音盤狂日録


11月30日(土): 

 あちこちから荷物が届く。(汗)
 特にJPCは、何回かオーダーしたものがまとめて送られてきた。そのぶん送料は安くつく計算だが…(今回、19点あっても約25ユーロ)。

ヨハネス・ヴィルトナー(指揮) ヴェストファーレン新フィル
ブルックナー;交響曲第3番(SonArte)
演奏されているのは標記1曲だが、CD3枚組のセットもの。…というのは、3つの版を各1枚ずつに収録しているのである。
すなわち、ノヴァーク第1稿(1873年版、いわゆる初稿)、同第2稿(1877/78年版)、同第3稿(1889年版、最も一般的なもの)で、更にアダージョの異稿(1876年版)をフィルアップしている。
第3番は好きな曲だし、この徹底ぶりに興味を惹かれてJPCにオーダーしたもの。3枚組で邦貨3,000円強というのも魅力的(笑)。
指揮者の名前に見覚えがあったが、調べてみると、ウィーン交響楽団ヨハン・シュトラウス・アンサンブルという、よく新春に来日する類の団体のリーダーで、MARCO POLOレーベルのヨハン・シュトラウス大全集やNAXOSに多く指揮盤がある。
オーストリア生れで、元来はVnを学び、1985〜95年にはウィーン・フィルに在籍していたとのこと。
1997年以来、このオーケストラの音楽総監督の地位にあり、既にブルックナー;交響曲第9番 (終楽章補筆完成稿つき)等の録音もあるそうだ。
なお、オーケストラの公式Webpageは→ここを押して
 
マルコ・レトニャ(指揮) スロヴェニア・フィル ほか
マーラー;交響曲第3番(自主製作)
このオーケストラの公式Webpageで自主製作盤の情報を見つけたのは、夏頃だったか。
蒐集している曲をオーダーすることにした。
メールで問い合わせたところ、支払い方法が銀行振込のみという。手数料が高いので(普通の銀行だと5,000円前後かかる)、諦めかけていたのだが、ユビュ王の食卓さんの掲示板で、新生銀行は2,000円ということを教えていただき、俄然、「その気」になった。
京都の支店に行って口座を開き(でないと取り扱ってくれない)、自分の口座内で日本円からユーロに両替し、その上で、自分の口座から相手方(オーケストラ)の口座(もちろんスロヴェニアの銀行である)へ振り込む。
ここで一つ失敗、というか、勉強したことがある。
代金+送料の額を送金したのだが、外国の銀行へ口座振込みをする場合、相手にいくら届くか、わからないのだそうである。
というのは、自分の銀行から相手の銀行に直接振り込める場合はよいのだが、取引関係がないか何かで、まず取引のある銀行(この場合、アムステルダムの某銀行)に振り込まれ、その銀行から目的の銀行へ再度振り込まれる。
このとき、中継に入った銀行が手数料を取るのだが、いくら差し引かれるのか、わからないのだそうである。
また、場合によると、2つ以上の銀行が中継することもあるそうで、どういうルートを通るか、こちら側の銀行には知る由もないのだそうである。
「まるで空き瓶に入れて流すみたいなもんじゃありませんか」と、後から銀行の担当者に苦情を言ったのだが、ちと気の毒だったかと反省している。(汗)
果たしてオーケストラ側に何ユーロ届いたのか、いまだにわからないが、ともかく注文したCDは2点とも送ってくれた。
その上、2002/03年のプログラム、オーケストラの300年史の小冊子(創立1701年、昨年に300年記念の展覧会があり、その解説として作成されたもの)、小写真集を同封してくれていた。(ユビュ王の食卓さんが紹介しておられる。→ここを押して)
それによると、来12月にシュテファン・ザンデルリンクシベリウス;交響曲第6番を、2003年2月にはミラン・ホルヴァートマーラー;交響曲第1番を振る予定になっている。
前置きが長くなったが、このCDは2001年4月12・13日のライヴ録音で、1996年以来、オーケストラの芸術監督・指揮者であるレトニャ(原綴 "Letonja"、発音には自信なし)が指揮している。
彼は1961年スロヴェニア生れ、リュブリアナとウィーンのアカデミーで学び、1987年以来、このオーケストラを指揮してきたのこと。来年のシーズンからバーゼル響の音楽監督に就任するらしい。
ブックレットのバイオには日本にも来たことがあると書かれているが、どこに客演したのだろう?
第3楽章の独唱はマリアーナ・リポヴシェク(M-S)。
なお、ディスコグラフィには30点以上が掲載されているが、うち何点かは品切れ再プレスの予定無しとのこと。
 
ミヒャエル・ギーレン(指揮) 南西ドイツ放送響 ほか
マーラー;交響曲第4番(hänssler)
ギーレンの指揮盤は聴き逃せないのでJPCにオーダーしたもの。
冒頭に書いたように、オーダーから入荷までずいぶんかかったので、既に国内の音盤屋に並びはじめている。(^^;
1988年2月23〜26日、カールスルーエでの録音。
このシリーズはいつもカプリング曲が凝っているが、今回はシュレーカー;あるドラマへの前奏曲(1995年2月7日、バーデン・バーデン、ハンス・ロスバウト・スタジオ)。
シュレーカー作品は、ギーレンの旧盤も架蔵している。そちらはベルリン放送響と1981年3月に録音したもの(Koch-Schwann)。
 
エルズビエタ・ヴィエドネル・ザヨツ(P) ミロスワフ・ヤチェク・ブワスチク(指揮) シレジア国立フィル
シマノフスキ;交響曲第4番 ほか(DUX)
蒐集しているシマノフスキ作品の未架蔵盤をJPCで見つけたのでオーダー。
オーケストラは、ポーランド・カトヴィッツェで活動している団体。アントニ・ヴィットポーランド国立放送響もこの街にある。
オーケストラの公式Webpageは→ここを押して
指揮者のブワスチク(原綴;Miroslaw Jacek Blaszczyk、"l"は2つとも途中に短い斜めの線が入っているもの、発音はきわめていい加減)は1959年生れ、1998年以来、このオーケストラの芸術監督に就任している。
独奏者の名前の読みもいい加減で、原綴は "Elzbieta Wiedner-Zajac" (ファーストネームの"z"の上には点が打ってあり、ラストネームの最後の"a"の下にはヒゲがついている)。ウィーンに長く住んでおり、シマノフスキの独奏作品のCDも録音しているとか。
ショパン;演奏会用ロンド「クラコヴィアク」パデレフスキ;創作主題による幻想ポロネーズをカプリング。
 
アルバン・ゲルハルト(Vc) カルロス・カルマー(指揮) ジュネス・ミュジカル・ワールド管
ニルセン;交響曲第4番「消しがたきもの」 & バーバー;Vc協(Amati)
このCDのことは、いつもお世話になっているユビュ王の食卓さんが紹介しておられた。
これははっきり言ってユースオケのレベルではありません。プロ顔負けとはこのこと。素晴らしい演奏です!
とのこと、ぜひ聴いてみたいとJPCにオーダー。
2001年1月7〜8日、ベルリン・フィルハーモニーでの録音。
なお、『レコード芸術』12月号の「海外盤試聴記」でも取り上げられており、「プロの演奏をもはるかに凌駕する驚異的なアンサンブル」(ニルセン)、「疑いなく同曲最高の名演の一つ」(バーバー)と絶讃されている。
 
ボー・ホルテン(指揮) オーフス響 ほか
ディーリアス;ノルウェー名作集(Danacord)
ホルテンのディーリアスは、以前、このレーベルからデンマーク名作集が出ていた。
もともとディーリアスは大好きな作曲家、彼の作品の中でも格別に愛らしい「そり乗り」が含まれているとあって、ぜひ聴きたいと思っていた盤。
ディーリアスはグリーグと親交篤く、ノルウェーとは縁が深いので、渋い企画であるといえよう。
なかなか国内の音盤屋に並ばない(見落としている?)ので、JPCにオーダーしたもの。
「そり乗り」以外の収録曲は、
「おとぎ話(昔むかし)」
「高い丘の歌」
5つのノルウェーの歌(指揮者による管弦楽編曲)
2001年5月の録音。
 
スロヴェニア・フィル室内アンサンブル
ショスタコーヴィッチ;室内交響曲op.110a ほか(自主製作)
上記マーラーと同じく、スロヴェニア・フィルから届いた自主製作盤。
蒐集しているショスタコーヴィッチ作品が含まれているのでオーダーしたもの。
一般的なバルシャイ編曲版ではなく、"Lucas Drew" という人の編曲と記されている。編成は弦楽合奏で、第1Vnから順に4-4-3-2-1。
弦楽四重奏によるドビュッシー;弦楽四重奏曲、木管五重奏によるバーバー;夏の音楽をカプリング。
1995年5月21〜23日、スロヴェニア・フィルハーモニー大ホールでのライヴ録音。
 
ディノラ・ヴァルシ(P) ペトル・アルトリフテル(指揮) プラハ響
ブラームス;P協第2番・3つの間奏曲op.117(MEDIAPHON)
ディノラ・ヴァルシの名前は、グリュミオールクー;Vnソナタのステレオ盤でピアノを担当していることから、早くから知っていた。
それ以外では名前を見ることもなかったのだが、以前、それだけではない、良いピアニストだ…という文章を見かけたことがある。どこで読んだのか、すっかり忘れてしまったが。
ある時、JPCでこのCDを見つけ、その評をふと思い出して、聴いてみようとオーダーしたもの。
ブラームスの2番は好きな曲だし、op.117の間奏曲は前に第2番の聴き比べを試みたこともある。
協奏曲は1994年6月16日、プラハ・スメタナザールでのライヴ録音。独奏曲は同年12月、ベルリンでのスタジオ録音。
 
マリー・ピエール・ラングラメ(Hp) エドモン・コロメール(指揮) ピカルディ管
ヒナステラ;Hp協・弦楽のための協奏曲 ほか(assai)
これはMDTから。
好きなヒナステラの、蒐集している曲を2つも含んでいるディスクを新譜情報で発見、直ちにオーダーしたもの。
更に協奏的変奏曲op.23をカプリング。
なお、ハーピストはベルリン・フィルの楽員である。
2001年6月・2002年1月の録音。
 
ジェニファー・スティントン(Fl) スチュアート・ベッドフォード(指揮) フィルハーモニア管
バーバー;Fl協 & ハチャトゥリアン;Fl協(Regis)
Vn協を原曲とするFl協2曲をカプリングした企画で、ハチャトゥリアンはランパルの、バーバーは演奏者自らの編曲。
以前、あるWebpageで、このCDのバーバー作品を所謂「お気に入り」として挙げておられるのを拝読したことがある。とても美しい文章で、ぜひ聴いてみたいと願っていた(今、検索してみても見つからないので、URLを引用できないのが残念)。
当時はCollinsレーベルで出ていたもので、ずっと捜していたのだが、なかなか見つからなかった。このほどRegisから再発されたものをJPCで見つけ、喜び勇んでオーダーしたもの。
正直申して、ハチャトゥリアン作品は、Fl編曲だと原曲の民族的パワーが出にくく、あまり好きではない。
これに対してバーバーは、極めてリリカルな作風なので、Flには良く合うのではないか。
1992年11月、ロンドン・アビー・ロード・スタジオでの録音。
 
