盤(Sony Classical)の方が上出来といわれるが。
なお、シベリウスの余白に収められていた2つのユモレスクop.87がフィルアップされており、これも懐かしい。

6月26日(火): 

 

「復活・スルヤ演奏會'97」(中原中也記念館)
某BBSチャイコフスキー;「舟歌」のことが話題になった。
ふと思い出して、
「中原中也が古歌『ひさかたの光のどけき春の日にしづこころなく花の散るらん』を、この曲にのせて歌っていたらしい」
と書き込んだところ、管理人かとちぇんこさんが調べてくださった。
で、御紹介いただいたのが、中原中也記念館のページ。→ここを押して
ふうん…と思ってみていたら、収録曲の中に、なんと
夕照/大岡昇平 作曲・伴奏譜 青 英権
というのが挙がっている。これには吃驚した。
作曲の事情は『大岡昇平 音楽論集』(深夜叢書社)に詳しいが、かいつまんで申せば次のとおり。
大岡と中也は小林秀雄を通じて知り合い、昭和初年、よく会っていた(大岡は1909年、中也は1907年生まれ。20歳過ぎの頃になる)。
中也の死後、1944年フィリピンへ出征した大岡は、歩哨に立ったある夕暮れ時、「夕照」の詩を思いだして、「勝手な節をつけて、口ずさんだ」。
後年、病後の暇つぶしに作曲法を習った大岡が、ふと思い立って、そのメロディを記録しピアノ伴奏を加えた(ピアノ・パートには、大岡の作曲の師 青氏が修正を加えている)。
大岡ファンの斉諧生としては、彼の曲を聴けるとあっては見逃すことはできない。ただちに記念館へオーダーの葉書を送ったところ、折り返し送品されたもの。当日(平成9年9月23日)のプログラムも同封されていた。
代金は、着後に郵便振替で1,700円(送料とも)を払い込む方式である。

6月25日(月): 日帰りで東京出張。蜻蛉返りで打ち合わせがあるため、演奏会はおろか知人とのオフミーティングもままならず。(T_T)
 わずかに新宿駅そばの某外資系大型輸入盤店で20分ほど、買い物することができたのみ。

パオロ・ベスキ(Vc) バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(BOMBA)
イル・ジャルディーノ・アルモニコのメンバー、ベスキのバッハ。
新譜のときには見送ったのだが、けっこう良い評価も目にするので(例えば文春新書『クラシックCDの名盤』での福島章恭氏の評)、見つけたら買おうと考えていた。
地元の音盤屋では見かけなくなっていたところ、2枚組の全曲盤が棚にあったので購入。
録音は1996年3月から1998年4月に及び、楽器も第1〜5番と第6番で使い分けているが、後者が五弦のものかどうかについては明記されていない。
 
パオロ・パンドルフォ(Gamb) バッハ;無伴奏Vc組曲(Gamb編、全曲)(GLOSSA)
バッハのVc組曲をもう1セット、こちらも「パオロ」氏。
パンドルフォはガンバ・ソナタの名演(HMF、リナルド・アレッサンドリーニ)があり、無伴奏も既に第4番を録音していた(GLOSSA)。
彼のバッハならば聴き逃せないので購入。6曲とも新録音である(2000年10月)。
演奏者自身によるヴィオラ・ダ・ガンバ用の編曲で、ブックレットの解説によれば、次のように移調したほかオクターヴ移動も行っているとのこと。
第1番 ハ長調(原曲;ト長調)
第2番 ニ短調(原曲同じ)
第3番 ヘ長調(原曲;ハ長調)
第4番 ト長調(原曲;変ホ長調)
第5番 ニ短調(原曲;ハ短調)
第6番 ニ長調(原曲同じ)
 
アリス・アデル(P) ドビュッシー;前奏曲集第2巻・子供の領分ほか(pianovox)
先だってAlapage.comから取り寄せたアデルの独奏盤が国内の音盤屋の店頭にも並ぶようになった。
地元の店で見つからなかった前奏曲集第2巻があったので購入。
2000年8月の録音。

6月17日(日): 

 東京都交響楽団@京都コンサート・ホールを聴く。
 ジャン・フルネの来演とあっては聴き逃すことはできない。昭和62年9月16日に同じ都響を率いて入洛したときの幻想交響曲の名演には忘れられないものがある。

今日の曲目は、
ベートーヴェン;序曲「エグモント」
ドヴォルザーク;Vc協(Vc独奏;古川展生)
ブラームス;交響曲第3番
というもの。
フルネのドイツ音楽というのは初めて聴くように思う。
パレーモントゥーがベートーヴェンやブラームスで遺した名盤のような演奏を期待したいところだ。
 
