音盤狂日録


4月30日(金): 

 

カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮) ウィーン・フィル
ブルックナー;交響曲第7番(DGG)
ジュリーニの第七交響曲といえば、1982年にロサンジェルス・フィルと来日したときに、東京文化会館に聴きに行ったことを思い出す。
まだ5月だったが、空調が故障しているというので、確か楽員は上着を脱いで演奏していたと記憶している。
それ以上に、1曲目の「リンツ」が鳴り始めた瞬間、会場の床から振動が伝わってきたのには仰天した。それまでに聴いていた日本のオーケストラでは、もっと大編成の曲でもそんなことはなかったのだ。
肝心のブルックナーについては、あまり多くを憶えていない(汗)。第3楽章の主題を吹くTrpが弱めの音量だったので残念に思ったことくらいである(これは不満を持つ方が間違いに近い。楽譜の指定はpである)。
余談だが、終演後、サインを貰おうと楽屋口に並んだところ、一緒に行ったK君は家が遠いので先に帰ってしまった。彼はその後、日本を代表する新聞社の一つに就職し、先だってベルリンから安永徹氏のインタビュー記事を送っているのを見かけたことがある。きっと仕事の合間に演奏会に通う日々を送っている(いた)のではないか。
閑話休題、当盤は、その4年後、1986年6月にウィーン楽友協会大ホールで収録された。ウィーン・フィルの美しい響き、就中、Hrnやワーグナー・チューバの音色美に期待している。
これは某オークションで落札したもの。
 

4月29日(祝): 

 昨日届いたCDの情報をシュミット・イッセルシュテット・ディスコグラフィに掲載。


4月28日(水): 

 

朝比奈隆(指揮) 大阪フィル
チャイコフスキー;交響曲第6番「悲愴」(KING)
実演ではあまり良い出会いのなかった朝比奈隆に関して、最近、注目したいと思っているのが1980年代の音源。
熱烈なファンからさえ「当たり外れの波が大きい」「最近の大フィルは…」という嘆きが出た最晩年よりも、安定して充実した演奏が聴けるのではないかと期待している。
当盤は、3回録音した「悲愴」の最初のもので、1982年1月21日の大阪フェスティバル・ホールでのライヴ。
某オークションに安価で出品されており、斉諧生の好きな曲であり、もちろん指揮者が得意とした曲でもあるので、落札したもの。
 
ミカエル・ションヴァント(指揮) デンマーク国立放送響
ニルセン;交響曲全集(dacapo)
数年前、新ニルセン全集版に基づく交響曲全集の録音が2種、同時にスタートした。
一がダグラス・ボストック(指揮)によるCLASSICO盤、もう一つが当盤。
同時に両方を追いかけるのは少ししんどく、評価が定まってから…と思っていたところ、やはりデンマークの指揮者・団体のものの方が有力なようである。
ではそろそろ…と思って気に懸けていたところ、某オークションに出品されたので落札した。
1999年6月〜2000年7月にかけ、デンマーク放送コンサート・ホールで収録されたもの。
もっとも、Berkshire Record Outletでは更に安い価格で提供されており、ちょっと残念である。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) ベルリン・フィル ほか
ヴェルディ;歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲・バレエ音楽 ほか(OTAKEN RECORDS)
"OTAKEN RECORDS" という覆刻盤レーベル(ただしCD-Rによる発売)が登場し、何点かリリースした中に、シュミット・イッセルシュテットの未架蔵音源が含まれていた。
覆刻技術や音質に関しいろいろ能書きも見かけたのだが、この手の話を斉諧生は眉唾で聞くのが常、とりあえず買わずにいた。
某オークションに安価で出品されたのを機に、いちど試してみようと、落札したもの。
音質は期待以上。ボディのしっかりした生々しい音で、歪みも少ない。サーフェスノイズは盛大に聞こえるが、それを除けば、1950年代の優秀録音と言っても通用する感じさえする。
なお、標記イッセルシュテット以外に、
クレメンス・クラウス(指揮) ウィーン・フィル
モーツァルト;歌劇「後宮からの誘拐」序曲・「フィガロの結婚」序曲
シモン・ゴールトベルク(Vn) アロイス・メリハル(指揮) ベルリン・フィル
バッハ;ブランデンブルク協第2番
フリッツ・ブッシュ(指揮) ロンドン・フィル
R・シュトラウス;交響詩「ドン・ファン」
パウル・ファン・ケンペン(指揮) ドレスデン・フィル
チャイコフスキー;スラヴ行進曲
を収録している。
 
オレグ・カガン(Vn) ヴァシリー・シナイスキー(指揮) モスクワ・フィル ほか
プロコフィエフ;Vn協第1番 ほか(LIVE CLASSICS)
見れば買う曲の一つプロコフィエフの1番の未架蔵盤が某オークションに出品されていたので落札したもの。
1980年3月20日、モスクワ音楽院大ホールでのライヴ録音。
シューマン;幻想曲ラヴェル;ツィガーヌサン・サーンス;序奏とロンド・カプリチオーソをカプリング(サン・サーンスのみ指揮者・収録日が異なる)。
 
ティボール・デ・マヒューラ(Vc) ベルンハルト・パウムガルトナー(指揮) ウィーン響 ほか
ハイドン;Vc協第2番 & ボッケリーニ;Vc協 ほか(Philips)
パウムガルトナーの指揮盤で未架蔵のものが某オークションに出品されていたので落札。
1955年11月のモノラル録音。
シューマン;Vc協(指揮はルドルフ・モラルト、1954年録音)をカプリングした、"Dutch Masters" シリーズのCDである。
 
寺神戸亮(Vn)
「シャコンヌへの道」(DENON)
これは新譜を店頭で購入。
寺神戸さんのヴァイオリンは聴いておきたいし、それ以上に、ビーバー;パッサカリアテレマン;幻想曲(ただし第1・7番のみ)、バッハ;シャコンヌ(もちろん無伴奏Vnパルティータ第2番より)と、好きな曲が入っているので、買わずにはいられない。
ビーバーやバッハは既にCDが出ているが、今回、新たに録音し直したもの(2003年12月、ドイツ・フィアゼン)。
バッハに先行する無伴奏Vn曲を辿るという企画で、17世紀半ばにドイツからイギリスに渡って活躍したバルツァー、17世紀末のドレスデンで活動したヴェストホフ、18世紀初めの名ヴァイオリニスト・ピゼンデルといった、今日では忘れられかけている人の作品を、ほぼ年代順に採り上げている。
バッハのシャコンヌで締めたあと、アンコール的にガヴォット(無伴奏Vc組曲第6番から編曲)を置いているのも面白い。
 
ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮) モスクワ放送響
マーラー;交響曲第1番(蘇MELODYA、LP)
フェドセーエフのマーラーは、昨年、第4番のLPを聴き、その色彩美、弾むような愉しさに圧倒された。
第1番の録音もあるというので気に懸けていたところ、某オークションに出品されたので落札したもの。
1990年のデジタル録音ということだが、CDでは見たことがないような気がする。リリースされているのならば、そちらも是非入手したいものだ。
 

4月24日(土): 

 NHK交響楽団の演奏会を京都コンサートホールで聴く。指揮はスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ

今日の曲目は、21・22日にサントリー・ホールで開かれた定期演奏会とまったく同じ。
オール・ベートーヴェン・プロで、
序曲「エグモント」
Vn協(独奏;パトリシア・コパチンスカヤ)
交響曲第5番
というもの。
 
「エグモント」の最初の音が、重心の低い素晴らしい音でまず感激。
もっとも高弦の響きが少しかさついていたのは日本のオーケストラの通弊。
スクロヴァチェフスキの表現は極めてオーソドックス。コーダでも金管を煽らず、落ち着いた音楽になっていた。
少し物足りないが、これも演奏会全体を見据えた、彼一流の「設計」だったと考えている。
 
Vn協を弾くソリストは、まったく知らない名前で、正直申して何も期待していなかったのだが、意外や意外、当夜随一の聴きものであった。
奇抜なファッションと演奏だという評判は、既にクラシック招き猫で拝見していた。
既報どおり、右足に銀ラメ、左足に赤ラメの靴を履いて登場。
また珍しいことに、譜面を置いている。
 
彼女の特徴は、何といってもppの連発。まず第1楽章冒頭から、満堂が息を呑む弱奏を聴かせた。
一方、速いテンポの走句など、まったくアクセントをつけずに、サラサラサラと弾いてしまうし、リズムを少し自由に扱って、ちょっと舞曲寄りの節回しを聴かせる。
このあたり、ちょっとクレーメルに似ている。
 
聴く側としては、もう少し歌えばいいのに…と、少し欲求不満。展開部でのFgとの魅力的な絡みなど、ほとんどFgの独奏に近かった。
 
吃驚したのはカデンツァ。クライスラーかヨアヒムというのが相場だが、全然違うもの。ティンパニまで鳴り出した。
ロビーの掲示には、「ベートーヴェンがこの曲をピアノ協奏曲に編曲した際に作ったカデンツァを、シュナイダーハンが編曲したもの」と書かれていたが、それだけではない。
彼女自身が、相当、楽譜に手を入れていたはずである。
第2楽章末尾のカデンツァも、ヴァイオリニスト自作と思われる、大規模なもの。
大きなグリッサンドを使った遊びの感覚が面白かった。
 
第2楽章あたりから、こちらも少し慣れてきた。
コパチンスカヤのスタイルを端的に言えば、
ppの多用によって時間感覚を停止させ、その時空の中で自由自在に音と戯れる
のが、彼女の本領ではなかろうか。
 
やや奇矯な感じもするし、何といっても、歌うべきところはもう少し豊かに歌ってほしいが、これだけ楽しそうに、生きた音楽を奏でる人は貴重。
オーケストラだけになるところでも、楽しそうに体でリズムを取っていたりする。
クラシックの枠の中に収まる人なのかどうかわからないが、ぜひ大成してもらいたいと願う。
まだ20歳代である
本質的には、高い技術を持つ人で、汚い音・硬い音はまったく出さないし、強奏すればオーケストラから突き抜けてくるような音も出せる。指はよく回るし、ボウイングにも安定感がある。
ただし、舞台上での動きは大きい。
 
盛んな拍手とブラヴォーの声に応えてアンコールを演奏。
楽譜をひろげてからコンサートマスター(堀正文)に話しかけているので、もしかしてオーケストラの伴奏付きなのかと思ったが、さすがにそういうことではなく、
オーストリアの作曲家が彼女のために書いた曲を演奏するそうです。
とのアナウンス。
 
これが凄い曲で、足で床を踏み鳴らすわ、声は出すわ、歌うわ、最後に弾きながら一回転するわ…。
Otto Zykan による "Das mit der Stimme" という曲なのだそうである。
 
