音盤狂日録


2月27日(日)

 

クラウス・テンシュテット(指揮) バイエルン放送響
ブルックナー;交響曲第3番(Profil)
テンシュテットのブルックナーは、以前ロンドン・フィルとの第8番(EMI)を聴いたことがあり、指揮者の音楽以前に、金管の響きの浅さに違和感が拭えず、がっかりしたことがあった。
今回のライヴ盤はミュンヘンの名門、そのあたりの問題はないだろうから、今度こそテンシュテットのブルックナーをしっかり味わおうと購入。
(同時にリリースされたシベリウスにも心惹かれたのだが、また後日。)
なお、既にSyuzo's Weblogにレポートされており、同一音源の別CDを元にした演奏評が公開されている。
1976年11月4日のライヴ録音。
若杉弘(指揮) 東京都響
マーラー;交響曲第6番(fontec)
以前から少しずつ集めている若杉さんのマーラー、未架蔵の第6番が中古音盤屋に並んでいたので購入。
1989年1月26日、サントリー・ホールでのライヴ録音。
ディミトリ・マフティン(Vn) アレクサンドル・クニャーゼフ(Vc) ボリス・ベレゾフスキー(P)
ラフマニノフ;P三重奏曲 & ショスタコーヴィッチ;P三重奏曲(Warner)
『レコード芸術』の昨年7月号にワーナー・レーベルのイギリス法人の役員のインタビュー記事があり、大意
演奏会のあまりの素晴らしさに演奏者と主催者が感激し、予算が無いにもかかわらず、『お金のことはいいから、今、この感触があるうちに録音に残そう』、ということで一気に録音してしまった
と述べていた。
大手レーベルの常で発売までにまだまだ時間がかかるだろうと思っていたら、早くも店頭に並び、国内盤も発売されている(当盤は輸入もの)。
クニャーゼフのチェロはラフマニノフに合いそうだし、ベレゾフスキーが前にレーピンらと録音したショスタコーヴィッチ作品には工藤さんが高い評価を寄せておられた。
両曲の決定盤的な名演を期待して購入。
ただし、「2004年10月」アムステルダムでの録音と記されており、上記談話とは平仄が合わない(^^;。
もしかしたら、録り直したものなのだろうか? あるいは単純な表記の誤りか?
前者であれば、ライヴの熱気さめやらぬ別テイクが存在することになるわけだが…。
アレクサンドル・クニャーゼフ(Vc) ミハイル・ヴォスクレセンスキー(P)
ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ & Vaソナタ(Vc編)(EXTON)
上記三重奏曲集にも参加しているクニャーゼフ、昨年のバッハ再録音盤の好評で一挙に人気チェリストの列に入った感がある。
蒐集しているVcソナタにVaソナタのVc用編曲をカプリングしたショスタコーヴィッチ作品集が発売されたので、是非もなく購入。
録音は2001年2〜3月モスクワ音楽院小ホール。エンジニア等として、いつものEXTONのスタッフではなく、ロシア人名が記載されている。

2月26日(土)

 

デヴィッド・ストーン(Vn) ロバート・スレルフォール(P)
ディーリアス;Vnソナタ集(英Pearl、LP)
eBayで落札したLPが届いた。
ディーリアスのVnソナタは番号付きのものが3曲あるが、ここに収録されているのは第1番とパリ時代の習作ソナタ ロ調(1892年作曲)。
後者は、CDでもジョーンズ盤(Meridian)とリトル盤(Conifer)の2種しかない、録音の珍しい作品なので、LP時代の貴重な音源といえるだろう。
ピアニストはディーリアスの作品目録を整理した人物であり、ジャケットの解説も執筆している。
録音データは明記されていないがマルPは1975年、ディーリアス協会との協力により製作されたという。

2月25日(金)

 

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) フランス国立放送管
バッハ;音楽の捧げ物(仏EMI、LP)
マルケヴィッチが自ら管弦楽編曲した「捧げ物」の録音として、そしてそれ以上にカッサンドルによる秀逸なジャケット・デザインで有名な1枚。
米盤LP(中味は英プレス)で架蔵してきたが、いつかは仏盤をと念願していたところ、Ars Antiquaのカタログにリーズナブルな価格で出ていたので、ダメモトと思いオーダーしたところが確保できてしまった。
褐色の地に金箔押しの文字が美しく、これはスキャナーではうまく再現できないだろうと思う。
ポール・パレー(指揮) モンテ・カルロ国立歌劇場管
リスト;交響詩集(仏Concert Hall、LP)
パレー晩年のコンサート・ホール音源のひとつ。仏Festival盤LPで架蔵してきたが、正直申して音質はあまり芳しくない。
元のレーベルではどうなのか、ずっと関心を持っており、eBayに仏盤が安価で出品されたので落札してみた。
聴き比べてみると、当盤の方が少し音がしなやかなようだが、まず大差ない。
ルネ・レイボヴィッツ(指揮) ロイヤル・フィル
ムソルグスキー;「展覧会の絵」・「禿山の一夜」(独RCA、LP)
レイボヴィッツの怪演「禿山の一夜」を収めたLPは、K.E.ウィルキンソンによる優秀録音として名高く、オーディオ愛好家の間で高価に取引されているらしい。
斉諧生のごとき貧書生にはなかなか手の出せるものではなく、かろうじて再発のVCS番号の米盤LPを入手していた。
上記マルケヴィッチ盤と同様、Ars Antiquaのカタログに本来のLSC番号のものが出ており、リーズナブルな値段だったのでオーダーしてみたところ確保できた。
ところが実際に届いたのはドイツTELDECがプレスしたもの(ジャケットが英語表記だけなのが不思議)。
音質的にも大差ないというか、どうかするとVCS盤の方が生々しく響くようだ(嘆)。
ウート・ウーギ(Vn) ラマール・クローソン(P)
ベートーヴェン;Vnソナタ全集(伊Music Collection)
ウーギのベートーヴェンは、第5・7番のLPを以前入手したことがあるが、全曲の箱物があるとは知らなかった。
Ars Antiquaのカタログで見つけて吃驚、オーダーしたもの。
録音データは記載されていないが、マルPは1978年になっている。

2月24日(木)

 

シャーンドル・ヴェーグ(指揮) カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク
モーツァルト;ディヴェルティメント第17番(リハーサル)(CAPRICCIO)
尊敬するヴェーグ教授にリハーサル盤があるとは、ずっと知らなかった。
CAPRICCIOからリリースされたセレナード・ディヴェルティメント集はバラで全10枚を買っており、全集に当盤がボーナスCDとして附属していたことは、先日某オークションで見かけて初めて気がついたのである。
口惜しい思いをしていたところ、どうしたわけかeBayに、そのボーナス盤が単独で出品されていたので勇躍入札、なんと99セント(!)で落札できた。
1986年6月の収録で、約25分間、指揮者の指示や楽員の質問が明瞭に聞き取れる。ドイツ語がわかれば面白いのだろうけれども…(汗)。
クリストフ・エッシェンバッハ(指揮) バンベルク響
グリーグ;劇音楽「ペール・ギュント」(抜粋)(Eurodisc)
エッシェンバッハとバンベルク響の顔合わせに興味を抱き、某オークションで落札したもの。
両者の共演盤にはシューマン;交響曲全集(Virgin)があったが、北欧の楽曲でどのような演奏を聴かせてくれるか、興味津々。
全曲から12曲が抜粋されており(演奏時間約50分)、ソルヴェイグの歌や子守歌などではヘレン・ドナート(Sop)が参加している。
1985年6月の録音。
渡邉暁雄(指揮) 東京都響 ほか
柴田南雄;シンフォニア ほか(Victor)
5枚組LP「柴田南雄の世界」から1960〜70年代の代表的な作品を抜粋した盤。
標記作品(1960年)のほか、「コンソート・オブ・オーケストラ」(1973年)、「金管六重奏のためのエッセイ」(1965年)など5曲を収める。
LPは架蔵しているが、CDはCDで手元に置いておきたいと考えていたところ、某オークションに安価で出品されたのを機に落札したもの。
1977〜78年の録音。
海野義雄(Vn) 東京ヴィルトゥオーゾ
モーツァルト;Vn協第3・5番 ほか(山野楽器)
海野氏は芸大事件で世間一般には芳しからぬイメージが定着してしまった人だが、シュミット・イッセルシュテットとの協演盤(DGG)やバロック作品集(Sony)など演奏自体は優れて高い水準にあると思う。
当盤は演奏活動40周年記念に製作されたもの(1997年7月録音)。
実は迂闊なことに存在すら知らなかったのだが、某オークションに出品されていて気がつき、落札。
オーケストラは20名編成で山口裕之(Vn)、松崎裕(Hrn)らが参加しているとのこと。
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響 ほか
モーツァルト;歌劇「後宮からの逃走」(RELIEF)
イッセルシュテットの初出音源! 退勤時にふと立ち寄った音盤店の新譜棚に並んでおり、買わざるべからずとレジへ持参したもの。
1954年10月19・20日に録音されたという。音質は良好なモノラル。
主な歌手はテレサ・シュティッヒ・ランダル(Sop、コンスタンツェ)、ルドルフ・ショック(Ten、ベルモンテ)など。
台詞の部分は別に俳優を立てており、歌とは音質が全然違うので(前者はオンマイク、後者はオフマイク)、ライヴではなく放送用にスタジオで収録されたものではなかろうか。

2月22日(火)

 

