音盤狂日録


7月30日(月): 

 先日到着した音盤の情報を、ステーンハンマル・作品表とディスコグラフィリリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。


7月28日(土): 

 jpcAlapage.comノルディックサウンド広島など、あちこちから(笑)音盤が届く。

ハインツ・ワルベルク(指揮)デュイスブルク響、ブルックナー;交響曲第8番(confido)
jpcのカタログにブルックナー;第8の未架蔵盤があったのでオーダー。
指揮はN響によく登場するワルベルク、ジャケットの内側にもN響でブルックナーを振っている写真が掲載されている。
1996年5月7〜9日、デュイスブルクのメルカトール・ハレでのライヴ録音。ワン・ポイント・マイクによる収録とのこと。
CD2枚組、版については明記されていないが、ざっと聴いた感じではノヴァーク第2稿の模様。余白にアダージョのリハーサル風景が収められている。
それにしてもデュイスブルク響とは初耳…と思ったが、ブックレットによると歴代指揮者は、ゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフムヴァルター・ヴェラーミリティアディス・カリディスローレンス・フォスターアレクサンドル・ラザレフブルーノ・ヴァイル…と、なかなかの顔ぶれ。
また、公式Webpageが見つかった。→ここを押して
 
パーヴォ・ベリルンド(ベルグルンド)(指揮)ヨーロッパ室内管、ブラームス;交響曲全集(Ondine)
ベリルンドとヨーロッパ室内管のコンビがブラームス全集を録音。あの見事なシベリウス演奏からして期待せざるべからず、慌ててOndineレーベルの公式Webpageに直接オーダーしたが(アンケート・フォームから申し込み、カード番号等はFAX送信)、こちらの手違いなどで手間取り、かえって国内の音盤屋より遅くなってしまった。(^^;;;;
同レーベルの社長インタビューがタワーレコードの広報誌に掲載されており、それによれば、
オンディーヌのプレゼンスを高め、シェアを拡大するためには、日本の音楽ファンの嗜好をくんだ特別プロジェクトを投入していきたいと考えている。
とのことで、このリリースはそのテストケースとのこと。
ブラームスの交響曲演奏については木管楽器の存在感が死命を決する面もあり、弦合奏を小さめにしたこの録音には大いに期待したい。
2000年5月11〜14日、ドイツのバーデン・バーデンでのライヴ収録。
 
ヤン・シベリウス(指揮)フィンランド放送管ほか、シベリウス;アンダンテ・フェスティーヴォほか(Ondine)
今回初めて一般発売された、「正真正銘の」シベリウス自作自演。1939年1月1日に収録されたもの。
この曲の自演は、これまでにもFinlandiaレーベルなどからも発売されていたが、それは別な指揮者の演奏だったという。このあたりの詳細は、ノルディックサウンド広島のWebpageに詳しい。→ここを押して
↑の記事にもOndineからの発売計画について触れられているが、このほどようやく実現したもの。ベリルンドのブラームス同様、Ondineレーベルの公式Webpageに直接オーダー。
アルマス・ヤルネフェルト(作曲家の義弟)による交響曲第6番の収録が実現しなかったのは、好きな曲だけに残念。
ヨルマ・パヌラ(指揮)フィンランド放送響、カヤヌス;交響詩「アイノ」をカプリング。カヤヌスはシベリウス作品の指揮者としても著名だが、この曲は逆にシベリウスに大きな影響を与え、叙事詩『カレヴァラ』を題材とした作曲について目を開かせたという。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)モーリス・ブールグ(Ob)ケース・バケルス(指揮)オランダ室内管ほか、バッハ;Vn&Ob協ほか(JDRI)
『レコード芸術』8月号を読んでいて、カントロフの未架蔵盤の復刻を知った(326頁)。
発売元の日本ダブルリードに直ちにメールを送り、オーダーした。代金は折り返し郵便振替で払い込み(送料ともで2,340円)。
元来は、DENONレーベルのLPで1982年7月21日に発売されたもの。カプリングはFl、Vn&Cem協BWV.1044で、こちらは復刻されていない。まあ趣旨が「モーリス・ブルグの美学」だから仕方ないのだが。→ここを押して
ルドルフ・バウムガルトナー(指揮)によるブランデンブルク協第1・2番と、ハインツ・ホリガー(Ob)らとのヘンデル;トリオ・ソナタをカプリング。
 
ローラン・コルシア(Vn)ソニア・ヴィダー・アサートン(Vc)パスカル・ロフェ(指揮)ロレーヌ・フィル、カナ・ド・シジ;Vn協&Vc協ほか(timpani)
名前の読みも知らない(原綴はCanat de Chizy)、1950年リヨン生まれの作曲家の作品集(ちょっと田中真紀子外相似)。Vn協は1995年、Vc協は1998年の出版に係るもの。
コルシア、ヴィダー・アサートンと贔屓の独奏者ゆえに購入。
なお、作曲家はソルボンヌ大で考古学と哲学を学び、パリ音楽院に転じてマレツやオハナに師事した人とか。
 
ソニア・ヴィダー・アサートン(Vc)ナターリャ・シャホスカヤ(Vc) 「モンテヴェルディから始めて」(BMG)
斉諧生はチェリストの中でも、寂びのきいた硬質な音色の持ち主を偏愛している。アサートンもその一人。
このCDは、彼女の公式Webpageでリリース情報に接していた。なかなか国内の輸入音盤店には並ばないので、↑のtimpani盤同様、Alapage.comにオーダーしたもの。
モンテヴェルディの種々の声楽曲を2本のチェロとバス声部で演奏し、その間々にクルタークベリオデュサパンデュティユドナトーニといった現代作曲家の無伴奏チェロ曲を挟んでいくという、なんとも凝った構成である。
現代曲はすべてアサートンの独奏により、モンテヴェルディでは恩師・シャホスカヤが共演、バス声部はアサートンが多重録音で入れている。
斉諧生的には冒頭にモンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」から「2人のセラピムが」を演奏しているのが嬉しいところ。
 
ヘレネ・シュナイダーマン(M-S)エミール・ナウモフ(P)ヘルムート・ヴォルフ(指揮)シュトゥットガルト・フィルハーモニア合唱団 「リリー・ブーランジェの周辺」(SAPHIR)
リリー・ブーランジェの新譜! これが買わずにいられようか!!
しかも未出版の合唱曲3曲を世界初録音!!!
すなわち「灌木 "Sous-bois"」(1911年)、「嵐 "La tempête"」「みなもと "La source"」(以上1912年)。
そのほかピアノ伴奏の独唱曲・合唱曲あわせて6曲を収める。
また、姉ナディア・ブーランジェの作品2曲とナウモフの自作コンチェルト・サクレを収録。
特に、ナディアの曲の片方は、第一次世界大戦のために未完に終わった歌劇「死の都」から第2幕への前奏曲をピアノ独奏で演奏したもの。非常に興味深い。
2000年3月19日、シュトゥットガルトでのライヴ録音とのこと。
このCD、実は昨年暮れにWeb上の知人(パリ在住)から発売をお知らせいただいていたのだが、やはり輸入音盤店には入ってこないし、なかなか通販サイトにも現れないので焦っていた。ようやくAlapage.comでオーダー。
 
