音盤狂日録


9月30日(木): 

遂にミクローシュ・ペレーニ(Vc) アンドラーシュ・シフ(P)によるベートーヴェン;Vcソナタ全集が、ECMの公式Webpageに掲載されたので、早速オンラインでオーダーしてみた(代金30.6EUR、送料6.2EUR)。
他の通販サイト(例えばjpc)でも「在庫あり」の表示に変わっているようだ。
送られてくるのが早いか、国内の店頭に並ぶのが早いか、さてどうなりますやら。

 

マルク・グローウェルズ(Fl) シュテファン・ド・メイ(P)
フランク;Vnソナタ(Fl編) & ルクー;Vnソナタ(Fl編)(SYRINX)
先日、グローウェルズの公式Webpageを覗くと、ルクーのVnソナタのフルート版(!!)をリリースしたというので仰天した。
ライナーノートによると、フランクのソナタがチェロやフルートで演奏されるなら、フランクと作曲様式が似ているルクーも…とグローウェルズが思いつき、自身で編曲したものという。もちろん世界初録音。
通常の通販サイトでは見あたらないので、専門店Flute Worldを探してみると、ちゃんと出てきたのでオーダー、2週間ほどで届いたもの。
グローウェルズはピアソラ;タンゴの歴史の委嘱・初演者として音楽史に名を残すことが決定的になっていた人だが、この編曲もフルート演奏の歴史に残る…ことを希望しておこう。
2003年8月、ベルギーのスタジオで録音された。
ドン・ベイリー(Fl) ドナルド・サルツェン(P)
「捧げ物」(GENUIN)
上記グローウェルズ盤をオーダーするついでにFlute Worldを検索してみると、リリー・ブーランジェ;夜想曲を収録しているCDを見つけた。もちろんこれもオーダーせざるべからず。
アルバム・タイトルは、「この録音を、20世紀の作曲家と演奏家による長い友情と、そこから生み出された偉大な室内楽への捧げ物としたい」という、ブックレット所載のFl奏者のコメントに由来する。
収録曲は、ブーランジェ作品のほか、
ギーゼキング;Flソナチネ(1935年)
マルティヌー;Flソナタ第1番(1945年)
プーランク;Flソナタ(1957年)
ムチンスキー;Flソナタ(1961年)
等。
ベイリーはミシシッピ州出身、アメリカを中心に活躍している人のようだ。
2003年9月、ドイツ・ビーレフェルトでの録音。
カルロス・プリエト(Vc) エディソン・クィンタナ(P)
ピアソラ;「ル・グラン・タンゴ」 ほか(URTEXT)
eBayになかなか魅力的なCDが出品されていた。
標記ピアソラ作品に、ヒナステラ;トリステヴィラ・ロボス;「バッキアーナス・ブラジレイラス」第5番よりアリアとくれば、落札せざるべからず。
その他にピアソラ作品3曲と、イバーラ;Vcソナタ(1946年生)などメキシコの作曲家の作品3曲を収める。
プリエトはメキシコ・シティ生れ、ジュネーヴでフルニエに、ニューヨークでレナード・ローズに学んだ。
バッハ;無伴奏の録音もあるが、スペインや南北アメリカの同時代音楽を熱心に紹介し、「ル・グラン・タンゴ」の世界初録音も、被献呈者ロストロポーヴィッチに先駆けて、彼が行っているという。
1996年7〜9月、ニューヨークでの録音。

9月29日(水): 

 