デュオ・プリマ ほか
「カスタ・ディーヴァ」(DENON)
礒絵里子神谷未穂のヴァイオリン・デュオによる名曲集。
アルバム・タイトルは、冒頭に収録されたベッリーニ;歌劇「ノルマ」のアリア。
その他モンティ;チャールダーシュファリャ;火祭りの踊りといったクラシック系、カーン;「煙が目にしみる」ハジダキス;「日曜はダメよ」のようなポップスないし映画音楽系の作品など合計14曲を演奏している。
礒さんのCDは、前にベートーヴェン;P三重奏曲「大公」ほか(LIVE NOTES)を入手しており、端正な音楽に好感を持った。
最近発売された小品集「踊る人形」も購入リストには上げているのだが、とりあえず某オークションに出品されていた当盤を落札したもの。
石岡久乃(P)、朝川朋之(Hp & P)、福田進一(G)が共演している。
なお、礒さんには公式Webpageblogがある。

2月20日(日)

調べごとがあってChannel Classicsの公式Webpageを見に行って、ついでに新譜情報を読んでいると、最近同レーベルからリリースが始まっているイヴァン・フィッシャー(指揮) ブダペシュト祝祭管の新譜チャイコフスキー;交響曲第4番の記事の末尾に、さりげなく書かれていた1行に目が止まった。
Expected release Mahler 6 in Fall 2005
彼らの音盤が東欧系楽曲に偏っているのを嘆いていた斉諧生としては、待望の新録音である。まだまだずいぶん先のことだが、鶴首して待ちたい。

 

ハンス・フォンク(指揮) ハーグ・レジデンティ管
ブルックナー;交響曲第4・6番(蘭自主製作、LP)
昨年8月に亡くなったフォンクが1985年9月、当時常任指揮者を務めていたオーケストラと録音した2枚組。
ジャケット表にシールが貼ってあり、どうやら1987年にアントン・フィリップス・ザールの開場記念として頒布されたものらしい。
eBayに出品されていたのを見つけ、かねてブルックナーは様々な指揮者のものを聴きたいと考えているので落札したもの。
第4番は「1878〜80年版」、第6番は「原典版」と記されている。後者はVANGUARDレーベルから出ているCDと同じ演奏であろう。
なお、フォンクのブルックナー録音には、セントルイス響との第7番もあった。
ポール・パレー(指揮) デトロイト響
フランク;交響曲(仏Mercury、LP)
 
ポール・パレー(指揮) デトロイト響
ルーセル;組曲「蜘蛛の饗宴」 ほか(仏Mercury、LP)
パレーのMercury録音は、当時、"Living Presence" と銘打って優秀録音と喧伝された。
それに間違いはないのだが、カッティングに多少難があり、特に内周ギリギリまで使ったものなど歪みが感じられることも少なくない(盤の保存状態によるのかもしれないが)。
先日、eBayにフランス・プレスのLPが出品されていたので、もしや米盤を上回る音質ではないかと期待して落札してみた。
フランクにはステレオ盤もあるが、これはモノラルの旧録音。
ルーセルは好きな作品で、少しでもよい音で聴きたいと、これで3枚目か4枚目(汗)。
届いた現品を見ると、内周の余白部分に米盤の番号と新しい番号の両方が刻印されており、どうやら原盤をアメリカから運んだものらしいと推測される。
音質的には、米盤と比べて多少柔らかいものの、鮮度や力強さの点で及ばない。残念ながら期待外れだったようだ。
エルネスト・アンセルメ(指揮) スイス・ロマンド管
ルーセル;バレエ音楽「蜘蛛の饗宴」・小組曲(米LONDON、LP)
上記のように「蜘蛛の饗宴」は愛好する作品なのだが、この手の分野の定盤ともいえるアンセルメ盤があることに気づいていなかった(汗)。
eBayで発見、米盤だが中味は英プレスというので落札することにした。
調べてみると1954年10月、ジュネーヴの本拠ヴィクトリア・ホールでの録音。初期のステレオ収録だったらしい(入手したのはモノラル)。
2000年12月には交響曲第3・4番とのカプリングで国内盤CDも出ていたというから恥ずかしい。
エルマー・オリヴェイラ(Vn) ロバート・マクドナルド(P)
「ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン」(米VOX Cum Laude、LP)
日本ではまだまだ知られていない実力派ヴァイオリニスト、オリヴェイラ。1978年のチャイコフスキー・コンクールでイリヤ・グルベルトと1位を分け合った人である。
彼の音盤は蒐集しているところ、未架蔵盤がeBayに出品されていたので落札したもの。
小品12曲を収めているが、ガーシュウィン(ハイフェッツ編);3つの前奏曲スーク(ジンゴールド編);ブルレスケリリアン・フックス;ホタクロル;バンジョーとフィドル等、アメリカのヴァイオリニストの作・編曲を多く演奏しているのが特徴的。
1982年10月、ニューヨークでのデジタル録音(CDになったことがあるのだろうか?)。
エリーサベト・セーデルストレム(Sop) エーリク・セデーン(Br) スティグ・ヴェステルベリ(P)
スウェーデン歌曲集(瑞TELESTAR、LP)
eBayで発見したLP。
ステーンハンマル作品を収録しているのではないかと思って落札したが、現物が届いてみると、外れ。
ペッテション・ベリエルリンドブラード等の作品が歌われているのみであった。
1957年5月、ストックホルムでの録音。
考えてみれば、入札する前に出品者に質問すればよかったのだ。英作文を苦にしていなければ…(汗)。

2月19日(土)

 

久々に東京へ出かけ、コンサートを聴く。
目的は、トップページにリンク・バナーを掲げているステーンハンマル友の会によるサロン・コンサート。
昨年10月から始まっているが、シリーズ5回目にしてようやく参じることに。
それというのも今日の曲目は
モーツァルト;Vnソナタ第28番 ホ短調 K.304
ステーンハンマル;Vnソナタ イ短調 op.19
プロコフィエフ;Vnソナタ第2番 ニ長調 op.94bis
ラヴェル;ツィガーヌ
ステーンハンマルのVnソナタが聴ける! これを逃さずにおられようか!!
60人ほどが座れる会場はほぼ満席、北欧音楽MLのメンバーの顔もちらほら見える。
 
演奏は青木 調(Vn)、和田記代(P)のお二人。
青木さんは前にここで2つのセンチメンタル・ロマンスほかを聴いた。…と思って調べたら、平成12(2000)年12月だから、もう4年以上前のこと。
出演者紹介に掲載されているとおり、昨年10月からはNHK響の契約団員として活躍しておられる。
 
和田さんはもちろんステーンハンマル友の会の中心人物。
ちょうど昨年2月にP協第2番の2台ピアノ版を聴かせていただいて以来になる。
 
それぞれ演奏の前に曲の簡単な紹介があり、ステーンハンマルについては
作曲家はピアニストだったが、ピアノが入った室内楽曲は意外に少なく、完成された作品としては、このVnソナタのみ。
息の長いフレーズと和声の移ろいが特長。
演奏者としては、Vnのフレーズが長く不定形な点(4小節、8小節といった規則的な把握ができない)、Pパートが技術的に大変(大きな手が前提になっていると思われる)、といったあたりが難しい。
というコメントがあった。
 
ステーンハンマルとしては初期の作品(1900年完成)で、当時よく共演したVn奏者・作曲家トゥール・アウリンに献呈され、彼ら2人が初演した。
非常に古典的な作風で、ピツィカートは一音もなく、重音奏法も控えめにしか用いられない。
聴いた感じだけでいうと、淡彩のブラームスというか、ハンブルクの巨匠がシューベルトの作風をなぞったような雰囲気がある。
この日は次にプロコフィエフが演奏されたこともあって、特にその印象を強くした。
ただし、上記の演奏者のコメントにあるように、一筋縄ではいかない面もあるようだ。
 
全曲で約20分程度、第1楽章 Allegro con anima は、気持ちのこもった(しかし控えめな)嘆きの歌、 "con intimissimo sentimento" (極めて内面的な感情をもって)と指定された第2楽章 Andantino での心の慰めは、この曲の核心。
非常に歌謡的な楽章で、ちょっとシューベルト幻想曲あたりを思わせる。
心の襞を優しく心地よく掻いてくれるような、いつまでも身も心もゆだねて揺られていたい音楽、とでも言えようか。
第3楽章 Allegro は、かすかに民族調を帯びた愛らしい主題による、弾むような音楽となり、喜ばしげに曲を閉じる。
 
青木さんのヴァイオリンは、前回もそうだったが、端整で美しい音程と音色清潔かつ誠実な音楽が持ち味。
この曲でも、ステーンハンマルの良さをきちんと引き出しておられ、特に第3楽章が立派な出来だった。
欲を言えば、2楽章はもう少し纏綿とした歌が好み。
プロコフィエフの緩徐楽章でも同じ印象を受けたので、それは彼女の行き方ではないのだろう。
 
和田さんのピアノは、雄弁ながら出過ぎない表情が、音楽を立体的にしている。弱音の柔らかく美しい音色も素晴らしい。
独奏では時に感興を抑えきれない情熱のほとばしりに、聴いている側は多少ハラハラすることもあるピアニストだが(失礼お許しを<(_ _)>)、今日のような室内楽ではよくコントロールされている。
上記のコメントどおり、見ているとけっこう忙しそう。聴こえてくる音楽の優しさとは裏腹に、ずいぶん手のこんだ書法になっているようだ。
 
ともかくこれだけの高い水準でステーンハンマルを聴けたのには満足を通り越して歓喜々々。
来る7月3日(日)には、東京オペラシティ・リサイタルホールで、このVnソナタを含む、オール・ステーンハンマル・プログラムの「スウェーデン音楽の調べ Vol.2」が予定されている。
ぜひぜひ一人でも多くの方に足をお運びいただき、実際に彼の音楽を聴いていただきたいと念願する。
他の曲については簡単に…。
モーツァルトでは青木さんの美質が前面に出て、木質感のある美しい中低音に聴き惚れつつ、古典の格調の中に込められた嘆きに心を打たれた。
 
