音盤狂日録


7月31日(土): 

 

ジャン・ジャック・カントロフ(Vn) アンテア・ギフォード(G)
パガニーニ;Vn & Gソナタ ほか(BBC)
eBayにカントロフの未架蔵盤が出品されていたので落札。
このデュオの録音は "National Trust" レーベルからも同種の曲目で出ており(架蔵済み)、同じものではないかと冷や冷やしていたが、現品を見ると録音データが全く異なっており、一安心。
1982年のパガニーニ生誕百年に当たり、BBCスタッフの働きかけでこのデュオが結成され、以来何度かにわたって放送用に録音が行われた。
それらの中から演奏者自身が選曲したのが当盤で、収録日は1982年4月から1990年1月に及んでいる。
パガニーニのほか、ジュリアーニディアベリの作品が含まれており、特に後者はベートーヴェンの主題(交響曲第4番など)をポプリに編んだもので面白い。
 
ルートヴィヒ・クヴァント(Vc) マルクス・ベッカー(P)
コダーイ;無伴奏Vcソナタ・Vcソナタ ほか(CAMPANELLA)
ベルリン・フィルの首席Vc奏者の一人であるクヴァントが、ハンガリー系の無伴奏Vc作品を中心に録音した1枚。
前から気になっていたがCAMPANELLAレーベルが比較的高価なので買いそびれていたところ、某オークションに安価で出品されたので落札したもの。
標記コダーイ作品のほか、
リゲティ;無伴奏Vcソナタクルターク;無伴奏Vcの5つの小品ローザ;トッカータ・カプリチョーザを収録している。
2000年10月及び2001年1月、ベルリン・フィルハーモニー(室内楽ホール)での録音。
 
エルッキ・ラウティオ(Vc) 舘野泉(P) ほか
間宮芳生;Vcソナタ ほか(Oulunsalo Music Festival)
舘野氏がフィンランドで主宰しているオウルンサロ音楽祭の記録CD。
1998年8月1〜9日に行われたコンサートから、
間宮芳生;Vcソナタ(音楽祭委嘱作品、世界初演)
間宮芳生;日本民謡(「南部牛追い歌」・「こきりこ節」・「三斎踊り」)(駒ヶ嶺ゆかり(M-S) 水月恵美子(P))
ニルセン;小組曲(本名徹次(指揮) ラ・テンペスタ室内管)
ピアソラ;ニ調のミロンガ(加藤知子(Vn) 水月恵美子(P))
ほかを収録している。
某オークションに出品されていたもので、ラウティオのチェロは聴き逃せないと落札。
ジャケットには「1」と表示されているが、続巻があるのだろうか? 非常に気になるところである。

 水曜に届いたSPの情報をシュミット・イッセルシュテット・ディスコグラフィに掲載。


7月30日(金): ウィーンの楽譜店Doblingerから書籍が届く。
 Hans Kreczi "Das Bruckner-Stift St. Florian und das Linzer Reichs-Bruckner-Orchester (1942-1945)" (Akademische Druck-u. Verlagsanstalt) という本で、ブルックナーの、いわゆるノヴァーク版を出版しているMusikwissenschaftlichen Verlages Wien (MWV)から出ているようだ。
 ↓先だってゲルハルト・ボッセ氏の講演会の記事でも触れたが、ナチス・ドイツは第二次世界大戦末期に、オーストリア・リンツの聖フロリアン修道院を本拠として、帝国ブルックナー管を編成した(当時まだ学生だったボッセ氏は、特に選抜されて楽員に採用されたという)。
 この団体については、高橋さんの頁が参考になるが、一説には、ナチス・ドイツが世界征服を達成した暁にブルックナーをはじめとするドイツ音楽を世界に普及させ文化においても覇を唱えるべく、ドイツ各地の放送局のオーケストラから名手を集めて結成されたといわれる。
 そのあたりの真偽も含め、この Reichs-Bruckner-Orchester について調べてみたいと、かねがね考えていた。
 ナチス絡みだけに一種タブー視された面があり、あまり記録等が残っていないらしいが、WWWで少し検索してみると本書の存在が判明した。
 少し前(1986年)の出版で、amazon.deなど普通の通販サイトでは出てこなかったので、Doblingerにメールで問い合わせてみたところ、さすが老舗で在庫があった。上記公式サイトのセキュア・サーバーからクレジットカードのデータを送信して、購入したもの。
 約360頁の大著で、メンバー表や放送リストなど貴重なデータが掲載されており、読み進めるのが(ドイツ語は骨だが)楽しみである。
 もちろんボッセ氏の名前も散見され、1944年3月14日にはラインホルト・バルヒェットシュポーア;2本のVnのための協奏曲を録音している。

 

ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮) モスクワ放送響
マーラー;交響曲第1番「巨人」(RELIEF)
フェドセーエフのマーラー・ツィクルス、ファンページの情報では、第1・5・6番が既出、また当面第2・7・9番が発売予定とのことである。
発売済みの3曲のうち第6番は5月の来日公演の会場で確保できたのだが、それ以外は買えずにいた。
この第1番は、既に店頭でも見かけているが、アリアCDさんにオーダーしていたのが届いたもの。
2000年6月及び2001年1月、モスクワ音楽院大ホールでのライヴ録音。
ワーグナー;楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死をフィルアップ、こちらは1999年12月録音となっている。
 
ヴァッサ・プシホダ(Vn) ほか
ドルドラ;「思い出」 ほか(Jan Kubelik Society)
アリアCDさんのWebpageにプシホダの未架蔵盤の情報が掲載されていたのでオーダーしていたもの。
表記ドルドラ作品の特集みたいなCD2枚組で、作曲者ヤン・クーベリックとプシホダ3人の演奏が収録されている。
ブックレットもドルドラの紹介に紙幅を割く。SPのレーベルがカラー写真で多数掲載されているのも愉しい。
プシホダの演奏は全部で12曲を収めている。すべてSPからの覆刻で、音質の状態は様々。
なお、版元のヤン・クーベリック協会は、子息ラファエルが最晩年に設立した団体とのこと。
 

7月29日(木): 今日、ふと気がつくと、トップページのカウンタが2000そこそこになっていた。
 昨日か一昨日まではたしか62、3万ほどの数字を示していたのだが、どうも壊れたらしい。
 60万に到達したのが5月8日。このところ1日当たり300〜400件をカウントしているから、それでだいたいの勘定は合うのだが、残念なことに正確な数字がつかめない。
 やむを得ず、内輪に見積もって「62万」台の数字に直すこととした。

 

ジョゼフ・シルヴァースタイン(Vn)
バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(Image Recordings)
ボストン響の名コンサートマスターとして知られ、後には指揮者としても活動したシルヴァースタインが、70歳を期してバッハ;無伴奏を全曲録音したもの(2001年8月)。
いつもお世話になっているT.S.さんの頁で存在を教えていただいた。コメントに曰く
全体に速いテンポできびきびとしていて気持ちよいですが,聴取後には穏やかで暖かな余韻が残ります。技巧が冴え渡っているとか,強烈な個性の主張があるというわけではありませんが,聴くほどに愛着の湧いてくる味わい深い演奏です。
とのこと。
レーベルの公式Webpageからオーダー、支払いはPayPal。
 
特別編成オリジナル海軍軍楽隊メンバー
「海ゆかば 甦る栄光の海軍軍楽隊」(日Philips、LP)
珍しいLPが某オークションで落札できた。
昭和50年に録音されたLP6枚組で、旧帝国海軍軍楽隊出身者を集め、代表的な軍歌や行進曲等を収録し、明治から昭和20年までの帝国海軍の歴史を辿ろうとしたものである。
ところで、軍楽隊員・河合太郎という名前を聞いてハタと膝を打つのは、よほどの司馬遼太郎ファンであろう。
名作『坂の上の雲』に、日露戦争に参加した海軍軍人の存命者の一人として登場する人物である。
河合氏は明治17(1884)年生れ、同34年に横須賀海兵団に入り軍楽隊員として勤務(楽器はコルネット)。聯合艦隊旗艦「三笠」の乗組員として日本海海戦に参加し、戦闘中は前部主砲の伝令を務めた(軍楽隊員は耳が良いので伝令として重宝されたという)。
戦後、軍楽長に進級して第一艦隊軍楽長、呉海兵団軍楽長を歴任。昭和3年に現役を退いた後は広島県呉市に住み、広島県の吹奏楽の発展に尽くしたとのこと。昭和51(1976)年没。
このレコードが企画されたとき、高齢(91歳)ながら健在だった河合氏に指揮してもらおうと、瀬戸口藤吉;「日本海海戦」が録音されることになった。
『日本海海戦』の出だしは、トランペットによる海軍ラッパ譜第38号『気ヲ著ケ』で始まる。(略)何度やり直してもうまく揃わず、『そんなことではだめだ』と日頃の温厚な性格には似合わず、怒り出してしまった。
とうとう老齢の二人の楽長だけに用意されていた、指揮台上の椅子から立ち上がった。痩躯の背筋を延ばし、メンバーを見据える姿は、海軍軍楽長河合太郎その人であった。その気迫に触れた瞬間、戦後ジャズ界で活躍したバンドマンたちにも、海軍軍楽隊当時の精神がよみがえり、見事に収録できたというエピソードが残されている
…と谷村政次郎『行進曲「軍艦」百年の航跡』(大村書店)で読んで以来、ぜひこの音源を聴いてみたいと思っていた。
過去にCD化されているようだが、それは2枚に抄録したもの。オリジナルのLP箱物が手に入って(しかも格安)、目出度い限り。
 

7月28日(水): 野平多美 『魔法のバゲット』(全音楽譜出版社)を読了。
 副題「マエストロ ジャン・フルネの素顔」のとおり、フルネへのインタビューを中心に、彼の生涯や音楽観等をまとめた著作である。
 220頁ほどの書籍だが、活字の組み方がゆったりしており、情報量はさほど多くないが、読みやすくまとめられている。日本での演奏記録、パリ音楽院管オランダ放送フィルとのコンサート、ディスコグラフィが資料として附されている(いずれも完璧に網羅しているというものではなさそうだ)。
 斉諧生としては、まずアンゲルブレシュトが登場するのが重要。
 日本においてフルネの名を高からしめたドビュッシー;歌劇「ペレアスとメリザンド」日本初演(1958年)での指揮は、当初、アンゲルブレシュトに依頼されていた。しかしながら既に高齢だった彼の健康状態は日本への旅行を許さず、自分の代わりにと指名したのが、フルネだったのである。
 1952年、フルネがモンテ・カルロでこの作品を指揮した際、その公演がラジオで放送されることになった。それを聴いたアンゲルブレシュトは、この若い指揮者(まだ30歳代だった)のドビュッシー演奏にかつてない満足を覚え、直ちに書簡を送って、感謝の言葉とレッスンの用意があることを伝えた。すぐにフルネは会いに行き、初演者メサジェ直伝の骨法を伝授されたという。
 本書には、そのアンゲルブレシュトの書簡全文が、写真版と翻訳で掲載されている。

 

