音盤狂日録


9月30日(火): 

 

イザベル・ファウスト(Vn) エヴァ・クピエツ(P)
ヤナーチェク;Vnソナタ & シマノフスキ;神話 ほか(HMF)
現在活躍中のヴァイオリニストではベストを争う一人と目している、ファウストの新盤が出ていたので早速購入。
この人には、いつも渋い選曲で唸らせられるが、今回も意外に音盤の少ないヤナーチェクや、第1曲「アレトゥーザの泉」を除くと全3曲の録音は珍しいシマノフスキ。
更にルトスワフスキ;「スビト」・「パルティータ」をカプリング。
2002年8月、ベルリンでの録音。
既に何度か来日しているのだが、まだ実演を聴く機会に恵まれなかったところ、来年1月にミラーズ・フェスティバル@大和郡山に出演し、シューベルト;幻想曲フォーレ;Vnソナタ第2番等を取り上げるという。
チケットも手配済み、今から楽しみである。

9月29日(月): 

 

リチャード・トネッティ(指揮 & Vn) オーストラリア室内管
ショスタコーヴィッチ;室内交響曲 op.110a ほか(Sony)
先月5日の項に書いたが、グリーグ;「ホルベア〜」ほかの1枚を、このオーケストラから直接購入した。
その際、出荷漏れになっていた、もう1枚のCDが、ようやく届いた。1カ月半ほどもかかったのは、オーケストラ側の問題ではなく、現地の郵便事情らしい。
もちろん、標記のショスタコーヴィッチ作品が、見れば買う曲ゆえ、オーダーしたもの。
"Spirits" というアルバム・タイトルが付されており、ショスタコーヴィッチ以外に、
モーツァルト;Vn協第3番(独奏;トネッティ)
メンデルスゾーン;シンフォニア第10番
ラヴェル(トネッティ編);カディッシュ
ヴェレシュ;4つのトランシルヴァニア舞曲
を収録している。
実は、先日、音盤屋で、まさしくこの盤もう1枚、国内盤を発見したので驚いた。
オーストラリア芸術祭の一環として、来週末に来日公演を行う、記念として発売されたとのことである。
ちょっと口惜しい気分になるのはマニアの性か(笑)。
 
なお、出荷漏れのお詫びということだろうか、サンプラーが1枚、同封されていた。
ハイドン;交響曲第45番「告別」
モーツァルト;序曲「ドン・ジョヴァンニ」
ベートーヴェン;序曲「プロメテウスの創造物」
フィンランド民謡;「アンティン・ミッコ」(Vn独奏;ペッカ・クーシスト)
2分半ほどの小品ながら、ペッカ君のライヴ音源が手に入ったので御機嫌回復、これもマニアならでは(笑)。
 
ステン・フリュクベリ(指揮) ヘルシングボリ響 ほか
ラーション;交響曲第3番 & 「姿を変えた神」(BIS)
これまた見れば買っている佳曲「姿を変えた神」の未架蔵音源が某オークションに出品されていたので落札したもの。
BISのCDでもごく初期に出ているものなので、これまで見落としていたのが不思議なほどである。
1978年5月7日、作曲者の生誕70年記念コンサートをスウェーデン放送協会が収録した音源で(発売は1989年)、交響曲は、作曲者が初演後に全曲上演を禁じて以来、久々に蘇演したものという。
 
大野和士(指揮) 東京フィル ほか
ブリテン;戦争レクイエム(LIVE NOTES)
ブリテンの名作、しかも大野和士の指揮ということで、ずっと気になっていながら価格的に買い渋っていた盤が、某オークションに安価で出ていたので落札したもの。
1993年2月18日、オーチャード・ホールでのライヴ録音。

9月28日(日): 

 

オッコ・カム(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第2番 & 交響詩「フィンランディア」(TDK)
 
オッコ・カム(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第5番 & 「悲しきワルツ」(TDK)
 
オッコ・カム(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第3・6番(TDK)
4月に渡邉暁雄(指揮)による3曲が発売された、ヘルシンキ・フィルの初来日公演(1982年)におけるシベリウス;全交響曲チクルスの、残る4曲が発売されたので購入。
その時にも書いたが、とにかく懐かしい名演奏である。ちょうどシベリウスの後期交響曲への関心が芽生え始めた頃で、FM東京で放送された全曲を録音し、繰り返し聴いたものだ。
今となっては、ホールで聴けなかったのが残念でならない。マルケヴィッチの来日公演などと同様、悔やみきれない逸機の一つである。
曲ごとの収録日・場所は次のとおり。
交響曲第2番(1982年2月4日、大阪フェスティバル・ホール)
交響曲第3番(1982年1月22日、東京厚生年金会館)
交響曲第5番(1982年2月4日、大阪フェスティバル・ホール)
交響曲第6番(1982年1月22日、東京厚生年金会館)
フィンランディア(1982年1月22日、東京厚生年金会館)
悲しきワルツ(1982年2月4日、大阪フェスティバル・ホール)
音源リストには、まだまだ魅力的な演奏家の顔触れが並んでおり、ぜひぜひ更なるリリースを望みたい。

9月27日(土): 

 

ハンス・ライグラフ(P)
シューベルト;Pソナタ第19〜21番 ほか(Caprice)
先だってステーンハンマル;P協第2番のSP録音を入手したライグラフ教授。
Webをあれこれ検索している際に、シューベルトのP作品集があるという情報が得られたので、Swedish Music Shopにオーダーしたもの。
標記の後期ソナタ3曲をCD3枚に振り分け、それを中心に、オール・シューベルト・プログラムで3夜のリサイタルを構成した…という趣向になっている。
スウェーデン放送P2との共同製作で、1989年2月〜1990年12月に、同放送局第2スタジオで録音されたもの。
 
長谷川陽子(Vc) ほか
「ニッポン放送・新日鉄コンサート40周年記念CD」(自主製作)
某オークションで長谷川さんのライヴ音源を収めたCDを発見、彼女の演奏は是非にと落札したもの。
1995年に製作されたもので、標記番組の「プロミシング・アーティスト・シリーズ」(若い演奏家を紹介する企画)の演奏記録を収める。
長谷川さんは、マルティヌー;ロッシーニの主題による変奏曲を取り上げている(Pは林絵里)。1989年3月22日、日本都市センター・ホールで録音されたもので、当時、桐朋学園大学1年在学中とのこと。
その他にも、
藤原真理(Vc) 星野明子(P)
カサド;愛の言葉(1976年11月20日)
竹澤恭子(Vn) 梅村裕子(P)
サン・サーンス;ハバネラ(1983年11月9日)
吉野直子(Hp)
リスト(ルニエ編);うぐいす(1986年5月12日)
田部京子(P)
ブラームス;パガニーニ変奏曲 op.35-2(1987年6月24日)
など、計10人の演奏が収録されている。

9月24日(水): 

 

マイケル・マレイ(Org) エド・デ・ワールト(指揮) サンフランシスコ響
ジョンゲン;協奏交響曲 ほか(Telarc)
名作、ジョンゲンの協奏交響曲は、先だってパンスメイユ盤を購入したところだが、未架蔵が気になっていたTelarc盤が某オークションに出品されていたので落札。
1984年4月、CD草創期の録音。日本語の帯ごと保存されており、当時1枚4,000円で販売されていたことがわかる。今昔の感深し。
フランク;幻想曲・パストラールをフィルアップ。
 
仲宗根かほる(Vo) ヤン・ルングレン(P) ほか
「チム・チム・チェリー」(M & I)
1972年生れの若手ジャズ・ヴォーカリストが、斉諧生御贔屓のジャズ・ピアニスト、ルングレンと共演した盤が出たというので、ずっと気になっていた。
いつものことだが国内盤フルプライスには手が出しづらく、なんとか某オークションで安く入手できないかと狙っていたところ、ようやく、そこそこの価格で出品されたので、落札したもの。
表題作@『メリー・ポピンズ』をはじめ、「私のお気に入り」@『サウンド・オブ・ミュージック』、「踊り明かそう」@『マイ・フェア・レディ』など、映画やミュージカルのナンバーが主力になっている。
甘い声で舐めるように歌われる「リリー・マルレーン」には、ちょっと違和感を覚えるが、これはこちらがマレーネ・ディートリッヒのイメージに捕らわれすぎなのかもしれない。
2003年1月、デンマークでの録音。

9月22日(月): 

 

パトリック・ガロワ(Fl) エマニュエル・クリヴィヌ(指揮) フランス室内合奏団
モーツァルト;Fl協第1番 ほか(VICTOR)
 