プロコフィエフは当日の白眉。
音楽の振幅の大きさ、多彩な表情(ヴァイオリンもピアノも)。
これと並べると、ちょっとステーンハンマルも旗色は悪いかもしれない…(苦笑)。
ただし、これはもう少し大きな会場で聴きたかったという気もする。
 
ラヴェルも格調高い再現。
曲が曲だけに多少の崩しというか媚態があってもと思うが、それは斉諧生の好みにすぎないだろう。
 
アンコールはドビュッシー;亜麻色の髪の乙女
 

 

エンリコ・ディンド(Vc) フランツ・リスト室内管
ハイドン;交響曲第85番「王妃」 & Vc協第1・2番(assai)
演奏会の帰りに渋谷に出て某大型音盤店に立ち寄る。
以前はコンサートを聴きに東京に出てくると一泊して、翌日は朝から夜まで東京中の音盤屋を駆けずり回ったものだが、最近はWebでたいてい手に入るようになったので、そこまでする必要はなくなった。
体力的にも辛くなってきたし(汗)、そもそも独身時代と違ってそうそう家を空けるわけにもいかない。
 
閑話休題、丁寧に棚を見ていれば時間も資金も足りなくなるので(激汗)、ポイントを絞ってチェックした中に、予想外のCDが1点。
assaiといえばフランスのレーベルだが、ここにリスト室内管が録音しているとは知らなかった。
ソリストはトリノ生れ、ヤニグロらに学び、ミラノ・スカラ座管の首席奏者を務め(1987〜98年)、現在はアンサンブル "I Solisti di Pavia" も主宰しているとのこと。
検索してみると公式Webpageが見つかった。mp3ファイルやバッハ;無伴奏Vc組曲の楽譜(自身によるアーティキュレーション入り、現在第4番まで)も公開されている。
2000年3月、ブダペシュトのイタリアン・インスティチュートでのライヴ録音。
クリスティアン・ツァハリアス(P) ケルビーニQ
シューマン;P五重奏曲・弦楽四重奏曲第1〜3番(EMI)
ツァハリアスの未架蔵盤が店頭にあったので購入。り、2枚組で1枚分の廉価。
シューマンのP五重奏曲というとバーンスタインがピアノを弾いてジュリアードQと共演した録音(Sony)が思い出される。
クリストフ・ポッペン(Vn)率いる四重奏団とどのような演奏を聴かせてくれるのか、楽しみである。
五重奏曲は1991年9月、四重奏曲は1989年10月〜1990年2月にかけての録音。
ニコラス・ドトリクール(Vn) ロラン・ヴァグシャル(P)
シマノフスキ;Vn曲集(SAPHIR)
シマノフスキのVn作品(編曲ものを除く)として知られる6曲をすべて集めたCD。
すなわち、
Vnソナタ op.9
ロマンス op.23
夜想曲とタランテラ op.28
神話 op.30
パガニーニの3つのカプリス op.40
アイタコ・エニアの子守歌 op.52
こういうCDは見れば買いたくなる。昔は滅多になかったのだが、最近はシマノフスキの録音も増えてきて、全部とはいかなくなっているのだが、SAPHIRレーベルはいつも「当たり」という印象が強いので、購入してみることにした。
演奏者の名前に見覚えがあり、実はダブリ買いではないかずいぶん悩んだのだが、帰宅してから調べてみると以前CALLIOPEレーベルから出たショーソン作品を架蔵していることが判明して一安心。
ドトリクールはフランスの若手(1977年頃の生れだ)、パリ音楽院でカントロフのクラスを卒業、ヒルシュホルンティボール・ヴァルガ等に学んだとのこと。
2002年12月、パリの聖マルセル福音教会における録音。
フィリップ・ピエルロ(Gamb) ケネス・ワイス(Cem) ほか
バッハ;ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのソナタ(全曲) ほか(Flora)
以前、Floraレーベルの古楽演奏を絶讃した評を読んだ記憶があり(どこだったか忘れてしまった(汗))、聴きたいなぁと思ったのだが、公式Webpageでのネット販売のみ、しかもカード決済ができないということで、手を出せずに悩んでいた。
サラバンドが国内代理店になったというニュースがあったにもかかわらず近隣の音盤店では見かけなかったのだが、今日立ち寄った都内最大級の店舗にはさすがに在庫があり、ようやく購入できたもの。
薄い紙ジャケットにCDを差し込んだだけの簡素な造り、解説等は公式Webpageで公開するという手法でコストダウンしているという(公式Webpageでは1枚15ユーロ。もっとも店頭価格は安くなかった)。
もっとも、今になってもフランス語ページしかできていないのは困りもの。
ガンバ・ソナタ3曲とVnソナタ BWV1023を編曲したものを演奏している。後者ではライナー・ツィパーリングが共演している。
ピエルロの使用楽器はバラク・ノーマン(1718年ロンドン製)、2002年9月の録音。
フランソワ・フェルナンデス(Vn)
バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(Flora)
Flora盤、続く。
シギスヴァルト・クイケンに学び、ラ・プティット・バンド等のメンバーで、寺神戸亮と共演したCD(モーツァルト;ディヴェルティメント K.563)もあったヴァイオリニスト、フェルナンデスのバッハ;無伴奏。
第1集(ソナタ第1番・パルティータ第1番・ソナタ第2番)と第2集(パルティータ第2番・ソナタ第3番・パルティータ第3番)が揃っており、まとめて購入。
上記のとおり解説が附属しておらず、しかもWebpageの方も未掲載ということで、サラバンドの記事を丸写しするしかないのだが、
彼は全曲の表題("Sei Solo a Violino senza Basso accompagnato")の冒頭にある『Sei Solo』を『6つの独奏曲』ではなく『あなたは一人である』という意味でとらえ、このCDの制作を自分一人だけで行うことにこだわりました。録音場所である教会にヴァイオリンを携えて一人でこもり、テープを回しっぱなしにして演奏、録音。編集とブックレット制作の技術的な面以外すべて、自分の手だけでこの全曲CDを完成させた
とのこと。
使用楽器はアンドレア・グァルネリ(1690年製)。録音は2002年7月、ベルギーのバス・ボドゥー教会にて。
実は、同レーベルのCDではバッハ;無伴奏Vc組曲(ライナー・ツィパーリング (Vc))がいちばんほしかったのだが、店頭になく残念。
モーツァルト;セレナード「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(Eulenburg/Zen-On)
音盤店の楽書コーナーでポケット・スコアを1点購入。
何を今更のポピュラー名曲だが、実は未架蔵(汗)。
先日ヴロンスキー盤に接して、これは一度本腰を入れて聴いてみないと…と思い、譜面を入手せねばと考えていたもの。

2月18日(金)

 

大野和士(指揮) ベルギー王立歌劇場管 ほか
マーラー;交響曲第2番「復活」(Warner)
大野和士には以前から注目しているのだが、まだ実演に接する機会に恵まれないのは残念。
CDはなるべく聴いておこうと思いつつ、当盤は苦手な「復活」、しかも国内盤は値が張るし(といっても2枚組で1枚分なのだが)、輸入盤は造りが安っぽいしで、買い損ねていた。
ずっと気になっていたところ、某オークションに国内盤が安価で出品されていたので落札。目出度し。
ブリュッセルのパレ・デ・ボザールにおけるライヴ録音で、録音日は2002年9月末〜10月初の4日間にわたっている。

2月17日(木)

 

宇野功芳(指揮) アンサンブル・フィオレッティ
「日本抒情名歌名作選IV」(MUSIKLEBEN)
宇野功芳師の新譜である。
先日、ブラウザ(Opera)のブックマーク・ファイルが突然壊れてしまい、URLを再収集する必要に迫られ、音楽マネジメントの公式Webpageを歴訪していた際、MUSIKLEBENのWebpageをチェックしたら、なんと新譜発売の情報を見つけた。
急いでメールでオーダー、銀行振込で支払い、折り返し送付されたもの。
例によって「誰か故郷を想わざる」「兵隊さんよありがとう」「水色のワルツ」等々、戦前〜戦後の流行歌など24曲が女声合唱で歌われている。
2003年11月30日、石橋メモリアル・ホールでのライヴ収録。

2月16日(水)

 

アンドレ・プレヴィン(指揮) ロンドン響
ショスタコーヴィッチ;交響曲第8番(DGG)
プレヴィンのショスタコーヴィッチが某オークションに出品されていたので工藤さんの評をチェックしてみると、
猛烈なテンションが最初から最期まで持続しているのに圧倒される。(略)凄いのは第4楽章。非常に遅いテンポで静寂の世界を見事に描き出している。
と、星4つ半の高評(満点は星5つ)だったので落札したもの。
1992年10月、ロンドンのオール・セインツ・チャーチでの録音。

2月15日(火)

 