ディアーヌ・アンデルセン(P) マルク・ドゥロビンスキー(Vc) ダネル四重奏団
ビアラン;P五重奏曲・Vcソナタ(Cypres)
フランス系(ビアランはベルギー人だが)のP五重奏、斉諧生偏愛の曲種である。(^^)
このディスクは『レコード芸術』10月号藤野竣介氏が紹介しておられた。
かくもロマンティックな感情で全曲を通しきったピアノ五重奏曲がほかにあろうかと、しばし圧倒されたほど雄弁で熱っぽい作品。
とのこと、ぜひ聴いてみたくなり、JPCにオーダーしたもの。
Vcソナタも「ほの暗い憂愁、ひたむきな抒情、感情の高揚がなかなか魅力的」な曲だそうで、期待したい。
ビアランは1871年生れ、1916年没。P五重奏は1913年の、Vcソナタは1915年の作品である。
2001年1月(P五重奏)、同年9月(Vcソナタ)の録音。
ピアニストの公式Webpageを見つけたが(→ここを押して)、あまり情報量がない。(^^;
 
ペトル・メシュエレウル(Vn) スタニスラフ・ボグニア(P)
ベートーヴェン;Vnソナタ全集(Calliope)
メシュエレウルはターリヒ四重奏団の第1Vn奏者。
前に買ったモーツァルト;Vnソナタ選集が、なかなか良かったので、ベートーヴェンも聴いてみようとJPCにオーダーしたもの。
1994〜95年に録音されたCD3枚組が12.92ユーロ(1,600円弱)、店頭では3,000〜4,000円くらいだから、海外通販のメリットが大きい。
 
デーネシュ・ジグモンディ(Vn) アンネリーゼ・ニッセン(P)
シューベルト;幻想曲・二重奏曲 & シューマン;Vnソナタ第1番(Tuxedo Music)
MDTの新譜リストを眺めていると、蒐集しているシューベルト作品があったのでオーダーしてみた。
ジグモンディはハンガリー出身、ブダペシュト・リスト音楽院で学んだのち、カール・フレッシュジノ・フランチェスカッティに強い影響を受け、バルトークとも親交があって彼の音楽観に触発されるところ大きかったという。現在はアメリカで教職にあるようだ。
1967〜77年の録音。
 
アルフレッド・デュボア(Vn) マルセル・マース(P)
フランク;Vnソナタ & ドビュッシー;Vnソナタ ほか(BIDDULPH)
デュボアは1898年生れ、1949年没。フランコ・ベルギー楽派ヴァイオリニストとして著名で、イザイの後継者であり、グリュミオーの師に当たる。
曲を献呈されたイザイ直伝のフランク、ぜひ聴いてみたいと思い、JPCにオーダーしたもの。
ベートーヴェン;Vnソナタ第7番と小品フォーグラー;アリア、狩とメヌエットをカプリング。
フランクのみ1931年、他は1936年のSP録音で、復刻状態は良好。
 
木野雅之(Vn) 木野真美(P) ほか
伊福部昭;Vnソナタ・日本組曲・P組曲(MITTENWALD)
東京・池袋のクラシックCD専門店MITTENWALDが作曲者の米寿を記念して製作されたディスクを、直接、通信販売で購入したもの。
木野氏はミルシテインギトリスの弟子ということもあって、かねてCDは出るたびに買っている。
また伊福部昭の音楽は、交響譚詩SF交響ファンタジー第1番など、好きな方である。
2002年8月30日、作曲家臨席のもと、トッパンホールでセッション収録された。ピアニストはヴァイオリニストの実妹とのこと。
「日本組曲」は弦楽合奏のための編作で、兎束俊之(指揮) 東京音楽大学アンサンブル・エンドレスの演奏(1998年10月14日、カザルス・ホールでのライヴ)。
「ピアノ組曲」は、上記「日本組曲」の原曲(1933年)で、堀陽子の演奏(1990年12月10日、イイノホールでのライヴ)。
なお、Vnソナタのリハーサル風景が1分半ほど収録されており、演奏者に指示する作曲家の肉声を聞くことができる。
 
カリン・ゲオルギアン(Vc) パーヴェル・ギリロフ(P)
ブラームス;Vcソナタ集(BIDDULPH)
あるとき、チェリストの公式Webpageをあれこれ捜してネットサーフしていて、この人のページを見つけた。→ここを押して
Webpageのオーディオ・ファイルを試聴してみると、斉諧生好みの寂びのきいた音色に、しっかりした技巧、立派な音楽だった。
ゲオルギアンはモスクワ生れ、ロストロポーヴィッチに学び、1966年のチャイコフスキー国際コンクールで1位を獲た。このときの2位がアルト・ノラスである!
ぜひCDで聴いてみたいと捜していたところ、JPCにあったのでオーダーしたもの。
2枚組の1枚にVcソナタ第1・2番を、もう1枚はボーナスCD扱いでVnソナタ第1番(クレンゲルによるVc編曲)を収録している。
1989年12月・1990年4月、オールドバラ・スネイプのモールティングスでの録音。
 
ラファエル・ウォルフィッシュ(Vc) ジョン・ヨーク(P)
フランク;Vnソナタ(Vc編) & ルクー;Vnソナタ(Vc編) ほか(CELLO CLASSICS)
MDTルクー;Vcソナタを見つけたので、驚喜してオーダー。
現物が届いてみると、本来のVcソナタではなく、VnソナタのVc編曲で吃驚(編曲者名は表記されていない)。
まあ、これはこれで良い。この曲を録音したチェリストは、おそらく初めてではないか。
イザイ;無伴奏Vcソナタ・「子どもの夢」をカプリング。
全体として、イザイにちなんだ曲集になっており、「イザイ・コレクション」とタイトルが付されている。
2002年7月7〜9日録音。
 
ユリウス・ベルガー(Vc) キャロライン・シュスター・フルニエ(Org)
「エレジー〜マルセル・デュプレ追悼」(organ)
贔屓のチェリスト、ベルガーの未架蔵盤をJPCで見つけたのでオーダー。
オルガニストマルセル・デュプレ(1886〜1971)の作品や彼に捧げられた曲等を集めたもので、
デュプレ;Vcソナタ・3つの小品
ヴィエルヌ;アダージョ(交響曲第3番から演奏者による編曲)
サン・サーンス;祈り
等を収録している。
2001年9月録音。主にマインツ・聖ベルンハルト教会のカヴァイエ・コル・オルガン(1877/90)を使用している。
 
パスカル・モンテイレ(テオルボ)
バッハ;無伴奏Vc組曲第4〜6番(zig zag)
バッハ;無伴奏Vc曲集をテオルボ(大型で低音域に拡張されたリュート属の楽器)で演奏したもの。
モンテイレ(原綴;Monteilhet)は、第1〜3番をVirginレーベルに録音しており(1999年)、レーベルを変えて全曲録音を完成したことになる。
バッハ;無伴奏の編曲ものは大好物、もちろんモンテイレのVirgin盤も架蔵済み。
JPCで見つけてオーダーしたのだが、zig zag はハルモニア・ムンディが代理店になっているので、国内の音盤屋にも入荷しているようだ。
なお、テオルボによるバッハには、Lindoroレーベルからファン・カルロス・リベラによる第1〜3番が出ている。演奏自体は、こちらの方が優れており、御一聴をお薦めすると同時に、残る3曲のリリースを期待したい。
 
クリスティーナ・アリアーニョ(P)
「アール・ヌーヴォーの音楽(ARTS)
妙なタイトルのCDだが、リリー・ブーランジェのピアノ独奏曲を収録している。
すなわち、古い庭で明るい庭で行列の3曲が演奏されている。
情報は早くに知人から教えていただいていたのだが、なぜか音盤屋には見当たらず、JPCにオーダーしたもの。
ブーランジェ以外では、
ドビュッシー;レントより遅く・夢・月の光
サティ;ジムノペディ第1番・グノシェンヌ第3番
ラヴェル;亡き王女のためのパヴァーヌ
タイユフェール;パストラーレ・ロマンス・ドビュッシーを讃えて
更にミヨープーランクイベールの作品を収録。
2001年6月、ベネツィアでの録音。
なお、ピアニストの公式Webpageは→ここを押して
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響 ほか
ワーグナー;楽劇「トリスタンとイゾルデ」(ARCHIPEL)
イッセルシュテットの列伝を書きながら調べていて、彼の「トリスタン」全曲がリリースされていることを知った。
非正規音源は買わないのが原則だが、データ収集上やむを得ず(苦笑)、JPCにオーダーしたもの。
1949年12月16日、ハンブルクでのライヴ録音とされている。
主な配役は
マックス・ローレンツ(Ten);トリスタン
パウラ・バウマン(Sop);イゾルデ
ゴットロープ・フリック(Bs);マルケ王
音質は、もちろんさほど優れたものではないが、聴きづらい雑音や歪みはなく、歌唱は細めの音ながら、きれいに録れている。
管弦楽は、ジャケット等に "Orchester des NDR Hamburg" と表記されているので、それに従う。ハンブルク国立歌劇場での録音ではないかという疑いを拭えないが…。
 
ダミアン・ポアブロウ(Vo) ほか
グレゴリオ聖歌;レクイエム(ALPHÉE)
先日、何気なくNHKの衛星放送を見ていたら、ちょうど「ヨーロピアン・ライフ」という番組が写っていて、それにグレゴリオ聖歌を研究し歌っている男性が紹介されていた。
自宅での練習風景のあと、教会での演奏会になったのだが、あまり大きくない会場なのに客はまばら、十数人くらいしかいない。大袈裟なナレーションとは不釣り合いなのが可笑しかった。グレゴリオ聖歌のファンが少ないのか、彼に人気がないのか。
本業での売上が悪いせいか(?)、彼は副業にスピーカーの製作・販売を行っており、けっこう綺麗で高価そうなものを手作りして納入するところまで、放映されていたのである。
これですっかり、このダミアン・ポアブロウなるグレゴリオ聖歌の歌い手に興味を持ってしまった。(笑)
あちこち捜すと、彼のCDが何枚か見つかった。
そのうち、曲目的に興味がある「レクイエム」のみ、JPCにオーダーしたもの。
ポアブロウ氏と8人の声楽アンサンブル(女声も混じっているようだ)による演奏で、「ディアパゾン・ドール」に格付けされているというから、フランスでは高く評価されているのであろう。
1994年10月、Silvacaneというところでの録音。
なお、前記番組の簡単な情報が、ヨーロッパNHKのWebpageに残っていた。→ここを押して
 
アンドレアス・ライナー(Vn) アニア・レヒナー(Vc) ペーター・ルートヴィヒ(P)
「タンゴ・ア・トロワ」(FARAO)
去る8月に実施した、「5周年&30万アクセス記念・CDプレゼント」の際、御応募くださった方から教えていただいたCD。
品がよくスリリング」なライヴ演奏とのこと、ぜひ聴いてみたいと思い、捜してみるとJPCにあったのでオーダーした。
1995年6月、ミュンヘンのルストシュピールハウスでのライヴ。全14曲を演奏しているが、すべてピアノ奏者の手になる楽曲である。