レオニダス・カヴァコス(Vn) アンドルー・デイヴィス(指揮) BBC響 ほか
ベルク;Vn協 ほか(BBC music magazine)
某オークションベルク;Vn協の未架蔵盤が出品されていたので落札したもの。この曲も一度しっかり聴き込んでおきたいが、そういうのがいったい何曲あることやら(嘆)。
2000年3月25日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライヴ録音。
カプリングはドナルド・ラニクルズ(指揮)シェーンベルク;浄められた夜。こちらは2001年3月17日、バービカンでのライヴ。
 
大友直人(指揮) 東京響 ほか
三枝成彰;「太平記」の音楽(Sony)
1991年のNHK大河ドラマ、太平記に三枝成彰が付けた音楽を交響組曲仕立てにしたアルバム。
作曲者・指揮者には関心が薄いのだが、笛の一噌幸弘が参加しているというので入手せねばと思い、某オークションで安く出品されるのを待って落札。
録音は1991年6月。
余談になるが、斉諧生が大河ドラマを見はじめたのは「国盗り物語」(1973年)から(このときの配役は素晴らしかった)。
「黄金の日々」(1978年)からは遠ざかっていたのだが、この「太平記」は中世史学者が考証に参加、最近の研究成果を生かしていく…というので興味を惹かれ、最初のうちはつきあっていた。
確かに「あやしいものを見るときは扇で顔を隠し、骨の間から覗く」といった、当時の絵巻物の描写が演技に取り入れられてはいたが、しかしながら如何ともしがたかったのは予算不足。セットの造作にせよ群衆・戦闘場面にせよ、安っぽいことこの上ない。
楠木正成(武田鉄矢)の千早城籠城戦が、石切場(?)での乱闘になっているに及んで、見放すことにした。
爾来、大河ドラマはろくに見ていない。司馬遼太郎「坂の上の雲」を計画しているというが、海戦シーンなどがどこまで撮影できるのか、期待よりも怖さが先立つ。
 
福岡ユタカ ほか
「怪童丸 イメージアルバム」(SME Visual Works)
これも一噌幸弘絡み。
オリジナル・ビデオ・アニメーションに由来するアルバムらしいが、そちらの方は不案内。
音楽も、基本的にはシンセサイザー系のサウンドに、笛の響きが素材として加わるトラックもある、という程度。
録音データははっきりしないが、2001年か。
amazon.co.jpのマーケットプレイスで中古格安品を入手したもの。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) ベルリン・フィル ほか
トーマ;歌劇「ミニヨン」(抜粋)(日TELEFUNKEN、SP)
イッセルシュテットの未覆刻音源が某オークションに出品されていた。日本盤ということもあってか格安、これ幸いと落札したもの。
 

7月27日(火): Flute World Onlineから楽譜が届いた。
 ステーンハンマル;2つのセンチメンタル・ロマンスの、フルートとピアノのための編曲譜である。Göran MarcussonというスウェーデンのFl奏者による編曲で、アルヴェーン;牛飼いの娘の踊りを併せ、3曲を収めている。

 

レイチェル・バートン(Vn) カルロス・カルマー(指揮) シカゴ響
ブラームス;Vn協 & ヨアヒム;Vn協第2番(CEDILLE)
以前、リリー・ブーランジェ作品のCDを買ったことがあるCEDILLEレーベルの公式Webpageから、まとめてVn盤を購入したものが届いた。
このレーベルはシカゴに本拠があり、概ねシカゴの演奏家を起用した録音が多い。バートンもシカゴ出身、シカゴ響とは神童時代からのつきあいだとか。
ヨアヒム作品は「ハンガリー風」の標題を持つ。LP期にアーロン・ロザンド盤(VOX)があったが、録音はかなり珍しいだろう。
ブラームスでは、そのヨアヒムのカデンツァを使用しているが、バートン自作のカデンツァをボーナス・トラックに収めており、CDプレイヤーのプログラム再生機能を利用すれば、そちらを組み込んで聴けるようになっている。
2002年7月、シカゴ・オーケストラ・ホールでの録音。CD2枚組だが価格は1枚分。
 
レイチェル・バートン(Vn) デヴィッド・シュレイダー(Cem) ほか
ヘンデル;Vnソナタ集(CEDILLE)
上記同様、CEDILLEレーベルの公式Webpageから。
これは、いつもお世話になっているT.S.さんの頁
何と言ってもそのテンポ感が素晴らしいです。まさに「快速」です(単に速いという意味ではなく,文字通り快い速さということです)。直線的で前進感があり,若々しく溌剌としており,聴いていて清々しいです。
とのコメントを拝読、聴いてみたいと惹かれたもの。ジャケットの、少々コスプレっぽい写真は勘弁してほしいが…(苦笑)。
1996年12月、シカゴでの録音。
 
ジェニファー・コー(Vn) 内田玲子(P)
シューベルト;幻想曲 & シェーンベルク;幻想曲 ほか(CEDILLE)
偏愛の曲、シューベルト作品の新録音を見つけたからには買わざるべからず。この1枚が今回のオーダーの直接のきっかけである。
幻想曲づくしという企画で、標記2曲のほかシューマン作品(op.131、作曲者によるピアノ版)とオーネット・コールマン;トリニティ−無伴奏Vnの幻想曲(1987年)を収録している。
独奏者は、1994年のチャイコフスキー国際コンクールで1位なしの2位をアナスタシア・チェボタリョーワと分け合った人。
ポートレートを見たかぎりでは東洋系の顔立ちだが、アメリカ・イリノイ州生れ、11歳でシカゴ響と共演したという。カーティス音楽院でハイメ・ラレドフェリックス・ガリミールに学んだとのこと。
ピアニストもロサンジェルス生れ、やはりカーティス音楽院でクロード・フランクらに学んでいる。
2003年2〜3月、ニューヨークでの録音。
 

7月26日(月): 本業の帰りに漫画専門書店に立ち寄り、さそうあきら 『マエストロ』第1巻 (双葉社)を購入。
 今年春に読んだ『神童』に大感動、その際、作家の公式Webpageで、この作品の単行本が準備中と書かれており、待ちかねていたもの。
 
 話の設定は次のとおり。
 日本のトップクラスのオーケストラだったが財政難で解散した「中央交響楽団」のメンバーに、再結成の話が持ち上がる。「天道徹三郎」なるまったく未知の指揮者のもとで、1カ月後に「未完成」「運命」の演奏会を開くというのである。
 東京・大森の工場街の、倉庫を改造した練習場に現れた指揮者は、得体のしれない老爺。どこで身につけたのか練達の指揮法と鋭敏な耳と圧倒的な説得力を持つ音楽で、海千山千の楽員たちを手玉にとりながら練習は進んでゆく。
 はたして天道徹三郎は何者なのか、どんな「運命」と「未完成」が演奏されるのか…それを軸に、主人公らしいコンサートマスター、彼を慕う若い女性第1Vn奏者と音大を出たばかりのFl娘(三角関係の予感)、スナック菓子マニアのCl奏者に顔面神経麻痺のHrn奏者、はたまた高校生のTrp奏者等々が登場、一風変わった群像劇が展開される。
 
 一人の天才少女の運命を濃密に描写していた『神童』とは趣を異にするが、この人の画の中で、音楽が独特の躍動を見せている点は共通。
 全3巻が順次刊行される予定、今後も楽しみに待ちたい。
 残念なことに所謂売れ筋ではないのだろう、自宅近隣の中小書店では入手できず、京都市内随一の規模を持つ専門店でようやく発見できた。

 

尾高忠明(指揮) BBCウェールズ管 ほか
ドビュッシー;交響詩「海」・「六つの古代碑銘」 ほか(BBC music magazine)
eBayでBBC music magazineの附録CDが格安で大量に出品されており、その中から興味を惹かれたものを落札してみた。
指揮が尾高さんというのもさることながら、標記「六つの古代碑銘」(アンセルメ編)や「子どもの領分」(カプレ編)といった選曲が斉諧生好み。
その他、「リア王」の音楽(ロジェ・デュカス編)、Cl狂詩曲(独奏;ロバート・プレーン)をフィルアップ。
2001年2月、ウェールズ地方スウォンジーでの録音。
 
ヴラディーミル・フェドセーエフ(指揮) モスクワ放送響
スヴィリドフ;悲愴オラトリオ ほか(RELIEF)
本業の帰りに立ち寄った音盤店で半額セールを行っており、中にフェドセーエフのRELIEF盤で未架蔵のものが1種混じっていたので購入。
標記スヴィリドフ作品は1979年、カプリングのガヴリリン;交響組曲「路傍の家」は1985年の、それぞれライヴ録音。
 
久保田巧(Vn) ヴァディム・サハロフ(P)
プロコフィエフ;Vnソナタ第1・2番 & ほか(EXTON)
音盤店の棚を眺めていたら、昨日聴き比べたばかりのプロコフィエフ作品の未架蔵盤を見つけた。
久保田さんは先に出ていたバッハが素晴らしく、これも是非聴いてみたいと思い、ちょうど貯まっていたポイントを利用して入手。
標記2曲に無伴奏Vnソナタをカプリングしている。
2002年12月、韮崎市文化ホールでの録音。
 
アンドルー・シュルマン(Vc) イアン・ブラウン(P)
ディーリアス;Vcソナタ ほか(CONTINUUM)
ディーリアスの室内楽作品は見逃せない。未架蔵盤をeBayで見つけたので落札したもの。
標記ソナタのほか、「ハッサン」の3つの小品(序奏、セレナード、喜びの娘たちの踊り)河の上の夏の夜(「2つの水彩画」からの再編曲)を収めている。
更にダイソン(1883〜1964)の「序奏、幻想曲とシャコンヌ」2つの小品をカプリング。
Vc奏者は1960年ロンドン生れ、22歳でフィルハーモニア管の首席奏者に招かれた逸材とのこと。
1987年9月、ロンドンでの録音。
 
イェルク・メッツガー(Vc)
バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(CAMPION)
いつもお世話になっているT.S.さんの頁で紹介されていた盤で、
一つ一つの音を確かめるようにしっかり弾いており,素朴ではありますが,力感のある芯の詰まったいい音を出していると思います。
とのコメントに興味を持った。
店頭で見かけたこともあるのだが、買いそびれていたところ、eBayに安価で出品されていたので落札したもの。
チェリストはチェコ・ズデーテン地方の出身で、ケルンの音楽高校に学び、一時期ロッテルダム・フィルの首席奏者を務めていたとのこと。
録音データは記載されていないが、マルPが1990年なので、その頃の収録であろう。
 
(さまざまな演奏家)
「ウィグモア・ホール100周年記念CD」(BBC music magazine)
上記の尾高盤同様、eBayに出品されていたBBC music magazine附録CD。
標題どおりの品物で、同ホールでライヴ収録された音源を18トラックに収めている。
ほとんどは1980年代終わりから2000年までのものだが、1点だけ、ピーター・ピアーズアイアランドの歌曲を作曲者の伴奏で歌った、1951年の音源が収録されている。
斉諧生的には、
ジョシュア・ベル(Vn) ゾルタン・コチシュ(P)バルトーク;ハンガリー民俗舞曲
アンネ・ゾフィー・フォン・オッターシベリウス歌曲、
バーバラ・ボニーグリーグ;春
等に惹かれて落札。
 

7月25日(日): 

 