マリオ・ブルネロ(指揮 & Vc) 紀尾井シンフォニエッタ
メンデルスゾーン;交響曲第4番「イタリア」 ほか(Victor)
ブルネロの音盤は指揮、独奏とも聴き逃せないと思っており、当盤も発売時からマークしていた。
ずっと国内盤レギュラープライスに買いそびれていたところ、そろそろ買っておかないと廃盤の憂き目を見るかもと心配になり(取り越し苦労ならよいのだが)、音盤店の割引券が使えるチャンスに購入したもの。
標記以外にレスピーギ;「古代舞曲とアリア」第1組曲をカプリング、またレスピーギ;アダージョと変奏フォーレ;エレジーでブルネロが独奏を聴かせている。
2003年12月、紀尾井ホールでのライヴ録音。
ジョアキムQ
フランク;弦楽四重奏曲 & サマズイユ;弦楽四重奏曲(CALLIOPE)
先日来、店頭でよく見かけたCDだが、フランクでもP五重奏は愛聴してきたが、この曲はもう一つ好きではないので見送ってきた。
ところがSyuzo's Weblogで当盤が取り上げられ、
実に素晴らしく官能的な演奏を聞くことができる。(略)第3楽章の哀感は、これはもう室内楽が好きな者にとっては耳の法楽だ。いつまででも、その情感に浸っていたくなるような佳演だ。
と最上級の讃辞を贈っておられるので、これは聴かねばと購入したもの。
カプリングのサマズイユ(1877〜1967)も佳曲との評判なので楽しみである。
団体名 "Joachim" は、フランス語の場合「ジョアキム」「ジョアシャン」両方の読みがあるようだが、とりあえず前者を採る。
2004年4月、アミアンの聖家族教会での録音。

2月14日(月)

 

ロジャー・ノリントン(指揮) シュトゥットガルト放送響
ベートーヴェン;交響曲第1・2番(hänssler)
先日第9番を落札して、ノリントンの再録音全集の蒐集を再開したとたん、第1・2番が某オークションに出品され、これまた目出度く落札できた。
2002年8月、シュトゥットガルトのベートーヴェン・ザールでのライヴ録音である。
藤森亮一(Vc) カール・アンドレアス・コリー(P)
シューベルト;アルペジオーネ・ソナタ ほか(MEISTER MUSIC)
藤森氏の活動には以前から関心を持っているのだが、なかなか実演に接する機会に恵まれない。
地元出身ということもあって京都でのコンサートも少なくないのだが…。
音盤も国内盤フルプライスには手を出しかねるところがあり、あまり多くは架蔵していない。
鍾愛の曲アルペジオーネ・ソナタの録音は発売時から気になっていたところ、某オークションに安く出品されており、好機とばかり落札したもの。
ブラームス;Vnソナタ第1番「雨の歌」(Vc編)をカプリングしている。
2004年7月、横須賀芸術劇場「ヨコスカ・ベイサイド・ポケット」での録音。
マリー・ルイーゼ・ヒンリクス(P) クリスティアン・ツァハリアス(P & 指揮) バンベルク響
モーツァルト;2P協 K.365 ほか(EMI)
先だって中古音盤堂奥座敷 2004年の5盤に選んだベートーヴェン;P協全集がきっかけで、ツァハリアスというピアニストを本格的に聴いていこうと考えている。
ドイツでは人気が高いそうで録音も多く、蒐集はなかなか厄介だが、ぼちぼち進めていくつもり。
eBayに、あまり見かけないモーツァルトの2台ピアノ作品集が出品されていたので落札してみた。
標記K.365はともかく、3台ピアノ用のK.242を2台用の版で演奏しているのには驚いた。やはり一筋縄ではいかない人だ…(苦笑)
2Pソナタ K.448をカプリング。
録音は1995年6・7月、バンベルクのヨーゼフ・カイルベルト・ザールにて。

2月13日(日)

休日の徒然にWebサーフしていると、「ハンブルク日記+ドイツ音楽紀行」というblogに行き当たった。
「ハンブルクで思うこと & オペラ座めぐりの旅日記」という副題通りの興味深い内容が多く、あれこれ読ませていただいていると、ハンブルク「ムジークハレ」から「ライスハレ」にという記事があって吃驚。
ハンス・シュミット・イッセルシュテットらが多くの名演奏の歴史を刻んだ「ハンブルク・ムジークハレ」が、2005年から「ライスハレ」に名称を変更したという。
といってもアメリカ合衆国の新国務長官(Dr. Condoleezza Rice)を記念した命名というわけではない。
1908年の創建に当たり建設基金を寄付した資産家、カール・ハインリヒ・ライス(Carl Heinrich Laeisz)夫妻の姓にちなむのだそうである。
しかも、「ムジークハレ」の名称は1930年代以降のもので、完成当初はやはり「ライスハレ」と呼ばれていたのだという。
命名の変遷の理由については、上記blog記事に詳しい。
 
ホールの公式Webpageのドメインも"www.laeiszhalle.de/"に変更されている。
それに合わせてシュミット・イッセルシュテット小伝中のリンクも変更。
『公共哲学 15 文化と芸能から考える公共性』(東京大学出版会)
帯の惹句には、
「生活世界から公共世界を形成するために 生活者の視点に立って公共性の創成可能性を探究」
「人びとの共鳴・協働を生み出す芸能の世界に何を見いだせるか。 文化や芸能・芸術の持つ公共的な価値とはどこに求められるか。」
という題目が記されている。国家や政府、政治権力の枠にとらわれない汎世界的な共同体の有り様を論じた叢書の一巻である。
 
本書に、義江彰夫 「音楽と公共性・公共世界の関係に関する一試論」という論文が収められている。
著者の本業は古代・中世の日本史家。同書には別論文「日本中世の芸能をめぐる共同体と権力」も掲載されている。
 
20頁に満たない小論であるが、著者年来の考察が集成されており、強い問題提起をはらむ。
次の4人の作曲家・作品を取り上げ、それぞれの曲には、その時代に作曲家を取り巻いていた個人と社会、民族と世界の問題が凝縮されていると説く。
詳細は同書を参照されたいが、その手引きとして以下に抄録する。
 
ベートーヴェン;Vn協
第1楽章では管弦楽の提示する主題に従っていた独奏が、第2楽章では独自の旋律を歌い始め、第3楽章では管弦楽をリードするに至る。
独奏を個人、管弦楽を社会と見るならば、ヘーゲルの弁証法やルソーの社会契約思想を音楽で表現すればこの作品になる、と言っていい。
しかし、個人と全体の調和はなく、個人の理念や利害が公共性にすり替わる危険性を残す。
ワーグナー;ニーベルングの指環
西欧市民社会は資本主義が生み出す欲望の追求の結果として行き詰まるが、欲望からの解放と愛の絆がそれを解決する。
ベートーヴェンの個人中心的な公共性の矛盾を打破し、支配・被支配のない公共性を備えた社会を提示。
マーラー;交響曲第5番ほか
第1楽章の葬送行進曲から第3楽章までの抑圧的・悲劇的な曲調は男女の結婚に対する苦悩を現すが、第4楽章(アダージェット)で彼のホモセクシュアリティがアルマから承認されることにより第5楽章での勝利が導かれる。
第6〜8番を経て「大地の歌」の終楽章「告別」(男同士の別れが歌われる)に至ってマーラーはホモセクシュアリティの世界からの訣別に成功し、第10番で更に高い次元でヘテロセクシュアリティの世界に向き合おうとする決意を表現する。
この歩みは、マーラーが、ホモジニアスな西欧市民社会を超越するヘテロジニアスな社会・民族間関係を構築する展望を示している。
シベリウス;Vn協、交響曲第7番
Vn協では、ベートーヴェンのような独奏(=個人)が管弦楽(=社会)を支配するものに成長するという図式を否定し、独奏のイニシアティブを介しての両者の対等な関係の構築という新しい境地を開拓している。
これは西欧市民社会の周縁に成立したフィンランド内の個人と社会の関係にとどまらず、フィンランドと諸民族との関係に発展する。
交響曲第7番において、相互に違和感のある数個の動機は諸民族間の葛藤を象徴し、螺旋状的な展開を通して全体の融合が示唆されたところで終結する。
音楽の上で最終的な結論が与えられないのは、真の解決は聴衆が主体的・持続的に取り組んでいく結果に委ねられているからである。
シベリウスの音楽は、民族性を基礎に置きながら、国民国家の枠を超え、諸民族との葛藤を通しての連係と共存を目指す内容で満たされている。
 
Vn協2曲の造型の違いなど、なるほどそうかもと頷ける気がする反面、マーラーのホモセクシュアリティと交響曲の意味関連については眉に唾したくなるのも正直なところ(笑)。
とはいえ、音楽史を音楽だけの(楽譜の中で完結する)発展の様相としてとらえるのではなく、音楽家が時代を・時代の精神を<深く>反映して作品をつくりあげてゆくという前提を承認するならば、簡単に笑殺するわけにもいかないだろう。
作曲家の言説の中にではなく、音楽そのものの分析から、作曲家と時代・社会との関わりを読みとることができる(読みとらねばならない)という、重大な問題提起として受け止めたい。
だからといってそれはないでしょう、という部分は否定しきれないかもしれないが、では何があるのか、という質問に答えられる音楽史家・音楽美学者は存在するのだろうか。
実は斉諧生は、義江彰夫氏と個人的な面識がある。もう20年以上も前のことだが…。
当時、音楽について話し合ったことはほとんど無かったのは今思えば残念だが、それでも既に
「ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ね、あれはね、弁証法ですよ。」
と力説しておられたことを思い出す。
また、ある時村上陽一郎氏が聞き役を務めるラジオ番組にゲスト出演され、
ダヴィード・オイストラフ(Vn) アンドレ・クリュイタンス(指揮)
ベートーヴェン;Vn協(EMI)
について語っておられたことも記憶している。
まだLP時代のことで、各種プレスにより音が違うが米Angel盤が最上、と言っておられた。
やはりマニアというほかない(苦笑)。

2月12日(土)

 