 更に、書籍が2点、届いた。

ジョン・カルショウ
"Putting the Record Straight"(Secker & Warburg)
かれこれ20年来の探求書が見つかった。\(^O^)/
英DECCAの名プロデューサー、カルショウの自伝で、出版は1981年。前年に急逝したカルショウの遺著となったものである。
斉諧生が、この本を知ったのは、1984年、半年だけ存在した雑誌『音楽通信』(ステレオサウンド社、編集長は黒田恭一氏)であった。
創刊号から終刊となった第6号まで、抄訳が連載されていたのである。そのときは「新音楽家事情」という題が付いていた。
1950〜60年代の楽壇の裏事情が赤裸々に語られており、面白いことこの上ない記事であった。
同誌が短命に終わったため、ごく一部しか読むことができず、以来、原著を手に入れたいと念願してきた。
ネット通販に手を染めてからは、あちこちのオンライン古本屋で何度も検索したのだが、出てこない。
ほとんど諦めかけていたところ、先日、Web上の知人から、SFB.ATというサイトを教えていただいた。探求本を登録しておくと、あちこちの古書店のデータベースを捜して、結果をメールで通知してくれるサービスがあるのだ。
すると、登録してから僅か2週間ほどで、オーストラリアの本屋に出たという知らせが舞い込んだ。しかも格安、直ちにオーダーしたことは言うまでもない。
今は索引の人名を見ながら拾い読みしているところだが、イッセルシュテットのCapitol録音にもカルショーが関わっていた等、まさしく情報の宝庫である。
 
ヴァルター・ゲルストベルガー(編)
『伝説のヴァイオリニスト ゲルハルト・タシュナー』(Wissner)
これはJPCから届いたもの。
1941年、弱冠19歳でフルトヴェングラーのベルリン・フィルのコンサートマスターに就任した、タシュナーに関する論文集のような本である。
「第三帝国におけるタシュナー」、「タシュナーと指揮者たち」、「室内楽奏者としてのタシュナー」、「タシュナーと20世紀音楽」等々、ドイツ語なので簡単には読めないが(苦笑)、図版を見ているだけでも楽しい。
モーツァルト風の神童の扮装をさせて貰っている7歳の肖像写真、サッカーに興じているカリカチュア、あるいはロスバウトシュミット・イッセルシュテットマタチッチ等との共演を告げるパンフレット(チラシ? ポスター?)等々。
特にマタチッチとの共演は、1942年11月26日付けで、オーケストラはベルリン・フィル。タシュナーの曲目はドヴォルザーク;Vn協だが、メインはブルックナー;交響曲第3番
この指揮者のキャリアがそこまで遡るとは…、ちょっとした驚きだった。
なお、版元の公式Webpageは→ここを押して

 今日届いたCDの情報をシュミット・イッセルシュテット ディスコグラフィブーランジェ・作品表とディスコグラフィに追加。


11月29日(金): 遠方に出張する用務があり、車中で野村三郎 『ウィーン・フィルハーモニー』(中央公論新社)を読了。
 最初、書店で見かけたときには「またウィーン・フィル本か…」とも思い、パラパラめくってみるとシュトラッサー『栄光のウィーン・フィル』と時代的に重なっているようなので、放っておいたのだが、良い評判が聞こえてきたので、買ってみた。
 第二次大戦直後、米ウェストミンスター社がウィーンで行った室内楽録音等を巡る関係者(楽員、録音エンジニアら)の聞き取りが中心的な内容。
 しかしながら、戦争前後のウィーン・フィルの苦難について、楽団内部の「緑のファシストと褐色のファシスト」の対立(前者はムッソリーニを後ろ盾とする民族派、後者はナチス・ドイツ系)、戦争最末期に空襲と砲撃の下で楽器を抱え地下室を転々としたバリリの日記、終戦後も映画『第三の男』の世界そのままに混乱と生活難にみまわれた様子等々、リアルに描かれている。
 「絶対王政の没落と新興ブルジョアジーの台頭」云々といった少々図式的な歴史観には疑問が無くもないが、ウィーン・フィルの誕生と発展を大局的な歴史の中に位置づけようとする著者の姿勢には好感が持てた。
 それ以上に、全編を通底する、著者のオーケストラと楽員に対する謙虚な敬意と深い愛情には、惻々と胸をうたれるものがある。これは類書に見られないものだ。
 3,300円と高めの定価設定には弱るが、ウィーン・フィルやウィーンの室内楽の愛好家には必読の書物であろう。

 出張の帰りに大阪・難波に新しく開店した外資系大規模音盤店に立ち寄る。
 「関西最大規模」を誇っているらしいのだが、クラシックの品揃えに関しては疑問。例えば同系列の梅田店と同程度のように感じた。
 もっとも注目の新譜が大量入荷していたので、「難波店オープン記念オリジナル・トートバッグ」が貰える程度の買い物をしてしまった(汗)。

ピエール・モントゥー(指揮) ロイヤル・フィル ほか
ベートーヴェン;交響曲第3番 ほか(BBC LEGENDS)
モントゥーのライヴ盤、買わざるべからず。
1960年頃の演奏で、すべてモノラル。
標記ベートーヴェンは1960年11月12日、ロンドンのBBCスタジオでの収録。それ以外の曲目は、
ケルビーニ;序曲「アナクレオン」(ロイヤル・フィル、1960年1月25日、ロンドン)
ベルリオーズ;ラコッツィ行進曲(ロンドン響、1961年12月15日、ロンドン)
R・シュトラウス;交響詩「ドン・ファン」(BBCノーザン響、1960年12月21日、マンチェスター)
音質はいずれも良好。中ではベルリオーズが素晴らしく、気合いのこもった楽音がビンビン響いてくる。
 
高関健(指揮) 大阪センチュリー響 ほか
ベートーヴェン;交響曲第9番(LIVE NOTES)
高関&センチュリーの新ベーレンライター版によるベートーヴェン全集、最終巻の「合唱」が発売されていたので購入。このコンビの演奏は聴き逃せない。
2002年5月7日、1824年のこの日に初演されたことにちなんで開かれた、いずみホールでのコンサートのライヴ録音である。
なお、コンサートに向けての指揮者のインタビューがWebで公開されている。→ここを押して
 
石丸寛(指揮) 九州響
ブラームス;交響曲第4番(自主製作)
1998年に亡くなった石丸寛を記念してのものと思われる九州響の自主製作盤。石丸氏はこのオーケストラの初代常任指揮者であり、1995年以降は音楽監督の地位にあった。
この盤に収められたのは、1997年10月16日、第200回定期演奏会のライヴ録音である。
出た頃に見かけていたのだが、この指揮者のことはTVコマーシャル以外よく知らなかったこともあって、興味を惹かれなかった。
ところが、いつも拝読しているClassical CD & Reviewで、ある時、このCDが取り上げられ、
このCDでの録音は,演奏行為を通じて心のメッセージがストレートに伝わってきて,それは演奏が素晴らしいということだけでなく,押し寄せる思いを胸に押し抱きたくなるような愛惜の念すらこみ上げてきてしまいました。
と絶讃しておられた。→ここを押して
ところが、その頃には店頭で見かけなくなっており切歯扼腕、ずっと気になっていたもの。
既存店舗からデッドストックでも廻ってきたのか、今日立ち寄った新しい店舗の棚に並んでいたので、ここを先途と購入。
 
ケーゲルのライヴ盤が大量に入荷していた。全点、買わざるべからず。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮) ライプツィヒ放送響
ベートーヴェン;交響曲第2・5番(WEITBLICK)
第2番;1973年9月25日、ライプツィヒ・コングレスハレ。
第5番;1986年10月7日、ベルリン・シャウシュピールハウス。
ともに良好なステレオ録音。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮) ライプツィヒ放送響
ブルックナー;交響曲第4番(WEITBLICK)
1960年11月11日、ライプツィヒ・ベタニア教会での録音。これのみライヴではなく、セッション収録されたもの。
モノラルだが良好な音質である。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮) ライプツィヒ放送響 ほか
マーラー;交響曲第1・2番(WEITBLICK)
第1番;1978年5月9日、ライプツィヒ・コングレスハレ。
第2番;1975年4月15日、ライプツィヒ・コングレスハレ。
CD2枚組、ともに良好なステレオ録音。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮) ドレスデン・フィル ほか
マーラー;交響曲第3番(WEITBLICK)
1984年3月25日、ドレスデン・クルトゥーアパラスト。
ジャケット表示では終楽章に27分24秒を要している。平均的には22分前後、バーンスタイン新盤でも25分01秒だから、かなり徹底した表現が期待できそうだ。(^^)
CD2枚組、良好なステレオ録音。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮) ライプツィヒ放送響
ショスタコーヴィッチ;交響曲第7番(WEITBLICK)
1972年5月16日、ライプツィヒ・コングレスハレ。
良好なステレオ録音。
ライナーノートには、ケーゲルには多くのショスタコーヴィッチ作品を放送録音しており、いずれWEITBLICKレーベルから個別に発売されるであろう…と記されている。
 
フリードリヒ・グルダ(P) デニス・ブレイン(Hrn) ハンス・ロスバウト(指揮) 南西ドイツ放送響
モーツァルト;P協第23番・Hrn協第3番 ほか(hänssler)
ロスバウトの新発売音源、買わざるべからず。現代音楽で知られる指揮者だが、この人の古典派録音を聴き逃してはならない。
P協は1962年1月15日、バーデン・バーデンの南西ドイツ放送局でのスタジオ録音。ディスコグラフィによれば、翌日には第14番を録音している。
また、この曲には他に2種、エリク・テン・ベルクロベール・カサドシュスと共演した録音が残っているという。
Hrn協は1953年5月6日、これも南西ドイツ放送局スタジオでの収録で、ディスコグラフィによれば、同日に第2番も録音している。
ともに過去、イタリアのレーベルから発売されたことがあり、第2番のほうは斉諧生も架蔵している。
更にシュザンヌ・ダンコ(Sop) マリア・ベルクマン(P)を独奏に迎えたレシタティーヴォとアリア 「どうしてあなたが忘れられようか/恐れないで、愛する人よ」(1953年11月13日)を収録している。
同じ作曲家の
Vn協第4番(アルトゥール・グリュミオー(Vn) エルネスト・ブール(指揮)、1959年3月2日)
をカプリング。
モノラルながら良好な音質で、特にグルダの独奏ピアノは息を呑む美しさ。

11月28日(木): 

 久しぶりに覗いた中古音盤屋で望外の収穫あり。まずLPから。

レジナルド・グッドオール(指揮) ENO ほか
ワーグナー;楽劇「ラインの黄金」(英EMI、LP)
 
レジナルド・グッドオール(指揮) ENO ほか
ワーグナー;楽劇「ワルキューレ」(英EMI、LP)
一昨日、新刊の評伝について言及したグッドオールの『指環』のうち2巻が超格安価格で出ていた。これも何かの引き合わせと思い購入。
「ライン〜」(1975年3月のライヴ録音)はLP4枚組、「ワルキューレ」(同年12月のライヴ録音、英語版だから「ヴァルキリー」か)はLP5枚組。
「神々の黄昏」は架蔵済みなので、残るは「ジークフリート」。店の親爺さんによると「入ってきたときは4つ揃っていましたよ」とのこと、惜しいところで逃した。
 