パトリック・ガロワ(Fl) フレデリク・カンブルラン(Hp) エマニュエル・クリヴィヌ(指揮) フランス室内合奏団
モーツァルト;Fl協第2番・Fl&Hp協(VICTOR)
クリヴィヌの比較的初期の録音が、2枚揃って某オークション・サイトで見つかったので購入。
収録は2枚とも1985年11月にパリで行われている。
初発時には、スター扱いのFl奏者の陰に隠れて指揮者の名前は全く顕れなかったが、ライナーノートで宇野功芳師は
(クリヴィヌの指揮は)ふっくらとした愉悦感、繊細な思いやりがすばらしく
と讃辞を捧げる。
第1番の方には、ロンド K.184アンダンテ K.315に加え、サリエリ;Fl協 ト長調をカプリング。
録音前年に公開された映画「アマデウス」の影響を感じさせる選曲だ。

9月21日(日): 

 

オーレル・ニコレ(Fl) モーツァルト弦楽三重奏団
ライヒャ;Fl四重奏曲集(DENON)
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)の音盤落ち穂拾い、続く。
彼にはウラディミール・メンデルスゾーン(Va)・藤原真理(Vc)とのモーツァルト弦楽三重奏団としても、あれこれ音盤がある。
ニコレとはモーツァルトも録音しているが、ライヒャが某オークションに出品されていたので落札したもの。
1990年5月、オランダでの録音。

 最近入手した音盤の情報をステーンハンマル・作品表とディスコグラフィパレー・ディスコグラフィアンゲルブレシュト・ディスコグラフィマルケヴィッチ・ディスコグラフィに追加。

 一昨日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。


9月20日(土): 

 休日のこととて、あれこれ再配達の荷物が届く。

ジャン・ジャック・カントロフ(指揮) オーヴェルニュ室内管
チャイコフスキー;弦楽セレナード & 「フィレンツェの思い出」(DENON)
カントロフの音盤で、これまで買いそびれてきたものの蒐集を心がけているところ、その多くがDENONレーベルの現役カタログから姿を消しているので困っている。
このレーベルに関して意外に頼りになるのが米Amazonの "Marketplace"で、あれこれ捜してオーダーしたものが何点か届いた。
この1991年6月に録音されたチャイコフスキーの弦楽合奏作品2点を収めたCDは、宮城谷昌光 『クラシック 私だけの名曲 1001曲』(新潮社)で紹介されていて、そういう録音もあったのかと気づかされたもの。
カントロフの指揮も、芸術家の心のはずみをあまさず表現している。いちど手もとにおいたら手放せない盤である。
とのコメントもあり、ぜひ聴きたいと願っていた。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(指揮) オーヴェルニュ室内管
「ノクチュルヌ」(DENON)
これは1992年6・9月に録音された、「夕暮れ」をテーマに選曲されたオリジナルのオムニバス・アルバム。
大小とり混ぜて11曲が演奏されているが、主なものとしては、
エルガー;弦楽セレナード
ドビュッシー;神聖な舞曲と世俗的な舞曲(Hp独奏 フレデリク・カンブルラン)
ヒンデミット;葬送音楽(Va独奏 フランソワ・シュミット)
あたり。
サン・サーンス;「ノアの洪水」前奏曲とアンダンティーノクライスラー;美しきロスマリンといったVn独奏作品が含まれているが、ソロを弾いているのはカントロフではなく、ゴルダン・ニコリッチ
斉諧生としては、彼も好きなヴァイオリニストゆえ、これはこれで歓迎したい。
そのほか、シューマン;トロイメライフランショーム;ロシアとスコットランドの主題による変奏曲フォーレ;「シャイロック」よりノクチュルヌドヴォルザーク;ワルツ第1・2番ポッパー;レクイエムを収録している。
 
マーヴィス・マーティン(Sop) ジャン・ジャック・カントロフ(指揮) オーヴェルニュ室内管
カントルーヴ;オーヴェルニュの歌(DENON)
カントロフの落ち穂拾い、続く。
御多分に漏れず、この曲集はネタニア・ダヴラツ盤(VANGUARD)で聴き始めた。ついでにいえば、初めて耳にしたのは、やはり宇野功芳師のレコードコンサートであった。
その刷り込みが強烈すぎて、なかなか他盤を聴こうと思うことがなく、これも買いそびれていたもの。
もともとがオーヴェルニュ地方の民謡をカントルーヴがオーケストレーションした曲集であるが、ここでは、更にジャン・ギー・ベイリーという人が室内管弦楽へ再編曲した版を使用しているとのこと。
最も有名な「バイレロ」など15曲を歌っている。歌手はアメリカの人。
録音が1992年6・9月というから、上記「ノクチュルヌ」と並行して収録されたのであろう。
 
ラファエル・オレグ(Vn & Va) ジェラール・ウィス(P)
シューベルト;幻想曲 & アルペジオーネ・ソナタ ほか(DENON)
Amazon Marketplace でのDENON盤捜しのついでに、大好きな幻想曲の未架蔵盤を見つけてオーダーしたもの。
新譜の時の評判は、たしかあまり芳しくなかったと記憶しているが、ともあれ聴いてみないことには始まらない。
ロンド ロ短調と、Vaに持ち替えてのアルペジオーネ・ソナタをカプリング。
録音は1993年4月、スイス・チューリヒにて。
 
ポール・パレー(指揮) デトロイト響
ベルリオーズ;幻想交響曲(英Mercury、LP)
再発盤しか架蔵していなかった、パレーの名演、幻想交響曲のオリジナルLPを某オークションにて落札。
本来の米盤ではなく、英EMIのプレスなので、厳密には「オリジナル」と言えないが、以前、信頼している音盤店主が「私は英プレス盤しか集めていません」と漏らされたことから、可能であれば英盤を買い求めるようにしている。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) ソヴィエト国立響 ほか
ブラームス;アルト・ラプソディ & コダーイ;ハンガリー詩篇 ほか(仏Philips、LP)
再発の米盤で架蔵していたマルケヴィッチのモスクワ録音の仏盤LPを某オークションで落札したもの。
A面がコダーイ、B面がブラームスで、アルト・ラプソディと悲劇的序曲が収録されている。
このとき、ストラヴィンスキー;詩篇交響曲 & ムソルグスキー(マルケヴィッチ編);6つの歌曲も録音されているのだが、そちらのLPはいまだに入手できていない。
 
レジナルド・グッドオール(指揮) サドラーズ・ウェルズ歌劇場管 ほか
ワーグナー;楽劇「ジークフリート」(英EMI、LP)
イギリスのワーグナー指揮者グッドオール畢生の遺産、『指環』全曲録音のうち残っていた「ジークフリート」をArs Antiquaのカタログで見つけ、オーダーしたもの。
前後4年にわたった全曲録音の中で、最も早く1973年8月に、ロンドン・コリシアム劇場でライヴ収録された5枚組。
…にもかかわらず売価はわずかに1枚分程度、有難くはあるが、悲しくもある。
何度も触れているが、この指揮者については、昨年、山崎浩太郎氏による素晴らしい評伝『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(洋泉社)が刊行された。是非是非お目とおしいただきたい名著である。
 
アウリッキ・ラウタヴァーラ(Sop) ほか
「歌とロマンス」(瑞TELESTAR、LP)
Ars Antiquaのカタログでステーンハンマル作品の未架蔵音源を見つけたのでオーダーしたもの。
1941〜43年頃の録音を覆刻したLPで、A面に、先日、シュミット・イッセルシュテットとの録音を入手したアウリッキ・ラウタヴァーラの歌唱8曲を収めており、うち2曲が、ステーンハンマル作品。
「星の瞳」(ブー・ベルイマンによる5つの歌)
「森の中で」(歌曲集「歌と唄」)
ピアノはスティグ・リビング、1943年11月1日の録音である。
B面は男女5人の歌手を集成しているが、その中に、ヨースタ・ビョーリン(Ten) オット・シンデル管によるスヴァーリエも含まれている(1941年5月27日)。
この人はユシー・ビョーリン(ユッシ・ビョルリンク)の末弟とのこと。
 
デジレ・エミール・アンゲルブレシュト(指揮) パリ・フィル
グリーグ;組曲「ペール・ギュント」第1番(米Columbia、SP)
このところSPからは手を引くようにしていたのだが、アンゲルブレシュトの未架蔵音源がArs Antiquaのカタログに出ていたので、買わざるべからず。
オーケストラの名称は、レーベル面に"GRAND ORCHESTRE PHILHARMONIQUE of Paris"とあるが、不詳。
SP2枚に、「朝」、「オーゼの死」、「アニトラの踊り」、「山の魔王の宮殿にて」を収録している。
なお、この盤はアルバムに入った状態で届けられた。斉諧生にとって、これは初めての経験。
 
