音盤狂日録



10月30日(水): 

 

諸岡範澄(指揮)オーケストラ・シンポシオン
「1780年代のト短調交響曲集」(ALM)
コンサートマスターに桐山建志を擁するなど、注目している古楽器アンサンブルのCD第2弾が出ていたので購入。
1枚目は「1770年代のニ長調交響曲集」だったから、年代と調性でシリーズ化するのだろうか。
収録曲は、
コジュルフ;交響曲 ト短調
モーツァルト;交響曲第40番(第1稿)
帯のコピーに曰く「売れた『ト短調』、売れなかった『ト短調』 古楽器名手オーケストラが炙り出す当時のウィーン音楽界」
手に取りながら、「前者がモーツァルト、後者がコジュルフ、ずいぶんコジュルフに冷たい言い方…」と考えたのだが、これが勘違い。
生前には出版されなかったモーツァルト作品に対し、コジュルフのほうは、すぐにウィーン・パリ・ロンドンで出版され、筆写譜も数多く残存するなど、当時の人気作品であったという。
「優美にして簡明、ほのかな哀感、バランス感覚に富んだ」(指揮者自撰のライナーノート)というコジュルフ作品、はたしてどのような音楽であろうか?
また、諸岡氏は、K.550の第2楽章に「クレド」動機が引用されていることなどを挙げて、「大ト短調」交響曲には宗教的意味合いが込められていた…と推測している。こうした見解は、これまであまり聞いたことがないように思うが、興味深い。
モーツァルト;歌劇『魔笛』よりパミーナのアリア「ああ、私にはわかるわ、消え失せてしまったことが」をフィルアップ(独唱松堂久美恵(Sop))。もちろん、これもト短調の楽曲。
なお、前作CDで通奏低音のフォルテピアノを担当していた武久源造は、今回、プロデューサーとして名を連ねている。
 
ラデク・バボラク(Hrn)
バッハ;無伴奏Vc組曲(Hrn編)第1〜3番((EXTON)
バッハ;無伴奏をホルンで! 発売予告を見て驚いたが、試聴機で確かめてみて更に驚愕した。
誠に堂々たる吹奏で、音が不安定になったり音楽が窮屈になっている様子は、ほとんど見られない(さすがにブレスの問題はあるが)。
元来、バッハ;無伴奏の編曲ものは色々と集めているので、これは欠かすべからずと購入。
2002年6〜7月、プラハ・ルドルフィヌムでの録音。

10月27日(日): 

 

コリン・デイヴィス(指揮) ロンドン響
ブルックナー;交響曲第9番(LSO自主製作)
オーケストラの自主製作盤は概して高めの値付けになるもので、まあ、寄付金付きと思って納得せざるを得ないと思っているのだが、ロンドン響のものは廉価盤並みの価格なので有り難い。
今回、デイヴィスがどのようなブルックナーを指揮するのか聴いてみたいと思い、購入。
彼がこの作曲家を録音するのは珍しく、Orfeoに第7番があったくらいではなかったか(なぜかアダージョとスケルツォの順序を入れ替えていた)。
2002年2月22〜24日、ロンドン・バービカンでのライヴ録音。名エンジニア、トニー・フォークナーの手になるもの。
なお、ブックレットに「ハース版」と表記されているが、通常、この曲の原典版は「オーレル版」(1934年、いわゆる旧全集)又は「ノヴァーク版」(1951年、新全集)と呼ばれている(両者に相違はない)。

10月26日(土): 書籍2冊が届く。1冊は古書通販サイトabebooks.comから、もう1冊はBärenreiterから。

Martha Burnham Humphrey
"An Eye for Music"(H.M.Teich)
初版1949年の古書。約100頁。
著者がボストン響のリハーサル等で指揮者や楽員を描いたスケッチにコメントを添えたもので、当時の音楽監督セルゲイ・クーセヴィツキーに捧げられ、彼の画が最も多い。
クーセヴィツキーが勇退したのが1949年だから(後継はシャルル・ミュンシュ)、あるいはその記念に上梓されたものか。
ボストン響に縁の深いピエール・モントゥーの肖像が…と期待してオーダーしたのだが、彼のものはなく、代わりにポール・パレータウノ・ハンニカイネンの姿を見ることができた。
パレーのスケッチは、以前Web上の知人から教えていただいたことのあるものだったが、現物を入手できて目出度い。→ここを押して
 
Signe Rotter
"Studien zu den Streichquartetten von Wilhelm Stenhammar"(Bärenreiter)
ステーンハンマルによる6曲の弦楽四重奏のアナリーゼ。昨年出版されたもので、400頁余の大冊である。
貧弱きわまりない斉諧生のドイツ語では、まったく歯が立たないのが情けないが、ともあれステーンハンマル関連資料の架蔵品が増えることは喜ばしい。

 月曜に購入したCD及びWeb上の知人から御教示いただいた情報をシュミット・イッセルシュテット ディスコグラフィに追加。


10月22日(火): 

 

カール・シューリヒト(指揮) ウィーン・フィル ほか
ベートーヴェン;交響曲選集(andante)
andanteからリリースされた、1950年代のウィーン・フィルによるベートーヴェン。国内の音盤屋で買おうか発売元からWeb通販で買おうか迷っていたが、とりあえず、音盤屋のサービス・ポイントを使って購入することにした。
指揮者と収録曲は
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
交響曲第1番(1952年11月19日)
交響曲第9番(1952年2月3日)
ユージン・オーマンディ
交響曲第5番(1953年6月13日)
クレメンス・クラウス
交響曲第6番(1952年3月29日)
カール・シューリヒト
交響曲第7番(1957年6月2日)
いずれもウィーン楽友協会大ホールでのライヴ録音。詳細は→ここを押して
一般には、正規音源が初めて一般に発売されるフルトヴェングラーの「第九」が話題だろうとは思うが、斉諧生的にはシューリヒトが重要。
かつて「ディスク・ルフラン」レーベルから出ていたそうだが、非正規音源は原則として買わない主義なので、架蔵していなかった。
彼とオーケストラは、その前年にアメリカ演奏旅行をともにするなど、急速に結びつきが深まっていた頃なので、演奏内容に期待したい。
音質的には、豊かさにはいくぶん欠けるものの、この時期のライヴ録音としては美しく、じゅうぶん鑑賞に堪える。
 
