音盤狂日録


5月31日(木): 

 

マラト・ビゼンガリエフ(Vn)ベンジャミン・フリス(P) エルガー;Vnソナタほか(black box)
イギリスの新興レーベルblack boxからエルガーのVn作品集がリリースされたことについては、『レコード芸術』6月号「海外盤試聴記」で水越健一氏が詳しく紹介しておられる。
既に2枚がリリースされているうち、第2集が店頭に並んでいたので購入。佳曲Vnソナタを見逃すことはできない。
その他、ソスピリop.70など小品13曲を収録している。
ヴァイオリニストはカザフスタン出身、NAXOSに多数の録音があった。
なお、ディスクをパソコンのCD-ROMドライヴに挿入すると、このCDを紹介したWebpageにブラウザが接続し、作曲者・楽曲・演奏者の紹介等を読むことができる。
御購入後のお楽しみに取っておいた方がよいのかもしれないが、WWW上で公開されているものゆえ、リンクしておく。→ここを押して

5月29日(火): 近頃話題の奥波一秀『クナッパーツブッシュ 音楽と政治』みすず書房を読了。
 一昨年冬にみすず書房『月刊みすず』に掲載された論考に大幅に加筆された、約200頁の好著である。新刊紹介は→ここを押して
 生い立ち〜修業時代についての詳しい記述は初めて読むものであり、これだけでも貴重な情報であろう。
 更に素晴らしいのは、1920〜30年代、クナッパーツブッシュが、ナチスやそれに連なる知識人・音楽家とどのような関係を持ったか、ユダヤ人問題にどのような姿勢をとっていたかを、当時の新聞・雑誌記事や行政文書を克明に調べることで(極めてオーソドックスな現代史研究法である)、緻密に検証したことである。
 単なるクナのファン本ではない。ナチスの勃興〜政権確立期におけるドイツ社会の空気を実感することさえ可能な、優れた歴史叙述といえよう。叙述も平明で読みやすい。
 なお、ディスク評や演奏評の類はまったくといっていいほど含まれていないので御注意。


5月28日(月): 

 

「ショスタコーヴィッチ」(CHANDOS、CD-ROM)
シャンドスが"Cultural Heritage Series"と銘打ったマルチメディアCD-ROM(DVD-ROM)の第1弾として、ショスタコーヴィッチを発売した。
好きな作曲家でもあり、ドキュメント映像多数やディスコグラフィを含んでいるというので、音盤屋のポイントが貯まっているのも利用して、購入。
かいつまんで見てみたが、なかなか充実したつくり。
作品リストから選ぶと、楽曲データの他に自筆楽譜の画像やディスコグラフィ、代表的演奏のサウンド・クリップにアクセスすることができる。
ドキュメント映像では、P協第1番(終楽章)の自演などというものもあった。
ディスコグラフィは、(残念ながら予想どおり)完璧からは程遠いものであったが…。
なお、WWW上でも概略を見ることができる。→ここを押して
今後、どのようなタイトルが登場するのだろうか。楽しみに待ちたい。

5月27日(日): ようやく先週の記事を書き上げました。m(_ _)m

 先日入手したLPの情報をリリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィに追加。また、昨日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。


5月26日(土): 

 アルバン・ベルク四重奏団@ザ・シンフォニー・ホールを聴く。
 この高名な団体の実演に接するのは初めてである。

ハイドン;弦楽四重奏曲第74番「騎士」
そういえば、彼らの初期の録音(まだTELEFUNKEN専属の頃)に、この曲があったことを思い出す。
ピヒラー(第1Vn)の高音の響きが少し硬いのが気になったが、堅固な造型、隙のないアンサンブル、模範的な弦楽四重奏だろう。
斉諧生としては、ハイドンの演奏には、もっと弾みや愉悦感を求めたいところだが、これはこれで立派な出来には違いない。
 
バルトーク;弦楽四重奏曲第6番
冒頭、主題を出すカクシュカ(Va)の渋い響きに感嘆。
もう少し厳しさがあってもいいのではとも思ったが、後期ロマン派風の甘美さを湛えた世界には抗しがたい魅力がある。
シュルツ(第2Vn)の甘い音色が、この音楽を作る上でポイントになっていたように思う。
第4楽章では、ピヒラーをはじめ、弱音のコントロールが無茶苦茶に上手く、腰を抜かした。完璧な演奏と言えるのではないか。
これが当夜の白眉であったろう、拍手喝采も凄まじかった。
 
ベートーヴェン;弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」
実は、たぶん初めて聴く曲。CDでは架蔵しているものの、予習を怠ってしまった。
正直申して、アレヨアレヨという間に各楽章とも終わってしまい、造型とアンサンブルの堅固さに舌を巻いたほかには、あまり語る内容がない。
不勉強を恥じたい。m(_ _)m
 
アンコールはベートーヴェン;弦楽四重奏曲第16番第3楽章
ここでも弱音が見事に美しくコントロールされ、慰藉と沈思の深い世界が現前した。
このまま永遠に続いてほしいような…とは大袈裟かもしれないが、少なくとも「前と後を聴きたい!」と思わずにはいられなかった。

 演奏会が午後5時開演で、帰りに音盤屋に寄れる時間があった。新譜が山盛り出ていて、思わず買い物。
 更に書店で奥波一秀『クナッパーツブッシュ 音楽と政治』みすず書房を購入。この本については→ここを押して