トゥルライフ・テデーン(Vc) バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(BIS)
新譜のときにちょっと高めの価格だったので見送ったテデーンのバッハ、Berkshireあたりに出てこないか待っていたのだが、そううまくはいかない。(苦笑)
jpcで見てみたら、約60ドイツ・マルク(邦貨約3,300円)と割安だったのでオーダー。
北欧のチェリストによるバッハは、ぜひ聴いてみたいもの。
 
セミー・スタールハンメル(Vn)マルクス・レオソン(マリンバ) 「マリンボリーノ」(nosag)
音の美しさとセンスの良さに惚れ込んで、ずっと追い掛けているヴァイオリニスト、スタールハンメルの新譜をノルディックサウンド広島にオーダーしていたもの。
サラサーテ;スペイン舞曲集(抜粋)以外は未知の現代曲ばかりで、中にはジャズ的なものもあるようだが、彼のヴァイオリンは聴き逃せない。
マリンバ奏者もスタールハンメル同様、ストックホルム王立歌劇場管のメンバー(ソロ・ティンパニスト)とのこと。
 
ユリアーネ・バンゼ(Sop)ヴォルフラム・リーガー(P)ペーターゼンQ、ルクー;歌曲集&ショーソン;果てしなき歌ほか
jpcでルクーの未架蔵盤を発見したのでオーダー。
ブーレーズマーラー;交響曲第4番に起用されたバンゼが、「夜想曲」「断片」を、ピアノと弦楽四重奏を従えて歌う。
ショーソンの佳曲も嬉しい収録。
メインはペーターゼンQによるミヨー;SQ第1番&ラヴェル;SQだが、その間にルクーとショーソンが収められている。
 
レオポルト・ハーガー(指揮)ミュンヘン放送管ほか、オネゲル;「ダヴィデ王」(Orfeo)
先だってから何回か触れている大野恵正『聖書と音楽』(新教出版社)で、この曲が大きく取り上げられていた。
音楽はドイツ的な骨格を持ってキビキビとし、その一方でフランス音楽の香りに溢れている。
 旋律は斬新でしかも独特の香りを放ち、その響きは若々しく、(中略)管弦楽法は鮮やかな光を放つ
オネゲルは交響曲などよく聴くので、これも耳にしておきたいと思い、大野氏が推奨されるハーガー盤をjpcにオーダーしたもの。

7月26日(木): 

 

ヴァーツラフ・フデチェク(Vn)イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮)チェコ・フィル、ドヴォルザーク;Vn協ほか(東芝EMI)
長く探求していたCDを中古音盤屋で見つけたので狂喜して購入。
実をいえば、フデチェクにはスークの後継者になり損ねた人という冴えない印象しかないのだが、この演奏については渡辺和彦『ヴァイオリン/チェロの名曲名演奏』(音楽之友社)で、スーク五嶋みどりツィンマーマンと並んで取り上げられ、「美しい演奏をしている」と評価されている。
いちど聴いてみたいと捜し始めたのだが、スメターチェクとの旧録音はよく見かけるのに、この新録音(1988年)は早く廃盤になったのだろう、ずっと見つからなかったのである。
同じ作曲家によるVnと管弦楽のためのロマンスマズルカをフィルアップ。

7月23日(月): 

 

ファビオ・ルイジ(指揮)スイス・ロマンド管、オネゲル;交響曲全集ほか(ESPACE2)
オネゲルの交響曲はデュトワの全集などで親しんできて、けっこう好きな曲である。
この盤も、WOODMANさん@ユビュ王の食卓CD雑記帳で紹介しておられ、気になっていた。
そのルイジが昨22日にNHK響を率いてザ・シンフォニーホールに来演。斉諧生は本業で出張して聴きに行けなかったのだが、家人によれば、ストラヴィンスキー;火の鳥など、非常に良かったとのこと。
これはやはり…と退勤後に立ち寄った音盤屋で購入。
 
ウノ・フェルンクヴィスト(Ten)ほか、名唱集(Bluebell)
Swedish Music Shopでステーンハンマルの未架蔵音源を見つけたのでオーダー。
CD1枚の中に1曲だけだが、「バラード(Stolts Adelin)」歌曲集「歌と唄」よりが歌われている。おそらく、この曲唯一のCDであろう。
フェルンクヴィストは1928年生まれ、ビョルリンクゲッダがいなくなった後、1960年代のストックホルム王立歌劇場で重要な役割を果たしたリリック・テノールとのこと。
「ラ・ボエーム」「運命の力」「ルチア」のアリアなどが収録されている。

7月21日(土): 『音楽現代』8月号で、「編集部お薦めのホームページ」として取り上げていただいた。紹介文の内容には少々面映ゆい部分もあるが(^^;、とにもかくにも感謝の意を表したい。

 Ars AntiquaからLPが届いた。

ピエール・モントゥー(指揮)ボストン響、スクリャービン;交響曲第4番「法悦の詩」&リスト;交響詩「前奏曲」(米RCA、LP)
モントゥーの初期盤LPが安く出ていたのでオーダーしたもの。ディスコグラフィによれば、いずれも1952年12月8日、カーネギー・ホールでの録音。
音源としては、両曲とも既にBMGの"Pierre Monteux Edition"でCD化されている。
 
ヤン・エキエル(P)ヴィトルド・ロヴィツキ(指揮)ワルシャワ国立フィルほか、シマノフスキ;交響曲第4番ほか(米BRUNO、LP)
蒐集している曲の未架蔵LPが安く出ていたのでオーダー。ジャケットは米盤だが、中味はポーランド製のMUZA盤なのが妙な感じである。
もっとも一昨年にCD化されているので音源としては架蔵済み。オリジナルのLPで入手できたことに意義がある。
カプリングは同じ作曲家の交響曲第2番で、こちらはグレゴル・フィテルベルク(指揮)ポーランド放送響の演奏。
 