ヨゼフ・スーク(Vn) カレル・アンチェル(指揮) チェコ・フィル
ドヴォルザーク;Vn協・ロマンス & スーク;幻想曲(Supraphon)
「アンチェル・ゴールド・エディション」の第2回発売から、スークとのドヴォルザークを購入。1961年の古い録音だが(ヴァイオリニストは後にノイマンと再録音している)、LP時代から名演との評判が高かったもの。
標記3曲のカプリングで、既にCD化されているが、リマスタリングの改善効果に期待して購入。
なるほど音はかなり鮮やかになったが、反面、いくぶん聴き疲れする硬さも見受けられる。

10月21日(月): 『宇野功芳の白熱CD談義 ウィーン・フィルハーモニー』(ブックマン社)を購入。
 クラシック入門以来愛読してきた宇野師の著作は買わざるべからず。
 もっとも、この本は、けっして師の名誉にはならないものではなかろうか。
 「あとがき」に曰く

もう書き下ろしは辛い、というより不可能だ。(略) 書くほうはすっかり根気がなくなってしまった。(略) 苦しまぎれに口述筆記なら、と提案したのだが、この案が受け入れられ、ほぼ1年半にわたって仕事が続けられた。

 正直といえば正直だが、読むには辛い文章である。
 内容的にも、大半は既に書いた文章の再話。初めてコメントする音盤もあるが、かなり「お気楽」な「迷」調子。採るべき内容に乏しいのが悲しい。

 

クルト・ザンデルリンク(指揮) ベルリン響 ほか
名演集(HMF)
LP時代には「東側」の地味な指揮者にすぎなかったザンデルリンク、近年、「最後の巨匠」の一人に数えられるまでになったが、先ごろ引退が伝えられたのは残念至極。
この5枚組箱物には、今年5月19日、ベルリン・コンツェルトハウスにおける最後の演奏会の全曲目と、手兵ベルリン響との珍しい録音を収める。
前者は、
ブラームス;ハイドン変奏曲
モーツァルト;P協第24番(独奏は内田光子、彼女の絶讃が日本におけるザンデルリンク再評価の契機ではなかったか?)
シューマン;交響曲第4番
の3曲。後者では
ショスタコーヴィッチ;交響曲第5番(1966年10月3日)
ワーグナー;「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死(1970年4月6日)
プロコフィエフ;Vn協第1番(1971年4月19日)
プロコフィエフ;Vn協第2番(1965年3月8日)
ストラヴィンスキー;Vn協(1967年3月7日、以上独奏;ダヴィド・オイストラフ)
ショスタコーヴィッチ;Vn協第1番(独奏;イーゴリ・オイストラフ、1966年10月3日)
が収められており、プロコフィエフ;第1番の蒐集者としては嬉しい限り。
シューマンを少し聴いてみようと鳴らし始めたところ、ただならぬ雰囲気に止められなくなり、聴き通すことになってしまった。誠に立派な演奏であり、老耄の影など全くない。
ラスト・コンサートはもちろん、60・70年代録音のものも音質は極上。プロコフィエフ;第2番のみモノラル収録で少し落ちるが、それでも聴きやすく美しい。
なお、ちょっと製作意図を解しかねるが、
ダヴィド・オイストラフ(指揮&Vn) ベルリン響
シューベルト;交響曲第2番(1965年3月8日)
ショスタコーヴィッチ;交響曲第10番(1972年9月29日)
ベートーヴェン;ロマンス第1番(1965年3月8日)
が加えられている。
 
原智恵子(P) 渡邊暁雄(指揮) 日本フィル
ショパン;P協第1番 & ドビュッシー;子供の領分 ほか(DENON)
ジャケット等に「伝説のピアニスト」と銘打たれている。一般にはチェリストガスパール・カサドと結婚したことで知られ、これまで入手できた音盤は、すべてカサドの伴奏をしたものであった。
彼女の独奏盤が初めてリリースされるというので注目していたところ、今日立ち寄った音盤屋の試聴機に入っており、聴いてみると、なかなか好ましいピアノの音がしていたので購入することにした。
標記の協奏曲は1962年12月4日、世田谷区民会館でライヴ録音され、放送されたもの。1959年にカサドと結婚した後、彼の共演者として更に研鑽を重ねたあとの演奏だけに期待したい。
一発録りだけにピアノの強音部に苦しいところもあり、もちろんライヴ特有の会場雑音も多いが、音そのものは、ふっくらと暖かく、快い。
ドビュッシーは1959年頃にスタジオ録音されたものといい、音質は非常に良好。
1937年、彼女がショパン・コンクールに参加し特別賞を受けた年にパリで録音されたショパン;スケルツォ第2番をフィルアップ。
なお、レコード会社による公式Webpageは→ここを押して、またカサドの詳細なページに智恵子の紹介がある→ここを押して
 
ペーター・アンダース(Ten) ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) ベルリン・ドイツ・オペラ管 ほか
レハール;オペレッタの世界(TELEFUNKEN)
Web上の知人から、シュミット・イッセルシュテットのSP録音に関するデータと、そのうち一部はCD覆刻されている旨、御教示いただき、早速買ってきたもの。
13トラック75分ほどのうち、3トラック22分ほどが彼の指揮。
アウリッキ・ラウタヴァーラ(Sop、同姓の作曲家の伯叔母とのこと)、アニタ・グラ(Sop)、ペーター・アンダース(Ten)の歌唱で、「メリー・ウィドウ」の抜粋(SP両面、約9分への短縮版)、「針金細工師」の二重唱、レハール名曲メドレーが演奏されている。
デビュー当時のエリーザベト・シュヴァルツコップが歌った「パガニーニ」・「微笑みの国」(各抜粋)といったものも収録されている。

10月20日(日): 中野 雄 『ウィーン・フィル 音と響きの秘密』(文春新書)を読む。
 著者の見解らしきものは、概ね、本文中にも引用されているフルトヴェングラーの講演内容(『音と言葉』所収)を踏襲しており、目新しい中味はない。
 それよりも、ウィーン・フィルの古参楽員が指揮者やオーケストラを語った、生の言葉が多数収録されており、そのほうが余程おもしろい(ただし、パートはVn・Fl・Clあたりに限定されており、多少、物足りなさを残す)。