ハンス・ライグラフ(P) シクステン・エケルベルイ(指揮) ヨェーテボリ響
ステーンハンマル;P協第2番(瑞Radiotjänst、SP)
おお、この盤を入手することができようとは…!
ステーンハンマルの代表作の一つであるこの曲の、(おそらく)史上初の音盤である(1945年12月10〜11日録音)。
ヨェーテボリ響のディスコグラフィに掲載されているデータをステーンハンマル・作品表とディスコグラフィに転載したはいいが、特殊なレーベルのSPだけに、もはや生きているうちに聴くことはできまいと思っていた。
同じレーベルから出た交響曲第2番のSPを架蔵できただけでも僥倖と思わなければならないと、言い聞かせてきたのである。
ところが先日、Ars Antiquaのカタログを見て、目を疑った。このセット(SP4枚組)が掲載されているではないか!
いつもはカタログ全体をチェックしてからオーダーのメールを出すのだが、今回は、とるものもとりあえず、これだけを注文して確保を期し、残りはあとから追加した。
ピアニストについては、原綴"Hans Leygraf"をこれまでディスコグラフィでは「レイグラフ」と表記してきたが、「ライグラフ」が適切なようなので、そちらで検索してみたところ、出るわ出るわ…、多数の記事が得られた。
なんのことはない、斉諧生が知らなかっただけで、名教授として著名な人物。日本でも、伊藤恵若林顕をはじめ、たくさんの人が師事しておられるようだ。
1920年ストックホルム生れだから、録音当時25歳、俊英ピアニストであったのだろう。
その後ドイツへ移り、80歳を超えた今も健在で、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院で教授を務めているとのこと。

9月19日(金): 

 長谷川陽子(Vc) & 福田進一(G) デュオ・リサイタルを聴く。
 会場はいずみホール、「クラシック×ボサノバ」と題されている。すなわち、今年5月に発売されたアルバム「WAVE〜ジョビンへのオマージュ」に収録されている作品を中心に選曲したコンサート。
 会場の入りは芳しからず、5〜6分といったところか(残念)。
 なお、二つの楽器の音量バランスを考慮してのことと思われるが、ギターにはPAが使用された。その特徴ある形態から、富士通テンのエクリプスシリーズの製品であることが見て取れた。

今日の曲目は
ポンセ;エストレリータ(福田)
ディアンス;サウダージ第3番(福田)
S.アサド;ジョビニアーナ第3番(福田)
カサド;無伴奏Vc組曲(長谷川)
S.アサド;ジョビニアーナ第4番(デュオ)
(休憩)
ヴィラ・ロボス;アリア(ブラジル風バッハ第5番より)(デュオ)
ボンファ;カーニバルの朝(「黒いオルフェ」より)(デュオ)
S.アサド;ジョビン組曲(デュオ)
ニャタリ;VcとGのソナタ(デュオ)
というもの。
デュオの曲は、すべてCD収録作品。
 
斉諧生にとってポンセは、ハイフェッツによるヴァイオリン編曲で馴染み深い(元は歌曲)作品。
ギター編曲は、ホセ・ルイス・ゴンザレスによるものだが、オリジナルのギター曲のような自然さがあった。
さて、福田氏の実演には初めて接するわけだが、素晴らしい美音と小粋な節回しに舌を巻く。ポンセの音楽から夢幻的な雰囲気がたちのぼるさまを、堪能させてもらった。
またディアンスでの軽快な音の動き、アサド作品の精妙さにも感じ入った。
 
ここまで3曲、PAの加減か、ちょっと低域の響きがだぶつく感じを受けたのは、少々残念。
 
続いて長谷川さんが登場。
斉諧生にとって彼女の実演は今年1月のプラハ響とのドヴォルザーク以来、ソロだと昨年11月から10カ月ぶりに接することになる。
カサドの無伴奏組曲は、平成10(1998)年に集中的に弾いておられ、斉諧生も年間に3回、聴くことになった。それぞれ微妙にアプローチが異なっていたことを、懐かしく思い出す。
今日は、前後の曲目が、いずれも南米系の作曲者による、ごく近い時期の作品ばかり。
1926年作曲とはいえ保守的な作風のカサド作品が浮いた感じにならないか懸念していたが、いつもより一際鳴りっぷりが良く、舞曲リズムの切れも爽やかで、現代ギター曲の中に入って全く違和感のない出来映え。
5年前の各演奏より、更に一段、高いステージに上がった感じ。彼女の伸びようは誠に心強い。
 
休憩を挟んで、セルジオ・アサドのデュオ作品2曲が演奏されたわけだが、ちょっと疑問が生じた。
リズムの扱いなど、実に精妙な書法なのだが、どうにもチェロとギターの音が重なって聴きづらい。
だいたい同じような音域で、両方の楽器が動く。チェロには弱音器を付けさせたりしているけれども、長谷川さんが粘るとギターの音をマスクしてしまうことが多い。
思うに、作曲者が得意とするギター二重奏の、片方をチェロに置き換えたような書きぶりになっているのではなかろうか。
 
この印象は、ニャタリのソナタを聴いて、はっきりすることになった。
こちらは、チェロが動く音域の範囲の広さ、音の扱い方など、自ずとギターと対比をなし、片方が埋もれてしまうことがない。
あまり一般的でない編成ゆえに演奏機会は少ないが、なかなかの佳曲と感じ入った。
 
記述の順序が前後するが、有名なヴィラ・ロボスアリアは、長谷川さんの伸びやかな歌が素晴らしく、終結、弱音器を付した遙かな響きには、胸に沁みいるものがあった。
 
アンコールは3曲。
まず、ラヴェル;亡き王女のためのパヴァーヌ(デュオ)
これは素晴らしかった。
やはり弱音器を付けたチェロが、粘らず淡々と、しかし情感深い歌を奏でる。
ギターの細く鋭くはじく音が、曲調にぴったり、心の震えをかき鳴らす。
ぜひ、愛奏していただきたい小品である。
ファリャ;粉屋の踊り(「三角帽子」より)(福田)
ジョビン;黄金の歳月〜ルックス・ライク・ディセンバー(デュオ)
 
最後に蛇足ながら、曲間のおしゃべりが楽しかったこと、長谷川さんが、珍しく休憩の前後でドレスを着替えられたことを付言しておこう。

9月17日(水): 

 

山下和仁(G)
ウォルトン;5つのバガテル & ブリテン;ノクターナル ほか(CROWN)
一昨日の記事で触れた渡辺和彦『クラシック極上ノート』(河出書房新社)に、「ブリテンの『闇』」という一章がある。
ブリテンの音楽の中には、どこか底知れぬ『闇』のようなものが潜んでいる。(略)音楽それ自体はじゅうぶんに『暖かい』のに、どこかで聴き手を寄せつけないものをもっている。
この指摘には、頷けるものがある。例えば弦楽四重奏無伴奏Vc組曲、あるいはフランク・ブリッジ変奏曲等に顕著に聴き取ることができる。
渡辺氏が、その「闇」に気づいたきっかけが、標記の「ノクターナル」だったという。
これはぜひ聴いてみたいと思い、音盤屋の店頭で捜してみたところ、当盤が見つかり(というか、それ以外の盤が見つからず)、レジへ持っていったもの。
カプリングのウォルトン作品も、山尾敦史氏が『近代・現代英国音楽入門』(音楽之友社)の中で
筆者は『《5つのバガテル》演奏推進委員会』を作っているのだが(現在会員1名)、一人でも多くの人にこの曲を知ってもらいたい
と書いておられ、ずっと聴いてみたかった曲である。
更にティペット;ザ・ブルー・ギター武満徹;フォリオスを収録している。
2001年6月、カナダ・バンクーバーでの録音。

9月16日(火): 

 

ゾルタン・コチシュ(P) イヴァン・フィッシャー(指揮) ブダペシュト祝祭管
バルトーク;P協第3番 & スケルツォ(Philips)
実は、この2曲を含む全集盤を今年3月某オークションで落札している。
ところが盤の状態があまり良くなかった。もちろん出品者からはお知らせいただいていたのだが、いまや入手困難なセットゆえ、それを承知で落札したのだが…。
今回、某オークションで美品が出品され、堪らず落札したもの。
輸入盤は輸入盤だが、中味がアメリカ・プレスだったので、ちょっと落胆。まあ仕方ないのだけれども。
これで、全集が単売3枚で揃ったことになる。
協奏曲は1984年12月、スケルツォは翌年6月の録音。

9月15日(祝): 新刊渡辺和彦『クラシック極上ノート』(河出書房新社)を読了。
 『現代ギター』誌連載記事を中心に短文をまとめたもので、この著者としては、やや密度が薄いものだ。
 とはいえ、1冊の本の中に、ステーンハンマルリリー・ブーランジェが揃って言及されるのは貴重だ。前者はパーヴォ・ヤルヴィ(指揮)の交響曲第2番(Virgin)、後者はガーディナー(指揮)の詩篇集(DGG)が、簡単に紹介されている。