ドゥヴィ・エルリ(Vn) デジレ・エミール・アンゲルブレシュト(指揮) ロンドン・フィル ほか
ラロ;スペイン交響曲・ノルウェー狂詩曲 ほか(CD-R)
上記LPを買ったのとは別な中古屋で、面妖なものを見つけた。
LPを「板起こし」して私製したCD-R、本来なら売り買いされるものではないはずだが、中古屋が買い取って棚に並べていたのである。
ジャケットが綺麗に拵えてあるせいで見間違ったのかもしれない(LPのジャケットをスキャナで取り込んで高品質プリンターで印刷したもの?)。
非正規音源は買わないのが原則、そもそもジャケットと中味が一致するのかさえ怪しいものだが、ともかくアンゲルブレシュトの未架蔵音源ゆえ、節を屈することになるが、敢えて購入。
CD-Rの余白にベートーヴェン;Vnソナタ第5番「スプリング」が収められていた。
CDケースに投げ込まれているコピーを信頼するならば、ミシェル・オークレール(Vn) ジュヌヴィエーヴ・ジョワ(P)の演奏ということになる。
 
黒田亜樹(P)
ピアソラ;P作品集(VICTOR)
半年ほど前に「アディオス・ノニーノ」等を収めた第2作を買っている黒田亜樹のピアソラ、第1作の新品未開封品が中古屋に定価の半分ほどの価格で並んでいたので購入。
収録曲は、
「リベルタンゴ」「デカリシモ」「フーガ9」「オブリヴィオン」といった有名作の演奏者自編の独奏P版
組曲(1943年)や組曲第2番(1950年)等、初期に書かれたクラシック作品
後期の名作3つのプレリュード(1987年)
など。
なお、ピアニストの公式Webpageは→ここを押して
 
野平一郎(P)
武満徹;P作品全集第1巻(MusicScape)
先日、長谷川陽子さんとの実演に接した野平さんの武満作品集が中古格安で出ていたので購入。
収録曲は、
リタニ(処女作2つのレントの改訂版)
遮られない休息
ピアノ・ディスタンス
閉じた眼 I・II
雨の樹素描 I・II
など。1999年2月、秩父ミューズパーク音楽堂での録音。
なお、レーベルの公式Webpageは→ここを押して
上記サイトによると、この第1巻がリリースされてから3年近く経つが、続巻は企画の段階に留まっているようだ。
また、野平さんの公式Webpageは→ここを押して

11月27日(水): 

 CrotchetからCDが届く。

デイモン・デントン(P) レヴォン・アンバーツミアン(指揮) ARCO室内管 ほか
ショスタコーヴィッチ;室内交響曲op.110a & P協第1番 ほか(Phoenix)
蒐集しているショスタコーヴィッチ作品2曲がカプリングされた、斉諧生にとっては「徳用盤」がリリースされていたのでオーダー。
室内交響曲は、通常のバルシャイ編曲版の模様。
ピアニストはアメリカ・サウスカロライナ出身、ジュリアード音楽院でも学んだとか。公式Webpageは→ここを押して
指揮者は1955年モスクワ生まれというが、姓(原綴;Ambartsumian )からするとアルメニア系か。元来Vn奏者で、1988年に、勤務するモスクワ・チャイコフスキー音楽院の学生・卒業生・教員から選抜して、このオーケストラを組織したという。
P協での独奏Trpはフレッド・ミルズ、斉諧生は知らない名前だったが、カナディアン・ブラスのメンバーで、元来はストコフスキーに見いだされてヒューストン響アメリカ響で吹いていた人とのこと。

 演奏会出没表に月曜のコンサートを追加。

 土曜に購入したDVDの情報をシュミット・イッセルシュテット ディスコグラフィに、先週に届いたSPの情報をブーランジェ・作品表とディスコグラフィに追加。


11月26日(火): 山崎浩太郎 『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(洋泉社)を購入、一気に読了。
 イギリスのワーグナー指揮者レジナルド・グッドオールの評伝である。山崎氏は夙にこの指揮者に関心を持っておられ、HMVのフリーペーパーに略伝を連載されたことがある。斉諧生もその記事でグッドオールのことを知った。
 ブリテン;歌劇『ピーター・グライムズ』の初演を作曲者から任され、またクナッパーツブッシュから親しくワーグナー指揮の骨法を受け継いだ名匠でありながら、偏屈な性格やナチス・ドイツのシンパだったこと(ワーグナー好きが昂じた結果である)などが災いし、ずっと下積みに甘んじていた。
 1968年、66歳に至ってようやく認められ、88歳までの約20年間、『指環』『トリスタン』『パルジファル』の全曲盤をEMIやDECCAに遺すなど、イギリスにおける重要なワーグナー指揮者として遇されることになった。斉諧生も山崎氏の文章をきっかけに、それらの音盤の一部を架蔵している。
 今回、キング・インターナショナルの企画で、既出の文章を約3倍に加筆され、本格的な評伝として刊行されたもの。
 本文約200頁の比較的小規模な書物ながら、一読、三嘆せざるをえない見事な出来栄えである。
 イギリスで出版された伝記を下敷きにしたと書いておられるが、もちろん原著の祖述に留まらず、関係者の性格や人間関係の把握、オペラ後進国イギリスと日本の比較、レコード産業や国の芸術振興政策といった歴史的状況を絡めた叙述は、まさにオリジナルなもの。音盤愛好家には是非是非お読みいただきたい。
 斉諧生も偏愛の演奏家について、いつの日か、このような著作をものすることができれば、人生の至福であろうと思う。
 ああ、羨ましい。

 

ラファエル・クーベリック(指揮) バイエルン放送響
ベートーヴェン;交響曲第4・5番(audite)
auditeレーベルが続々とリリースしているクーベリックのライヴ。このシリーズは聴き逃せないと思っており、しばらく前から出回っていた新譜を、ようやく購入。
第4番は1979年10月23日、ボン・ベートーヴェンハレでの、第5番は1969年11月20日、ミュンヘン・ドイツ博物館コングレスハレでの収録。
それにしても、1969年や1979年当時の日本で、クーベリックがここまで偉大な音楽を創る指揮者だと見抜いていた人は、ごく少なかったのではないか?
 
井上喜惟(指揮) ジャパン・グスタフ・マーラー管
マーラー;交響曲第6番(自主製作)
井上喜惟の名前は、舘野泉ラフマニノフブラームスのCDで知り、日本の若手指揮者で最も評価するものとして挙げるという人もいたりするので、気になっている。
これまた気になる曲、マーラーの第6のCD(2枚組)が店頭に並んでいたので購入。
オーケストラは井上が提唱して発足させた団体で、アマチュアを中心にプロも含めた意欲的なメンバーからなる、とブックレットには記されている。
2000年11月25日、神奈川県民ホールでのライヴ録音。この曲をライヴでCD化するからには相当な自信があるということだろうか。なんとなく期待したい気分でいる。
 
アルトゥール・シュナーベル(P) ピエール・モントゥー(指揮) ニューヨーク・フィル ほか
シューマン;P協 ほか(M&A)
モントゥーの未架蔵音源が出ていたので購入。
1943年6月13日、ニューヨークでのライヴ録音。アッツ島の日本軍が玉砕し(5月29日)、キスカ島から撤退を図っていた時期に当たる。
音はいくぶん硬く、雑音がざわざわしているが(エアチェック時に混入したものか)、明快な音質である。
ヨゼフ・シゲティ(Vn)、ピエール・フルニエ(Vc)とのシューベルト;P三重奏曲第1番(1947年10月1日、ロンドン)をカプリング。
 
ヒラリー・ハーン(Vn) マレク・ヤノフスキ(指揮) オスロ・フィル ほか
メンデルスゾーン;Vn協 & ショスタコーヴィッチ;Vn協第1番(Sony Classical)
しばらく前から出回っている話題盤だが、このヴァイオリニスト、ジャケットのアンドロイドっぽいポートレートがどうにも苦手で(苦笑)、買わずにいた。
先日、工藤さんのショスタコーヴィッチ・ページを拝見すると、
新しい世代の演奏解釈と呼ぶにふさわしい秀演。とにかくハーンの卓越した技術に裏付けられた知的なアプローチに引き込まれざるを得ない。
との高評。
これは聴かざるべからずと、購入に踏み切ったもの。
メンデルスゾーンはヒュー・ウォルフが指揮している。
 
コンラート・ヒュンテラー(Fl) ライナー・クスマウル(Vn) ユルゲン・クスマウル(Va) ロエル・ディールティンス(Vc)
モーツァルト;「魔笛」(MDG)
斉諧生最愛のオペラ「魔笛」は編曲物も蒐集中。
今回はFl四重奏へのアレンジで、モーツァルトと同時代にマインツで活動していたFl/Ob奏者ハインリヒ・エーレンフリートという人の手になるもの。
もともと歌劇の中でもタミーノが横笛を、パパゲーノがパン・フルートを吹くので、Fl系の編曲に向いているのだろう。
演奏者も、18世紀オーケストラのヒュンテラー、以前ベルリン・フィルのコンサートマスターだったクスマウル、ACCENTから出たバッハ;無伴奏の良かったディールティンスと、錚々たる顔触れなので、期待して購入。
序曲から終曲まで、20のナンバーを収録している。
ヴォルフガング・シュルツ@ウィーン・フィルによる同趣向のCDも出ているが、そちらは国内盤なので、とりあえず後回し。

11月25日(月): 

 久々に東京へ赴き、サントリー・ホールネーメ・ヤルヴィ(指揮)ヨェーテボリ響を聴く。

今日の曲目は、
マルティンソン;A.S.の追憶
シベリウス;Vn協
シベリウス;交響曲第5番
というもの。
昨24日に大阪公演があったのだが、本業の都合で聴くことができなかった。
また、そちらはメインがマーラー;交響曲第1番ということで、斉諧生的には今日の曲目の方が遙かに魅力的。
昨日、ザ・シンフォニー・ホールに行かれた方からは、アンコールにステーンハンマル;カンタータ「歌」より間奏曲が演奏されたという情報も寄せられており、もしかすると今日も…と期待がふくらむ。
 
会場には幾分空きも見られたが、登場する楽員に熱い拍手が浴びせられ、ファンの期待を感じさせた。
入りの問題は、ゲルギエフ(指揮)キーロフ歌劇場管とのバッティングが響いたのでは、という消息通の声あり。
 
マルティンソン作品は、シェーンベルク;浄められた夜の作曲100周年を記念した曲で、冒頭、低弦のppから動機の断片が立ち上がってくるところから、すでにしてシェーンベルク色が濃い。
現代曲風の特殊奏法だの尖鋭な不協和音といったものはなく、「浄められた夜」のモティーフを引用しながら、巧みに音を重ね、高揚し、またppへ沈潜していくといった趣の曲であった。
 