リチャード・ヒコックス(指揮)ロンドン響、ヴォーン・ウィリアムズ;交響曲第2番&バターワース;青柳の堤(CHANDOS)
英国音楽ML等で話題になっている、「ロンドン交響曲」オリジナル稿の世界初録音である。
この曲は、1913年に作曲され、翌年3月に初演されたあと、ドイツへ送られたスコアが紛失し(第一次世界大戦との関係?)、現在は1933年の最終改訂稿が演奏されている。
ライナーノートを斜め読みしたところ、初演のパート譜からバターワース(作曲者の親友だった)が1915年に復元したスコアを、特に作曲者未亡人の許可を得て、演奏・録音したということのようである。約20分ほどの「かつて録音されたことがない音楽」が含まれているという。
バターワースの佳曲をフィルアップしているのが心憎い。
↑のようにスコアの復元に尽力したばかりか、そもそも作曲自体も彼が慫慂したらしいし、死後(第一次大戦で陣没)、RVWがこの曲を彼の追憶に捧げたという。
実を言うと、斉諧生的にはバターワース作品の方が重要なのである。(^^;;;;
この人の音楽を聴き逃すわけにはいかないので購入。
 
シギスヴァルト・クイケン(Vn) バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(DHM)
古楽派ヴァイオリニストの大御所、S・クイケンの再録音。ともかく買わざるべからず。
録音は1999年12月20〜23日と2000年2月28日〜3月3日、イタリア・シエナで行われたとのこと(前回は1981年11月14〜20日と12月11〜17日)。
使用楽器は旧盤と同じ、ミラノのジョヴァンニ・グランチーノによる1700年頃のもの。
全体に演奏時間が延びているようで、例えばパルティータ第2番シャコンヌの演奏時間は、旧盤が11分12秒、新盤が12分ちょうど。音楽の深化に期待したい。
 
アンジェイ・バウアー(Vc) バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(CD accord)
国内盤扱いの今月新譜で気になっていたディスクが並んでいたので購入。
サードロシャフランナヴァラ等に師事したポーランドの若手チェリストとのこと。
大手レーベルが鉦と太鼓で売り出す新人とは違うものがあるのではないか…と期待している。
 
鈴木雅明(指揮)バッハ・コレギウム・ジャパン、モンテヴェルディ;聖母マリアの夕べの祈り(BIS)
待望の録音がリリースされたので購入。
斉諧生的にはバッハ以前の音楽の中で最愛の曲、それをBCJが演奏したとあっては聴かざるべからず。
実は、一昨年12月18日に神戸で上演された際にチケットを買っていたのだが、演奏会へ行く電車の中で突然体調を崩して途中下車。
原因不明の腹痛で、駅前の病院で半日、輾転反側するという羽目になって聴けなかったことがある。
今回のCDは1999年12月12〜19日に神戸松蔭女子大学チャペルでの録音というから、まさしく↑の前後に収録されたもの。まさしく奇遇といえよう。
2枚組にマニフィカトを7声・6声の2曲ともと、6声のミサ曲を収めているのも丁寧である。

5月25日(金): 

 

ウェルナー・ヒンク(Vn)ジャスミンカ・スタンチュール(P) シューベルト;Vnソナタ・幻想曲ほか(CAMERATA)
シューベルトの作品中、この幻想曲とアルペジオーネ・ソナタ弦楽五重奏曲は、見れば買うほどに愛好している。
その新録音ゆえ購入せざるべからず。
ヒンクのシューベルトと言えば、10年ほど前に遠山慶子さんとのソナチネ全集があった。
今回のピアニストは、ユーゴスラヴィア生まれ、ウィーンで学んだのち、ジュネーヴでマリア・ティーポに師事、小林研一郎大野和士とも共演しているという。

5月24日(木): 

 

マリス・ヤンソンス(指揮)オスロ・フィル、ブラームス;交響曲第1番ほか(SIMAX)
このコンビのブラームスは、最初に出た第2・3番以来、オーケストラの感じきった演奏が印象深い。
全集完成となる第1番が出ているというので早速購入。1999年10月21・22日、オスロ・コンサートホールでのライヴ録音。
前作第4番同様、盟友ヨアヒム序曲「ハムレット」をフィルアップ。

5月23日(水): 

 

アナトリー・ヴェデルニコフ(P) ブラームス;P曲集(DENON)
先日来、ブラームスの後期ピアノ曲を集め始めているが、フランク;前奏曲、フーガと変奏で大感激したヴェデルニコフの録音が遺っているとあらば見逃すことはできない。
珍しく国内盤を客注して購入。
ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ op.24(1980年)
3つの間奏曲 op.117(1975年)
6つの小品 op.118(1981年)
を収録。

5月20日(日): 

 Ars AntiquaからLPが届く。

スティーグ・ヴェステルベリ(指揮)スウェーデン放送響ほか、ラーション;「姿を変えた神」ほか(瑞EMI、LP)
ラーション(1908〜1986)はスウェーデン現代の作曲家だが、作風は極めて平明。彼の清澄な音楽は、もっと聴かれてよいものだ。田園組曲など弦楽アンサンブルの演奏会に好適と思う。
語り手、独唱(Sop、Br)と合唱と管弦楽のための作品である「姿を変えた神」は、1940年に書かれ、スウェーデン放送(もちろんラジオ時代)で初演された。
この曲については、大束省三『北欧音楽入門』(音楽之友社)に美しく紹介されている。
烈しく抵抗の歌を歌うのではなく、静けさのなかで人々の心を励ました。
 ギリシャ神話の世界の縁取りのなかで人間を復活させ、心の奥底にある一人の神を復活させている。
これまでサロネン盤(Sony Classical)の名演で親しんできたが、同じくスウェーデン放送合唱団が歌っているヴェステルベリの2回目の録音もまた名演とのこと。
長く捜してきたが、ようやくArs Antiquaのカタログに発見、直ちにオーダー。めでたく確保できた。
なお、「偽装の神」という邦題が用いられているが、標記の訳こそ妥当であるというのが北欧音楽MLでの定説である。
ラングストレム;3つの歌をフィルアップ。
 
