音盤狂日録


ステーンハンマル作品が聴ける演奏会のお知らせ
2000年12月、東京都内でステーンハンマル作品を演奏するコンサートが2回ひらかれます。
いずれも、ステーンハンマルを敬愛するピアニスト、和田記代さんがイタリア留学から一時帰国して出演されるものです。
美しい曲の貴重な実演ですので、ぜひ御来聴くださいませ。
会場案内や演奏者プロフィールなど詳細は→ここを押して
(追記)12月23日の会場の地図を掲載しました。→ここを押して

和田 記代 ピアノ・リサイタル

ベートーヴェン; ピアノ・ソナタ変イ長調作品26
ステーンハンマル; 3つの幻想曲作品11
ショパン; 12の練習曲作品10
日時; 2000年12月7日(木)午後7時
会場; カワイ・ミュージックショップ青山2F「パウゼ」(地下鉄・表参道)
チケット; 3,500円(消費税含む、コーヒー・ケーキ付き)
     

青木 調(Vn) 和田 記代(P)

ベートーヴェン; ヴァイオリン・ソナタ第8番ト長調 作品30-3
バッハ; 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調 BWV1004
ブラームス; ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調 作品100
ステーンハンマル; 2つのセンチメンタル・ロマンス作品28
ブラームス; ハンガリー舞曲第1番ト短調
日時; 2000年12月23日(祝)午後6時30分
会場; ミュージック サロン サングレース(京王線・東府中)
チケット; 2,500円(飲み物付き)

 


11月30日(木): 

 このところ来日しておられるミクローシュ・ペレーニ師、今日は「エステルハージーのハイドン」という京都市響の演奏会@京都コンサートホールに御出演。
 またまた最前列中央で聴く。

今日の曲目は、
歌劇「月の世界」序曲
Vc協第2番ニ長調
交響曲第54番より第2楽章
交響曲第45番「告別」
というもの。
 
ペレーニ師は、いつもの訥々とした舞台姿。
井上氏が振り始めると、なんとトゥッティのチェロ・パートを一緒に弾いておられる(もちろん暗譜)。しかもほぼ全曲、これを続けられた。
師の音を聴き逃すまいと耳を凝らしたが、もちろん軽く弾いておられるので、さすがに聴き取れなかった。そのため、この曲ではオーケストラについて、ほとんど聴いた印象がない。(^^;;;;
 
ソロが始まって少し驚いた。
今日の音はいつもと違うように聴こえる。高音が、とても甘美に響くのである。
大ホールで聴くせいか、奏法か何かに違いがあるのか、わからないが。。。
 
師と斉諧生の距離は大ホールでも小ホールでもあまり違わないが、音の抜けはさすがに大ホールの方が美しい。客席(特に1階や2階正面)の音圧が低いので評判の芳しくないホールだが、舞台上では非常に気持ちよく響いているのではなかろうか。
 
いつもながら、ただ音楽そのものが完璧な姿を現す趣、中でも第2楽章の暖かい暖かい歌に、じ〜んと胸に響くものがあった。
第2楽章カデンツァの最初の音は、ほんとうに柔らかく・ひそやかに・美しく鳴らされた。
他のどのチェリストからも聴けないものだと思う。このときのペレーニ師の微笑みは、いまも目に浮かぶ。
 
盛大なブラボーの声の中、アンコールは待望のバッハ
無伴奏Vc組曲第1番よりアルマンド
速めのテンポで、ごくごくあっさりと音を紡いでゆかれるのだが、音楽の姿は完全無欠、神品と感じ入った。
 
その瞬間、頓悟した。
それがたとえ開放弦を鳴らす一音であっても、聴く者の胸を音楽の喜びでいっぱいにしてくださるのが、ペレーニ師のチェロなのである。
 
今から、次の来日が待たれてならない。
なお、休憩後のトーク(井上氏とミッシェル・ワッセルマン教授)によると、師は菜食主義で、紅茶さえも召し上がらず(ハーブ・ティは可)、トマト・ジュースを愛飲しておられるとのこと。
 
さて、その他の曲について。
オーケストラの編成はごく小さく、第1Vnから順に6-6-4-2-1。
これについては休憩後のトークで井上氏が
エステルハージー時代のハイドンのオーケストラは13人だったが、ホールの大きさも考え、25〜26人にした。これはハイドンが使った最大の編成に相当する。
と話しておられた。
 
なお、第1Vnと第2Vnが左右に置かれる、いわゆる「対向配置」。
指揮台を用いず、管も山台に載らずに演奏。
 
演奏は全体にキビキビしたもので、緩徐楽章(特に交響曲第54番第2楽章では目一杯歌わせる趣。
ただ、ハイドン本来の、生が躍動する喜び、確信に満ちた幸福な音楽の流露といった境地までは到達しなかった。
交響曲第45番第1楽章の嬰ヘ短調の響きも、凄惨さを感じさせるまでには至らない。
指揮者の身振りに反してオーケストラは生真面目そのものだったのが印象に残る。
 
さて、「告別」交響曲第4楽章後半、アダージョに入って音楽の趣が一変すると…
照明が徐々に暗くなってくる。
「あれあれどうしたんだ」という思い入れで天井を見上げる指揮者。
すると楽員が譜面台に蝋燭を立て(大型のクリップで挟む仕掛け)、指揮者はそれに火をつけて回る。
指揮台の下にトーチ(結婚披露宴でキャンドルサービスに使うアレ)が用意してあったのである。
 
そして、楽員が一人、また一人と席を立ち、蝋燭の火を吹き消して、退場し始める。
 
井上氏は全部の蝋燭に火をつけ終わったところで、思い入れたっぷりにトーチの炎を吹き消し、一礼して舞台から去る。
ここでトーチを刀に見立てて居合い抜きの真似をしてみせるあたりが、氏の真骨頂である。(爆)
 
最後にコンサートマスターと第2ヴァイオリンの首席奏者の二重奏になって(ここは美しかった)、曲を閉じた。
斉諧生按じるに、企画者(きっと井上氏だ)は、この2人が蝋燭を消して退場し、真っ暗な空っぽの舞台が残る…というところまでやりたかったのではないか。
舞台が無に始まって無に終わる能楽の伝統を持つ京都だから、ひょっとしたらそこまで行くかも…と思ったが、実際には音が消えたところで拍手が出てしまい、最後の2人は退場することなくカーテンコールになってしまった。ちょっと心残り。

 帰宅するとamazon.ukからCDが届いていた。

ジョルジ・シフラ(P)ゾルターン・ロズナイ(指揮)ハンガリー国立管、ガーシュウィン;ラプソディ・イン・ブルーほか(HUNGAROTON)
伝説のピアニスト、シフラの入手困難なCDを知人の好意で聴かせていただく機会があった。
名前は昔から知っていたが、何やら妖しげな音楽をする人という印象があって、敬遠していたが、ピアノを実に美しく鳴らしているのに驚いた。ペダルをあまり使わないそうで、そこから来る印象かもしれない。
これは少し聴いてみようと思ったところ(まあ、まんまと「布教」にはまったわけだが)、好きなガーシュウィンの録音があるというので、オーダーしてみた。
シフラがハンガリー動乱(1956年)に乗じて西側(当時)へ脱出する直前、1955年2月の録音。
録音の状態はあまり芳しくないが、まずまず鑑賞に差し支えない程度。
ヨハン・シュトラウス;「美しく青きドナウ」・「トリッチ・トラッチ・ポルカ」・「こうもり」序曲・「ジプシー男爵」序曲をシフラがパラフレーズしたもの等がカプリングされており、これはシフラ節の超絶技巧が満開とのこと。
 
ハワード・シェリー(P) ラフマニノフ;編曲集(hyperion)
↑で聴かせていただいたシフラの演奏の中で気に入ったのが、メンデルスゾーン(ラフマニノフ編);スケルツォ(「真夏の夜の夢」より)
原曲も好きなので、これは更に聴きたいと思い、捜してみたらホブソン盤(Arabesque)を架蔵していた。
ところが、これはかなり豪奢にピアノを鳴らした演奏で、原曲のメルヘンティックな味わいからは遠い。
ちょくちょくお邪魔しているラフマニノフはお好き?の掲示板で御相談してみたところ、この盤をお薦めいただいたので、オーダー。
バッハ;無伴奏Vnパルティータ第3番(抜粋)クライスラー;「愛の悲しみ」など全15曲を演奏している。

11月29日(水): 

 

オスモ・ヴァンスカ(指揮)ブルックナー;交響曲第3番(hyperion)
昨年、ラハティ響を率いて来日、素晴らしいシベリウスを聴かせてくれたヴァンスカ。
録音情報を聞いて以来、あのシベリウスの透明感からすれば期待できると思っていたブルックナーがようやく店頭に並んだので購入。
ブルックナー演奏で問題になるのが楽譜だが、ここでヴァンスカが使用している版は、少し特殊。
1877年版、ノヴァーク版第2稿(III/2)を基本にし、第2楽章アダージョを1876年版という異稿(ノヴァークが出版)に置き換えている。
1877年版は、かつて「エーザー版」として出版されていたもの。
最近の録音ではバレンボイム盤(TELDEC)・ドホナーニ盤(DECCA)等が用いているが、一般には1889年版、ノヴァーク版第3稿(III/3)によることが多い。
更に1876年版のアダージョは非常に珍しい。去年だったか、ロジェストヴェンスキーの録音が出ていたが、斉諧生架蔵盤では初めて。
なお、インバルノーリントンティントナーらが使用しているのは1873年版、ノヴァーク版第1稿(III/1)。

11月28日(火): 

 鈴木秀美さんのバッハ;無伴奏チェロ組曲演奏会@レスパス・エランを聴く。
 ほとんどサロンという会場で(客席80人くらい)、しかも最前列に座ってきた。
 ホールの公式Webpageがある。→ここを押して

ほぼ満席だったが、@4,000円で採算がとれるのだろうか?
今日演奏されたのは、
バッハ;無伴奏チェロ組曲第4番
バッハ;無伴奏チェロ組曲第3番
バッハ;無伴奏チェロ組曲第2番
バッハ;無伴奏チェロ組曲第6番
(演奏順)
 
