音盤狂日録


1月31日(金): 

 

『NHK人形劇クロニクルシリーズ第4巻 辻村ジュサブローの世界〜新八犬伝〜』(NHKソフトウェア、DVD)
クラシック音楽とは関係がないが、涙が出そうなほど懐かしいTV番組がDVD化されたので購入。
ちょうど斉諧生が中学生の頃の番組で、毎日、午後6時30分からの放送に間に合うように帰宅した思い出がある。
そもそも当「斉諧生音盤志」を始めるにあたって参考にした「白龍亭」さんも、この番組『南総里見八犬伝』に親しまれたとのことであり、因縁の深さを感じる。
先だってネットサーフをしていて、ふと久しぶりに「新八犬伝をもう一度見ようよ!」に立ち寄ったときに、DVD化の情報に接し、発売日を待っていたもの。
当時、番組製作がVTRに移行した頃で、高価なテープを次の番組に使い回したために再放送もなく、NHKに残っているのは今回収録された第1回・第20回・第464(最終)回だけなのだそうである。
ところが初回と最終回はドラマ的にはあまり意味がなく、第20回は伏姫が息を引き取って八つの珠が飛散するところ。したがって、八犬士が活躍する場面はまったく含まれていない(涙)。
越後・小千谷の相撲大会で犬田小文吾に取り押さえられる暴れ牛が妙にかわいかったとか、里見義実邸の座敷に出現する「ニュース侍」の名前が「磯村なにがし」だったとか、妙なディテールが30年たった今も記憶に鮮明なのだ。
3月に発売されるという、東宝映画版『新八犬伝 芳流閣の決闘』のDVDに期待しよう。
なお、発売元の特集頁は→ここを押して
また、人形師・辻村寿三郎の公式Webpageは、→ここを押して

1月30日(木): 

 

井上道義(指揮) 新日本フィル
ブルックナー;交響曲第7番(EXTON)
マーラーやショスタコーヴィッチのスペシャリストとして定評のある井上道義がブルックナーを録音したというので吃驚。
ともかくも演奏を確かめてみようと購入。
正直申して、彼の弦の扱いにはあまり感心したことがないし、平成8(1996)年2月、京都市響での実演を聴いた感想は演奏会出没表にあるとおり、
重いだけで透明感がない。
一方、ブックレットのインタビューで指揮者が
僕自身はマーラーに非常に近いところにいるような気がしてますから、なおさら遠いところにいるブルックナーに憧れる。しかも不思議なことに、ブルックナーの音楽は僕の体のサイクルにはあっているの。僕はそれほど敏捷じゃないし、動きはヌーボーとしている方だから、あの音楽の重いリズムが合うんだよね。
と語っているのが興味深い。
2002年1月25日、オーチャード・ホールでのライヴ、ノヴァーク版使用とのこと。
この6年間に彼のブルックナーは、どう変化しただろう?
 
小林研一郎(指揮) 日本フィル
マーラー;交響曲第3番(EXTON)
小林のマーラー;第3は、↑井上のブルックナー同様、京都市響との実演を聴いたことがあり、こちらは逆に、大感動したものだ(平成5年10月11日)。
前の第2番「復活」と異なり、大好きな曲だけに、即購入。
2001年4月26・27日、サントリー・ホールでの収録。
 
クラウディオ・アバド(指揮) ベルリン・フィル ほか
ドビュッシー;夜想曲・組曲「ペレアスとメリザンド」 ほか(DGG)
これも大好きな「夜想曲」が入っているだけに買わざるべからず。
「ペレアス〜」は、エーリヒ・ラインスドルフが編んだ組曲版に基づく演奏会用組曲と表記されており、約30分。
独奏Flエマニュエル・パユによる牧神の午後への前奏曲をカプリング。
 
セルジュ・ボド(指揮) ルガーノ放送管 ほか
R・シュトラウス;交響詩「英雄の生涯」・二重協(FORLANE)
『レコード芸術』1月号の「海外盤試聴記」で紹介されていたCD。見れば買う曲の一つ、Cl&Fg二重協を収録しているので、すぐ捜しにかかり、海外の通販サイトにオーダーした。
ところがすぐに音盤屋の店頭に並び始めたので臍を噛んでいたところ、一昨日になってオーダー先から品切れとのメールが届いたので、勇躍、買いに走ったもの。
独奏者はファビオ・ディ・カゾーラ(Cl)とダニエレ・カラヴェルナ(Fg)、後者はオーケストラの首席奏者とのこと。
1998年5月28日及び1999年5月25日、ルガーノでの録音。
なお、オーケストラの名称は「スイス・イタリア語放送管」とするのが正式なようだが、標記は慣用に従った。公式Webpage(簡単なものだが)は→ここを押して。現在、アラン・ロンバールが首席指揮者のようだ。

1月29日(水): ↓21日(火)の項にペレーニのリサイタルについて記したが、マコの部屋に、「無私な宇宙の静寂の中で」と題して、同じ演奏会の感想が掲載されている。→ここを押して
 拝読して、マコさんが、ペレーニにふさわしい、穏やかな美しい言葉を綴っていらっしゃるのに深い感銘を受けた。ぜひお目とおしいただければと思う。


1月28日(火): 

 帰りに音盤屋を覗いて1枚購入、帰宅するとArs AntiquaからLPが届いた。

ロヴロ・フォン・マタチッチ(指揮) NHK響
ドヴォルザーク;交響曲第9番(Altus)
マタチッチのN響ライヴ! 買わざるべからず!!
1975年12月10日、NHKホールでの収録。もちろんNHK正規音源である。
トラックNo.2の8'30"付近にて一時音質の変化がありますが、マスターによるものですので御了承下さい。」との注記があるので何事だろうと思ったが、数秒程度、ヒスノイズのレベルが僅かに上がるという程度だった。
このレーベルからは同じ指揮者のブルックナー;交響曲第8番が出ると聞いていて楽しみに待っているのだが、そちらは発売が遅れているとのこと。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮) パリ放送響 ほか
「ドイツ舞曲集」(米ESOTERIC、LP)
レイボヴィッツの未架蔵オリジナルLPが安価にカタログに出ていたのでオーダー。もっとも1枚だけの配送なので、送料を含めるとそこそこの値段になったが…。
モーツァルト;6つのドイツ舞曲 K.506
ベートーヴェン;12のドイツ舞曲
シューベルト(ウェーベルン編);6つのドイツ舞曲
を収めている。
ウェーベルン編作を取り上げるあたり、「十二音音楽の使徒」レイボヴィッツの面目躍如というところだ。
オーケストラは、モーツァルトとベートーヴェンがパリ放送響、シューベルトがパリ・フィルと表記されている。どちらも正体は不明だが。