 昨日入手したCDの情報をマルケヴィッチ・ディスコグラフィに追加。

 先だって、シュミット・イッセルシュテット・ディスコグラフィに掲載し忘れていた架蔵LPがあるのに気づいたので、データを追加。
 ヴェルディ;歌劇「運命の力」の全曲盤(1952年、放送用録音?)で、ルドルフ・ショック等がドイツ語で歌っている。

 一昨日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。


9月14日(日): 

 

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) ウィーン響 ほか
メンデルスゾーン;カンタータ「最初のワルプルギスの夜」 ほか(Archipel)
怪しげなレーベルの製品ではあるが、マルケヴィッチの未架蔵音源なので買ってみる。
標記のメンデルスゾーン作品は、ジークリンデ・ワーグナー(Sop)、アントン・デルモータ(Ten)、オットー・エーデルマン(Bs)、ヴィーナー・ジングアカデミーという歌唱者による、1952年4月24日、ウィーンでのライヴ録音とされる。
この指揮者としては珍しいレパートリーだが、冒頭から鋭く突進する音楽の感じは、いかにも彼だ。音質はあまり良くないが、聴きづらいほどではない。独唱はリアルに録れている。
なお、「ワルプルギスの夜」とは、4月30日の夜を指す。
この夜、ブロッケン山に魔女が集うと考えられ、現在でもヨーロッパ各地で、魔女を追い払うための行事が実施されるそうだ。
特にスウェーデンでは、遅い春の到来を祝う祭として盛大に行われるとのこと。
フィルアップに、先般、LPで入手した、フィレンツェ5月音楽祭管とのSP録音が覆刻されている。
モーツァルト;ドイツ舞曲「そり遊び」
リスト;メフィスト・ワルツ
シャブリエ;ポーランドの祭
いずれも1946年5月、マルケヴィッチが戦後初めて録音したもの。Archipel盤には「初CD化」とあるが、以前、読者から"FONOTIPIA"というレーベルで出ている旨、御教示いただいたことがある。
 
ピエール・パンスメイユ(Org) ダニエル・トシ(指揮) ペルピニャン管
ジョンゲン;協奏交響曲 & コープランド;Org交響曲(SOLSTICE)
音盤屋の棚を眺めていると、ジョンゲンの名作の未架蔵盤があった。
たしか、あまり芳しからぬ評をWebで読んだ記憶がある…と思ったが、カプリングがコープランドの出世作という、センスの良さに惹かれてレジへ持参する。
帰宅して調べてみると、上記Web評は、浮月斎大人のものであった。大人(先月から『レコード芸術』誌に御登場)も収録曲の組合せは評価しておられる。
指揮者は1953年ペルピニャン生れ、パリ音楽院の出身で、作曲家としても有名なようだ。
オーケストラは、1983年にトシによって創設された団体とのこと。正式名称は「ラングドック・ルシヨン州ペルピニャン管」。
ペルピニャンといえば、斉諧生にとってこそ、1951年に第2回のカザルス音楽祭が開催された土地として記憶に刻み込まれているが、一般には無名の街であろうか。ペルピニャンを含むラングドック・ルシヨン州も、Webで検索すると、ワインの産地としてのみ知られているような感がある。大分県と姉妹提携しているそうな。
2001年11月25日、ペルピニャンの洗礼者聖ヨハネ大聖堂におけるライヴ録音。

9月13日(土): 

 ヴェッセリン・パラシュケヴォフ(Vn)のリサイタルを聴く。
 パラシュケヴォフ氏の演奏会は、昨年7月15日にも聴きに伺った。その折りにも紹介申し上げたが、氏はブルガリア出身、レニングラードほかで学び、ヘンリク・シェリングの薫陶を受けた。1973年からウィーン・フィルの、1975年からケルン放送響のコンサートマスターを務め、1980年から、サシュコ・ガヴリーロフの後任として、エッセン音楽大学の教授を務めている。
 今日の会場は、伊丹市の「福円寺樂精舎 こうる(響流)」という小ホール。
 浄土真宗(本願寺派)の寺院の中にある音楽ホール…というか、確認はしていないが、お寺の集会所に音楽ホールの設備・機能を持たせたようなスペースであった。
 小さめながら、マナ・オルゲルバウ製のパイプ・オルガンを備えている。ケース上部に法輪のシンボルが飾られているのが、お寺らしくて良い。(^^)
 ただ、空調が発する暗騒音のレベルが、通常の音楽ホールより高めで、ちょっと気になった。
 主催は同地の御婦人方のサークルのようで、手作りの暖かな雰囲気があり、100席強が満員の盛況であった。
 楽章間での盛大な拍手や演奏中に移動する客の存在が気にならぬではないが、街の中で身近に音楽が享受できる豊かさを素直に喜びたい。

今日の曲目は
ベートーヴェン;Vnソナタ第5番「春」
ブラームス;Vnソナタ第3番
(休憩)
チャイコフスキー;メロディ & ワルツ・スケルツォ
メンデルスゾーン;歌の翼に
ウラディゲロフ;歌曲
サラサーテ;カルメン幻想曲
というもの。
前半ソナタ・後半小品という、伝統的なスタイル。
 
このヴァイオリニストについては、昨年の記事で、
渋く暖かい音色で、特にE線の音色が硬くならずキラリと光る美しさ。重音はピタリと極まって少しもぶれない。(略)時に『かすれ』や『滲み』があるものの、不思議な余裕を感じる演奏で、まことに滋味豊か。
と書いた。
そうした特徴は、もちろん今回も変わりはないが、会場の音響や座席位置が良かったためか、パラシュケヴォフの音色の豊富さを強く印象づけられることになった。
弦に弓を当てる位置を、指板寄りから駒近くまで、細かくかつ正確にコントロールしているのが見て取れたほか、左手の使い方やボウイングに工夫を凝らしているのだろう、曲により、また音楽の起承転結に応じ、実に様々な音色が紡ぎ出されていく。
最初のベートーヴェンから音色の清潔な美しさは際立っていたが、次にブラームスが始まったとたん、驚いた。
音の趣が一変、まさに「ロマン的」としか言いようのない豊麗な色彩を帯びていたのである。
重音の和声の美しさは相変わらずで、それが多用される第2楽章 アダージョの素晴らしかったこと!
音楽も更にスケールを増し、白熱して、会場の容積から溢れ出してしまう感があり、当夜の白眉となった。
惜しむらくは、ピアノの響きがやや大味であったこと。これは楽器のせいかもしれない(いわゆるコンサート・グランドではなかった)。
 
休憩後の小品では、メンデルスゾーンが一段と良く、特に後半、高音の哀切さは筆舌に尽くしがたい。
 
チャイコフスキーは、あくまで楷書で画くヴァイオリニストとの相性が、あまりよくない感じ。
故国ブルガリアのウラディゲロフ作品は、東洋風の音階が面白かったが、もうひとつ聴き映えのしない音楽だった。
とはいえ、当夜の曲目の中で、楽器が最も気持ちよく鳴っていたように感じたのは、やはり「お国もの」のゆえか。
 
サラサーテは、左手のピツィカートやフラジョレットが頻出する技巧至難の作品だが、パラシュケヴォフの技巧が冴えわたり、終結での猛烈な追い込みには舌を巻いた。
これだけのメカニックの強さを安定して発揮するのだから、凄いとしか言いようがない。その上、「これ見よがし」なところがまったくなく、終始、端正な舞台姿とニコリともしない表情が一貫する。
 
もっとハラハラさせたり、汗が飛び散るような熱演ぶりをみせたりする方が、客受けはよいのかもしれないが、そういう世界から正反対のところに居るのがパラシュケヴォフの真骨頂だろう。
この人が、ブラームスの協奏曲で、オーケストラと堂々、渡り合うのを聴いてみたい。
 
アンコールは、
ヴィニャフスキ;ポロネーズ ニ長調
バッハ;無伴奏Vnソナタ第2番より「アンダンテ」
ドヴォルザーク;スラヴ舞曲 ト短調
 
なお、まだ次のリサイタルが予定されているので、近隣の方には、ぜひ足をお運びいただきたい。
9月17日(水);京都ブライトンホテル
9月19日(金);中之島中央公会堂
9月20日(土);島本町ふれあいセンター「ケリヤホール」
問合せ先は、ミナセモーツァルト音楽研究所(075-963-0138)。

 

パブロ・カザルス(Vc)
バッハ;無伴奏Vc組曲第1番(東芝EMI、LD)
カザルスの演奏姿を記録したLDを某オークションで落札。
1954年9月に収録された30分弱の映像で、プラドにおける彼の生活(レッスン風景)が少々と、標記バッハの全曲演奏を見ることができる。
演奏場所は、1952・53年のプラド音楽祭の会場となったサン・ミシェル・ド・クサ修道院。
老巨匠、既に77歳なのだが、見た目には50歳代後半くらいの感じで、運弓や音色も力強い。