斉諧生の主目的は、ピリオド楽器の音色を実地に確かめることにあった。
先日読んだ鈴木さんの著書『「古楽器」よ、さらば!』(音楽之友社)に、ずいぶん考えさせられるところがあったのである。
今日も持参して、終演後サインを頂戴した。(^O^)
 
なるほど、ピリオド楽器の音の魅力的なこと! この音は、まだまだCDに入りきらない。
ガット弦のザラッとした感じが、録音では雑音成分にしか聴こえないのだが、実演だと好もしい風合い、いわば「生成り」の魅力に取って代わる。
 
また、発音の軽さは非常なメリット。
第3番プレリュード後半のバスは、よく「オルゲルプンクトのように響く」と言われ、モダン楽器だと威圧的に響くことさえあるが、ピリオド楽器では実に程良く、さてこそと思わされた。
 
五弦チェロによる第6番の実演も初めて。
この曲は、やはり五弦で弾くのが圧倒的に理に適っている。四弦の楽器だと、演奏者は汗水垂らして格闘するように見えるものだが、今日の鈴木さんは涼しい顔。
古楽系でないチェリストも、五弦の楽器を使えばよいのに…と感じた。まあ、1曲だけのために貴重な銘器を改造するわけにもいかないとは思うし、満足できる新作チェロも無いのかもしれないが…。
そういえば、ユリウス・ベルガーが、1700年アムステルダム製という五弦の楽器を使っている。旧盤(Orfeo)では全曲に、新盤(WERGO)では第6番のみに。
 
一方、問題は「感情の表現力」に乏しいこと。
第6番アルマンドなど、演奏者は思い入れたっぷりの様子なのだが、それならモダンの方が感動的だ…と思いながら聴いていた。
もっとも、それはこちらの感受性がモダンに慣れて鈍っているせい、ということなのかもしれないが。
 
また、アーティキュレーションやフレージングが全然違うためにバッハの音楽に集中しきれなかった面もある。
そのことに抵抗を感じたのではなく、むしろ非常に新鮮だったのだが(録音では耳にしていることでも実演となると別)、そちらに注意力のかなりの部分が割かれてしまった。
 
アンコールは、五弦楽器を用いて
バッハ;ラルゴ 無伴奏Vnソナタ第3番より
を。
 
以下は余談。
実は、今日の会場は斉諧生の実家のすぐ近く。(^^;
 
もとは老舗の精肉店(階上で鋤焼きを供していたような記憶がある)だったのだが、1階にコンビニエンス・ストアが入ったマンションに建てかわり、その9階にホールが設けてある。
周辺では一頭地を抜く高い建物で、窓からは広く京都市街が見渡せる。
 
ステージ部分の後ろ側が前面ガラス窓になっているのもそれを意識したもので、8月16日の「送り火」(「大文字焼き」ではありません、念の為)では、「左大文字」などがくっきり見えると思う。
もっとも、そのためだろう、下の大通りを走る救急車のサイレン等がくっきり聴こえるのはデメリット(演奏中には何事もなかったが)。
 
内装も美しく、ロビーは狭いながらも飲み物を出すカウンターまで備わっている。
よそから来る人には足場が悪いところだが、斉諧生にとっては職場から行きやすく、実家に近いという素晴らしいロケーション。これからも足を運びたいものである。

11月27日(月): 

 昨日入手した音盤の情報を、ステーンハンマル・作品表とディスコグラフィに追加。


11月26日(日): クラシック招き猫の京都オフミーティングに参加。初対面の方も多く、また横浜や名古屋からお越しいただいた方もあり、非常に楽しかった。
貸切の会場にはCD・DVD・LDコンパチ・プレーヤーとビデオデッキ、大型モニターとBOSEのスピーカーが備えられており、音盤は持ち込み放題。約4時間半にわたって、鑑賞・歓談が盛り上がること盛り上がること…!(^^)

 

トマス・ダウスゴー(指揮)スウェーデン室内管、ベートーヴェン;交響曲第1・2番ほか(SIMAX)
けっこうCDが出ているのでベテランかと思っていたダウスゴーは、1963年生まれ。1993〜95年にボストン響小澤征爾のアシスタントだったとか。
北欧音楽MLで話題になった彼のベートーヴェンが店頭にあったので購入。
最近話題のベーレンライター原典版新全集による演奏で、校訂者ジョナサン・デル・マーもブックレットに寄稿している。
騎士バレエの音楽WoO.1をフィルアップ。
なお、「ベートーヴェンの管弦楽曲全集 第1巻」とジャケットに明記されている。このプロジェクトにはボリス・ベレゾフスキー独奏のP協集も含まれる予定とのこと。
 
武久源造(Cem)コンヴェルスム・ムジクム、バッハ;協奏曲集(ALM)
『古楽』と『モダン』という二分法は超えられなければならない」とのマニフェストを掲げて、新しいアンサンブルが登場した。
自分たちが取り組む音楽を、あくまで生きたものとして、繊細なシンパシーをもって見つめたい。
この録音で使っているのは全て『ピリオド楽器』である。しかし我々の解釈は『ピリオド』に縛られたものにはしたくない。
と、いつものとおり自撰のライナーノートで武久氏は述べている。
バッハが書いた協奏曲の多様性と一貫性の両面を味わえるようにと、次の4曲を収録。
Cem協第3番ニ長調 BWV.1054(Vn協第2番の編曲)
Vn協第1番イ短調 BWV.1041(ソロ;桐山建志)
イタリア協奏曲BWV.971
Cem協第4番イ長調 BWV.1055(フォルテピアノによる)
 
アレクサンドル・ヴァウリン(P) ステーンハンマル;3つの幻想曲ほか(CLASSICO)
ステーンハンマルの新しいCDが出ていたので、もちろん購入。
ヴァウリンはモスクワ生まれ、ヤコフ・フリエールパウル・バドゥラ・スコダに学び、1989年以来デンマークに住んでいるとのこと。
ゲーゼ;Pソナタグリーグ;Pソナタをカプリング。

11月25日(土): 

 「名匠列伝」中、カザルスのページに新しいコンテンツを追加した。
 「カザルスの名演奏」は、以前クラシック招き猫「名演奏家の名盤はこれだ」に寄稿した一文に加筆し、体裁を大幅に充実させたもの。
 「マールボロ音楽祭指揮記録」は、先月入手した“MARLBORO MUSIC 1951―1975“からカザルスの指揮した演奏会のデータを抽出して、年代順作品順にまとめたもの。  
 また、昨日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。


11月24日(金): 

 ミクローシュ・ペレーニほかの演奏者による「室内楽特撰」@京都コンサートホールを聴く。

ペレーニ以外の演奏者は、
イエネ・ヤンドー(P)
澤和樹(Vn)
横川晴児(Cl)
 
そういうと横川氏は、昨年・一昨年も11月下旬にこのホールで聴いている。一昨年は澤氏も一緒だった。
 
今日の曲目は、
ベートーヴェン;Pトリオ第7番「大公」
ストラヴィンスキー;組曲「兵士の物語」(P・Vn・Cl)
コダーイ;Vcソナタ
バルトーク;コントラスツ(P・Vn・Cl)
というもの。
 
まず当夜の圧巻はコダーイ;Vcソナタ
2楽章構成で演奏時間も約18分と小規模、無伴奏Vcソナタの陰に隠れて目立たない曲だが、今日の名演で真価がよくわかった。
 
曲を始めるチェロのモノローグが意味深かったこと!
ペレーニのページの冒頭に長谷川陽子さんの
彼はどの曲を弾いてもその作曲家の魂の声が響く数少ない演奏家の一人ではないでしょうか。
という言葉を掲げたが、まさしく作曲家の魂の声が響く心地がしたのである。
 
一瞬、「望郷」という想念が胸をかすめた。コダーイの伝記的事実には反するかもしれないが…。
 
この、「幻想曲」と題された第1楽章での自在な節回しに魅了しつくされ、また第2楽章の切れ味鮮やかな民族舞曲を満喫。
 
そして第2楽章の結尾に再現する第1楽章の主題が、どれほど熱く歌い上げられたことか!
ペレーニ師は、いつも曲の世界を誠実に再現し自らの姿はその背景に潜めてしまう感があるのだが、今日のこの瞬間だけは、演奏者の魂の声を聴く思いがしたのである。
 
残念なことに19日のリサイタルより客の入りは悪く、横川氏目当てとおぼしい吹奏楽系高校生等の姿も少なくなかったが、この曲でのみ「ブラボー」が盛大に発せられたのも、頷けるものがあった。
 
ペレーニ師が演奏したもう1曲、「大公」トリオだが…。
正直申して、ヴァイオリンが極めて貧弱。ベートーヴェンの世界を楽しむことが出来なかった。
 
けっして下手なわけではなく、指の回りや弓さばきといったメカニックの点では問題ない。
第1楽章で上滑り気味だった音程を、第2楽章以降ではきちんと修正されたことからも有能な音楽家であることはわかる。(どうして初めから合わせなかったのかという疑問は残るが)
しかしながら、まず「音」が細くて貧相、その上に出てくる「音楽」も貧弱なのである。
とても真面目な音楽ではあるのでソロなり同質の共演者との弦楽四重奏などでは別だろうと思うが、ペレーニ師の共演者としては、器量不足が否めない。
チェロが出したフレーズをヴァイオリンが繰り返すところなど、どうしても比較せざるを得ず、耳を覆いたくなる惨状であった。
あるいはハンガリー出身の名匠ジョルジ・パウクに学びCDでも共演するなど(バルトーク;44の二重奏曲(NAXOS))していることから今回の共演となったのかもしれないが…。
 
斉諧生としては、ピアノ三重奏というよりも、ヴァイオリンのオブリガート付きのチェロ・ソナタを聴く気分。
折々、チェロが単独で出すフレーズには、そのたびに違った表情・多彩な感情が煌めいており(控え目なのだけれど)、瞬間、音楽が胸一杯に広がる心地がした。
 
残り2曲では、横川氏の多彩な音色を楽しませてもらった。
ヴァイオリンは相変わらず生真面目な音楽で、ちょっと曲趣に合わなかったような。
 
ピアノについては自信をもって語ることはできないのだが、会場の楽器の鳴りが今ひとつ悪く(スタインウェイだが)、ヤンドー氏の真価が発揮できていないのではないかと思われた。
 