 水曜日の演奏会の情報を演奏会出没表に追加。

 この間購入したCD・LPの情報をシュミット・イッセルシュテット ディスコグラフィ及びステーンハンマル 作品表とディスコグラフィに追加。


10月19日(土): 

 MikrokosmosからLPが届く。

フェルディナント・ライトナー(指揮) チューリヒ歌劇場管 ほか
モーツァルト;歌劇「魔笛」(抜粋) ほか(チューリヒ歌劇場自主製作、LP)
「魔笛」の未架蔵音源、入手せざるべからず。
歌劇場の販促物品のようなLPで、A面に「魔笛」(1979年12月26日と1980年1月6日の上演から)、B面にヴェルディ;「ドン・カルロ」(指揮はネッロ・サンティ、1979年12月7・12日)の各抜粋。
歌手は、
フランシスコ・アライサ(タミーノ)
レナーテ・レンハルト(パミーナ)
クリスティアン・ベッシュ(パパゲーノ)
ハンス・フランツェン(ザラストロ)
フリッツ・ペーター(モノスタトス)
アリアと合唱を取り混ぜて8曲が歌われている。序曲が収録されていないのは残念。
音質はきわめて良好、歌手と指揮者の顔触れを考えれば全曲がCD化されても良さそうな気がする。
 
ソニャ・ステーンハンマル(Sop) ホセ・リベラ(P)
北欧歌曲集(瑞EMI、LP)
ステーンハンマルの未架蔵音源がカタログに出ていたのでオーダーしたもの。歌手と作曲家に縁戚関係があるのかどうかは不明。
計12曲が歌われているうち、ステーンハンマルは3曲で、「薔薇に」(5つの歌op.8-4)、「手回しオルガンの歌」(4つのストックホルムの詩op.38-4)、「森の中で」(歌と唄より)。
その他、シェーグレンペッテション・ベリエルハクヴィニウスラングストレムラーションらの作品を収める。
1975年8月29日、ストックホルムでの録音。

10月16日(水): 

 ちょっと遠出をして、広島交響楽団第223回定期演奏会@広島厚生年金会館ホールを聴く。指揮は秋山和慶

今日の曲目は、
ペルト;ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
ショスタコーヴィッチ;Vn協第1番
トゥビン;交響曲第3番「英雄的」
というもの。
 
なぜ広島まで出かけたかというと、まず、ショスタコーヴィッチのソリストがアルヴェ・テレフセンであること。
若い頃から「北欧のオイストラフ」と称えられた名ヴァイオリニストの実質的な初来日。2回の演奏会とも(10月12日の東響定期と本日)、同じショスタコーヴィッチ作品を取り上げるという意気込み。
彼は、10月1日付け毎日新聞に掲載されたインタビューで、
若いころ初めてこの曲を聴いたとき、目の前の世界が変わる思いがしました。(中略)私はこの曲を3年間、集中して練習したのですが、その間に、身近に死を体験するなどのショックもありました。そういうことなどが、私のこの曲の解釈に影響したと思います。
と語っている。プログラムに寄稿したメッセージでは、この曲との出会いは、コペンハーゲンでのダヴィド・オイストラフの演奏だったと明らかにしている。
それは息をのむような演奏で、私がこれまで経験した中で最も素晴らしいコンサートの一つでした。(中略)このコンサートを聴いた後、私はこの協奏曲を演奏しなければならない、と強く自分に言い聞かせました。音楽的にも技術的にも非常に難しいことを理解していたにもかかわらずです。そして楽譜を買い、狂ったように練習を始めました。
この人がこの曲を演奏するのを、何としてでも聴いてみたい…と決心して広島行きを決めた。
 
また、トゥビン作品は、今回が日本初演。大束省三『北欧音楽入門』(音楽之友社)で
悲しく痛ましい民族の抵抗の精神を強く表している
と紹介されているのを読んで以来、聴いてみたかった曲。
先日からヴォルメル盤(ALBA)で「予習」して、ますます実演で聴いてみたくなったのである。
 
なお、日本初演に当たり、作曲者の子息エイノ・トゥビン氏夫妻が来日され、演奏会に臨席された。
斉諧生は当日券を買い求めて入場したところ、御夫妻のすぐ前の席だったので、少々恐縮した。(^^;
 
会場の広島厚生年金会館ホールは、舞台から客席が扇形にひろがる構造。
最近の音楽専用ホールのシューボックス型、ワインヤード型に慣れてしまったので、ちょっと古い感じを受ける。
やや音が客席に飛んでこない憾みがあるが、変な色づけや響きがないので聴きやすい会場ではある。
どの曲をとっても、とても有名曲・人気曲とは言えないものばかりなので、客数が少々心配だったが、まずまずの入り。
 
ペルトは、弦合奏とチャイム(チューブラー・ベル)のみという編成。弦合奏が主題を弱音で繰り返す中、チャイムが印象的に響く曲である。
チャイムが強奏するときの音が割れ気味で少し気になったが、終結後に残るチャイムの弱音の残響は見事な美しさ。
音楽が高揚するにつれ、秋山さんも顔を紅潮させて力演しておられた。
ただ、あとの2曲が素晴らしい出来だったので、ちょっと1曲目は記憶から薄れてしまった。
 
テレフセンが登場してショスタコーヴィッチ
低弦の短い序奏の後に、入ってくるソロの美しい音!
柔らかい、心に沁みとおる音だった。少しも力を入れないのに、スッと客席に伸びてくる。
第1楽章は、ヴァイオリンが「孤絶」を切々と歌い抜く…そんな趣の音楽と聴いた。
ヴァイオリニストは、プログラムに寄稿した中で、
美しく、しかし暗いノクターン(中略)瞑想的で内向的と言えるでしょう。
と述べている。
 
第2楽章は激しいスケルツォ。テレフセン氏は時に肩で息をしておられるようにも見えたが、音楽はまったく崩れを見せず、実に「かっこいい」もの。
この作曲家のスケルツォ特有の「狂躁」を、見事に音化していた。
 
圧巻は第3楽章。あのとき紡がれた音楽を、歌をどう表現してよいのか…
「自己の内面の思索に忠誠を守り続ける知識人の孤独な魂のモノローグ」という感想が脳裡をよぎったことを記録しておく。
楽章後半のカデンツァも凄まじい集中力で乗り切った。
 
アタッカで入る第4楽章で、更に驚きが待っていた。
これまで聴いたどんな演奏よりも速いのではないかと思わせる、猛烈な勢いで飛び込んでいったのである。
その勢いをオーケストラも共有しながら音楽が爆走して行き、「どんぴしゃ」で極まった見事な終結!
 