9月12日(金): 

 出張の帰途、普段は行かない大阪の音盤屋に立ち寄る。

エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮) ロシア国立響
ボロディン;交響曲第2番・小組曲(BMG)
スヴェトラーノフの録音のうち、かねて気になっていた盤が、中古超格安で並んでいた。先ごろ国内盤でも復活したCDだが、ドイツ・プレスだったので見逃す手はないと購入。
スヴェトラといえばこの人、はやしさんのコメントに曰く、
第1楽章のラストのブラスのファンファーレや、第4楽章のブラスのトゥッティなど、『ウォーぉぉ!、これぞロシアだぁぁ!』と叫ばずにはいられない
1993年7月6日、フランス・メッツでの録音で、名職人トニー・フォークナーの手になるもの。
 
井上道義(指揮) ロイヤル・フィル ほか
マーラー;交響曲第4番(CANYON)
1980年代末、井上氏はロイヤル・フィルを振ってキャニオンに3曲のマーラーを録音、そのうち5番・6番は架蔵済み。
残る第4番、ひと頃はあちこちの中古音盤屋に転がっていたような印象があるが、このところ見かけなくなっていた。
先日、未開封新品が某オークションに出品されていたので、これを機会にと、落札したもの。
彼の実演で気になる仕上げの粗さ(特に弦合奏の)が見られず、なかなか良い感じである。
1989年4月3・5日の録音、独唱はイヴォンヌ・ケニー
 
アルベルト・リジー(Vn) イェフディ・メニューイン(指揮) カメラータ・リジー・グシュタート ほか
テレマン;協奏曲集 & バッハ;Vn協第2番(DISCOVER)
音盤屋のバーゲン・コーナーで見つけたCD。
このところ新譜を見かけないDISCOVERだが、メニューインの指揮盤があったとは気づいていなかった。
彼の晩年の指揮盤は、暖かい弦楽の響きが実に好ましく、聴き逃せないと思い購入。
アンサンブルは、メニューインによってスイス・グシュタートに設立され、リジーが校長を務める「国際メニューイン音楽アカデミー」の学生たちによるものらしい。
テレマンの様々な編成による協奏曲3曲と管弦楽曲1曲を演奏しており、リジー以外の独奏者には古澤巌(Vn)と共演していたポール・コレッティの名も見える。
 
アンドレ・ナヴァラ(Vc) ピエール・デルヴォー(指揮) フランス国立放送管 ほか
プロコフィエフ;交響的協奏曲 & ハチャトゥリアン;Vc協(Vogue)
ナヴァラのライヴ盤が某オークションに出品されていた。曲目的にも珍しく、デルヴォーも好きな指揮者なので落札してみた。
ハチャトゥリアンがデルヴォー(指揮)で、1956年6月18日のモノラル録音。
プロコフィエフはルイ・ド・フロマン(指揮)で、1961年10月31日、シャンゼリゼ劇場でのステレオ録音。
ともにINAの正規音源で、音質は上乗。
 
マリエル・ノールマン(Hp) ジャン・ジャック・カントロフ(指揮) オーヴェルニュ室内管
Hp協集(fnac)
カントロフの指揮盤が中古超格安で出ていたので購入。
有名なヘンデル;Hp協第4番のほか、ヴィヴァルディペトリーニツァハ(原綴Zach、「ザック」「ザフ」等の読みも可能だが、果たして…?)、ハイドンの曲を演奏している。
1992年3月の録音。
fnac盤はデザインやタイポグラフィも美しくて好きなのだが、CD製作から撤退したようで残念。この音源はVirginに譲渡されたのか、そちらから発売されているようだ。
 
オーレ・エドヴァルド・アントンセン(Trp) ほか
「リード・マイ・リップス」(EMI)
アントンセンによるポップ・ロック・アルバムで、オリジナル作品11曲を演奏している。なんでも膨大な数のデモ・テープを聴いて選曲したそうな。
1995〜97年にかけて録音されたもの。
なお、彼は今秋来日して、関西ではびわ湖ホールでリサイタルがある。
再びステージに接することができるのは幸せなことだが、この世界的奏者が、わずか300席ほどの小ホールに迎えられるとは、残念でならない。
 
ジャン・マルティノン(指揮) フランス国立放送管
ルーセル;バレエ音楽「蜘蛛の饗宴」 & 小組曲(仏ERATO、LP)
愛惜佳曲書に掲載した佳曲・「蜘蛛の饗宴」。
本来なら全曲版の本命と目すべき、マルティノン盤(ERATO)が実は未架蔵のままであった。
先日リマスタリングされたCD(国内盤)も出て、どうしたものか悩んでいたが、仏盤LPが、今日立ち寄った中古盤屋に安価で並んでいたので、購入に踏み切る。
 
デヴィッド・マンロウ(Rec & 指揮) 古楽コンソート
「春は来たりぬ」(英Argo、LP)
今日の古楽ブームの到来など予測もできなかった二十数年前、中世・ルネサンス音楽のレコードは数えるほどしかなかった。
特に廉価盤で入手できて、しかも演奏内容の良いものなど、皆無に近かった。貧学生には、アルヒーフ・レーベルはレギュラー盤ばかりで、図書館で借りる以外には手を出せなかったのである。
そんな中で、キングから出ていたマンロウと古楽コンソートによる2枚のLPは、たしか1,300円。皆川達夫『バロック名曲名盤100』(音楽之友社、1977年)でも推薦されており、喜んで買い求めたものである。
今日立ち寄った中古盤屋で、オリジナルとおぼしい英盤LPが安価で並んでおり、実に懐かしく、ついつい購入。
ランディーニによる標題曲や、有名な「トリスタンの嘆き」など、14世紀イタリアの世俗作品が多数収められている。
クリストファー・ホグウッドの名が、オルガン・チェンバロ・打楽器の担当者としてクレジットされているのも、今昔の感深し。
同じレーベルの、もう1枚の懐かしLP、「十字軍の音楽」にも巡り逢いたいものである。

9月11日(木): 

 

エマニュエル・クリヴィヌ(指揮) シンフォニア・ヴァルソヴィア
モーツァルト;セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 ほか(DENON)
このところ蒐集に努めているクリヴィヌ、DENONから出た廉価盤(1,000円)シリーズにモーツァルト;管弦楽曲集が含まれていた。
このシリーズには複数の音源を寄せ集めたものが多いのだが、これはオリジナルのままだったので、購入。
標題曲のほか、ディヴェルティメント K.136〜138アダージョとフーガ K.546をカプリング。
1990年8月、ワルシャワでの録音。
 
久保田巧(Vn)
バッハ;無伴奏Vnソナタ第1〜3番(EXTON)
上記クリヴィヌ盤で音盤店のポイントが満点になったので、かねて聴きたかった久保田さんのバッハに引換え。
彼女には、1992年録音のパルティータ第2・3番があり(JOD)、良い演奏だった。
この新録音もリリース情報に接して以来楽しみにしていたのだが、パルティータ集が揃ってから買おうかなどと迷っていた。
そうこうしていたところ、この曲集ではいつも参考にさせていただいているT.S.さんのコメントを拝読。
ただひたすらにバッハの音楽に傾注し,純粋な気持ちで表現した結果,普遍性さえ感じる完成度を持った演奏が生まれた,という感じです。
これは全曲のリリースを待ってはいられない、早く聴かざるべからず…と決心したもの。
2002年3月、山形・余目町文化創造館・響ホールでの録音。
なお、上記JOD盤は、一般の音盤店で入手できなくなってからもCD WORLDで通信販売していたのだが、ここでも品切れになったようだ。

9月10日(水): 

 

ジル・アパップ(Vn & 指揮) シンフォニア・ヴァルソヴィア ほか
バッハ;Vn協第2番 & モーツァルト;Vn協第3番 ほか(Apapaziz)
この「怪しい」ヴァイオリニストについては、先月、エネスコ;Vnソナタ第3番ほかのCDを買った。
見かけの胡散臭さとは裏腹に、落ち着いた音色と達者な音楽が光っており、ほかのディスクも聴いてみたくなって、上記の公式Webpageから更に2点を購入してみた。
1999年3月、オーケストラの音楽監督を引き受けていたメニューインが、若いヴァイオリニストとの共演により有名なVn協を録画することを企画した。
その第1弾として起用されたのが、このアパップ。メニューインの逝去のため、実際にはソリスト本人の弾き振りで収録することになったとか。
その後も共演を重ね、2002年3月、ポーランド・ワルシャワで、この録音を行うに至ったという。
標記2曲以外に、クライスラー;序奏とアレグロポップ;ヴァルソヴィア・ブレークダウンをフィルアップ。
前者を管弦楽伴奏で聴くのは初めてだが、編曲者等は明記されていない。また、後者は1963年生れの作曲家。
…ところが、実際には更に5つのトラックが収録されており(笑)、カリフォルニアのミュージシャンたちと自由な音楽を楽しんでいる。
 