弦楽はフル編成で、後述するヤルヴィの音楽づくりとも関係するとは思うが、ちょっと響きが厚めの印象を持った。元来、弦楽アンサンブルのために作曲されたものとプログラムにあったように、スリムな響きで横の線の絡み合いを丁寧に出した方が、曲の趣向が生きたかもしれない。
スウェーデン音楽情報センターのデータベースによると、原曲は15人の弦楽アンサンブル(9-3-2-1)のための曲。
一方、大編成版では60人(15-15-12-10-8)が指定されており、今日の編成もこれに近い。
 
本題からは外れるが、せっかくスウェーデンを代表するオーケストラの一つが来日するのに、自国の作品がこの小品1曲では、チト寂しいものがある。
ステーンハンマル;セレナードでも持ってきてほしいものだ。
 
なお、マルティンソンの公式Webpageは→ここを押して
また、スウェーデン音楽情報センターのデータベースにあるバイオは→ここを押して
 
シベリウス;Vn協の独奏は、ジュリアン・ラクリン
リトアニア出身とのこと。ヤルヴィとはバルト三国つながりということか。
なお、彼の公式Webpageは→ここを押して
 
とにかく上手い人で、冒頭の歌い上げなど、微動だにしない弓捌き。細くて、かつ芯のある美しい音。
彼はマゼールとこの曲を録音しており、実は、そのCDにはあまり感心しなかったので期待していなかったのだが、この冒頭を聴いたときには、意外に「いける」のではないか…と思った。
 
ところが、進むにつれて、彼のアプローチが、かなりラプソディックな要素を強調したものであることがわかってきた。
アゴーギグがかなり改変され、音価も多少変更する場合がある。
アーティキュレーションもオーソドックスなこの曲の演奏からはずいぶん離れたもので、G線を響かせるところではダウンボウの連続で耳をそばだてさせるなど、いわゆるジプシー音楽寄りというか、スラヴ色を強く感じさせる音楽づくり。
体を反り返らせたり弓を派手に振り上げたりコンサートマスターに寄り添ってみたり、彼の演奏マナーにも、そういう志向を感じないではない。
 
痛快と言えば痛快、天晴れと言えば天晴れだが、オーケストラ側が指向している北欧の厳しい響きには、あまりにも距離があり、性格の違う音楽になっていたと言わざるを得ない。
先年のラハティ響来日公演時のペッカ・クーシストの独奏も、かなりやりたい放題のものだったが、そちらが基本線はしっかりシベリウスの音楽に置いた上での奔放さだったのに対し、ラクリンは基本線を(おそらく意図的に)ずらしている。
演奏中の楽員の視線・表情に冷ややかなものを感じたのは、斉諧生の僻目か。
 
オーケストラの方は、これは見事に北欧のシベリウスで、金管の厳しい打ち込み、Flの涼やかな煌めき、Fgの寂びた歌声など、ファンのツボを刺激してやまない(笑)。
第2楽章後半でFlが音階を降りる音型や、第3楽章で弱音器をつけたHrnの嗄れ声なども忘れられない。
 
ソリストのアンコールはイザイ;無伴奏Vnソナタ第3番を丸ごと。
これは彼の超絶技巧と聴かせ上手が相まった、非常な名演。
曲のタイトル「バラード」のとおりの幻想味と胸のすく快刀乱麻の弓捌きが交替し、アレヨアレヨと手に汗握る音楽に、目眩く6分間。あっという間に過ぎ去った。
 
メインの交響曲第5番
パパ・ヤルヴィの音楽づくりは大らかで暖かい。
悪くいえば大味で、ヴァンスカ(指揮) ラハティ響ベリルンド(指揮) ヨーロッパ室内管の冷涼繊細なシベリウスを評価する向きからは、もう一つ評判が悪いかもしれない。
実は、斉諧生も、曲が始まってしばらくは、そういう傾向の演奏との対比を思い浮かべていた。
しかし、徐々に違和感が薄れ、「ああ、この音楽に身を浸していればよいのだ…」という気持ちに移っていったのである。
第1楽章の後半部分へ移行する部分の高揚感など、鳥肌が立ったものだ。
弦楽合奏の木質感を帯びた音色と精密なアンサンブルは、もしかすると世界でもトップクラスではないか。
ヤルヴィの対位法を掘り起こしてまわるような指揮ともあいまって、豊かな響きを堪能できた。
 
また、間然とするところない木管のニュアンス、ズバッと切り上げる金管の鋭い咆哮、特にTimp奏者の打ち込みは「間」も音色も見事の一語に尽きるものだった。
 
暖かみが心地よかった第2楽章から、指揮者は次の楽章へほとんどアタッカで入りたがっていたが、客席の咳払いが激しくて、気勢をそがれていたのは少し気の毒だった。
 
その第3楽章、主題が滑り出す、弦の刻みが心地よかったこと!
一般的なテンポより、ほんの少しだけ速めだったか? あるいはリズムが「スウィング」していて、速めのテンポに感じたのかもしれない。
 
そして楽章の終わり近く、弦楽の上でTrpが動機を反復する場面あたりから終結へかけての、総身の鳥肌が立つような、最高の響き!!
この曲の実演には何度も接しているが、終結の6つの和音で、これほどドキドキしたことはかつてなかった。
Timpの打ち込みは最後まで冴えわたり、終結和音6回での前打音処理も「こうでなければ!」という見事さ!!!
もちろん金管は少しの濁りも見せず、圧倒的な高揚を聴かせた。
惜しむらくは、6つ目の和音が鳴った瞬間、おそらく故意に狙ったと思われる大声の「ブラボー」が飛んだこと。
まあ、曲により人により感じ方は違うと思うが、斉諧生としては、最後の残響が消え去るところまで、音を噛みしめたかったものだ。
 
アンコールは、やはりシベリウスで、アンダンテ・フェスティーヴォ
ヤルヴィが黙ってオーケストラへ向き直り、指揮棒を使わず振り始めたときは、胸が熱くなった。
最後のクライマックスでは、目に涙がにじんだ。
 
続いて組曲「カレリア」より「行進曲風に」
お気楽に振っても進行する曲だが、指揮者も楽員も、気持ちが乗っているのが手に取るようによく判る、気合いの籠もった音楽。
これだけ中味がぎっしり詰まった「ア・ラ・マルチア」も珍しかろう。
 
楽員が引き揚げても拍手は鳴りやまず、指揮者が再度登場して聴衆総立ち、俗に言う「一般参賀」状態。

11月24日(日): 

 休日出勤の帰り道、郵便局に立ち寄って、Abeille Musique.comからの荷物を引き取る。

ティボール・ヴァルガ(指揮) ブダペシュト室内響 ほか
ヴェイネル;管弦楽曲集(BMC)
思わぬところにヴァルガの指揮盤があったのでオーダー。
…と思ったら、既に架蔵している "Tibor Varga Collection" の第21巻と同じ音源であった。不覚。
まあ、ブックレットの造りが丁寧なのと、2枚組のもう1枚にVn協第2番を収めているのが、せめてもの救いか。
4楽章制・25分強の作品で、演奏者は
アンタル・サライ(Vn) ソルト・ハマル(指揮) ブダペシュト室内響
である。
 
アルトゥール・グリュミオー(Vn) クララ・ハスキル(P)
ブザンソン・リサイタル(INA)
1957年9月18日、ブザンソンでの演奏会を放送用に録音したもの。
グリュミオーは30歳代半ば、この時期の美音は聴き逃したくない。
既にMELODRAMレーベルからCDがリリースされたことがあり架蔵もしているが、正規音源からの発売なので、ぜひ買い直しをとオーダー。
収録曲は、
モーツァルト;Vnソナタ第28番K.304
モーツァルト;Vnソナタ第40番K.454
ベートーヴェン;Vnソナタ第3番
ベートーヴェン;Vnソナタ第10番
音質は、MELODRAM盤がお話にならないほど、改善されている。
モノラル収録だが、音自体はステレオと聴き紛うほど生々しい(特にヴァイオリン)。ピアノがマイクから遠く、音がぼやけているのは、少し残念。
 
ドゥヴィ・エルリ(Vn) アンリエット・ピュイグ・ロジェ(P) ほか
トゥルヌミール;室内楽曲集(INA)
フランス近代の室内楽は、フランクショーソンルクーフローラン・シュミット等々、愛好する曲が限りなく多い。
オルガン曲で有名なトゥルヌミールの室内楽録音は珍しいと思うが、果たしてどのような音楽か、興味を惹かれてオーダー。演奏者の顔触れが第一級なのも心強い。
標記の2人は所要時間19分弱の「詩的ソナタ」を演奏。ピュイグ・ロジェは、他に独奏曲「神秘的な詩曲」や歌曲「叡知の賜物」を演奏している。
更にORTF四重奏団による弦楽四重奏のための「祈りの音楽」をカプリング。
なお、楽曲の邦訳題名については、あんぐらCD博物館のWebpageを参考にさせていただいた。→ここを押して
 
ボブ・ファン・アスペレン(Cem)
バッハ;シャコンヌ(AEOLUS)
バッハ;無伴奏Vn・Vcの両曲集は、編曲ものも愛好蒐集しているところ。
アスペレンがVn曲集をチェンバロ編曲で演奏したものが出ていたのでオーダー。店頭で見かけないレーベルのように思うので、これもネット通販のメリットだろう。(公式Webpageは→ここを押して)
ソナタ第2番BWV1003ソナタ第3番BWV1005パルティータ第3番BWV1006の全曲と、パルティータ第2番BWV1004シャコンヌが収録されている。
BWV1003の編曲にはBWV964、1005の第1楽章の編曲にはBWV968という作品番号が付いているが、バッハ自身の編曲か長子フリーデマンの手になるものか、疑われているようだ。
残るBWV1004、1006と1005の第2〜4楽章は独奏者自編。

11月23日(土): 

 休日出勤の道すがら、音盤屋に立ち寄ると…!