 今日届いたLPの情報をレイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。


1月27日(月): 

 Barnes & NobleからCDが届いた。

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) ニュー・フィルハーモニア管 ほか
チャイコフスキー;管弦楽曲集(Philips)
マルケヴィッチ・ディスコグラフィを整理しているとき、架蔵していないことに気づいた音源を、ともかく入手しようとオーダー。
CD2枚組のうち、マルケヴィッチの指揮は次の3曲。
幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」(ニュー・フィルハーモニア管、1967年6月録音)
幻想序曲「ハムレット」(ニュー・フィルハーモニア管、1967年9月録音)
序曲「1812年」(コンセルトヘボウ管、1964年9月録音)
このうち「ハムレット」がLP・CDとも未架蔵、「1812年」はCD未架蔵、「フランチェスカ・ダ・リミニ」はCDで架蔵済み。
その他、エリアフ・インバルベルナルド・ハイティンクの演奏が収められている。
 
シルヴィア・マクネアー(Vo) アンドレ・プレヴィン(P) デヴィッド・フィンク(Cb)
ハロルド・アーレン・ソングブック(Philips)
プレヴィンがピアノを弾いたジャズ・アルバム、特に最近のものは買うことにしている。
これは1995年の録音で翌年に国内盤もリリースされていたのだが、うっかり見落としていたことに気づき、オーダーしたもの。
あまりにも有名な「虹の彼方に」をはじめ、「降っても晴れても」など20曲を収録。

 今日届いたCDの情報をイーゴリ・マルケヴィッチ・ディスコグラフィに追加。


1月26日(日): 中古音盤堂奥座敷奧座敷同人 2002年の5盤が公開された。
 そこでも書いたが、重要な盤をかなり聴き逃しており、苦しい選盤になってしまった。また、結果としてドイツ系交響曲に偏ったのは、ちょっと心外。
 まあ、来年、「2003年の5盤」が公開されるときには、こういう言い訳を書かずにすむようにしたいものだ。

 POLYGROBE MUSICからCDが届く。ここはオーストリア・インスブルックの会社で、初めて利用する。
 例によって、いつもお世話になっているユビュ王の食卓で情報を得たもの。

ペーター・ヤン・マルテ(指揮) ユンゲ・エスターライヒッシェ・フィル
ブルックナー;交響曲第4番(ETHIC)
上記ユビュ王の食卓のリンク集を拝見していて、
チェリビダッケもびっくりの超スロー演奏、しかもめちゃウマ。必聴です!
とのコメントがあり、ブルックナーの必聴盤とあらば買わざるべからずとオーダーしたもの。
オーケストラ(英語流に言い換えれば「オーストリア・ユース・フィル」)は、1994年にユーディ・メニューインの肝煎で設立されたとのこと。
指揮者はオーストリア生れ、オルガニストとしてキャリアを始めたが(フリートリッヒ・ツェルハのアンサンブルにも在籍したとか)、1981年、チェリビダッケに出会って指揮者に転向。1987年にインドで「音楽の新しい次元」について悟りをひらいたという。
1996年夏、インスブルックのヴィルテン修道院聖堂でのライヴ録音。CDのジャケットに演奏風景の写真が掲載されているが、バロック様式の美しい教会である(外観の画像は→ここを押して、内部の動画は→ここを押して)。
CD2枚組で、楽章ごとの演奏時間は順に、21分59秒、17分01秒、11分46秒、26分51秒。例えば朝比奈隆(指揮) N響盤(2000年録音)が18分32秒、15分50秒、11分15秒、20分46秒だから、確かに遅い。
参考までに師チェリビダッケの1988年ライヴ(ミュンヘン・フィル)では、21分56秒、17分34秒、11分03秒、27分52秒。
 
ペーター・ヤン・マルテ(指揮) ユンゲ・エスターライヒッシェ・フィル
ブルックナー;交響曲第8番(ETHIC)
上記マルテのブルックナーがもう1点あったのでオーダー。
ユビュ王の食卓では「ブル8は後半息切れ」とのコメントがあったが、この曲を見逃すことはできない。
CD2枚組で、楽章ごとの演奏時間は順に、17分07秒、16分12秒、25分20秒、26分32秒。例えば朝比奈隆(指揮) 大フィル盤(2001年録音)が14分34秒、15分19秒、26分14秒、24分05秒だから、特に前半2楽章がかなり遅そうである。
1997年夏、ウィーンの中心、シュテファン大聖堂でのライヴ録音。

 演奏会出没表に火曜のコンサートを追加。

 一昨日購入したCDの情報をシュミット・イッセルシュテット・ディスコグラフィに追加。


1月24日(金): 

 

ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響
ドヴォルザーク;弦楽セレナード・管楽セレナード(DGG)
日ユニバーサルから昨年末に出た「名盤1200」という廉価盤シリーズに、シュミット・イッセルシュテットの未CD化音源が入っているのにようやく気づき(迂闊!)、あわてて購入。
1963年12月のハンブルク録音。
よくこんな地味な盤を再発してくれたと感謝すると同時に、どうせならついでにシュナイダーハンとのモーツァルト;Vn協第4・5番もリリースしてくれればよかったのに…と不平をこぼしたくなる(笑)。

1月21日(火): 

 本業は午後から休みを頂戴して、東京へ。
 半年ほども前から楽しみに待っていたミクローシュ・ペレーニ(Vc)のリサイタル(トッパン・ホール)である。
 都合で午後6時半に東京駅に着く「のぞみ」に乗車することになったため、新幹線が雪で遅れないか、中央(総武)線が人身事故で止まらないか等々、冷や冷やしたが、結果としてはすべて無事、午後7時の開演数分前にはホールに到着できた。
 会場で売っていたCDは残念ながらシューベルト(DECCA)とコダーイ(HUNGAROTON)のみ、驚くような収穫とはいかなかった。

今日の曲目は、
バッハ;無伴奏Vc組曲第3番
ブリテン;Vcソナタ
マルティヌー;ロッシーニの主題による変奏曲
コダーイ;無伴奏Vcソナタ
というもの。
その筋には名声歴々たる人だけにチケットは早々に完売したらしい。
とはいえホールの座席数は僅かに408。どうして複数回のリサイタルを開けないのであろうか?
 