「エグモント」の冒頭から吃驚。
フルネの棒が下りてもすぐに音が出ない!
一瞬の「ため」からズシリという音が鳴り渡ったのである。
続く弦合奏の響きも実に渋く、思わず鳥肌が立った。
フランス系指揮者のベートーヴェンというと、明るめの音・早めのテンポでビシビシと決めどころを決めてゆく…というイメージなのだが、今日のフルネは逆にドイツ人指揮者を思わせるような、正統的なベートーヴェンであった。
とはいえ、細部では、音価の扱いなど慣習や勢いに流されない明晰さが光る。
内声の充実ぶり、金管のカロリーやクライマックスの迫力も申し分なく、見事なベートーヴェン演奏。
最後の最後でトランペットが音を崩したのは玉に瑕だったが。
 
ドヴォルザーク;Vc協では、初めて実演を聴く古川氏のチェロが楽しみだったが、これは少し期待外れ。
熱演ではあったようだが、思ったよりも柄の小さいチェロで、音量・テンション・盛り上がり、いずれも物足りなさを感じた。
フルネの指揮は、第1楽章のコーダなど迫力十分、むしろオーケストラに聴き応えがあった。
とりわけ第2楽章での歌心溢れる呼吸に感心した。ソリストとの同期が今ひとつ取り切れていなかったが…。
特に木管が良く聴こえ、ドヴォルザークの工夫を凝らしたオーケストレーションを楽しむことができた。
また、第3楽章でのヴァイオリン・ソロ(矢部達哉)も素晴らしい聴きもの。
なお、この曲では、棒の振り下ろしとオーケストラの発音がほぼ同時。
もっとも終了と同時に「ブラヴォー」の嵐と熱烈な拍手。あるいは斉諧生の座席(3階右側のバルコニー)が悪かったのか。
アンコールにタゲール;フラメンコ組曲より第3楽章
 
休憩後のブラームスでは、1曲めのベートーヴェンの響きが戻るかと思いきや、当てが外れた。
比較的早めのテンポで、誠実に・淡々と音楽を奏でてゆく…といった趣。
中間の2つの楽章など、オーケストラの美しい響きともども爽やかな雰囲気だったが、今一歩、突き抜けたものがほしいと思ったのも正直なところだ。
十数年前の幻想交響曲では、いわゆる「平凡の非凡」を感じさせられて興奮したが、今日のブラームスはその手前で終わった印象である。
これは曲が地味な第3番というのも影響したかもしれない。こうしたアプローチならば、第4番の方が、音楽の書き方からして、自然と盛り上がったと思う。
 
アンコールにモーツァルト;歌劇「フィガロの結婚」序曲

 

ジャン・フルネ(指揮)東京都響、ベートーヴェン;交響曲第3番「英雄」(fontec)
これは演奏会場のロビーで購入したもの。店頭にはまだ並んでいないようだ。
最近のフルネの録音はいずれも見逃せないので購入。
開演前に買ったのだが、上記のように今日の「エグモント」序曲が素晴らしい出来映えだったので、これにも大いに期待したい。
2000年5月23日、東京芸術劇場での収録とあるが、ライヴとは表記されていない。
 
飯守泰次郎(指揮)東京シティ・フィル、ブルックナー;交響曲第3番(fontec)
以下2枚は帰りがけに寄った音盤屋で購入。
飯守のブルックナーは最初に出た第4番が素晴らしかったので、これも「是非盤」と買い求めた。
2001年1月18日、東京文化会館での収録。ライヴとは表記されていないが、解説には「第147回定期演奏会の記録」とある。
ノヴァーク第3稿を使用。
 
ヘンク・ヴァン・トウィレルト(バリトン・サキソフォン) バッハ;無伴奏Vc組曲(サキソフォン編曲、全曲)(ERASMUS)
バッハ;無伴奏Vc組曲のサキソフォン版といえば、清水靖晃盤(Victor)がTV−CMにも使われて有名になったが、これは更に大型のバリトン・サキソフォン使用というところが凄い。
この曲集の編曲ものには、どうにも興味を惹かれてしまう。2枚組で廉価盤1枚分という値段にもほくそ笑みながら購入。
奏者は1959年生、アムステルダム・サキソフォン四重奏団等のメンバーとして活躍しているという。姓の原綴はTwillert、↑の片仮名表記には自信がない。

 今日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。
 また、昨日到着したLPの情報を、ステーンハンマル・作品表とディスコグラフィパレー・ディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィガラグリ・ディスコグラフィペレーニ・ディスコグラフィに追加。


6月16日(土): 