あの第3楽章のあとに、このブルレスクを置いたショスタコーヴィッチの内心を窺ってみたいものである。
楽章後半にシロフォンやHrnに、いつもショスタコーヴィッチ作品で聴かれる音型がフォルテで出るが、あれは何かの象徴なのだろうか?
 
テレフセンは1936年生れだから65歳ほど、聴くまでは年齢を多少懸念していたが、そんなものを払拭してしまう出来映え。
少しも金属的なところのない音色で、もっともっと彼の音楽を聴いてみたいと思わずにはいられなかった。
長大な曲を少しも長く思わせない、凝縮された時間をつくり出した名演であった。
もちろん熱も力も入っているのだが、少しも攻撃的、暴力的な感じがない。この曲を弾いて「Vn奏者が曲と格闘している」と思わせないのは珍しいだろう。
 
会場の反応も熱狂的で、拍手が長く、長く続いた。
曲が曲だけに、ソリストのアンコールは無し。
 
初演のトゥビン作品も、素晴らしい出来だった。
広島響の各奏者が、共感を持って、それぞれの楽句を演奏しているのが実感できたのである。
「とりあえず音にしてみました」的な演奏だと厭だな、と思っていたのだが、実に失礼な話で申し訳ない。
第1楽章の終結あたり、テーマがTrbに戻って雄大に出るところでは、鳥肌立つ思いがした。
また第2楽章中程のVnソロも入魂の音楽。
第3楽章(終楽章)冒頭でもTrbとHrnが圧倒的な吹奏を聴かせた。
 
この日は北欧音楽MLの同人たちが、数多く客席に集ったのだが、異口同音にテレフセンの素晴らしさや、トゥビンでのオーケストラの好演をリードした秋山氏の功績を讃えた。
大阪・神戸はもとより、首都圏から、あるいは札幌から(3人も!)馳せ参じたものである。
 
終演後に、ロビーでオーケストラ主催で楽員と聴衆との交流会が開かれた。
エイノ・トゥビン氏夫妻、秋山氏、テレフセン氏も参加。
 
ここからは自慢話になってしまうので恥ずかしいのだが、よろしければお付き合いくださいませ。m(_ _)m
 
斉諧生は、テレフセン氏の側に直行、持参した氏のショスタコーヴィッチ;Vn協第1番の旧録音に当たる独BASF盤LP(ガリー・ベルティーニ(指揮) スウェーデン放送響、)にサインを頂戴した。
ジャケット表には、まだ若いテレフセン氏が作曲者の脇に立っている写真が用いられている。
一見してテレフセン氏は驚かれ、「これをどこで手に入れたのですか?」と訊ねられた。
拙い英語で「カナダの店からインターネット通販で買った」旨を答えたのだが、傍におられた方のお助けなしには通じなかったのが恥ずかしい。
もう少し英語が出来るものなら、「ショスタコーヴィッチ作品の第4楽章における作曲家の内面について」など尋ねてみたかった。(嘆)
そこでテレフセン氏がペンを走らされたのが、このサイン。→ここを押して
どうやら演奏者御本人も持っておられないようである。
 
交流会終了後、新幹線で新大阪へ戻り、日付が変わる少し前に帰宅。

 演奏会前に立ち寄ったノルディックサウンド広島さんで慌ただしく買い物。時間がなかった分、この程度ですんだのかもしれない(苦笑)。

尾高忠明(指揮) ウェールズBBCナショナル管 ほか
シベリウス;管弦楽曲集(BBC music magazine)
シベリウスの珍しい録音は入手せずにはいられない。
見たところ、"BBC music magazine" の2000年4月号の付録のような感じだ。当時、これに目を留めなかったのは不覚だったろう。
雑誌から剥がしたものではなく(笑)、流通ルートに乗っているらしい。
1987〜96年に首席指揮者を務め、現在も桂冠指揮者の称号を保持する尾高さんの指揮で、
「夜の騎行と日の出」
「鶴のいる風景」
「悲しきワルツ」(以上1999年2月17日録音)
現在、首席客演指揮者のグラント・ルウェリンで(この人のバターワース作品集(DECCA)は素晴らしい)、
「ポヒョラの娘」(1999年2月3日録音)
イギリス・ナショナル・オペラ音楽監督のポール・ダニエルで、
「タピオラ」(1999年1月8日録音)
を収録。
なお、オーケストラの公式Webpageは→ここを押して
 
ヤン・スティグメル(リーダー) カメラータ・ルーマン
モーツァルト;ディヴェルティメント & エルガー;弦楽セレナード ほか(INTIM MUSIK)
北欧の優れたヴァイオリニストの一人、スティグメルが率いる弦楽アンサンブルのCDがあり、収録曲目にも惹かれて購入。
モーツァルト;ディヴェルティメントK.136〜138
エルガー;弦楽セレナード
ショスタコーヴィッチ;前奏曲とスケルツォ(op.11)
ラングストレム;フィドル弾きの春
ラングストレム作品はピアノ曲からの編曲のようだ。
1996年1月録音。
 
ツァバ&ゲザ・シルヴァイ(指揮) ヘルシンキ弦楽合奏団
ドヴォルザーク;弦楽セレナード & シベリウス;田園組曲 ほか(自主製作)
北欧の弦楽合奏には、どうしても食指が伸びる。標記2曲のほか
ラウタヴァーラ;フィンランドの神話
コッコネン;「…鏡を通り抜けて…」
を収録。1996〜97年の録音。
 