さて、開演。
ペレーニ師は、いつもどおり、うつむき加減に訥々と舞台中央へ進み、ちょっと不器用そうにお辞儀をされる。
その風体物腰は、教学に秀でたやんごとなき高僧というより、弊衣に草鞋履きの托鉢僧のごとし。
 
バッハは、これまたいつもどおり、神品と讃えるべき演奏であった。
とりわけサラバンドにみなぎる心の歌や、美しい弱音で奏されたブーレ IIの自然な哀しみが、胸をうった。
 
普通のチェリストなら、例えば弓を返すときに(特に根元で)、ちょっと雑音が出る。
優れた奏者なら、それが演奏の「熱」に聴こえることもある。
ペレーニの場合は、その雑音が、まったく発生しない。弓のどの場所でも、完全に美しい音を維持している。
そういう困難なことを、いともやすやすと、何気なくやってしまう。
 
バッハの音楽とは何だろう? ペレーニの完璧な演奏を聴きながら、そんな考えが頭をよぎった。
 
バッハはしばしば楽器を替えて演奏され、ジャズにアレンジされることもある。それでいて、常にバッハでありつづける、まことに強靱な音楽。
しかし、その一面、これほど傷つきやすい音楽もないかもしれない。
ほんのわずか、チェリストが力んで音を汚しても、バッハの至純さが損なわれる。
ほんのわずか、チェリストが山っ気を見せても、バッハの至純さが損なわれる。
 
バッハとは、音楽の至純なかたちではあるまいか。
ペレーニの技術的な完璧さと無私の音楽性のみが、その至純さを聴き手に提示しうるのではなかろうか。
 
ブリテンは、比較的演奏機会の少ない曲だろう。
東京では先だってウィスペルウェイが弾いたらしい。
斉諧生は、先日来、架蔵のヨーヨー・マ盤で、慌てて「予習」した程度。正直申して、まだ曲が把握できていないのがお恥ずかしい。
 
5楽章からなる曲の中心、第3楽章「エレジア」は、先のバッハの「サラバンド」と同じく、テンポが遅くなったり音が弱くなっても、音楽はまったく緩みを見せず、かえって静寂の中に深い意味と緊張をみなぎらせる
とりわけ、楽章の中途あたり、それまで低音弦で歌っていたチェロが初めてA弦の高音を奏でたときの、強い訴え! また、低弦の開放弦でppを弾く美しさ!
そして、第4楽章「マルチア」終結部のハーモニクスの連続が、なんと軽やかにかつ完璧に演奏されたことか!
この技術的高み、素人目にさえ、舌を巻いても肝を潰しても追いつかないものであることは明々白々。圧倒された。
 
ただ、第1楽章は、もっと鋭さや激しさがあってもよかった。その副題「ダイアローグ」のとおり、ピアノとのぶつかり合いがあってしかるべきだったかもしれない。
この曲は、もう少し音盤など聴きこんでみたいもの(例えば初演者ロストロポーヴィッチと作曲者の共演盤など)。
 
ここで休憩だったが、もう、前半だけで堪能した。
見かけた知人に「このあと、まだ2曲も聴けるなんて…!」と言ってしまったほど。
 
10分もかからない小品マルティヌーでは、冒頭、ロッシーニ主題を弾むようなフレージングで提示、濃厚な音楽に圧倒された。
きわめて技巧的な書法なのだが、それをいとも軽々と、スポーティに楽しむがごとき演奏。
中間部の緩徐な変奏も、意外とあっさりしていた。
 
ひょっとしたら、次のコダーイに向けた準備運動だったのかもしれない。
 
実演でも3回目になるコダーイだが、これまでで最高の達成。
演奏至難の曲の筈だが、ペレーニは余裕をもって弾きこなす。
過去2回では、第3楽章あたり、さすがに厳しそうな様子も窺えたのだが、今日は毛ほども隙を見せない。
技術的な余裕が、音楽をどんどんふくらまし、どんどん大きくしてゆく。
 
この楽譜から、超絶技巧の展示ではなく、溢れるような音楽をホール一杯に拡げることができるのは、古今東西、ペレーニただ一人ではあるまいか。
民族への讃歌、望郷の思い、悲しみ、あるいはハンガリー平原の夜を吹きすさぶ風。
ちょっとバルトーク;弦楽四重奏曲第4番を連想した。
 
いやもう、とにかく筆舌に尽くしがたい、奇跡のような音楽であった。
そのままライヴ録音しても、あらゆるコダーイ演奏を霞ませるものになったに違いない。
 
斉諧生は、コダーイの巨大さに打ちのめされて茫然としてしまい、ペレーニがアンコールを弾きはじめても腑抜けたまま。何も耳に入らないに等しかったことを告白する。
それよりも、ただただ、彼と彼の音楽の前にひれ伏し、感謝の念を捧げたかった。
 
いちおう曲目を記しておく。
メンデルスゾーン;無言歌(ニ長調作品109)
バッハ;アルマンド(無伴奏Vc組曲第1番より)
前者は特に良かったらしい。
 
毎日毎日、ただペレーニのチェロだけを聴いていたい。
月曜から土曜まで、バッハの無伴奏を順に1曲ずつ。
日曜にはコダーイの無伴奏を。
それ以外に音楽はいらない。
 
ずいぶん大袈裟と思われるかもしれないが、彼の実演には、そう信じこませるものがある。

1月19日(日): 

 今年初めてのコンサートへ行く。ザ・シンフォニー・ホールズデニェク・マーカル(指揮)プラハ響の来日公演である。
 もっとも斉諧生のお目当ては、ソリスト長谷川陽子さん。