 Ars AntiquaMikrokosmosからLPが届いた。

モーリス・アブラヴァネル(指揮)ユタ響、シベリウス;交響曲全集(米VANGUARD、LP)
アブラヴァネルのシベリウスは今のところあまり高く評価してはいないが、それでもLP期の全集録音は貴重である。
CDでは架蔵済みながら、1977年5月のアナログ録音ゆえ、LPでもとオーダーしたもの。
 
アントニオ・ヤニグロ(指揮)ザグレブ・ソロイスツ、弦楽合奏名曲集(加RCA、LP)
このところ気になっているヤニグロの指揮盤。
モーツァルト;ディヴェルティメントK.136
ブリテン;シンプル・シンフォニー
を収録しており、いずれも大好きな曲なのでオーダーしたもの。
そのほかに
クープラン;演奏会用小品
コレッリ;合奏協奏曲Op.6-4
をカプリング。クープランではヤニグロがソロを弾いている。
 
カール・フォン・ガラグリ(指揮)ティヴォリ響、ニルセン;小組曲(丁FONA、LP)
逸匠列伝記載のガラグリの未架蔵盤と勢い込んでオーダーしたが、届いてみれば日VOX盤LPに収録されていた架蔵済み音源。
10インチ盤の上、モノラルなので(元来はステレオ録音)、更にがっかりなのだが、ちょっと聴いてみたところ音質は上乗。これでステレオ盤ならもっと素晴らしかったろう。
片面には同じ作曲家の室内楽曲、かいなきセレナードを収録。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)ベルナール・トマ室内管、ヴィヴァルディ;「四季」(仏ARION、LP)
かねて蒐集しているヴァイオリニスト、カントロフの未架蔵盤がカタログにあったのでオーダー。
1970年代前半、まだ「将来有望な若手」だったころの録音である。彼の端正な美音はバロック系の音楽では一層美点を発揮するので期待している。
 
ティボール・ヴァルガ(Vn&指揮)ハンブルク室内管、モーツァルト;Vn協第5番ほか(加Oxford、LP)
これもかねて蒐集しているヴァイオリニスト、ヴァルガのLP。
標記の曲のほか、アダージョとフーガK.546アダージョK.261ロンドK.373を収録している。
これらはCDでもリリースされており、LPで買い直すつもりでオーダーしたのだが、届いてみると、オーケストラ名の表記がいつもの「シオン・ティボール・ヴァルガ音楽祭管」とは異なっている。
もっともレコード会社はカナダだし、造りもかなり粗っぽい盤なので、はたして正確な表記をしているのかどうか、不安が残る。
いずれ聴き比べ等してみて確認したい。
 
ヴィクトル・シエレル(P)カール・フォン・ガラグリ(指揮)デンマーク国立放送響、ベートーヴェン;P協第5番「皇帝」(米Mercury、LP)
これも逸匠列伝記載のガラグリ。
こちらは紛れもない未架蔵音源で、初めて聴くベートーヴェン演奏ゆえ、歓喜また歓喜である。
ピアニストはデンマーク生まれ、イグナツ・フリードマンアルトゥール・シュナーベルに学んだとか。
 
ハンス・ヴェスターマイヤー(P)ハンス・ロスバウト(指揮)バイエルン放送響、ウェーバー;コンチェルトシュトゥック(米Mercury、LP)
ロスバウトの未架蔵盤を見つけたのでオーダー。
米Mercury初期のモノラル盤。ディスコグラフィによれば1950年にリリースされたという。
カプリングは聞いたこともない名前の指揮者によるウェーバーの序曲2曲。
 
ミシャ・エルマン(Vn)ポール・パレー(指揮)ボストン響、チャイコフスキー;Vn協ほか(米Bruno Walter Society、LP)
パレーの指揮盤ゆえオーダー。
音源としては架蔵しているのだが(キング盤CD)、このレーベルは時として音の状態が良いものがあり、見逃せない。
ローレンス・コリングウッド指揮によるバッハ;Vn協第2番をカプリング。
 
ミクローシュ・ペレーニ(Vc)バルトークQ、シューベルト;弦楽五重奏曲(洪HUNGAROTON、LP)
ペレーニの未架蔵盤。
もちろん音源としてはCDで架蔵しているし、元来デジタル録音ではあるが、ペレーニの音盤であるからにはオーダーせざるべからず。
 
ジャン・シベリウスQ、シベリウス;弦楽四重奏曲「親愛なる声」&ハイドン;弦楽四重奏曲ト長調 Op.33-5(芬OKOBANK、LP)
新井淑子さんを第1Vnにいただく弦楽四重奏団のLPがカタログにあり、シベリウスが入っているというのでオーダーしたもの。
1983年、OKOBANKがイタリアの銘器4挺を購入し、それをこの四重奏団に貸与して、演奏旅行と録音が行われた…という事情らしい。
ジャケット裏の解説によれば、FINLANDIAレーベルでも発売されたようである。
 