ジル・アパップ(Vn) ほか
Vn小品集(Apapaziz)
アパップの音盤、続く。
R・コルサコフ;熊蜂の飛行に始まり、クライスラーの有名小品やサラサーテ;サパテアードフォーレ;子守歌ヴィニャフスキ;スケルツォ・タランテラ等、23曲が収録されている。
とはいえ、一筋縄でいかないことには、伴奏にアコーディオン、コントラバス、ツィンバロン、チェンバロ、ハープを用いていること(曲によって組合せは異なる)。
アルバム・タイトルも "no piano on that one" というもの。
それでも、ハーピストがマリー・ピエール・ラングラメベルリン・フィルなのには驚かされた。
 
タスミン・リトル(Vn) ジョン・レナハン(P)
「チャイコフスキアーナ」(CFP)
かねて贔屓のヴァイオリニストによる小品集が店頭に並んでいたので購入。彼女の新録音は久しぶりだろう。
標題曲は、リトルとレナハンが「白鳥の湖」の旋律を11分ほどの楽曲にまとめたもの。
その他、クライスラー;愛の悲しみラヴェル;ハバネラ形式の小品ポンセ;エストレリータ等、全部で14曲を演奏している。
その中に、エルガー;愛のあいさつディーリアス;伝説を含めているのが、彼女らしいところだ。
2003年4月に録音されたばかりのもの。
なお、上記公式Webpageによれば、今年のプロムスでラトル(指揮) ベルリン・フィルリゲティ;Vn協を共演しており、来年2月には広上淳一(指揮) 新日本フィルに来演してディーリアス;Vn協を弾くようだ。

9月7日(日): 

 府民ホール「アルティ」で、堀米ゆず子(Vn)、加藤知子(Vn)による演奏会を聴く。
 「メセナの神髄コンサート」と銘打たれて入場料は900円、完売満席の盛況であった。

今日の曲目は
ルクレール;2Vnソナタ ニ長調 op.3-6(堀米、加藤)
バッハ;無伴奏Vnパルティータ第2番(堀米)
原田敬子;トリプル・ケイデンスII(堀米、加藤)
バルトーク;無伴奏Vnソナタ(堀米)
というもの。
堀米さんのヴァイオリンをじっくり聴くのは初めてだと思う。
オーケストラの定期への客演に接したことはあるが、あまり強い印象を残してはいない。
 
なお、原田作品は主催者(22世紀クラブ)による委嘱作品で世界初演。
 
ルクレールでは、ゆったりした音楽に乗った、2人の美しい音色を堪能。
良質の弦楽が常に帯びる微かな愁いの色合いに満ちて、誠に幸せなひととき。
 
バッハでは、堀米さんの求心的なヴァイオリンの世界が素晴らしかった。
第1曲アルマンドは、ずいぶん速いテンポ、「こんなにサラサラ行っていいのかな」とも思ったが、曲が進むにつれて、どんどん深くなっていった。
最終のシャコンヌでは、本当に集中力の高い、緊張感のきびしい演奏。
斉諧生の今の好みとしては、もっと「大きさ」の出る音楽を求めたいが、今日の堀米さんのような行き方は、これはこれで納得できる。
 
委嘱初演の原田作品は、ルクレールの現代版というか、2本のヴァイオリンが歌い交わす線と線との交錯を味わうべき音楽と聴いた。
プログラムには
2人の演奏家の全く異なる身体性から、具体的なアイデアを思いついた。」とあり、
最も近い距離まで接近しようとし、しかし決して一体化しない
音楽の構造になっているそうだが、う〜ん、そういわれればそうだったかなぁ…。
 
バルトークでも、堀米さんの集中力は、あるいはバッハ以上ではなかったか。
しかしながら、この演奏至難の曲を「聴かせる」には、技術的な完成度が、もう一段、高くなくてはならないような気がする。
もちろん堀米さんが下手というのではなく、かなりのレベルで弾きこなしておられるのだが、もう幾ばくかの余裕があってはじめて、作曲者の「魂の声」が歌い出すのではなかろうか。
 
正直申せば、斉諧生としても、この曲に関して、演奏の内容を云々できるだけの理解には至っているという自信はない。
今日の演奏について上記のような感想を書き付けるのは、申し訳ないという気持ちもある。
とはいえ、例えばイザベル・ファウスト盤(HMF)を聴いたときのような、「あ、いい音楽だな」という感覚が得られなかったのも、否定できない事実である。
この曲での堀米さんの正当な評価については、他日を期したいと思う。
 
アンコールはバルトーク;44の二重奏曲から3曲。また、生誕100年に当たる滝廉太郎;荒城の月を原田がVn2本用に編曲したもの。
とりわけバルトークでの2人の音楽が実に楽しそうで、たいへんに心地よかった。

 コンサートの帰りに、普段は足を向けない音盤屋に立ち寄り、中古盤コーナーをチェック。

コンチェルト・ケルン
モーツァルト;交響曲第29・35番 ほか(CAPRICCIO)
古楽系アンサンブルとして評価が高いコンチェルト・ケルンによるモーツァルトの交響曲、通販でオーダーしようか迷っていた矢先に中古格安の品が目の前に現れるとは、いかなる天の配剤か(笑)。
溌剌たる「ハフナー」を期待して購入。
2002年2月ケルンでの録音。
標記交響曲以外に、
「救われたベトゥーリア」序曲
Fg協(独奏;ロレンツォ・アルパート)
Flのためのアンダンテ K.315(独奏;コルドゥラ・ブレウラー)
をカプリング。
 
ヴゼボロド・レジュネフ(Vc) 宮沢明子(P)
バッハ;無伴奏Vc組曲第1番 & ベートーヴェン;Vcソナタ第3番 ほか(AUDIO LAB)
宮沢女史の珍しいCDを見つけた。
チェロの盤なので興味を惹かれ、検盤かたがたブックレットに目を通してみると、プロデューサーの菅野沖彦氏自ら筆を執って、チェリストとの交友を綿々と綴っておられる。
かほどに思い入れをもって製作された音盤ならば、必ずや一聴の価値あるべしと考えて購入。
レジュネフは1931年モスクワ生まれ、ソヴィエト国立響の副首席奏者を務めていたが、1969年、アメリカ演奏旅行に乗じて亡命、ピッツバーグ響の副首席奏者に転じる。
当盤は、1973年4月24日、ピッツバーグ響の来日公演の機会に青山タワー・ホールで録音されたもの。
フォーレ;夢のあとにチャイコフスキー;感傷的なワルツをフィルアップ。
 
浦川宜也(Vn) ミヒャエル・ハルトマン(Cem)
バッハ;Vnソナタ全集(fontec)
浦川氏のドイツ音楽には傾聴すべきものがあるとかねて考えているところ、新譜のおりに買いそびれていたバッハのチェンバロ付きのソナタ全集2枚組が中古格安で並んでいたので購入。
第1〜6番に加え、6番の異稿、偽作ともされるBWV1021、1023、1026を収録している。
1995年10〜11月、長野県丸子町文化会館「セレス・ホール」での録音。
 
アリス・ピエロ(Vn) マルティン・ゲスター(Org)
バッハ;Vnソナタ全集(Accord)
上記浦川盤と同じく、バッハのソナタ全集の未架蔵盤を見つけた。
チェンバロでなくオルガンを用いているところが面白そうで、購入してみる。
弦楽器との相性は、ピアノやチェンバロより良い筈、またバッハの立体的な低音声部書法を聴き取るには音色の多彩なオルガンが適していよう。
ヴァイオリニストの詳細な経歴は判らないが、マルク・ミンコフスキのアンサンブルで首席奏者を務めている(いた?)ようなので、腕前は確かだろう。
また、オルガニストは「ル・パルルマン・ド・ミュジーク」というアンサンブルを組織して指揮もする人らしい。
1993年9月録音。
 
ハンスイェルク・シェレンベルガー(Ob) ロルフ・ケーネン(Cem) ヨハネス・フィンク(Gamb)
マレ;スペインのフォリア & バッハ;Obソナタ(DENON)
Ob奏者の中で最も好きなシェレンベルガーの未架蔵盤が中古格安で並んでいたので購入。
バッハにはオリジナルのObソナタはないが、ここでは元来はFlソナタであるBWV1030(ただしト短調版)とBWV1031をObで演奏している。
1987年5月、東京、ヴァリオ・ホールでの録音。

 一昨日届いたCDの情報をステーンハンマル 作品表とディスコグラフィに追加。

 今日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。


9月6日(土): 