今日の曲目は、
スメタナ;モルダウ
ドヴォルザーク;Vc協
ムソルグスキー(ラヴェル編);展覧会の絵
というもの。
長谷川さんの演奏会に通い出し始めてから数年になるが、チェリストの1枚看板のはずのドヴォルザークは、実は一度も聴いたことがない。いよいよ聴けるというので非常に楽しみである。
 
スメタナでは、管楽器の美しいソロや、弦合奏のずっしりした響きを堪能。日本の聴衆にとってはチェコ・フィルなどの陰に隠れがちな団体だが、実力は十分であろう。
問題は指揮者で、最後に高揚するところなど、賑やかな音響が未整理に提示されただけに終始したのは、彼の責任ではないか。
また、これは斉諧生個人の嗜好の問題だろうが、この指揮者のクネクネした身振り手振りが、どうにも気持ち悪く、なるべく指揮者を見ないようにしていたものである。
 
赤いドレスの長谷川さんが登場して、いよいよ期待のドヴォルザーク
結論から書くと、期待に違わぬ名演で、斉諧生が聴いた長谷川さんのコンサートの中でもベスト3に入るものとなった。
冒頭こそ少し硬さを感じさせたが、それもすぐに解消、伸び伸びと、彼女の美質である丁寧で力強い歌いこみを発揮し始めた。
音程も安定しており、弱音の美しい響きは、これまで聴いたことのない水準に達した。
どこがどうというよりも、ドヴォルザークの音楽が本当に素晴らしい…と感じさせる演奏、曲の良さを120%表現し得ていた演奏ではなかったか。
敢えて、特に印象に残った部分を書き記せば、
第1楽章展開部、Molto sostenuto になって "molto espressivo e sostenuto" の指定がある部分(224小節以下)では、大きくテンポを落とし、まさにエスプレッシーヴォの味わい。胸をうたれた。
第3楽章で主題を提示したあと高弦の技巧的なパッセージ(49小節以下)のフレージングは胸のすく気っぷの良さ、また、終結前のピアニッシモの歌の美しかったこと!
オーケストラもよく歌い、独奏を盛り立てた。
マーカルは、各奏者を泳がせるというか、各パートのソロを際立たせる方向でリードしていく指揮者のように感じた。
Hrnなど、全体から浮き上がりそうになるほどに、ソリスティックな吹奏。
客席の反応も非常に熱のこもったもの。
残念ながら、ソリストのアンコールは、無し。
 
「展覧会の絵」は、上記のマーカルの特質が前面に出て、かなり派手な、あるいは多少品のない演奏になった。
オーケストラは、長いツアーの疲れも見せず、非常な好演。金管など、圧倒的な吹奏を聴かせた。
曲が曲なので、まあ、そういうアプローチでも楽しめないことはない。
それでも、終曲「キエフの大門」で、最初の方ではシンバルなど打楽器を抑えておいて、最後の最後ではじめて最強打させ、打楽器の音響だけで終結の高揚を作りあげる、あざといやり方には、どうにも反発を感じずにはいられなかった。
 
アンコールには、ドヴォルザーク;スラヴ舞曲第15番J・シュトラウス;ピツィカート・ポルカ

 一昨日届いたCDの情報を、ステーンハンマル 作品表とディスコグラフィイーゴリ・マルケヴィッチ・ディスコグラフィに追加。

 演奏会出没表に今日のコンサートを追加。


1月18日(土): 先週末に引き続き、中古音盤堂奥座敷同人による「2002年の5盤」の選定作業。
 明日19日が締切だが、別な予定が入っているので、今日で執筆を終了。
 公開期日は未定ですが、掲載されれば、こちらでもお知らせいたします。<(_ _)>


1月17日(金): 

 

コリン・デイヴィス(指揮) ロンドン響
ブルックナー;交響曲第6番(LSO自主製作)
1,000円強の驚異的な廉価で販売されているロンドン響の自主製作シリーズの新譜が出ていた。
前回の第9番に続くデイヴィスのブルックナー。
正直申して、第9番や第6番から振り始める人というのはブルックナー指揮者よりもマーラー指揮者に多い気がする(バーンスタインは第9番のみ2回も録音したのが好例)。
若干の疑問を感じつつも、先入観を排して聴くべきであろうと購入。
「ハース版」と表記されているが、この曲に関してはハース版とノヴァーク版に差異はない。
2002年2月19〜20日、ロンドン・バービカンでの録音。いつもどおり名手トニー・フォークナーが録音を担当している。
 
アレクサンドル・ドミトリエフ(指揮) スタヴァンゲル響
ドビュッシー;夜想曲 & ラヴェル;組曲「マ・メール・ロワ」 ほか(VICTORIA)
北欧音楽MLでお薦めいただいたCDがノルディックサウンド広島から届いた。
一見、ノルウェーのマイナー・オーケストラをロシアの指揮者が振ったフランスものという、ミス・マッチのようだが、実はとんでもない名演だという評判なのでオーダーしてみた。
標記2曲以外にラヴェルの高雅で感傷的なワルツ道化師の朝の歌をカプリング。
1993年6月、スタヴァンゲル・コンサートホールでの収録。オーケストラの公式Webpageは→ここを押して
 
ナターシャ・コルサコワ(Vn) ウルフ・クラウゼニッツァー(指揮) シュロス・ヴェルネク室内管
モーツァルト;Vn協第1・5番(BALTHASAR)
いつもお世話になっているユビュ王の食卓さんのリンク集を眺めていて、CD Discoveryというオンライン・ショップの紹介文、
オランダの一風変わったCDショップ。基本的に店がチョイスした十数点のディスクのみを販売するというスタイルのようだ。
に興味を惹かれて、リストを眺めてみたところ、多くは古楽系のCDなのだが、クラシカルなレパートリーでは、この盤が目に留まった。
試聴してみたところ、独奏Vnの落ち着いた音色が気に入ったのでオーダーしてみた。送料込みで2,200円強、まずまずの値段だろう。
独奏者はまだ若い女性で、公式Webpage(→ここを押して)によれば、父親はアンドレイ・コルサコフ、祖父もモスクワ放送響のコンサートマスターという三代続いたヴァイオリニストの家系に生まれた人だそうな。
ギャラリーのページには日本でのリサイタル・ツアーでの写真も掲載されているが(→ここを押して)、いったいいつ来ていたのだろう?
オーケストラは、ドイツ・バイエルン地方のローカルな団体の模様。公式Webpageは→ここを押して
 