最後の曲は出番でなかったペレーニ師だが、拍手に応えて登場、アンコールに「大公」トリオ終楽章後半を演奏された。
 

11月23日(祝): 京都コンサートホール友の会から案内が届いた。
 それによると、来年6月17日にジャン・フルネ(指揮)東京都響、7月7日にヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮)モスクワ放送響が同ホールで公演する模様。
 曲目は、フルネがドヴォルザーク;Vc協(独奏;古川展生)&ブラームス;交響曲第3番、フェドセーエフが「チャイコフスキーの交響曲を中心に据えたプログラム」とのこと。
 いずれも大いに楽しみである。

 ようやく、ここ10日間ほどの記事が書けました。更新が遅れたことをお詫びします。m(_ _)m
 19日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。
 また、最近入手した音盤の情報を、パレー・ディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィペレーニ・ディスコグラフィに追加。


11月21日(火): 

 今日は、我らがマエストロ、ズラタン・スルジッチ(指揮)大阪教育大学教養学科芸術専攻音楽コース@大阪国際交流センター大ホール の第44回定期演奏会を聴きに行く。
 プログラムの前半、声楽専攻による合唱高田三郎;「遙かな歩み」と、オーケストラの1曲目デシュパイ;3つのコラール前奏曲には間に合わなかった。

聴くことができたのは、
イベール;Fl協
ブルックナー;交響曲第4番「ロマンティッシュ」
 
このうちブルックナーは、巨匠マタチッチの薫陶を受けたマエストロ得意のレパートリー。以前に第7番の名演を聴いたこともあり、大いに期待して臨んだ。
 
イベールの独奏は、中務晴之教官が担当。
フルートでは有名なレパートリーだが、実はほとんど聴いたことがない。(^^;
ソロの音色はヴィブラートを抑制した清澄なもので、斉諧生好み。終始、堪能させていただいた。
正直申して、オーケストラにはあまり耳が行かなかったのだが(失礼)、手堅い出来だったと思う。
 
さて期待のブルックナー
第1楽章冒頭の弦の刻みからして正調ブルックナーの香りが匂い立つ。
はたして、テンポの運び、ここぞというところでの踏みしめ方、轟然たる金管、随所に置かれた対位法の活かし方、とにかく文句のつけようのないブルックナー演奏
ただただ音楽に浸っているうちに、全曲が終わってしまった。曲の長さをまるで意識することなしに…。
 
このオーケストラの特長である弦合奏の素晴らしさが遺憾なく発揮された。
特に感じ入ったのは、第2楽章で主題を提示するVcの音色。暖かく、心のこもった音は、プロフェッショナルのオーケストラからも滅多と聴くことができないもの。
また、第4楽章のクライマックスの一つ、245小節以下の弦合奏が低音域のフォルティッシモで歌い上げる部分で、皆が身体ごとの絶唱を奏でたのには、胸が熱くなった。
 
管楽器ではFlソロが非常に素晴らしく、出てくるたびに聴き惚れた。
ティンパニも効果的で、第4楽章の主題提示を締めくくる一打ちなど快哉。
 
TrpとTrb(各女性4人ずつ)が、最後まで頑張ってはいたものの、後半ややパワーダウンしたこと、HrnとObの音が斉諧生がブルックナー演奏に持つイメージから外れていたこととが、少し残念。後者は好みの問題だろうが。
 
アンコールは、なし。
 
この指揮者が知られること薄いのは、非常に残念である。
特にブルックナーは、もっと聴きたいものだが、常任指揮者をつとめる関西シティ・フィルでも当面予定にないようだ。

11月19日(日): 

 ミクローシュ・ペレーニ&イエネ・ヤンドーデュオ・リサイタル@京都コンサートホールを聴く。

今日の曲目は、
ブラームス;Vcソナタ第1番
コダーイ;無伴奏Vcソナタ
リスト;Pソナタ
というもの。
デュオ・リサイタルの場合、通常は合奏の曲がメインになると思うが、コダーイやリストという難曲を敢えてプログラムに組み、この曲順とした演奏者の心意気、また、「トリ」をピアニストに譲ったチェリストの謙虚さに感銘を受けた。
 
発売初日に予約した、最前列中央、弦の振幅まで見分けられる席で、ペレーニ師のチェロを堪能した。
 
ブラームスは、大言壮語のない、渋い渋い音楽。
第1楽章第2主題は、「激しく情熱的」とされ、奏者によってはひときわ大きな身振りを施すところだが、むしろ声をひそめるかのように、落ち着いた音量でしみじみと。
楽章終了後、遅刻客が入りしかも大きな物音がして間が空いたときも、調弦を試すかのように軽く音を出して一気に集中力を高め、第2楽章を始めた呼吸は素晴らしかった。
 
コダーイ;無伴奏Vcソナタは、文字どおり「天下一品」、現今この曲を演奏しては世界一と唱うべき名演。
今年2月のカザルス・ホールでもそうだったが、技術的な完璧性に情熱や気迫が加わり、ただただ心を奪われるばかり。
演奏至難とされる曲ゆえ、ペレーニ師といえどもさすがに額から汗が楽器にしたたり落ちるのだが、表情には余裕さえ感じられ、思いどおりの響きが得られたのか暖かい微笑を湛える瞬間も度々であったことを報ずるのみ。
 
まことにこのような演奏を前にしては、斉諧生ごときの言葉は虚しい。
ただただ音楽そのものが眼前に立ち現れ、時間の経過さえもはっきりしない至福の空間のみが存在する。
 
休憩後のリスト;Pソナタは、ピアノ音楽に疎いので大層なことは言えないが、堅牢な技巧と確かな楽曲把握があるように感じられた。
 
残念ながら、アンコールは両者とも無し。
 
終演後のサイン会では、思い切って話しかけてみた。
斉諧生「バッハの録音を切望しています。」
ペレーニ師「20年前にやっていますよ。」
斉諧生「それは聴いていますが…。」
ペレーニ師「新しいの、ですね。ビデオがありますよ。」
斉諧生「捜してみます。」
 
こう書くともっともらしいが、斉諧生の英会話力は極めて乏しく、ほとんど単語しか通じなかった模様(^^;;;;
さてそのビデオ、どこで入手できるものやら…。買えないまでも、せめて視聴したいものだが。
 

 

ミクローシュ・ペレーニ(Vc)ヤーノシュ・ロッラ(指揮)リスト室内管、ハイドン;Vc協第1・2番(HUNGAROTON)
上記ペレーニ&ヤンドー演奏会のロビーで両者のCDを販売していた。
ほとんどはヤンドーのNAXOS盤だったが、ペレーニの数種のうち、唯一架蔵していないハイドンのHUNGAROTON盤CDがあったので購入。
これまでCDは米LaserLightのバジェット盤しか架蔵していなかったのである。
なお、ブックレットの記述から録音年が1979年と特定できたのは収穫。
 
アレクサンドル・クニャーゼフ(Vc) バッハ;無伴奏Vc組曲ほか(DML)
新譜の時には、難病からの恢復とか交通事故(愛妻を失い本人も重傷)とかを取り上げての「奇跡のチェリスト」なる謳い文句に辟易して見送っていたCD。
たしかにプロセスは偉大だろうけれど、それで宣伝するということは、ゴール(演奏そのもの)は買うほどのことがないんじゃないか…と思ってしまうのである。
ところが、今年の来日公演(カザルス・ホール)を聴かれた方から、素晴らしいチェロという情報があり、お薦めに従って今週木曜にNHK衛星第2で放送された当日の模様を視聴したところ、なるほど間然とするところのないバッハ。
慌ててあちこち捜して購入したもの。
CD3枚組、無伴奏Vnパルティータ第2番からクニャーゼフが編曲したシャコンヌがフィルアップされている。
なお、サンプルがWebで提供されている。→ここを押して

11月18日(土): 

 

園田高広(P)近衛秀麿(指揮)日本フィル、ベートーヴェン;P協第5番「皇帝」(DENON)
最近、東京方面のファンを中心に「御大」という呼び方が使われているようである。
管見する範囲では、朝比奈隆スヴェトラーノフに適用されているようだが、その昔、オーケストラの楽員から「オヤカタ」、すなわち「お館(様)」と呼ばれたというのが近衛秀麿である。
以前プラッツ(学研)レーベルで出た読売日響とのベートーヴェン;交響曲第5・6・9番(最近再発された)など、「近衛版」と呼ばれるオーケストレーション改訂が極めて面白く、彼の指揮に興味を惹かれて購入したもの。これが近衛最後の録音だそうだ。
もちろん壮年期の園田のベートーヴェン演奏も楽しみ。
1970年8月4日の録音、オーケストラは分裂前の日本フィル。ちょっと聴いてみたところ、ピアノの録音は明確だが、管弦楽は少々ぼやけ気味、音場も左右に分裂傾向なのは残念。収録時間38分強というのも…。
 
ヴィクトリア・ムローヴァ(Vn)ブルーノ・カニーノ(P) バッハ;Vnソナタ集ほか(Philips)
先日、Webを検索していたときに素敵なページに行き当たった。「ただもの」さんのpallette d'azmである。読書・音楽・美術等に趣味の良いコンテンツが美しいWebデザインに盛られており、検索そっちのけで読みふけってしまった。
そこで紹介されていたのがこのディスク。
大バッハの6つのVnソナタのうち第1・2・6番C.P.E.バッハ;Vnソナタ ハ短調Wq.78を収めている。
第6番第3楽章は、チェンバロ(ピアノ)だけで演奏されるのだが、
いつ聴いても繰り返し聴いても飽きのこない演奏。
 落ち着いた佇まい、優雅な閃き、彼のセンスの良さを感じます。
とのこと、カニーノは斉諧生贔屓のピアニストでもあるので、ぜひ聴いてみたいと購入。
今日は『レコード芸術』『グラモフォン・ジャパン』が発売されていたが、最近は雑誌の評を読んで買うことはめっきり少なくなり、こうしたWebpageでの思い入れ厚い紹介を見て買うことが多くなった。

11月17日(金): 