塩川悠子(Vn) 遠山慶子(P)
モーツァルト;Vnソナタ集 II(CAMERATA)
全部で3枚のCDになっている塩川 & 遠山のモーツァルトのうち、最後残っていた第2集が某オークションに安く出品されていたので落札したもの。
収録曲は第34番 変ロ長調 K.378第35番 ト長調 K.379第40番 変ロ長調 K.454
1990年3月、ウィーンでの録音。
プッテ・ウィックマン(Cl) ヤン・ルングレン(P) ほか
「We Will Always Be Together」(Gazell)
斉諧生御贔屓のジャズ・ピアニスト、ルングレンの新譜が出ているとAnjaさんから御教示いただいた。
国内盤が出回っているのだが、スウェーデンのレーベルが原盤と知り、やはりオリジナル盤を入手したいと、そこのWebshopからオーダー。
約5日で到着、これはフィンランドのOndineレーベルの直販と同様。北欧は郵便事情も良いのだろう。
ウィックマンは1924年生れ、当盤は彼の80歳記念企画らしい。1944年から演奏活動を始め、スウェーデンのジャズ界では大御所扱い、最近はクラシックも演奏するというから、ベニー・グッドマンを思わせる。
表題作など全8曲を演奏しているが、国内盤とは曲順が違うのではなかろうか。すなわち、
1. "We will always be together"
2. "Marlowe's theme"
3. "Second time first"
4. "Spring can really hang you up the most"
5. "Sail away"
6. "Just a child"
7. "I remember Bill"
8. "Con alma"
となっている。
2004年5月、コペンハーゲンのサン・スタジオでの録音。Cl奏者のサンプラーCDが附属していた。
ザ・リアル・グループ
「En Riktig Jul」(Gazell)
上記ルングレン盤をオーダーするついでに何かと思ってカタログを眺めていると、以前、エリク・エリクソンの指揮でステーンハンマル作品ほかを録音した、スウェーデンのア・カペラ・グループの音盤が何種類か掲載されていた。そのうち興味を惹かれた2点をオーダー。
これはクリスマス・アルバムで、タイトルは「ほんとうのクリスマス」という意味になる。
冒頭に「聖しこの夜」が置かれ、中程に「サンタ・ルチア」があるほかは、北欧の楽曲ばかり。総計13曲が歌われる。
(残念ながらステーンハンマルの曲は含まれていない。)
録音データは明記されていないが、マルPは1997年。
 
「Jazz : Live」(Gazell)
当盤では"Waltz for Debby""Round Midnight"など、ジャズ系楽曲12曲を歌っている。
1996年3月19・20日、スウェーデン放送局でのライヴ録音。
なお、公式Webpage及び日本語公式ページがある。

2月11日(祝)

Anjaさんのblogを拝見して驚愕!
エサ・ペッカ・サロネン(指揮) ロサンジェルス・フィル
ステーンハンマル;セレナードを演奏するという。
 
オーケストラの公式Webでチェックすると、詳細は次のとおり。
日時;平成17年12月1日(木、午後8時)、12月2日(金、午後8時)、12月3日(土、午後2時)
会場;ウォルト・ディズニー・コンサート・ホール
指揮;エサ・ペッカ・サロネン
シベリウス;交響詩「フィンランディア」
ステーンハンマル;セレナード
グリーグ;P協
(独奏;レイフ・オーヴェ・アンスネス)
 
従来、同曲のベスト盤としてサロネン(指揮) スウェーデン放送響盤(Musica Sveciae)を挙げてきた。
いまや熟成してきたロス・フィルを指揮して、どんな演奏を聴かせてくれるだろう? いやいや、必ずや超名演となるに違いない。
何とか聴きに行くすべはないものか。できれば3回すべての公演を聴きたいが、土曜のマチネなら本業を1日だけ休めば行けるのではないか。
 
嗚呼、居ても立ってもいられない!

 

サシュコ・ガヴリーロフ(Vn) パーヴェル・ギリロフ(P)
R・シュトラウス;Vnソナタ & ブゾーニ;Vnソナタ第2番(Aulos)
以下はアリアCDさんから届いたCD。
名称はメロディア音源を覆刻している韓国のレーベルと同じだが、こちらはドイツ・ケルンに本拠を置く(公式Webpage)。
かねて蒐集しているヴァイオリニストの一人、ガヴリーロフ教授の未架蔵CDゆえ入手せざるべからず。
LPは架蔵済だが、1984年のデジタル録音なのでCDが有り難い。
ボリス・ペルガメンシチコフ(Vc) パーヴェル・ギリロフ(P)
ラフマニノフ;Vcソナタ & プロコフィエフ;Vcソナタ(Aulos)
昨年の逝去以来、慌てて蒐集しているペルガメンシチコフのCD。
上記ガヴリーロフ盤同様アリアCDのカタログに2点が掲載されていたのでオーダーしたもの。
1985年の録音だから35歳頃の演奏ということになる。
 
ボリス・ペルガメンシチコフ(Vc)
ヒンデミット;無伴奏Vcソナタ & ブリテン;無伴奏Vc組曲第3番 ほか(Aulos)
こちらは1986年録音の無伴奏作品集。
標記2曲のほかルトスワフスキ;ザッハー変奏曲シェリフ;コンフェッションペンデレツキ;スラヴァのためにを収録している。

2月10日(木)

 

チャールズ・マッケラス(指揮) BBCフィル
マーラー;交響曲第6番(BBC music magazine)
昨日、帰宅してサッカー(ワールドカップ・アジア最終予選)をTV観戦(心臓に悪かった)したあと、Webサーフしていると神戸CD倉庫さんやベリサリウス研究日誌さんで当盤の記事を発見。
マッケラスは好きな指揮者だし、マーラーの中でも第6番は好きな曲。
しまった、せっかく大阪・梅田に行ったのだから、タワーレコードに寄ってくるんだったと後悔したが後の祭り。まあ、サッカー中継に間に合うよう急いでいたので仕方ないのだが…。
入荷が限られている雑誌なのでちょっと焦り、昼休みに電話して取り置きを依頼し、夜に買いに行ったもの。
版の詳細については上記ベリサリウス研究日誌さんに詳しいが、アンダンテを第2楽章、スケルツォを第3楽章に配し、終楽章のハンマー打撃を3回としているとのこと。
2002年11月16日、マンチェスターのブリッジウォーター・ホールでの録音。

2月9日(水)

 

ペトル・ヴロンスキー(指揮) チェコ室内フィル
モーツァルト;交響曲第25・41番 ほか(GZ)
出張先から直接帰宅する道すがら、普段は足を向けない大阪の某音盤店に立ち寄る。いくつか捜していたCDの収穫があって喜ぶ。
当盤は、福島章恭『モーツァルトをCDで究める』(毎日新聞社)に紹介されており、ずっと聴きたかったもの。
標記2曲のほかセレナード K.525を収録しているのだが、曰く、
『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』は、ヴロンスキーの数少ない録音のひとつだが、これもヴロンスキーならではの正統的なアプローチとチェコの弦の美しさに秀でた名演と言えるだろう。
しかし、いかにも欲のない演奏であり、この無欲がヴロンスキーの音楽をかけ替えのないものにしている反面、大きなポストに恵まれない不遇を象徴しているのだと思う。
成る程、小編成の弦合奏から繊細でセンスの良い音楽が響いてくる。あたかもモーツァルトの微笑みと涙がこぼれてくるような…。
1999年4月、プラハ・ルドルフィヌムでの録音。
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) ベルリン・フィル ほか
ベルリオーズ;幻想交響曲 ほか(DGG)
少し前に "Musik...Sprache der Welt" シリーズで出た紙ジャケットの盤。
1953年11月にベルリンで録音された音源で、CDとしては以前"CENTENARY COLLECTION"シリーズで出ていた。
昨年末に購入した同シリーズのシューベルト;交響曲第3・4番での音質改善効果が著しかったので、ベルリオーズも…と捜していた。
聴き比べてみたところ、前回のものが、エネルギー感はあるものの、如何にも古い録音のCD化という感じの硬い音色だったのに対し、今回のマスタリングでは、エネルギー感は多少後退したが、その分響きがすっきりし、音場の見通しが良くなっている。
もちろん古さは否めないにせよ、素直に美しいと言えるレベルになっており、買い換えの値打ちはあったと思われた。
カプリングはビゼー;組曲「子どもの遊び」コンセール・ラムルー管との演奏で、録音は1957年11月。
こちらも一昨年「オリジナル・マスターズ」の箱物で出ていたが、音質比較の傾向は「幻想」同様で、新盤が上回る。
フリッツ・ライナー(指揮) シカゴ響
チャイコフスキー;交響曲第6番「悲愴」(Victor)
ライナーの「悲愴」のXRCD盤が某オークションで安く出品されていたので落札したもの。
BMGから"LIVING STEREO"シリーズで出ており、1957年4月録音とは思えないくらい生き生きした音質であったが、高弦の音は薄くシャリシャリしていた。
当盤では弦合奏がしなやかさを取り戻しており、改善が著しい。
もっとも今後SACDのリリースが進めばXRCDも遺物と化してしまうのかもしれないが、当面SACDのハードを購入する予定はないので、まあよろしかろう(「予定」を「余裕」と言い直すべきか(苦笑))。
ポール・パレー(指揮) モンテ・カルロ国立歌劇場管
「コンサート・ホール録音集成」(SCRIBENDUM)
パレーが最晩年に(デトロイト響との黄金時代が既に70歳前後なのだ)コンサート・ホール・レーベルに遺した一連の録音が、ほとんど初めてCDに覆刻された。
2枚組への収録曲は次のとおり。
リスト;交響詩「前奏曲」
リスト;交響詩「マゼッパ」
リスト;「メフィスト・ワルツ」
サン・サーンス;交響詩「死の舞踏」
サン・サーンス;交響詩「オンファールの糸車」
デュカス;交響詩「魔法使いの弟子」
ビゼー;組曲「カルメン」第1・2番(これのみ以前DENONがCD化。音質は今回改善著しい)
ラヴェル;「道化師の朝の歌」
ラヴェル;「ラ・ヴァルス」
このレーベルの覆刻シリーズの通弊で、リスト;交響詩「オルフェウス」ビゼー;組曲「美しきペルトの娘」シャブリエ;狂詩曲「スペイン」・田園組曲といった音源が欠けているのは残念だが、それはさておき。
大問題は「道化師の朝の歌」
この曲、斉諧生架蔵のLPにはもちろん、Jean-Philippe Mousnier の評伝本 "Paul Paray" 附録のディスコグラフィにも、 John Hunt のディスコグラフィ本( "a gallic trio" )にも掲載されていない。
(もちろんデトロイト響盤は存在する。)
果たして新発見の音源なのか、それとも別人の演奏が混入したのか…?
ブックレットには何も記載が無く、また各小売店の広告でもまったく言及されていない。
所要時間の差が非常に大きく(デトロイト響盤6分38秒、当盤7分25秒)、聴いてみても、基本テンポの遅さ、フレージングの鈍さ(デトロイト盤は非常に鋭い)など、演奏の傾向がずいぶん違うので、疑問無しとしない。
ただ、それはオーケストラの違いや加齢の問題もあろうから、一概に真正でないとは言い切れないので、とりあえず宿題として置いておきたい。
モニク・アース(P) ポール・パレー(指揮) フランス国立放送管
ラヴェル;P協・左手P協 ほか(DGG)
上記SCRIBENDUM盤と時期を同じくしてDGGの "THE ORIGINALS" シリーズからパレーの演奏がリリースされた。
1965年4月にパリで録音されたラヴェルのピアノ協奏曲集で、以前、仏DGGから "DOUBLE" という2枚組シリーズに含まれていた。
聴き比べてみると音質はかなり改善されている。もやもやとした部分が薄れ、周波数レンジが伸びたような感じがする。
今回、問題が一つあり、従来ディスコグラフィでは録音会場をサレ・ドゥ・ラ・ミュチュアリテとされていたところ、当盤のブックレットにはラジオ・フランス会館と記載されている。
この種のデータはレコード会社の方が確からしいだろうと考えるので、後者に従ってパレー・ディスコグラフィを修正したい。
オディール・エドゥアール(Vn) フレディ・エイシェルベルジェル(Org) ほか
ビーバー;ロザリオのソナタ(K617)
曲集の末尾に置かれたパッサカリアが好きなので、めぼしい音盤は逃さないようにしている。
先日公開された中古音盤堂奥座敷 2004年の5盤浮月斎さんが「印象に残った古楽系」として挙げておられた1枚。
京都の音盤店では見つからなかったのだが、今日立ち寄った店に在庫があったので購入。
2001年8月、フランス北東部モーゼル県のサン・キランなる村の小修道院教会で録音された。同教会の歴史的ジルバーマン・オルガンを用いているとのこと。