オーギュスタン・デュメイ(Vn)ジャン・フィリップ・コラール(P) フランク;Vnソナタほか(仏EMI、LP)
この2人は1989年にもフランクを録音しているが(カプリングはマニャール;Vnソナタ)、これは1976〜77年に録音されたもの。
デュメイもアモイヤルやカントロフ同様に蒐集しているヴァイオリニストなのでオーダー。
フランクの珍しい小品「アンダンティーノ・クィエトーソ」ダレイラクの『ギュリスタン』のモティーフによる二重奏曲をフィルアップし、彼のVn曲全集となっている。
クオドラフォニック(4ch)・エンコード盤なのが少し残念。
 
ホセ・ルイス・ガルシア(Vn)ピーター・ウォルフィッシュ(P) ルクー;Vnソナタほか(英GEMINI、LP)
ルクーの音盤は蒐集せざるべからず、即オーダーしたもの。
しかも独奏者はイギリス室内管等でコンサートマスターを務めた名手ガルシア、これは聴き逃せない。
イギリスの現代作曲家ケネス・レイトン(1929〜)の「メタモルフォーゼス」・「ノクチュルヌ」をカプリング。
1970年代初めの録音とおぼしい。
 
ヴェロニク・ボガーツ(Vn)ユージン・デ・カンク(P) ルクー;Vnソナタ&ブラームス;Vnソナタ第1番(白ASLK、LP)
これまたルクーの未架蔵盤、即オーダー。
弾き手はベルギーの女性ヴァイオリニストというから期待したくなる。
ボガーツは1955年生、1980年頃の録音だから、まだ若い時分である。
 
ミルセア・サウレスコ(Vn)ヤーノシュ・ソリュオム(P)ほか、ステーンハンマル;Vnソナタ・3つの幻想曲(瑞EMI、LP)
貴重なステーンハンマルの音源が手に入った。
1965〜66年頃の録音で、両曲とも斉諧生架蔵の音盤では最も古いものになる。
ステーンハンマルのスペシャリストと言ってよいソリュオムがピアノを担当しているのも嬉しい。
3つの幻想曲はブリタ・ヨルトというピアニストが演奏している。
 
「スウェーデンの音楽第1集 9人のスウェーデン人作曲家」(瑞CAPRICE、LP)
ステーンハンマルの未架蔵音源か?と勢い込んでオーダーしたが、アーヴェ・テレフセン(Vn)スティーグ・ヴェステルベリ(指揮)スウェーデン放送響による2つのセンチメンタル・ロマンス第1番が収録された、既発音源のオムニバスものであった。
ただし、「スウェーデン音楽小史」という小冊子が付属していたのは儲けもの。簡単だがまとまったディスコグラフィも掲載されている。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・フィルほか、グルック;喜歌劇「改悛した大酒飲み」(英NIXA、LP)
またまたレイボヴィッツの妙な仕事を発掘。グルックの無名オペラの録音である。
もともとは米Renaissanceレーベルの音源らしい。
 
ライオネル・フレンド(指揮)フランス国立管ほか、ショーソン;歌劇「アーサー王」(MRF、LP)
フランス近代音楽の「トリスタンとイゾルデ」と斉諧生が勝手に呼んでいる、ショーソンのオペラの珍しい盤を見つけたのでオーダー。
"Private Records"とあり正体不明だが、音は美しくしっかりしているし、対訳の冊子も付属している。。
アーサー王をジークムント・ニムスゲルンが歌っているほかは無名の歌手ばかりのようだが、シャンゼリゼ劇場でのライヴ録音らしい。
LP4枚組の第8面にはペドロ・デ・フレイタス・ブランコ(指揮)フランス放送管、ロパルツ;交響詩「アーサー王の狩」ほかをカプリング。

6月15日(金): 

 

カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮)ベルリン・フィル、モーツァルト;交響曲第39番・協奏交響曲K.297b(Sony Classical)
あまり話題にならなかったジュリーニのSony録音の一。
ふと中古音盤屋の店頭で手に取ったところ、ハンスイェルク・シェレンベルガーがK.297bのオーボエを吹いていることに気がついた。
この曲はオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットを独奏楽器とするが、最も目立つのがオーボエ。それをシェレンベルガーが担当しているとあらば聴かざるべからずと購入。
他のソリストも、もちろん全員ベルリン・フィルの楽員(当時)で、アロイス・ブラントホーファー(Cl)、ノルベルト・ハウプトマン(Hrn)、ダニエーレ・ダミアーノ(Fg)という顔ぶれ。
なお、ジュリーニのK.297bは、先日、シカゴ響の自主製作CDに収録されていた。聴き比べれば面白いかもしれない。