V.A.
「スウェーデンの舌」(CAPRICE)
妙なタイトルだが、副題を「合唱団のアンソロジー 1900〜1950年」という4枚組。
商業用の録音やスウェーデン放送の録音など127曲の中に、ステーンハンマルの音源が3曲分(!)含まれているのでオーダーしたもの。
北の国(全メデルパッズ合唱連合、1936年4月録音)
3つの無伴奏合唱曲(モーエンス・ヴェルディケ(指揮) スウェーデン放送合唱団、1945年3月録音)
スヴァーリエ(ルドヴィク・シードベリ(指揮) スウェーデン合唱連合、1947年12月録音)
例によって300頁ほどの浩瀚なブックレットが附属しているほか、「エーリク・エーリクソン室内合唱団とそのルーツ」と題したボーナスCDがあり、合唱の神様エーリクソンと手兵のデビュー・コンサート(1946年3月11日)の録音などを収録している。
これはノルディックサウンド広島から。
 
ソフィア・セーデルベリ・エーベルハード(指揮) スヴァンホルム・シンガーズ
「ロマンス」(自主製作)
これもノルディックサウンド広島から。
1999年宝塚国際室内合唱コンクールでグランプリに輝き(→ここを押して)、2001年に来日公演を行った(→ここを押して)男声合唱団の自主製作盤である。
合唱団の名前は、スウェーデン出身の高名なワーグナー・テノールセト・スヴァンホルムに由来する。合唱団の創設者、エヴァ・ブーリンが彼の娘であることにちなんだものという。(詳しくは→ここを押して)
グリーグシベリウスドヴォルザークコダーイプーランクRVWレーガー等々、ヨーロッパ各国の美しい小品を24曲、収録している。
斉諧生にとっては、ステーンハンマル;スヴァーリエが含まれているのがポイントで、それゆえにオーダーしたもの。
なお、合唱団の公式Webpageに日本語ページがあるのに吃驚。メンバーの一人(もちろんスウェーデン人)が作っているらしいので、また驚愕。(→ここを押して)
 
ヘレーナ・ドーセ(Sop) ほか
「ヨェーテボリ、ストックホルム、マルメ・ライヴ」(Bluebell)
これもノルディックサウンド広島から。
上記2枚と同様、ステーンハンマル作品を収録しているのでオーダーしたもの。
シクステン・エールリンク(指揮) ヨェーテボリ響の伴奏で、森の中で夏至祭前夜にリボンを結ぶ女の子の2曲を歌っている(1977年8月24日、ヨェーテボリ・コンサートホールでのライヴ)。
独唱者は1946年生れ、1971年に「アイーダ」のリハーサルでビルギット・ニルソンのスタンド・イン(代役)を務めたところ評判になってデビューが決まったという。
ストックホルム歌劇場以外でも、グラインドボーン、コヴェント・ガーデン、サン・フランシスコ、フランクフルトなどで活躍し、フィオルディリージからジークリンデまでを持ち役にしていたとのこと。

1月15日(水): 

 

ピエール・モントゥー(指揮) ロンドン響
シベリウス;交響曲第2番 ほか(DECCA)
モントゥーの名盤の一つだが、迂闊なことに英盤CDがあるとは知らなかった。
斉諧生が輸入盤LPに手を出し始めた頃、この演奏の仏廉価盤を買った。再生してみて、第2楽章冒頭、低弦が刻むピツィカートの豊かな響きに驚愕した。
これが1950年代末、四半世紀(当時)も前の音か、やはり輸入盤で聴かなくては…等々と痛感。音盤狂への道を歩む最初の一里塚となった記念すべき音源なのである。
カプリングはエルガー;エニグマ変奏曲、こちらは既にDECCA LEGEND盤で架蔵済み。
某Webpageのキリ番到達記念プレゼントに応募したところ、幸い倍率が低かったようで、目出度く当選したもの。Webmasterに厚く御礼申し上げます。<(_ _)>
 
クララ・ハスキル(P) イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) コンセール・ラムルー管
モーツァルト;P協第20・24番(Philips)
マルケヴィッチ・ディスコグラフィを作っているとき、この高名な演奏を、LPでもCDでも架蔵していないことに気がついて、恥ずかしい思いをした。
その他にも手元にないCDがあり、それらと合わせてCrotchetにオーダーしたのだが、他は品切れで、これだけが納品されたもの。
もっとも送料含めて1,800円弱だったので(英国系ショップは概して送料が安価)、そんなにもったいないわけではない。

1月14日(火): 

 

ピエール・バルトロメー(指揮) リエージュ・フィル
ビアラン;管弦楽曲集(Cypres)
ビアランは、先だって同じレーベルから出ているP五重奏曲を聴いてなかなか面白かった。
同じレーベルから管弦楽曲集も出ているというのでネット通販でオーダーしようかと思っていたところ、地元の音盤屋のワゴンセールに出品されており、格安で入手できた。(^^)
収録曲は次のとおり(邦題は斉諧生の試訳)。
英雄詩(1907/11)
ワロン狂詩曲(1910)
組曲「オリエント物語」(1909)
なお、「ワロン」はベルギーのフランス語地域の称である。

1月13日(祝): 現在、中古音盤堂奥座敷同人による「2002年の5盤」の選定作業に取り組んでおります。あれこれ聴き直したり聴き比べたりしておりますが、結果とコメントは、そちらが公開されたあかつきに御覧いただくこととして、今日のところはお許しくださいませ。<(_ _)>


1月9日(木): 

 

ヨハネス・ソマリー(指揮) イギリス室内管
グリーグ;組曲「ホルベアの時代から」 & ブリテン;シンプル・シンフォニー ほか(VANGUARD)
ふと立ち寄った音盤屋のワゴン・セールで、VANGUARDレーベルが大量に並べられていた。そのうち曲目的に興味深い1枚を購入。
標記2曲以外にヴィレン;弦楽セレナードグリーグ;「過ぎ去りし春」を収録している。
ブリテンのみ1973年、他は1968年の録音。
 