2月8日(火)

音盤狂昔録平成17年1月分を追加。
 
この間入手したLP・CDの情報を
リリー・ブーランジェ・作品表とディスコグラフィ
ルクー・作品表とディスコグラフィ
カザルス・ディスコグラフィ
マルケヴィッチ・ディスコグラフィ
に掲載。
 
この間に聴いた演奏会の情報を演奏会出没表に掲載。

2月7日(月)

 

ハインツ・キルヒナー(Va) イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) ベルリン・フィル
ベルリオーズ;交響曲「イタリアのハロルド」(独DGG、LP)
マルケヴィッチの未架蔵LPがeBayに安く出ていたので落札したもの。
ジャケットは仏語で印刷されているが、中味は西独プレス、グルーヴガードのない(フラットな)盤なので、初期のLPと思われる。
ジェイムズ・デプリースト(指揮) ケベック響
ルクー;弦楽のためのアダージョ ほか(加RCI、LP)
以前、オーケストラの自主製作盤を漁りにあちこちWebsiteを捜していた際、ケベック響ディスコグラフィで見つけた盤。
直接メールしてみたが梨の礫、一度eBayで見つけたが競り負けてしまい、もはや今生では聴くこと能わざるものと諦めかけていたところ、先日再びeBayで発見。
無競争、しかも格安で落札でき、狂喜乱舞して到着を待ちかねていた盤である。
当時は知る人ぞ知る(換言すれば一般的には知られていない)指揮者だったデプリーストは、1976年10月以来、同響の音楽監督を務めていた。
ミヨー;プロヴァンス組曲マットン;交響的楽章をカプリング、後者はケベック響委嘱作品とのこと。
1977年2月の録音で、オーケストラの創立75周年を記念して、カナダ国際放送(RCI)他によって製作された。
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) コンセール・ラムルー管 ほか
リリー・ブーランジェ;作品集(仏EVEREST、LP)
1958年の録音ながら、ピエ・イェズ詩篇第24番詩篇第130番等、彼女の代表作の代表盤の一角に揺るぎない地位を占め続けているマルケヴィッチ盤。
米EVEREST盤LP、同CD等で架蔵しているが、eBayに仏盤LPが出品されていた。彼女の音盤を蒐集し始めて以来、見たことがないものなので、重複を承知で落札してみた。
モノラル盤だが(ステレオ盤の存否は未確認)、音の美しさでは米盤を凌ぐ。カートリッジ等を選んでやれば、もっと優れた再生音が得られるのではなかろうか。

2月6日(日)

 

地元のホール高槻現代劇場で、ゲルハルト・ボッセ(指揮) 大阪センチュリー響の演奏会を聴く。
ボッセ氏は高槻市に住んでおられ、当地でのコンサートは今日が5回目とのこと。
前回までの情報をまったく知らず、聴き逃していたのは残念。
このホールは阪急高槻市駅から徒歩5分以内、京都・大阪の中間点にあって特急が停車するのでどちらのターミナルからも30分以内で来場できる。
もっと企画とPRに励めば、ここを中心とした豊かな音楽文化が栄えるのでは…と期待したいところである。
 
中ホールは約600席、音響は悪くなく、室内楽、小編成のオーケストラや合唱に良い器ではないかと感じている。
今日は8〜9割の入り。
 
オール・ベートーヴェン・プログラムで、
序曲「プロメテウスの創造物」
交響曲第1番
Vn協(独奏;カトリーン・ショルツ)
と、コンチェルトを休憩後に配する。
 
ボッセ氏は、昨年7月10日の項に記した講演会で、ベートーヴェンに対するC.P.E.バッハ等の影響を強調し、ピリオド・アプローチによる演奏への共感を強く打ち出しておられた。
例えば、
自分としては、過去のドイツの大家の演奏解釈には、今となっては共感しかねるところがある。
フルトヴェングラーやワルターといった大指揮者は、19世紀の音楽の伝統を受けつぎ、マーラーやR・シュトラウスなどの響きのイメージの中で音楽を創っていた。
それに対し、18世紀のC.P.E.バッハの音楽はまったく別な世界である。音もべったり作ってはいけない。アーティキュレーションが重要で、音の頭・延ばし方・終わり方・次の音(または休符)を注意して作っていくと、まったく別な響きが得られる。
ラトルの演奏は、ところどころ素晴らしく、共感できる。
ジンマンの演奏は、おそらく最も速いものだろうが、合理的だ。
アーノンクールも、なかなか良い。
 
実際の演奏が、どの程度まで古楽風になっているのか、非常に興味を持って聴きに出かけた。
管弦楽の編成は、弦が10-8-6-6-4、管楽器はもちろん2管。
下手に第1Vn・第2Vn、上手にVa・Cbを配置するやり方で、高関健のもとでは対向配置を実践していたオーケストラだけに、もしかしたらあまり徹底したモダン・ピリオドではないのかもしれない、と予感した。
 
なお、昨年5月に左上腕骨と左大腿骨を骨折されたボッセ氏だが、椅子も用いず、終始元気に指揮しておられたので安心した。
 
序曲冒頭のトゥッティは音価を短めに取っており、やはりピリオド…と思ったが、ヴィブラートは排さず、自然に弾かせていたようだ。
一言でいえば、キビキビしたベートーヴェン。
 
交響曲でも、快速でキビキビした音楽は同様。
終楽章コーダに向けての追い込みでは、ホルンや木管を音を割り気味に強奏させ、迫力ある表現をとる。
 
目立ったのは、長い音符での音の減衰や、フレーズの中でのデクレッシェンドを多用し、清潔な美しさを表出していたこと。
例えば第3楽章のトリオ冒頭、木管がpで繰り返す和音をそれぞれデクレッシェンド。
ヴィブラートも控えめに使わせており、第2楽章展開部冒頭のppでは、神秘的な和音がくっきりと浮かび上がった。
 
休憩後の協奏曲では、独奏者のスタイルが前面に出て、ドイツ伝統の新古典的な演奏様式を聴くことになった。
デビュー当時の「お嬢様」イメージが強いショルツだが、実際にはけっこう大柄だったので目を見張った。
1969年生れというから30歳代半ば、既にベルリン室内管を10年間率いるからには、それなりに逞しい人なのだろう。
髪も短くしており、がっちりした肩に、引き締まった体型。
 
音楽も、所謂女流ふうのなよやかな媚や何か風変わりなことをする素振りは毛筋ほどもなく、堂々たる正攻法、ドイツ伝統のベートーヴェン。
第1楽章開曲早々は高音に少し硬さも聴かれたが、中低音の美しい音色と和音感覚をベースにどんどん調子を上げていく。
ヨアヒムのカデンツァなどは間然とするところなく弾ききった。
もちろん剛球一本ではなく、第2楽章後半で独奏Vnが新しい旋律を出すところなど、ゆったりしたテンポで実に美しい。
 