ポーライナ・スターク(Sop)デヴィッド・ガーヴェイ(P) リリー・ブーランジェ;歌曲集「空のひらけたところ」(米SPECTRUM、LP)
↑同様、Ars Antiquaのカタログを見て吃驚、リリー・ブーランジェの代表作の一つの未架蔵盤ゆえ入手せざるべからず。
オーダーしてから確認のメールが戻ってくるまで、まったくドキドキものだった。(@_@)
独唱のスタークは、かつてバルビローリラヴェル;シェヘラザードで共演して指揮者から絶讃されたとライナーノートにある。
録音年月が明記されていないがマルCは1980年、現在手元にある中ではエリック・タピー盤(EMI)についで早い録音である。
なお、『レコード芸術』6月号谷戸基岩氏がtimpaniレーベルを紹介した記事の中で
《雲の切れ目》の録音は私の手許にあるだけでも五種類を数える
と書いておられるが、実際には少なくとも10種に及ぶ。→ここを押して
 

5月19日(土): 通常は休みの日だが、本業関係で大津市へ出張。用務先は、なんとびわ湖ホールの筋向かい。
 仕事が終わったのが午後4時、1時間後に開演されるメトロポリタン歌劇場サン・サーンス;歌劇「サムソンとデリラ」を観に来られた某氏・某々氏と少しお話しできた。
 まだ日は高く、そのまま帰るのも癪なので(苦笑)、音盤屋廻り。

 

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)コンセール・ラムルー管ほか、ベートーヴェン;交響曲第9番(DECCA)
↓14日(月)の項に書いたマルケヴィッチの「第九」、京都では見ないので、入荷していそうな音盤屋に電話して在庫を確認、取り置きを依頼して勇躍、大阪へ赴く。
買って帰ってきて、某掲示板(笑)に書き込んだら、常連さんから「国内盤で持っています」とのレプライ。
そういえばそうで、そのときに(一昨年9月)買っていたことを思い出して苦笑。
少し聴き比べてみたが、輸入盤の方がやや低音など力強いように思えるのは欲目か(笑)。
なお、合唱はカールスルーエ・オラトリオ合唱団、独唱は
ヒルデ・ギューデン(Sop)
アーフェ・ヘイニス(A)
フリッツ・ウール(Ten)
ハインツ・レーフュス(Bs)
 
ミシェル・アリニョン(Cl)ジルベール・オダン(Fg)ジャン・フランソワ・パイヤール(指揮)パイヤール室内管ほか、モーツァルト;Cl協・Fg協ほか(BMG)
急逝したペーター・マークに代わって読売日響に来演したパイヤールのモーツァルト。あまり芳しからぬ評価が行われているようだが、マークへの期待の大きさの裏返しであろうか。
このモーツァルトの木管協奏曲集、やはり今更パイヤール…ということで新譜のときはまったく注目していなかった。
ところが、立風書房『200CD 管楽器の名曲・名盤』で取り上げられていた(同書75、219頁)。
中でもオダンは、絶滅を危惧されたバッソン(フランス式ファゴット)の新たな名手とのこと、これは聴いてみたいと、長らく捜していた。
ようやく中古音盤屋で遭遇、狂喜して購入したもの。
標記2曲以外にジャン・ジャック・ジュスタフレ(Hrn)独奏によるHrn協第1・3番を収める。
 
アルノルト・シェーンベルク・トリオ、モーツァルト;ディヴェルティメントK.563&シェーンベルク;弦楽三重奏曲(CAMPANELLA)
発売予告時点では迂闊にも気づかず、『レコード芸術』6月号月評を見て吃驚。
ライナー・クスマウル(Vn)
ヴォルフラム・クリスト(Va)
ゲオルク・ファウスト(Vc)
と、ついこの間までベルリン・フィルの首席に並んでいた名手3人の共演である。
クスマウルは独奏盤を集めているヴァイオリニストだし、クリストは10年ほど前にベルリン弦楽ゾリステンで来日したとき、実演でその豊麗な音色に感嘆した記憶が未だに鮮烈。
しかも曲目・カプリングが極めて魅力的。これは是非盤、買わざるべからず。
 
フレデリク・プラッシー(Vn)フィリップ・ヴィッラ(G) パガニーニ;協奏的ソナタほか(BNL)
中古音盤屋で、久しぶりにプラッシーのCDに出会った。
このレーベルから出ているブラームス;Vn協など、美しい音色といい真摯な解釈といい、実に見事で、若手ヴァイオリニストでは五指に入る注目株と思っている。
ずっと捜しているのだが、マイナーな上に活動低調な(ひょっとして消滅?)レーベルなので、なかなか見つからない。バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータフランク・ドビュッシー・フォーレを組み合わせた1枚など、ぜひ手に入れたいもの。
さて、これは存在にも気づいていなかった、ギターとの共演盤。彼の美音を堪能すべく購入。
標記以外にジュリアーニコレッリロカテッリの作品とパガニーニの小品を2曲収めている。
1994年11月の録音とあるのでヴァイオリニスト22歳の頃か。
 