6月14日(木): 

 

若松夏美(Vn)小島芳子(Fp) モーツァルト;Vnソナタ集(BIS)
18世紀オーケストラバッハ・コレギウム・ジャパンで活躍しておられる名手・若松さんのソロCDが出ていたので購入。
K.296・376・379・380を収録。

6月12日(火): 

 

イェフディ・メニューイン(Vn)エドワード・エルガー(指揮)ロンドン響ほか、エルガー;Vn協ほか(NAXOS)
先日出版された水越健一『エドワード・エルガー 希望と栄光の国』(武田書店)を読む中で、聴きたくなってきたディスクのうちの1枚である。
もちろん昔から名盤の誉れ高い録音だが(1932年、メニューイン16歳!)、このNAXOS盤の音質が非常に優れているというので買ってみた。
ランドン・ロナルドの指揮によるブルッフ;Vn協第1番をカプリング。
 
ピエール・アモイヤル(Vn)ミシェル・ダルベルト(P)ピエール・デル・ヴェスコーヴォほか、ブラームス;Hrn三重奏曲・Cl三重奏曲(ERATO)
かねて蒐集している演奏家アモイヤルの未架蔵盤を中古格安で発見したので購入。
もちろんアモイヤルはHrn三重奏曲のみの出演。
Cl三重奏ではミシェル・ポルタル(Cl)・フレデリク・ロデオン(Vc)が演奏している。
1978年のアナログ録音ゆえ、いずれLPも入手してみたいものである。
 
小松亮太(バンドネオン)斎藤徹(Cb)黒田京子(P)ほか、「アウセンシァス」(JABARA)
奥座敷同人、工藤さんのピアソラ・ページでも高く評価されているピアソラ・アルバムが中古格安で並んでいたので購入。
ピアソラが完全に消化された上で斎藤の音楽として見事に表現されています。いわゆるピアソラとかタンゴとかを期待して聴くと驚いてしまいますが、素晴らしい内容だと思います。
とのこと(詳しくは→ここを押して)。
収録曲は「ビジュージャ」「コントラバヒシモ」「天使の死」など8曲。
なお、このCDの演奏者のWebpageがある→斎藤徹黒田京子

6月10日(日): 

 digilot.comからCDが届く。
 Yahoo! Classical Music Shoppingは、アメリカ系の通販サイトが一度に検索できる便利なサイトだが、そこを通じて、今回初めて利用してみた。
 捜している3枚のCDについて、いずれも"Usually Ships in 2-4 days"と表示されたのでオーダーしたのだが、どうもこれは当てにならない様子。
 オーダーから20日経って、ようやく1枚だけ送ってきた。

ホアキン・アチューカロ(P) 「夜」(ensayo)
珍しくピアノ小品集を購入。
つとに畏友かとちぇんこさんが熱烈に紹介しておられたディスクである。→ここを押して
自分がほんとうに大切に思う人に--たとえその人が普段クラシック音楽を聴かない人であったとしても--心を込めて贈りたい、そんなアルバムです
いつか聴かねば…と思っていたところ、今回ついでがあったのでオーダーしたもの。
↑のページで絶讃しておられるスクリャービン;ノクチュルヌのほか、ショパングリーグらの同名曲、シューマン;トロイメライドビュッシー;「月の光」、はたまたファリャ;火祭りの踊りなど全18曲を演奏している。

6月8日(金): 

 今日購入した音盤は、いずれも北ドイツ放送響のもの。

オットー・クレンペラー(指揮)北ドイツ放送響、「ハンブルクのクレンペラー」(M&A)
海賊音源が多いので、いつもなら見逃すM&Aレーベルなのだが、ふと手にとって驚いた。
"Issued with the kind cooperation of NDR and EMI."と、正規音源である旨、クレジットされている。
そうならば買わざるべからず。クレンペラーとドイツの一流オーケストラの共演、期待しないわけにはいかない。
2回のコンサートの全曲目をCD3枚に収めている。収録順に、
バッハ;管弦楽組曲第3番
ベートーヴェン;交響曲第7番
モーツァルト;交響曲第29番
(以上1955年9月28日の演奏会から)
モーツァルト;交響曲第40番
ブルックナー;交響曲第7番
(以上1966年5月3日)
北ドイツ放送のオリジナル・マスターテープからのCD化ということで、音質はいずれも良好なモノラル。もちろん1955年の音と1966年のそれを比べると、11年の時の経過は感じさせるが。
しかしブルックナーの7番にモーツァルトのト短調を組み合わせるプログラミングには驚かされた。
 