 西宮市を本拠に活動するアマチュア・オーケストラかぶとやま交響楽団第29回定期演奏会@伊丹アイフォニック・ホールを聴く。
 このオーケストラには中古音盤堂奥座敷同人、工藤さんが参加しておられ、この演奏会でもコンサートマスターを勤められた。

今日の曲目は
シベリウス;交響曲第7番
ストラヴィンスキー;協奏曲「ダンバートン・オークス」
R・コルサコフ;交響組曲「シェヘラザード」
というもの。
このところプログラムの「カルト度」が低くなっているが(笑)、これは第27回に引き続いて客演指揮者に招かれた裄V寿男氏の考えもあるのだろうか。
 
今日の圧巻はメインの「シェヘラザード」、オーケストラの編成の小ささなど無関係とばかりの、色彩的で活力に満ちた音楽に圧倒された。この曲を長いと感じなかったのは、実演であれ音盤であれ、初めてかもしれない。
 
まず、オーケストラの出来は素晴らしく、第1楽章冒頭の立派な響きや第2楽章の管楽器の「乗り」には感服、全曲を通じてコンサートマスターのソロは鮮やかなもの。
もちろん小さな事故や音程のブレ等はあるが、致命的なものではない。
とりわけ、第3楽章冒頭、アウフタクトのヴァイオリン合奏が、「ふんわり」と鳴り始めた雰囲気は素晴らしかった。
CDだとサラッと素っ気なく始まる演奏が多いのである。
 
もちろん指揮者の表現も素晴らしい。
第4楽章の勢い、切れといったものは指揮者のドライヴの賜物と推察する。
 
何より感銘を受けたのは第3楽章中間部。
まず、通常の演奏では賑やかに叩き出す小太鼓が、密やかにリズムを刻み始めたので、吃驚。
そして一貫して弱めの音量で演奏された音楽からは、何とも言えない幻想味が立ちのぼってきた。
 
裄V寿男、誠に端倪すべからざる指揮者である。ぜひ御注目をと申し上げたい。
Web上には応援ページも登場しているようだ。
 
シベリウスは、ちょっと粘り気味の演奏で、斉諧生としては、もっと清涼・晴朗な音楽が好ましかった。
またストラヴィンスキーは滅多と耳にしない曲で、語るべき資格を持たない。
 
例によって、アンコールは無し。
 
次回は平成16年5月16日(日)とのこと、曲目はドヴォルザーク;Vc協だけが明らかになっているが、残りの発表を楽しみに待ちたい。(^^)

 

ペッカ・クーシスト(Vn) オッリ・ムストネン(指揮) タピオラ・シンフォニエッタ
モーツァルト;Vn協第3〜5番(Ondine)
フィンランド気鋭のヴァイオリニスト、弟クーシストの新譜が出たというので、レーベル直販でオーダー。ここはいつもレスポンスが非常に速く、1週間で到着。
指揮のムストネンともども、奔放かつ歓びに満ちたモーツァルトを期待している。カデンツァはヴァイオリニスト自作。
2003年4月、オーケストラの本拠、タピオラ・ホールでの録音。
なお、この団体はヘルシンキ西郊のエスポー市(人口約21万人)に所在している。同市には「タピオラ」という街があるとのこと。

9月5日(金): 

 退勤後、いつもの音盤店へ赴くと、臨時の中古盤セールを実施していた。そういえば、少し前から告知のビラが貼ってあったことを思い出す。めぼしいものはおそらく開店直後に殺到した人々が浚っていったことだろうが、それでも少し収穫あり。

デーネシュ・コヴァーチュ(Vn) ヤーノシュ・フェレンチク(指揮) ハンガリー国立響 ほか
ベートーヴェン;Vn協 & ロマンス第1・2番(HUNGAROTON)
ハンガリーの名ヴァイオリニスト、コヴァーチュのベートーヴェン。この人の録音は、あまりCD化されていないので貴重、買わざるべからず。
これを書きながら聴いているのだが、中欧系の木質感のある音色で、重音の美しいこと!
名匠フェレンチクの指揮で、この暖かい音楽を聴くことができるのも大きな喜びである。
カプリングのロマンス2曲は、ジョルジュ・レヘル(指揮) ブダペシュト響が伴奏している。
なお、コヴァーチュの大物録音としては、バッハ;無伴奏の全曲LPがあり、ときどきカタログで見つけてはオーダーするのだが、いつも売切れ(涙)。
 
ヴィクトリア・ムローヴァ(Vn) ネヴィル・マリナー(指揮) ASMF
パガニーニ;Vn協第1番 & ヴュータン;Vn協第5番(Philips)
近頃めっきり入手が難しくなっているムローヴァの初期録音が2・3枚、ワゴンに入っていて吃驚、そのうち未架蔵のものを購入。
当時のムローヴァらしく、清潔感のある音色で音楽も潔癖そのもの。まあ、パガニーニやヴュータンの演奏に期待したい、山っ気や官能には欠けていると言わざるを得ないが、これはこれで聴き応えはある。
1988年2月、ロンドンでの録音。
 
イヴリー・ギトリス & 木野雅之(Vn) ユリウス・ベルガー(Vc) ほか
「ストラディヴァリウス・サミット・コンサート」(STRAD)
↑のムローヴァとは正反対に、山っ気・官能の極致のようなヴァイオリニスト、ギトリス。
彼が参加したライヴCDが捨て値で転がっていたので、また吃驚、即購入。
1993年、東京と大阪で開かれた標記タイトルのコンサートを収録したもので、スイスの財団の協力を得て8挺のストラディヴァリ(Vn、Va、Vc)を揃えた「夢のコンサート」との触れ込み。そういえば当時、新聞広告を見たような記憶がある。
曲目と参加者は次のとおり。
モーツァルト;弦楽五重奏曲第4番 ト短調
タマス・マイヨル、木野雅之(Vn)
ジャンパオロ・グァテリ、ヨッシー・グットマン(Va)
山下泰資(Vc)
メンデルスゾーン;弦楽八重奏曲
イヴリー・ギトリス、木野雅之、堀正文、タマス・マイヨル(Vn)
ヨッシー・グットマン、ジャンパオロ・グァテリ(Va)
ユリウス・ベルガー、山下泰資(Vc)
ギトリス以外に木野雅之(ギトリスの弟子)、ベルガーなど、注目の演奏家が加わっているのも有難い。
1993年4月14・18日、サントリー・ホール及び東京芸術劇場での録音。
 
ナンシー・グリーン(Vc) フレデリック・モイヤー(P)
カステルヌオーヴォ・テデスコ;Vc作品全集(Biddulph)
Biddulphレーベルの新録音もので(1996年8月)、これは輸入盤新品の500円均一セールのワゴンに入っていた。
カステルヌオーヴォ・テデスコというとギター音楽ばかりが有名で、チェロ作品の音盤は珍しい。新譜の時から興味を惹かれつつも買いそびれていたところ、今回、超格安で見つけたからには購入せざるべからず。
Vcソナタ(1928年)、夢遊病者(幻想的変奏曲)(1927年)、トッカータ(1935年)等、7曲を演奏している。
 
ユーリ・エゴロフ(P)
シューマン;謝肉祭・クライスレリアーナ・色とりどりの小品 ほか(EMI)
KUMOさんが紹介しておられる夭折のピアニスト、エゴロフの未開封CD2枚組が中古盤扱いで並んでいた。
たしかシューマンは推奨盤だったはずと思い、このところピアノ独奏盤は手を出さないようにしているのだが、例外扱いにして購入に踏み切る。
帰宅して調べてみると、果たしてKUMOさんのみならず、きよ爺さん、畏友かとちぇんこさんも愛聴しておられるもの。これは買い得であったと喜んでいる。
 
ノルディック・ヴォイシズ
「センス・アンド・ナンセンス」(JDR)
ユビュ王の食卓で御教示いただいた1枚。
ステーンハンマル;3つの無伴奏合唱曲を収録していることから、レーベル直販でオーダーしたもの。
ガブリエリモンテヴェルディからプーランクリゲティまで、幅広い時代の作品を歌っている。
演奏団体はノルウェーに本拠を置くア・カペラ六重唱、結成は1996年。公式Webpageがある。
詳細なデータは掲載されていないが、2002年頃の録音か。

9月4日(木): 

 

ジョルジュ・プレートル(指揮) ボストン響 ほか
ベルリオーズ;幻想交響曲 ほか(BMG)
プレートルの「幻想」というと、1985年にウィーン響を指揮したものを思い出す(TELDEC)。
フランスの指揮者とウィーンのオーケストラという組合せの意外性で話題になったものの、すぐに忘れられてしまったと記憶している。
ウィーン響盤は未聴なので断言はしかねるが、そもそもウィーンの団体による「幻想」は成功しない傾向があるように思う(少なくとも音盤市場的には)。
その点、ボストン響は、長くモントゥーミュンシュの薫陶を受けており、期待できるのではなかろうか。
古くはミュンシュと新旧の録音があり、また、当盤(1969年)の後に録音した小澤征爾盤も有名である(DGG、1973年)。
そんなことを考えて、某オークションで落札したもの。
フィルアップに、ミュンシュとボストン響による、ベルリオーズの序曲3曲を収録。