サントリー・ホールでの定期演奏会はTV放送が予定されているようなので、ぜひ御覧いただければと思う。
ただし、東京の公演ではアンコールを演奏しなかったらしい。
 
なお、コパチンスカヤには公式Webpageがあり、ライヴ録音が多数提供されている。
 
休憩を挟んだ第5交響曲は、Vn協とは正反対の音楽。
対比的に言うならば、
画然と進行する時間軸の上に論理を構築しつくした音楽
と表現できるだろう。
 
基本的にはイン・テンポ。
第1楽章再現部のオーボエや第3楽章で少しリタルダンドをかけるなど、まったく素っ気ないイン・テンポではない。
 
煽らず引っ張らず、音価はきっちり弾かせ、木管を聴かせるためには弦を抑え、金管のちょっとした運命動機を引き立たせるなど、全体の音量をきっちりコントロール。
スクロヴァチェフスキは、パート譜をすべて持参し、上記の音量やボウイングを統一させたらしい。
第4楽章冒頭をダウンボウの連続にするなど、やや弾きづらそうなボウイングも、やはり彼の論理の一環であろうと見て取れた。
 
「遊び」のVn協と「論理」の交響曲、その対象が実に鮮明に聴こえた一夜であった。
 
スクロヴァチェフスキが音楽の神秘に陶酔する姿を見るためには、どんな曲目がよいのだろう?
あるいは、論理を透徹させた先に現前する「狂気」を期待した方がよいのだろうか…。
 

 

ヘルベルト・ケーゲル(指揮) ライプツィヒ放送響 ほか
マーラー;嘆きの歌 ほか(Kamprad)
単独のCDではなく、Helga Kuschmitz 著 "Herbert Kegel - Legende ohne Tabu" という、指揮者の伝記本の附録。
上記著作は、ハードカバー・ほぼA4判で、ケーゲルの生立ちから晩年までを160頁で紹介している。英独文を併記している上、豊富な写真を掲載しており、じゅうぶん楽しめるもの。
日本への客演についても、かなりの紙幅が割かれ、チラシの画像やスナップ写真も収録されている。
出版時点でのディスコグラフィも付されており、参考になりそうだ(Weitblickレーベルのライヴ盤のうち、ごく最近のものは漏れている)。
附録CDは収録時間80分弱、メインは標記のマーラーで、独唱はマグダレーナ・ハヨーショヴァー(Sop)、ローズマリー・ラング(A)、ジェルジ・コロンディ(Ten)、ユルゲン・クルト(Bs)、ライプツィヒ放送合唱団が参加している。
1985年10月7日、ゲヴァントハウス音楽祭でのライヴ録音とのこと。
その他、ケーゲルが作曲した4つの歌(1939、1955年作曲。4曲で6分程度。ケーゲルの演奏ではない)と、マーラー;交響曲第8番のリハーサル風景(1981年6月6日、10分程度)が収録されている。
前者の第4曲「孤独な人」のテキストは日本の詩によるとあるが、歌詞は掲載されておらず、聞き取りも難しかったので、詳細は不明。
後者は正規の録音ではない様子で、テープヒスも盛大。楽音は遠くて歪みがちだが、レコーダーが指揮台のすぐ傍にあったのか、ケーゲルの声は極めて明瞭で実在感がある。
なお、これは、いつもいつも参考にさせていただいているユビュ王の食卓の掲示板で御教示を受け、更に共同購入のお世話になったもの。
あらためて感謝申し上げたい。<(_ _)>
 
ポール・パレー(指揮) デトロイト響
「マーチ万歳!」(英Mercury、LP)
パレーが遺した快録音、マーチ名曲集の英盤LPが某オークションに出品された。
一応、米盤LPは架蔵しているのだが、比較的造りが悪く(おそらく後期プレス)、ジャケットに穴の空いたカットアウト盤。
英Mercury盤はEMIのプレスで高品質とされているので、買い換えたいと思い、入札してみる。
昔、オーディオファイル向けの廉価盤シリーズでLPが国内発売されていたほどの名録音なのだが、どうした幸運か、格安で落札できた。
行進曲集といっても、そこはパレーのこと、スーザタイケではなく、まして瀬戸口藤吉でもなく、
ベルリオーズ;ラコッツィ行進曲・トロイ人の行進曲
グノー;あやつり人形の葬送行進曲
サン・サーンス;英雄行進曲・フランス軍隊行進曲
ド・リール;ラ・マルセイエーズ
シャブリエ;楽しい行進曲
マイアーベーア;戴冠式行進曲
と、フランスものばかり。
1959年4月、デトロイトでの録音。
 
宇野功芳(指揮) 日本女声合唱団 ほか
「ちいさい秋みつけた」(日VICTOR、LP)
宇野師の合唱指揮で公刊された音盤のうち、唯一、未架蔵であった音源が某オークションに出品され、驚喜して落札したもの。
曲目の詳細はディスコグラフィを御覧いただきたい。
中でも小倉朗(編);ほたるこいは、二十数年前に師のレコード・コンサートで感嘆した作品だけに(その時はKTU女声合唱団盤)、是非、聴きたかった曲である。
1979年5月・1981年5月に石橋メモリアルホールで行われた、第3回と第4回の「合唱指揮リサイタル」でのライヴ録音。
それにしても、ビクターから出たLP3枚は、どうしてCD化されないのだろう?
 
ヴァレリー・ゲルギエフ(指揮) キーロフ歌劇場管弦楽団 ほか
プロコフィエフ;歌劇「炎の天使」(Philips、LD)
斉諧生偏愛の交響曲の一つであるプロコフィエフ;交響曲第3番が、この歌劇の音楽を転用して書かれたというので、ずっと音盤を集めてきたが、唯一の映像作品である当盤は未架蔵のままだった。
迂闊なことにLDでリリースされていることを知らず、ビデオ・テープしかないと思いこんでいたのである。
先だって某オークションに出品された際に気がついたが、指揮が当代の人気者ということもあってか、なかなか落札できなかった。
何度目かの挑戦で(不思議と出品頻度が高い)、ようやく成功したもの。当時の定価の半分以下であり、まず幸運といえよう(DVD化を待つという方途もあるのだが)。
主人公のレナータをガリーナ・ゴルチャコーワが歌っているが、たしかこれが彼女の出世作ではなかったか。
1993年9月、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場で収録されたもの(映像監督はブライアン・ラージ)。
ちょうど収録直後に同歌劇場が初めて来日し、その際、この作品も上演された。
悪霊に取り憑かれて修道女たちが狂乱状態となり何人かが全裸になる…というフィナーレの演出がセンセーショナルに取り上げられ、「警察が公演差止めに動く」という情報が新聞で報道されたことを、今でも記憶している(切抜きを紛失したのが残念)。
 

 この間入手したCD・LPの情報をパレー・ディスコグラフィ宇野功芳・ディスコグラフィに掲載。

 今日の演奏会の情報を演奏会出没録に掲載。


4月23日(金): 

 

ユーナス・リンドゴード(Vn) ヤーコブ・ヘンリケス(G)
Vn & G二重奏曲集(nosag)
知人に依頼された調べものをしていて、nosagレーベルのWebサイトに行ってみたら、ステーンハンマル新譜が出ていることに気がついた。
「2つのセンチメンタル・ロマンス」を、ヴァイオリンとギターに編曲したという珍しいもの(編曲は演奏者自身による)。
国内の音盤店にはほとんど入荷しないレーベルゆえ、直接オーダーしたところ、わずか4日ほど(!)で届いた。
その他には、R・コルサコフ;交響組曲「シェヘラザード」の編曲版(ただし20分程度に短縮している)や、ペッテション・ベリエルの小品などを収録している。
録音は2004年2月にストックホルムで行われており、まさに「出来たてのホヤホヤ」ということになる。
Vn奏者は、ストックホルム王立音楽院出身、ストックホルム・フィル等を経て、スンツヴァル室内管のコンサートマスターを務めているとのこと。
 

4月22日(木): 

 

マルクス・ボッシュ(指揮) アーヘン響
ブルックナー;交響曲第8番(COVIELLO)
音盤店の新譜棚に、ふだん見かけないレーベルの、見かけない指揮者とオーケストラによる、ブルックナー;第8が並んでいたので、思わず購入。この交響曲は、聴き逃せない。
オーケストラは、ドイツの古都アーヘンの歌劇場の管弦楽団。指揮者はアーヘン市の音楽総監督で(若き日のカラヤンが就任したポストとして有名)、1969年生れの新鋭である。
2003年6月、アーヘン響の創立150周年記念として、同市の聖ニコラウス教会でライヴ収録されたもの。
この曲で問題になる楽譜の扱いであるが、ブックレットには「ハース第2稿 2 Fassung in der Ausgabe von Robert Haas 」という、よくわからない表記がなされている。
おそらく「ノヴァーク第2稿」の誤りではないかと思われるが、実際の演奏を聴いた確認は、まだできていない。御容赦いただきたい。
なお、同内容のDVDオーディオ(5.1ch)ディスクが附属している。
 
アレクサンダー・ギブソン(指揮) スコットランド・ナショナル管 ほか
シベリウス;管弦楽曲集 ほか(EMI)
しばらく前からEMIがリリースしている2枚組シリーズには、なかなか渋いセレクションが多く、楽しみである(だからといって全部買うわけにもいかないが)。
シベリウスではチャールズ・グローヴズの指揮によるセットが出ていたが、今回の新譜に、ギブソンやアンタル・ドラティによる管弦楽曲集が含まれていた。
LP時代に「北欧の抒情」という廉価盤シリーズで出ていたことを思い出す、懐かしい音源たちであり、聴き逃せないと購入。
ギブソンの指揮では
組曲「クリスチャン2世」「カレリア」序曲交響詩「吟遊詩人」「祝祭」(歴史的情景第1番より)
ドラティの指揮では
「ルオノンタール」「エン・サガ」「夜の騎行と日の出」「大洋女神」
また、マルコム・サージェント(指揮)による
「カレリア」組曲「トゥオネラの白鳥」フィンランディア(以上ウィーン・フィル)、「ポヒョラの娘」(BBC響)
と、シヴ・ヴェンベリ(Sop)による歌曲4曲を収めている。
 
プニーナ・ザルツマン(P) ポール・パレー(指揮) イスラエル・フィル ほか
バルトーク;P協第3番 ほか(DOREMI)
パレーの音源発掘! 買わざるべからず!!
バルトークが彼のディスコグラフィに掲載されるのは初めてのことだ。同様に、イスラエル・フィルとの共演盤も初めてのことになる。
ライナーノートによれば、ザルツマンは長くイスラエルの女流ピアニストの第一人者に数えられてきた人とのこと。
1924年テルアヴィヴ生れ、8歳の時にコルトーに認められてパリに招かれ、タリアフェロに学んだ。
現在、80歳近いはずだが、テルアヴィヴ大学教授で、ピアノ部門の長でもあるとのこと。
パレーとのバルトークは、1971年11月29日の録音という。モノラルか音場感の変なステレオだが、音質自体は鮮明で、特にピアノはリアルに録れているし、パレーの歌声も聞こえてくる(笑)。
CD2枚組で、その他には、
サン・サーンス;P協第3番(ローレンス・フォスター(指揮)、1988年9月10日)
マルク・ラヴリ;P協第1番(ズビン・メータ(指揮)、1984年3月18日)
ベン・ハイム;P協(ハンス・フォンク(指揮)、1983年3月10日)
ショパン;アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ(ネヴィル・マリナー(指揮)、1979年1月17日)
ダンディ;フランスの山人の歌による交響曲(メンディ・ロダン(指揮)、1973年6月26日)
が収められている。
 