 オランダの通販サイトCD TeleshopからCDが届いた。

フレデリック・ロデオン(Vc)テオドール・グシュルバウアー(指揮)ニュー・フィルハーモニア管、シューマン;Vc協ほか(ERATO)
ロデオンにはピエール・アモイヤルと共演しているチェリストという以上の認識がなかったのだが、『レコード芸術』11月号の前田昭雄氏@シューマン研究者の一文を読んで、俄然興味をおこした。
「(前略)ここに私は言いようもなくシューマン的な、内的なつよさと気の閃きを覚える。
 このディスク、お持ちの方はむしろ少ないと思うが、他にも多くの美点を持つ、優れた暖かい演奏だ。
店頭や通販サイトで捜してみたが、ひと頃あちこちに転がっていた(失礼!)のに、すっかり見かけなくなっている。ようやく上記CD Teleshopで見つけたもの。
Vc協は1970年代中頃(?)の録音。他に同じ作曲家の
ジョルジ・シェベック(P)ルイ・フレモー(指揮)パドルー管、P協
カトリーヌ・コラール(P) 「子供の情景」
をカプリング。

11月16日(木): 

 Parnassus RecordsからLPが届いた。また、CDを数枚購入。

ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮)モスクワ放送チャイコフスキー響、チャイコフスキー;交響曲第2番ほか(RELIEF)
このところ買い続けているフェドセーエフのRELIEF録音の新譜が店頭に並んでいたので購入。
今回のカプリングは、指揮者自編で「眠りの森の美女」*大*組曲。12曲約37分となっている。Vc、Hp、Fl、Ob、Cl、Hrn等、オーケストラの首席連中の名前がクレジットされ、ブックレットに各自の写真とバイオが掲載されている。ソロをたっぷり聴かそうという趣向だろうか。
いずれも1999年録音。
これで、チャイコフスキー;交響曲全集に第6番を残すのみとなった。
 
イヴァン・フィッシャー(指揮)ブダペシュト祝祭管ほか、コダーイ;ハンガリー詩篇・ガランタ舞曲・マロシュセーク舞曲(HUNGAROTON)
フィッシャーと彼のオーケストラの録音は最近Philipsから出ているが、ひょっとしたら、HUNGAROTON時代の方が良かったのかもしれない…と、先日、ブラームス;ハンガリー舞曲集の新旧両盤を聴き比べてから感じ始めている。
ふと音盤屋の棚にコダーイの作品集を発見、↑のようなことを考えて購入。
ブックレットには1990年6月の録音とある。
 
アーロン・ロザンド(Vn)ヒュー・スン(P) ヘンデル;Vnソナタ第1〜6番ほか(Biddulph)
アメリカの実力派、ロザンドの未架蔵盤が中古格安で出ていたので購入。
最も有名な第4番 ニ長調はもちろんだが、最近の研究で偽作とされる第2・3・5・6番を敢えて収録。そのためか、ジャケットには「ヘンデル(クリュザンダー編集)」と表示されている(クリュザンダーは19世紀のヘンデル全集編纂者)。
歴史的録音の復刻で知られるBiddulphだが、これは1992年1月の新録音。
 
ローラ・ボベスコ(Vn)ジャック・ジャンティ(P) モーツァルト;Vnソナタ集(Philips)
ボベスコは最近動静を聴かなくなったが、1980年前後、日本の熱心なファンが来日公演を招聘し、気品高い演奏で非常に評判になった。斉諧生は当時大学生、リサイタルや東京交響楽団との共演を聴いた記憶がある。
これは、1981年9月の来日時に一挙LP5枚分を録音したうちの1枚。米TELARCのジャック・レナーが録音エンジニアを務めたことも話題だった。
当時、リリースを待ちかねるようにLP箱物を入手したが、デジタル録音なのでCDでも持っておきたいと、少しずつ集めているところ、未架蔵のものを中古格安で発見したので購入。
第28番ホ短調K.304第34番変ロ長調K.378第40番変ロ長調K.454を収める。
 
オスカー・シュムスキー(Vn)シーモア・リプキン(P) グリーグ;Vnソナタ第1〜3番(Biddulph)
尊敬すべきシュムスキーの遺産をちゃんと集めておこうとしているところ、未架蔵のグリーグが中古格安で出ていたので購入。
歴史的録音の復刻で知られるBiddulphだが、これも1993年1月の新録音。
 
アンシ・カルトゥッネン(Vc)トゥイヤ・ハッキラ(Fp)ベートーヴェン;Vcソナタ第2番ほか(FINLANDIA)
既に第1集と第3集を架蔵しているカルトゥッネンのベートーヴェン全集の、残る第2集が某音盤店の半額セールで出ていたので購入。
標記第2番のほかVcソナタヘ長調op.17(Hrnソナタの編曲)と2つの「魔笛」変奏曲を収録。
 
スティーヴン・イッサーリス(Vc)パスカル・ドゥワイヨン(P) ドビュッシー;Vcソナタ&プーランク;Vcソナタ&フランク;Vcソナタ(Virgin)
1989年録音の旧譜。
イッサーリスはhyperionレーベルでのフォーレ;Vcソナタ集以来、ずっと気にしているチェリストなので、架蔵済みと思っていたが、捜しても一向に出てこない。
どうやら買いそびれているらしいと気がついたときには店頭から姿を消していたところ、中古格安で発見したので購入。
 
ヤシャ・ハイフェッツ(Vn) バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(BMG)
ハイフェッツのバッハは、「非精神的云々」との評を真に受けてしまって永らく買いそびれていたが、近頃になって、きちんと聴かねば…と反省、2枚組全曲盤が安く出ていたのを購入。
これは1952年のモノラル収録、ハイフェッツ唯一の全曲録音である。
 
鈴木雅明(指揮)バッハ・コレギウム・ジャパンほか、バッハ;カンタータ全集第13巻(BIS)
ずっと買い続けているBCJのカンタータ全集の新譜を購入。
今回は第25番第50番第64番第69番a第77番を収める。
この全集、出始めた頃は音盤店の目玉商品の値付けだったが、最近では通常価格。息切れ(?)して買わなくなった人が増えてきたのだろうか。
もっとも買っても聴き通していないのでは…(自戒)。
 
ベルンハルト・パウムガルトナー(指揮)カメラータ・アカデミカ・ザルツブルクほか、モーツァルト;交響曲第26・30番ほか(米DGG、LP)
「ザルツブルク音楽祭モーツァルト・マチネ」というタイトルのLP。
表記の交響曲のほか、ディヴェルティメントK.136とアリア2曲(リタ・シュトライヒ(Sop))を収める。
パウムガルトナーのモーツァルト演奏は独特の嬉遊感、生命感があり、ぜひ聴きたいとオーダーしたもの。
日本で人気のあるシュトライヒが歌っているせいか、国内の中古音盤店の店頭ではかなり高価な値付けだが、これは格安(ジャケットが米国製のせいか? 中味は西独プレスだが)。
 
ロリン・マゼール(指揮)クリーヴランド管、ブラームス;交響曲第1番(米Columbia、LP)
珍しいマゼールのライヴ盤が出ていたのでオーダー。1973年10月4日、シドニー・オペラ・ハウスでの録音とのこと。
クリーヴランド管が、1973年9月10日〜10月4日にハワイ〜ニュージーランド〜オーストラリアを演奏旅行した最終日、当時オープンしたばかりのシドニーのオペラハウス(その頃は、あの特徴ある外観が悪評さくさくだったはず)で開いたコンサートをオーストラリア放送協会が録音、米コロンビアがLP化したもの。
ライヴで燃えるというマゼールの真骨頂が聴けるかもしれないと期待している。セルの薫陶が色濃く残っていただろうオーケストラも楽しみ。
 
ポール・パレー(指揮)デトロイト響、ラフマニノフ;交響曲第2番(米Mercury、LP)
先だって購入したドビュッシー同様、Mercuryの初期ステレオ盤LPである。
その際書いたように、Mercuryのステレオ盤は概して高価なのであまり積極的には買っていないのだが、これも格安の値でカタログに出ていたのでオーダーしたところ、運良く取れた。
この曲は、音質的にはMercury後期の再発盤の方が優れているという話も聞いたことがあるが、やはりオリジナルの番号のものを架蔵しておきたいところだ。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ室内管ほか、ウェーベルン;交響曲ほか(米dial、LP)
これは今回の入荷の中で最も嬉しい1枚。
レイボヴィッツはシェーンベルク;「ピエロ・リュネール」を聴いて作曲家を志し、第二次大戦後、十二音音楽を普及させる上で大いに力があった。
ところが、録音活動ではポピュラー名曲が多く、新ウィーン楽派の作品は極めて少ない。一連のdial盤は、彼の本領たる十二音音楽を聴くことができる稀少な記録である。
米dialは、LP初期に彗星のように現れて現代音楽を生々しい録音で次々に発売したレーベルだが、間もなく消え去ってしまい再発されることもなかったので、入手は極めて困難。
この録音も永く捜していたのだが、カタログ上にすら見いだすことが出来なかったもの。ようやく巡り会えてオーダー。
なお、オーケストラは全員がフランス国立管の楽員であるとライナーノートに記されている。
作曲者の知友ルドルフ・コーリッシュを第1Vnに擁するプロ・アルテQによる 弦楽四重奏のための5つの楽章op.5 弦楽四重奏のための6つのバガテルop.9
をカプリング。
 
ウェンディ・カーロス(シンセサイザー) バッハ;ブランデンブルク協(シンセサイザー編、全曲)(米CBS、LP)
ブランデンブルクの珍しい(笑)盤があったのでオーダー。
シンセサイザー音楽の鼻祖、ウォルター・カーロス(ウェンディは性転換手術後の名前)の手によるものである。
今では当たり前のシンセサイザーも、1968年に彼(当時)の「スウィッチト・オン・バッハ」第1集が出たときにはセンセーショナルだった。
それに収録されていたのが第3番、更に第2集に第5番収録される等していたが、残りの曲を追加して1979年に「スウィッチト・オン・ブランデンブルク」と題して発売された全曲盤がこれ。
なお、最近、本人の手でリマスター(一部補作?)の上、CD化されたとのこと。→情報はここ又はここを押して
また彼女(現在)の公式Webpageがある。→ここを押して
 