ネーメ・ヤルヴィ(指揮)ヨェーテボリ響、ステーンハンマル;管弦楽のためのセレナード(瑞BIS、LP)
もちろんCDでは架蔵済み、デジタル録音だからそれでよいのだが、ステーンハンマルの場合は、LPが出ているのならそれも持っておきたくなる。(苦笑)
もちろん格安盤。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)コンセール・パドルー管ほか、バッハ;アリアほか(西CID、LP)
レイボヴィッツのバッハ! 吃驚してオーダー、現物を見てまた吃驚。
スペインの妙なレーベルで、1枚のLPにバッハ、ボッケリーニ、モーツァルト、ベートーヴェンが詰め込まれている。すなわち、
ジョルジュ・プレートル(指揮)パリ放送響、ボッケリーニ;メヌエット
ジョルジュ・セバスチャン(指揮)シュトゥットガルト・フィル、モーツァルト;交響曲第38番「プラハ」
テレサ・ヘルツォーク(Vn)ラインハルト・ランパルト(P) ベートーヴェン;Vnソナタ第5番「春」
という、理解しがたい(笑)組合せ。
レイボヴィッツがバッハをどう料理しているのか興味津々で聴いてみたが、極めて素直な演奏であった。対位法をきっちり押さえているところが彼らしいところだ。
 
アルト・ノラス(Vc)オッコ・カム(指揮)ヘルシンキ室内管ほか、ハイドン;Vc協第1番ほか(芬finnlevy、LP)
ノラス師匠のLP、買わざるべからず。
カプリングはコッコネン;Vc協(1969)、こちらはポール・フリーマン(指揮)ヘルシンキ・フィルの付け。
既にFINLANDIA盤LPも架蔵しているが、おそらくこちらがオリジナルの筈。カッティングの様子も異なり、聴き比べたところ、やはり音の鮮度は今回の盤が明らかに上。(^^)
 
ツァバ・オンツァイ(Vc)アンタル・ヤンチョヴィッツ(指揮)ハンガリー放送管、シューマン;Vc協&ラロ;Vc協(洪HUNGAROTON、LP)
ブダペシュト・リスト音楽院の名教授、オンツァイのLPを見つけたのでオーダー。彼は前にNAXOS盤CDでバッハやベートーヴェンを聴いており、よこしまな自己主張のない音楽に好感を持った。
特にシューマンで渋いものが聴けるのではないかと期待している。
彼には公式(?)Webpageもあり(→ここを押して)、少々老けた画像が掲載されているが(笑)、LPのジャケットの写真はかなり若い(録音データ不詳)。
 
フリーデル・ラック(Vn)ジークフリート・ケーラー(指揮)ベルリン響ほか、シマノフスキ;Vn協第2番・Vnソナタ(米VOX、LP)
斉諧生は、シマノフスキの作品の中では交響曲第4番と、このVn協第2番が優れていると思う。
どうも録音に恵まれない曲なので、見つけたら買うようにしているところ、未知の演奏がカタログに出ていたのでオーダー。1980年の録音。
Vnソナタは1982年の録音で、アルバート・ハーシュ(P)が共演している。
ヴァイオリニストの経歴について詳しいことはわからないが、アメリカ出身でニューヨークやヒューストンで活動している模様。アンチェルバルビローリシュミット・イッセルシュテットらとも共演しているとか。
 
アーヴェ・テレフセン(Vn)レイフ・セーゲルスタム(指揮)スウェーデン放送響ほか、アウリン;Vn協第3番ほか(瑞EMI、LP)
隠れた北欧の佳曲として知る人ぞ知るアウリンの名演として、これまた知る人ぞ知る名盤。
ずっと捜してきたが、ようやく見つけてオーダー、目出度く入手できた。今日届いた中では一、二を争う収穫だ。
曲については、小林さん@NORDIC FORESTが美しく描写しておられる。→ここを押して
カプリングはVnとPのための作品で、これまた美しい4つの水彩画ゴットランド舞曲。最近指揮者として活躍しているヨーラン・ニルソンがピアノを弾いている。
 
ダグ・アシャーツ(P)ウルフ・ビョーリン(指揮)ノルショピング響ほか、バルトーク;P協第3番ほか(瑞EMI、LP)
ソリストの名前がカタログになかったので、あるいはヤーノシュ・ソリュオムかと見当をつけてオーダーしたら、最近はBISあたりに録音しているアシャーツだったので吃驚。
カプリングが面白く、ストラヴィンスキーの声楽曲「ディラン・トマスの追憶に」「ジョン・F・ケネディのためのエレジー」「T・S・エリオット追憶」という並び。
更にブー・ニルソン;「レヴュー」をフィルアップ。
 
ボルツァーノ・トリオ、ピツェッティ;P三重奏曲ほか(米Music Guild、LP)
ピツェッティの作品は有名なレクイエムをはじめ、Vnソナタや、この曲が美しく、かねて好んでいるところ。
あまり録音は多くなく、未知の音源がカタログにあったのでオーダー。
同じくイタリアの新古典派、ゲディーニ7つのリチェルカーレをカプリング。
 
マンフレード・グレースベク(Vn)マイヤ・レヘトネン(Org) Vn名曲集(芬MILS、LP)
フィンランドのユニークなレーベル、MILSのLPが出ていたのでオーダー。CDは何枚か架蔵しているがLPは初めて見た。
このレーベルを扱っているのはノルディックサウンド広島くらいだとおもうが、そのWebpageにカタログが掲載されている。→ここを押して
この冬に来日するアコーディオン奏者ミカ・ヴァユリネン展覧会の絵ラフマニノフ;ヴォカリーズは音楽ファン必聴の名盤だと信じるが、それ以外にも面白い盤が多い。
これはヴァイオリンとオルガン(それも聖堂の大オルガン)の共演という妙な企画で、
ヘンデル;Vnソナタ イ長調op1-14はともかく、
クライスラー;プニャーニのスタイルによる前奏曲とアレグロをオルガン伴奏で演奏しているのは珍しいというのを通り越しているかもしれない。(^^;;;;
シベリウス;レリジオーソ op.78-3やサンサーンスの小品、現代作品を収録している。
1986年2月9日、トゥルク大聖堂でのデジタル録音。
 
エフゲニー・スヴェトラーノフ(P) メトネル;P作品集(露MELODYA、LP)
もちろんピアニストは、あの指揮者である。
メトネルといえば、その昔、ウォルター・レッグフィルハーモニア管を組織したとき、インドのマハラジャ(本物)が、メトネルの作品を録音することだけを条件に莫大な資金を提供した、という逸話しか知らなかった。
最近、この作曲家が「静かなブーム」になっているようで、ファンのページもできている。→ここを押して
そのメトネルの隠れた佳演と評判のスヴェトラーノフ盤を見つけたのでオーダー。
なおピアニストとしての彼にはラフマニノフのP三重奏曲とVcソナタの録音もあり、前者は架蔵済み、後者を探求中である。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮)ベルリン・フィル、グノー;歌劇「ファウスト」のワルツ&ドリーブ;「ナイラ・ワルツ」(独TELEFUNKEN、SP)
イッセルシュテットが戦前、テレフンケン・レーベルのポピュラー名曲指揮者だった時代の録音1点を入手。