4月21日(水): 

 

ジョシュア・ベル(Vn) ロジャー・ノリントン(指揮) カメラータ・ザルツブルク
ベートーヴェン;Vn協 & メンデルスゾーン;Vn協(Sony Classical)
先だって入手したクリスティアン・ツァハリアスとのP協全集が良かったので、ノリントンのベートーヴェン演奏を更に聴いてみようと、某オークションで落札したもの。
両曲ともカデンツァはVn奏者自作とのこと。メンデルスゾーンは普通カデンツァを挿入しないので、どうなっているのか楽しみ…というか、少し怖い気もする(笑)。
2000年11月、ザルツブルク・モーツァルテウムでの録音。
 
千住真理子(Vn) デヴィッド・シャローン(指揮) ウィーン響
メンデルスゾーン;Vn協 & チャイコフスキー;Vn協(VICTOR)
千住真理子のデビュー盤が某オークションでやすく出品されていたので落札。
少女時代からマスメディアによく登場して知名度が高かった人だが、録音は当盤が初めてだった(1986年1月、ウィーン・コンツェルトハウス)。
先年、東京で急逝したシャローンが振っているのも意義深かろう。
 
千住真理子(Vn) ポール・フリーマン(指揮) チェコ・ナショナル響
ベートーヴェン;Vn協 & メンデルスゾーン;Vn協(VICTOR)
上記の盤と同時に某オークションで落札したもの。もちろんメンデルスゾーンは再録音ということになる。
2000年6月、プラハでの録音。
 

4月19日(月): 

 

ボー・ホルテン(指揮) BBCシンガーズ
ジェズアルド;モテット・レスポンソリウム集(BBC MUSIC MAGAZINE)
『レコード芸術』の最新号が入荷していないかと音盤屋に立ち寄ったが、空振り。
代わりに書棚で見つけたのが、 "BBC Music Magazine" の、たぶん先月号。大阪の店には最新号が並んでいるが、京都では売れ残りが店晒しになっている。
附録のCDには何が入っているのかなと手に取ると、当盤であった。
音楽史関係の音盤からは原則として手を引くことにしているのだが、この曲目と指揮者は魅力的、ついついレジへ持参してしまった。
半音階や大胆な和声を多用した、ルネサンス合唱曲の中で異彩を放つジェズアルドの名作は、LP時代のフォールベルク盤(Philips)以来、愛聴している。
また、指揮者は、ルネサンスや現代の合唱曲を得意とする人で(ド・ラ・リュー;レクイエムの名盤(kontrapunkt)があった)、ディーリアスの珍しい管弦楽作品を収めたCDも佳かった。
2000年6月、ロンドンでの録音。
なお、合唱団の公式Webpageがある。
 

4月18日(日): 

 所用ついでの音盤屋で、待望の新譜を大量捕獲。

ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響
モーツァルト;交響曲第33・34・41番(EMI)
EMIが北ドイツ放送局と契約して、その保存する音源を大規模にCD化するという大朗報、しかも第1回発売にシュミット・イッセルシュテットが6点も含まれているので狂喜乱舞。
入荷の情報に接して勇躍、音盤屋に赴いたところストラヴィンスキー作品集を除いて5点が入荷しており、半ば興奮の体でレジへ持参した。
このベルリン生れの指揮者が最も愛した作曲家について、正規のスタジオ録音が非常に少ないのはファンとして痛惜の至り。
今回、第33・34番は、おそらく彼のディスコグラフィ上、初のレパートリーの筈。誠に喜ばしい。
収録年月日は、
第33番;1971年6月30日〜7月2日 (ハンブルク・北ドイツ放送第10スタジオ)
第34番;1967年10月2〜6日 (ハンブルク・北ドイツ放送第10スタジオ)
第41番;1965年9月13日〜17日 (ハンブルク・北ドイツ放送第10スタジオ)
第41番は、過去に北ドイツ放送局の自主製作盤としてLP及びCDが出ていた音源。また、ロンドン響とのスタジオ録音(Mercury)、北ドイツ放送響とのレニングラード・ライヴ録音(MELODYAほか)もリリースされていた。
音質的には、どれも冴え冴えとした美しいもの。最も日付が遡る第41番も、温かみのある良い音にリマスタリングされており、自主製作盤CDよりも聴きやすい。
なお、残念なことにブックレットの一部に乱丁があり、同じシリーズのクジェネク作品集の頁と入れ替わっていた。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響
ブラームス;交響曲全集(EMI)
これは以前SCRIBENDUMレーベルから覆刻された音源と同じ。CD3枚組に、交響曲4曲とハイドン変奏曲大学祝典序曲をフィルアップしている。
ただし、SCRIBENDUM盤に含まれていた「運命の歌」が省かれているのは不審。
録音データは以下のとおり。収録場所に、これまでの情報との違いがあるが、音源の性格からして今回のデータが正しいものだろう。
第1番;1967年6月5日 (ハンブルク・ムジークハレ)
第2番;1967年10月30日 (ハンブルク・ムジークハレ)
第3番;1969年2月4〜5日 (ハンブルク・北ドイツ放送第10スタジオ、これまではハンブルク・ムジークハレとされていた)
第4番;1973年5月21日 (ハンブルク・ムジークハレ)
ハイドン変奏曲;1962年9月24日 (ハンブルク・ムジークハレ)
大学祝典序曲;1970年9月2〜4日 (ハンブルク・北ドイツ放送第10スタジオ、これまでは不詳とされていた)
音質的には、SCRIBENDUM盤よりもきれいな仕上がり。一般的には、こちらの方が聴きやすかろう。
録音の新しい第4番はSCRIBENDUM盤の自然さを買う人がいるかもしれないが、第2・3番はEMI盤の自然な美しさが断然優れている。
第1番は録音が古く(しかもモノラル)、どちらの盤でも聴き劣りするのが本当に残念。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響
ヒンデミット;交響曲「画家マティス」・組曲「いとも気高き幻想」 ほか(EMI)
「画家マティス」は放送局の自主製作盤としてLPで架蔵済みの音源だが、その他は初登場の筈。
交響曲「画家マティス」;1967年8月21〜25日 (ハンブルク・北ドイツ放送第10スタジオ)
組曲「いとも気高き幻想」;1972年7月3〜5日 (ハンブルク・北ドイツ放送第10スタジオ)
交響的舞曲第1〜3番;1970年6月8日 (ハンブルク・ムジークハレ)
これも美しい音質。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響
バルトーク;管弦楽のための協奏曲 & 弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽(EMI)
シュミット・イッセルシュテットのバルトークは、これまでのディスコグラフィにはなかった、初のレパートリーだろう。
ドイツ正統派の指揮者がハンガリーの巨匠の音楽を録音するのは比較的珍しいと思う(音楽語法的に受け入れづらいのかもしれない)。
ただ、ケルン・ギュルツェニヒ管時代のギュンター・ヴァントが「弦チェレ」を録音している例もあるので、同時代音楽志向の強い人には手がけておきたい曲目として意識されていたのかもしれない。
管弦楽のための協奏曲;1966年2月20・21日 (ハンブルク・ムジークハレ)
弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽;1971年4月24日 (ハンブルク・ムジークハレ)
「弦チェレ」は今回のシリーズ中、おそらく最高の音質。「オケコン」も一応ステレオ録音で、古さは感じるが(左右の拡がり感が乏しい)鑑賞に不足のない聴きやすいもの。
 
クラウディオ・アラウ(P) ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) 北ドイツ放送響
ブラームス;P協第1・2番(EMI)
ブラームスの第1番にはブレンデルとのスタジオ録音(Philips、オーケストラはアムステルダム・コンセルトヘボウ管)があったが、第2番の録音は、その直前に指揮者が長逝して実現を見なかった。
ファンにとって憾みを遺す曲目であっただけに、今回、アラウとの共演で両曲を聴けるのは大きな喜びである。
第1番;1966年4月3〜4日 (ハンブルク・ムジークハレ)
第2番;1963年5月5〜6日 (ハンブルク・ムジークハレ)
いずれもモノラル録音で、やや音像が遠く、生々しいエネルギーが欠けているが、聴きやすい音質である。不思議なことに、収録が少し遡る第2番の方が、音に力があり、相対的に優れている。
 
キリル・コンドラシン(指揮) 北ドイツ放送響
マーラー;交響曲第1番(EMI)
1981年3月7日、コンドラシン急死のニュースはショックだった。
その直前に旧ソ連から西側に亡命したという報せを聞いて驚いたばかり。冷戦末期のこと、KGBによる暗殺ではないかなどと、半ば冗談にしていたのを思い出す。
これはその夜、アムステルダムへ楽旅を、当時の常任指揮者テンシュテットの急な代役で指揮した記録である。
これまで非正規音源等で発売され、夙に名演の噂を耳にしていた。ようやく今回、正規盤としてリリースされたからには買わざるべからず。
 
タチアナ・ニコラーエワ(P) ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮) モスクワ放送響
チャイコフスキー;交響曲第6番・P協第1番 ほか(VICTOR)
「悲愴」の初演100年=作曲者の没後100年に当たる1993年、その最期のコンサートのプログラム(当然、最後の交響曲が含まれる)を再現した演奏会が、ザ・シンフォニー・ホールで開かれた(6月20日)。
当盤はそのライヴ録音で、楽譜が現存しないというラロシュ;幻想曲「カルモジーナ」等を除き、次のようなプログラムで行われた。
交響曲第6番、P協第1番、モーツァルト(チャイコフスキー編);歌劇「イドメネオ」より2つの舞曲 (ここまでが1883年10月16日の曲目)
スヴィリドフ;「吹雪」よりワルツチャイコフスキー;「白鳥の湖」よりスペインの踊り
なお、交響曲の最後の楽章は、この時期のフェドセーエフの主張に基づきアンダンテとして演奏されている(実際の速度には、さほどの違いはないようだが)。
このCD2枚組は、Webを通じて知り合った楽友から拝領した。
フェドセーエフのチャイコフスキーは、実演・音盤ともに感銘を受けてきた。現在入手が極めて難しくなっているライヴ盤であり、お心遣いを頂戴して感謝感激、あらためて御礼を申し上げる次第。<(_ _)>
 