プロコフィエフ;Vnソナタ第1番
プロコフィエフのVn音楽では、協奏曲第1番が偏愛の曲で、見れば買ってきた。
その一方、ソナタ2曲と無伴奏ソナタは、これまであまり関心を持ってこなかった。Flソナタからの編曲である第2番は後回しにして、第1番を聴いてみることにする。
初演者オイストラフが本命の筈だが(録音も数種類あるらしい)、代表盤とされるリヒテルとのライヴ(旧MELODYA音源)をCDでは架蔵していない。
架蔵盤から、ざっと第4楽章を聴き比べて4種を選んだ。
 
ギドン・クレーメル(Vn) マルタ・アルゲリッチ(P)(DGG)(録音1991年)
何ともはや、凄い演奏である。
ヴァイオリンの美感は二の次、表現力を極大にすべく、手を代え品を代え、音色に変化をつけ、くるくると表情を違えてくる。
ピアノもヴァイオリンを押しやってしまうことを恐れず自己主張。
この曲が抱えている、内面の不安や暗い情念を、あからさまにさらけ出した演奏といえよう。
圧倒された。
 
ピエール・アモイヤル(Vn) フレデリック・チュウ(P)(HMF)(録音1998年)
クレーメル盤とは正反対に、非常に美しい演奏。美音という点では随一。
その代わり、例えば第3楽章など、幻想味よりは優美さが前に出た感がある。
作曲者の言葉としては、
厳粛な第1楽章、力強く吹き荒れる第2楽章、穏やかで優雅な第3楽章、複雑なリズムでテンポの速い第4楽章
というのが残っているそうだから、こういうアプローチもあり得るのだろう。
(ピアノが重い音色なのは、Vnとバランスをとろうとしているのかもしれない。)
 
和波孝禧(Vn) 土屋美寧子(P)(ART UNION)(録音1998年)
和波は、最も好きなヴァイオリニストにオイストラフの名を挙げ、シゲティのレッスンで学んだことをもっとも大切にしている。
奇しくもこの二人は、作品を初演したり献呈されたりプロコフィエフと深い親交があったことでも共通点を持つ。
第1番は(略)悲劇的な気分に覆われた作品です。」と語るとおり、ヴァイオリンは激しく情念をたぎらせながら、この曲を演奏する。
内容的には見事だと思うのだが(ピアノもすぐれている)、メカニカルな面で他盤の独奏者に一歩を譲るのは残念だ。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn) 上田晴子(P)(音楽之友社)(録音2002年)
クレーメル盤とアモイヤル盤の中間に位置し、ヴァイオリンの美感を損なわず、曲の意味を失わず、聴いていて素直に、いい曲だと感じさせてくれる。
4盤とも優れた演奏であるが、斉諧生の好みとしては、カントロフ盤をベストに挙げたい。
ピアノも好演だが、録音のせいか、やや大味に響いているように思う。
 

7月23日(木): 

 

エマニュエル・パユ(Fl) レベッカ・ラスト(Vc) ほか
ヴィラ・ロボス;室内楽曲集(MARCO POLO)
先月(24日の項)、ジャン・フェランディスドミニク・ド・ヴィリアンクールの実演(アンコール)で聴いたヴィラ・ロボス;"Assobio a Jato"(「ジェット・ホイッスル」)が気に入り、パユの録音があるというので捜していたところ、某オークションに出品されたので落札したもの。
パユの演奏ではバッキアーナス・ブラジレイラス第6番(FlとFgの二重奏)も収められている。残りはチェロ中心の曲。
録音は1993年4月(ベルリン・フィル着任の直前)、ブレーメン放送局にて。
 

7月22日(水): 

 

アルトゥール・ルービンシュタイン(P) ほか
「スペイン音楽集」(BMG)
某オークションに「ルービンシュタイン・コレクション」が大量に出品されており、つらつら眺めていると、モンポウ;「歌と踊り」第6番が収録されている1枚があることに気づいた。
これは一大事、かねて決定盤が得られないことを嘆いていた曲だけに、ルービンシュタインならば…と期待して落札。
ファリャ;スペインの庭の夜(ウラディミール・ゴルシュマン(指揮) セントルイス響)やグラナドス;スペイン舞曲第5番など、13曲を収録。
1950年代前半に録音されたモノラル音源が中心になっている(一部は1947〜49年)。
 

7月20日(火): 昨夜遅く、カルロス・クライバーの訃報に接した。
 数年前までは毎シーズンのように、「某々の音楽祭に出演するという噂がある」、「否、何某フィルの定期というのがホントらしい」等と囁かれていたのが、このところまったく何も聞かなくなっていたので気に懸かっていた。
 それでも、いきなり逝去のニュースを目にするとは思いもよらず、大きな衝撃であった。
 
 斉諧生は、彼の実演を一度だけ聴いたことがある。
 1986年5月15日、大阪フェスティバル・ホールでバイエルン国立管とのベートーヴェン;交響曲第4・7番というプログラム。
 第7番第2楽章で、弦・木管・金管の3本の音の層がすっきり重なり合う中から(絶妙なバランス!)、透明な悲しみが立ちのぼったときの感動は忘れられない。
 (同行した友人たちは「縦の線がぐちゃぐちゃやんけ、オケがアカンのちゃうか」と不満げだったが。)
 
 音盤では、ブラームス;第4交響曲を初めて聴いたときの衝撃を思い出す。この曲がこんなに元気に響いていいのだろうか?と、それまでバルビローリ(指揮) ウィーン・フィルが刷り込まれてきた耳には思えたのである。
 彼ならば、きっとシューベルト;交響曲第9番(大ハ長調)が、この上なくいきいきと音楽の生命が躍動するはず…と信じ、CDとして届けられるときを待望していたのだが、それも虚しくなってしまった。
 
 何度となく映像で見た、ステージの上の空中から音楽をつかみ取るような、凡人の目には見えぬ美神(ミューズ)と戯れているかのような、彼の指揮姿をいつまでも心に留めておきたい。
 フェスティバルホールの指揮台から客席を振り向いて、「コーモリ!」とアンコールを告げた声の記憶とともに…。

 

ヴァレリー・アファナシェフ(P) ユベール・スダーン(指揮) ザルツブルク・モーツァルテウム管
ベートーヴェン;P協第1・2・4番(OEHMS)
昨年第3・5番が発売された、アファナシェフのベートーヴェン、残り3曲が2枚組でリリースされたので購入。
第1・2番は2001年11月、第4番は2002年3月、ともにザルツブルク・モーツァルテウム大ホールでの録音となっている。
第3番は2001年12月、第5番は2002年6月に収録されているから、1シーズンの間に全曲演奏した音源を、2年に分けてリリースしたということだろう。
 
アンリ・デマルケ(Vc)
バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(Collection Etoiles)
バッハの無伴奏曲集に関して、いつも非常に参考にさせていただいているT.S.さんの頁で見かけた盤。
全体にわたって速めのテンポが颯爽として気持ちの良い,私好みの快演です。躍動感があり,速いテンポでも全く崩れず,荒れることもなく弾き切ってしまう技術力の高さも素晴らしいです。緩徐楽章も力強く,かつ朗々としており,聴き応え十分です。
とのコメントを拝読して是非聴きたくなり、Alapage.comにオーダーしたもの。
デマルケはパリ音楽院でフィリップ・ミュレジャンドロンに学び、2000年にはデュティユの協奏曲を演奏して作曲者から絶讃された、とブックレットの略歴欄に記されている。
2001年7月の録音。
実はもう1セット注文したのだが、それは品切れで、送料を含めるとずいぶん高くついてしまった(汗)。
 
ジュヌヴィエーヴ・マルティネ(Vc) ジャン・ドワイヤン(P) ほか
ヴィエルヌ;Vcソナタ・歌曲「アンジェリュス」(仏ODEON、LP)
eBayに、蒐集しているヴィエルヌの室内楽作品が出ていたので落札したもの。1950年代後半の録音と思われる。
裏面はオルガン伴奏の歌曲で、歌手はエレーヌ・ブーヴィエという人だが、オルガンをモーリス・デュリュフレが演奏しているのは目を惹く。
 

7月19日(祝): 

 

イザイ;無伴奏Vnソナタ第3番
思うところあって、イザイの無伴奏Vnソナタを聴きこんでみることにした。
全6曲の聴き比べは、時間的に1日では厳しいので、最もポピュラーな第3番(演奏時間も短い方だ)に絞ったところ、CDだけで16種を架蔵していた(苦笑)。
 
ちょっと曲(というか音盤)の話を。
イザイの無伴奏Vnソナタは、LP時代には秘曲の類だった。
斉諧生がクラシックを聴きだした1980年代初め、全曲盤はクレーメルという変な曲ばかり録音しているソ連の若手ヴァイオリニスト(注;DGG移籍までの彼はそんなイメージ)のものがビクターにあったが、あまり入手しやすいレコードではなかった。
全曲の世界初録音は日本の和波孝禧が行ったとは聞いていても、現物は図書館でも見かけなかったように記憶する。
手元の『レコード芸術』誌の「イヤーブック」を見ても、1980年代には、上記クレーメル盤LPが再発された記事しかない(1985年2月発売)。
 
それが90年代に入って状況一変、毎年のように新録音が発売される。
1992年;四方恭子(録音1990年、ART UNION)
1993年;千住真理子(録音1993年、VICTOR)
1995年;潮田益子(録音1993年、fontec)
1995年;加藤知子(録音1995年、DENON)
1995年;フランク・ペーター・ツィンマーマン(録音1993〜94年、EMI)
1997年;清水高師(録音1996年、PLATZ)
2000年;ベンヤミン・シュミット(録音1998年、Arte Nova)
2001年;荒井英治(録音2000年、LIVE NOTES)
2001年;瀬川祥子(録音2000年、fontec)
2004年;戸田弥生(録音2004年、EXTON)
最初のうちは、貴重な全曲録音と思って買っていたが、だんだん食傷気味になり、シュミット盤以降の4種はどれも架蔵していない(汗)。
それにしても上記10点のうち8点が日本人というのが興味深い。国内盤に限られたリストだが、それでも、こういう比率になるのは珍しいだろう。
なお、先に16種と書いたのは、上記以外に、輸入盤や、第3番単発だけの録音なども含まれているためである。
 
マイケル・レビン(Vn)(EMI)(録音1955年、単発)
(6分46秒。以下、所要時間はCDジャケットに表示されたままを記す。)
技巧的な不安感はないが、楽譜の表情指定(特にドルチェとかグラツィオーソといった部分)に鈍感な感じ。
 
ルッジェーロ・リッチ(Vn)(CARLTON)(VOX原盤、録音年代不明、全曲)
(5分46秒)
技巧的には見事なもの。音楽も立派だが、主要主題がグラツィオーソで再現するときの表情が勇ましくなっている。ドルチェの部分も急ぎ足で趣がない。高域の音程と音色が斉諧生の好みから外れる。
 
オスカー・シュムスキー(Vn)(Nimbus)(録音1982年、全曲)
(6分53秒)
技巧的にはレビンらに一歩譲るが、もちろん立派な演奏。序奏の表情など音楽面では優っており、楽譜の表情指定をちゃんと生かしている。高音の細さ(硬さ)が少し聴きづらい。
 