ジュリアス・カッチェン(P) ブラームス;P独奏曲全集(DECCA)
思い立って、ブラームスの後期ピアノ曲を聴いてみることにした。
となれば、畏友かとちぇんこさんお薦めのカッチェンを外すことはできない。
幸い、先年発売されたブラームス全集が最近ディスカウント(?)されて出回っており、CD6枚組を4,000円前後で買うことができる。曲目詳細は→ここを押して
かとちぇんこさんによる、3つの間奏曲第2番 op.117-2についての美しい言葉は→ここを押して
 
ラドゥ・ルプー(P) ブラームス;後期P小品集(DECCA)
↑同様に、ブラームスの後期ピアノ曲を聴こうということで購入。
店頭や通販サイトであれこれ見ていたが、カッチェンの次には、LP期に代表盤に数えられたルプーも外すことはできない。
最近あまり名前を聞かないのは不審だが、1970年代には「千人に一人のリリシスト」と呼ばれ、この曲集やシューベルト;即興曲集といった作品では、よくベスト盤に挙げられていた。
2つのラプソディ op.79
3つの間奏曲 op.117
6つの小品 op.118
4つの小品 op.119
を収める。op.79-1とop.117は1970年、その他は1976年の録音である。
 
クラウディオ・シモーネ(指揮)リスボン・グルベンキアン管ほか、ヴェルディ;聖歌四篇(ERATO)
この曲には、チト思い入れがある。
第1曲アヴェ・マリアは、斉諧生の中学・高校時代、クリスマス行事の開幕を告げる音楽であった。
暗闇の中、蝋燭を手にした合唱団員がしずしずと入場する。寒い舞台裏で本番の緊張感に包まれながら(たいていスタッフだった)、凍りつくように美しい無伴奏合唱に聴き入っていたものである。
最近あまり見かけないシモーネ盤(この指揮者がバロック以外を振るのも珍しいが)を、中古格安で見つけたので購入。

5月18日(金): 

 

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)ザールブリュッケン放送響、ブルックナー;交響曲ヘ短調ほか(Arte Nova)
まさかここまでとは思わなかった。
「ミスター・S」のブルックナー全集が、俗に「第00番」と呼ばれることもある習作に及んだのである。この人のブルックナーは聴かざるべからず、即購入。
ブルックナーの初期交響曲については、世田谷ブルックナーの家に詳しいが、ここのディスコグラフィによれば、このヘ短調にはLP・CD合わせても全曲録音は僅かに6種、「第0番」に比べても圧倒的に少ない。
同じく習作(1863年)に当たる序曲 ト短調をフィルアップ。こちらも珍品、手元にあるのはマタチッチ盤(TESTAMENT)くらいだったか。
なお、全集が格安ボックスで出るそうな。
 
ジャン・フルネ(指揮)オランダ放送フィル、「フランス序曲集」(DENON)
フルネの新盤、買わざるべからず。
フランスのマイナーな序曲7曲を収める。中には昔のポピュラー名曲も混じっているが。。。
1 ボワエルデュー;歌劇「白衣の貴婦人」序曲
2 ベルリオーズ;序曲「ローマの謝肉祭」
3 グノー:歌劇「ミレイユ」序曲
4 マスネ;序曲「フェードル」
5 ラロ;歌劇「イスの王」序曲
6 デュカ;序曲「ポリュークト」
7 ピエルネ;劇音楽「ラムンチョ」序曲
これだけをまとめて録音した音盤は久しぶりではないか。収録は1996年9月と、少し前。
なお、1・2・4・5はポール・パレーのレパートリーにあり、1は小林研一郎も録音している。
 
デニス・クラヴィエ(Vn)フェルナン・クワトロッキ(指揮)ロレーヌ・フィルほか、アーン;Vn協・P協ほか(Maguelone)
昨年、パリジ四重奏団ほかによる室内楽曲集が佳かったレイナルド・アーン。
見かけないCDが音盤屋の新譜棚に並んでいたばかりか試聴機に入っていたので少し聴いてみたところ、Vn協の第2楽章「愛の歌」あたりがなかなか麗しいメロディーゆえ購入。
Vn協はライヴ収録で世界初録音。そもそも初演(1928年)以来、顧みられることがなく、ようやく1986年に至ってシェリングが蘇演したという(そういうことが好きな人だった)。
独奏者クラヴィエ(原綴Denis Clavier、発音は自信なし)はプーレデュメイに学び、1986年以来ロレーヌ・フィルの客演コンサートマスターとのこと。
アンジェリーヌ・ポンデペイレ(P)によるP協(この曲はHyperion盤があった)と、これも世界初録音となるハンガリー組曲をカプリング。
なお、まったくの新譜ではなく、昨年3枚組セットで出ていた模様で、既にWOODMANさんのレビューがある。→ここを押して
また先日、加藤さんもレビューを掲載された。(→ここを押して)
 
デニス・クラヴィエ(Vn)ディミトリス・サログルー(P)ほか、アーン;P五重奏曲・Vnソナタほか(Maguelone)
↑で書いたように、昨年、VALOIS盤で聴いて佳かった五重奏曲の別演奏。
カプリングは、古畑銀之助氏の著書で読んで以来、長年聴きたかったVnソナタゆえ、これは(も)買わざるべからず。
VnとPのための小品2曲、すなわちロマンス イ長調ノクチュルヌをフィルアップ。
昨年出た3枚組のもう1枚である歌曲集も棚に並んでいたが、それは見送った。
 