イヴァン・フィッシャー(指揮) ブダペシュト祝祭管 ほか
バルトーク;歌劇「青髭公の城」(Philips)
ずっと追いかけているフィッシャーの録音、今回はバルトークの傑作が登場。SACDコンパチブル仕様なので少し高価だったが、買わざるべからず。
青髭はラースロ・ポルガー、ユーディットはイルディコ・コムローシ
2002年8月、ブダペシュトでの録音。
Webを検索してみたら、2001年のザルツブルク音楽祭で、同じ顔触れが公演したときの評が見つかった。
 

 今日購入したCDの情報をシュミット・イッセルシュテット・ディスコグラフィに掲載。


4月17日(土): 

 

アリスタ・トリオ
ベートーヴェン;P三重奏曲第5番「幽霊」・第7番「大公」(徳間)
アリスタ・トリオは、ダニエル・フロシャウアー(Vn)、ラファエル・フリーダー(Vc)、鳥羽泰子(P) からなる。弦の2人はウィーン・フィルのメンバー。
先だって某オークションの出品をチェックしていて、当盤の画像に目が留まった。
CDにかかっている帯に、
レコード史上、最美の「幽霊」−宇野功芳
という文言が刷り込まれているのである。
最近の宇野師の音盤評には素直に呑み込めない節が窺えるが、こういう、正直申してマイナーな演奏家のものについての発言であれば信用しても可かと考え、落札してみた。
はたしてブックレットには師の文章が掲載されており、
アンサンブルは緻密で一分の隙もなく、デリカシーの極みであり、それでいて緊張感に富み、立体感も十分、無意味なところ、機械的なところは一ケ所としてない。テンポの微妙な流動も曲想にぴったりだし、各奏者の音色の美しさも格別」(「幽霊」第1楽章)
速めのテンポですっと流しつつ、その極上の繊細さの中に無限の味があり、趣があり、こくがある。上品で、緻密で、清らかで、涼しく、どこにも大言壮語した跡のない、高貴な美演がここにある。」(「大公」第1楽章)
と、ほとんど最上級の絶讃ぶり。演奏内容に期待したい。
2001年12月、三鷹市芸術文化センターでの録音。
 
ユシー・ビョーリン(Ten) スティグ・ヴェステルベリ(指揮) ストックホルム・フィル ほか
「スウェーデン放送音源集」(Bluebell)
ユシー・ビョーリン(ユッシ・ビョルリンク)は、スウェーデン出身の伝説的名歌手。
彼もステーンハンマル;スヴァーリエを歌っており、2種の録音を架蔵している(それぞれ1937年・1957年の録音)。
当盤が某オークションに出品されているのを見て、同一音源の別盤と思って無視しかけたが、念のために手元のディスコグラフィと照合することにした。
なんと、1958年12月11日録音の別音源で、伴奏者も、架蔵盤のニルス・グレヴィリウス(指揮)とは異なっている。これは逃すべからずと、慌てて落札したもの。
全部で18曲を歌っており、ステーンハンマル作品以外には、シベリウスペッタション・ベリエルの歌曲、「カルメン」「ローエングリン」等のアリアを収めている。
 
ルチア・ネグロ(P)
ステーンハンマル;Pソナタ ト短調 & 変イ長調(瑞Bluebell、LP)
ステーンハンマルの音盤中、未架蔵を嘆いてきた1枚がArs Antiquaのカタログに掲載されており、直ちに発注、目出度く届いた。
1982年9月にストックホルムのスウェーデン放送局第2スタジオで収録された、斉諧生の知るかぎり、両曲の音盤で最も早いもの。
ト短調が1890年、変イ長調が1895年と、いずれも作曲者(1871年生れ)の若書きで、そのためか現在に至るまで録音は多くない。特に変イ長調は、当盤とネグロ本人の再録音盤(BIS)だけのはずである。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮) パリ選抜合唱団 ジュゼッペ・エングラート(Org)
リスト;ミサ・コラリス(米OCEANIC、LP)
またまたレイボヴィッツが妙な作品を録音しているのを見つけた。
合唱団の名称は英語で "Paris Select Choir" と表記されており、SATB各4名からなる。
またオルガニストの姓名は原綴 "Giusseppe Englert" 、いちおう標記のように片仮名に置き換えてみたが、自信なし。
録音年月は明記されていないが、マルCは1953年、録音場所はパリ、サン・ロッシュ教会とある。
Ars Antiquaから。
 

 今日届いたCD・LPの情報をステーンハンマル・作品表とディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィに掲載。また、先日入手したCDの情報をペレーニ・ディスコグラフィに追加。


4月16日(金): 

 

ラースロ・ハーラ(Fg) イムレ・マジャリ(Hrn) ヤーノシュ・フェレンチク(指揮) ハンガリー国立管
モーツァルト;Fg協・Hrn協第2・4番(洪Hungaroton)
ハンガリーの名匠フェレンチクのモーツァルトが某オークションに出品されていたので落札。
Fg協は好きな曲なので楽しみである。
録音データは明記されていないが、マルPは1982年。
 

4月15日(木): 

 

エーリヒ・クライバー(指揮) パリ音楽院管
チャイコフスキー;交響曲第4・6番(TESTAMENT)
前に「悲愴」を聴き比べたおり、父クライバー盤のもの凄いエネルギー感に圧倒され、以来、ことあるごとに薦めてきた。
そのとき聴いたのは国内盤CDだったが、今回、TESTAMENTから覆刻され、第4番との2枚組が1枚分の価格で売り出されたので、喜んで購入。
第4番は1949年7月、第6番は1953年10月、いずれもパリ、メゾン・ド・ラ・ミュチュアリテでの録音。音質的には両曲とも改善が見られ、特に後者で細部の解像度向上が著しい。
 
倉田澄子(Vc) 尾高惇忠(P)
ドビュッシー;Vcソナタ ほか(fontec)
普段あまり覗かない中古音盤屋に、ふと立ち寄ると、このCDに格安の値が付いて並んでいた。
昨秋リリースされたフォーレ & フランクが佳演だったことを思い出すとともに、珍しい曲目が含まれているのに惹かれて購入。
即ち、尾高尚忠;夜曲倉田高;日本人形の踊り。いずれも演奏者の先考の作品である。
それ以外ではブルッフ;コル・ニドレカサド;愛の言葉サン・サーンス;白鳥といった定番と、チェロによる演奏は珍しいマスネ;タイスの瞑想曲などを収録している。
ブックレットにチェリストが、各曲ごとに思い出をしたためた文章を寄せている。
標記のドビュッシー作品については、師トルトゥリエとのレッスン風景を、
先生は、すっかりこの曲に出てくるピエロになりきって、チェロをまるでギターのように爪弾きながら、おどけたり、あざけ笑ってみせたり……私を幻想の世界に導いてくれたのです。
と記している。
1995年12月、さいたま芸術劇場での録音。
 
熊本マリ(P)
モンポウ;P作品集(FUN HOUSE)
上記倉田盤同様、中古音盤屋での掘り出しもの。
このピアニストの初期の録音(1989年)で、モンポウ全曲録音の1枚目に当たる。
偏愛の曲、歌と踊り第6番が収められているので、買ってみた。
なお、当盤とほぼ同じ曲目の再録音盤(1995年、KING)も出ている。
 
フリッツ・ヴンダーリヒ(Ten) カール・シューリヒト(指揮) シュトゥットガルト放送響 ほか
「オペラ・オペレッタ稀少音源集」(hänssler)
シューリヒトの未架蔵音源、買わざるべからず。
開封してみると、彼が指揮しているのはモーツァルト;「なんと美しい絵姿」(歌劇『魔笛』より)ただ1曲。72分強の収録時間のうち、約4分のみ。
とはいえ、シューリヒトのモーツァルト録音は貴重な上、『魔笛』とあらば更に嬉しい。
1959年4月12日、シュトゥットガルト放送局のスタジオで収録されたもの。モノラルのようだが、音質は優秀、奥行き感まで十分に感じられる。
その他、ベートーヴェンケルビーニカールマン等を収める。
 
デーネシュ・コヴァーチュ(Vn) ほか
バルトーク;無伴奏Vnソナタ ほか(洪Hungaroton、LP)
このところ蒐集を続けているハンガリーの名奏者コヴァーチュの未架蔵盤が某オークションに出品されていたので落札。
Hungaroton製作によるバルトーク大全集の1枚で、2台Pと打楽器のソナタをカプリング。そちらには若かりしゾルターン・コチシュデジュー・ラーンキが参加している。
 

4月14日(水): 

 

ヨーゼフ・カイルベルト(指揮) バンベルク響
ベートーヴェン;交響曲第3番「英雄」 ほか(KING)
 
ヨーゼフ・カイルベルト(指揮) バンベルク響
ブラームス;交響曲第4番 ほか(KING)
好きなオーケストラの一つ、バンベルク響の1968年来日公演ライヴ盤が某オークションに安価で出品されていたので落札。
昨秋の発売時、「レコード芸術」誌での評価が高く、気になっていたのだが、指揮者にこれまであまり良い印象がないので、買いそびれていたもの。
「英雄」は同年5月15日に収録されたもので、ウェーバー;序曲「オイリュアンテ」と、アンコールのベートーヴェン;序曲「レオノーレ」第3番がカプリングされている。
当日、ウェーバーの次に演奏されたヒンデミット;交響曲「画家マティス」が除かれたのは、誠に残念。是非、次の機会にリリースしてもらいたい。
ブラームスは5月20日の演奏で、R・シュトラウス;交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」と、やはりアンコールのワーグナー;楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲をカプリング。
ここでも当日1曲目のハイドン;交響曲第101番が省かれている。ヒンデミット同様、復活を願うものである。
音質は、鮮烈さ・生々しさはいくぶん後退しているものの、当時のライヴ録音としては非常に優秀なレベルであろう。会場はいずれも東京文化会館。
なお、曲目データ等については海外オーケストラ来日公演記録抄を参考にさせていただいた。
 
トーマス・ツェートマイヤー(Vn) ほか
(独TELEFUNKEN、LP)
某オークションに出品されていた、ツェートマイヤー少年時代の録音。
正確な年月日は記されていないがマルPは1980年、1961年生れのヴァイオリニストは録音当時まだ十代だったはずである。
好きな曲の一つ、ビーバー;パッサカリア(「ロザリオのソナタ」より)が収録されているので、落札したもの。
まだ古楽演奏が珍しかった時代にモダンの奏者がどう演奏していたのか、あるいはツェートマイヤーが双葉から芳しいところを発揮して新しいセンスで弾ききっているのか、興味深い。
カプリングは、無伴奏曲でパガニーニ;奇想曲第24番イザイ;無伴奏Vnソナタ第3番。P伴奏(ダヴィド・レヴィーン)でラヴェル;Vnソナタシューベルト;ロンド ロ短調
 

4月13日(火): 

 