レオポルト・ストコフスキー(指揮) ロンドン・フィル ほか
ベートーヴェン;交響曲第5番 & シューベルト;交響曲第8番 ほか(EMI、DVD)
EMIの "classic archive" シリーズの新譜が並んでいた。
ストコフスキー最晩年のライヴ映像で、標記2曲は1969年9月8日、クロイドン・フェアフィールド・ホールでのロンドン・フィルとの演奏会。
カプリングはロンドン響とのワーグナー;「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲ドビュッシー;牧神の午後への前奏曲だが、これは注目すべきものだ。
1972年6月14日、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールでの演奏会の映像なのだが、指揮者のロンドン・デビュー60周年記念コンサートで、ライヴ盤はかつてLPで出ていた。
1912年5月22日の演奏会とまったく同じプログラムで、残りの曲目は
グラズノフ;Vn協(独奏;シルヴィア・マルコヴィッチ。1912年のソリストはエフレム・ジンバリスト)
ブラームス;交響曲第1番
チャイコフスキー;スラヴ行進曲(アンコール曲。これも60年前と同じ)
30歳の時に振ったプログラムを90歳で再演できるだけでも凄いのに、このコッテリした曲目に正面から取り組む強烈なエネルギー、疲れの色をまったく見せず、アンコール曲でも「やる気」満々の表現…と福永陽一郎氏が感嘆していた文章があった。
最初の2曲だけでは物足りない。全曲目の映像が残っているのなら、ぜひ丸ごとDVD化したもらいたいものである。
1969年・1972年とも良好なカラー映像。
これだけでも垂涎ものの上に、ボーナス・トラックとして、
ピエール・モントゥー(指揮) ロンドン響
デュカ;魔法使いの弟子
が収められているからには、何をおいても買わざるべからず。
こちらは1961年、TVスタジオで収録されたとおぼしい白黒映像である。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) ハンブルク国立フィル ほか
モーツァルト;歌劇「フィガロの結婚」(ドリームライフ、DVD)
リリース情報に接してから、一日千秋の思いで棚に並ぶのを待っていたもの。
イッセルシュテットが最も愛したモーツァルト、「フィガロ」の全曲盤は存在しなかったところ、映像で登場するとは望外の喜び、何をおいても買わざるべからず。
1967年に35mmフィルムで収録されたカラー映像で(パッケージのスチール写真は白黒だが)、舞台裏の光景から始まり、舞台監督(?)がマイクで指揮者を呼び出すと、動くイッセルシュテットが登場!
彼がオーケストラ・ピットに入って、序曲を振りだす。優雅で風格の高い指揮姿は感涙ものだが、惜しくも30秒ほどで、カメラは再び舞台裏に戻ってしまう。(涙)
主な配役は
トム・クラウゼ(Br);伯爵
アーリーン・ソーンダーズ(Sop);伯爵夫人
エディット・マティス(Sop);スザンナ
ハインツ・ブランケンブルク(Br);フィガロ
エリーザベト・シュタイナー(Sop);ケルビーノ
ケルビーノ役で有名なマティスがスザンナを歌っているのが目を惹く。
ドイツ語歌唱。

11月22日(金): 

 MikrokosmosからLPが届く。

ストックホルム・フィル室内合奏団
モーツァルト;ディヴェルティメントK.138 & シベリウス;組曲「恋する人」 ほか(瑞Swedish Society、LP)
標記のシベリウス作品は愛惜佳曲書で取り上げた曲、見つけたからには買わざるべからず。
1969年の録音で、12人の弦楽アンサンブルのリーダーはレオ・ベッリーン
J・G・ベールヴァルド(1737〜1814、フランツ・ベールヴァルドの伯叔)のシンフォニア ハ長調セーデルルンド;Ob協をカプリング。
 
ファウスト・ザドラ(P) カルロ・ゼッキ(指揮) ルーマニア放送響
モーツァルト;P協第23番・ディヴェルティメントK.251(ルーマニアELECTRECORD、LP)
名匠ゼッキのモーツァルト、オーダーせざるべからず。
独奏者の詳細は不明だが、指揮者と同じくイタリア人らしい。
K.251は本来6楽章からなっているが、ここでは第1・3・4・5楽章の4つを抜粋して演奏している。
ジャケットは粗末だが、立派なステレオ録音。演奏内容も良さそうだ。
 
アーロン・ロザンド(Vn) アイリーン・フリスラー(P)
ベートーヴェン;Vnソナタ第5・9番(米VOX、LP)
アメリカの実力派、ロザンドが1961年に録音したベートーヴェン;Vnソナタ全集のうち、最も有名な2曲をカプリングしたLP。
既に全集としてCD化されているが、やはりアナログ録音はLPで聴きたいものなのでオーダー。
しかも、ジャケットをつらつら見ていて気づいたのだが、"Mastering: Rudolph Van Gelder"と記されている。
これはおそらく、ジャズ界の名エンジニアとして著名な、ルディ・ヴァン・ゲルダーその人であろう。(彼については、例えば→ここを押して)
 
ウルフ・ヘルシャー(Vn) ミシェル・ベロフ(P)
フランク;Vnソナタ & R・シュトラウス;Vnソナタ(独EMI、LP)
この音盤、大手レーベルの名曲録音ながら、これまで存在すら気づいていなかった。
ヘルシャーは1970年代末、EMIが売り出しにかかったヴァイオリニスト。ベロフとはシマノフスキ作品集の録音もある(既CD化)。
演奏者といい、曲目といい、Vn音楽ファンとしてはオーダーせざるべからず。
当盤はドイツ製だが、スタッフの名前からすると、元来はフランスEMIの録音らしい。
 
ヴァーツラフ・ニエンチク(Vn) J・スリコウスキ(P) ほか
リリー・ブーランジェ;行列 ほか(仏ULTRAPHONE、SP)
昨日、Ars Antiquaから、同じレーベル・同じ演奏者で夜想曲が届いたばかり、今日は、それとよくセットで録音される「行列」がとどいた。なんたる偶然!
ファリャ;スペイン舞曲ほかをカプリング。
 
ヨヴァノヴィッチ・ブラツァ(Vn) 伴奏者(P)
リリー・ブーランジェ;夜想曲 ほか(英COLUMBIA、SP)
またまたリリー・ブーランジェ作品のSP録音を見つけたのでオーダー。
こうしてみると、彼女の作品は、結構、戦前期から普及していたということだろうか。
Vn奏者の名前は原綴 "Yovanovitch Braza" 、発音には自信なし。P奏者の氏名はレーベル面にクレジットされていない。
また、レーベルには "(Speed 80)" と記されているが、これは80回転での録音・再生を推奨するものだろうか?

11月21日(木): 

 Ars AntiquaからLPが届く。

ジャン・フルネ(指揮) ロッテルダム・フィル ほか
ベートーヴェン;交響曲第8・9番(蘭Decor、LP)
来月、新日本フィルに来演してアンゲルブレシュト作品の日本初演を指揮するはずだったフルネだが、不慮の事故にあって眼を治療することになった関係で、本人から曲目変更の希望があり、ドビュッシー;牧神の午後への前奏曲に差し替えられることになった旨、オーケストラの公式Webpageで発表されていた。
アンゲルブレシュトに関心を持つものとしては誠に残念。12月20日は聴きに行くつもりだったが、中止することとした。
そのフルネのベートーヴェン録音。彼のベートーヴェンといえば、昨年、東京都響を帯同して京都コンサートホールに来演したときの序曲「エグモント」が、実にドイツらしいズッシリした響きだったことが忘れられない。
この2つの交響曲も、是非聴いてみたいとオーダーしたもの。
データがいっさい記されていないので(ブックレットが脱落してしまったのかもしれない)、録音年代等は不明だが、正規のステレオ録音の模様。
「第九」の歌手にアーフェ・ヘイニスの名前が見えるので、1960年代前半頃のものであろうか?
 
カジミシュ・コルト(指揮) 南西ドイツ放送響
モーツァルト;交響曲第34番 & ブラームス;交響曲第3番 & R・シュトラウス;交響詩「英雄の生涯」(独SWF自主製作、LP)
ポーランドの実力派、コルトの音盤を見つけた。
実は、今日、京都コンサートホールでワルシャワ・フィルチャイコフスキー「悲愴」を演奏しているはず。
行こうかどうしようか迷ったのだが、本業の都合がはっきりしないことや、いつもながらのショパン;P協との組み合わせということもあって、腰が上がらなかった。
この指揮者は、いわゆる「お国もの」ではなく、ぜひ独墺系の本格レパートリーで聴いてみたい。ベートーヴェン;交響曲全集の録音もあり、入手を図っているのだが、トラブルに遭ったりして、どうも上手くいかない。
そんなところに、このLPをカタログで見つけたのでオーダー。
オーケストラとの組み合わせが意外だったが、調べてみると、1980年、エルネスト・ブールの跡を襲って首席指揮者に就任し、1986年に至ってミヒャエル・ギーレンにポストを譲ったとのこと。
モーツァルトとブラームスは、1981年2月20日、パリにおける演奏会のライヴ録音(会場はラジオ・フランスの大ホール)。R・シュトラウスは同年5月22日、本拠地バーデン・バーデンのハンス・ロスバウト・スタジオでのスタジオ録音。
 
ピエール・モントゥー(指揮) サンフランシスコ響
フランク;交響曲(米RCA、LP)
モントゥーの未架蔵音源がカタログにあったのでオーダー。
彼はこの曲を3回録音したそうだが、その2回目に当たる1950年2月27日の録音。一般に知られているシカゴ響との共演は3回目の録音である。
 
アレクサンドル・ブルシロフスキー(Vn) アンナ・レヴィナ(P)
ヴィヴァルディ;Vnソナタ & ルーセル;Vnソナタ第2番 ほか(仏Le Chant du Monde、LP)
バッハルクー等のCDを買ってきたブルシロフスキーの若いころのLPを見つけた。
来歴のよく判らない音盤だが、旧ソ連録音をフランスでプレスしたもののようだ。ジャケット表に「1975年 ジャック・ティボー・コンクール 第1位」と刷り込んであるので、もしかしたら、受賞記念盤として発売されたものかもしれない。モスクワ録音というのが腑に落ちないが…。
珍しいルーセル作品を収録しているのに興味を惹かれてオーダーしたもの。
標記2曲以外にプロコフィエフ;5つのメロディワインベルク;無伴奏Vnソナタ第2番をカプリング。
 
ヤープ・ファン・ツヴェーデン(Vn) ロナルド・ブロウティガム(P) ほか
ドビュッシー;Vnソナタ ほか(蘭CBS、LP)
このところ蒐集しているツヴェーデンのVn演奏を見つけたのでオーダー。
録音年月は明記されていないが、マルPが1979年なので、おそらくそのころの録音。Vn奏者は1960年生まれなので、10代終わり頃の演奏ということになるわけだが、実に堂々たるもの。
ドビュッシー晩年の3つのソナタとClとPの狂詩曲で1枚のLPを編成した音盤で、残りの3曲の演奏者には、知っている名前が一切ない(笑)。オランダのオーケストラ奏者から人選したものであろうか。
 
ヴァーツラフ・ニエンチク(Vn) J・スリコウスキ(P) ほか
リリー・ブーランジェ;夜想曲 ほか(仏ULTRAPHONE、SP)
ブーランジェ作品のSP録音を見つけたので思わずオーダー。
Vn奏者の名前は原綴 "Waclaw Nienczyk" 、発音には自信なし。
カプリングはジョン・H・レヴィなる作曲家のプレリュードとトッカータ。レヴィ自身がピアノを弾いている。

11月20日(水): 

 

ツァバ・シルヴァイ & ゲザ・シルヴァイ(指揮) ヘルシンキ弦楽合奏団
シェーンベルク;「浄められた夜」 & ショスタコーヴィッチ;室内交響曲op.110a ほか(Apex)
Apex はワーナー・グループの廉価盤レーベルだが、収録された音源はすべて初発という。
蒐集の曲、ショスタコーヴィッチのop.110aが収録されているので、即購入。
標記2曲のほか、シベリウス;アンダンテ・フェスティーヴォプッチーニ;「菊」をフィルアップ。特に前者は好きな曲なので嬉しい。
ショスタコーヴィッチ作品のみライヴ音源で、1999年10月24日、デュッセルドルフのライン・ドイツ・オペラでの演奏会から。他は2000年12月にヘルシンキの Roihuvuori 教会でスタジオ録音されたもの。
 