寺神戸亮(Vn)ボヤン・ヴォデニチャロフ(Fp) ベートーヴェン;Vnソナタ第6〜8番(DENON)
寺神戸さんの録音は聴き逃すことができないもの、新譜が出ていたので購入。
ベートーヴェンのVnソナタ全集の第3巻で、作品30の3曲を1枚に収めるという、まことに筋の通った選曲。
 
ゲルハルト・タシュナー(Vn)ほか、「Vnソナタと小品集」(MD+G)
近頃ちょっとしたブーム(?)のように各社から復刻が出るタシュナー。
EMI、ARCHIPHON、TAHRAの次はMD+Gから4枚組が出たので購入。
うち2枚がVnソナタに充てられているが、
ベートーヴェン;Vnソナタ第3・5番(エディット・ファナルディ(P)、1955年11月7日)
ブラームス;Vnソナタ第1番(マルティン・クラウゼ(P)、1954年11月26日)
ラヴェル;Vnソナタ(エディット・ファナルディ(P)、1956年9月17日)
の4曲はTAHRA盤第2集(TAH352〜53)と同一音源(音質は大差ない)。
また重複しないものでは
ドヴォルザーク;Vnソナチネ(フーベルト・ギーゼン(P)、1956年9月22日)
グリーグ;Vnソナタ第2番(エディット・ファナルディ(P)、1960年1月26日)
グリーグ;Vnソナタ第3番(エディット・ファナルディ(P)、1956年9月16日)
シェック;Vnソナタ(エディット・ファナルディ(P)、1955年6月23日)
がある。
残り2枚に26曲が収められている小品は3曲を除いて初出。
クライスラーサラサーテといったポピュラーなものに加えて、
ヒナステラ;ミロンガ(1954年6月26日)
など珍しい現代作品も見られる。

5月15日(火): 

 

セルジオ・バレストラッキ(指揮)ラ・スタジオーネ・アルモニカ、モンテヴェルディ;4声のミサ・6声のマニフィカト(SYMPHONIA)
昔は黒字に緑のジャケットで統一されていたSYMPHONIAレーベルが紙ジャケット仕様で登場。
聞き慣れない指揮者・団体だが、聖母マリアのための夕べの祈りの地味な方のマニフィカトが収録されているからには買わざるべからず。

5月14日(月): 

 

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)コンセール・ラムルー管、ハイドン;交響曲第103・104番&ベートーヴェン;交響曲第1番(DECCA)
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)コンセール・ラムルー管、ベートーヴェン;交響曲第5・8番(DECCA)
音盤屋の棚を見て吃驚した。
もともとPhilipsから出ていた音源が、フランスのDECCAからCD化されているのである。まあ、いまやユニヴァーサル・グループで一体運用されているのであろうが。
いずれも1959〜60年頃の録音で、1970年代末〜80年頃に廉価盤LPで発売されていた。入手可能になるのは久しぶりかもしれない。
なお、同時期のPhilipsには、ベートーヴェン;交響曲第9番もあった…と思ってCDジャケット裏のリストを見ると、同じシリーズでCD化されている模様。
 
サカリ・オラモ(指揮)バーミンガム市響、シベリウス;交響曲第2・4番(ERATO)
バーミンガム市響をラトルから引き継いだオラモのCDがERATOからリリースされはじめている。
第1弾のグリーグ;「ペール・ギュント」組曲ほかは手控えたが、シベリウスの交響曲、しかも後期の作品入りとなれば見逃すことはできない。
国内盤から並びだしたが、ちょっと待っていたら輸入盤が出回ってきたので購入。
 
オレグ・カガン(Vn)スヴィアトスラフ・リヒテル(P) モーツァルト;Vnソナタ集&ベートーヴェン;Vnソナタ第4・5番(EMI)
以前から時々、LPで見かけていたカガンとリヒテルの共演がまとまってCD化されたので購入。
モーツァルトはニ長調 K.306変ロ長調 K.378ト長調 K.379のソナタ3曲と小品(断片)2曲を収める。
あとEMIに残っているものではベルク;室内協奏曲も出してほしいもの。以前、他の録音とセットの4枚組で出たことがあるそうだが、単売を希望したい。

5月13日(日): 

 昨日入手したLPの情報をレイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。


5月12日(土): 

 CD1枚とParnassus RecordsからLPが届いた。

セルジウ・コミッシオーナ(指揮)ストックホルム・フィル、ペッテション;交響曲第14番(PHONO SUECIA)
前に第7番を聴いたペッテションの交響曲中、後期の傑作といわれる第14番。
日本では色物系指揮者と見られているコミッシオーナだが、ペッテションを熱心に演奏しており、スウェーデン国内のみならず、アメリカでも紹介に努めているとのこと。
jpcにオーダーしていたのだが、4月30日に届いた荷物には品番違いのCDが入っており、交換を請求したところ送られてきたもの。先に届いた間違いの分については返品の要なし御随意に、とのことであった。
 
アントニオ・ヤニグロ(指揮)ザグレブ・ソロイスツ、バッハ;管弦楽組曲第2番・ブランデンブルク協第5番(米RCA、LP)
先日のベートーヴェンが良かったヤニグロの指揮盤。ブランデンブルク協は見逃せないのでオーダーしたもの。どちらも彼の全曲録音はないと思う。
現品が届いてみれば、フルートはジャン・ピエール・ランパル、チェンバロはロベール・ヴェイロン・ラクロワという大物の共演で吃驚、これは喜ばしい。
 