贅沢を言うとすれば、技術的・音楽的にもう一次元上に突き抜けて、心の底からの幸福感、更には神々しさをも顕現するような音楽であれば…といったところか。
華やかなスター奏者としては扱われていない人だが、実力は十二分、今度はブラームスの協奏曲あたりで聴衆を圧倒するところを聴いてみたいと思わずにはいられなかった。
 
アンコールはバッハ;ジーグ (無伴奏Vnパルティータ第2番より)
かなり急速なテンポで弾かれ、ちょっと技巧曲じみた感じがしたのは僻目か。
なお、休憩後、後半の演奏に入る前に、ボッセ氏のレクチャーがあった。大意、次の如し。
通訳は、いつものように美智子夫人。
 
ベートーヴェンがVn協を作曲したのは36歳の頃だが、今日はそれに近い時代の作品を3曲採り上げた。
序曲は、はじけるような力強さがみなぎる曲。
 
交響曲は、短めの曲だが、「ハイドンの105番」とも言える作風である。
作曲は1800年、まさに18世紀の様式の結晶となっている。
しかし、この最初の交響曲の中に、ベートーヴェンの大きな世界が、エッセンスとして入っている。
 
Vn協になると、作曲技法が進んでおり、第1楽章だけでモーツァルトやバッハの作品と同じくらいの長さがある。
古典派の範疇に収まってはいるものの、ロマン派の時代を予感させる、大きな構想がある。
特にオーケストラのトゥッティの大きさは、新しいものだ。
Vn独奏は、技術的にも難しいし、かつ、トゥッティを長い間、待たなければならないという苦しみもある(笑)。
私もこの曲は50回、60回と弾いてきたが、延々と待つのは辛いものだ。
第2楽章は、本当に美しく、心の奥底に届く音楽である。
ベートーヴェンがこの曲に取り組んでいた頃、「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いたことを思い出さずにはいられない。
彼は、耳の病気という困難を作曲を通じて克服し、音楽によって人々に希望を与えた。
第3楽章は、ツグミの鳴き声をモチーフにしている。
 
大阪センチュリー響とは初めての共演だが、2日間、良いリハーサルができた。
我々がすぐに理解しあえたことは、音楽に現れていると思う。
 
ショルツさんとは、17年ぶりの共演になる。
1988年のバッハ・コンクールで、受賞者の演奏会を指揮したのが私だった。
一昨日、17年ぶりに会って話をしたところ、彼女の夫君が私の昔の生徒であることがわかって驚いた。
彼女の楽器は夫君の父上のものを使っておられるのだが、実は私も50年来、知っている楽器である。

 

パブロ・カザルス(指揮) パウ・カザルス管 ほか
ベートーヴェン;交響曲第1番 & ブラームス;ハイドン変奏曲 ほか(EMI)
演奏会終了後、買い物へ。
棚を見渡していると、カザルスのSP音源の覆刻盤が出ているのに気づいた。
ロンドン響を指揮したブラームスは以前PearlレーベルからCD化されているが、ベートーヴェンは初覆刻の筈、これはこれはと購入したもの。
ベートーヴェン;序曲「コリオラン」(ロンドン響)
同;序曲「アテネの廃墟」(パウ・カザルス管)
をフィルアップ。
SP録音のベートーヴェンなら交響曲第4番はどうした、と言いたくなるが、CD1枚に収まらなかったのであろう。
(それにしても残念である。)
「コリオラン」と「ハイドン変奏曲」はPearl盤と聴き比べられるが、既発盤は針音豊かな(笑)SPの音色。原盤の状態が良くないのか、強奏時に歪みが感じられる。
今回のEMI盤は柔らかい音で聴き易いが、LP期にGRシリーズで出したときのマスターテープを基にしていると思われ、音の生々しさや解像度では物足りなさがある。
1920年代末の収録ゆえ、物理的な限界があるのかもしれないが、更に良質な覆刻が登場することを願って已まない。
ヴィレム・ファン・オッテルロー(指揮) ハーグ・フィル ほか
マーラー;交響曲第4番 ほか(RETROSPECTIVE)
先だって入手したフランク;交響詩「プシシェ」の記事へのコメントで、「最近CDで覆刻されたマーラーの4番(Retrospective)もオッテルローらしい佳演」と御教示いただいた。
それではと捜していたが地元の音盤店では見かけず、今日立ち寄った大阪・梅田の大型店でようやく発見、購入したもの。
第4楽章のソプラノ独唱はテレサ・シュティッヒ・ランダル
1956年5月、アムステルダムでの録音。モノラル収録だが、まずまず美しい音で覆刻されている。
ブラームス;アルト・ラプソディ(アーフェ・ヘイニス(A) エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム(指揮) コンセルトヘボウ管)をフィルアップ。
アンドレス・セゴビア(G)
「セゴビア・コレクション 第4巻 J.S.バッハ」(DGG)
「ギターによるバッハはセゴビアにとどめをさす。」と教えられたことがあり、ずっと気に懸かっていた。
あるとき「セゴビアのシャコンヌ」というWebpageを見つけ、「音はLPもCDもグラモフォン盤がベスト」(1954年再録音)という情報を得た。
DGGから出たCD4枚組のセットを買おうか買うまいか迷っているうちに店頭から姿を消してしまい悔やんでいたところ、それが分売されるという。
斉諧生としては、スペイン系のギター曲には当面関心がないので、バッハの1枚さえあればよい。まさに塞翁馬と言うべし。
収録曲は計15曲、まとまったものは上記シャコンヌ (無伴奏Vnパルティータ第2番より)無伴奏Vc組曲第3番だけだが、Vn・Vcの両無伴奏からの楽章が6曲含まれる等、たいへん楽しみ。
原盤は米MCA、録音は1952〜1968年に及ぶ。
 
次は「荒波を思わせる凄まじいスケールとアルペジオの迫力」でLPを凌ぐというSP音源(1944年録音)を捜さなければ…(苦笑)。

2月5日(土)

 

ロジャー・ノリントン(指揮) シュトゥットガルト放送響 ほか
ベートーヴェン;交響曲第9番(hänssler)
先だって中古音盤堂奥座敷 2004年の5盤に選んだツァハリアスとのP協全集がきっかけで、ノリントンのベートーヴェン;交響曲全集(新盤)に関心が向いている。
以前第3・4番第5・6番を入手したところで、全集セットが出たことからガックリきてしまい、動きが止まっていたのである。
まず某オークションで第9番が安く出品されていたので落札。
2002年9月、シュトゥットガルトのベートーヴェン・ザールでのライヴ録音である。
ヤーノシュ・ローラ(指揮 & Vn) フランツ・リスト室内管
ブラームス;ハンガリー舞曲集(仏ERATO、LP)
先月来日したフランツ・リスト室内管、大阪公演は都合がつかず聴きに行けなかったが、各地の公演では緊密なアンサンブルが好評だったようで何より。
1980年夏、仏ERATOに録音したブラームスがeBayに出ていたので落札してみた。
第1〜21番を収めており、弦楽合奏への編曲はハンガリーの作曲家フリジェシュ・ヒダシュ(Frigyes Hidas、1928〜)によるとのこと。
ヨルマ・パヌラ(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響詩「レミンカイネンとサーリの乙女」・「フィンランディア」(英DECCA、LP)
『レコード芸術』の昨年11月号にインタビューが掲載されていた、最近の北欧系俊英指揮者の共通の師、パヌラの代表盤。
FINLANDIA盤LPは架蔵しているが、初発の英DECCA盤も捜していたところeBayに出てきたので落札したもの。
シベリウス2曲にベルイマン;オーバードをフィルアップしている。
1968年の録音である。
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) フィルハーモニア管 ほか
バルトーク;舞踏組曲・P協第3番(英EMI、LP)
マルケヴィッチの未架蔵盤LPがeBayに出品されていたので落札。
P協の演奏者はアニー・フィッシャー(P) ロンドン響
両曲ともCDでは出ており、組曲はTESTAMENT盤、協奏曲はピアニストのセットもの(EMI)で聴くことができる。
この指揮者のバルトーク録音はこの2曲だけの筈で、特に組曲は黄金時代のフィルハーモニア管による録音(1954年)であり、ぜひLPを入手したかったもの。
ジャン・ロドルフ・カールス(P) アレクサンダー・ギブソン(指揮) ロンドン響
ディーリアス;P協 & ドビュッシー;P幻想曲(英DECCA、LP)
好きな指揮者の一人、ギブソンによるディーリアス録音ゆえ、以前から入手を心がけていたところ、eBayに安価で出品されたのを見つけたので落札したもの。
たしか協奏曲は単独でディーリアス作品を集めたCDに入っていたはず、あるいはドビュッシーもCD化されていたかもしれない。
マルP1970年とあるので、1960年代終り頃の録音であろう。
シベリウス・アカデミーQ
シベリウス;弦楽四重奏曲 イ短調 & 変ロ長調(芬FINLANDIA、LP)
アルト・ノラスが加わっている団体によるシベリウス若書きの四重奏曲集。
デジタル録音でCDは持っているのだが、LPがあるからにはやはり架蔵せざるべからず、ということになってしまう(苦笑)。
1984年10〜11月、フィンランド・ナーンタリの修道院教会で収録されたもので、世界初録音であった。
某オークションで落札したもの。

2月3日(木)

 