(演奏者多数)
「フィンランド室内楽の1世紀 〜クフモ室内音楽祭ライヴ〜」(Ondine)
CD6枚組の大物(ただし価格は3枚分とのこと)。
クフモ室内音楽祭は、1970年、新井淑子(Vn)・セッポ・キマネン(Vc)夫妻によって創設された。クフモはヘルシンキ北方600km、人口1万人ほどの街である。
約30年を経て約5万人の聴衆を集める規模に発展し、1993年にはコンサート・ホールも建てられている。
近年は日本でも北九州市(新井さんの出身地)を中心に関連の演奏会が開催されているそうだ(→ここを押して)。
かねてOndineレーベルから音楽祭関連の録音が発売されてきたが、今回のセットには、1908年の名作クーラ;P三重奏曲から2001年の新作ヘイニネン;弦楽五重奏曲まで、フィンランドの作曲家22人による30曲の室内楽曲・器楽曲・歌曲が収められている。
作曲家ではエングルンドコッコネンリンドベリメラルティンメリカントノルドグレンラウタヴァーラサーリアホサッリネン等々。
演奏家では新井・キマネン夫妻を含むジャン・シベリウス四重奏団や、ヤーッコ・クーシスト(Vn)、ヤン・エーリク・グスタフソン(Vc)、ユハニ・ラーゲルスペツ(P)、ソイレ・イソコスキ(Sop)ら、このレーベルの常連が名を連ねている。
ふと気がついたのだが、ラデク・バボラク(Hrn)がメリカント;Vn、Cl、Hrnと弦楽六重奏の協奏曲(1924年)の録音に参加している。
また、先だって別な音盤で聴いた佳曲エングルンド;Vnソナタを、作曲者の孫メリ・エングルンド(Vn)が演奏しているのにも興味を惹かれる。
これだけの音盤が、1999年と2001年、僅か2回の音楽祭でのライヴ録音から出来てしまうのだから、クフモ室内音楽祭の充実振り、もって知るべしであろう。
なお、詳細な紹介がノルディックサウンド広島のWebpageに掲載されている。→ここを押して
 
ミカ・ヴァユリネン(アコーディオン) ほか
「神秘的な眼差し」(MILS)
若きアコーディオンの魔術師、ミカ・ヴァユリネンの未架蔵音盤が入荷していたので購入。…といっても1994年に録音された、比較的初期の録音である。
モリークという19世紀ドイツの作曲家から、現代の若手まで、いずれも未知の作家による6曲を収める。
モリーク作品のみ、イルモ・ペイソ(P)が加わる。

10月15日(火): 

 

クリストフ・エッシェンバッハ(指揮) パリ管
ベルリオーズ;幻想交響曲(naive)
北ドイツ放送響、パリ管のみならずフィラデルフィア管の常任指揮者にまで引っ張られるようになったエッシェンバッハ。
昔の録音では思い入れ先行のきらいがあり、すごく粘るところと手も足も出せていないところが混在する妙な演奏が目立っていたが、ここ数年来、どんどん表現力を増しているようだ。
パリ管との最初の録音は、オーケストラ十八番の「幻想」。
かつてミュンシュ(EMI)やバレンボイム(DGG)との名盤があったが、エッシェンバッハとはどのような演奏を聴かせてくれるのか楽しみである。
2002年4月、サル・プレイエルでの収録。
このレーベルらしい雰囲気の良いジャケット写真…と思ったら、マン・レイの作品とのこと。
 
ネーメ・ヤルヴィ(指揮) ヨェーテボリ響
「オーロラの音楽」(DGG)
CD2枚組に計30曲の北欧コンピレーション・アルバム、大半は既出音源なのだが、8曲だけ含まれている初出音源(2002年6月、ヨェーテボリ)の中に、ステーンハンマル;カンタータ「歌」より間奏曲が入っているからには買わざるべからず。
この曲、ヤルヴィは、BISレーベルがステーンハンマルを次々と出していた頃に(最近リリースが途絶えているのが寂しい限り)、同じオーケストラと録音している。
その他の新録音は、
ハルヴォルセン;ロシア貴族の入場行進曲
ヤルネフェルト;「子守歌」・「前奏曲」
ヴィレーン;弦楽セレナードより「行進曲」
ラーション;田園組曲より「ロマンス」
ラウタヴァーラ;「極北への頌歌」より第1楽章
ロンビ;コペンハーゲンの蒸気機関車のギャロップ
というもの。
ラウタヴァーラ作品の終結、鳥の声が遠ざかり静まっていった中から、ステーンハンマルの美しい旋律が立ち上ってくるのは感動的。素晴らしい収録順である。
それはそうと、ヨェーテボリ響が "the National Orchestra of Sweden" を名乗っているが、どういう謂われがあるのだろう?
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) ベルリン・フィル & ラムルー管 ほか
ベルリオーズ;「イタリアのハロルド」・「ファウストの劫罰」(DGG)
マルケヴィッチの名演が "The Originals" シリーズで覆刻されたので購入。
「ハロルド」はベルリン・フィルとのモノラル録音でVa独奏はハインツ・キルヒナー、「ファウスト」はラムルー管とのステレオ録音。
いずれも以前、仏DGGの "DOUBLE" シリーズで発売されていた。音の方は一長一短か。新盤の方が鮮やかではあるが響きがきついように感じる。
なお、ブックレット末尾、両曲の録音データが入れ違っているのは御愛嬌。
 
ペーター・アンダース(Ten) ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) ベルリン・ドイツ・オペラ管 ほか
オペラ・アリア集(TELDEC)
昨日、イッセルシュテットのページを作りながらネットを検索していると、ペーター・アンダースとのモーツァルトが "TELEFUNKEN LEGACY" シリーズでCD覆刻されていることに気づいて吃驚、慌てて今日買ってきたもの。
ところが、更にディスコグラフィ未掲載のものが4曲もあって驚愕。
R・シュトラウス;「薔薇の騎士」より「きびしさに胸を装う」
ビゼー;「カルメン」より「花の歌」
プッチーニ;「トスカ」より「妙なる調和」
チャイコフスキー;「エフゲニー・オネーギン」より「青春は遠く過ぎ去り」
各曲の録音年月日も判明、嬉しい1枚である。

10月14日(祝): 

 名匠列伝ハンス・シュミット・イッセルシュテットを追加。列伝系に新しいコンテンツを加えるのは実に久しぶり(ペースが遅くて申し訳ありません。m(_ _)m )。
 小伝ディスコグラフィを掲載。彼の音盤との出会いや、ベートーヴェンブラームスの試聴録なども書いてみたいのだが、さてはていつになりますやら…(激汗)。


10月13日(日): 