7月20日(祝): 

 MikrokosmosからLPが届いた。

エリーサベト・セーデルストレム(Sop)エリク・セデーン(Br)スティグ・ヴェステルベリ(P) ステーンハンマル;歌曲集ほか(瑞Swedish Society、LP)
LP2枚組の歌曲集のうち1面の半分ほどに3曲のステーンハンマルが入っている。
セーデルストレムのアダージョ ブー・ベルイマンによる5つの歌 op.20 よりは既にCD化されており架蔵済み。
セデーンによるフュリア 4つのスウェーデンの歌 op.16 よりブロンド嬢とブルネット嬢 歌曲集「歌と印象」 op.26 よりは初めての音源。
ステレオ録音の筈だがモノラル盤、またブックレット欠というのが残念だが、ステーンハンマル全録音蒐集という点では前進である。
なお、ピアニストは指揮者として著名なヴェステルベリその人。

 昨日今日に到着した音盤の情報を、ステーンハンマル・作品表とディスコグラフィリリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィに追加。


7月19日(木): 

 

鈴木 雅明(指揮、Cem)バッハ・コレギウム・ジャパン、バッハ;ブランデンブルク協(全曲)(BIS)
録音情報に接して以来、首を長くして待っていたが、ようやく発売されたので購入。
主な独奏者は
寺神戸亮(Vn、第5番を除く。)
若松夏美(Vn、第5番)
菅きよみ(トラヴェルソ)
ダン・ラウリン(リコーダー)
といった顔ぶれ。
録音は2000年5月28日・6月2日に神戸松蔭女子大学のチャペルで行われている。
この前後に全曲演奏会も行われており、その際の演奏者によるコメント等をWebで読むことができる。
鈴木雅明によるプログラムの巻頭言は→ここを押して
また同氏の製作ノートは→ここを押して
第2番でのトランペットの扱いについては、もちろんこのCDでも吹いている島田俊雄氏が→ここを押して
なお、第5番第1楽章の初期稿をフィルアップ。
 
ティム・ヒュー(Vc)湯浅卓雄(指揮)BBCスコットランド響ほか、ブリテン;Vc交響曲ほか(NAXOS)
ショスタコーヴィッチに似た味わいのこの曲、ちょっと気になりはじめたので見送っていたNAXOS盤を購入。
独奏者は同じ作曲家の無伴奏Vc組曲を複数回録音しているスペシャリスト、期待高し。
レベッカ・ヒルシュ(Vn)によるVn協をカプリング。
 
ニコラウス・アーノンクール(指揮)ウィーン・フィルほか、フランツ・シュミット;オラトリオ「七つの封印の書」(TELDEC)
発売時に方々で絶讃された盤。例えば→ここを押して
馴染みのない声楽曲なので取りあえず見送っていたのだが、先日も触れた大野恵正『聖書と音楽』(新教出版社)が、この曲を大きく取り上げており、聴きたくなった。
対訳のある国内盤でないと困ると思い、音盤屋のポイントが貯まるのを待って割引で購入したもの。この場合は直輸入盤に解説対訳を添付して国内盤流通させているものなので更に好都合。
 
ハイジ・グラント・マーフィー(Sop)ケヴィン・マーフィー(P) リリー・ブーランジェ;歌曲集「空のひらけたところ」ほか(Arabesque)
ようやくdigilot.comにオーダーした3枚のCDの最後のものが到着。国内の音盤屋ではまだ見ないから通販を使ったのは正解だったわけだが、もう、ここには頼まないつもり。
それにしても最近、リリー・ブーランジェの録音が増えているのは心強い。
マーフィーはアメリカ・ワシントン州の出身、メトロポリタン・オペラのオーディションでレヴァインに見いだされ、あちこちのオペラやオーケストラに出演しているとか。スザンナ、パミーナ、ゾフィーあたりが持ち役とのこと。
R・シュトラウスラフマニノフの歌曲数曲ずつをカプリング。

7月16日(月): 

 

ピエール・モントゥー(指揮)ロンドン響ほか、ベートーヴェン;交響曲第9番(Westminster)
「彷徨えるレーベル」Westminsterが今度はDGGから発売されることになった。
↓のクナッパーツブッシュ同様、モントゥーのベートーヴェンは貴重な遺産であり見逃すことのできないものなので購入。
以前日本ビクターから出たときには、本編1枚とリハーサル風景(26分程度)+「ラ・マルセイエーズ」1枚の2枚組だったが、今回は本編のみ、価格もミッド〜バジェットで入手しやすくなったことは歓迎できる。
もっともブックレット等の造りは安っぽくなってしまったのが残念。
肝心の音質(リマスタリングである)だが、買い替えるほどの目覚ましい差はないようだ。
DGG盤は幾分シャープで現代的な音、ビクター盤は少し古さを感じるが自然な空気感のある音。
斉諧生の好みは後者にある。
 
ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)ミュンヘン・フィル、ブルックナー;交響曲第8番(Westminster)
これも、かつて何度も繰り返し発売されたもの。先年、日本ビクターからリマスタリングされたときの改善には目を見張ったものである。
実は先日、入荷したての店で試聴させてもらったのだが、どうにも音が気に入らず、買わずに出た。
もっとも、元来この店の試聴機の音質は芳しからざるものなので、最終評価は保留していた。
週末にSyuzo's HomepageAn die Musikの更新で、今回のリマスタリングに高い評価が与えられていたので、ようやく購入することにしたもの。
両盤の音は、かなり異なる。
ビクター盤は、これまでLP等で聴いていた、この演奏の音の延長線上にあり、「鄙びた音がデッドに響く」趣。
DGG盤は、↑のモントゥー盤同様、かなり聴きやすい、現代の録音に近づいた音。
斉諧生の場合は、DGG盤の音がどうも嘘臭く聴こえるのだが、これは「慣れ」の問題かもしれない。
またジャケットといいブックレットといい、どうもDGG盤の造りには「愛情」が感じられないのも気に障る。
そのあたりにこだわらなければ、交響曲1曲だけのビクター盤と違って、ワーグナー;ジークフリート牧歌、「ローエングリン」第1幕前奏曲、「パルジファル」第1幕前奏曲をフィルアップしたDGG盤も、よろしかろう。
 