ポーラ・ロビソン(Fl)ケネス・クーパー(Cem)ティモシー・エディ(Vc) バッハ;Flソナタ全集(米Vanguard、LP)
ロビソンはカザルス(指揮)マールボロ音楽祭管で吹いていた人だが、ソロ・アルバムも多数ある。
木質感のある清楚な音色が好もしく、いろいろ集めているが、ずっと捜していたバッハが、LPで見つかったのでオーダー。
偽作とされるBWV1020・1031・1033を含む7曲のソナタと無伴奏FlパルティータBWV1013を収録。
1970年代中頃の録音。
 
アルテュール・グリュミオー(Vn) バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(仏Philips、LP)
 
オスカー・シュムスキー(Vn) バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(米MHS、LP)
 
セルジウ・ルカ(Vn) バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(米Nonsuch、LP)
 
ギドン・クレーメル(Vn) バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(蘭Philips、LP)
なぜか今回のカタログにはバッハ;無伴奏Vnの全曲盤が多く掲載されており、関心の高い盤にオーダーをかけたところ、あろうことか全部取れてしまった。(汗)
 
このうち、グリュミオー盤(1960〜61年録音)は、恥ずかしながらLP・CDを通じ初めて買うことになる。
バッハの舞曲的・世俗的側面を重視した演奏といわれ、シェリング盤あたりの陰に隠れて、あまり日が当てられていない録音であった。
もちろんCD化されているが、彼の美音はアナログ盤で聴きたく、CDは買わずにきた。ようやく手頃な価格の全曲盤を見つけたのでオーダー。
フランス・プレスだったのが多少心残りではあるが、状態もよろしく、手に入ったことを喜びたい。
 
最も待望していたのがシュムスキー盤(1975年録音)。
ASVレーベルから出たCDを架蔵しているが、やはりアナログ録音はLP、しかもオリジナルのMusic Heritage Societyレーベルで…と念願していた。
ひょっとしたら再発時のものかもしれないが、ともあれ格安で入手できたので満悦至極。
 
ルカ盤(1977年録音)は、先日、CDで買ったばかり…(^^;
これも1669年製ニコラ・アマティの美しい音をアナログ盤で楽しみたいと、格安だったこともあり、オーダーしたもの。
 
クレーメル盤(1980年録音)は、CDでは全曲盤を、LPでは1枚(2曲分)だけを架蔵している。
いずれ全曲をLPで…と思っていたところ、やはり格安で出ていたのでオーダーしたもの。
 
ドミトリー・シトコヴェツキー(Vn)ラルフ・ゴトゥーニ(P) プロコフィエフ;Vnソナタ第1番&バッハ;無伴奏Vnソナタ第2番ほか(独DGG、LP)
シトコヴェツキーが25歳で1979年の第1回フリッツ・クライスラー・コンクールで優勝したことから製作されたLP。彼のデビュー盤だろうか。
ウィーンで開かれたコンクールの記録ではなく、1979年10月30日にミュンヘン・ヘルクレス・ザールでのコンサートのライヴ録音。
彼の録音は、1980年代にOrfeoに入れたものもなかなか良く(バッハ;無伴奏やクライスラー作品等)、当時の演奏を更に聴いてみたいとオーダーしたもの。
標記の2曲以外に、パガニーニ;ラ・カンパネッラほか小品1曲を収録。
 
セルジウ・ルカ(Vn)ほか、タルティーニ;「悪魔のトリル」ほか(米Nonsuch、LP)
上記バッハ同様、ルカが1669年製ニコラ・アマティを使用した録音をもっと聴いてみたくなり、オーダーしたもの。
1978年の録音で、「悪魔のトリル」は「原典版による」とされている。
シャブラン;Vnソナタナルディーニ;Vnソナタ第1番という、あまり名前を聞かない曲をカプリング。
通奏低音はバーバラ・ボガーティン(Vc)、ジェイムズ・リッチマン(Cem)。
 
アーロン・ロザンド(Vn) バッハ;無伴奏Vnパルティータ第2番ほか(米AUDIOFON、LP)
アメリカの実力派、ロザンドの無伴奏リサイタル盤。
彼のバッハは、先年全曲盤のCDが出たが(VOX)、これは別録音。
その他、
テレマン;幻想曲第12番
エネスコ;プレリュード
イザイ;無伴奏Vnソナタ第2番
をカプリング。
録音年月は明記されていないが、1980年代初め、アナログ最末期と思われる。ライナーノートに「デジタル技術は未完成なので、あえてアナログで収録する」と書かれている。
 

11月14日(火): 

 

パーヴォ・ベリルンド(指揮)ボーンマス響ほか、シベリウス;「クッレルヴォ」ほか(EMI)
ベリルンド(ベルグルンド)による「クッレルヴォ」最初の録音ほかが廉価2枚組で発売されたので購入。
1枚目に「クッレルヴォ」を、2枚目に
組曲「カレリア」
「歴史的情景」第1組曲
交響詩「フィンランディア」
Vnと管弦楽のためのセレナード第1・2番(Vn;イダ・ヘンデル)
交響詩「大洋女神」
交響詩「タピオラ」
を収録。Diskyレーベルで出ている交響曲全集にフィルアップされている交響詩とダブらないのはありがたい。

11月13日(月): 

 

ペトリ・サカリ(指揮)アイスランド響、シベリウス;交響曲第6・7番ほか(NAXOS)
NAXOSレーベルとしては2回目の録音になるシベリウス;交響曲全集が完成した(1回目はエイドリアン・リーパー(指揮)スロヴァキア・フィル)。
今回のシリーズは概して好演(ベストとは言わないが)、大好きな6番をサカリがどう演奏してくれているか、とりわけ楽しみである。
「テンペスト」第2組曲をフィルアップ(第1組曲交響曲第2番とカプリング)。
まだタピオラエン・サガ等々、魅力的な管弦楽曲が残っているし、サカリの恩師ヨルマ・パヌラの録音があるクッレルヴォも含めて、録音プロジェクトを更に進めてくれることを期待したい。
 
アンドレ・クリュイタンス(指揮)パリ音楽院管、ベルリオーズ;幻想交響曲ほか(Altus)
いまや伝説と化している1964年の来日公演ライヴ。
クリュイタンスの評価が日本で際だって高いのは、このときの素晴らしい演奏が、記憶の中に定着し、継承されているからだと思う。彼のライヴ盤は、海外のレーベルからはほとんど発売されていない。
実は、この音源を買うのは3回目。キング盤LP、同CD、そして今回のリマスタリング。
収録されているのは、1964年5月10日の東京文化会館での演奏会、メインプロの幻想に加え、アンコールのムソルグスキー(ラヴェル編);『展覧会の絵』より「古城」ビゼー;『アルルの女』第2組曲より「ファランドール」を収めているのが、キング盤との大きな違い。これだけでも買い直す価値があろう。
さて、リマスタリングの成果だが、キング盤CDと比較してみた。
一聴してわかるのは、Altus盤の方が音と定位が鮮明であること。これは段違い。
各パートの音をマスターテープから抜き出して磨きあげ、奥行きのあるステレオ空間に置き直したような、そんな感じを受ける。
ただ、ちょっと磨きすぎたかな…と思わないでもない。キング盤は、少し曇ったような滲んだようなところがあるが、自然に音が伸びている。
ともに捨てがたく、アンコール2曲の追加を思えばAltus盤は十分購入の価値があるし、またキング盤を中古屋で捜すのにも意味があろう。
 
アンドレ・クリュイタンス(指揮)パリ音楽院管、ラヴェル;管弦楽曲集ほか(Altus)
こちらはキング盤LPについで2回目の購入。
キング盤CDで1枚に収めるために省かれたクープランの墓を復活させ、更にアンコールのベルリオーズ;ラコッツィ行進曲を追加した2枚組。1964年5月7日東京文化会館でのライヴ。
キング盤LPと比較してみたが、こちらはAltus盤CDが圧倒的に優れている。上記幻想交響曲と違って音源がモノラルである分、キング盤では分離の悪さが目立ち、音楽が不鮮明すぎる嫌いがある。
上記2曲のほか、
スペイン狂詩曲
組曲「マ・メール・ロワ」
ラ・ヴァルス
亡き王女のためのパヴァーヌ
「ダフニスとクロエ」第2組曲
を収録。
なお、クープランの墓「クープランを偲んで」と訳すべき、というのが斉諧生の持論。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)ロンドン響ほか、ストラヴィンスキー;春の祭典ほか(BBC LEGENDS)
マルケヴィッチのライヴ盤! これは嬉しい、買わざるべからず。
1962年8月26日、エディンバラ音楽祭におけるアッシャー・ホールでのライヴ録音(ステレオ)。
チャイコフスキー;幻想序曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」
ガリナ・ヴィシネフスカヤ(Sop) ムソルグスキー;歌曲集
をカプリング。
ムソルグスキーは、このCDには明記されていないが、マルケヴィッチ自身による管弦楽編曲。同時期(1962年6月)に同じ歌手・ソヴィエト国立響とスタジオ録音したCDもあった(Philips)。

11月12日(日): 

 Compact Disc ConnectionからCDが届いた。

アルトゥール・ルービンシュタイン(P)ダニエル・バレンボイム(指揮)ロンドン・フィル、ベートーヴェン;P協全集ほか(BMG)
ルービンシュタイン大全集からの分売、リマスタリングが成功しているとの情報なので、折を見て買い集めたいと考えている。
音盤屋店頭では安いところでもミッド・プライス、下手をすると2,000円超で売られているが、ここでは10.24ドル。送料を考慮してもお買い得だろう。
とはいえ全部を買うわけにもいかないので、とりあえずベートーヴェンの協奏曲全集(1975年録音の新盤、単売3枚)をオーダー。3枚目にPソナタ第18番がフィルアップされている。
このうち第5番「皇帝」宇野功芳師が「人類の至宝」と絶讃の一枚、LP時代から愛聴している。
既に国内でCD化された盤を架蔵しており、比較試聴してみたところ、なるほどピアノの響きと余韻、ホールの奥行き感など今回のリマスタリング盤が遙かに優れ、ケネス・ウィルキンソンによる録音の優秀さが明らかになっている。
旧盤はピアノの鍵盤が左右のスピーカーの幅一杯に展開して、その後ろにオーケストラが横一列に並ぶ…なんと巨大なピアノでしょ、という趣。
もっとも、これはLP(国内盤)も同様で、たしかルービンシュタイン自身がそういうバランスでないと首を縦に振らず、これに同意しない指揮者とはけっして共演しなかった…という話を読んだことがある。
 