デニス・ラッセル・デイヴィス(指揮) リンツ・ブルックナー管
ブルックナー;交響曲第8番(ARTE NOVA)
D.R.デイヴィスのブルックナー、先に第4番が出ていたが、第2弾が店頭に並んでいたので購入。
前作同様、ノヴァーク第1稿(1887年版)による演奏というのが興味を惹く。
LP期には珍盤扱いだったがデジタル初期にインバル盤(TELDEC)が出て面目を一新し、最近ではティントナー(NAXOS)やフェドセーエフ(RELIEF)が採用しているところである。
2004年3月、リンツ・ブルックナーハウスでのライヴ録音。
ピエール・ブーレーズ(指揮) ほか
バルトーク;P協第1〜3番(DGG)
ブーレーズのバルトーク新録音、それだけでも注目盤間違い無しだが、独奏者と管弦楽の組み合わせをすべて違え、
第1番 クリスティアン・ツィマーマン(P) シカゴ響
第2番 レイフ・オーヴェ・アンスネス(P) ベルリン・フィル
第3番 エレーヌ・グリモー(P) ロンドン響
というからには聴かざるべからず。
特に昨年出たテツラフとのVnソナタ集(Virgin)が素晴らしかったアンスネスのバルトークに注目したい(同盤は野々村さんが中古音盤堂奥座敷 2004年の5盤に選んでいる)。
既にClassical CD Information & Reviewsさんにレビューが掲載されており、
ブーレーズは3曲のピアノ協奏曲のそれぞれに対して明快なビジョンを有していて,録音に当たっては,それぞれの作品に絶妙にふさわしいピアニストとオーケストラを起用していることに感心します。(略)これらの作品の演奏史上において画時代的名演といって差し支えないものです
と高く評価しておられる。
録音は2001年11月(第1番)、2003年2月(第2番)、2004年10月(第3番)。
スティーヴン・イッサーリス(Vc) メルヴィン・タン(Fp)
メンデルスゾーン;Vcソナタ第1・2番 ほか(BMG)
蒐集しているチェリストの一人、イッサーリスの未架蔵盤を中古音盤店で購入。
実は数日前に見つけていたのだが疾うに買っていると思って棚に戻したところ、念のため帰宅してから調べてみると、まだだった。フォルテピアノという楽器が苦手なので食指を動かさなかったのだろう。
標記2曲と協奏的変奏曲op.17無言歌op.109ほか小品1曲を収録している。
1994年1月、ロンドンのブラックヒース・コンサートホールでの録音。

2月2日(水)

 

久々にオーケストラの定期公演を聴きに出かける。大阪シンフォニカーの第98回定期で、会場はザ・シンフォニー・ホール。
大阪での平日19時開演は京都から参じるにはチト厳しく、何度か行きたい演奏会を逃していた。
今日は幸い早めに退勤でき、最も聴きたいプログラムを逃さずにすんだ。
すなわち、
シベリウス;交響曲第7番
猿谷紀郎;音の風韻II
シベリウス;交響曲第5番
という、シベリウスの後期交響曲2曲を採り上げるもの。
猿谷作品はオーケストラの委嘱新作とのこと。
 
ただ、事前に少し心配だったのは指揮者が山下一史氏という点。
北欧のオーケストラを指揮した経験が多いこと(ヘルシングボリ響マルメ響等)を買われたのかもしれないが、斉諧生の知るかぎり、この人は熱っぽい推進力が持ち味。
悪く言えば「煽り系」の人ゆえ、第1・2番あたりなら格別、後期作品に適合するかどうかは問題だと思っていた。
 
そうした先入主のせいとは思いたくないが、満足のゆかない結果となってしまった。
 
第7番は、弦合奏の響きが厚ぼったくなってしまっている(合奏の精度が低い)等、練度が低い印象を受けた。
弦の編成は14-12-10-8-6。
また、木管の性格的な音色を生かし切れておらず、金管の厳しい打ち込み(短く「ババッ」と吹き抜く部分)が意味を持たない等、斉諧生として「これぞシベリウスの音楽の醍醐味」という「ツボ」を外された感が拭えない。
 
特に全曲終結の直前、第1・第2Vnだけになって、全音符をクレッシェンドで弾き上げて、「Affettuoso」指定の絶唱を歌う部分。
ここで胸に沁みるような響きを奏でてもらえなかったのは、たいへん残念だった。
もっとも、斉諧生はシベリウス(とブルックナー)の演奏に関して「かくあるべし」が強すぎることは自覚しているので、その点は割り引いてお読みいただきたい。
 
また、この曲の終結は、けっして「閉じられる」ものであってはならず、解決しないまま消え入ってゆくもの、敢えて言えば「永劫回帰」の無限の世界へ溶けこんでいく趣を表現しなければならない。
非常に狭い考えといえば狭いのだが。
ここが満足できたのはベリルンド(指揮) ヨーロッパ室内管盤(FINLANDIA)のみ。
その点、当夜の演奏は、やはり「終止符を打つ」傾きを強く感じたと言わねばならない。
 
7番で失望したのが祟って、オーケストラはかなりよく弾いていた第5番の評価も、辛くなってしまう。
第1楽章最初の高揚で既に「煽り」傾向が感じられ、北欧の厳しい大自然を仰ぎ見る趣を失ってしまった。
ややあって長大なソロを吹くFgも、自然音ではなく人間の歌になっており、斉諧生のシベリウス演奏の理想とは食い違う。
楽章後半への入りや楽章終結も、騒ぎすぎというのが正直な感想である。
 
第3楽章の終わり近く、Vc以上の弦楽器が第2主題を奏ではじめ("Un pochettino largamente")、更にTrpが動機を反復しだすと("largamente assai")、Va以上の弦楽器が第2主題の前半を2度繰り返す。
ここでの浄福感こそがシベリウスを聴く喜びであり、音楽を聴く幸福である。
さすがにVnなど気持ちのこもった響きを聴かせてくれたが(コンサートマスターは森下幸路)、もっともっと…と思わずにはいられなかった。
 
なお、最後のTimpは、前打音を極力近づけて目立たなくする処理。
 
初演の「音の風韻II」は、オーケストラが色彩豊かな雲のようにたなびく中を、オーボエ独奏が官能的に歌い、ギターがそれに和す、という曲調(演奏時間20分ほどだったか)。
オーボエの美しい音色を堪能させてもらったが、ギターは見せ場(聴かせどころ)が乏しく、少々気の毒な感じがした。
 
なお、一言しておきたいのはプログラムの冊子に掲載された雑喉潤氏のシベリウス作品解説の酷さ。曰く、
第5番と第7番は、シベリウスの交響曲のなかでは、日本では演奏の機会のもっとも少ない2曲である。
統計的には第3・6番の演奏頻度が最も低い筈である。
ベートーヴェンの交響曲は、3・5・9と奇数ナンバーの作品が名曲とされるが、シベリウスは反対に2・4・6と偶数ナンバーの出来がよいといわれる。しかしこれはあまりに通俗的な評価にすぎず
第4・6番が通俗的に高く評価されているとは聞いたことがない。
7番を先に持ってきたのは、(略)演奏時間も約10分と短いからだろう。
一度でも聴いたことがあるのなら、約20分と書くべきだろう。誤植であることを祈りたい。

 

ロベルト・サタノフスキ(指揮) ポーランド国立歌劇場管 ほか
シマノフスキ;管弦楽付き歌曲集(KOCH)
シマノフスキは交響曲第4番Vn協第2番「神話」を中心に、関心を持っている作曲家。
当盤には、
「カスプロヴィチの詩による3つの断章」op.5
「ハーフィズの愛の歌」op.26
「お伽噺のお姫様の歌」op.31
「恋するムエジンの歌」op.42
を収めている。
必ずしも珍しいCDではないが、某オークションに国内盤仕様で歌詞邦訳が付いているものを見かけたので落札。
1986年、ワルシャワでの録音。
サイモン・ラトル(指揮) バーミンガム市響
ドイル;映画音楽「ヘンリー五世」(EMI)
高校時代、斉諧生は世界史の授業が大好きだったのだが、イングランド王ヘンリー5世というのは記憶にない。
調べてみると、1387年生れ1422年没、百年戦争中にアジャンクールの戦いで仏軍を大いに破ったが早世したためイングランドのフランス支配を確立するに至らず、その後数年を経て出現したジャンヌ・ダルクに戦勢を逆転されることになった。
史実よりもむしろシェイクスピア史劇の主人公として有名であり、Webで検索しても、戯曲かその映画化作品の情報ばかりヒットする(苦笑)。
当盤は、ケネス・ブラナーが監督主演した映画のサウンドトラック
某オークションを眺めていたときに出品されているのを見つけ、たしか何かの記事でラトルの隠れた名盤として紹介されていたように思い、落札したもの。
 
ところがその記事がどこにあったか思い出せず、書棚を掻き回しても見つからない(汗)。
 
録音データは示されていないが、マルPは1989年、ウェンブリーCTSスタジオでの録音とある。
なお、ブラナー以前にローレンス・オリヴィエが監督主演した同名の映画ではウォルトンが音楽を付けている。
彼の映画音楽分野での代表作として知られており、今も組曲版がしばしば演奏・録音される。

平成16年8月15日(日): 「提琴列伝」に和波孝禧を掲載。
平成16年1月4日(日): 「作曲世家」にルクー・ディスコグラフィを追加。
平成15年8月24日(日): 倭匠列伝指揮者・宇野功芳を掲載。
平成15年8月24日(日): 50万件アクセスを記念して、ページデザインを全面改訂。
平成15年5月24日(日): 「逸匠列伝」にユッシ・ヤラスを掲載。
平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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