小林研一郎(指揮)日本フィル、R・コルサコフ;交響組曲「シェヘラザード」・スペイン奇想曲(EXTON)
コバケンの新譜ゆえ即購入。
2001年5月13日、東京芸術劇場でのライヴ録音。Vn独奏は木野雅之
事前の情報もほとんどなく、突然(?)発売されたディスク。それだけによほど演奏の出来が良かったのだろうかと期待させられる。
なお、珍しく(笑)、指揮者の顔の大写しではないジャケット。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(指揮)オーヴェルニュ室内管、マーラー;アダージョ交響曲第10番より&シェーンベルク;浄められた夜ほか(LYRINX)
いつも良質のディスクを出しているレーベルLYRINX、そこからカントロフの指揮盤が出たとあっては見逃せないので購入。
曲目も標記の2曲の間にR・シュトラウス;組曲「カプリッチオ」を挟むという「世紀末」ぶりが興味深い。
ちょっと聴いてみて気がついた。
マーラーは、どうも弦楽合奏だけで演奏しているようだ。
オーヴェルニュ室内管は実質、小編成の弦楽アンサンブルだから当然といえば当然だが、ジャケットにもブックレットにも、そのことや編曲者は明記されていない。
また、シュトラウスは、「組曲 Suite de Capriccio 」と表記しているが、実質は前奏曲(弦楽六重奏)の弦楽合奏版の模様。
なお、シェーンベルクは、以前、BISからタピオラ・シンフォニエッタを指揮したCDが出ていた。
1992年録音なのに今年になって発売されたというのも、その関係であろうか。
 
アルト・ノラス(Vc)クシシュトフ・ペンデレツキ(指揮)シンフォニア・ヴァルソヴィア、ペンデレツキ;Vc協第1・2番ほか(FINLANDIA)
ノラス師匠の新譜、もちろん買わざるべからず。
第1番は1967年に"violino grade"なる5弦の楽器(ヴァイオリンとヴィオラの音域をカバーするとか)のために書かれたものを1972年にジークフリート・パルムのためにVc協にしたもの。
第2番は1982年にベルリン・フィル100周年の委嘱作として書かれ、翌年、ロストロポーヴィッチの独奏で初演されたもの(指揮はもちろん作曲者)。
1983年に作曲されたVa協をチェロで演奏したものをカプリング。この曲にはボリス・ペルガメンシコフによるチェロ向きに改編した版があるらしいのだが、ノラスは元へ戻しているそうな。
それにしても、早くバッハを録音していただきたいものである。

7月15日(日): 昨日外出したついでに購入した、『宇野功芳のクラシック名曲名盤総集版』(講談社Sophia Books)を読む。
 講談社現代新書の増補改訂版ということで、コンテンツの大半は既知の情報。もともと新書も1989年版・1996年版と改訂されていたから、ネタの使い回しもいいところだが、これも宇野先生の愛するブルックナーの改訂癖に倣ったものかしらん???
 主な新ネタとしては、次のようなものが挙げられよう。もちろん、詳しくは書店にて御確認を。

モンテヴェルディ;歌劇「ポッペアの戴冠」
ルネ・ヤーコプス(HMF)
モーツァルト;Pソナタ第11番「トルコ行進曲つき」
アルフレッド・ブレンデル(Philips)
モーツァルト;ミサ曲ハ短調
ヘルムート・リリンク(haenssler)
ベートーヴェン;弦楽四重奏曲第9番
カルミナQ(DENON)
フランク;Vnソナタ
ギトリス&アルゲリッチ(EMI)
ブラームス;Vnソナタ全集
デュメイ&ピリス盤(DGG)
チャイコフスキー;交響曲第5番
小林研一郎&チェコ・フィル(EXTON)
マーラー;交響曲第7番
リッカルド・シャイー(DECCA)
R・シュトラウス;歌劇「カプリッチオ」
ウルフ・シルマー(DECCA)
シベリウス;交響曲第7番
ユッカ・ペッカ・サラステ(FINLANDIA)
ラフマニノフ;P協第2番
グリモー&アシュケナージ(TELDEC)
バルトーク;弦楽四重奏曲全集
タカーチQ(DECCA)
ベルク;歌劇「ヴォツェック」
インゴ・メッツマッハー(EMI)
松村禎三;ギリシャに寄せる二つの子守歌
松谷翠(カメラータ)
吉松隆;P協「メモ・フローラ」
田部京子(CHANDOS)

 jpcからCDが届いた。

ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮)モスクワ放送チャイコフスキー響、ラフマニノフ;交響曲第2番ほか(RELIEF)
6月30日に配送された荷物には間違って含まれていなかったため、交換を請求していたフェドセーエフのラフマニノフが、ようやく届いた。
先週土曜日にも感心したこのコンビゆえ、期待高し。
初期作スケルツォ ニ短調と、ヴォカリーズをフィルアップ。いずれも1999年の録音である。

 火曜日に入手したCDの情報をアンゲルブレシュト・ディスコグラフィに追加。


7月13日(金): 

 

クァルテット・エクセルシオほか、山田一雄;室内楽作品集(MITTENWALD)
東京・池袋西口に店を構えるミッテンヴァルトさんのオリジナル・レーベル。
指揮者の作曲作品には前から興味があり、ヤマカズのものも聴いてみたいと思っていた。
曲目詳細は上記Webpageを参照されたい。
演奏者はクァルテット・エクセルシオのほか井田久美子(P)。
Vnソナタの独奏者はCDに表示がないが、諸情報によると遠藤香奈子東京都響の模様。
なお、上記Webpageには8月13日発売とされているが、これは指揮者の祥月命日にあわせたもの。
実際には既に販売が始まっていると、Web上の知人からお知らせをいただき、同店にE-Mailでオーダーしたところ、送られてきた。代金・送料は同封の郵便振替用紙により払い込むことになる。

7月10日(火): 

 

エリカ・モリーニ(Vn)フェエンツ・フリッチャイ(指揮)ベルリン放送響ほか、ブルッフ;Vn協&グラズノフ;Vn協ほか(DGG)
DGGの"The Originals"シリーズの新譜が並んでいた中から、ヴァイオリンの比較的珍しい音源を2点、購入。
ウィーンの名花・モリーニとフリッチャイの共演は、ブルッフのみ数年前に国内盤CDで復刻されていたが、グラズノフは初めてかもしれない。ともに1958年10月のステレオ録音。
音質的には、今回の盤の方が、やや硬質ではあるが、優れているようだ。
ヨハンナ・マルツィ(Vn)フェレンツ・フリッチャイ(指揮)ベルリンRIAS響、ドヴォルザーク;Vn協をカプリング。
これも上記モリーニのブルッフとのカプリングでCD化されていた。1953年6月のモノラル録音。
これはヨアヒム・ハルトナックが名著『二十世紀の名ヴァイオリニスト』(白水社)の中で、
「この作品のもっとも完全なレコードである。これを越えるものは、ただ古いヴァーシャ・プルシーホダのものがあるだけである。」
と評した名演。
こちらは、今回の復刻が大幅に優れている。前回のは隣の部屋か洞窟の奥あたりで鳴っている感じ。
 