マキシム・ヴェンゲーロフ(Vn)(Biddulph)(録音1989年、単発)
(5分37秒)
速いことは速いが、これ見よがしな速さではない。ちょっと音が薄い(鳴りが悪い)感じだが、録音のせいかもしれない。コーダのマルカートは速さと明確さが両立して見事だが、終結での和音は軽すぎる。EMIに再録音があるが、未架蔵。
 
四方恭子(Vn)(ART UNION)(録音1990年、単発)
(7分31秒)
堂々たる出来栄え、ライヴの一発録りということを考えれば凄い。ただ、会場録音のCD化ということで、音色的に聴き劣りするのが残念。
 
フランク・ペーター・ツィンマーマン(Vn)(EMI)(録音1993〜94年、全曲)
(6分40秒)
どんな重音でも和声がきれいに決まり、どんな高音でも音程が美しい。格段の技術的な余裕の上に立った、堂々たる横綱相撲で、難曲であることをまったく感じさせない。ドルチェの部分(楽譜3頁目前半)をppで駆け抜けるあたり、居並ぶ同業者の顔面を蒼白にさせるものではないか。ちょっと格が違う。
 
ローラン・コルシア(Vn)(LYRINX)(録音1994年、全曲)
(6分38秒)
主要主題を繰り返すところ(楽譜2頁2行目)での鮮烈なアクセントや、ドルチェになるところ(楽譜3頁目前半)の冒頭をスル・ポンティチェロで入るなど、最もアイデア豊富。重音の響きが粗いところもあるが(ちょっと残念)、楽しめた。
 
千住真理子(Vn)(VICTOR)(録音1993年、全曲)
(7分59秒)
独特のフレージングを施しているなど意欲的な演奏だが、表現が完成されきっていないような気もする。技巧や楽器の鳴りにも余裕がなく、現用ストラディヴァリでの再録音を期待したい。
 
潮田益子(Vn)(fontec)(録音1993年、全曲)
(7分32秒)
序奏での表情の濃さ、主題のラプソディックな印象、ゆっくりした指定部分での表情付け、最後の追い込みなど、模範的な演奏。贅沢を言えば、これぞという個性がないのが欠点。一発録りなのか、ところどころ重音の響きが荒れる部分が散見されるのが惜しい。
なお、唯一、番号順に収録していない全曲盤(6・5・4・1・2・3の順)。
 
加藤知子(Vn)(DENON)(録音1995年、全曲)
(8分29秒)
演奏時間が長いのは、基本テンポが少し遅めなのに加え、序奏にかなり時間をかけているため。堂々たる演奏で、グラツィオーソ指定の部分など最も素晴らしい。主要主題のラプソディックな趣を強調しないので、全体を通したときにべたっとした感じになる点が、斉諧生の好みから少しずれる。
 
清水高師(Vn)(PLATZ)(録音1996年、全曲)
(6分24秒)
音が少し不安定で、乱暴な言い方をすれば、雑な感じ・弾きこめていない感じを受ける。音程の感覚や高域の音が痩せているのも、斉諧生の好みから外れる。
 
和波孝禧(Vn)(SOMM)(録音1997年、全曲)
(7分44秒)
全曲録音を2回果たしたのは、今のところ彼だけだろう。さすがに曲が手の内に入っている感じで、説得力が強い。序奏から主要主題へ移行する部分(楽譜1頁目後半)、アニマンド(アッチェランド)で音楽が高まっていくところの興奮、主要主題のブラヴーラな情熱が見事に表現されている。熱っぽく弾いているわりに響きが荒れないのは、スタジオ録音のメリット。
 
相曽賢一朗(Vn)(自主製作)(録音1998年、単発)
(7分37秒)
きちんと弾けているが、今ひとつ個性に乏しい感じ。中音の音色は好きだが、高域が痩せていて魅力を減じている。
 
アンタル・サライ(Vn)(BMC)(録音2001年頃、単発)
(7分36秒)
演奏時間は長いが弛緩した感じではない。グラツィオーソなど、これくらいのテンポの方が良さそう。好もしい響きのヴァイオリンだが、表情はもう少し濃くても良いのでは。
 
ステファニー・マリー・デガン(Vn)(Intrada)(録音2002年、単発)
(6分59秒)
アグレッシブな音楽、濃い表情が決まっている。ちょっと高音がヒステリックになる箇所があり(常にではない)、惜しい。
 
ニコライ・ズナイダー(Vn)(BMG)(録音2002年、単発)
(6分45秒)
技巧的には最上級に属する人だ。ちょっと力こぶが入って、音楽の内容がピンと来ない。終結の決め方は鮮やか。
 
種々書いているが、結局のところ、全曲録音するほどの人に駄演・凡演はなく、どれも非常に高い水準を誇っている。
横綱格のツィンマーマン以外は、ほとんど横一線に近い。
敢えて「好み」を挙げれば、和波盤が第一、ついでコルシア盤。
もちろん潮田盤、シュムスキー盤も立派だし、録音のハンディさえなければ四方盤も上位に数えたい。
 
なお、おそらく横綱級のオイストラフ盤(単発)、クレーメル盤(全曲)が、CD未架蔵のため、今日の聴き比べから漏れている。他日を期したい。

7月16日(金): 先日まで当頁でリサイタルを告知していた和田記代さんをはじめ、スウェーデン音楽の紹介に志を持つ演奏家の団体であるステーンハンマル友の会のWebpageが公開された。
 10月以降ほぼ月1回のペースで、ステーンハンマルはじめ北欧の作品を取りあげたサロン・コンサートが予定され、更に来年7月3日にはオール・ステーンハンマル・プロの演奏会が東京オペラシティ(リサイタルホール)で開催されるという、まことに心躍る計画が明らかになっている。
 ぜひぜひ一人でも多くの方に、これらの作曲家を、また優れた若い演奏家たちをお聴きいただきたい。

 

カルロ・ゼッキ(指揮) アムステルダム・コンセルトヘボウ管
ブラームス;セレナード第2番(仏Philips、LP)
名匠ゼッキの指揮盤で未架蔵のものがeBayに出品されていたので落札。
彼の暖かい音楽は、このオーケストラの響きに相性がよさそうだ。
モノラル盤だが、非常に優れた音質である。録音・製作の年代は不明だが、もしかしたらオリジナルはステレオなのかもしれない。
 

 水曜に届いたLPの情報をレイボヴィッツ・ディスコグラフィに掲載。


7月15日(木): 

 

ヤーノシュ・ローラ(指揮) フランツ・リスト室内管
ハイドン;交響曲第45・49番(Hungaroton)
贔屓にしている団体、リスト室内管の未架蔵盤が某オークションにまとまって出品されたので落札。
元来は弦楽アンサンブルの筈だが、特に管楽器を加えて交響曲を演奏している。同種のCDには、先月入手した、同じ作曲者の交響曲第31番があった。
1982年、ブダペシュトでの録音。
 
ヤーノシュ・ローラ(指揮) フランツ・リスト室内管
ヘンデル;「水上の音楽」番(Hungaroton)
某オークションで落札したリスト室内管盤、続く。
これも管楽器を加えての演奏。新全集版(ハレ版)に基づく。
1986年頃の録音か。
 
フリギェシュ・シャーンドル(指揮) フランツ・リスト室内管
モーツァルト;セレナード第13番・音楽の冗談 ほか(Hungaroton)
某オークションで落札したリスト室内管盤、更に続く。
標記の2曲(前者が所謂「アイネ・クライネ」)と、セレナータ・ノットゥルナ K.2395つのコントルダンス K.609を収録している。
初期の録音らしく、シャーンドルが "Artistic Director"、ヤーノシュ・ローラは "Leader" という肩書になっている。
マルPは1978年となっているが、音質の感じからすると、録音自体はもう少し遡るかもしれない。
 
ペーター・マーク(指揮) スイス・イタリア語放送管 ほか
ハイドン;交響曲第103番 ほか(独CASCADE、DVD)
昨今、音盤屋の店頭で見かける20枚組DVD
興味深い演奏者も連なっているが、いかに廉価とはいえ20枚では値も張るし場所も塞ぐので手を出せずにいたところ、某オークションに1枚ずつ出品されていた。
20枚のうち最も聴きたい(視たい)指揮者マークのものを、これ幸いと落札したもの。
曲目は標記ハイドン以外にロッシーニ;序曲「イタリアのトルコ人」モーツァルト;P協第20番(独奏;マリア・ティーポ)。
視聴した感じでは、クラシカ・ジャパンスカイAで、日常的に放送されている番組に似た雰囲気。いかにもテレビ番組風の音質で、オーディオ的には今ひとつなのが残念でである。
1992年、スイス・ルガーノでのライヴ収録。
 
ペーター・マーク(指揮) スイス・イタリア語放送管 ほか
ドヴォルザーク;交響曲第9番 & ドビュッシー;牧神の午後への前奏曲 ほか(独CASCADE、DVD)
上記DVDの出品者から、もう1枚あるマーク盤を購入。
こちらは1996年の収録で、4年前と比べると指揮者の顔つきに精気が乏しくなっているのが痛々しい(マークは1919年生、2001年没)。
標記に加え、シュポーア;Cl協第1番(独奏;クルツィオ・ペトラーリョ)を収録している。
なお、このレーベルの発売予定には、フェドセーエフチャイコフスキー;交響曲全集などが上がっており、非常に楽しみである。
 
レナード・バーンスタイン(指揮) ニューヨーク・フィル ほか
ドビュッシー;聖セバスチャンの殉教(米COLUMBIA、LP)
アンゲルブレシュトが初演に参加し、その後も好んで指揮した「聖セバスチャンの殉教」。
この作品は、イタリアの詩人ダヌンツィオの台本による舞踊劇で、全5幕上演に4時間を要するといわれる。
このため通常、初演を指揮したキャプレが再構成した「交響的断章」の版が用いられるが、これは約20分に短縮されたもの。
ドビュッシーが付曲した音楽すべてを上演する試みには、アンゲルブレシュト盤(TESTAMENT)のほか、ティルソン・トーマス盤(Sony Classical)などがある。
その一つ、バーンスタイン盤LPが某オークションに安価で出品されていたので落札した。
バーンスタイン自身が準備した英語台本に基づく録音で、LP2枚約75分を要している。
CD化されたこともあるが、英語版ということで評価が低く、現在は廃盤になっているようだ。
1962年10月の録音。バーンスタインの妻フェリシア・モンテアレグレが聖セバスチャン役の語りで参加している。
 

7月14日(水): 

 

服部譲二(Vn) ゲルハルト・ボッセ(指揮) 新日本フィル
ブラームス;Vn協 ほか(fontec)
↓10日(土)の項に掲載したボッセ氏の講演内容には、思いの外、多くの反響を頂戴した。例えば→「おかか1968」ダイアリー
そのため氏が指揮する音楽への関心を深めていたところ、今日、本業の帰りにふと立ち寄った中古音盤屋で当盤を発見。
新譜の時も気にはなったのだが、独奏者にあまり良い印象がなく、見送ったもの。
中古格安ならば指揮だけを聴くつもりでも可か、と言い聞かせて購入。
ベートーヴェン;ロマンス第1・2番をフィルアップしている。
2002年5月、すみだトリフォニー・ホールでの録音。
 