ギュンター・ヴァント(指揮)北ドイツ放送響、シューベルト;交響曲第8番&ブルックナー;交響曲第9番(BMG)
いわずとしれた昨年11月の来日時のライヴ録音。残念ながら実演に接することは出来なかったが、居合わせた知人達からは絶讃の声を伺っており、ぜひCDで聴いてみたいと購入。
ふだんは国内盤は買わない斉諧生だが、基本としているのは原産地主義。
BMGと北ドイツ放送の共同製作とはいえ、録音スタッフがすべて日本人であることから、この場合は国内盤を買うことになる。
なお、録音データは「11月12〜14日」と記されており、3回の演奏会を編集したものとみられる。
各日の純然たるライヴ録音を3日分、発売してもよかったかもしれない。買う人は買うだろう、…斉諧生も含めて(苦笑)。
 
ギュンター・ヴァント(指揮)北ドイツ放送響、シューベルト;交響曲第8番&ブルックナー;交響曲第9番(BMG、DVD)
もちろん、DVDの方も買ってしまった。(苦笑)
こちらのデータは「11月13日」とあり、編集は行われていない模様。
映像の収録はNHK、通常の中継スタイルの映像のほか、指揮者をオーケストラ側から撮すアングルに固定して見ることもできる。
ブックレットも金子建志氏による充実した解説とヴァントの日本での公演記録という充実したもの。

6月6日(水): 

 amazon.ukからCDが届く。

ダニエル・ホープ(Vn)サイモン・マリガン(P) エルガー;Vnソナタほか(Nimbus)
ダニエル・ホープは26歳、ザハール・ブロン門下で、メニューインからも強い影響を受けたという。
佳曲エルガーのソナタに加えて、音盤の珍しい
フィンジ;エレジー
ウォルトン;Vnソナタ
を収録しており、ぜひ聴いてみたいとオーダーしたもの。
エルガーのソナタは5月31日にビゼンガリエフ盤を購入しているが、それと同じく『レコード芸術』6月号「海外盤試聴記」で水越健一氏が紹介しておられたディスク。
なお、演奏者はともに公式Webpageがある。
ヴァイオリニストは→ここを押して
ピアニストは→ここを押して
 
マラト・ビゼンガリエフ(Vn)ベンジャミン・フリス(P) エルガー;Vn作品集(black box)
↑にも書いた、先日Vnソナタを購入したビゼンガリエフのエルガー、これは第1集に当たる音盤。
『レコード芸術』6月号「海外盤試聴記」での水越健一氏の紹介を読んで、オーダーしたもの。
彫りが甘くなるということがなく実に共感深い演奏
エルガー初期の作品に新鮮な生命力を吹き込んでいる
とのこと、期待高し。
「朝の歌」「夜の歌」「愛の挨拶」といった有名どころから初期の作品まで17曲を収録。
 
アンジェイ・バウアー(Vc)エヴァ・クピエツ(P) シューベルト;アルペジオーネ・ソナタ&ブラームス;Vcソナタ第1番ほか(KOCH schwann)
5月26日にバッハ;無伴奏Vc組曲を購入したバウアー、硬質な音がいい感じで、他の録音も捜してみたところ、これと↓のディスクが見つかった。
特にこちらは、好きなアルペジオーネが入っており、何かの賞も与えられたということなのでぜひ聴いてみたいとオーダーしたもの。
ウェーバー;アダージョとロンド
メンデルスゾーン;無言歌op.109
シューマン;アダージョとアレグロop.70
をフィルアップ。
 
アンジェイ・バウアー(Vc)エヴァ・クピエツ(P) ショスタコーヴィッチ;Vc・ソナタ&プロコフィエフ;Vcソナタほか(KOCH schwann)
これもバウアーのディスクだが、ショスタコーヴィッチのソナタをポーランドのチェリストが演奏するとどうなるか…というところに興味を惹かれた。
ショスタコーヴィッチならば工藤さんのWebpageだが、果たせるかなレビューがあり、
丁寧な演奏で好感が持てるが、今一つ突き抜けたものがない。
とのこと。(→ここを押して)
ちょっと逡巡したが、まあ蒐集の意味も込めて…とオーダー。
ストラヴィンスキー;イタリア組曲をカプリング。

6月3日(日): 

 昨日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。
 また、音盤狂昔録平成13年5月分を追加。


6月2日(土): 