ヴォルフガング・シュナイダーハン(Vn)カール・ゼーマン(P) ブラームス;Vnソナタ全集(DGG)
これも"The Originals"シリーズ。
1930〜40年代にウィーン・フィルのコンサートマスターをつとめ、ルツェルンなどで多くの後進を育てた名ヴァイオリニスト、シュナイダーハンのドイツ音楽は見落とせないので購入。
3曲のVnソナタとスケルツォ「F.A.Eソナタ」よりを収める。1957年11月(op.108のみ)、1960年2月の録音。
いずれも3年ほど前に、この組合せで国内盤CDが出ていた(斉諧生未架蔵)。
なお、シュナイダーハンについては、ひるでさんのクラシック世界遺産の中に小伝やディスコグラフィがあり、参考になる。
 
堀江真理子&ジェローム・デュクロ(P) アンゲルブレシュト;「子供部屋」(抜粋)ほか(VICTOR)
このページを御覧になった方から御教示いただいたCD。アンゲルブレシュトの作品(ピアノ連弾曲)が国内盤で出ていたとは気づいていなかった。不覚である。(汗)
考えてみれば、全音から楽譜も出たのだから、不思議でもなんでもないのだが。。。(出版は1997年、録音は1999年4月)
収録曲は
庭へ降りました(Salabert版第1巻、全音版第1巻)
灰色チビ公(Salabert版第2巻、全音版第1巻)
牧歌(Salabert版第2巻、全音版第1巻)
塀の上のめんどり(Salabert版第2巻、全音版第1巻)
白いたち(Salabert版第4巻、全音版第2巻)
マルブルー公(Salabert版第5巻、全音版第2巻)
私が幼い頃に(Salabert版第6巻、全音版第2巻)
の7曲。
「近代フランスピアノ連弾名曲集」という副題のとおり、
サティ;「梨の形をした3つの小品」&「組み合わされた3つの小品」
カプレ;「たくさんのちいさなできごと」
をカプリング。
音盤屋では教則用のコーナーに陳列されているようだ。

7月9日(月): 

 一昨日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。
 また、この間入手したCD・LPの情報をアンゲルブレシュト・ディスコグラフィペレーニ・ディスコグラフィに追加。


7月7日(土): 

 チャイコフスキー記念モスクワ放送交響楽団@京都コンサート・ホールを聴く。
 指揮はもちろん、ウラディーミル・フェドセーエフ

今日の曲目は
チャイコフスキー;交響曲第4番
チャイコフスキー;交響曲第5番
という、演奏する側にも聴く側にも少々ヘヴィなもの。
 
オーケストラの編成は、第1ヴァイオリンが16人→コントラバスが8人の、いわゆる「16型」。
配置が左から第1ヴァイオリン−チェロ−ヴィオラ−第2ヴァイオリンで、コントラバスは最後列・最上段に横一列に並ぶという古風なスタイル。
 
管楽器は文字どおりの二管編成。
日本のオーケストラがチャイコフスキーを演奏するときは、こうはいかないだろう。先日読んだ茂木大輔『オーケストラ人間的楽器学』(ヤマハ)によると、N響の首席トランペット奏者津堅直弘氏は、
「つい最近になって僕はチャイコフスキーの四番の全部の音を吹くことができるようになった」
と述懐されたそうである。
もっとも、金管楽器の主要メンバーとティンパニ奏者は、前後半で交替していたが。
 
第4番第1楽章冒頭のファンファーレは、やや抑え気味ではあったが十分に輝かしいもの。
トランペットの1番奏者は、ここと再現のところで、ピッコロ・トランペット(短い楽器)に持ち替えて吹いていた。
 
基本テンポは心もち速め、あざとい表情付けのない、がっしりとした音楽が一貫しているのに胸のすく思いがした。
プログラムにフェドセーエフのインタビューがあり、
「ロシア以外のオーケストラがチャイコフスキーを演奏すると概してセンチメンタルになりすぎるきらいがあり、解釈として正しいとは言いかねる場合もあります」
と語っている。
まことに当夜の演奏全体を通じて、「センチメンタル」な要素は皆無だったと言えるだろう。
 
チャイコフスキーが書いた音符の一音一音を掘り起こして、音楽の重層性、立体感を構築し、その中から自ずとロマンティシズムが立ちのぼる、そういう趣であった。
特に弦楽器が、内声の刻みや、管楽器の伴奏に廻る部分なども、沈まずにしっかりと弾ききっていたし、また、ちょっとした木管のリズム音型やホルンの和音などを浮き上がらせていたのも実に新鮮に響く。
指揮者は上記のインタビューで、
「私はチャイコフスキーの作品を何百回となく演奏してきましたが、演奏する度に必ず、以前には全く気づかなかった何らかの発見があるのです。」
と語っているが、これらはそうした発見の積み重ねであろう。
 
中でも最大の「発見」は、第2楽章の中間部。
まず、主部冒頭のオーボエによる主題提示からして、レガート気味のフレージングと重い呼吸、弦合奏のじっくりした鳴らし方によって、情感を深く彫り上げているのに感銘を受けた。
一般的に、中間部では、ややテンポを上げ、主題をリズミックに吹かせて、主部と対照的な明るい雰囲気を作るのだが、ここでフェドセーエフは、かなり遅いテンポでレガートに奏させるという、まったく逆のアプローチを取った。
それによって、主部の感情が拡張されて更に高揚していくという、見事な効果を挙げたのである。
 
斉諧生は、主題が弦に移って盛り上がっていくあたりから、もう何がなんだかわからなくなってしまった。まったく新しい曲を聴く思いがした。
実は、その頂点で、後席の女性客がフラッシュを焚いて写真を撮るという蛮行をはたらき、ひときわ頭の中がカーッとしてしまったのであるが…。
なお、最新のRELIEF盤(1998年録音)では、アプローチは似ているものの、すぐにテンポが上がってくるので、実演とは効果がかなり異なるように感じる。
 
アタッカで入った第3楽章の弱音のピツィカートの効果や、第4楽章のひたひたとした盛り上がりも素晴らしかった。
 
正直言って、4番がこれほど立派な音楽だと思わされたのは初めてである。まさしく演奏の力であろう。
その意味で今日の白眉は前半の演奏だったと思う。この曲を聴くために首都圏から足を運ばれた方もあったが(第4番は札幌・京都・福島・金沢の各公演のみ)、その価値ある名演であった。
 