パスカル・ル・ペネク & フィリップ・ボレチェク(アコーディオン)
ヴァイル;「三文オペラ」より ほか(SKARBO)
「三文オペラ」中の楽曲を2台のアコーディオンで演奏したもの。編曲はル・ペネクによる。
「三文オペラ」、特に「メッキー・メッサー(モリタート)」は、ソニー・ロリンズの名演以来、愛好するところ。
曲調からいってアコーディオンにはピッタリだろうと思われ、楽しみにしつつ購入。
ル・ペネク作曲の「乞食オペラの旋律による組曲」をフィルアップ。
録音データは明記されていないが、マルPは2003年。
 
グレン・グールド
「アンド・セレニティ」(Sony Classical)
先日、ネットサーフのおり、ふと思い立って宮澤淳一氏のWebpageを訪れてみたところ、
この秋,グールドのゆったりとした演奏を集めた "...And Serenity" というアルバムがソニー・クラシカルによって編成されました。(略)日本盤では,ボーナス・トラックとして,ブラームスの間奏曲イ長調Op.118, No.2 の別ヴァージョン(1959年録音?)を,正規ヴァージョン(1960年録音)とともに収録してもらうことになりました。世界初CD化です!
との記事を見かけた。
ボーナス・トラックはともかく、「グールドのゆったりとした演奏」には惹かれるものがあった。彼のリリカルな音楽は、心に沁み入り静かな感動を生む。
もしかしたら新たな愛惜佳曲を見つけられるかもしれない、と期待して、帰宅途中で音盤屋に立ち寄り、購入。
収録曲は15(ボーナス・トラックを除く)、そのうちブラームスが4曲を占め、バッハが2曲しかない。
メンデルスゾーン;無言歌R・シュトラウススクリャービンからも2曲ずつ採られているので、バッハの少なさが目を惹く。
また、シベリウス;ソナチネ第2番第2楽章グリーグ;Pソナタ第2楽章が含まれているのが、北欧音楽ファンとしては嬉しいところだ。
こうしたあたりに編者の趣味が現れているのだろうが、通して聴くと(曲間の休止がとても短いのも特徴)、これはこれで筋の通った選曲と納得させられる。もちろん、まったく別なコンセプトで編むことも可能だろうが…。
アルバム・タイトルは、ライナーノート冒頭に掲げられたグールドの言葉
芸術の目的は、アドレナリンの瞬間的な放出ではなく、驚きと穏やかな心の状態を( a state of wonder and serenity )、生涯かけて築いてゆくことにある。
に基づく。
 

4月12日(月): 

 

レオポルト・ストコフスキー(指揮) ロンドン響 ほか
バッハ(ストコフスキー編);トッカータとフーガ ほか(BMG)
1997年頃にリリースされた、「ストコフスキー・ステレオ・コレクション」の別巻的な1枚。リハーサル音源や断章が中心になっている。
唯一全曲演奏されているのが標記のバッハ(1974年7月録音)。この指揮者の名刺のような曲だが、20分程度のリハーサルと併せて収録されている。
その他、
ベートーヴェン;交響曲第6番の断片(NBC響、1954年3月)、
マーラー;交響曲第2番のリハーサル(ロンドン響、1974年7月)
ワーグナー;序曲「リエンツィ」のリハーサル(ロイヤル・フィル、1973年)
が収められている。
某オークションに出品されていたもので、こうした音源は再発売されないことが多いので、落札してみた。
 
ダヴィド・ゲリンガス(Vc) ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮) モスクワ放送響
チャイコフスキー;Vcと管弦楽の作品集(CANYON)
フェドセーエフにこうした録音があったとは知らなかった。某オークションに出品されているのを見つけたもので、彼のCANYON録音は聴き逃せないと落札。
ロココ変奏曲奇想的小品を筆頭に、Vnでよく聴く感傷的なワルツ瞑想曲、あるいはアンダンテ・カンタービレなど、全部で9曲を収録している。
1995年5月・1996年3月、モスクワでの録音。
 
桐山建志(Vn) 小倉貴久子(Fp)
メンデルスゾーン;Vnソナタ全集(ALM)
桐山さんの新譜を演奏者のWebpage直販で購入、一般発売に先行して入手できた。
ホ短調協奏曲がポピュラー曲中のポピュラー曲であるのに対し、彼のソナタは演奏・録音の頻度があまり高くない。
ヘ長調(1820年)・ヘ短調(1823年)・ヘ長調(1838年)の3曲が通常知られているものだが、長調の2曲は作曲者の生前には出版されないまま忘れられ、近年ようやく復活したものである。
当盤もその3曲を収めるが、楽譜の扱いについて綿密な検討・校訂が行われているのが特長。
1820年のヘ長調ソナタでは、出版譜の誤りや行き過ぎた補筆等を自筆譜に基づいて訂正しており、ヘ短調ソナタでは最新の校訂版を採用。
更に1838年のヘ長調ソナタについては、通用のメニューインによる再編補筆版を排して、初稿時の状態を再現した演奏と、作曲者による改訂稿(第1楽章途中まで)による演奏の両方を収録している。
2003年8月、牧丘町民文化ホールでの録音。
 
桐山建志 & 大西律子(Vn)
ヴァイオリン音楽の領域 第2巻(ALM)
上記メンデルスゾーン同様、演奏者のWebpage直販で購入した桐山さんの新譜。
第1巻ではバッハ;Vnソナタ第1〜3番武久源造と演奏していたが、今回はバロック・現代とり混ぜ、無伴奏曲・Vn二重奏曲を選曲している。
即ち、
バロック・無伴奏…テレマン;幻想曲第9番
バロック・二重奏…ルクレール;2Vnソナタ変ロ長調・同ホ短調
現代・無伴奏…ヒンデミット;無伴奏Vnソナタ op.31-1
現代・二重奏…プロコフィエフ;2Vnソナタ op.56
また、桐山自身の作品・編作で、
無伴奏…「ふるさと」変奏曲
二重奏…モーツァルト;トルコ行進曲
を収録しているのも面白そうだ。
もちろん楽器も、古楽器仕様のものとモダン楽器を持ち替えている。
2003年3月、埼玉県・コピスみよしでの録音。
 

4月11日(日): 岡本薫『著作権の考え方』(岩波新書)を読了。
 このところ、「著作権法改正により輸入盤が規制される」との情報が各ML等で報告されており、かねて好著との評判を耳にしていたので買ってみたもの。
 複雑な著作権法令を的確に腑分けする論理の鋭さ、問題点を摘出する手さばきの見事さ、それを一般読者向けに解き明かす語り口の巧さ、まさに第一級の書き手である。とても昨年まで文部科学省の担当課長(文化庁長官官房著作権課長)だったとは思えない。
 デジタル化、ネットワーク化の進展により「一億総クリエーター、一億総ユーザー」となった現在、誰もが著作権問題を意識しなければいけないこと、著作権問題には常に権利者と利用者の利害の対立があって一義的な公正さは存在せず、常に両者が合意形成の努力を払わなければならないこと等々、蒙を啓かれる指摘に満ちている。
 斉諧生のようにWebpage運営を通じて、他の著作権者が作成したコンテンツを利用すると同時に、自らコンテンツを創り出す立場にある者として、熟読玩味すべき名著と言えよう。
 
 本書では、いま話題になっている輸入盤規制問題についても詳述されている(139〜145頁、ただし、執筆時期が遡るので、今回の法改正に関する直接の記述はない)。

 斉諧生的に、今回の問題を簡単に解説すれば、
・日本のレコード会社が、アジア各地で生産している(ライセンス生産を認めている)J-POP系のCDは、現地の物価水準に合わせた価格設定をしているため、日本円に換算すれば非常に安価である。
 (もちろん海賊版ではなく、著作権が適正に処理されている商品。)
・これらが逆輸入されると、国内盤との価格差が大きく、国内盤の販売を阻害する。
・そこで、国内盤が販売されているCDについて、著作権法上、「無断で輸入されない権利」を設定し、逆輸入盤の流入を阻止できる仕組みを可能とする。
というもの。
クラシックの場合、「アジア生産の逆輸入盤」というものは存在しないが、問題はDGGやDECCA、BMGやEMIなど国内盤が生産されている大手海外レーベル。
理論的には、
・ヨーロッパやアメリカなど本国で生産されるCDに「日本での販売禁止」のシールを貼るなどして輸入を禁止し、日本では国内盤だけを流通させる。
・(更に悪辣なことを考えれば、)その上で国内盤の価格を改定すれば、たとえ1枚5,000円になっても消費者は買わざるを得ない。
ということが可能になる。
 
もちろん、それで収益が改善し事業が充実するという効果は見込めるが、今の大手レーベルの国内販売会社の在りようを見たとき、「充実」させてもしかたがない、と思わざるを得ないていたらくである。
余談だが、妙な解説を付けたりジャケット・デザインを変えた(しかも音質が劣化していることすらある)国内盤を作るより、国内会社が輸入盤に帯(簡単な日本語解説付き)を巻いて流通させれば、それで結構なのではないか。

 この問題に関して、著者は次のような声を紹介するなど、どうやらレコード業界に批判的らしい。

衣料品から自動車に至るまで、国産品の競争力が低下した場合には、生産拠点の海外展開など、各業界が血のにじむような努力をしてきた。
コンテンツ業界だけが、海賊版でもないものについて『法律で輸入を止めてくれ』などと主張するのはおかしい。
各業界が不況の中でも『消費者』を中心に戦略を考えているのに、『消費者に高いものを買わせる』という法律を作れというのは理解に苦しむ。
 ただし、その一方で「中古品の流通に悩みたくないなら、法規制にすがるよりも、コピーコントロール等の自助努力を盛んにすべき」とするなど、多少、歓迎しかねる意見もお持ちの様子だ。
(もちろんCCCDのような欠陥方式によるコピーコントロールでなければよいのだが。)

 音盤狂昔録平成16年3月分を追加。

 先日入手したCD・LPの情報をマルケヴィッチ・ディスコグラフィ宇野功芳・ディスコグラフィに掲載。


4月9日(金): 

 

デイヴィッド・ロイド・ジョーンズ(指揮) スコットランド・ナショナル管
ディーリアス;管弦楽曲集(NAXOS)
ディーリアスの有名な管弦楽小品を中心に10曲を集めた新譜。
「そり乗り」「春初めてのカッコウを聴いて」「河の上の夏の夜」等々、愛惜佳曲書で紹介した曲目が並んでおり、買わざるべからず。
その他の収録曲では「春の朝」「幻想的な踊り」等が比較的録音が少ないものなので有り難い。
2002年8月、グラスゴーのヘンリー・ウッド・ホールでの録音。
なお、日本語帯に記載されている邦題が独特で目を惹く。
特に "On Hearing the First Cuckoo in Spring" を、「春、かっこうの初音を聞きて」と表記しているのには少し違和感があった。斉諧生の語感では、「初音」は鶯に限って使われる単語なのである。
もっとも調べてみると、季語としては、鶯だけではなくホトトギスにも用いられることが判った。しかも、ホトトギスは「郭公」と漢字表記されることが珍しくない(その他「時鳥」「不如帰」「子規」等)。
古くは、ホトトギスとカッコウを区別せず、同じ鳥が季節に応じて「テッペンカケタカ」と「カッコー」を啼き分けると考えていたらしい。
したがって、「カッコー」と啼く声に「初音」の語を適用するのは、あながち間違いではない、ということになる。
どうも古人は、鳥の声を多感に聞いていたにもかかわらず、その正体にはあまり関心がなかったようだ。(他にも、ブッポウソウとコノハズクが混同されていた例が有名)。
 