ナタン・ミルシテイン(Vn)
バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(DGG)
言わずとしれた名演奏、既にCDで架蔵していたが、ORIGINALSシリーズでリマスタリングされた2枚組が格安で提供されていたので、音質改善に期待して購入。
既架蔵盤(423 294-2)と比較試聴してみた。やはり新盤の方が、音色の深み・音の自然な伸び等で旧盤を上回っている。
 
ヒロ・クロサキ(Vn) ウィリアム・クリスティ(Cem、Org)
ヘンデル;Vnソナタ集(Virgin)
愛惜佳曲書ニ長調ソナタを掲げたヘンデルのVn作品集の新譜が出た。
演奏者の顔触れに期待して購入。この2人のCDはこれまでERATOから出ており、今回、Virginからリリースされたのには少し驚いた。
ト長調 HWV358ニ短調 HWV359aイ長調 HWV361ト短調 HWV364aホ長調 HWV370ニ長調 HWV371イ長調 HWV372 の7曲を収録している。
このうちHWV358と361で、クリスティはポジティヴ・オルガンを用いている。
2002年9月、パリでの録音。
なお、コピー・コントロールCDであると表示されている。PCのCD-ROMドライブに入れてみると、はたして専用プレーヤーが起動して再生された。

1月8日(水): 

 チェコの通販サイトMusica BonaからCDが届く。ここは Supraphon、Panton などチェコのレーベルが充実しており、通常の航空便であれば送料無料。

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) チェコ・フィル ほか
ケルビーニ;レクイエム ニ短調 ほか(Supraphon)
マルケヴィッチ・ディスコグラフィを作っているとき、Webを検索していて見つけたCD。
DGGから出ているのと同じ音源で、共同製作だった関係から両方のレーベルからCD化されたものであろう。
実は、カプリングの交響曲ニ長調序曲「メデア」もマルケヴィッチの指揮かと勘違いし、未架蔵音源発見と勢い込んで発注したのだが、そちらはプラハ室内管が指揮者抜きで演奏したもの。
音質的にはOIBPマスタリングのDGG盤が優れており、結局、データ的な意味しかないことになってしまった。
録音日がDGG盤では「1962年12月」とだけ表記されていたのが「12月17〜21日」とはっきりしたのが収穫…といっても負け惜しみか。(苦笑)

 上記CDの情報をイーゴリ・マルケヴィッチ・ディスコグラフィに追加。


1月7日(火): 

 スウェーデンの通販サイトSkivhuggetからCDが届く。

ヤン・ルングレン(P) ほか
「プレイズ・ザ・ミュージック・オブ・ジュール・スタイン」(SITTEL)
斉諧生御贔屓のジャズ・ピアニスト、ルングレンの新譜が出ているという情報に接し、レーベルの公式WebpageからリンクされていたSkivhuggetでオーダーしたもの。
ジュール・スタインという作曲家について、実はまったく知らなかったのだが、ブロードウェイ・ミュージカルやハリウッド映画の音楽でずいぶん活躍した人だそうである。
"Time after Time"、"I Fall in Love too Easily"、"The Things We did Last Summer" など11曲を収録。
5曲はピアノ・トリオのみ、残りは曲に応じてセシリア・ノービー(Vo)、マーク・マーフィー(Vo) 又はエリック・アレクサンダー(Ten-Sax)を加えて演奏している。
ゲストのうちセシリア・ノービーは、かねて美声の歌姫との評判を耳にしている人なので、期待したい。
2002年2〜9月の録音。

1月5日(日): 

 ポーランドの通販サイトVivid.plから、待ちかねていたCDが届く。ここは、いつもお世話になっているユビュ王の食卓さんで教えていただいたところ。
 決済方法が少し変わっているが、掲示板に丁寧な御教示がある。→ここを押して

カジミシュ・コルト(指揮) ワルシャワ・フィル ほか
ベートーヴェン;交響曲全集(CD ACCORD)
ポーランドの実力派、コルトのベートーヴェン。
昔、CANYONから出た「展覧会の絵」(宇野功芳師推薦盤であった)以来、気になっている指揮者である。
手兵ワルシャワ・フィルを振ったベートーヴェン全集があると、これまたWOODMAN@ユビュ王の食卓さんから教えていただき、ずっと捜していたもの。
上記のようにポーランドの通販サイトを紹介していただいたのが昨年夏、一度は発送されたが途中で紛失したらしく届かなかった(代金は返金)。
再度オーダーしたら、どこに問題があるのか、オンライン決済システムにつながらず、指をくわえて画面を眺める羽目に。(T_T)
ようやく先月下旬に復旧(?)して決済が完了、ほとんど半年がかりで手元に届いた。
…そうこうしている間に、輸入代理店が取扱いを始めたらしく、タワーレコードあたりの店頭に並ぶようになったのだから世話はない(苦笑)。価格も、送料を含めると、ほとんど同額。
 
1994年3月から1997年12月まで、足かけ4年にわたって録音されたもので、CD5枚に交響曲9曲と序曲「エグモント」序曲「レオノーレ」第3番を収めている。
今、記事を書きながら聴いているが、いかにもミッテル・オイローパ(中欧)といった渋い音色と、古楽器派アプローチに背を向けた雄大な音楽づくりが素晴らしい。録音も優良。店頭価格も非常に安価なので、ぜひ広く聴かれてほしいディスクである。
そして、これを機に、いつもショパンのコンチェルトばかり演奏させられている彼らが、ベートーヴェンやシマノフスキルトスワフスキといった*本来の*レパートリーで来日公演を行えるようになることを期待したい。
このディスクの存在から入手方法まで、親切に御教示いただいたWOODMAN@ユビュ王の食卓さんに、この場を借りてあらためて感謝申し上げる。<(_ _)>
 