9月3日(水): かねて贔屓にしている若手チェリスト、ダニエル・ミュラー・ショットが来演するというので(曲はドヴォルザーク)、久しぶりに京都市響定期に赴く。
 本業が少し長引き、慌てて京都コンサートホールへ駆けつけたのは開演数分前、ところが無情にも「当日券はありません」という貼り紙が。(T_T)
 まあ地元出身の佐渡裕が指揮台に立ち、しかもベートーヴェン;交響曲第7番という爆裂必定のプログラムだから、やむを得まい。
 偶々居合わせた知人がいろいろ気遣ってくださったのだが、結局、そのまま引き返す羽目になった。

 足はそのまま音盤屋へ(自滅)。

クルト・ザンデルリンク(指揮) レニングラード・フィル ほか
「ソヴィエト時代 1947〜1956」(HDN)
ザンデルリンクの告別演奏会ライヴは、昨年のベスト5に挙げた。
これは最初期の録音(1947〜56)を集成したCD6枚組で、彼の足跡を確認していく上で必要かと考え、購入したもの。
主な収録曲は、
モーツァルト;交響曲第35番(c.1952〜53年)
モーツァルト;交響曲第41番(c.1948〜50年)
ベートーヴェン;交響曲第2番(c.1952〜53年)
ラフマニノフ;交響曲第1番(c.1950〜52年)
オネゲル;交響曲第5番(c.1955〜56年)
など。
特にオネゲルは、作曲から約5年しか経過していない時点ゆえ、時代精神を共有した演奏が聴けるのではないかと期待している。
残念ながら録音状態はあまり芳しくない。
 
カール・チェリウス(指揮) 京都市響 ほか
「京響音のあゆみ PART-I」(京都市響自主製作)
1986年、京都市響が創立30周年記念に製作した2枚組CDの1枚が某オークションに出品されていた。
もう1枚は当時の常任指揮者小林研一郎(指揮)によるマーラー;交響曲第5番で、同時に出品されていたのだが、そちらは落札を断念。
当時、京都市響の定期演奏会のロビーで販売されていたのだが(まだ京都会館で行われていた)、マーラーが苦手な頃だったので、見送ってしまった。今になって後悔している。
収録されている指揮者と曲目は、
カール・チェリウス(初代常任)
モーツァルト;交響曲第40番 第1楽章(1960年11月5日)
カルロ・ゼッキ
ウェーバー;歌劇「オベロン序曲」(抜粋)(1961年12月20日)
ハンス・ヨアヒム・カウフマン(2代常任)
ブルックナー;交響曲第7番第1楽章(抜粋)(1964年1月23日)
渡邉暁雄(5代常任)
ドビュッシー;牧神の午後への前奏曲(1971年1月28日)
ルイ・フレモー
ドビュッシー;交響詩「海」第2楽章(1972年11月28日)
山田一雄(6代常任)
ベートーヴェン;交響曲第9番第4楽章(抜粋)(1973年12月18日)
森正(3代常任)
ショスタコーヴィッチ;交響曲第5番第2楽章(1974年1月22日)
テオドール・グシュルバウアー
シューベルト;交響曲第5番第1楽章(1976年10月26日)
外山雄三(4代常任)
ラフマニノフ;交響的舞曲第2楽章(1976年11月20日)
フルヴィオ・ヴェルニッツィ(7代常任)
レスピーギ;交響詩「ローマの松」より「アッピア街道の松」(1979年10月11日)
若杉弘
マーラー;大地の歌より「美について」(1984年11月23日)
というもの。
このうち斉諧生がリアルタイムで聴いた指揮者は、ヴェルニッツィ、若杉くらい。後者の「大地」は、当日、客席で聴いていた。
上記の中では、やはりゼッキの録音は、断片ではあるが、見逃せない。
また、カウフマンは、一斑には無名の存在だが、この人のブルックナーは素晴らしい(平成元年の「歴代常任指揮者シリーズ」という演奏会で、同じ第7番の実演を聴いている)。おそらく商業録音は皆無だろうと思うが、記録として手元にとどめておきたいものだ。
 
ネーメ・ヤルヴィ(指揮) デンマーク国立放送響
オネゲル;交響曲第3・5番 ほか(CHANDOS)
CHANDOS移籍後の父ヤルヴィが、何でも録音しているのは知っていたが、オネゲルの交響曲があったとは!
しかもオーケストラがデンマークの団体というのは意表を衝く。
とにかく3番にせよ5番にせよ大好きな曲なので、某オークションに出品されていたのを落札したもの。
1992年3月コペンハーゲンでの録音、「パシフィック231」をフィルアップ。
 
エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮) ソヴィエト国立響 ほか
「有名行進曲集」(YEDANG)
スヴェトラーノフやロジェストヴェンスキーによる怪演揃いで知られるYEDANGの行進曲集(YCC-0074)。
ずいぶん前に出たものだが、際物趣味は抑えているので買わずにいたところ、とうとう聴きたくなってしまって購入(汗)。
 
佐藤勝(指揮) シネ・フィルハーモニック・オーケストラ
早坂文雄;七人の侍・羅生門(VICTOR)
映画にはさほど熱心といえない斉諧生だが、邦画のベストを尋ねられればやはり黒澤映画、なかんずく「七人の侍」を挙げることになるだろう。
監督自身が台詞・音楽・効果音をLP1枚に再編集した「リアル・サウンドトラック」や、CD5枚組の映画音楽全集(FUNHOUSE)を、かねて架蔵している。
この盤も存在は承知していたが、何故かあまりよい評判を聞かないので買いそびれていたところ、今回、某オークションに安く出品されていたので落札したもの。
早坂のオリジナルスコアをもとに、佐藤勝が約25分に再構成したという、1970年代の録音盤。
音の悪いオリジナル・サウンドトラックと違って、存分に音楽を堪能できるはずなのだが、聴いてみて、ファンが悪口を言う理由がわかった。
「オーケストラ」と銘打ってはいるものの、合奏団程度の編成で、音楽に厚みがない。
オンマイクの録音なので音の動きが手に取るよう、小編成の音楽ではそれなりに面白い。
ところが、「七人の侍」の象徴ともいえる「侍のテーマ」になると、まったくもって器が足りない。手に汗握って血沸き肉躍る音楽を期待していると、拍子抜けしてしまう。
大編成の演奏では、日本フィルを起用した本名徹次盤(KING)もあるのだが、そちらは演奏時間わずかに5分半、これはこれで欲求不満に陥る。
願わくば、この佐藤勝による楽譜を、フル・オーケストラでちゃんと録音してもらいたいものだ。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)
オッフェンバック;喜歌劇「美しきエレーヌ」(Regis)
音盤屋の棚を眺めていたら、先にPREISERレーベルからCD化されたレイボヴィッツの「美しきヘレネ」が、Regisレーベルから出ていたので購入。
PREISER盤は単独でCD2枚組になっていたが、こちらは少し詰め込んで、2枚目の後半にロジェ・デゾルミエール(指揮)のシャブリエ;喜歌劇「エトワール」(抜粋)をカプリングしている。
音の傾向は全く異なり、Regis盤は「板起こし」らしい針音がそのまま入る、やや硬質な音。
PREISER盤は非常に鮮明で、丸みのある聴きやすい音。こちらがあれば十分だろう。
 
ジュリー・アンドリュース(Vo) アンドレ・プレヴィン(指揮) 管弦楽団
「クリスマスの宝物」(BMG)
プレヴィンがクラシックに専念する前の、ポピュラー・アルバムやジャズ録音には優れたものがあり、少しずつ集めている。
それでもクリスマス・アルバムがあるとは知らなかった。某オークションで見つけて興味を惹かれ、落札したもの。
歌っているのは御存知「サウンド・オヴ・ミュージック」のジュリー・アンドリュース。
「サウンド〜」の公開が1965年、当盤の録音が1966年なので、映画のヒットを契機に企画されたものだろう。
「諸人こぞりて」「荒野のはてに」といったお馴染みのクリスマス・キャロルを清潔に歌っている。
また、「ああベツレヘムよ」「グリーンスリーヴズ」はインストゥルメンタルのみ、プレヴィンがチェンバロ弾き振りで演奏している。
もちろん管弦楽編曲はすべてプレヴィンの手になるもの。

平成15年5月24日(日): 「逸匠列伝」にユッシ・ヤラスを掲載。
平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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