もちろん後半の第5番も凄い演奏。
↑で述べたように、センチメンタルに陥らず、音楽の重層性・立体性を強く印象づける、がっしりしたアプローチ。
 
第1楽章の第2主題では大きくテンポを落とし、深い呼吸で歌いあげ、聴いていて本当に胸の熱くなる思いがした。
たしかこのところで、フェドセーエフの動き・振り方が、まるで太極拳のような、ゆっくりとした、しかし集中したものだったのが、瞼に残っている。
 
それ以上に、第2楽章における硬派なロマンティシズムの高揚が素晴らしかった。この楽章を中心にこの曲を聴いたのも初めて。
楽章冒頭のホルン・ソロは、まさしく「命をかけた」と形容したくなるもの。
 
そして第4楽章では、「ここはこうしてほしい」というツボを期待どおりに決めながら、盛り上げていく。
派手なアッチェランドやクレッシェンドも無く、けっして「煽る」感じはないのだが、それゆえに却って腹の底から興奮させられる思いがした。
コーダのクライマックス、ティンパニが最強打する上にトランペットがテーマを朗々と吹き抜く部分では、フェドセーエフは腕組みして棒を振らないという「芸」を見せたものである。(^^)
 
唯一、第1楽章で金管が抑え目になっていたのが残念。
それが指揮者の音楽なのか、終楽章に向けてのセーブだったのかはわからないが…。
 
アンコールは、
チャイコフスキー;『雪娘』より「道化師の踊り」
外山雄三;『ラプソディ』より後半(フルートの長いソロから)
いずれも猛速でのリズムの狂瀾が客席の興奮を呼んでいた。
ラプソディでのフルート・ソロも立派なもの。
 
話には聞いていたが、オーケストラの上手さも特筆したい。
先月聴いたロシア・ナショナル管も上手かったが、更に音色の暖かさが加わっている感じ。
とりわけピアニシモの美しさが印象的。弦も、木管も、ホルンも…。
 
もちろん話題の(笑)打楽器パートを落とすことはできない。
このパートがこれだけ話題になるオーケストラも珍しかろうが、弦合奏がますます充実しているだけに、ここがしっかりしないと音楽が締まらないだろう。
中でも目立ったのが第5番のティンパニ奏者で、派手なアクションと大きな音と楽しそうな演奏姿で(打ち込みのタイミングやリズム感の見事さは言わずもがな)、終演後には最大の拍手喝采を浴び、退場時には握手ぜめにあっていた。
 
このコンビでブラームスマーラーを、ぜひ聴いてみたい。
上記のインタビューでは、指揮者は日本のマネージメントに対して
「モーツァルト、ベートーヴェンなどヨーロッパの作品もプログラムに入れてほしいと懇願」
しているとのこと。何とか実現できないものだろうか。

 演奏会へ出かける直前、MikrokosmosからLPが届いた。

ペーター・マーク(指揮)ストックホルム・フィル、ルンドクヴィスト;交響曲第3番「悲しみの交響曲」(瑞ARTEMIS、LP)
先日長逝したマークの知られざる録音がカタログにあったのでオーダーしたもの。
とはいえ歴とした正規録音で、ストックホルム・フィルのディスコグラフィにも掲載されていた。1977年11月3〜4日、ストックホルム・コンサートホールでの収録。
作曲者トゥルビョン・イヴァン・ルンドクヴィストは1920年生・2000年没。ライナーノートには『ニルスの冒険』という映画の音楽も作曲した…とあるが、それは知られているものなのだろうか。
交響曲第3番は単一楽章で演奏時間は約30分、1971〜75年に作曲され1976年にマルメ響で初演された。1970年に亡くなった妻に捧げられた曲である。
 
エイドリアン・ボールト(指揮)フィルハーモニック・プロムナード管、バルトーク;弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽&ディヴェルティメント(英Nixa、LP)
ボールトにバルトークの録音があるとは知らなかった。
両方とも好きな曲であり、ボールトの表現でぜひ聴いてみたくオーダーしたもの。
録音データ等は明記されていないが、音の状態からするとモノラル末期、1950年代中頃のものか。
 
ジョゼフ・ギンゴールド(Vn)チャールズ・ウェッブ(P) クライスラー;Vn名曲集(米Fidelio、LP)
ジョシュア・ベルらを育てた名教師、銀金教授(笑)ことジョゼフ・ギンゴールドのLPがカタログに出ていたのでオーダー。彼のソロ盤は比較的珍しい。
「愛の喜び」「愛の悲しみ」をはじめ全12曲を収録。
明記されていないが、1975年頃の録音か。
なおギンゴールドは1909年ロシア生まれ、1920年にアメリカに移住した。この世代からは「古き良き欧羅巴」の雰囲気を遺す音楽を聴ける場合があるので、それも楽しみ。
しかしこの人がNBC響に在籍して(1937〜44年)、デトロイト響やクリーヴランド響のコンサートマスターをしていた(前者は1944〜47年、後者は1947〜1960年)とは、今まで知らなかった。不勉強を恥じたい。
(附記)
上記「クリーヴランド響」は勿論「クリーヴランド管」の誤り、また"Gingold"の読みはアメリカで活躍した人であるからには「ジンゴールド」のほうが適切であろう。(先達の御教示に多謝)
 
シギスヴァルト・クイケン(Vn)グスタフ・レオンハルト(Cem) バッハ;VnとCemのソナタ(全曲)(米BASF、LP)
先だって無伴奏曲集の新録音が出たクイケン。1973年、彼が29歳のときに録音されたチェンバロとのソナタの全曲盤がカタログに出ていたのでオーダー。
BASFならば独オリジナル盤と思ったのだが、現物はアメリカ・プレスでがっかり。また捜し直さねば…。
 
ミクローシュ・ペレーニ(Vc)ほか、「自由落下 ヤーノシュ・ピリンスキー」(洪HUNGAROTON、LP)
ペレーニの未架蔵盤をオーダー、目出度く入手できた。
大部分は詩(?)の朗読で、間にジョルジュ・クルタークの音楽が挿入される。
ペレーニは、「ヤーノシュ・ピリンスキー:ジェラール・ド・ネルヴァル」という短い無伴奏曲を演奏している。
この曲には1993年のザルツブルクでのライヴCDも出ているが(col legno)、これは1985年の別録音。
興味深いのは、作曲年代について、この盤では1984年、col legno盤では1986年との表示があること。あるいは改訂が行われたのであろうか。
ヤーノシュ・ピリンスキーについてはまったく知らないが、調べてみたところ、現代ハンガリーの国民的詩人…ということのようだ。諸賢の御教示を乞います。m(_ _)m
 