パウル・ザッヒャー(指揮)チューリヒ・コレギウム・ムジクムほか、マルタン;小協奏交響曲ほか(瑞Communaute de Travail、LP)
4月26日の項にも書いたとおり、マルタンは好きな曲。
彼の紹介に努め、この曲を委嘱・初演したスイスの指揮者ザッヒャーの録音を見つけたのでオーダーしたもの。
1944年の作品で、録音データは明記されていないがマルP・マルCは1968年。独奏者はいずれも未知の名前である。
カプリングはヴィリー・ブルクハルト;Vn協、これもスイスの作曲家らしい。ハンスハインツ・シュネーベルガー(Vn)ヴィクトル・デザルツェンス(指揮)ローザンヌ室内管による演奏。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)フィリップ・ミュレ(Vc)ジャック・ルヴィエ(P) プフィッツナー;ピアノ三重奏曲(MHS)
カントロフの未架蔵盤、しかもドイツ後期ロマン派の掉尾プフィッツナーという異色のレパートリーを見つけ、驚いてオーダー。
Da Camera原盤とあり、1970年代後半にリリースされた模様。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ放送響ほか、ヴェルディ;歌劇「仮面舞踏会」(米Renaissance、LP)
レイボヴィッツがヴェルディの、しかもメジャーな作品を録音しているとは! 吃驚してオーダーしたもの。
リッカルド;ヨアキム・ケロル
レナート;ジャン・ボルテイル
アメリア;エセル・セムセル
ウルリカ;マリー・テレーズ・カーン
オスカル;ロリー・ヴァルダニーニ
というレイボヴィッツ盤でしか見かけない歌手たちが歌っている。
もちろん全曲盤。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ放送響ほか、ムソルグスキー;歌劇「結婚」(米OCEANIC、LP)
こちらはレイボヴィッツらしい珍曲の録音。
音源としては架蔵しているが、後年の再発物。オリジナルと思われる米OCEANIC盤を見つけたのでオーダー。
既架蔵盤ではオーケストラが「パリ・フィル」となっているので、ディスコグラフィを訂正する必要があるようだ。いずれにせよ録音のための臨時編成の団体ゆえ、大差ないのだが。(^^;

5月11日(金): 

 

ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)トルルス・モルク(Vc)ほか、ブラームス;弦楽六重奏曲第1番ほか(LYRINX)
カントロフとモルクの未架蔵盤を中古音盤屋で発見! 狂喜して購入。
1988年8月6日、プラド音楽祭でのライヴ録音。
他の演奏者はリン・ブレイクスリー(Vn)、ブルーノ・パスキエ(Va)、ウラジミール・メンデルスゾーン(Va)、マンフレート・スティルツ(Vc)という面々。
カプリングは同じ作曲家のCl三重奏曲、こちらの演奏者はミシェル・レティーク(Cl)、デニス・ウェーバー(P)、ジュヌヴィエーヴ・テュリエール(Vc)。

5月9日(水): 

 

ガリー・ベルティーニ(指揮)ケルン放送響ほか、マーラー;交響曲第1〜5番(EMI)
いわゆる大型連休に、架蔵音盤の大整理を行った。ほぼ三日三晩を要したが、昨年12月の転居後の大混乱を、ほぼ解消できた。
その際、色々なことが明らかになったが(ダブり買いの発覚含む…自滅)、ベルティーニのマーラーについて、第6・9・10番大地の歌しか架蔵していないことに気づいたのである。
この仏EMIの5枚組、発売時点であまりの安さに驚嘆していたのだが(約3,000円)、架蔵音盤との重複が相当あると思い込んで見送っていた。↑ではじめてダブらないことがわかったので購入したもの。
超廉価盤のこととてブックレットの記載は極めて簡素なものだが、全5曲を一括して「1986〜91年、ケルン・フィルハーモニーでのライヴ録音」と記されているのは疑問。
第1番は東京での、第2〜5番はスタジオでの収録のはずである。国内盤初出時の録音データは次のとおり(『レコード芸術』イヤーブックによる)。
第1番(1991年11月21・23日、サントリー・ホール、ライヴ)
第2番(1991年4月29日〜5月4日、ケルン・フィルハーモニー)
第3番(1985年3月18〜29日、ケルン・西ドイツ放送スタジオ)
第4番(1987年11月30日・12月4日、ケルン・フィルハーモニー)
第5番(1990年1月29日〜2月3日、ケルン・フィルハーモニー)
なお、5枚に収めるため、第4番が2枚にまたがる割付になっている。
 
ハインリヒ・シフ(Vc)ハーゲンQ、シューベルト;弦楽五重奏曲&ベートーヴェン;大フーガ(DGG)
大好きなハ長調五重奏曲の未架蔵盤。
シューベルトの録音は1991年だが(ベートーヴェンは93年)、新譜のときには見送っていたもの。
ハーゲンQには、前に聴いたバルトークから判断して、あまり期待していないが、この曲はなるべく揃えておきたく、中古格安ということで購入。
 