ユベール・スダーン(指揮) ザルツブルク・モーツァルテウム管
ブルックナー;交響曲第4番 ほか(VFMO)
ここからは、年始挨拶の帰りに立ち寄った音盤屋の半額ワゴン・セールで購入したCD。
オーストリア放送協会音源をモーツァルテウム管の友の会(Verein der Freunde des Mozarteum Orchesters Salzburg)が製作したCDで、3年ほど前に出回っていたもの。
当時、結構な値付けだったのでハンス・グラーフ(指揮)ブルックナー;第8番しか買わなかった。
その後、スダーンがブルックナー指揮者として注目されてきたため、嗚呼あのとき買っておけば…と思っていたところ、ひょんなところで邂逅し(しかも半額)、千載一遇と購入したもの。
1998年8月21日、フェルゼンライトシューレでの収録、すなわちザルツブルク音楽祭の実況録音である。
ノヴァーク第2稿(1878/80年、最も一般的な版)を使用。スダーンの同曲にはメルボルン響盤(ABC)もあった。
CD2枚組で、1枚目には同日に演奏されたヴィンベルガー;予感(1994)を収録。作曲者はモーツァルテウム音楽院指揮科の教授だった人だそうである(→ここを押して)。
 
ミッコ・フランク(指揮) スウェーデン放送響 ほか
フェーンストレム;交響曲第6番 ほか(PHONO SUECIA)
これも3年ほど前に出たCDで、ミッコ・フランクのデビュー盤となったもの(録音当時18歳!)。
当時、北欧音楽ファンの間で、ずいぶん話題になったのだが、曲目のマイナーさなどで買いそびれていたところ、半額セールで見つけたのを機に、ようやく購入。(^^;
同じ作曲家の作品2曲がカプリングされている。すなわち、
Flと女声合唱のための小協奏曲(指揮はフランク)
「気まぐれな吟遊詩人」(ステファン・ソリュオム(指揮))
ソリュオムも、フランクと同じ1979年生れ、録音当時20歳であった。
 
ジェフリー・テイト(指揮) ロッテルダム・フィル ほか
メンデルスゾーン;「真夏の夜の夢」(全曲)(EMI)
劇音楽のみならず、台詞だけの部分も含めて戯曲全体を収めた全曲盤である。
クレンペラーの名演(EMI)に接して以来、大好きな曲なので、ぜひ全曲盤も聴いてみたいと思っていた。
とはいうものの、CD2枚組の値段にちょっと買いそびれているうちに店頭から姿を消し、音楽だけを編集した1枚ものしか見かけないようになってしまい、臍を噛んでいた。
半額でオリジナルのセットものを見つけたからには買わざるべからず。
独唱はリン・ドーソン(Sop)、スザンヌ・メンツァー(M-S)、合唱はロッテルダム・フィルハーモニー音楽芸術合唱団
台詞はピーター・ホール演出によるピーター・ホール劇団が担当。

1月4日(土): 新年に当たり、トップページに山本紅雲の「鯛」を、当ページに「未」を掲示。

 音盤狂昔録平成14年12月分を追加。


1月3日(金): 

 今年の「初荷」はアリアCDさんから。もっとも大晦日に来ていたものの再配達ではあるが。

宇野功芳(指揮) アンサンブルSakura
モーツァルト;交響曲第41番 & ブラームス;交響曲第1番(自主製作)
初荷が、えらくまた「濃い」ものになってしまった。(苦笑)
このアマチュア・オーケストラとの演奏は、いずれもとうてい宇野師の名誉にならないものだが、ともかくも師の書籍音盤は全点蒐集と思っているので買わざるべからず。
2002年7月6日川口総合文化センター「リリア」音楽ホールでのライヴ録音。
プロ・オーケストラとのシリーズ再開を期待したいのだが、もう無理なのだろうか?
 
エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮) ロシア国立響
マーラー;交響曲第6番(SAISON RUSSE)
マーラーに大音響的快感や刺激を求める方は必聴の世界最強の「音響」、スヴェトラのマーラー・チクルスの最高傑作」(@はやしさん)とされる1枚。
一度聴きたいと念願していたのだが、うかうかしている間に入手難となっていたところ、ようやく入荷するというのでオーダーしたもの。もっとも店頭には既に並んでいるのだが。
1990年、モスクワ音楽院大ホールでの録音。

1月1日(水): 斉諧生家では年末年始に小旅行をする慣しだが(正月準備から逃避するためである)、今回は小型アクティブ・スピーカーを持参し、聴き比べを行ってみた。元旦の午後、宿近くの神社に詣でたあとのことである。

 武満 徹;弦楽のためのレクイエム10種聴き比べ

「弦楽のためのレクイエム」は、武満徹の出世作。作曲の経緯について、彼は次のように語っている。
(以下、引用はすべて立花 隆「武満 徹・音楽創造への旅」『文學界』1992年6月号〜98年5月号から)
特にその頃は、病気(注)が重くて、自分でもいつ死ぬかわからないと思ってましたから、死ぬ前にどうしても一曲作りたいと思っていました。ちゃんとした作品を一曲も書かないで終っては、死んでも死にきれないという思いでした。
(斉諧生注、肺結核)
ある日ふと、レクイエムを書きたいと思ったんですね。やはり、毎日、自分の死と向き合っているような生活を送っていたからでしょう。自分のためのレクイエムを書こうと思ったんです
早坂さん(注)の死を聞いて、これはレクイエムだと、早坂さんへのレクイエムであると同時に、自分自身のレクイエムであるとはっきりとらえて、書きだしたわけです
(注、早坂文雄。簡単な紹介は→ここを押して。)
2年がかりで書き上げられたその作品は、1957年6月20日に上田仁(指揮)東京交響楽団により日比谷公会堂で初演された。
当日のプログラムは、冒頭に武満作品、そのあとに
ルーセル;小管弦楽のための協奏曲
シューベルト;交響曲第5番
ラフマニノフ;P協第3番
というもの。
初演時の評判は例によって芳しいものではなかったが、翌々年に来日したストラヴィンスキーがテープで日本の現代音楽を次々と聴いたとき、
この音楽は実にきびしい(intense)、全くきびしい。このようなきびしい音楽が、あんな、ひどく小柄な男から、生まれるとは
と激賞したことから一挙に評価が高まり、作曲家自身も国際的な名声を得ることになった。
 