 ロシア・ナショナル管弦楽団@ザ・シンフォニー・ホールを聴く。
 
 元来はエフゲニー・スヴェトラーノフが指揮するというので、彼の雄大なサウンドを生で聴きたいとチケットを購入。
 ところが、既に知られているとおり、急病・緊急手術のため来日中止、全公演をウラディーミル・スピヴァコフが指揮することとなった。
 指揮者が代わったことで、斉諧生の周囲でもキャンセル・払い戻した人がいるし、客席の入りもあまり良くなかったが(6〜7割)、オーケストラへの興味とスピヴァコフの未知数の手腕に期待して出かけた。

今日の曲目は
チャイコフスキー;Vn協(Vn独奏;神尾真由子)
チャイコフスキー;交響曲第4番
というもの。
ロシアのオーケストラでチャイコフスキーを聴くのは、昭和61年のレニングラード・フィル(名称は当時、指揮はマリス・ヤンソンス)の第5番以来だから、実に久しぶり。
 
このホールでは初めて3階バルコニーに席を取った(上手側)。
舞台を見下ろして吃驚。
第1Vnと第2Vnが左右に分かれ、チェロとコントラバスが下手側に位置する19世紀的な配置なのである。ムラヴィンスキーがこのやり方だったのは有名だ。
また山台を用いず、弦楽器・管楽器・打楽器すべてが舞台平面上に席を取っている。
 
Vn協のソリスト神尾嬢は1986年生まれ、まだ14歳だが、既にニューヨークに住んでジュリアード音楽院に通っているとのこと。
公式Webpageは→ここを押して
第1楽章冒頭のモノローグを実にじっくりと、要所ではテンポを落とした弱音で弾いていく。
この「弱音への沈潜」傾向は全曲を一貫しており、演奏の大きな特徴となっていた。
音の鳴り自体も、既に一線級のヴァイオリニストに引けをとらない。
更に良い楽器を得れば超一流の素晴らしい音を響かせてくれるに違いないと思われる。
年齢のことも曲の長さも忘れて聴き入ったが、残念だったのは、モリモリと興奮を煽って手に汗握らせる…という感には乏しかったこと。
今ひとつ「飛翔感に欠ける」思いがしたのである。
あるいは浜松〜名古屋〜福岡〜大阪と移動しながら4日連続でこの大曲を弾き続けるというスケジュールのせいかもしれない…と考えていたのだが、どうだろうか?
 
なお、ソリストのアンコールはなかった。
 
交響曲第4番では、オーケストラも14型のフル編成。
Cbも8本が並んだが、Trpが2人のままだったのには少し吃驚。
第1楽章冒頭の金管のファンファーレが綺麗な和音で鳴り響いた。
ロシアのオーケストラに付き物と思っていた、力ずくの吹奏や金管のヴィブラートは全く見られない。「ロシアで最もジェントル」な団体と評される所以であろう。
 
全体に、オーケストラの安定した上手さには感心した。
西欧の水準に迫るチケット価格設定にもかかわらず、モスクワで高い人気を誇っているというのも理解できる。
こういうオーケストラが我が街にあればなァ…と嘆息。
 
サウンドに「ロシア臭」がないのが良くも悪くも特徴だろう。
チャイコフスキーよりムソルグスキー(ラヴェル編);「展覧会の絵」あたりを聴いてみたい…という気がしたものである。
中でも圧巻はオーボエの若い首席奏者
第2楽章冒頭の長いソロを、実に艶やかな音色で、しかも循環呼吸を用いてフレーズを切らずに、鮮やかに吹ききったのである。
彼(Vladimir Tambovtsevという名前らしい)のソロだけでも聴きに行った値打ちがあったと感じられた。
終演後、拍手に応えて指揮者が真っ先に起立を指名したのも、もちろん彼である。
 
演奏(解釈)もケレン味やハッタリのないもので、スピヴァコフは誠実な音楽運びを聴かせてくれた。
とはいえ果たしてチャイコフスキーにふさわしいアプローチだったかどうか、多少疑問。
例えば第4楽章における運命動機の再現に、迫力・凄惨さが大きく不足していたことは誰しも否定できないのではなかろうか。
正攻法なら正攻法で、もっと圧倒的な演奏もある。
 
ともあれオーケストラのサウンドだけでも、じゅうぶん満足できた演奏で、客席の反応もけっこう熱かった。
アンコールは3曲をサービス。
ブラームス;ハンガリー舞曲第1番
チャイコフスキー;『白鳥の湖』より「ナポリの踊り」
「モスクワ郊外の夕べ」〜「さくらさくら」
アンコールが進むにつれて、楽員の数がだんだん増えていくのが可笑しかった。
なお、ブラームスでは、テンポでずいぶん遊んでいたが、小林研一郎あたりのような「芸」は感じさせてくれない。