ゲーリー・グラフマン(P) スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮) ミネソタ管
スクロヴァチェフスキ;管弦楽のための協奏曲・ニコロ協奏曲(REFERENCE RECORDINGS)
スクロヴァチェフスキ、ミネソタ管、RRレーベルといえば、ブルックナー;交響曲第9番の名盤が思い起こされる。
かねて指揮者=作曲家の自作自演には興味も持っていることもので、当盤も買わざるべからず。
収録されている2曲とも、世界初録音とのこと。
「管弦楽の〜」は、少し前にポーランド国立放送響盤(POLSKIE RADIO、2003年5月録音)を入手しているが、録音は当盤が少しだけ早い(2003年3・4月)。
その時にも書いたが、第1楽章は「ミステリオーソ」と指定され、第2楽章には「アントン・ブルックナーの昇天」と副題が付いている。
「ニコロ〜」は、右手を負傷して演奏活動の第一線から退いたゲーリー・グラフマンのために、左手だけの協奏曲として書かれ、2003年2月に初演された曲。
パガニーニ;奇想曲第24番のモチーフをちりばめているところに、題名の由来がある。
 
宇野功芳(指揮) 跡見学園女子大学合唱団
「CD第二集」(自主製作)
某オークションで見つけて仰天した。
どうやら、合唱団が記録用に作成したとおぼしいCD-Rで、ちゃんとしたジャケットがなく、曲目と当年の参加学生の名簿が掲載された色上質紙2ツ折りの紙片が挟まれているという代物。
よくぞこんなものがオークションにと思ったが、ともかくも宇野師の合唱指揮盤ならば入手せざるべからずと落札したもの。
取引終了後に出品者に問い合わせてみたところ、胡乱な品物・来歴ではないことが確認できたので、当欄に掲載する。
曲目は、宇野師お得意のものばかり。
高田三郎;組曲「心の四季」以外は中田喜直;ちいさい秋みつけたなど小品13曲。
「魔笛」第1幕の五重唱「春への憧れ」 K.596「天主の御母なる聖マリアよ」 K.273と、モーツァルトが3曲含まれている。
録音は1991〜97年に及び、明記はされていないが毎年の定期演奏会の録音から抜粋されたものと推測される。
 

4月8日(木): 

 

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮) 読売日響
モーツァルト;交響曲第41番 & ベートーヴェン;交響曲第3番(BMG)
スクロヴァチェフスキの新譜が出ていたので購入。この人の緻密な音楽には、耳を傾けざるべからず。
曲目を見て2枚組かと思ったら、計80分20秒という長時間収録盤。斉諧生所用のCDプレーヤーは少し古めなのか(メカは一度交換)、時々かからない盤があるので不安だったが、これはちゃんと再生している。
ブックレットに指揮者のディスコグラフィが掲載されているが、録音歴が長いわりには音盤が少ないという印象を受けた。当盤所収の2曲も初録音、そもそもベートーヴェンは第5番、モーツァルトは第29番しかCDが無く、しかもその両方が最近リリースされた日本でのライヴ盤である。
モーツァルトは2002年9月20・21日、ベートーヴェンは同月26・28日、それぞれ両日の演奏から編集された模様。
どちらも初日はサントリー・ホール、2日目が東京芸術劇場。複数日の音源から編集されたライヴ盤は珍しくないが、異なる会場のものを混ぜるのはあまり見たことがない。音質上の加工が強めに施されているのだろうが、その弊が出ていないか、心配である。
 
ペーター・リルジェ(指揮) エストニア国立響
シベリウス;交響曲第2番 & ストラヴィンスキー;「春の祭典」 ほか(EESTI RAADIO)
アリアCDさんの試聴記には、いつもわくわくさせられるが、先だって、こんな文章に出くわした(抜粋)。
『わ。こんなスケールの大きい正統派の指揮者がエストニアはまだいたのか。』と驚いた。(略)『春の祭典』はスピード感あふれるストレートでアグレッシヴな演奏。轟音、爆音系ではないが、そのたたみかけるような突き刺す音軍にときおり寒気が走る。迷いなく直線的に突き進むシベリウスは、ヤルヴィの名演にも通じるものがある。大団円の壮大な展開も聴きごたえあり。
エストニアのオーケストラによるシベリウス演奏には興味を惹かれるし、1993年に43歳で早世したリルジェという指揮者の芸術も是非聴きたいと思い、オーダーしてみた。
CD2枚に、次の曲が収録されている。
シューベルト;交響曲第8番「未完成」(1983年12月31日)
シベリウス;交響曲第2番(1981年2月18日)
スメラ;交響曲第2番(1985年6月12日)
ブラームス;大学祝典序曲(1982年9月11日)
ストラヴィンスキー;春の祭典(1986年2月27日)
なお、スメラは1950年生れ、2000年6月に没したエストニアの作曲家。交響曲第2番は1984年の作品で、既にパーヴォ・ヤルヴィの録音がある(未架蔵)。
 
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮) ハレ管
ショスタコーヴィッチ;交響曲第1・6番(ハレ管自主製作)
スクロヴァチェフスキの新譜、買わざるべからず。
このシリーズは前回のリリースが日本になかなか入ってこなかったので(斉諧生はイギリスの通販サイトへオーダー)、自主盤に強いアリアCDにオーダーしておいたのだが、今回は既に一般の輸入盤取扱店にも出回っているようだ。
第1番は1996年11月1日、第6番は翌1997年11月7日、ともにマンチェスターでの録音。ライヴだと思いこんでいたが、ジャケットにはスタジオ録音と明記されている。
プロデューサーはジョン・ボイデン
なお、前回同様、CD-EXTRA仕様でパソコンに挿入するとWeb上の特設ページにアクセスできるようになっているが、現時点では、収録と前後して行われた演奏会の新聞評が閲覧できるのみ。
 
ミリヤム・コンツェン(Vn)
バッハ;無伴奏Vnパルティータ第3番 & バルトーク;無伴奏Vnソナタ ほか(Arte Nova)
コンツェンは斉諧生の好きなヴァイオリニストの一人、ティボール・ヴァルガの弟子。新録音の無伴奏アルバムを、2003年9月に逝去した師の追憶に捧げているというので購入してみた。
収録曲は標記2作品のほか、イザイ;無伴奏Vnソナタ第4番ストラヴィンスキー;エレジーヴァルガ;蛇
ヴァルガの作品は、2002年に、ヴァイオリニストの名を冠したコンクールの課題曲として書かれたものとのこと。
2004年1月、ドイツ・バイエルン州ノイマルクトでの録音。
 
レオポルト・ルートヴィヒ(指揮) ハンブルク・フィル
ヒンデミット;交響曲「画家マティス」 ほか(米REMINGTON、LP)
即物主義と呼ばれることが多いヒンデミットの作品の中で、1934年に書かれたこの曲は作曲者の心情に根ざした真実味を感じさせる。時代の空気とも関係があるのだろう。
あれこれ目に入るかぎり集めているのだが、未架蔵のルートヴィヒ盤がMikrokosmosのカタログに出ていたのでオーダー。
この指揮者も、同時代のドイツ史を生きた人ゆえ、なにがしか感じさせてくれるのではないかと期待している。
(もっともルートヴィヒは、ジョージ・クレア『ベルリン 廃墟の日々』(兼武進訳、新潮社)に実名で登場し、オーストリアでナチスが非合法だった時期からの党員だったことを隠して虚偽の申告をした廉で処罰された、という記事がある。)
シューマン;序曲「マンフレッド」ウェーバー;序曲「オイリュアンテ」をカプリング。
録音データは明記されていないが、マルCは1953年、モノラル録音。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮) ドレスデン・フィル
ヒンデミット;交響曲「画家マティス」・交響組曲「いとも気高き幻想」(独ETERNA、LP)
上記ルートヴィヒ盤同様、「画家マティス」蒐集の一環としてMikrokosmosにオーダーしたもの(ただし、こちらはCDでは架蔵済み)。
カプリングの「いとも気高き幻想」も、好きな曲である。
1980年、ドレスデンのルカ教会での録音。
 
アンドレ・プレヴィン(指揮) ピッツバーグ響
シベリウス;交響曲第2番(独EMI、LP)
ピッツバーグ時代のプレヴィンによるシベリウスといえば、パールマンとのVn協の名盤(EMI)がある。
Vn協については、それ以前にもチョン・キョンファ盤(DECCA)の名伴奏が知られており(オーケストラはロンドン響)、シベリウスの得意な指揮者というイメージがなくもない。
ところが、交響曲録音はこの第2番が唯一のものであり、しかも確かまだCD化されていない筈。
ずっと捜していたが、独盤ながらMikrokosmosのカタログに出ていたのでオーダー、入手できて一安心である。
1977年録音、SQエンコードされている(音質的には同方式の欠点があまり聴かれない)。
それにしても、プレヴィンのシベリウス録音の少なさは不思議である。
当盤を聴くにつけ、少なくとも前期作品(交響曲なら第1〜3番)には、高い適性を有している(いた)と思えるのだが。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) ロンドン響
R・コルサコフ;交響組曲「シェヘラザード」 ほか(蘭Philips、LP)
国内廉価盤LPしか架蔵していない、マルケヴィッチの「シェヘラザード」がMikrokosmosのカタログに出ていたのでオーダー。
もっとも届いた品は、"UNIVERSO-SERIE" の表示がある廉価再発盤だったので、ちょっと落胆している。
 
ヴァレリー・クリモフ(Vn) カルロ・ゼッキ(指揮) ソヴィエト国立響
ベートーヴェン;Vn協(蘇MELODYA、LP)
名匠ゼッキの指揮盤がMikrokosmosのカタログに出ていたのでオーダー。
彼が指揮したベートーヴェン録音は、あまり見かけないので、貴重なLPであろう。
録音データは明記されていないが、マルCは1981年。クリモフのキャリア(1958年のチャイコフスキー・コンクール第1位)を考えれば、録音はもっと遡るかもしれない。
 