以下、録音年代順に。
森 正(指揮) NHK響(小学館)
透明感に欠ける演奏で、音が不協和のダンゴになってしまっている。音程も疑わしい箇所が多い。
それなりに緊張感や思い入れが感じられなくもないが、唯一の録音だった時期はともかく、今では歴史上の価値を残すのみではなかろうか。
なお、ストラヴィンスキーが聴いたのは、この演奏のテープだったはずだそうである。(録音;1958年、演奏時間;8分34秒)
 
岩城宏之(指揮) NHK響(KING)
この録音で初めてまとまりのある演奏が得られた。ストラヴィンスキーの評価以来、コンサート等で上演される機会が急増したというから、その成果か。
fpの強調や、独奏パートのたっぷりしたヴィブラートや表情など、「熱い」演奏である。上述した「自分自身のレクイエム」という作曲者の思い入れに傾斜した解釈であろう。
一方、パート間のバランスに問題があり、「メロディ+伴奏」という図式に聴こえるのが難。
また、フラジョレットやスル・ポンティチェロといった特殊奏法では、音色の奇怪さのみが強調され、武満が本来意図した独特な美しい響きまでは出ていない。(録音;1961年1・4月。演奏時間;8分56秒)
 
小澤征爾(指揮) トロント響(BMG)
速めのテンポをとり、かつ、拍の感じ方が違うのだろうか、音楽の流れがよい。パート間のバランスも良く、すべての線が絡み合いながら流れていく感じが出ている。オーケストラの技術も、前2者のN響より上。
たいへん美しい音楽に仕上がっており抵抗なく聴けるが、ここまでサラサラ流れて良いものか…という疑問を抑えることができない。(録音;1969年1月17日、演奏時間;7分47秒)
 
若杉 弘(指揮) 東京都響(DENON)
音の出し方が丁寧で、各パート間のバランスも、偏りなく整えられている。
作曲者が初演のプログラムに自ら執筆した曲目解説で
はじまりも終わりもさだかではない、人間とこの世界をつらぬいている音の河の流れの或る部分を、偶然に取り出したものだと云ったら、この作品の性格を端的にあかしたことになります。
と書いているが、そうした性格は、この演奏に最もよく顕れているように思われる。
これで音楽に、強さ・緊張感といったものが、もう少し色濃く備わっていれば、ベスト盤として挙げることができたと思う。
また、弦の合奏力は優れているが、もう少し音色の溶け合った美しさを求めたい。(録音;1991年7月29〜31日、録音時間;9分21秒)
 
小澤征爾(指揮) サイトウ・キネン・オーケストラ(Philips)
技術的には非常に高くなっており、結尾のフラジョレットも美しい。余裕がある分、同じ指揮者の旧録音よりも、思い入れのある表現を聴かせる。
とはいえ、サイトウ・キネンの弦合奏に特有な「音程の幅」が、この曲の場合は演奏に雑な感じを与えており、甘美だが厳しさに不足するという印象を生む。(録音;1991年9月18〜20日、演奏時間;7分38秒)
 
岩城宏之(指揮) オーケストラ・アンサンブル金沢(DGG)
音に強い緊張感がある。ストラヴィンスキーのいう「きびしさ」、作曲当時の武満の心情、録音の半年前に逝去した作曲者への追悼などが、色濃く反映しているのではなかろうか。斉諧生的には小澤の新盤より高く評価したい。
一方で、旧盤同様、パート間のバランス・調和には相変わらず難があり、音楽に人間味がありすぎる。
また、合奏体としての精度は、わずかに落ちる。(録音;1996年9月、演奏時間;8分01秒)
 
若杉 弘(指揮) NHK響(Sony)
ライヴ録音だが、かえって慎重になったのか、旧盤よりも更に緊張感が薄くなり、音楽が流れない。
よく言えば「静かな瞑想」、沈潜に傾斜した演奏であり、人によっては旧盤以上に高く評価されるのではないだろうか。(録音;1996年10月28日、演奏時間;10分17秒)
 
カール・シンクレア(指揮) パシフィック響(Sony Classical)
上手いことは上手いし、オーケストラも良く鳴っているといえばいえるのだが、響きが分厚く、どことなくマーラーを思わせる
ちょっと武満の世界からは遠い音楽と言わざるをえない。(録音;1997年2月8〜9日、演奏時間;10分58秒)
 
尾高忠明(指揮) 紀尾井シンフォニエッタ東京(BIS)
オーケストラの音色は、この演奏が最も美しいのではないか。スル・ポンティチェロの甘美さなど、一頭地を抜いている。
クレッシェンドの付け方、リズム(拍)の感じ方等が強く、前の世代の演奏とはまったく違った音楽に聴こえるといっていい。わかりやすいと言えばわかりやすい。
その反面、「世界をつらぬく音の河の流れを取り出した」という武満の音楽からは離れてしまった感がある。(録音;2000年2月9〜11日、演奏時間;8分17秒)
 
シャルル・デュトワ(指揮) NHK響(DECCA)
ヨーロッパ人の指揮だけに、もしかしたら西洋クラシック音楽の語法で武満を解剖してしまったトンデモ演奏かもしれないと危惧していたのだが、杞憂であった。
緊張感と静謐さが素晴らしい。やはり優れた指揮者の手にかかると、優れた成果が得られるものだと感心。
録音の加減かデュトワの個性か、音色が寒色系で少し違和感があるけれども、作曲者が理想と仰いだウェーベルンを連想させる、インターナショナルな響きには納得させられる。
それにしても、この盤では次のトラックでチャイコフスキー;交響曲第4番冒頭の金管のファンファーレが鳴り響く。何とかならなかったものか。(録音;2001年6月16〜17日、演奏時間;9分41秒)
 
さて、ベスト盤選びだが…。
あえて1枚に絞るとすれば、若杉&都響盤か。斉諧生がイメージする武満徹の音楽に最も近い演奏である。
緊張感の面で少し食い足りないのが残念。
次いではデュトワ&N響盤を挙げる。この緊張感・静謐さは聴き逃せない。
これで音色にもう少し暖かみがあれば…。
また、カプリング曲には頭を抱えてしまう。CDとしては困ったものである。
もう1枚、岩城&OEK盤の、いかにもレクイエムという悲痛さも捨てがたい。

平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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