ジャニーヌ・プロスパー(指揮)ブーシェ・デュ・レーヌ少年少女合唱団ほか、ブリテン;キャロルの祭典ほか(MANDALA)
大学生のときに学内の女声合唱団のコンサートで聴いてから大好きになった曲。LP時代にはウィルコックス盤(EMI)くらいしか入手できなかったが、CD期以降、録音が増えている。
最初の頃は見つけたら買っていたが、児童合唱のこととて、中には演奏水準の芳しからぬものもあり、最近はあまり手を出していない。
これもどうしようか迷ったが、重要なハープ・パートをマリエル・ノールマンが担当しているので、ひょっとしたら合唱も期待できるのではないかと購入に踏み切った。
ブックレット所収の録音風景では、かなり年長の少女達が歌っているようでもあり、少し聴いた感じでも演奏水準は高そう。期待したい。
ジョリヴェ;礼拝組曲(1942年)
ミヨー;諺によるカンタータ(1951年)
をカプリング。後者ではハープとチェロ(ドミニク・ド・ヴィリアンクール)とオーボエ(マルク・バダン)が加わる。

5月8日(火): 

 

マルセル・ミュール(サキソフォン)ほか、「伝説」(A.SAX)
斉諧生が勝手に「サキソフォンのカザルス」と称しているマルセル・ミュールの記念碑的録音の復刻CD。
4月30日の項に記したような事情で、ミュールやヴィオールといったサキソフォン奏者のことをWWWで調べていたら、ミュールについての詳しい記載を見つけた。→ここを押して
↑のページのいちばん下に、このCDのことが出てくるが、「ミュールを語るには外せないもの」ということなので、ぜひ聴きたいと、このページからリンクを辿ってARIOSOという通販サイトで購入したもの。
CD2枚組で約35ドルに送料5ドルで、オーダーから約1週間で到着。
収録曲目は多岐にわたるが、渡辺貞夫が演奏したというデュボワ;ディヴェルティスマンを聴けるのが楽しみ。

5月6日(日): ゴールデン・ウィークも今日でおしまい。名残は尽きねど…(涙)。

 久しぶりに聴き比べをした。愛惜佳曲書に掲載しているシューベルト;アルペジオーネ・ソナタである。
 ヴィオラやフルートでも演奏されるが、今日はチェロによるCDが対象。数えてみたら無慮21種を架蔵しており、とても全部は聴ききれないので、冒頭1分ほどを聴いてみて7種を選んだ。

 
以下、録音順に配列。
 
ピエール・フルニエ(Vc) ジャン・ユボー(P) (EMI)
1937年5月4日・9月27日、パリでのスタジオ録音。
ちょっと吃驚する顔合わせだが、ともにフランスの代表的演奏家だから不思議に思う方が悪いのかも。フルニエは1906年、ユボーは1917年の生まれだから、それぞれ30歳・20歳前後の若手時代ということになる。
かなり速めのテンポの上、繰り返しをしていないこともあって、演奏時間は17分ちょっと(!)。
滑らかな弓遣いが目に見えるような音楽で、実に流れがよく、演奏スタイルもスタイリッシュ。当時としてはまことに清新な印象を与えたことだろう。
細かい音符で音がカスレ気味になるのと音程が好みから外れるのとで、斉諧生の評価はあまり高くないが、既に大家の風格を備えた傾聴すべき演奏ではあろう。
ただ、SP盤の継ぎ目がはっきりし過ぎるのは興醒め。
なお、彼は晩年、日本でこの曲を再録音している(Sony)。ピアノは小林道夫
 
エルッキ・ラウティオ(Vc) 舘野泉(P) (KING)
1994年6月5日、カザルス・ホールでのライヴ録音。
フィンランド楽壇の重鎮、ラウティオ教授は1931年生まれ。年齢のせいかライヴ(しかもプログラム1曲目)のせいか、演奏上の傷が散見される。
録音上、バランスがピアノに偏り残響が強いのもマイナス。
とはいえ、深みのある音で奏でられる、ゆったりとしてしかも強い音楽には、慈父のごとき包容力を感じる。
この人は、ぜひ、円熟期のスタジオ録音を聴いてみたいものである。バッハ;無伴奏Vc組曲の全曲CDがFINLANDIAにあるそうだが、入手し損ねたまま廃盤になっているのは痛惜の極み。
 
ヨーヨー・マ(Vc) エマニュエル・アックス(P) (Sony Classical)
1995年8月31日、プリンストンでのスタジオ録音。
濡れたような美音と抜群の技術力、ベーレンライター原典版の楽譜に頻出する超高音も楽々と安定して弾きこなす。舌を巻くという以上に度肝を抜かれる演奏である。
しかも、音楽はロマンティックな優しさに満たされている。
終楽章の主題は、西洋音楽の伝統からすれば弾むようなフレージングになるべきところを、ゆったりレガート気味に奏して、何ともいえない懐かしさをかもし出すあたりは、彼の自由な音楽性を遺憾なく発揮したしたところ。
反面、なんの抵抗もなく流れていくので、美しいBGMと化すおそれなしとしない…とは言葉が過ぎようか。
ともあれ、「癒しの時代」は彼の独擅場であろう。
 
ミクローシュ・ペレーニ(Vc) アンドラーシュ・シフ(P) (TELDEC)
1995年9月、オーストリア・モントゼーでのスタジオ録音。
斉諧生にとって、ペレーニに惚れ込み、彼のページを作るまでになるきっかけとなった演奏。この曲を語る上では避けて通れないCDである。
この演奏については↑のページに書いているので参照されたい。今日、聴き直しても印象は変わらない。この曲のベスト盤。
なお、上記のヨーヨー・マと同様、ベーレンライター原典版の音高を変更していない。これは今日の7種の中では2人だけ、ペレーニの技術的な高さを裏付ける一例である。
 