ウルフ・ヘルシャー(Vn) ピエール・デルヴォー(指揮) ニュー・フィルハーモニア管
サン・サーンス;Vn協全集(英EMI、LP)
斉諧生がクラシックを聴き始めた頃に、この全集から第3番だけが国内盤LPで単売された。
当時『レコード芸術』での評価が高かったことから購入し、斉諧生にとって「刷り込み」になったという、思い出の演奏である。
その後、輸入盤では全集が出ていることを知ったが、買いそびれたまま、今日に至った。
CD化もされているが、やはりアナログ録音はLPでと思い、今回Mikrokosmosのカタログに出たのを機にオーダーしたもの。
Vn協第1〜3番に加え、序奏とロンド・カプリチオーソハバネラ前奏曲「ノアの洪水」等の小品も9曲を収めている。
名匠デルヴォーの指揮も優れており、今なお通用する名演奏ではあるまいか。
録音データは明記されていないが、マルCは1977年。SQエンコード。
 
ジャン・ピエール・ヴァレーズ(Vn) ベルナール・リンガイセン(P) ほか
ショーソン;Vn、Pと弦楽四重奏のための協奏曲(仏Ades、LP)
見れば買う曲の一つ、ショーソン作品の未架蔵音源がMikrokosmosのカタログに出ていたのでオーダー。
弦楽四重奏は、ヴァレーズが創設し当時音楽監督の地位にあったアンサンブル・オーケストラ・ド・パリのメンバーとのこと。
録音データは明記されていないが、マルCは1983年、アナログ末期のものであろう。
 

4月7日(水): 

 

アンドルー・マンゼ(指揮 & Vn) イングリッシュ・コンサート
モーツァルト;セレナード第12番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 ほか(HMF)
古楽派ヴァイオリニストの中で最も好きな一人であるマンゼ、なるべく集めるようにしているのだが、これは指揮盤ということで買いそびれていた。
某オークションに安価で出品されたのを機に落札したもの。
ブックレットの中を見ると、マンゼは "Violin & Direction" とされており、彼のヴァイオリンも聴けるようである。
標記作品の他、アダージョとフーガ ハ短調セレナータ・ノットゥルナ音楽の冗談等を収めている。
2003年2・3月にロンドンで録音されたもの。
 
小林研一郎(指揮) ハンガリー国立響
ベートーヴェン;交響曲第3番「英雄」(洪RADIOTON、LP)
小林研一郎の珍しいLPが某オークションに出品されていた。
彼の「エロイカ」は、以前、大阪センチュリー響との実演に大感激したことがある(平成7年6月29日)。
どこかで「ハンガリーで録音したレコードがあるが、本人が承認しなかったのでお蔵入りになっている」という噂を聞いたことがあり(真偽不詳)、ずっと気に懸かっていた。
前に一度、Mikrokosmosのカタログに出たこともあったが、売切で取れなかった。
今度こそと、思い切って落札したもの。
1989年8月3日、ハンガリーの東南部、ルーマニア国境に近いベケシュチャバの福音教会におけるライヴ録音とのこと。
 

4月6日(火): 

 

安永徹(Vn) ベルリン弦楽ゾリステン
ドヴォルザーク;弦楽セレナード & エルガー;弦楽セレナード ほか(EMI)
1990年前後は、所謂「バブル」の恩恵か、国内レコード会社の企画盤が多数発売された。これもその一つで、東芝EMIが企画、ドイツ・エレクトローラのスタッフによってベルリンのスタジオで録音された(1990年1月)。
当時も今もレギュラー価格の国内盤は買いそびれがちで、そのままになっていたものが某オークションに安く出品されたので落札したもの。
アンサンブルは、安永氏を中心にベルリン・フィルベルリン放送響ベルリン・ドイツ・オペラ管(いずれも当時の呼称)の首席奏者等12人からなり、ヴォルフラム・クリスト(Va)、イェルク・バウマン(Vc)、クラウス・シュトール(Cb)といった有名奏者が参加している。
標記ドヴォルザーク作品は愛惜佳曲書に掲載した曲である上、シベリウス;即興曲・ロマンスを収録しており、見逃せない。
もっともブックレットに掲載されている安永氏の言によれば、
僕らも今度弾くまで知らなかったほどです。実際楽譜を見て、弾いてみたら、とてもきれいなんですね。
とのこと(苦笑)。
更にヴォルフ;イタリアのセレナードも収められている。こちらは、恩師斎藤秀雄の棒で演奏した思い出があるという。
 

4月5日(月): 

 

ノーマン・デル・マー(指揮) ロイヤル・フィル
エルガー;「エニグマ」変奏曲・「威風堂々」第1〜5番(DGG)
京都市中京区に実在するCafe ELGAR「店主オススメのエルガー!」を拝読していて気になったCD。
詳細は上記Webpageを御参照いただきたいが、抜粋すれば
この国では『知る人ぞ知る』指揮者だった故ノーマン・デル=マー。かれはすぐれたエルガー指揮者でした。(略) なおデル=マーはロイヤル・フィルと「謎の変奏曲」も録音しており、これも隠れた名盤だと思います。
とのこと。
今回、英amazonにオーダーする機会があったので、それに含めたもの。
1975年、ギルドフォード大聖堂での録音。
 
ルノー・カプソン(Vn) ゴーティエ・カプソン(Vc) エマニュエル・パユ(Fl) ミシェル・ダルベルト(P) ほか
サン・サーンス;「動物の謝肉祭」 ほか(Virgin)
近年、新しい人材の輩出著しいフランス系Vn奏者の中で、カプソンは注目している一人。
新譜は買い逃せないのだが、店頭に出ているのはCCCDなので、純正CDを入手すべく、英amazonにオーダーしたもの。
子ども向け(?)のカラフルなジャケットだが、カプリングに同じ作曲家の比較的珍しい作品を収めているのは有り難い(「ピーターと狼」あたりは勘弁してほしいものだ)。
七重奏曲Vn & Hpの幻想曲とVc小品3曲が演奏されており、特に幻想曲ではカプソンのソロがたっぷり楽しめる(Hpはマリー・ピエール・ラングラメ)。
「謝肉祭」と「七重奏曲」は2003年3月にパリのIRCAM、それ以外の小品は2002年12月にスイスのラ・ショー・ド・フォンで録音された。
 
アンドルー・フラー(Vc) マイケル・ダセック(P)
ハールストーン;Vcソナタ ほか(DUTTON)
いつも参考にさせていただいているクラシック招き猫に「夭折した作曲家のもっと聴かれるべき作品」というスレッドが立った。
となれば、ルクーリリー・ブーランジェをはじめアリアーガなど、言及したい人は沢山いるのだが、うかうかしているうちに話題に上り、出る幕もなし。
その後の展開の中で登場したのが、ウィリアム・イェーツ・ハールストーンという、あまり聞き覚えのない名と、彼のVcソナタ。第2楽章では、感涙ものの美しい旋律に載せて、ほの暗い抒情が歌いあげられるという。
知られざるVcソナタの佳品とあらば聴かざるべからず、店頭を捜したが見当たらないので、英amazonにオーダーしたもの。
パリー;Vcソナタハーティの小品3曲をカプリングしている。
1999年7・8月、ロンドンのヘンリー・ウッド・ホールで録音されたもの。
なお、チェリストはロイヤル・フィルの准首席奏者とあるが、現在の楽員名簿には名前がない。ピアニストの姓は原綴 "Dussek" 、「デュセック」と発音するのかもしれないが、上では一応英語風に表記してみた。
 
クリスティアン・ツァハリアス(P) ほか
バッハ;前奏曲集(EMI)
ツァハリアスは、昔、ギュンター・ヴァントと共演したモーツァルト(EMI)を聴いて、正直申してピンと来なかった。
ずっと等閑視していたのだが、最近、斉諧生の周囲で何かと話題になる。
そこで先日、ノリントン(指揮) バンベルク響とのベートーヴェン某オークションで入手、聴いてみるとこれが面白い。
その面白さゆえに純ドイツ伝統系指揮者とは相性が悪く、逆に古楽派ノリントンとはウマが合ったということか。
この人はもう少し聴いてみようと思い、ディスコグラフィの中から、最も興味を惹かれたバッハを英amazonにオーダーしたもの。
所謂平均律クラヴィーア曲集から約20曲の前奏曲部分だけを採り上げ、更にゴルトベルク変奏曲の3つの変奏と、無伴奏Vc組曲第1番の前奏曲を加えている。
ほとんどはピアノで演奏されているが(Vc組曲は左手のみで演奏)、ポルタティフ・オルガンによるもの、木管合奏によるもの(編曲がピアニストによる、演奏は勿論別な奏者)、終結部だけパイプオルガンが鳴り響くもの等々、変わった人だと思わずにはいられない。
とはいえ決して「おふざけ」ではなく、ハッと胸を衝かれる表現も随所に見られ、やはり端倪すべからざるピアニストである。
 

4月4日(日): 

 

アンドラーシュ・アゴシュトン(Vn) ミクローシュ・ペレーニ(Vc) ペーター・ツァバ(指揮) MAVブダペシュト・コンサート管 ほか
ブラームス;Vn & Vc二重協奏曲 ほか(PANNON CLASSIC)
いつもお世話になっているユビュ王の食卓さんの「今日のお買い物」で拝見して驚愕した、ペレーニの未架蔵音源。
御教示どおり、ハンガリーの FOLIO CD POSTA にオーダー、約3週間で到着した。
1997年1月25日、ブダペシュトのリスト音楽院でのライヴ収録。作曲家の没後100年を記念して行われた交響曲全曲演奏会の録音らしい。
ヴァイオリニストと指揮者は、ともにルーマニアのクルージュ・ナポカ出身。
ツァバはフィンランドでの録音活動が目立つが、ブックレット所載の経歴記事によれば、1983年以降フランス・リヨンに住み、同地の音楽院教授で、ブザンソン響及び同歌劇場の音楽監督を務めているとのこと。
アゴシュトンはティボール・ヴァルガ・コンクールで第1位を獲得した後、生地の音楽院の教授を20年間務め、録音当時はドイツ・マールに所在するフィルハーモニア・フンガリカのコンサートマスターの地位にあったという。
また、オーケストラは、ハンガリー国鉄が所有する団体とのこと(極私的百科全書による)。
国鉄の所有といえば、プロ野球のヤクルト・スワローズの前身が「国鉄スワローズ」だったことを思い出す。国民的娯楽の種類が違うということだろうか。
カプリングは、オーケストラの首席指揮者タマーシュ・ガールによる交響曲第3番
 

4月3日(土): 

 

堀米ゆず子(Vn) リチャード・ストルツマン(Cl) ルドルフ・ゼルキン(P) ほか
ベートーヴェン;Cl三重奏曲・P五重奏曲・「カカドゥ」変奏曲(Sony Classical)
1991年のマールボロ音楽祭40周年を期して、Sony Classicalから記念盤が大量に発売された。
カザルス指揮による初出音源も多数含まれていたため、当時はそちらを優先して購入、再発盤や室内楽盤をかなり買い漏らしてしまった。
これもその一つで、先日、某オークションに出品されたのを見て、あの時こういう盤も出ていたのかと、あらためて気づかされた次第。
ストルツマンもさることながら、堀米さんの演奏ならば聴かざるべからずと落札したもの。
三重奏は1974年7月24日、五重奏は同年8月14・18日、「カカドゥ」は1983年7月23日、それぞれマールボロ音楽祭での録音。
 