 昨日の演奏会の情報を演奏会出没表に追加。

 昨日届いたLPの情報をステーンハンマル 作品表とディスコグラフィに追加。


10月12日(土): 古書通販サイトabebooks.comでオーダーした洋書が1冊届いた。

Antal Dorati
"Notes of Seven Decades"(WAYNE)
1981年、デトロイトの出版社から発行された指揮者の自叙伝である。
元版は1979年にロンドンで出たが、アメリカで出版するにあたり、当時音楽監督を務めていたデトロイト響に関する記事や写真を増補したものという。
本文約350頁、残念ながらディスコグラフィ等の資料は付されていない。

 大阪センチュリー交響楽団第13回いずみ定期演奏会@いずみホールを聴く。指揮はマルティン・トゥルノフスキー

今日の曲目は、
スメタナ;『わが祖国』より「モルダウ」
マルティヌー;P、Timpと弦楽のための二重協奏曲
ドヴォルザーク;交響曲第9番「新世界より」
というもの。
(「モルダウ」+「新世界」)効果であろう、早くからチケットは完売、今日も客席はほぼ満席の盛況。
斉諧生は、愛惜佳曲書に掲げたマルティヌー作品の実演に接するために参じたもの。ドヴォルザークは、ひょっとするとプロ・オーケストラで聴くのは初めてかもしれない(汗)。
 
「モルダウ」冒頭、Fl重奏が美しい。
特に首席奏者(長山慶子さん)の音色には、(いつもながら)心震えるものがある。
Vn群の高音域が少し薄く硬い感じに響くのが気になったが、それを除けば、弦合奏の響きは普段にも増して暖かみを帯びて素晴らしい。
 
初めて聴くトゥルノフスキーだが、インテンポを保って、悠揚迫らぬ大河を描く。
変に外側から起伏や表情をつけるのではなく、細部をゆるがせにせず内側の充実から自ずと音楽美が聴き手の心を捉える趣。
ルーティンに流れず、ちょっとした低弦の合いの手やHrnのこだまをしっかり活かして音楽を引き締める。
 
なかんずく素晴らしかったのは、中間部(夜の部分)。ふっくらした響きが本当に美しかった。
弦合奏も絶好調の音色、また「高い城」のモティーフを吹くTrb合奏が、絶妙な柔らかさ。
音盤では、このモティーフがくっきり際立つと聴き映えするのだが、河畔の古城址がライトアップでもされているかのように響くことになる。
月の光に黒々とした影となって岸辺の高みにうずくまる廃墟の姿、それがまざまざと脳裡に現じたのは、トゥルノフスキーの解釈と楽員の好演あいまった成果に相違ない。
 
2曲目マルティヌー;二重協の前に休憩をとって舞台転換。
二群の弦合奏を左右に配置、中央指揮台の奥に独奏P、更にその奥にTimpという配置。
P独奏に招かれた小川典子さんが、楽員に混じって登場したのには驚いた。
 
この曲に斉諧生が求めるシャープな緊張感は少し後退、どこか丸み、暖かさを湛えた演奏となった。
これは指揮者の音楽性もさることながら、会場の音響も手伝ったかと思う。Timpの打ち込みが鈍く響いたのは、まったく後者の問題。
独奏Pが弦合奏に埋もれ気味になったのも音響の問題か、少し気の毒だった。第2楽章のカデンツァ風の部分など、いい音を出しておられただけに。
 
両端楽章は、もっと厳しく、もっと鋭く突っ込んでほしかったし、終楽章など、イメージしていたよりはゆっくりしたテンポだった。
したがって緩徐楽章が傑出、この曲を初めて聴く人の胸をも衝く出来となった。
 
聴衆の多くは(「モルダウ」+「新世界」)を期待して集まっていたからだろう、拍手のボルテージは低かったが、場内に数人、熱心な拍手が聞かれたのは嬉しかった。
 
なお、オーケストラの楽員運営のページに、指揮者のインタビューが掲載されており、この曲について熱心に語っておられる。→ここを押して
このWebpageの熱心な運営だけをとっても、センチュリーは良いオーケストラだと思う。もっと大事にされてほしい団体だ。
 
「新世界」は、スメタナ同様、ルーティンに流れず浪花節に堕さず、締めるべきところを締め、内側を充実させた名演。
派手なテンポ変動や金管の突出、木管の泣き節等は皆無。第2楽章「家路」の主題は素っ気ないくらい速めのテンポだった。
だからといって感じていないのではない。終楽章の第2主題をClが提示する部分で、そこはかとなくテンポを落とした情趣は、しみじみと濃い。
 
弦の内声やTrpのモティーフ、Hrnのリズムなど、ちょっとした部分の強調に、指揮者が曲を熟知し、作曲者と同じ音楽的風土にしっかりと根を張っていることを窺わせた。
オーケストラのリハーサル日記に、
リハーサルはお国ものだけに細部まで行き届いた『濃厚』な練習となった。
とあるのがさてこそと頷ける。
 
オーケストラも絶好調、とりわけ第2楽章後半(105小節以下)、弦各部がソリになるところの音色美や、楽章終結でppのCb四重奏が絶美の響きを醸し出したところは印象深い。
 
いつもよりも念入りにマイクがセッティングされていたようだ。ひょっとしたらCDが出るのかもしれない。
「モルダウ」+「新世界」、売れ行きが期待できよう。

 Ars AntiquaからLPが届く。

ヤーノシュ・ソリュオム(P)
ステーンハンマル;「晩夏の夜」 ほか(瑞CBS、LP)
長く捜していたステーンハンマルの大物がカタログに出ていたのでオーダー、めでたく入荷して歓喜、歓喜。
ステーンハンマル演奏ではP協第2番の名演のあるソリュオム、以前、3つの幻想曲の瑞CBS盤LPを入手した際、ジャケット裏に「晩夏〜」の録音もリリースされている記載があったので、何としても聴き逃すまじと思っていたもの。
1971年、ストックホルムでの録音。
シューマン;ウィーンの謝肉祭の道化をカプリング。
 
ロルフ・レアンデルソン(Br) ヘレネ・レアンデルソン(P)
「ブー・ベルイマンの詩による歌曲集」(瑞RCA、LP)
存在も知らなかったステーンハンマルの音盤をカタログで見つけたのでオーダー。LP片面に歌曲7曲が収録されており、望外の収穫に歓喜、歓喜。
すなわち、
ブー・ベルイマンによる5つの歌op.20より
「星の瞳」・「窓辺に」・「アダージォ」
歌曲集「歌と印象」op.26より
「船は行く」
歌曲集「遅い収穫」(遺作)より
「心というもの」
5つの歌(遺作)より
「メロディ」・「銀河の下に」
ジャケット裏には作曲者の簡単な紹介があるのみ、対訳や演奏者の略歴等は付されていない。
テューレ・ラングストレムの作品8曲をカプリング。