ウィントン・マルサリス(Trp)エサ・ペッカ・サロネン(指揮)フィルハーモニア管、トマジ;Trp協&ジョリヴェ;Trp協・Trp協第2番(CBS Sony)
サロネンの初期録音(1986年)、店頭で見かけなくなっているので(ジャズの棚を捜すのを忘れていたが)、オーダー。
初出時にはソリストばかりが話題になったものだ…。
しかし正味35分弱とは…(^^;。
 
リカルド・オドノポソフ(Vn)ほか、ラロ;スペイン交響曲&ショーソン;協奏曲(DORON)
『レコード芸術』11月号「海外盤試聴記」で気づいたCD。
もともとショーソンの曲は見れば買うのだが、
彼の録音の中でも特筆すべき名演奏であり、音質も大変美しい。
 落ち着いた情緒で格調高くこの"悲愁の曲"を歌い上げてゆく。
とあるので、ぜひ聴いてみたいとオーダーしたもの。
1971年2月8日、シュトゥットガルトでの放送用録音で、正規音源からのCD化。
共演はエドゥアルト・ムラツェク(P)、オーストリア弦楽四重奏団
ラロの方は1952年7月29日、オランダ・ユトレヒトでのモノラル録音で、付けはワルター・ゲール(指揮)ユトレヒト響
 
ウェイン・マーシャル(Org) オルガン即興集(DELOS)
先だってオーレ・エドワルド・アントンセンとのデュオ・リサイタル@シンフォニー・ホールで彼のオルガンを聴き、中でもガーシュウィン;サマータイムでのセンシティヴな弱奏に感じ入った。
彼のオルガンによるジャズを更に聴くべく、店頭を捜したが見当たらなかったのでオーダーしたもの。
上記リサイタルでも取り上げられたウェストサイド・ストーリー・メドレーや、ピアノによる録音もあるガーシュウィン;「アイ・ガット・リズム」・「アイ・ラヴ・ユー・ポーギー」、はたまた「A列車で行こう」等々、全10曲を収める。
使用楽器はアメリカ・ダラスのメイヤーソン・シンフォニー・センターのフィスク・オルガン、コンサートホールのものとしては世界最大級と云々。
なお、ブックレットにマーシャルのコメントがあり、その末尾に"There are no mistakes in improvisation. ENJOY!"とある。自信、それともジョーク???

 8日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。


11月11日(土): 東京方面の知人(複数)からの知らせによれば、今日の東京交響楽団第475回サントリーホール定期演奏会で、パーヴォ・ヤルヴィが、アンコールにステーンハンマル;間奏曲カンタータ「歌」よりを演奏したとのこと。
 ステーンハンマルの実演を聴き逃したとは実に口惜しいが、アンコールではどうにもならない。
 上記の知人からは異口同音に「良い曲だった」との感想を頂戴している。手に入りやすいCDでは、NAXOSオッコ・カム(指揮)ヘルシンボリ交響楽団、スウェーデン管弦楽曲集に収録されており、そちらでお楽しみいただけると幸甚である。

 amazon.ukからCDが、MikrokosmosからLPが届いた。
 前者は今週月曜日にオーダーを出したもの。もちろん「在庫あり24時間以内に発送」の品に絞ったのだが、急ぐときはここに限る。送料もアメリカのサイトよりはずいぶん安い。

ヘンリク・シェリング(Vn) バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(Sony Classical)
シェリングの旧盤、1952年のモノラル録音である(1955年とする資料も。この盤のジャケットには1965年録音と印刷されているが、もちろん誤り)。
定評のあるDGG盤は1967年の録音だから、その15年前ということになるが、出たときにはディスク大賞を受賞した(1955年)、やはり名演である。
このところバッハの無伴奏(VnもVcも)あらためて集めているところ、店頭から姿を消しつつある旧盤をオーダーしたもの。
ちょっと聴いてみたのだが、マスターテープの劣化と思われるノイズが全体に入っている。困ったことだ、オリジナルの初期LPを捜したくなるではないか…(嘆)。
 
ピエール・フルニエ(Vc) バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(Archiv)
言わずとしれた大名盤、フルニエの1960年スタジオ録音である。
実は、この演奏、これまでLPでもCDでも買ったことがない。学生時代に図書館から借りて聴いたくらいで、何となく敬遠してきた。
上記シェリング盤同様、あらためてのバッハ;無伴奏蒐集の一環としてオーダー。"The Originals"シリーズでリマスタリングされた盤である。
いずれはオリジナルのLPで聴きたいものだ(もちろん結構な値段がするのである)。
なお、フルニエには1959年のライヴ録音(ADDA、現在はaccordから)と1977年のスタジオ録音(Philips)がある。
 
ポール・パレー(指揮)デトロイト響、ドビュッシー;交響詩「海」・「イベリア」(米Mercury、LP)
SR90010という番号のついた、Mercuryの初期ステレオ盤LPである。
パレーのLPは、もちろん全部欲しいのだが、Mercuryのステレオ盤は概して高価。なかんずくドビュッシーやラヴェルの有名曲を収めたものには、ひときわ高い値がついているので、あまり積極的には買っていない。
こういう市場の評価が確立しているものは、ちゃんと流通するので、極端に言えば「金さえ出せば手に入る」。いずれ宝くじでも当たったときに揃える予定なので(笑)、今は集めなくていいと思っている。
ところが、これは慮外に格安の値でカタログに出ていたのでオーダーしたところ、運良く取れた。現品を見て納得、カットアウト盤である(小さい丸穴があけてある)。
前にも書いたが、そのあたりにはあまり拘らないたちで、プレスと盤面の状態が良好であればよいと思っている。
 
ジャン・ピエール・ランパル(Fl)ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・フィルほか、グルック;Fl協&伝ハイドン;「おもちゃの交響曲」ほか(米OCEANIC、LP)
レイボヴィッツの未架蔵盤がカタログに出ていたのでオーダー。ランパルに目をつける人がいるだろうと心配していたが、めでたく取れた。
十二音音楽の使徒が、どうして「おもちゃの交響曲」を録音するのか、思案に窮する一枚だが、何でも屋だった彼らしい…といえば、そうかもしれない。
レイボヴィッツとランパルというのも、ちょっと想像しにくい組合せだが、シェーンベルク;ピエロ・リュネールのdial盤(未架蔵)でも共演しているらしいし、戦後パリの楽壇では近いところにいたのだろう。ランパルも同時代の作曲家との縁が深かったから。
名手ピエール・ピエルロ独奏のコレッリ;Ob協をフィルアップ。
 
ポール・トルトゥリエ(Vc)ロバート・ワイス(P) シューベルト;アルペジオーネ・ソナタ&グリーグ;Vcソナタ(英EMI、LP)
トルトゥリエのアルペジオーネ旧盤は、国内盤LPと輸入盤CDで架蔵していたが、輸入盤LPが格安でカタログにあったのでオーダー。
1959年のパリ録音だが、現品は比較的最近のイギリス盤。
 
アントン・コントラ(Vn)ボフミラ・イェドリコーヴァ(P) ニルス・ゲーゼ;Vnソナタ第1・3番(丁EMI、LP)
19世紀スカンジナヴィア音楽の帝王、ゲーゼのVnソナタの録音は珍しい。彼のノヴェレットなどに聴ける北欧の抒情を期待してオーダーしたもの。
彼には3曲のVnソナタがあり、それぞれ1842年・1849年・1885年の作曲。前2曲は初期の、最後のは晩年の作品になる(ゲーゼは1817年生、1890年没)。
1977年の録音。

 今日届いた音盤の情報を、パレー・ディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。


11月9日(木): 

 

セルジュ・チェリビダッケ(指揮)スウェーデン放送響、シベリウス;交響曲第2・5番ほか(DGG)
チェリビダッケとスウェーデン放送響とのセット物、ようやく輸入盤が店頭に並んだので購入。彼のライヴ録音正規盤は揃えることにしている。
収録曲等は
フランク;交響曲(1967年12月1日)
ヒンデミット;交響曲「画家マティス」(1970年11月12日)
シベリウス;交響曲第2番(1965年11月28日、モノラル)
シベリウス;交響曲第5番(1971年3月21日)
ショスタコーヴィッチ;交響曲第9番(1971年3月14日)
R・シュトラウス;交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」(1971年3月21日)
R・シュトラウス;交響詩「ドン・ファン」(1970年11月19日)
ジャクリーヌ・デュプレ(Vc) ドヴォルザーク;Vc協(1967年11月26日)
最後の曲は先だって購入したTELDEC盤と同一音源。
 
吃驚したのは、「ドン・ファン」のヴァイオリン・ソロに「北欧のオイストラフ」アーヴェ・テレフセンの名前がクレジットされていたこと(国内盤には表示なし)。
調べてみたら、1970年当時、スウェーデン放送響のコンサートマスターだったことがわかった。
 
オスカー・シュムスキー(Vn)アンドルー・デイヴィス(指揮)フィルハーモニア管、ベートーヴェン;Vn協・ロマンス第2番(ASV)
シュムスキーの主要な録音のうち買いそびれていたベートーヴェンの協奏曲を見かけたので購入。
国内盤新譜で出たとき、宇野功芳師の評価@『レコード芸術』が今ひとつだったので見送ったのだが、ちょっと愚かな行為だった。反省。

11月8日(水): 

 ミシェル・ベロフリサイタル@いずみホールを聴く。

今日のプログラムは
メシアン;幼子イエズスに注ぐ20のまなざし
一曲のみ。
 
ベロフが世に出たのは1967年のメシアン国際ピアノ・コンクール優勝以来。その翌々年、19歳で初録音したのが本曲集の全曲盤(EMI)で、今なお決定盤の一角を占めている。
ピアノに疎い斉諧生だが、ドビュッシー;前奏曲集など彼を「刷り込み」に聴いてきたし、上記の「まなざし」全曲盤LPも架蔵している。
右手の故障から復活して、今の彼がどんな音を出すのか、メシアンの大曲をどう聴かせるのか、興味を感じて行ってみた。
 