 上記コンサート会場でCDを購入。また、北欧音楽ファンの「聖地」ことノルディックサウンド広島からCDが届いた。

ウラディーミル・スピヴァコフ(指揮)ロシア・ナショナル管、ショスタコーヴィッチ;交響曲第5・9番(Well Tempered)
ロシア・ナショナル管と言えばプレトニョフの指揮盤がDGGあたりから多数リリースされているが、これは現・音楽監督にして当夜の指揮者スピヴァコフによるCD。
いずれもモスクワ音楽院大ホールでのライヴ録音で、2000年3・9月の収録とある(どちらの曲が何月かはわからない)。製作はアメリカの会社が行っており、音質はメジャーレーベルのスタジオ録音盤にひけをとらない。
最初はあまり食指が動かなかったのだが、「コンサート会場だけの限定販売」という貼り紙を見ているうちに買いたくなってしまった(自滅)。
もっとも、通販サイトでも買えるようなので、残念至極(笑)。→ここを押して
 
ミハイル・プレトニョフ(指揮)ロシア・ナショナル管ほか、「アンコール!」(RNO)
こちらは正真正銘の自主製作盤。
収録曲は
モーツァルト;序曲「フィガロの結婚」(1993年8月28日、ブレーメン)
チャイコフスキー;「花のワルツ」『胡桃割人形』より(1993年8月28日、ブレーメン)
グラズノフ;「スペインの踊り」『ライモンダ』より(1993年8月28日、ブレーメン)
ブラームス;ハンガリー舞曲第1番(1993年8月28日、ブレーメン)
ワーグナー;「ローエングリン」第3幕への前奏曲(1993年8月28日、ブレーメン)
ショスタコーヴィッチ;舞曲・「ワルツ・ジョーク」バレエ組曲第1番より(2000年1月20日、ニューヨーク)
グリーグ;「山の魔王の宮殿にて」『ペール・ギュント』第1組曲より(1995年2月1日、フロリダ)
リムスキー・コルサコフ;『シェヘラザード』より第4楽章(1995年2月1日、フロリダ)
ドヴォルザーク;スラヴ舞曲第10番(1995年2月1日、フロリダ)
ハチャトゥリアン;「レスギンカ」(1995年2月1日、フロリダ)
ショスタコーヴィッチのみアンドレイ・ボレイコの指揮。
また、R・コルサコフは、ジャケットには誤って「若い王子と王女」と表記されている。
いかにもライヴ録音で、客席の拍手・笑い声等も聴こえる。音質的には↑のショスタコーヴィッチより少し落ちる。
 
スティーグ・ヴェステルベリ(指揮)スウェーデン放送響、ペッテション;「メスト」ほか(Swedish Society)
ここからはノルディックサウンド広島から届いたディスク。
最近少しづつ聴きはじめているペッテション、必ずしもファンではない人も高く評価されている、弦楽合奏のための「メスト」を聴いてみようとオーダー。
元来、弦楽のための協奏曲第3番として、1956〜57年に作曲された約50分の曲の、時間にして半分ほどを占める緩徐楽章を取り出したもの。
1952〜53年にパリで作曲された交響曲第2番をカプリング。当時ペッテションはルネ・レイボヴィッツのもとで学んでいた。
「メスト」は1961年11月、交響曲は1966年3月の録音である。
 
トルルス・モルク(Vc)ヨアフ・タルミ(指揮)オスロ・フィル、ヌールハイム;「テネブレ」ほか(AURORA)
モルクの録音は全点蒐集すべしと、ディスコグラフィ掲載の未架蔵音源をオーダーしたもの。
ヌールハイム(1931〜)はノルウェーの現代作曲家、「テネブレ」は1982年、ロストロポーヴィッチのために書かれ、彼が初演したとか。
アムステルダム・コンセルトヘボウ管創立100年記念の委嘱作で、1988年12月8日にネーメ・ヤルヴィと同管が初演した「マグマ」をカプリング。
1991年1月2〜4日の録音。
 
フランス・ヘルメルソン(Vc) バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(Chamber Sound)
上記モルクの師であり、BISやCHANDOSに録音の多いヘルメルソンのバッハが出ているというので期待を込めてオーダーしたもの。
WWW上では、既にWOODMANさんのレビューが公開されおり(→ここを押して)、
これほどまでに繰り返して聴きたくなる演奏というのは初めて
枯れた音(中略)が、昨今の古楽器奏者の演奏で聞き慣れた、柔らかなガット弦の音色とはまったく違う力強さを持っています。
とのこと、ますます期待高し。
1998年3月29〜31日と1999年11月18〜21日の録音。

平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。

平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。

平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。

平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。

平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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