ダセックP三重奏団 ほか
ハールストーン;P四重奏曲・P三重奏曲 ほか(DUTTON)
以前、クラシック招き猫の「夭折した作曲家のもっと聴かれるべき作品」というスレッドで紹介されていた盤。
ハールストーン(1876〜1906、イギリス)の作品を収めており、標記2曲に加え、「ほの暗い叙情がシューベルトを思わせ、一度聴けば決して忘れることのない美しい旋律は涙もの」というVcソナタ第2楽章の編曲版を収録している。
ずっと気になっていたのだが、某オークションに安価で出品されたのを機に落札したもの。
なお、前記Vcソナタ第2楽章は、VaとPのために作曲者が編曲したもの(P四重奏版ではなかった)。Va独奏はジェイムズ・ボイドという人。
2002年9月、ロンドンでの録音で、エンジニアは名職人トニー・フォークナー
 
ロレーヌ・マッカスラン(Vn) マイケル・ダセック(P)
バントック;Vnソナタ第1・2番 ほか(DUTTON)
バントックは、長大なヘブリディーズ交響曲で知る人ぞ知るイギリスの作曲家(1868〜1946)、指揮者としてはシベリウスから第3交響曲を献呈された人。
北欧音楽ファンとしては聴き逃せない人のVnソナタの世界初録音盤が、某オークションに安く出ていたので落札したもの。
独奏者は英国音楽の録音の多い人なので、安心して聴けるだろうと期待している。
2001年7月、ロンドンでの録音で、前記ハールストーン盤同様、名手トニー・フォークナーが担当している。
 
ペール・エノクソン(Vn) キャスリーン・ストット(P)
シェーグレン;Vnソナタ第1・2番 ほか(BIS)
ステーンハンマルの作曲の師、シェーグレン(1853〜1918年)のVn作品は少しずつ集めている。
買いそびれていたBIS盤が某オークションに安く出品されていたので落札したもの。
エノクソンも優れたヴァイオリニストなので(ステーンハンマル;2つのセンチメンタル・ロマンスアウリン;Vnソナタの録音がある)、期待したい。
1998年11月、スウェーデン・ヨェーテボリでの録音。
 
カール・リステンパルト(指揮) ザール室内管
ハイドン;交響曲第21・31・48番(仏le club français du disque、LP)
リステンパルトのハイドン演奏には定評があり、何曲かはCD化されていた(ACCORD)。
未架蔵の第21番を含む仏盤LPがMikrokosmosのカタログに安価で出ていたのでオーダーしたもの。
CDに記載されているデータでは、1965年1月録音とされている。
 
ネーメ・ヤルヴィ(指揮) エストニア響
ハイドン;交響曲第93・99番(蘇MELODYA、LP)
父ヤルヴィの膨大なディスコグラフィには、なぜか古典派録音が極端に少ない。
↓の "Encore!" で調べても、CDではハイドンベートーヴェンはソ連時代の協奏曲が1点ずつ、モーツァルト歌劇「ドン・ジョヴァンニ」だけといった具合だ。
思いがけずMikrokosmosのカタログに、ハイドンの交響曲の、祖国エストニアのオーケストラとの共演盤が掲載されていたので、聴かざるべからずとオーダーしたもの。
いつも思うことだが、その指揮者(演奏者)が「音楽の生命」を把握しているかどうか、クラシック音楽の神髄に参入しているかどうかの試金石が、ハイドン演奏ではなかろうか。
ヤルヴィのハイドンがどのような音楽か、楽しみである。
録音データ不詳。
 
ピエール・モントゥー(指揮) シカゴ響
フランク;交響曲(英RCA、LP)
モントゥーの名盤の一つ、フランクのイギリス・プレス盤がMikrokosmosのカタログに掲載されていた。
RCAレーベルの "LIVING STEREO" シリーズの英盤LPとしては、かなり安価だったので、オーダーしたもの。
第1楽章から聴き始めて驚いた。低弦の動機に続いて第6小節からVnが入ってくるところで、右の方から短い口笛と人の声が聴こえてきたのである。第8小節でも、少し低くなった声が確認できる。
CDでは、口笛も声も聴こえない。修正が施されたのだろうが、そのためか、右側に配置されているVaの音色はずいぶん違っている。
録音当日の様子を紹介した文章が、LPのジャケット(とCDのブックレット)に掲載されており、それによると、モントゥーがホールに到着したのは午前9時半。
10時少し前には指揮台に立ち、マイク・バランスをチェックしたあと、第2楽章から録音を始め、昼食までに第1楽章も完了、休憩後に第3楽章を収録し、1日でレコーディングを終えた、とある。
この雑音は、そうした効率的な日程がもたらしたものなのだろうか? それが消去された結果、この名演が "LIVING STEREO" シリーズとしては貧弱な音質のCDでしか聴けなくなったのだろうか?
もちろん軽々しく断定はできないが、惜しまれてならない。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮) RCAイタリア管
管弦楽名曲集(米Reader's Digest、LP)
eBayにレイボヴィッツの未架蔵音源が出品されていて驚愕、慌てて落札したもの。
収録曲は、順に
A面;オッフェンバック;序曲「美しきエレーヌ」ドビュッシー;「月の光」シャブリエ;楽しい行進曲グリーグ;ソルヴェイグの歌
B面;トーマ;序曲「ミニヨン」マスネ;タイスの瞑想曲ロッシーニ;「ウィリアム・テル」より舞曲マイアーベーア;戴冠式行進曲
ちょっとパレーのレパートリーと重なるのが面白い。
ジャケットの造り等から見て、おそらくオリジナルの箱物からバラされた1枚ものだろう。
録音データ不詳だが、優秀なステレオである。盤面の状態が少し悪く、雑音が多いのは残念。
 

7月13日(火): Flute World Onlineからアンゲルブレシュト;ソナチネ(Fl & Hp又はP)の楽譜が届く。同時にステーンハンマル;2つのセンチメンタル・ロマンスのFl版もオーダーしていたのだが、そちらは品切れ、バックオーダーに。

 

ネーメ・ヤルヴィ(指揮) ヨェーテボリ響 ほか
「A Passionate Affair」(Warne Förlag)
先だってヨェーテボリ響の首席指揮者を引退し桂冠指揮者の称を贈られたヤルヴィ。
24年間の実り多い協働関係を記念して、昨年発行された書籍の附録CDである。
2枚組で、片方はBISやDGGの既出音源を抜粋したものだが(本の記事と併行して編集されている)、もう1枚が凄い。
スウェーデン放送局が保存しているライヴ録音の集成で、数分ずつの抜粋ながら、14の音源が収録されている。
シベリウスだけでも、
交響曲第2番第1楽章終結(2001年11月10日、ヨェーテボリ・コンサートホール)
交響曲第2番より第4楽章終結(1980年6月18日、ロンドン、ロイヤル・フェスティバル・ホール)
組曲「カレリア」より「行進曲風に」(1997年3月20日、ウィーン、楽友協会大ホール)
アンダンテ・フェスティーヴォ(1997年3月20日、ウィーン、楽友協会大ホール)
というラインナップ。
更に、アルヴェーン;バレエ音楽「放蕩息子」アッテルベリ;交響曲第3番トゥビン;交響曲第6番ニルセン;Vn協(独奏はニコライ・ズナイダー)、マルティンソン;A.S.の追憶(2002年の来日公演で聴いた曲。収録されているのは2001年のヨェーテボリ公演)といった曲が含まれている。
 
もちろん、書籍本体も素晴らしいもので、写真が豊富なのが嬉しい。
特に、ステーンハンマルがシベリウスに送った書簡(1904年1月4日付け)の写真(冒頭部分、繊細な筆跡が美しい)と英訳(全文)が掲載されているのは、斉諧生にとって感涙もの。
また、ヤルヴィとヨェーテボリ響が多く演奏した曲のリストが掲載されているのも面白い。
最多はシベリウス;交響曲第2番の65回、第2位はアルヴェーン;スウェーデン狂詩曲で46回。
ステーンハンマルでは序曲「高みへ!」が22回で第5位、以下交響曲第1番(11回)、P協第2番歌曲「逢い引きから帰ってきた女の子」(各10回)、セレナード交響曲第2番(各8回)、歌曲「森の中で」(5回)となっている。
演奏時間が短く上演しやすい序曲や歌曲を別にすると、第1交響曲が最多というのは曲の知名度からすると少し意外だが、これはヤルヴィが非常に愛着を感じている曲なのだそうである。
 
同時に、ヤルヴィの伝記本 "Encore! Neeme Järvi" (SE JS Publishers) も届いた。こちらはエストニアで出版されたものの英訳本。
資料的に非常に充実しており、1991年1月〜2003年6月のヤルヴィの演奏記録(日録形式)や、ディスコグラフィが掲載されている。後者は、キャリア初期にMELODYAに録音したLPの簡単な記録と、1983年以降のCDに関しては、年代順と作曲者別の2通りの詳細なデータからなる。
 
これらの書籍については、Zepazepahuset ぜぱぜぱのおうちで情報を知り、デトロイト響オンライン・ショップから購入した。
海外発送もするように書いてあるのだが、決済のページに進むとアメリカ国内の住所しか記入できないようなつくりになっている(プルダウン・メニューにアメリカの州名しかないとか郵便番号欄に5桁しか入らないとか)。
普通なら諦めるのだが、この2冊はどうしても欲しかったので、無理矢理、通してしまった("city"欄にJAPANと記入し、州名はデトロイトのあるミシガン「MI」を選択)。
たぶんそれで大丈夫だろうと思うが、斉諧生の場合は、Web上の知人でカナダ在住の方(日本人)が力を貸してくださったので、非常にスムースに運んだ。あらためて感謝の意を表せていただく。<(_ _)>
 
安永徹(Vn) 市野あゆみ(P)
「ベスト・ライヴ・コンサート」(LIVE NOTES)
ベルリン・フィルのコンサートマスターの一人・安永氏の音盤は、このレーベルから出たリサイタル盤が非常に良く、以来、必ず買うことにしている。
CD2枚組で、1997年7月15日にカザルス・ホールで行われたコンサートを中心に、1989〜2003年の間に日本で行った演奏会のライヴ録音から、ソナタと小品を各5曲ずつ収録している。
主な曲は、
モーツァルト;Vnソナタ ト長調 K.379
ベートーヴェン;Vnソナタ第10番
バルトーク;Vnソナタ第1番
シュニトケ;Vnソナタ第1番
といったところ。
音像がやや遠い感じは会場収録らしいが、バランスや音の自然な伸びという点では生半可なスタジオ録音より優れており、音質的にはまったく問題ないといえよう。
ブックレットに評論家の柳田邦男氏が寄稿しており、安永夫妻らによる、子どもや高齢者施設への訪問コンサート活動を紹介している。当盤の収益も、そうした活動の一助に充てられるとのことである。
 