クリスチャン・テツラフ(Vn) トマス・ダウスゴー(指揮) デンマーク国立放送響
シベリウス;Vn協 ほか(Virgin)
テツラフ、ダウスゴーと贔屓の演奏家が揃った上に、
2つのセレナード op.69
2つの小品 op.77
2つのユモレスク op.87
4つのユモレスク op.89
組曲 op.117
と、シベリウスのVnと管弦楽のための作品全集となっており、買わざるべからず。
こうした企画の音盤は、これまで意外になかったのではないか。
ところで、このオーケストラ、デンマーク語では "DR Radiosymfoniorkestret" で「放送響」なのに、英語では "The Danish National Symphony Orchestra / DR" と表記するのは何故だろう?
2002年2月6〜13日の録音。
 
ダン・ラウリン(Rec) アルテ・デイ・スオナトーリ ほか
テレマン;Rec協集 ほか(BIS)
贔屓のリコーダー奏者ラウリンの新譜が久しぶりに出たので購入。
バックはポーランドの古楽器アンサンブル。1993年に結成されたとのこと。またマーク・クードル(Gamb)という人が共演している。
なお、キング・インターナショナル公式Webpageでのキャッチ・コピーは「『北欧の虚無僧』、テレマンを吹く」というもの(笑)。

11月19日(火): 

 

オイゲン・ヨッフム(指揮) バンベルク響
ブルックナー;交響曲第8番(Altus、DVD)
昨年12月にCD化された懐かしい演奏が、とうとうDVDになった。
1982年9月15日、NHKホールでのライヴ録音で、金欠の大学生だった斉諧生も(金欠は今もだが)、1階席を奮発して聴きに行ったのである。
NHKのTVカメラが入っており、後日、放送されたから、DVDでリリースされないものだろうか…と思っていたところ、遂に実現した。
この調子で、NHKが録画した演奏会が次々とDVD化されないものだろうか。まあ、そうなったらなったで、また金欠に拍車がかかるのだが。(苦笑)
それにしても、楽しみな映像である。
まだ視聴していないが、たしか、ヨッフムの肩越しに、チラッと(ボヤッと)自分が映っているはずなのだ。(笑)
 
フリッツ・ライナー(指揮) メトロポリタン歌劇場管 ほか
R・シュトラウス;歌劇「薔薇の騎士」(自主製作)
いつも行く中古音盤屋で、ふと目をやった片隅に立てかけられた箱に気づいた。
「MET」とあるからには、あの高価な高価な歌劇場自主製作盤ではないか…と手に取ると、ライナー指揮の「ローゼンカヴァリア」。
値付けのほうは通常のCD3枚組と変わらない安さ、これは逃すべからずと購入。
ライナーは渡米する前、ドレスデン歌劇場で指揮していた頃にR・シュトラウスの知遇を受けた人ゆえ、出来栄えに期待したい。
主な歌手は、
元帥夫人;エリナー・スティーバー
オクタヴィアン;ヤルミラ・ノヴォトナ
ゾフィー;エルナ・ベルガー
オックス男爵;フリッツ・クレン
1951年2月24日の放送録音で、音質は上乗、美麗ブックレット完備。
 
ヤン・ルングレン(P)ほか、「ガーシュウィン・アンド・モア」(music mecca)
スウェーデンの美音ジャズ・ピアニスト、ラングレンの未架蔵盤をwww.cdjazz.comから購入。→ここを押して
ここはデンマークのオンライン・ショップだが、実はこのCDのレーベル自身が運営しているサイトであることが、届いてみてわかった。
The Bakerboysというカルテット(Trpと男声ヴォーカル、P、Bass、Drums)に女声ヴォーカルとギターを加え、「イット・アイント・ネセサリリィ・ソゥ」「サマータイム」などガーシュウィンの有名曲8曲と、他の作曲家のもの4曲を演奏している。
なお、ルングレンについては→ここを押して

11月18日(月): NHK交響楽団から "Philharmony Special Issue 2001/2002" が届く。
 N響の全演奏会記録第3部(完結篇)を収録しており、第1部・第2部は架蔵済みなので、これも購入せざるべからず。
 もっとも奥付によれば発行は6月、迂闊にも気づいていなかった。(汗)
 全楽員の紹介があり、その中のアンケートに「あなたにとって『理想の指揮者とは?』」という問いがある。
 全員の回答をざっと見て驚くのは、音楽監督デュトワに言及する人は少なく、個人名を上げた中で圧倒的に多いのがスヴェトラーノフ。アンケート実施がおそらく死去直後だったのが影響したのかもしれないが、それにしたって凄いものだ。
 その他ではマタチッチを懐かしむ声が目立つなど、なかなか興味深い。

 

ダニエル・シュヴァイツァー(指揮) チューリヒ響
オネゲル;交響曲第2・4番(Cypres)
音盤屋を覗くとワゴン・セールでDelosやDorian、Cypresといった比較的珍しいレーベルを大量に並べていた。
残念ながら目新しいものは少なかったが、好みの曲目であるオネゲルの未架蔵盤を見つけて購入。
チューリヒのオーケストラといえばトーンハレ管だが、これは1981年に、この指揮者が創設した新しい団体だそうである。
1993年9月録音。
なお、オーケストラの公式Webpageは→ここを押して

11月17日(日): 

 演奏会出没表に昨日のコンサートを追加。


11月16日(土): 

 長谷川陽子・チェロ・リサイタル神戸学院大学「グリーン・フェスティバル」を聴きに行く。
 長谷川さんは、ここの「レジデント・アーティスト」の一人として、定期的に来演されており、今回から5回にわたって、自選された10曲のVcソナタを演奏されるという。
 今回の共演者には、野平一郎氏が招かれている。ラフマニノフショスタコーヴィッチのCDでも名演を聴かせている組み合わせなので、大いに期待して臨んだ。

曲目は野平氏の十八番フランス音楽で、
マレ(ミュークル編);5つの古いフランス舞曲
プーランク;Vcソナタ
ドビュッシー;Vcソナタ
フランク;Vnソナタ(Vc編曲)
というもの。
 
長谷川さんは実に安定した出来で、完全に復調された感じ。美しい音色と安定したボウイングが、誠に素晴らしい。
また野平氏もフォルムがしっかりした格調の高い演奏で、音楽の堅固な土台・枠組を提供していた。長谷川さんには申し訳ないが、独奏チェロよりもピアノに耳を奪われる瞬間がしばしば。
 
マレの大らかな歌、プーランクの機知、そして両作品に共通していたのは緩徐楽章での控えめな憂愁。
これらを過不足なく受けとめることができた。
 
ドビュッシー作品を実演で聴くのは初めてだが、特に第2楽章でのチェロのピツィカートとピアノのスタッカートの織りなす音の綾が面白かった。
 
フランクは、もちろんVn版で耳になじんだ曲。
Vc版では初めて聴くのだが、勝手が違ってちょっと面食らった。
例えば、Vnの最高音域での緊張した響きが、Vcではどうしても太い音色になってしまう。
また、一部、オクターヴ変更されて、音の上がり下がりが逆になるところがあったり。
それやこれやで、立派な演奏と思いつつ、自分の気持ちとしては入り込めないままに終わってしまった。とても残念。
入場が開演間際で、ホール後方の音響的に芳しからぬ席になったのも一因かもしれない。
 
アンコールにはマレ作品の第1曲「心地よいロンド」を、もう一度演奏。
 
ここのコンサートの通例で、休憩後に演奏者へのインタビューのコーナーがある。
演奏する心理からすると酷なのでは…と気になるのだが、反面、内容的にはいつも楽しませていただくのも事実。
 
中でも野平氏がプーランク作品を
悲しいことも、辛いことも、コニャックか何かを飲みながら、笑って語る、大人の音楽
(大意のみ、文責斉諧生)
と評しておられたのが心に残った。
ジャケット写真などからは気難しそうな印象を受けていたのだが、意外に剽軽な受け答えで吃驚。

 演奏会に出かける前にOndineからCDが届く。ここはレスポンスが異様なまでに速く、オーダーから到着まで1週間かからない(配達自体は昨日の留守中。今日は再配達)。
 3枚だけのオーダーだが、送料含めて@2,000円強。ネット通販のメリット大。
 もっとも、クレジット・カードからは、なぜか4回も引き落とされている(!) 即刻、「3回分は返金せよ」とメール。

レイフ・セーゲルスタム(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第1・7番(Ondine)
昨年9月の来日公演で見事なシベリウスを聴かせてくれたこのコンビによる待望の全集録音がスタート。特に、シンフォニー・ホールで感銘を受けた第7番が入っているので待ちきれずにオーダーしたもの。
セーゲルスタムには既にデンマーク国立放送響を指揮した全集があり(CHANDOS)、再録音ということになる。
CHANDOS盤はシベリウスの音楽としてはいくぶん緩いところがあり、斉諧生としてはあまり評価していないのだが、このところOndineレーベルからリリースされている管弦楽曲は良い出来で、上記実演ともども、セーゲルスタムの進境を窺わせてきた。
今回の全集が、ベルグルンド盤(EMI、FINLANDIA)と覇を競う成果を挙げてくれることを期待したい。
2002年5月、ヘルシンキのフィンランディア・ホールにおける録音。
 
オッリ・ムストネン(P)
シベリウス;P曲選集(Ondine)
ピアノの鬼才ムストネン、このところ作曲や指揮盤がOndineレーベルから出ていると思ったら、独奏盤も登場。結局、BMGには長居しなかったことになる。
収録曲は
10のバガテルop.34
10の小曲集op.58
13の小曲集op.76
に小品3曲を加える。
比較的ポピュラーな「樹」の組曲グールドの録音もある組曲「キュッリッキ」を外しているところが鬼才らしい。
レーベルの公式Webpageによると、バッハ/ショスタコーヴィッチの続篇や、シベリウス;交響曲第3番等のリリースも予告されており、楽しみなことである。→ここを押して
 
ペッカ・クーシスト(Vnほか) ルオム・プレイヤーズ
「フォーク・トリップ」(Ondine)
3年前のラハティ響来日公演に同行し、奔放なまでの若武者振りで魅了したペッカ・クーシストの新譜。フィンランド古謡のアレンジというのに興味を覚えてオーダー。
共演のアンサンブルの中心は Anna-Mari Kähärä という女性作曲家/ピアニスト/ヴォーカリストで、聴いた感じでは民俗系とジャズ系を織り交ぜたような音楽になっている(彼女のプロフィール等は→ここを押して)。
全17曲、無伴奏Vnによる Samuel Ainda-Nickola という人のポルスカ舞曲7曲を、古謡編曲の間に挟んでいる(19世紀頃? この人の作曲というより採譜かもしれない)。

11月12日(火): 

 CrotchetからCDが届く。ずいぶん前に頼んだもので、バックオーダーになっていることすら失念していた(汗)。

アリ・ラシライネン(指揮) ノルウェー放送管
グリーグ;組曲「ペール・ギュント」第1・2番 ほか(FINLANDIA)
これは、許光俊&鈴木淳史『クラシックCD名盤バトル』(洋泉社)で紹介されていた盤。
許光俊氏が、
このCDの魅力は、オーケストラの熱演と、細部までじつに念入りな仕事ぶりにある。(中略)弱音部分の緊張感や感情移入がすごいのだ。(中略)むやみと弾き飛ばすことなく、表情の彫りが深いので、曲のできが一ランクも二ランクも上がったように感じられる。この演奏を知ってしまうと、他の演奏の大半は安っぽい絵はがきレベルを超えたものではないと痛感させられること請け合いだ。
と珍しく(?)素直に絶讃しているので気になっていた。
この曲だけなら廉価再発されているのだが、オリジナルのセーヴェルー;組曲「ペール・ギュント」第1・2番とのカプリングで入手したいと思い、オーダーしていたもの。
1996年11月、オスロのノルウェー放送局スタジオでの録音。
なお、オーケストラの公式Webpageは→ここを押して

11月8日(金): 

 

ヤープ・ファン・ツヴェーデン(指揮) ネーデルラント・フィル & オランダ放送フィル
ブラームス;交響曲全集(BRILLIANT)
まずはヴァイオリニストとして、また指揮者としても注目しているツヴェーデン。これだけまとまった指揮盤が出るのは初めてではないか。お手並み拝見と購入。
手兵のハーグ・レジデンティ管ではないところが少し残念だが、第1・3・4番がネーデルラント・フィル(2002年録音)、第2番がオランダ放送フィル(1999年録音)。
11のコラール前奏曲op.122の管弦楽編曲という珍しい作品をフィルアップ。
ブックレットの記載によると、Philipsレーベルにハーグ・レジデンティ管ベートーヴェン;交響曲全集を録音する計画で、また2003〜04年のシーズンには来日予定もあるとのこと、こちらも期待したい。
ところで、やはりブックレット記載のツヴェーデンのプロフィールに、"Chamber Orchestra of Japan"を指揮し云々とあるのだが、どこの団体のことだろう?
 