響きの豊かな(多すぎる)ホールなので、なるべく直接音で聴こうと前の方の列に席を取る。
さすがにそのあたりはピアノ学習者とおぼしき人々を中心に埋まっていたが、全体としては半分程度の入りだったのは、少し寂しかった。
登場したベロフ、髪の毛は長くなく、束ねてもいない。最近のCDジャケットで見るよりは若々しく、彼20歳頃のイメージが刷り込まれている斉諧生としては、少しホッとする。(^^;;;;
 
第1曲「父なる神のまなざし」の冒頭、「神の主題」が、ゆったりと、弱音ながらピアノをよく響かせて、うち鳴らされた。
くぐもった音色で響く中音域の重層的な和音と、対照的に明るい硬質の音色で連打される高い単音から、早くもコスミックな雰囲気がたちのぼる。
 
複雑玄妙な分厚い和音の連打、目もくらむほどに色彩・温度のかけ離れた音の跳躍の連続、
鋭角的に飛び出す楽句の陰に潜ませた甘い和音、
ミニマルふうの繰り返し、オスティナート風に興奮させる俗な仕掛け、それを断ち切る激しい音型…
 
各曲のプログラムや、はたまた時間の経過も忘れて、「陶酔の迷宮」を連れ回される思いがした2時間だった。
 
最も印象に残ったのは第15曲「幼子イエズスの口づけ」の単純甘美な歌だが、これは斉諧生の聴体験からくるもので、ピアノや20世紀音楽に詳しい人ならまた別だろう。
 
ベロフの音色はきわめて多彩、ピアノであってピアノでないような、不思議な感覚。
レコードからは痩せ気味の硬質な音を想像していたのだが、実際にはもっと芳醇で豊かな音色である。
もっとも、高音の音色が、特に強奏したとき耳に硬いのは、音盤で聴くとおりだったが。
 
ホールの豊かな響きを意識したのか、かなりピアノを開放的に鳴らしており、響線の余韻で勝負したような曲もあった。
 
プログラムに、彼に師事した日本人ピアニストが寄稿しており、その中に「『暑苦しくてきらびやか』なのが彼の中でのメシアン像」というくだりがある。
開演前に読んだときは「?」だったが、実演を聴くと少しわかるような気がする。
 
アンコールはドビュッシー;「雪の上の足跡」(前奏曲集第1巻第6曲)
きわめて辛口のアプローチで、メシアンの「まなざし」より前衛的な作品かと思ってしまった。(^^;
 
なお、10日(金)には東京オペラシティで同じプログラムの公演があり、それに関連して、この曲集をめぐってのベロフのインタビューが掲載されている。
ここを押して

11月6日(月): 本日付けの京都新聞(夕刊)によると、京都市は、京都市響の第11代常任指揮者に大友直人が就任すると発表した。任期は来年4月1日からの3年契約、とのこと。
 おそらく、ウーヴェ・ムント(1998年4月〜)の任期満了に伴う後任人事…ということだろうが、ムントのもとでは京都市響が1段も2段も上の演奏力を発揮し、とりわけベートーヴェンやブルックナーに名演を聴かせてくれていただけに、また、大友の指揮にはあまり感心した記憶がないだけに、残念である。

 これはまったく根拠のない憶測だが…、
地方自治体おきまりの財政難の中で京都市の文化行政予算が削減され、ムントの契約を更新するだけの人件費予算が与えられなかった…といったところではなかろうか。
 ムント得意のブルックナーにしても、まだ第7・8番しか演奏しておらず、来年1月に第4番が予定されている程度。せめて退任後もできるだけ客演してもらって、ブルックナーなりベートーヴェンなりに名演奏を聴かせてほしいものである。
 また、3枚目までリリースされているArte Novaレーベルでのレコーディングも、継続を強く期待したい。

 

マルセル・モイーズ(指揮)マールボロ同窓アンサンブル、モーツァルト;セレナード第10番「グラン・パルティータ」(Boston Records)
新譜だが録音は20年前、1980年2月25・26日、ボストン・シンフォニー・ホール。
モイーズは1889年生まれだから(ほとんど)90歳の録音。1984年に没するから、おそらく最後の演奏記録であろうか。
ボストン響リチャード・マッケイ(Hrn)が音頭をとって、マールボロ音楽学校でモイーズの薫陶を受け、現在はアメリカのメジャー・オーケストラで活躍している奏者を13人集めて録音したもの。
斉諧生も名前を知っている有名どころでは
ハロルド・ライト(Cl) ボストン響
ジョン・ブルース・イェー(バセットホルン) シカゴ響
マイロン・ブルーム(Hrn) パリ管
といった名前が並んでいる。
「グラン・パルティータ」は好きな曲だし、名のある楽員たちの音も魅力、しかもマールボロ音楽祭所縁とあらば、買わざるべからず。
なお、プロデューサーはRCAで活躍したマックス・ウィルコックスがつとめており、立派な録音である。
 
ニコライ・ズナイダー(Vn)ローレンス・フォスター(指揮)ロンドン・フィル、ニルセン;Vn協&ブルッフ;Vn協第1番(EMI)
ニルセンのVn協の録音は比較的珍しい。LP期には、ほとんど秘曲扱いだった。
少し前から見つけてはいたのだが、ヴァイオリニストが新人らしい上にスラヴ系の名前なので、ちょっと敬遠していたところ、北欧音楽MLで流れてきた情報では、デンマーク生まれで同地のアカデミーで学びニルセン・コンクールで優勝した人とのこと。
ならば聴いてみようと、さっそく音盤屋へ赴いて購入。
ズナイダーは1975年生まれ、1997年のエリザベート王妃国際コンクールでも優勝、2001年2月にはロストロポーヴィッチ(指揮)ロンドン響来日公演のソリストに予定されている。
 
ウェイン・マーシャル(P) ガーシュウィン・ソングブック(Virgin)
先月27日にオーレ・エドワルド・アントンセンとのデュオを聴いて、あらためて感心したマーシャル。
その折りの白眉がガーシュウィン;サマータイムだったので、マーシャルがP独奏で録音したガーシュウィン・アルバムを思い出し、通販サイトで捜してみたが廃盤なのか見当たらず。
今日退勤後に立ち寄った音盤屋の棚に埋もれている(?)のを発見、幸運を喜びつつ購入。
12分以上をかけているサマータイムをはじめ、アイ・ラヴ・ユー・ポーギーエンブレイサブル・ユー歩み入る恋アイ・ガット・リズム等々、ガーシュウィンの名作歌曲に基づく即興14曲と3つの前奏曲を収録。

11月4日(土): 

 昨日届いた音盤の情報を、レイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。


11月3日(祝): 

 Compact Disc ConnectionからCDが、Ars AntiquaからLPが届いた。

ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)シュターツカペレ・ドレスデンほか、ベートーヴェン;交響曲第9番「合唱」(LASER LIGHT)
このほど開設2周年を迎えられた伊東さんのAn die Musikを拝見するのが、毎朝の楽しみである。
あるとき、ただごとならぬ書きぶりで熱烈に推しておられたのがこの盤。
このCDをどこかで見かけたら迷わず買うべきだ。
 カペレの奏者達の尋常ならざる気迫を感じさせる演奏で、ものすごい緊迫感と勢いがある。
 第1楽章冒頭の1分間ほどで異常な緊張感が聴き手にじかに伝わる。
 その後は文字どおり怒濤の演奏で、宇野功芳調になってしまうが、これこそまさに宇宙の生成である。
 私は何度もこのCDを聴き、その度に声を失うほどの感銘を受ける。
 私は、クラシック音楽を聴いていてよかった、と思う時がたまにある。このようなCDに巡り会ったときだ。理屈抜きですばらしい。
告白するのも恥ずかしいが、ブロムシュテットとドレスデンの「第九」にライヴ盤があることも知らなかった(1985年3月、ゼンパー歌劇場再建記念)。国内盤も遅れて1994年にDENONが出していたのに。
慌てて検索、Compact Disc Connectionにオーダー。
 
チャールズ・グローヴズ(指揮)ロイヤル・フィル、エルガー;弦楽のためのセレナードほか(IMP)
グローヴズは好きな指揮者ではあるのだが、あまり熱心に買い集めてはいなかった。
これも新譜の時には何も思わずに見送っていたのだが、『名指揮者120人のコレを聴け!』(洋泉社)竹内貴久雄氏が
エルガーのロマンティシズムが、何の衒いもなく、まっすぐに伝わってくる。
 とても大きなものに全身が包まれていくような、聴く者を幸福で満たしていくような演奏だ。
 聴いていて、思わず涙するほどの高揚感に襲われる。
と絶讃、慌てて捜したが見つからない。
更に、「後生畏るべし」KUMOさんが自身のWebpage
透明で艶のあるロイヤルフィルの弦が、自然体の流れの中で伸びやかに歌い、絶妙な融合で至福の響きを生み出しています。
 涙せずにはいられません。そして、シアワセにたっぷりと浸ったあとに残るこのすがすがしさは何でしょう!
と書いておられ、いよいよ聴かずにはいられなくなった(→ここを押して)。
やっとのことでCompact Disc Connectionで発見、オーダーしたもの。つまらないジャケットの廉価盤になってはいるが、入手の喜びこの上ないものがある。
ブリテン;フランク・ブリッジ変奏曲
RVW;タリス幻想曲
ティペット;コレッリ幻想曲
をカプリング。
録音は1989年9月、グローヴズ75歳の誕生日(1990年3月10日)の記念盤だったそうである。
 
ユリウス・ベルガー(Vc)ウラディスラフ・ツァルネッキ(指揮)プフォルツハイム南西ドイツ室内管、ボッケリーニ;Vc協集(ebs)
好きなチェリストの一人ベルガーの、ひょっとしたら最もまとまった仕事。CD3枚に世界初の2曲を含む12曲を収録している(録音は1987〜88年)。
しかも彼が弾いている楽器(アントニオ・ストラディヴァリ、1709年作)は、ボッケリーニが使ったものだそうな。
その後、転変を経てガスパール・カサドの手に渡り、その未亡人(ということは原智恵子さんということになる)がベルガーのコンサートを聴いて、ぜひ彼にと託したものだそうな。
国内の音盤屋店頭では結構な値段なのだが、Compact Disc Connectionでは2枚分くらいの廉価だったのでオーダー。
 