ハンス・ライグラフ(P)
モーツァルト;Pソナタ全集第1巻(dB Production)
ライグラフは1920年ストックホルム生れ、ザルツブルク・モーツァルテウムの名教授として有名で(伊藤恵や若林顕の師)、斉諧生的にはステーンハンマル;P協第2番のSP録音を行った人として重要。
以前、シューベルト;後期Pソナタ集(CAPRICE)を購入したが、そのときからモーツァルトのソナタ全集があることは承知していた。
聴いてみたくもあり、全5枚を買うのは厳しくもあり、Swedish music shopにオーダーするかどうか迷っていた。
今日立ち寄った音盤屋の新譜棚に並んでいるのを見て、とりあえず1枚だけサンプル的に聴いてみようと、最も好きな第12番 ヘ長調 K.332を含んでいる第1巻だけをレジへ持参。
録音は、シューベルトよりも古く、1981年2月。ストックホルムのベールヴァルド・ホールで行われている。
 

7月12日(月): 

 

ノーマン・デル・マー(指揮) ボーンマス・シンフォニエッタ ほか
エルガー;管弦楽小品集(CHANDOS)
Cafe ELGAR の店主オススメのエルガー!に掲載されているCDが某オークションに安価で出品されていたので落札したもの。
店主殿のコメントに曰く、
やさしく温かくメロディーを歌わせていきます。(略)とりわけ『セレナード・リリック』や『愛の挨拶』、『コントラスト』、『ひとりごと』など、いやもうどれも最高です。
とのこと。
有名な「朝の歌」「愛の挨拶」をはじめ、小品14曲を収録している。
Obのための「ひとりごと」では、イギリスの長老レオン・グーセンス(1897〜1988)を招いているのが目を惹く。
従って録音は少し古く、1976年7月。たしか、まだCHANDOSレーベルが独立する前ではなかろうか。オリジナルのLPは英RCAあたりから出たのかもしれない。
 

7月11日(日): 

 一昨日購入したCDの情報をレイボヴィッツ・ディスコグラフィに掲載。


7月10日(土): 神戸学院大学「グリーン・フェスティバル」にてゲルハルト・ボッセ講演会を聞く。

このグリーン・フェスティバルにおいて、今秋からボッセ氏と仲道郁代さんによるベートーヴェン;P協全曲演奏シリーズ(Vn協(P版)含む)が始まる。
その予告篇(?)として、『ベートーヴェンへの道』と題し、2時間のピアノ演奏付き講演会が行われた。
通訳は美智子夫人、ピアノは風呂本佳苗さん。
 
ボッセ氏については、5月にライプツィヒの自宅で転倒、左上腕骨と左大腿骨を骨折されたとのニュースが伝わり、御高齢と併せて非常に心配したのだが、客席から拝見したかぎりでは、お元気そうだったので安心した。
まだ歩行が不自由(右手で杖を突いておられた)、特に椅子から立ち上がられるときに辛そうにしておられたが、お話ぶりは矍鑠たるもの。ときに歌い、ときに右手を振り回して、力のこもった熱心な御講演をいただいた。
 
お話の前半では、主に、C.P.E.バッハJ.C.バッハがウィーン古典派に与えた影響について、その重要性が論じられた。大略次のごとし。
 
C.P.E.バッハがベルリンのプロイセン宮廷でフリードリヒ2世(大王)に仕えていた時期、オーストリアの外交官としてスヴィーテン男爵が当地に滞在していた。
優れた文化人であり音楽にも造詣の深かった男爵は、C.P.E.バッハの「多感様式」に感嘆、楽譜をウィーンに持ち帰って、懇意だったハイドンベートーヴェンに紹介することになる。
 
また、J.C.バッハについては、7歳のモーツァルトが旅先のロンドンで、この作曲家に出会ってレッスンを受けたことがある。
それ以後、モーツァルトは作風を一変させ、また終生J.C.バッハを敬愛し、その訃報に接するや、当時作曲していたピアノ協奏曲(第12番 K414)の第2楽章をある種のレクイエムとして、亡くなった作曲家の手になる旋律を引用したのである。
 
風呂本さんのピアノで次の5曲が演奏され(それぞれ抜粋)、C.P.E.バッハハイドンベートーヴェンとの精神的つながりが強調された。
C.P.E.バッハ;ロンド ハ短調 Wq.59-4
C.P.E.バッハ;ソナタ ホ短調 Wq.59-1
ハイドン;ソナタ 変イ長調 Hob.XVI-46
モーツァルト;ソナタ第11番 イ長調 K331
ベートーヴェン;ソナタ第1番 ヘ短調op.2-1
斉諧生はC.P.E.バッハの音楽やハイドン・ベートーヴェンの鍵盤独奏曲には疎いのだが、それでも両者の類縁性は感得できた。特に1曲目のロンドとベートーヴェンのソナタは酷似しており、ボッセ氏の指摘に頷くほかなかったのである。
 
お話の後半では、ベートーヴェンの聴覚障害と「ハイリゲンシュタットの遺書」を中心に、彼の音楽は内面の大きな苦しみから生まれたこと、作品にはその苦しみが表現されているだけではなく、それを乗りこえ解決を発見していくさまが第2主題などに表現されていることが語られた。
 
さて、それ以上に興味深かったのが、質疑応答。
以下、なるべく忠実に、やりとりを再録する。(斜字が質問)
 
 最近のベートーヴェン演奏は、古楽奏法の影響を受け、テンポが速く、リズミックな面が強調されているが、これは刺激的でせわしない現代社会の雰囲気の反映ではないか。フルトヴェングラークナッパーツブッシュといった、ドイツの巨匠指揮者の演奏が、もう一度見直されるべきではないかと思う。彼らの指揮で演奏された経験があり、両方の様式を御存知の先生は、どうお考えか。
 
 自分としては、過去のドイツの大家の演奏解釈には、今となっては共感しかねるところがある。
例えば交響曲第5番第2楽章で、フルトヴェングラークナッパーツブッシュワルターといった指揮者は、このようなテンポで演奏するのが常であった(歌う)。
しかしベートーヴェンが、その頃発明されたメトロノームを使って、自分の曲のテンポをチェックしたとき、この楽章は「八分音符=92」と指定した(歌う)。このテンポが、私にはしっくりくる。
フルトヴェングラーワルターといった大家の指揮者は、19世紀の音楽の伝統を受けつぎ、マーラーやR・シュトラウスなどの響きのイメージの中で音楽を創っていた。
それに対し、18世紀のC.P.E.バッハの音楽はまったく別な世界である。音もべったり作ってはいけない。アーティキュレーションが重要で、音の頭・延ばし方・終わり方・次の音(または休符)を注意して作っていくと、まったく別な響きが得られる。
 
交響曲第3番第1楽章は、「全音符=60」という指定である(歌う)。
これを3つに振る指揮者もまだ大勢いるが(歌う)、ちょっとつまらない音楽になってしまい、聴く気がしなくなる。後に続く音楽の性格も考えれば、ここ(冒頭)は、先ほどのような、弾み・勢いのある音楽が必要だ。
ベートーヴェン自身が望んでいたテンポに近づけること、それを試みることが大事。それによって彼の音楽に生き生きした表情が生まれるのである。
 
もちろん、フルトヴェングラーワルタークナッパーツブッシュシューリヒトといった大家たちを否定するものではない。
彼らは当時決定的な役割を果たした重要な人々である。マーラーやブルックナーの音楽を踏まえ、その時代で、最も正しいと考えた音楽をやっていたわけで、彼らの偉業は素晴らしいものだ。
特に私はフルトヴェングラーを深く尊敬している。若い頃、帝国ブルックナー管にいた1944年に、彼の指揮でブルックナー;交響曲第9番を演奏したが、一生忘れられない、心に残る演奏だった。
フルトヴェングラーは、レコードやCDでは真の個性がわからない指揮者の一人だ。彼がそこに立っただけで、深いオーラがホールを満たすのである。彼のゆったりしたテンポの中に、さまざまな変化があり、生き生きした音楽が創られた。
 
交響曲第3番第2楽章のこの部分で(歌う)、カラヤンはホルンを6本にし、遅いテンポでワンワンやってしまうが、それではベートーヴェンとは少し違ったものになってしまう。
2年前、NHK響交響曲第9番を演奏するのを聴いた。第1楽章の冒頭を、その指揮者は(名前は言わないが)、こういうテンポで振った(歌う)。これだと(遅すぎると)緊張感がなくなってしまう。やはり、こうでないと(歌う)。
この「タター」を、べったり伸ばしてほしいと要求する指揮者もいるが、18世紀の考え方として、音が伸びるときには減衰しないといけない。「タターァ」とかやられると、たまらなくなるときがある(笑)。
 
このような例を挙げだすと限りがないが、大切なことは、テンポ設定とアーティキュレーションであり、それによって曲の性格が決定されるのである。よく古楽器かモダン楽器かと質問されるが、それはあまり問題ではない。
 
 
 現存の指揮者のベートーヴェンでは、誰の録音を聴くべきか。
 
 全部の録音を聴いているわけではないが、例えばラトルの演奏は、ところどころ素晴らしく、共感できる。
ジンマンの演奏は、おそらく最も速いものだろうが、合理的だ。
アーノンクールも、なかなか良い。
なお、CDを聴くときに大切なことは、受動的にそのまま受けとめるのではなく、ここはもう少しこうしてほしいとか考えながら、自分の意見とたたかわせながら聴くことであり、その方がずっと面白くなると思う。
 
講演がひととおり終わった時点で約30分残っていたのだが、最初の質問への答が20分を超し、2つめの質疑で打ち止めとなった。
ボッセ氏には、もっともっと語ってほしいことがあり、こうした機会が再度、得られることを望みたい。氏の健康と長寿を祈念するものである。

7月9日(金): 

 

ハンス・ロスバウト(指揮) 
「DGG全録音集成」(DGG)
このところ意欲的なリリースが続いているDGGの "ORIGINAL MASTERS" の箱物、今回待望のロスバウトがCD5枚組で発売された。
音源としてはすべて架蔵しているが、やはり買わざるべからず。
収録曲は、
<CD1>
ハイドン;交響曲第92番(1957年3月録音)
ハイドン;交響曲第104番(1956年3月録音)
モーツァルト;Vn協第4番(1956年3月録音)
(独奏Vn;ヴォルフガング・シュナイダーハン)
(以上ベルリン・フィル)
以前、"THE ORIGINALS"シリーズでCD化された。音質は大差ないが、前回の覆刻は高域がやや硬く、今回の方が聴きやすい。
<CD2>
ベートーヴェン;P協第5番(1961年2月録音)
(独奏P;ロベール・カサドシュスアムステルダム・コンセルトヘボウ管)
ラフマニノフ;P協第2番(1948年5月録音)
(独奏P;ユリアン・フォン・カーロイミュンヘン・フィル)
<CD3>
シベリウス;管弦楽曲集(1954年11月・1957年3月録音)
(ベルリン・フィル)
以前、"THE ORIGINALS"シリーズでCD化された。音質は大差ないが、強いて言えば、今回の方がやや明確か。
<CD4>
ストラヴィンスキー;バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1962年7月録音)
(アムステルダム・コンセルトヘボウ管)
ブラッハー;協奏音楽・P協第2番(1955年11月・1956年3月録音)
(独奏P;ゲルティ・ヘルツォークベルリン・フィル)
ブラッハーは初CD化。ストラヴィンスキーは国内廉価盤でCDが出ていたが、音質は大差ないが、強いて言えば今回の覆刻がやや上回るか。
<CD5>
ベルク;管弦楽のための3つの小品
ウェーベルン;管弦楽のための6つの小品
ストラヴィンスキー;バレエ音楽「アゴン」(以上1957年10月録音)
(バーデンバーデン南西ドイツ放送響)
ウェストミンスター原盤のステレオ録音、かつてAdesレーベルからCD化されたことがある。音質的には少し明確になったが、やや硬い感じも加わり、音場が狭くなってしまった。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮) ロイヤル・フィル ほか
ベートーヴェン;交響曲全集 ほか(SCRIBENDUM)
レイボヴィッツの貴重な遺産としてまず聴かれてほしいベートーヴェン全集は、CHESKY盤が入手困難となっていたところ、ようやくSCRIBENDUMから再覆刻された。まったく喜ばしい限りである。
CD5枚組に、交響曲9曲と、序曲「エグモント」序曲「レオノーレ」第3番トルコ行進曲が含まれ、ちょうどCHESKY盤と同等の内容になっている。
音質的には、オリジナルのDECCAチームによる録音に近づいている。
CHESKY盤の覆刻は優れているのだが、弦合奏の高域に少しシャリシャリ感があるのと、CHESKY好みの中高音が張りだしたバランスになっていた。
今回の覆刻はイアン・ジョーンズの手になるもので、やや響きが拡散している感がありオリジナルLPには及ばないものの、優れたものであるといえよう。
ブックレットのデザインや内容がもっと充実していてくれればと残念ではあるが(この点はCHESKY盤も大差ない)、とにかく少しでも広くレイボヴィッツのベートーヴェンが聴かれ、この指揮者の再評価につながればと期待している。
ぜひぜひ御一聴いただきたい。
 