ミヒャイル・ペトゥコフ(P) ユーリ・シモノフ(指揮) モスクワ・フィル
ラフマニノフ;P協第2・3番(Mono Poly)
「モスクワ音楽院大ホール創建100年記念 1901〜2001」と銘打たれたCD。
第3協奏曲をはじめラフマニノフのピアノ作品を愛しておられるヒロノフさんが、御自身の掲示板で絶讃しておられるのを拝読して気になっていたところ、今日立ち寄った音盤屋に入荷していたので購入。
どこかで聞いた名前のピアニストだ…と思ったら、ショスタコーヴィッチ;P協第1番に2種の録音がある人だった。その時には「ミハイル・ペチュコフ」と表記していたが。
韓国のレーベルだが日本語の帯をつけて販売されており、それによるとピアニストは1954年生まれ、1975年のエリーザベト王妃国際コンクールで優勝しているとのこと。
第2番が2001年4月9日、第3番が同年10月9日の、それぞれライヴ録音。会場はもちろんモスクワ音楽院大ホール。
 
(附記)
ヒロノフさんが、ペトゥコフの経歴に関する日本語帯の記載について、誤りを指摘しておられたのを見落としておりました。1975年のピアノ部門優勝ではなく第7位入賞が正しい記録です。謹んで訂正いたします。m(_ _)m
この情報は、エリーザベト王妃国際コンクールの公式Webpageで確認できます。→ここを押して (11月10日)

11月5日(火): 日帰りで東京出張、用務終了後の道すがら、音盤屋に立ち寄れば意外な収穫が!

 

オイゲン・ヨッフム(指揮) バイエルン放送響
ブルックナー;交響曲第4番(DGG)
モノラル期のヨッフムのブルックナー録音が覆刻されているのを見つけたので購入。なぜか京都・大阪の音盤屋では見かけない。
ジャケットにDGG初期LPのデザインを復活させ、オリジナル盤のライナーノートを原寸大でリプリントしたものを折りたたんで封入するという凝りようが嬉しい。
マルP1956年、ノヴァーク第2稿(1878/80年、最も一般的な版)による。
 
ジョシュア・ベル(Vn) スティーヴン・イッサーリス(Vc) ジャン・イヴ・ティボーデ(P) タカーチQ
ショーソン;P、VnとSQのための協奏曲 & ラヴェル;P三重奏曲(DECCA)
本日最後の用務先訪問が終わって最寄り駅へ戻る途中、中古音盤屋を発見、フラフラと吸い込まれる。
クラシックの棚はさほど大きくなく、ありきたりの盤が多い。この店はハズレだったか、手ぶらで帰ることになるのかな…と思っていたところ、この盤が目に留まった。
いや、驚いた。積年の探求盤が見つかったのだから!
見つけ次第買っているショーソン作品の未架蔵盤、またラヴェル作品では注目しているチェリストの一人・イッサーリスが参加している。
国内盤も出た音源だが、捜し始めた頃には内外とも廃盤、ベルのSony Classical移籍もあり再発は見込み薄、中古盤との出会いを気長に待つしかないと覚悟していた。
中古盤屋(特に初めて入る店)を覗くたびに気にかけていたのだがずっと見つからず、半ば諦めかけていたところの邂逅だった。
1989年6月、ロンドンでの録音。
 
アルフレード・カンポーリ(Vn) 和田則彦(P)
「ヴァイオリン・リサイタル」(山野楽器)
帰り際、東京駅で少し時間があったので新しい丸ビルに行ってみた。地階で車中用の弁当を買い込んだりもしたのだが、4階に音盤屋(山野楽器)があるというので足を運んだ。
規模的にはあまり大きくない店舗だったが、オリジナル企画盤で収穫があった。山野は関西に出店していないので、貴重な機会ということになる(系列店以外にも出荷しているようだが、この盤は見たことがなかった)。
昨年秋、Buywellから買ったオーストラリア・デッカ覆刻盤に一部が含まれていた、1966年来日時の録音の完全なCD化である。
畏友かとちぇんこ@Der Nachtwindさんが美しい言葉で紹介された甘美な音色を、あらためて堪能したいと購入。
全11曲のうちバッジーニ;妖精の踊りパガニーニ;「ラ・カンパネッラ」・奇想曲第13・20番の4曲はこちらでしか聴けない。
音質は大差ないが、強いて言えば、豪DECCA盤はきれいな仕上がり、山野楽器盤はいくぶん生々しい音が聴ける。
1966年7月20〜21日の録音。
 
ボー・ホルテン(指揮) BBCシンガーズ
ペルト;マニフィカト & トルミス;「鉄を呪え」・「カレリアの運命」 ほか(Collins)
上記の中古音盤屋での収穫。
ホルテンは、最近、オーケストラ指揮盤を入手しているが、元来は合唱指揮者で、ピエール・ド・ラ・リュー;レクイエム(kontrapunkt)など素晴らしかった。
ペルトやトルミスといったエストニア作曲家の作品にも興味を惹かれて購入。
1996年録音。

11月4日(休): 昨日に引き続き休日出勤、帰りに音盤屋に立ち寄る。

 

荒井英治(Vn) 白石光隆(P)
「昭和のVnソナタ選」(LIVE NOTES)
斉諧生が音盤道に足を踏み初めた1980年頃は、日本人の演奏というと、小澤征爾を唯一の例外として、一段低く見られていたものだが、最近は正当に評価されるようになってきた。
(むしろビジュアル系女性ヴァイオリニストなど玉石混淆というか粗製濫造傾向なのは嘆かわしい。今日立ち寄った音盤屋でも、その手のCDがBGMでかかっていて、頭が痛くなる思いをした。)
その波に乗ってか、日本人作曲家の作品の録音が、再び盛んになってきている(1970年頃に最初のピークがあったはず)。
もちろん荒井氏自身は、ブックレットに一文を寄せて
今回収録された四つのソナタに当初から抱いていた愛着、それは練習を重ね、録音セッションで繰り返し弾く毎にそれはより深くなっていきました。
と心情を吐露しておられるので、単なる流行の産物にしては申し訳ないのだが。
収録曲は、作曲年代順に
箕作秋吉;Vnソナタop.15-1(1935年)
尾崎宗吉;Vnソナタ第3番(1939年)
吉田隆子;Vnソナタニ調(1952年)
外山雄三;Vnソナタ(1964年)
このうち吉田作品は、以前、青木 調盤を入手している。
作曲者や作品については片山杜秀氏がブックレットで詳細に紹介しておられる。
このうち箕作秋吉が、蘭学史上著名な箕作阮甫(1799〜1863)の子孫であろうことは察しがついていたが、箕作元八の子息だというので驚いた。
箕作元八は明治草創期の西洋史学者で、『フランス大革命史』という大著があり、講談社学術文庫で覆刻されていた。余談ながら、斉諧生も高校生の頃、全4巻を読破したことがあるので、何やら旧知の人物に再会した心地がする。

11月3日(祝): 休日出勤の帰り道に楽譜店に立ち寄る。
 50%引き(!)の特価箱からの3点にレギュラー・プライス1点を加えて、シベリウス;4つの伝説曲のスタディ・スコア (Breitkopf版) を揃えた。


11月2日(土): 

 音盤狂昔録平成14年10月分を追加。


11月1日(金): 

 

エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮) ハーグ・レジデンティ管
ガーシュウィン;組曲「キャットフィッシュ・ロウ」・キューバ序曲 ほか(自主製作)
没後半年、ますます評価が高まるスヴェトラーノフ、オークション等で高値を呼んでいた一部CDが再発売されることも決まったようである。→ここを押して
はやしさんのスヴェトラーノフのページの「ディスク紹介」で、ひときわ斉諧生が興味を持っているのが、ガーシュウィン;ポーギーとベス
1980年録音のソビエト国立響盤LPについて、
不適切度全開の壮絶なガーシュウィンに爆笑しながら、ズシリと心に響くガーシュウィンにいつしか深く感動する。まさに人知を超えた世紀の珍盤、名盤だ!
と紹介されており、是非聴いてみたいものと願っている。(→ここを押して)
その演奏とは随分様子は違うらしいが、ハーグ・レジデンティ管とのライヴがCDで出ているので、片鱗でも耳にできればと思い、オーケストラの公式Webpageのオンライン・ショップに注文していたのだが、何の反応もなかったので、日本からのオーダーは受け付けないのかと思って諦めていた。
それから約1年、ほとんど忘れかけていたところに、「未処理になっていて申し訳ない、ついては、まだ購入する意思がおありか」というメールが舞い込んだ。即、承諾の旨、返信したところ、ようやく届いたもの。
ちょっと残念なのは、斉諧生が好きなラッセル・ベネット版ではなく、作曲者自編版で演奏されていること。
したがって、曲名の表記は、ジャケット等にある組曲「ポーギーとベス」ではなく、標記のようにすべきであろう。
リムスキー・コルサコフ;歌劇「サルタン皇帝の物語」より第2幕への間奏曲・音画「サトコ」をカプリング。
ガーシュウィンは1995年11月25〜26日、R・コルサコフは1993年11月11〜12日のライヴ録音。
なお、お詫びの印か、サンプラーCDが同封されていた。
現在の首席指揮者、ヤープ・ファン・ツヴェーデン(指揮)
ベートーヴェン;交響曲第3番(第3・4楽章)
ベートーヴェン;交響曲第5番(第1楽章)
ブラームス;交響曲第4番(第2楽章)
マーラー;交響曲第2番(第3楽章)
チャイコフスキー;交響曲第5番(第3楽章)
ラフマニノフ;交響曲第2番(第2楽章)
が演奏されている。2000〜01年のライヴ録音。

平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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