 先日入手したCDの情報をルクー・ディスコグラフィに掲載。

 一昨日の演奏会の情報を演奏会出没表に追加。


4月1日(木): 

 毎春、京都で行われている京都フランス音楽アカデミーの講師連中によるアンサンブル・スペシャル・コンサート 2004京都コンサートホール(小)を聴きに行く。
 以前は「コンセルヴァトワールの巨匠たち」と名付けられていたが、今年から同じパリのエコール・ノルマル音楽院と提携することになったそうで、名称の変更もそのためだろう。
 また、古楽コースが新設され、その講師として招聘されたシャンゼリゼ管(@フィリップ・ヘレヴェッヘ)の首席奏者も出演の運びとなった。
 意外にといっては失礼だが、ホールは満席、立見の出る盛況。もっとも、アカデミー受講者やその家族友人、あるいは音楽教育関係者とおぼしい姿が目立ち、斉諧生のようなマニアは極めて少数だった模様。

サン・サーンス;タランテッラ
マチュー・デュフォー(Fl) ロマン・ギュイオ(Cl) クリスチャン・イヴァルディ(P)
管楽器の2人は比較的若い奏者で(デュフォーが1972年、ギュイオが1969年の生れ)、両者とも一時期、パリ・オペラ座管の首席を務めていた。
デュフォーはシカゴ響の首席に転じたことで有名になり、ギュイオはソロ活動を中心にしているとのこと。
かなり技巧的な曲だが、息のあった軽快なアンサンブルが心地よい。
 
ドビュッシー;牧神の午後への前奏曲
マチュー・デュフォー(Fl) パスカル・ロジェ(P)
シカゴ響の首席というから、どんな華麗なソロを吹くのかと思っていたが、ゆったりした気品高い演奏だったので感心した。
ただ、いくぶん地味な音楽に終始し、牧神の官能的な世界を開くことがなかったのは、やはりピアノ伴奏では気分が出ないということか。
 
プーランク;Vnソナタ
ジェラール・プーレ(Vn) パスカル・ロジェ(P)
この曲は、スペイン内戦で殺害された詩人ガルシア・ロルカの追悼のために書かれた。
プーレの演奏は、その厳粛な面を表に出したもの。この人の生真面目さがよく出ていた。
全曲を締め括るピツィカートが、ロルカの命を絶った銃声のように聞こえたのは偶然ではあるまい。
ただ、この曲については、数年前に同じホールで聴いたカントロフの演奏が忘れがたい(ピアノは同じロジェ)。プーランクの悪戯っぽいまでに生き生きした味わいを表現しながら、陰の濃い気分も十分に表出されていたのである。
 
ベートーヴェン;弦楽四重奏曲第4番
アレッサンドロ・モッキア & 森悠子 (Vn) ジャン・フィリップ・ヴァッサール(Va) アレット・ズヴェストラ(Vc)
森さん以外の3人は、いずれもシャンゼリゼ管の首席。したがって「古楽奏法で演奏される」と、わざわざプログラムに別紙を挟み込んで、楽器や奏法、楽譜の問題について簡単な解説が付されていた。
とはいえ見たところでは、ヴァイオリンとヴィオラは顎当て・肩当てを使用し、弓の形状もモダン楽器と同じ。ヴィブラートも普通に使っていたし、ガット弦の音色以外には古楽を思わせる演奏ではなかったと思う。(チェロはエンドピンが無く、弓も古い時代の形のもの。)
演奏は非常にすぐれており、ハ短調の劇性とガット弦の音色美が両立し、緊密なアンサンブルから求心力に富んだ音楽が産み出されていた。
 
プーランク;Clソナタ
ロマン・ギュイオ(Cl) パスカル・ロジェ(P)
甲高い音色が耳につくフランス系のクラリネットは元来あまり好きではないのだが、ギュイオの音楽は少し違った。
第2楽章が好例で、柔らかい弱音を多用し、崇高な歌を奏でてくれる。
もちろん必要な箇所では明るく硬質な音色も駆使、第3楽章での疾走は印象的だった。
ロジェのサポートも抜群。Clが出るときは裏に回り、吹いていないときには印象的な高音の美しい音色で耳を奪う。その呼吸の自然な巧みさに、ほとほと感心させられた。
 
ヴィエルヌ;P五重奏曲第2番
クリスチャン・イヴァルディ(P) ジェラール・プーレ & 森悠子(Vn) ジャン・フィリップ・ヴァッサール(Va) フィリップ・ミュレ(Vc)
今日は、この曲を目当てに入場料を払ったようなもの。実演で聴ける機会は極めて貴重だ。
第1楽章の荘厳、第2楽章の幽玄、そして第3楽章で滾る瞑い情熱。その間に見え隠れする優しい慰藉。
いくぶん晦渋の気味もある曲だが、5人の奏者の熱意・至誠が、それを越えて聴衆を引きつけ、なんて良い曲なんだろう…と思わせていたことは疑いない。
プーレの生真面目さは(プーランクよりも)こちらの曲で高い適性を示していたし、ミュレの巧みなソロが要所々々で効果を上げ、イヴァルディも地味なピアノ・パートを担当して、よく音楽を支えていた。
実は5年前(平成11年)に、この京都フランス音楽アカデミーのコンサートで同じ曲が採り上げられ、足を運んだのだが、第1VnやPが不調・大味で、満足のいく出来ではなかった。
今日の成果は、その雪辱を果たして余りあるもの。本当に素晴らしいヴィエルヌだった。
 
アンコール等は、なし。
なお、アカデミー受講者の中から優秀者数名がエコール・ノルマル音楽院等への奨学生に選ばれ、後半の曲目が始まる前に、その発表・表彰が行われた。

 帰宅するとアリアCDほかからCDが届いていた。

渡邉暁雄(指揮) 京都市響
シベリウス;交響曲第2番 ほか(EMI)
渡邉先生のシベリウス、しかも地元京都市響の演奏である。
1972年4月に奈良県文化会館で録音され、翌年LPで発売された音源が、1990年に亡くなった指揮者の追悼盤としてCD化されたもの。
当時店頭で見かけていたのだが、買いそびれていた。先日、某オークションに出品され、今こそと落札したもの。
カプリングが組曲「テンペスト」第1番。LP時代には珍しく、貴重なレパートリーだったろう。
ブックレットに、録音に参加した楽員の名簿が掲載されており、約30年前、懐かしいといえば懐かしい名前が見える。
 
クリストファー・リンドン・ギー(指揮) アーンヘム・フィル
バッハ(マルケヴィッチ編);音楽の捧げ物(MARCO POLO)
リンドン・ギーによるマルケヴィッチ作品の録音が、遂に第7巻に到達した。最初、4枚が一度に出ただけでも驚喜したのに、ここまでくるとは望外の喜びである。
今回は、標記のとおり「音楽の捧げ物」の管弦楽編曲。自演盤(EMI)もあったが、新録音が出るのはまた嬉しい限り。
ブックレットに掲載されている指揮者の文章によれば、このバッハ作品にマルケヴィッチが注目したのは、作曲の師ナディア・ブーランジェが、鍵盤楽器の通奏低音パートを再現したことからだったという。
その作業は、同じくブーランジェの弟子だったディヌ・リパッティのために行われたのだが、彼が夭逝したために日の目を見ないことになった。
マルケヴィッチは、そのパートをそっくり自分の編曲に取り込み、完成した作品を師に献呈したという(このあたり英語の読みに自信なし。誤読があるかもしれない)。
巻末には、マルケヴィッチが指定した3群のオーケストラの配置図も再録されている。
左右に弦楽5部合奏を置き、中央にVn・Va・Vc・Fl・Ob・イングリッシュホルン・Fg・Cemという編成の合奏体が位置する。
録音は1997年4月に行われており、7年間のお蔵入りを経て、ようやくリリースされたことになる。
アリアCDにオーダーしていたもの。
 
ユベール・スダーン(指揮) 国立ロワール管
フランス管弦楽曲集(FORLANE)
スダーンの新譜、しかもデヴィッド・グリマル(Vn)が参加しているというので、アリアCDにオーダーしていたもの。
収録曲は、
オッフェンバック(ロザンタール編);「パリの喜び」(3曲の抜粋)
ベルリオーズ;鬼火のメヌエット
サン・サーンス;ハバネラ(グリマル独奏)
ドビュッシー;小組曲
ワルトトイフェル;スケーターズ・ワルツ
ビゼー;組曲「アルルの女」(序曲・メヌエット・ファランドールの3曲)
と、若干半端で物足りない。
"Vol.1"とあるので、続編に期待したいところだ。
2003年6月、ナントでの録音。
 
ジェームズ・レヴァイン(指揮) シカゴ響
バルトーク;管弦楽のための協奏曲・弦、打楽器とチェレスタのための音楽(DGG)
「弦チェレ」は好きな曲だが、この盤は買い漏らしていた。
バルトークに関してシカゴ響はライナー以来の演奏伝統を誇るが、この指揮者だと楽天的な音楽になっているような気がして敬遠したのである。
某オークションに安価で出品されていたのを機に落札したもの。
1989年6月、シカゴ・オーケストラ・ホールでの録音。
 
エッカルト・ルンゲ(Vc) ジャック・アモン(P)
「チェロ・シネマ」(ARS MUSICI)
このデュオのCDは、以前ピアソラ作品ほかを採り上げたものを聴き、なかなか面白かった。
映画音楽を集めた新譜が出るというので、アリアCDにオーダーしていたもの。
収録曲は多数に及ぶが、摘記すれば、
ショスタコーヴィッチ;「呼応計画」・「ハムレット」・「馬虻」
ヤナーチェク;「存在の耐えられない軽さ」
ピアソラ;「エンリコ四世」・「スール」
ロータ;「8 1/2」
ハーマン;「サイコ」
モリコーネ;「シネマ・パラダイス」
チャップリン;「モダンタイムス」・「ニューヨークの王様」
など。
映画のフィルム・リールを模したレーベル・デザインや、映画館のスクリーンやシートの写真によるジャケット、サングラスに黒いスーツ姿の演奏者ポートレートなど、ドイツのレーベルとは思えないくらい美しい仕上がり(失礼!)。
なお、ルンゲはアルテミス四重奏団の一員として、昨秋に来日していたようで、その折りのインタビューをWebで読むことができる。
 

平成16年1月4日(日): 「作曲世家」にルクー・ディスコグラフィを追加。
平成15年8月24日(日): 倭匠列伝指揮者・宇野功芳を掲載。
平成15年8月24日(日): 50万件アクセスを記念して、ページデザインを全面改訂。
平成15年5月24日(日): 「逸匠列伝」にユッシ・ヤラスを掲載。
平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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