エマニュエル・ルデュック・バロム(指揮) バルティック室内管
バルトーク;弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽 & ディヴェルティメント(CALLIOPE)
バルトークの作品中、最も好きな2曲のカプリング。
リリース情報は承知していたのだが、なぜか国内の音盤屋の店頭で見かけず、とうとうalapage.comにオーダーしたもの。amazonでいうMarketplaceのような方式のものを買ったため、少し安めの価格で購入できた。
バロムは1971年生れでフランス出身、マリス・ヤンソンスと出会ってサンクト・ペテルブルクに留学し、イリヤ・ムーシンにも学んだとのこと。
バルティック室内管は、バロムが、サンクト・ペテルブルク・フィルの奏者を集めて、2000年に創設し、音楽監督の地位についた団体。
2003年12月、サンクト・ペテルブルクでの録音である。
 
ルノー・カプソン(Vn) ジェローム・ペルノー(Vc) ジェローム・デュクロ(P) ほか
シューベルト;P三重奏曲第2番・P五重奏曲「鱒」(LMCA)
贔屓のVn奏者カプソンの未架蔵盤を、やはりalapage.comのMarketplaceのようなところで見つけ、購入したもの。
標記の2曲がCD2枚組にそれぞれ収められている。
フランス・ノルマンディ地方のドーヴィルという海浜リゾート地で開催される復活祭音楽祭のライヴ録音で、1997年4月に収録されている。
 

7月7日(水): 

 

ディディエル・タルペイン(指揮) コンセール・ポラッコ & アンサンブル・フィルドール
ベートーヴェン;交響曲第1番 & メユール;交響曲第1番(BNL)
先だって、アリアCDさんのWebpageに掲載された盤。
店主コメントに曰く、
リズムになんともいえない気品があって、古楽器オケによく見られる猪突猛進型演奏とは全然違う。とても丁寧でチャーミング。高水準の管楽器アンサンブル・セクションはメロディの受け渡しも痛快なほどにしっかり聴き取れ、一方の弦楽アンサンブルは普段は必要以上に存在感を主張しないのにここぞというときにゴリゴリとうねりまくって緊張感を盛り上げる。
とのこと。
第1番は好きな曲なので(というかベートーヴェンの9曲はどれも好きだ)、非常に気になり、オーダーしていたもの。
団体名が2つ記されているのは、弦楽合奏のコンセール・ポラッコ(ポーランド)と、管楽合奏のアンサンブル・フィルドール(フランス)が、ワルシャワで開いた合同演奏会でのライヴ録音という事情による。
2002年6月、ポーランド放送(Polskie Radio)のルトスワフスキ・スタジオで収録された。
なお、指揮者については詳細不明。
 
ゾルト・ディーキイ(指揮) ニュルンベルク響 ほか
グラズノフ;組曲「ショピニアーナ」 ほか(COLOSSEUM)
これはアリアCDにオーダーしたもの。
愛惜佳曲書に掲げたショパン;軍隊ポロネーズのグラズノフによる管弦楽編曲の録音が含まれており、聴かざるべからず。
録音は1977年。指揮者についてはつまびらかにしない。
グラズノフのバレエ音楽集というアルバムで、バレエ音楽;「四季」(オトマール・マーガの指揮による)を含んでいる。
 
ヤン・フォーグラー(Vc) ファビオ・ルイジ(指揮) ドレスデン・シュターツカペレ ほか
R・シュトラウス;交響詩「ドン・キホーテ」 & Vcソナタ ほか(Sony Classical)
贔屓のVc奏者、フォーグラーの新譜が出ているというので、ドイツ・アマゾンにオーダーしたもの。
これまで彼の録音はBerlin Classicsから出ていたが、今回はSony Classical
ローカル・リリース扱いなのか、国内での発売予定等の情報を見かけない。
R・シュトラウスのVc音楽全集という格好になっており、標記2曲に加えてVcと管弦楽の「ロマンス」を収めている。
ソナタでのピアノはルイス・ロルティ、CHANDOSレーベルにラヴェルを録音していた人である。
2003年8月(ソナタ)・9月(管弦楽もの)にドレスデンの聖ルカ教会で収録、SACDハイブリッド盤になっている。
 
アラベラ・シュタインバッハー(Vn) ダニエル・ミュラー・ショット(Vc) サカリ・オラモ(指揮) バーミンガム市響
ハチャトゥリアン;Vn協・Vc協(Orfeo)
これも贔屓のVc奏者、ミュラー・ショットの新譜が出たというので、ドイツ・アマゾンにオーダーしたもの。
彼の公式Webpageを見ていたら、最近、プレヴィン・ムター夫妻とP三重奏のコンサートをしたようだ。
有名なわりに(有名だったわりに、か?)音盤の少ない、Vn協の新録音が含まれているのも有り難い。
独奏者は初顔だが、1981年ミュンヘン生れ、アナ・チュマチェンコイヴリー・ギトリスに学び、2001年には日本デビューを成功させた…とある。
両曲ともライヴ録音で、収録は2003年4月(Vc協、ミュンヘン)・8月(Vn協、バーミンガム)。
 
レジス・パスキエ(Vn) ローラン・ピドゥー(Vc) エミール・ナウモフ(P) ほか
プーランク;弦楽器・管楽器ソナタ集(SAPHIR)
リリー・ブーランジェを演奏するピアニスト、ナウモフがプーランクのソナタ集の録音に参加したという。
独奏者の顔触れも豪華、ぜひ聴いてみたいとアリアCDにオーダーしていたもの。
演奏順に、Cl・Fl・Vn・Vc・Obの5曲が収録されている。これだけでCD1枚に納まるのがプーランクらしい。
独奏者は標記のほかエリ・エバン(Cl)、ミシェル・モラゲス(Fl)、フランソワ・メイエ(Ob)。
2003年11〜12月、パリ・聖マルセル福音教会での録音。レーベルの公式Webpageがある。
 
ペッカ・クーシスト(Vn) ヘイニ・カルッカイネン(P)
シベリウス;Vn作品集(Ondine)
1999年、オスモ・ヴァンスカ(指揮) ラハティ響の初来日公演に帯同、シベリウス;Vn協で鮮烈な独奏を聴かせてくれたペッカ・クーシスト。
ちょっと独特な演奏だとは思いつつ、思い切りの良さ・積極性に圧倒され、固唾をのんで聴きいったことは今も記憶に生々しい。
彼がOndineレーベルにシベリウスのVn作品を録音したというので、公式Webpageに出るのを待ちかまえて、直接オーダーしたもの。
シベリウス旧邸「アイノラ」で、作曲家遺愛のピアノを用いての録音(2004年3月)。
この家にシベリウス夫妻らが住み始めたのが1904年で、それから100年が経つことを記念しての企画だという。
収録曲は、
4つの小品 op.78
5つの小品 op.81
5つの田園舞曲 op.105
4つの小品 op.115
3つの小品 op.116
同種の企画に舘野泉盤(CANYON)があったが、それと同じく、かなり空間の狭いオン・マイク録音になっているが、ピアノは一際美しく収録できている。
 

7月5日(月): 

 

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮) ソヴィエト文化省響
オネゲル;交響曲第1・5番(OLYMPIA)
ロジェストヴェンスキーのオネゲル!
某オークションで見つけて吃驚、オネゲルの交響曲録音は聴いておきたいと、落札したもの。
もっとも昨年に第2番 ほかの1枚を落札しているので、残りの曲があっても不思議ではない。
この人は全集魔だから、きっと第3・4番のCDもあるに違いない(笑)。
1985〜86年録音。
 
ヘニング・クラゲルード(Vn) ヘルゲ・キェクシュース(P)
グリーグ;Vnソナタ第1〜3番(NAXOS)
愛惜佳曲書シンディング;組曲を推奨しているクラゲルードについて、知人の疑問に答えようと調べていたとき、当盤の存在に気づいた。
これを買い損ねたままにしておけないと、在庫している音盤店を捜して購入したもの。
1996年11月イギリス・ハンプシャーでの録音というから、ずいぶん長い間、見落としていたことになる(汗)。
秋にはシベリウスシンディングの協奏曲が発売されると、ノルディックサウンド広島のWebpageで報じられていた。
また、上記知人によれば、ネットラジオで放送されたブラームスのライヴが絶品だったとのこと。
楽しみなヴァイオリニストが、また一人増えた。
 

7月4日(日): 

 

ヤン・ミヒエルス(P) シュピーゲルQ
ルクー;P四重奏曲 & 弦楽四重奏曲(MDG)
既にこの曲のCDは9種を数えるが、いまだ決定盤を得ない。
10種めの当盤がその地位を占めてくれるのではないか…と期待しつつ聴き始めた。
弦楽3人が揃って高水準という点では、10種の中で最右翼ではなかろうか。
基本的な技術の完成度に加え、表現力というより曲趣への共感の高さを随所に窺わせる。先ほどディスコグラフィを見ていて気づいたのだが、Va奏者は2度目、Vc奏者は3度目の録音になるのである。
川口のVnも、繊細な高音や、うち震えるような歌いまわしが美しい。(2人いるVn奏者のうち、どちらがP四重奏で演奏しているのか明記されていないが、第1Vnが担当しているものと想像する。)
ただ、3人の響きの溶け合いという点では、今ひとつ。
もともとのバランスか録音の加減かわからないが、Vnが弱くVaが強いため、3本の線の絡みが安定しない。また、音程的にもVnの高音が微妙に上ずっている感が拭えない。
それ以上に当盤の問題は、Pパートにある。客演という意識が強いのかもしれないが、表現が控えめすぎ、閃きや共感に乏しいのである。
堅実に演奏してはいるのだが、この曲の熱に浮かされたような気分や、夢見るような美しさが匂い立ってこない。
やや否定的な記述が長くなったが、総合的に見れば、10種の中で上位を占める好演には相違ない。しばらくはこれが最も入手容易な音源であり続けるだろうが、この曲を最初に聴くCDとして、まったく不足はないだろう。
 