ジョルジュ・ツィピーヌ(指揮)パリ音楽院管ほか、フローラン・シュミット;詩篇第47番(仏Columbia、LP)
フローラン・シュミットの代表作のひとつの未CD化盤をオーダー。前から欲しかった盤なのだが、日本の店ではなかなかに高価なところ、非常に安価に入手できて嬉しい。(^^)
この曲は平成4年にジャン・フルネ東京都響定期で取り上げており、偶々、上京の機会に重なって聴くことができた。
そのときの独唱は佐藤しのぶ、オルガン独奏は松居直美だったが、この盤ではデニーズ・デュヴァルモーリス・デュリュフレ

7月6日(金): 

 

スティーヴン・イッサーリス(Vc)ロリン・マゼール(指揮)バイエルン放送響ほか、R・シュトラウス;交響詩「ドン・キホーテ」&Vcソナタほか(BMG)
気になるチェリストの一人、イッサーリスの新譜が出ていた。
交響詩よりもソナタを聴いてみたく、購入。以前に長谷川陽子さんの実演で接して(予習のためのヨーヨー・マ盤も含め)好きになった曲なのである。
ピアノはスティーヴン・ハフ
同じ作曲家のロマンス(Vcと管弦楽のための)をフィルアップ。

7月5日(木): 

 

ジェラール・プーレ(Vn)クリスチャン・イヴァルディ(P)ほか、オーリック;Vnソナタほか(ARION)
録音の珍しいオーリックのVnソナタを、名手プーレが演奏しているので購入。
同じ作曲家のOb、Cl、Fgの三重奏曲フランセ;Cl、Va、Pの三重奏曲・「宮廷の音楽」をカプリング。最後の曲は実質、Fl、Vn、Pの三重奏曲である。
フィリップ・ベルノルド(Fl)、ジェラール・コセ(Va)ら、毎春、フランス音楽アカデミーで来日する面々が名前を連ねている。
しかし、このジャケットを持ち歩くのは少々恥ずかしかったことを告白しておかねばなるまい…。→ここを押して
 
ハンス・ヨアヒム・ロッチュ(指揮&Ten)ライプツィヒ・聖トマス教会聖歌隊ほか、ディストラー;クリスマス物語(Berlin Classics)
このところ、大野恵正『聖書と音楽』(新教出版社)という本を読んでいる。
どこかの書評で知ったのだが、聖書のテキストに付曲した名曲を紹介している本で、選曲が一種独特なのである。
例えば、冒頭にはハイドン;「天地創造」ではなくコープランド;「イン・ザ・ビギニング」が置かれる(2曲目がハイドン)。
もちろんバッハ;マタイ受難曲ヘンデル;メサイア等も取り上げられるが、オネゲル;ダヴィデ王フランツ・シュミット;七つの封印の書といったラインナップが目を惹く。いずれ、これらの曲について書くこともあろう。
 
この本の巻末に「付論」として、フーゴー・ディストラーというドイツ現代の作曲家が取り上げられている。
ディストラーは1908年生まれ、作曲家であるとともにギュンター・ラミンに学んだ優れたオルガニストで、主に教会合唱音楽やオルガン曲を作った。「時局にそぐわない作風」とナチスに圧迫され、1942年に自殺したという。
そこで彼の「教会音楽作品の最高傑作」と紹介されていたのが、この『クリスマス物語』。
「極めて単純化された音でなる聖書の朗唱とこれまで響いたことがないと思われる合唱音響の組合せの中に、
 キリスト降誕の出来事の切迫した思いと清らかな美しさが溢れている」
とのこと、ぜひ耳にしてみたいと購入したもの。
有名なクリスマス・キャロル「エサイの根から」(讃美歌96番。カトリックでは「夕やみせまる」で知られている)を織り込むなど親しみやすく、しかし精妙さにも欠かない音楽が聴けるようだ。

7月4日(水): 

 Alapage.comからCDが届いた。

ロジェ・デゾルミエール(指揮)フランス国立放送管ほか、ストラヴィンスキー;弦楽のための協奏曲&バルトーク;ディヴェルティメントほか(INA)
『クラシック招き猫』の投稿でリリースを知ったCD。
1950年7月18日、シャンゼリゼ劇場での演奏会を丸ごと収めたもので、当時デゾルミエールはこの団体の首席指揮者をつとめていた。
両曲の間にダラピッコラ;アルセーの6つの歌サティ;梨の形の三つの小品(デゾミエール編)ブーレーズ;水の太陽を収録している。
バルトークは好きな曲だし、1950年代のフランスのオーケストラの音には興味もあるので、ぜひ聴きたいと捜していたのだが、音盤屋の店頭では見つけられなかったので、通販でオーダーした。
音はやや硬いが、年代を考えれば、やむを得ないところだろう。
貴重かつ興味深いライヴ録音をCD化してくれているINAのWebpageは→ここを押して
 
デジレ・エミール・アンゲルブレシュト(指揮)ほか、ビゼー;歌劇「カルメン」ほか(MALIBRAN)
何とも嬉しいことに、アンゲルブレシュトの音源が発掘された。
1942年11月9日、マルセイユでの収録とあり、CD2枚弱、約130分ほどに全曲が入っているので、ある程度の省略があるものと思われる。
タイトル・ロールはジェルメーヌ・セルネー Germaine Cernay(M-S)、ドン・ホセ;レイモン・ベルトー Raymond Berthaud、ミカエラ;ジネット・ギョーマ Ginette Guillamat、エスカミリオ;ルシアン・ロヴァノ Lucien Lovanoとクレジットされている。その筋では有名な人達なのかもしれないが、斉諧生は詳細を知らない。
音の状態は、概ねSP復刻盤の平均的な水準か。
 
余白に「アルルの女」第2組曲「アニュス・デイ」を収める。
前者はアンゲルブレシュトのSP録音(Pathe)の復刻で、以前WINGレーベルから出ていたものと同じ音源であろう。音の状態は一長一短だが、今回の方が力強い。ただし、WING盤には第1組曲の間奏曲が付加されている。
この演奏におけるサキソフォン奏者の問題について、今年4月30日の項に記したが、このCDでは奏者の名前は明記されていない。
後者は「アルルの女」第2組曲間奏曲のメロディを転用した曲で、1998年の新録音。Carlo Ciabrini(Ten)とAnn-Dominique Merlet(Org)による。
リリース情報に接してから、音盤屋の店頭に並ぶのを今か今かと待っていたのだが、いっこうに出てこないので、通販でオーダーしたもの。
なお、レーベルのWebpageは→ここを押して

7月1日(日): 

 昨日到着した音盤の情報を、リリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。
 また、音盤狂昔録平成13年6月分を追加。


平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。

平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。

平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。

平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。

平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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