10月11日(金): 

 

フランツ・ヴェルザー・メスト(指揮) グスタフ・マーラー・ユーゲント管
ブルックナー;交響曲第8番(EMI)
音盤屋の店頭で、ラトル(指揮) ベルリン・フィルマーラー;交響曲第5番は山のように積み上げられていたのに、たった1枚しか入荷してなかったヴェルザー・メストのブルックナー;第8を購入。この曲の新譜は見逃せない。
演奏時間は、例えば第4楽章が21分半ほどと速め。この指揮者のブルックナーには、荘厳な有難味は薄いが、独特の面白さがあるので期待している。
その演奏力は並みのオーケストラを遙かに上回るという、スーパー・ユース・オーケストラを聴けるのも楽しみ。団体の公式Webpageは→ここを押して
2002年4月2〜3日、ウィーン楽友協会でのライヴ録音。ノヴァーク第2稿(1890年版、最も一般的なもの)による。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響 ほか
マーラー;大地の歌(Bella Voce)
贔屓の指揮者イッセルシュテットの貴重なマーラー録音。
かなり前に出た盤で、音源の正統性に関しては怪しげなレーベルなので敬遠してきたのだが、誘惑に抗しきれず購入に踏み切った。
歌唱はナン・メリマン(A)、フリッツ・ヴンダーリヒ(Ten)。
1965年4月4日ハンブルクで収録されたもので、モノラル録音。音は聞きやすい。
なお、この盤についてはsyuzoさんのコメントがある→ここを押して
 
レイチェル・ポッジャー(Vn)
バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(CHANNEL CLASSICS)
リリースされた時分には随分話題になったポッジャーのバッハが2枚組の全曲盤になって再発、しかも価格は1枚分。新譜の時から見送り続けた甲斐があった(?)というものである。シメシメと購入。
もちろん古楽器による演奏である。

10月10日(木): 

 ふと立ち寄った中古音盤屋で買い物。そこで時間を使いすぎて輸入盤店の閉店に間に合わなかった(汗)。

千住真理子(Vn) ピエール・デルヴォー(指揮) ルクセンブルク放送響
「ロマンティック・コンサート」(VICTOR)
1987年発売の古いもの。初発売の時には、CDとLPが同時に出ている。
収録曲は
バッハ(真鍋編);G線上のアリア
ベートーヴェン;ロマンス第2番
マスネ;タイスの瞑想曲
サン・サーンス;序奏とロンド・カプリチオーソ、ハバネラ
ショーソン;詩曲
パガニーニ;ラ・カンパネラ
サラサーテ;ツィゴイネルワイゼン
と、超ポピュラー名曲プロ。
彼女は少女時代から有名だったが、音盤はこれが2作目だった。
デビュー盤は前年にリリースされたメンデルスゾーンチャイコフスキーの定番カプリング。
実は、フランスの隠れた名匠デルヴォーが指揮しているのに惹かれて購入したもの。
このヴァイオリニストの共演指揮者、上記デビュー盤でデヴィッド・シャローンラロ;スペイン交響曲チャールズ・グローヴズ等々、素晴らしく渋い。
 
加藤知子(Vn) ダン・サンダース(P)
「エストレリータ」(DENON)
先月末に素晴らしい実演を聴いた加藤さんの小品集が中古格安で出ていたので購入。
標題にもなっているポンセ作品など11曲を収める。
中ではシマノフスキ;夜想曲とタランテラあたりに注目している。
またエルガー;「愛の挨拶」・「気まぐれ女」は、わずか3年後に同じレーベルで再録音しており(エルガー作品集)、思い入れのほどを偲ばせる。
駐日メキシコ大使がブックレットに寄稿しているのには驚いた。ポンセ作品収録との関連だろうが、それにしたって小品1曲だけなのである。

10月7日(月): 

 

エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮) ロシア国立響
マーラー;交響曲第9番(SAISON RUSSE)
スヴェトラーノフのマーラー全集のうち数曲が音盤屋の店頭を賑わしている。
どうしようか少なからず迷ったが、曲として集めている3曲(第3・6・9番)のうち唯一入荷していた第9番を購入。
1992年の録音とされているが、エフゲニー・スヴェトラーノフのページによれば「逆相成分の非常に多い録音で、音が2個所でダンゴになっており、聴いていて非常にストレスのたまる音。」とのこと。
なるほど、そのとおりであった。
 
コーリャ・ブラッハー(Vn) ブルーノ・カニーノ(P)
シューマン;Vnソナタ第2番 & バルトーク;Vnソナタ第1番 ほか(Arte Nova)
一時期ベルリン・フィルのコンサートマスターを務めていたブラッハーのソロ・アルバムを購入。
大好きなシューマンの第2ソナタを収録しているので、店頭に並ぶのを待ちかねていたもの。
ピアノが名手カニーノというのも嬉しいところだ。
2002年1月、ベルリンでの録音
なお、ブラッハーの公式Webpageは→ここを押して

10月6日(日): 『ショパン』10月号を購入。リリー・ブーランジェ & ナディア・ブーランジェ姉妹の記事が掲載されているため。
 全4頁の簡単なもので、作曲家の紹介として曲名が1つ(リリーの「ファウストとヘレネ」)しか挙げられていないのは疑問だが(掲載誌の性格を考えれば、国内版楽譜が出ているピアノ曲を紹介すべきと思う)、ともかく、彼女たちが少しでも知られるきっかけになれば幸いである。


10月5日(土): 

 休日のこととて、荷物がまとまって到着する。

ジャン・ジャック・カントロフ(指揮&Vn) ゴルダン・ニコリッチ(Va) オーヴェルニュ室内管 ほか
モーツァルト;交響曲第29番・協奏交響曲 K.364(Syrius)
『レコード芸術』10月号の「読者投書箱」で紹介されていたCD。
カントロフの録音、しかもモーツァルトとあっては見過ごすことができない。
上記投書では入手困難とのことだったが、Alapage.comにオーダーしてみたところ、無事、配送された。
2000年6月14日、フランス・オーヴェルニュ地方のVic-le-Comte村の教会で録音されたとのこと。
ニコリッチは、以前このオーケストラのコンサートマスターを務めた人で、今はロンドン響で同じ職責を担っている。
 