オスカー・シュムスキー(Vn)ミルトン・ケイ(P) クライスラー;Vn曲集(ASV)
先頃残念なことにシュムスキーの訃報が伝えられた。調べてみると、7月24日にニューヨークで亡くなっていたらしい。享年83。(→ここを押して)
クラシック招き猫千々岩英一@パリ管さん特設掲示板に、千々岩さんがクライスラーの録音がお薦めと書き込んでおられたので、捜してみたが、あろうことか見つからない。たしか3〜4枚分の録音があったはずなのに…。
ようやく1枚に抜粋した廉価盤が見つかったのでオーダー。
ウィーン奇想曲愛の喜び愛の悲しみ美しきロスマリン前奏曲とアレグロ(プニャーニのスタイルによる)レシタティーヴォとスケルツォ(無伴奏)等々、主だった曲は網羅されている。
 
シクステン・エールリンク(指揮)ストックホルム・フィル、シベリウス;交響曲第2番(米Mercury、LP)
待望の1枚が入手できた。
エールリンクによる初のシベリウス;交響曲全集(1952〜53年)、少しづつ集めてきたが、ようやく全7曲が揃った。\(^o^)/
もちろん、先だってFINLANDIAから全集がCD化されたものだが、復刻の状態があまりよくなく、LPを捜し続けていたのである。
なぜか最もメジャーな第2番が最も入手難。ふとカタログに見つけ、急いでオーダーしたところ目出度く届いた。値段も非常に手頃で喜ばしい。
なお、標記のオーケストラ名はCDに従ったが、LPジャケットにはストックホルム放送響と印刷されている。
 
イェフディ・メニューイン(指揮)バース音楽祭管、バルトーク;弦楽のためのディヴェルティメント&ストラヴィンスキー;弦楽のための協奏曲ほか(英EMI、LP)
弦楽合奏曲は全般に好むが、中でもバルトークのディヴェルティメントは優れた曲なので集めようと思っている。
作曲者と親交があり無伴奏Vnソナタにも名演を遺したメニューインの演奏は聴き逃せないとオーダー。
1960年代半ば頃の録音、ヒンデミット;弦楽のための5つの小品をフィルアップ。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)ベルナール・トマ(指揮)ベルナール・トマ室内管ほか、ルクレール;Vn協ほか(仏BT、LP)
カントロフのLPは見逃すことができない。彼の美音はアナログで堪能したいものだ。
彼のルクレール録音は仏ARIONレーベルにヴェイロン・ラクロワとのソナタ集もあったが、これはヘ長調op.7-4の協奏曲。
ただし彼の演奏は片面だけで、もう片面は他のヴァイオリニストらによる
バッハ;VnとObのための協BWV.1060
ヴィヴァルディ;2本のVnのための協op.3-8
を収録。録音データ不詳。
編集ものなのかオリジナルなのか、解説がないのでよくわからない。レーベルすら判然とせず、ひょっとしたらオーケストラの自主製作盤なのかもしれない。
 
クレア・ベルナール(Vn)アラム・ハチャトゥリアン(指揮)ブカレスト響ほか、ハチャトゥリアン;Vn協&プロコフィエフ;Vn協第1番(仏Philips、LP)
Vn協の中でも愛好するプロコフィエフ;第1番の未知の音盤を見つけたのでオーダー。
ヴァイオリニストは1947年ルーアン生まれ、パリ音楽院に学び、1964年にルーマニア・ブカレストで開かれたエネスコ国際コンクールで優勝。
これは翌1965年1月にブカレストで録音された、その記念盤。悪く言えば際物だが、それにしてもハチャトゥリアンの指揮に作曲者を起用したとは力が入っている(プロコフィエフはコンスタンティン・ブゲアヌ(Bugeanu)という別な指揮者)。
現物はモノラルだが、当然ステレオ録音だったろう。残念。
 
サシュコ・ガヴリーロフ(Vn)ハンス・アンドレーエ(Cem)ロベルト・ネッテコーフェン(Vc) バッハ;Vnソナタ第1〜4番(米Chamber Music Society、LP)
F.P.ツィンマーマンらの先生でもあり、それ以上に戦後のヨーロッパで現代曲を一手に引き受けてきたヴァイオリニスト、ガヴリーロフ。
彼の演奏は、前にブラームスほかのCDで感心してから、ずっと捜しているのだが、競争相手が多いのか、なかなか手に入らない。
ようやくバッハの通奏低音付きソナタが入手できたが、収録されているのは6曲のうち4曲のみ。残る第5・6番は録音されているのだろうか?
マルPが1957年のモノラル録音、コンサートホール原盤、レーベルには非商用と表示されている。
なお、紅い半透明のLPだったので開封したときは仰天した。
その昔、「静電気が発生しない素材」という触れ込みで紅いLPを作った会社があると聞いたが(日本では東芝だったか。LPは静電気でパチパチというノイズが出るのが大問題だったのである)、これもそういうものなのだろうか。
 
(附記)「東芝の紅いレコード」について、読者の方からメールを頂戴した。
「エバークリーンレコード」という名称で、「レコード界の革命」「永久にチリやほこりのつかないレコード」という宣伝文句だったそうである。
追補させていただくとともに、謝意を表します。
 
ルドルフ・ヴェルテン(Vn)相良明子(P) フランク;Vnソナタ&ルクー;Vnソナタ(仏EMI、LP)
ルクーの録音も手に入るかぎりは集めたいものと念じているところ、未知の盤がカタログにあったのでオーダー。
ヴェルテンといえば、最近はイ・フィアミンギの指揮者として活動しているが、ソリストとしての録音があるとは知らなかった。
ピアニストは1946年群馬生まれ、桐朋出身とのこと。姓名の漢字はうろ覚えの当てずっぽう、間違いがあればお詫びしたい。
 
シャルル・ヨンゲン(Vn)ジュリエット・プーメイ(P) フランク;Vnソナタ&ルクー;Vnソナタ(白MBM、LP)
またまたルクーの未知の盤を見つけてオーダー。
なんと、2曲をそれぞれLP1枚に収めた2枚組だった。
演奏者の経歴、録音データ等は未詳。ライナーノートの序文に1971年9月の日付があるので、その頃のものだろうか。
ともあれ地元ベルギーのレーベルなので(製作は白Alpha)、演奏にも期待したい。
 
アーヴェ・テレフセン(Vn)ロバート・レヴィン(P) グリーグ;Vnソナタ第2・3番(仏Philips、LP)
「北欧のオイストラフ」の異名をとるノルウェーの名ヴァイオリニスト、テレフセンのグリーグと会っては見逃せない。即オーダー。
録音データは未詳だが、造りなどからすると、1960年代中頃までのものだろうか。
なお、ピアニストは1912年オスロ生まれとライナーノートにある。
 
モントリオール・サキソフォン四重奏団、レイボヴィッツ;変奏曲ほか(加SNE、LP)
逸匠列伝に掲載したルネ・レイボヴィッツは作曲家でもあったが、その作品の録音は珍しい。
これは1969年にリヨン・サキソフォン四重奏団の委嘱で作られたもの。もちろん十二音技法による。
新しいディスクなのに録音年月の記載がないが、マルPは1985年。
なお、ジャケット装画は有名なヒエロニムス・ボス;『快楽の園』の一部だが、よく見るとサキソフォンを持った人物が4人…(笑)。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ新交響協会管ほか、シェーンベルク;グッレリーダー(米Haydn Society、LP)
これも待望のディスク。レイボヴィッツの名を音盤界に高からしめた、同曲の初LPである(SPではストコフスキーが録音)。
米VOXから再発された廉価盤、最近出た復刻CDは架蔵しているが、ぜひオリジナルの米ハイドン協会盤をと捜していたが、コレクターズ・アイテム的なレーベルのため、なかなか入手できなかった。
今回も、たぶん駄目だろうと思ってオーダーしたところ、運良く取れたもの。しかも超格安…と思ったら、現物はジャケット背表紙が壊れていて分解寸前。まあ、そこまではこだわらない。美麗なものであるにこしたことはないが…。
もっとも演奏の方は、斯界の権威柴田南雄先生に言わせると、
けっしていい演奏ではなかったあの感動の薄いライボヴィッツ(ママ)」(『私のレコード談話室』朝日新聞社)
なのだそうだが(苦笑)。
なお、ブックレットの楽曲解説はレイボヴィッツ自身が執筆、録音エンジニアは有名なアンドレ・シャルラン

11月1日(水): 楽譜の通販サイトSheet Music Plusから次の楽譜が配送された。
 イザイ;無伴奏Vnソナタ(全6曲)(Schirmer)
 リリー・ブーランジェ;ピアノ小品集(「明るい庭で」・「古い庭で」・「行列」)(Schirmer)
 ピツェッティ;レクイエム(RICORDI)
 ブーランジェの3曲は日本でも出版されているが(石塚『女性作曲家ピアノ曲集 第1巻』(共同音楽出版社)所収)、やはり輸入版で持ちたいもの(しかも安価)。

 Alapage.comからCDが届いた。注文したCDのほとんどがバックオーダーになり、1枚だけが配送された模様。

ジェラール・プーレ(Vn)ドミニク・ド・ヴィリアンクール(Vc)エミール・ナウモフ(P)パスカル・ヴェロ(指揮)ロレーヌ・フィル、ベートーヴェン;三重協&ブラームス;二重協(ARION)
このところ集めているピアニスト、ナウモフの未架蔵盤を見つけたのでオーダーしたもの。
Vnが4月の実演が良かったプーレ、このところ東京の聴衆の評価が高まっているヴェロというのも嬉しい。1998年の録音。
なお、ヴェロの公式Webpageがある。→ここを押して

平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。


平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。

平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。

平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


音盤狂昔録へ戻る

トップページへ戻る

斉諧生に御意見・御感想をお寄せください