 音盤狂昔録平成16年6月分を追加。


7月3日(土): 

 

シャーンドル・ヴェーグ(指揮) カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク
モーツァルト;交響曲第29番・Vn協第3番(WIKA自主製作)
以前、オーケストラの公式Webpageのディスコグラフィを見ていて、ヴェーグのライヴ盤があることに気づいた。
この人の指揮、特にモーツァルトは是非聴きたいと思い、オーケストラにメールを出して頒布してもらえないか頼んだのだが、品切れということで叶わなかった。
それが、先日、某オークションに出品されていたので吃驚、気合を入れて落札したもの。
1994年6月1日、ドイツのWIKAという測定器メーカーの本社で開かれたサマー・コンサートのライヴ録音である。
どうも、同社の社長(ウルズラ・ヴィーガントという創業者一族らしい女性)が、ヴェーグの後援者だったらしい。
なお、Vn協の独奏者は、オーケストラのコンサートマスターでもあるアレクサンダー・ヤニチェクという人。
 
フェルナンド・テービィ(指揮) ブリュッセルBRTNフィル ほか
モルテルマンス;管弦楽曲集(PHAEDRA)
今年3月(31日の項)に、ルクー作品と同じCDに入っていた、「イン・メモリアム」の悲歌が良かったロデウィーク・モルテルマンスという作曲家を、もう少し聴いてみたいと調べてみた。
PHAEDRAレーベルが出している "In Flanders' Fields" というシリーズに、この作曲家が1枚入っていることがわかり、紹介しておられるノルディックサウンド広島にオーダーしていたもの。
モルテルマンスは1868年アントワープ生れ、1952年同地で没。上記の「イン・メモリアム」は、1917年に妻と2人の子どもに先立たれた悲しみの中で書かれたという(3人の死は、第一次世界大戦と関係があるのだろうか?)。
その他、
交響詩「朝の気分」
交響詩「ヘリオス」
交響詩「春の神話」
歌劇「海の子どもたち」より幕開けの情景(「夜明けと日の出」)
ミニヨンの歌「君よ知るや南の国」
を収録。
後の2曲はニーナ・ステンメ(Sop) ゾルト・ハマー(指揮) フランダース放送管による。
テービィ指揮の4曲が1988年10月ブリュッセル、ハマー指揮の2曲が1999年1月アントワープでの録音。
 
ミカ・ヴァユリネン(アコーディオン)
バッハ;ゴルトベルク変奏曲(ALBA)
アコーディオンの鬼才、ヴァユリネンの新譜が出るというので、ノルディックサウンド広島にオーダーしていたもの。
アコーディオンによるゴルトベルクは、これも贔屓の奏者シュテファン・フッソングも録音しているが、表現力の強烈さでは一段優るヴァユリネンの演奏は、尚更楽しみである。
2003年8月、フィンランド・シウンチオの聖ペテロ教会で録音された。
 
ミカ・ヴァユリネン(アコーディオン) ほか
「時を超える飛行」(NAXOS)
アコーディオンの若き魔術師、ミカ・ヴァユリネンをもう1枚。フィンランドNAXOSのリリースである。
フィンランドの現代曲集で、アルバムの標題は冒頭に収められたマッコネン作品(1997年)の題名。
もっとも古い作品でもセーゲルスタム;無限への7つの質問(1970年)、最も新しいものはカンテリネン;中庸のテンポによる緩徐楽章(2000年)。大半は、ヴァユリネンの委嘱作ないし献呈作である。
イルッカ・クーシスト;讃歌(1999年)では、トマス・ユープフェバッカ(Vc)が加わる。
2001年1〜2月、これもシウンチオの聖ペテロ教会における録音。
これもノルディックサウンド広島にオーダーしていたもの。
 
ユシー・ビョーリン(ユッシ・ビョルリンク)(Ten) ほか
「グレーナ・ルンド録音集 第2巻」(Bluebell)
これもノルディックサウンド広島にオーダーしていた、ステーンハンマル全音源蒐集の一環。
グレーナ・ルンドはストックホルムの遊園地の名、ビョーリン(ビョルリンク)は、そこの野外音楽堂で度々歌っており、録音が残された。
当盤には、1951年7月5日に歌われた「スヴァーリエ」が収録されている(伴奏ピアノはハリー・エベルト)。
その他、1950〜57年にわたる音源から、オペラの有名アリアや北欧歌曲21曲が収録されている。
録音状態はあまり芳しくないが、歪みや雑音はなく、聴きやすい。
 
ペール・グルンデン(Ten)
名唱集(Bluebell)
これもノルディックサウンド広島にオーダーしていた、ステーンハンマル全音源蒐集の一環。
グルンデンは1922年生れ、1945年にヨェーテボリとストックホルムでデビュー、数年後にはウィーンに招かれた。
主にレハールやミレッカーといったオペレッタや、バーリンらのミュージカルで活躍したそうで、当盤にも「アニーよ銃をとれ」ナンバーが収録されている。
ステーンハンマル作品では、歌曲集「歌と唄」の第2曲バラード(「誇り高きアデリン」)が歌われている。
1959年7月、ストックホルム・コンサートホールでの録音で、伴奏はスティグ・ヴェステルベリ(指揮) スウェーデン放送響
 
ピエール・ピエルロ(Ob) モーリス・アラール(Fg) クラウディオ・シモーネ(指揮) ヴェネツィア合奏団
ヴィヴァルディ;Ob協・Fg協集(仏ERATO、LP)
斉諧生はかねてバソン(ファゴットのフランス式楽器)の響きを好んでいるが、Webで知り合った方から、アラールのシモーネとのヴィヴァルディが名演とお教えいただき、ずっと捜していた。
先日、某オークションで標記の3枚組LPが出品されているのを見つけて、落札したもの。
3枚中、アラールが1枚とピエルロのOb協が2枚。前者が1973年録音、後者は1969年録音とあるので、おそらく再発盤であろう。
 

 この間届いたCDの情報をステーンハンマル・作品表とディスコグラフィルクー・ディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィに掲載。


7月1日(木): 

 JPCから入荷。

キリル・ペトレンコ(指揮) ベルリン・コーミッシュ・オーパー管
スーク;アスラエル交響曲(cpo)
スークが亡妻の追憶に捧げた抒情あふれる名作の新録音が出た。聴かざるべからず。
既に音盤屋の店頭にも並んでいるが、cpoレーベルはJPCが安いので、オーダーの機会を窺っていたもの。
指揮者はロシア出身、ウィーンに学び、チョン・ミュンフンセミョン・ビシュコフらのマスタークラスやアシスタントで腕を磨いた。
ウィーン・フォルクスオーパーマイニンゲン劇場を経て、2002年のシーズンからコーミッシュ・オーパーの音楽総監督を務めているとのこと。
この曲の名演としては、緊張感に満ちたクーベリック盤(PANTON)が忘れられないが、当盤はいかなる成果を上げているだろうか。
2002年10月31日、コーミッシュ・オーパーでのライヴ録音。
 
イェルク・ヴィトマン(Cl) ヤン・フォーグラー(Vc) エヴァ・クピエツ(P)
ベートーヴェン;Cl三重奏曲 & ブラームス;Cl三重奏曲 ほか(Berlin Classics)
ドイツ系のチェリストで最も期待している人、フォーグラー。
2001年1月にミュンヘンで録音されたCDで、現地では2002年に発売されていたらしいが、日本には入ってきていなかったのではなかろうか。
ピアニストは、先だってスクロヴァチェフスキと共演したショパンや、イザベル・ファウストに付き合ったバルトークなどが良かった人なので、これも期待大。
Cl奏者は1973年ミュンヘン生れ、生地の音楽学校を経てジュリアード音楽院でチャールズ・ナイディッヒに学び、ソリスト・室内楽奏者として、また作曲家として活動中とのこと。
当盤にも、彼の自作「Nachtstück 夜想曲」(約8分、編成はCl・Vc・P)を収めている。
 
ヤン・ミヒエルス(P) シュピーゲルQ
ルクー;P四重奏曲 & 弦楽四重奏曲 ほか(MDG)
偏愛の曲、ルクーの遺作の新録音が出たというので、音盤店に入荷するのを待てず、JPCにオーダーしたもの。
シュピーゲルQは、川口ヱリサが第1Vnを務める団体。
この人の名は、日本音楽コンクールの優勝者として記憶している。調べてみると1980年のことだった。ベルギーに留学後、同地で活動を続け、ロイヤル・フランダース・フィルのコンサートミストレスを経て、現在は教職やこの四重奏団を中心に活動しているとのこと。
その他の奏者も、ベルギーで活動している人ばかり。ピアニストには公式Webpageがある。
弦楽四重奏のためのモルト・アダージョをフィルアップ、2003年12月にドイツ、バート・アロルゼンで録音された。
 
ベルモント・トリオ
ナディア・ブーランジェ;3つの小品 ほか(THOROFON)
いつも貴重な情報を頂戴する知人から御教示いただいたCD。姉ブーランジェ作品は愛惜佳曲書に掲載した曲ゆえ、買わざるべからず。
ベルモント・トリオは、チェロとギター2人からなる団体なので、原曲のピアノ・パートを2挺のギターにアレンジしている。
こういう編成で聴くのは初めてだが、チェロとギター(1人)よりもずっとバランスが良いのは、面白い発見だった。
Vc奏者はマクシン・ノイマンという女性で、時にジャズやロックのミュージシャンとも共演するなど、幅広く活動しているそうだ。
(そのわりには、ピアソラ作品が全然サマになっていないのが可笑しい。)
ブーランジェの曲は、決定的な名演に出会えていないので期待していたのだが、当盤も演奏内容には満足がいかなかったのは残念。
2002年11月に録音されたもので、バッハ;Vcソナタ第1番 BWV1027ビゼー;「カルメン」組曲ラフマニノフ;ヴォカリーズなどを収めている。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮) パリ新交響協会管 ほか
シェーンベルク;グッレリーダー(PREISER)
レイボヴィッツの代表盤の一つ、グッレリーダーの新覆刻。
1953年10月に名匠シャルランの手によって録音されたもので、モノラルLP期にはこの作品を聴けるほとんど唯一の音源だったらしい。
数年前にLYSレーベルから覆刻盤が出ているが、最近レイボヴィッツの音盤を優れた音質で次々に出してくれているPREISERレーベルゆえ、期待してオーダーしたもの。
聴き比べた感じでは、一長一短といったところか。LYS盤は高域が伸びているが、弦の音色が硬い。PREISER盤は周波数レンジが狭い分、古めかしい音に聴こえるが、音色は自然だ。
 

平成16年1月4日(日): 「作曲世家」にルクー・ディスコグラフィを追加。
平成15年8月24日(日): 倭匠列伝指揮者・宇野功芳を掲載。
平成15年8月24日(日): 50万件アクセスを記念して、ページデザインを全面改訂。
平成15年5月24日(日): 「逸匠列伝」にユッシ・ヤラスを掲載。
平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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