クリスティアン・ツァハリアス(指揮&P) ローザンヌ室内管 ほか
モーツァルト;交響曲第38番・P協第25番 ほか(MD+G)
近頃、斉諧生の周囲で話題になることの多いツァハリアスに、交響曲を指揮した録音があるのを公式Webpageで見つけたので、オーダーしてみた。
そういえば、彼にはシューマン;P協の弾き振りもあった筈。
カプリングのP協第25番も好きな曲なので有り難い。
独奏ピアノが大活躍するレシタティーヴォとアリア 「どうしてあなたが忘れられようか/恐れないで、愛する人よ」をフィルアップ(ベルナルダ・フィンク(Sop))。
もちろん協奏曲がK.503、交響曲がK.504、アリアがK.505という確信犯的カプリングである。
これはAlapage.comから。
 
アントン・マリク(指揮) ドルトムント・フィル
ブルックナー;交響曲第8番(ドルトムント歌劇場自主製作)
ネットサーフで辿り着いたドルトムント歌劇場のWebpageで、歌劇場のオーケストラによる自主製作盤が販売されていた。
ここは若杉弘氏やモーシェ・アツモンといった馴染みのある指揮者達も足跡を残したところ。
この盤で指揮しているマリクは未知の人だが、ウィーン生まれで独墺系の歌劇場の指揮者を歴任、ケルン放送合唱団の首席指揮者も務めているようだ。→ここを押して
自主製作盤、しかもブルックナーの8番とあらば買わざるべからず。
1998年6月22〜24日、ドルトムント歌劇場でのライヴ録音。ワン・ポイント収録と明記されており、音の状態も自主製作盤の水準を超えている。
なお、オンライン販売ではドイツ国内にしか対応していないようなので、メールのやりとりをした上でカード決済した。
もっとも現在、上記トップページからはオンライン・ショップに行けないようだ。あえて直リンクを張っておく。→ここを押して
 
アントン・マリク(指揮) ドルトムント・フィル
マーラー;交響曲第6番(ドルトムント歌劇場自主製作)
マーラーの6番も、このところ聴き逃したくない曲になっており、上記ブルックナーと同時にオーダーしたもの。
1997年7月1〜2日、ドルトムント歌劇場でのライヴ録音で、翌年のブルックナー同様ワンポイント収録と謳っている。
CD2枚組。
 
アルバン・ゲルハルト(Vc) ジャ・リュー(指揮) ドルトムント・フィル
ドヴォルザーク;交響曲第9番 & エルガー;Vc協(ドルトムント歌劇場自主製作)
エルガーの協奏曲は、これまた聴き逃せない曲。Vc奏者も、このところCDを見かける人なので、いちど聴いてみようとオーダーしたもの。
ソリストは1969年ベルリン生れ。ボリス・ペルガメンシチコフフランス・ヘルメルソン等に学んだとか。来日して新星日響や名古屋フィルと共演してこともあるらしい。彼の公式Webpageは→ここを押して
エルガーは1998年11月16〜18日の、ドヴォルザークは1999年4月12〜14日のライヴ録音である。
指揮者は、ノルショピング響の首席指揮者もしている人で、1964年上海生れ。漢字表記がわからないので片仮名のまま書いておく。こういう御面相なのだが、まるで「カモカのおっちゃん」(@田辺聖子)である。
 
イェルク・デムス(P) クルト・フランツ・シュミット(Cl) アドルフ・ヴァシチェク(指揮) ジュール・フィル ほか
モーツァルト;P協第27番・Cl協 ほか(EXTRAPLATTE)
このレーベルは、国内の音盤屋では見かけないが、春のウィーン旅行シェーンベルク他;Vn協のCDを買ってきた。
先だって公式Webpageを見ていて、作曲家最晩年の名作2曲をカプリングした1枚を見つけ、オーダーしたもの。
ピアニストは名の知れた人だが、1928年生れの1997年10月録音というから、年齢的に少し不安を感じないでもない。澄み切った境地が聴けると良いのだが。
Cl奏者は反対に若い人で、トンキュンストラー管のメンバー表に名前が見える。こちらは1997年9月録音。
ザルツブルク生れのイラ・カンツ(Sop)を迎えたアリア3曲をフィルアップ。
ジュール・フィルは、ハンガリーのオーケストラ。公式Webpageは見当たらないが、ハンガリー・オーケストラ協会のサイトの中に紹介がある。→ここを押して
なお、オンラインでオーダーできるのだが、折り返しメールが来て曰く、
送料節約のため、ジュエル・ケース(いわゆる貝殻)を除いてお送りしますので御了解ください。
 
ジャン・ピエール・ワレーズ(Vn) ユーリ・アーロノヴィチ(指揮) フランス国立管
プロコフィエフ;Vn協第1・2番(Accord)
ヴァイオリニストも指揮者も懐かしい名前である。1976年録音、たしかIPGレーベルでLPが出ていた音源の廉価CD化。
第1番の協奏曲は見れば買っている曲なので、Alapage.comにオーダーしたもの。
 
セルジュ・ボド(指揮) セント・ソリ管 ほか
ルーセル;組曲「蜘蛛の饗宴」・P協(仏Le Club Francais du Disque、LP)
これは国内の通販業者から。
愛惜佳曲書にも掲げたルーセル作品の未架蔵盤ゆえオーダーしたもの。
ステレオ初期録音なので、オーディオ的にも期待できそうである。
カプリングのP協の独奏はクロード・エルフェ

 音盤狂昔録平成14年9月分を追加。


10月4日(金): 

 

ウト・ウギ(Vn) レナード・スラトキン(指揮&P) フィルハーモニア管
ドヴォルザーク;Vn協・ロマンス・4つのロマンティックな小品(BMG)
イタリアの美音ヴァイオリニスト、ウト・ウギのCDを中古音盤屋で見つけたので買ってみた。1990年の録音である
「4つのロマンティックな小品」ではスラトキン自身がピアノを弾いている。そういえば、最近、彼の新譜を見かけないように思うが、どうしているのだろう?

平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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