ミシャ・マイスキー(Vc) ダリア・ホヴァラ(P) (DGG)
1996年1月26〜28日、スイス・ラッパースヴィルでのスタジオ録音。
マイスキーには1984年にアルゲリッチと共演した旧録音もあるが(Philips)、彼の個性は新盤の方がはるかに鮮明。
mp以下では柔らかい上にも柔らかい美音で綿々と歌い抜き、ここぞというところはffで激情する。
それに加えて、良く言えば自在で天才的な、悪く言えば強引を通り越して恣意的な、強弱やアゴーギグを連発。
それがツボにはまる人にはカリスマと崇められると思うが(風貌もイエズス・キリストに似る)、合わない者にとっては祟りにあうようなものである(この場合はラモス瑠偉…あ、彼も一部サッカー人にとってはカリスマか)。
 
ヤン・フォーグラー(Vc) ブルーノ・カニーノ(P) (BERLIN CLASSICS)
1997年12月、ハンブルクでのスタジオ録音。
力強く伸びやかな音と安定した技術で、若々しい音楽を奏でている(彼は1964年生まれ)。楽譜に記されているアクセントを活かしているところがポイントだろう。特に終楽章の弾み方はアレグレットにふさわしい。
それでいて、第2楽章終結などでは非常な深みを示す。今後に期待したい、有力な若手奏者だ。
 
ソニア・ヴィーダー・アサートン(Vc) イモージェン・クーパー(P)ほか(BMG)
1998年5月、スイス・シオンでのスタジオ録音。
チェリストは1961年サンフランシスコ生まれ、パリでジャンドロンミュレールらに、モスクワでシャホスカヤに学んだとのこと。公式Webpageは→ここを押して
第1楽章冒頭、ゆっくりめのテンポ、抑えた表情の演奏から立ちのぼるのは、憂愁の情趣。
第2楽章も、皆がここぞと音を張る20〜21小節でも指定どおりのmfにとどめるなど、ひそやかそのもの。だからこそ54・64小節の休符が生きる。
終楽章も、主題は弾ませずにインティメイトな雰囲気を維持し、溶けていくような終結を導く。
これは期待以上にいい演奏で、本日随一の収穫
まだまだ知られていない人だが、相当な実力の持ち主だろう。技術的にも高いものを持つと見えて、ベーレンライター原典版の音高は、第1楽章178〜79小節を除いて守っている。
 
(注) 楽譜について
斉諧生所蔵の譜面は、全音楽譜出版社から出ているベーレンライター原典版(国際シューベルト協会 編)というもの。
元来がチェロのための作品でないことから色々な演奏譜があるらしく、音の扱いはチェリストごとに違うと言っていいくらい。
終楽章最後の2つの音が好例で、両方ともアルコの人、両方ともピツィカートの人、最後だけをピツィカートにする人、またアルペジオに開く人もいて、千差万別。
特に違いが目立つのは、フレーズ規模でオクターヴ上下に移動している箇所。数も多く、しかも演奏者によって扱いが異なるが、概ねベーレンライター原典版が最も高い音域を使っている。

5月2日(水): 今日から大型連休後半に。ようやく4月30日の記事を書き上げる。

 音盤狂昔録平成13年4月分を追加。
 4月30日に書いたようにアンゲルブレシュト・ディスコグラフィを修正、また先日入手したCDの情報をリリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィに追加。


5月1日(火): 

 

ピエール・モントゥー(指揮)ロンドン響、ラヴェル;管弦楽曲集(Philips)
Philipsの"Great Recording 50"シリーズの1巻。斉諧生的にはモントゥーはベスト10かベスト5に入る指揮者だし、リマスタリングの成果にも期待して購入。
収録曲はトラック順に、
マ・メール・ロワ
ラ・ヴァルス
亡き王女のためのパヴァーヌ
スペイン狂詩曲
ボレロ
パヴァーヌと狂詩曲はDECCAから出ていた音源。ユニヴァーサル・グループ内での融通だろう。
 
セルゲイ・クーセヴィツキー(指揮)ボストン響、バッハ;ブランデンブルク協・管弦楽組曲(各全曲)(Pearl)
ブランデンブルクの全曲というと手が伸びる。前に一度見かけたときは、えらく高い値付けだったので手を引っ込めたが(なにせ3枚組である)、今日はまあまあそこそこだったので購入。
ジャケット裏に"It is Big Bach."とある。こういう昔風のバッハとなると聴きたくなる天邪鬼は生まれつきか。(^^;;;;
ソリストは概ねボストン響の楽員と思われるが、ブランデンブルク第5番のピアノ(チェンバロではない)は、作曲家としても有名なルーカス・フォス
いつも問題になるブランデンブルク第3番の第2楽章では、カンタータ第4番シンフォニアを挿入してるのが目を惹く。こういう処理は空前絶後では?
この曲を同じソリスト・オーケストラでステレオ録音したミュンシュも、このやり方は引き継いでいない。
録音は1945〜49年、どの年も8月中旬にセッションが行われているのが面白い。
もっとも1945年8月13・14日のセッションでは、ブランデンブルクの第3・4番と管組の第2・3番が録音されており、当時の日本の状況を思えば感慨ひとしお。

平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。

平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。

平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。

平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。

平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


音盤狂昔録へ戻る

トップページへ戻る

斉諧生に御意見・御感想をお寄せください