ユベール・スダーン(指揮) ザルツブルク・モーツァルテウム管
ブルックナー;交響曲第9番(自主製作)
東京響の音楽監督就任の報が伝えられて以来急速に日本での評価が高まっているスダーン。
先だってモーツァルテウム管のWebpageを覗いていたら、ブルックナーの録音が出ているのを見つけた。
どうやら自主製作らしく、購入はオーケストラまで問い合わせをとあるので、早速メールしてみた。
最初の返事は「10月30日に川崎のホールで演奏会があるから、手渡してあげる」などという、たぶん親切なのだろうけれども、困った内容だった(苦笑)。
それから1か月以上かかったが、ようやく届いたもの。
2002年5月2日、フェストシュピールハウス大ホールでのライヴ録音。
請求書等は封入されていなかったので、支払い方法はメールで問い合わせ中。
アレクサンドル・ドミトリエフ(指揮) サンクト・ペテルブルク響
チャイコフスキー;交響曲第6番「悲愴」 ほか(Sony Classical)
「サンクト・ペテルブルク第2のオーケストラ」を率いるドミトリエフだが、ムラヴィンスキー時代はいざ知らず、現在では演奏内容は第1かもしれない。
彼を最初に聴いたのはスタヴァンゲル響とのドビュッシー・ラヴェル管弦楽曲集(VICTORIA)だったが、透明感というか何とも言えぬ浮遊感があり感心した。
以来見かけるたびに買い求めているが、某オークションに未架蔵の「悲愴」が出品されたので落札したもの。
幻想序曲「ロメオとジュリエット」をフィルアップしている。
1993年6月、サンクト・ペテルブルクでの録音。
エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮) ソヴィエト国立響
グラズノフ;管弦楽曲集(BMG)
グラズノフによるショパン;軍隊ポロネーズの管弦楽編曲は、愛惜佳曲書にも掲げた大好きな小品。
ずっと古いカーメン・ドラゴン盤を愛聴しているのだが、もっと良い演奏・良い録音はないかと捜し続けてきた。
滅多に録音されないものと思っていたが、迂闊なことに「御大」スヴェトラーノフ盤の存在を知らず、買い損ねていた。
つい数か月前にようやく気がついたのだが、既にこの2枚組CDやMELODYA盤CDとも廃盤。某オークションeBayで見かけるたびに入札したものの、スヴェトラーノフものは高騰しやすく入手できなかった。
ようやく数回目にして落札に成功したもの(あまり高くならなかった)。
軍隊ポロネーズを含む組曲「ショピニアーナ」のほか、「お嬢様女中」「バレエの情景」個性的な組曲凱旋行進曲を収録。
1989〜90年にモスクワで録音された。
 
演奏はさすがにスヴェトラーノフ、重量感のある管弦楽が分厚く咆哮する、素晴らしい出来。
ついに「軍隊ポロネーズ」の決定盤を得た感あり。

9月28日(火): 

 

チャールズ・グローヴズ(指揮) イングリッシュ・シンフォニア
モーツァルト;交響曲第31・38番(IMP)
エルガー;弦楽セレナードの暖かい響きに感動して以来、好きな指揮者として数えているグローヴズ。
遺された録音は少なくないが、比較的地味な曲目が多い(そこが彼らしいのかもしれぬが)。
イングリッシュ・シンフォニアを指揮したモーツァルトも、ディスコグラフィのページによれば第25・27・28・29・31・32・33・34・38番の9曲のみ。
これまで中古盤やBerkshire Record Outletで3枚を入手、最後に残った「パリ」「プラハ」を、eBayで見つけたので落札したもの。
1987年10月にEMIアビーロード・スタジオで録音、プロデューサーはジョン・ボイデン。
エリック・ハイドシェック(P) ジャン・ジャック・ウェルナー(指揮) レオン・バージン管
ベートーヴェン;P協第5番「皇帝」・Pソナタ第5番(INTEGRAL CLASSIC)
9月15日の項に書いたハイドシェックの新譜。
日本では人気のあるピアニストなので、いずれ輸入されるかもしれないが、それまでとても待ちきれず、alapage.comにオーダーしたもの。
オーケストラはパリ郊外、ヴァル・ド・マルヌ県のFresnesに本拠を置く団体で、1981年にウェルナー(写真で見る限りかなりの年配)が「ヴァル・ド・マルヌ青少年フィル」として創設し、1994年に現在の名前に改めた。
レオン・バージンはステレオ初期にEMIに録音を残している指揮者で、当盤の記載によればトスカニーニの弟子で小澤征爾やズビン・メータを教えたとのこと。
2004年2月8日にFresnes国立音楽学校(Ecole Nationale de Musique de Fresnes)でライヴ録音された。
最初の名称、あるいは録音場所から想像を逞しくすれば、オーケストラはもしかしたら学生オーケストラか、それに近い性格のものなのかもしれない。かなり怪しげな響きが聴こえている。
やはり代理店がついて輸入されるようで、HMVはじめ各社のリリース情報に掲載されている。
シュザンヌ・ラモン(Vc) エルベール・ドゥ・プレシ(P)
ショパン;Vcソナタ & シューマン;幻想小曲集 ほか(ARKES)
カトリーヌ・コラールと共演したブラームスや、バッハ;無伴奏Vc組曲で注目するチェリストの一人になったラモンの新録音が出た。
たしか日本には入ってこないレーベルなので(たぶん彼女のプライヴェート・レーベル)、ずっと気に懸かっていたところ、上記ハイドシェック盤と一緒にalapage.comにオーダーしたもの。
ショパン;序奏と華麗なポロネーズをフィルアップ。
2004年1月、パリで録音された。
ボリスラフ・ストゥルエフ(Vc) セルゲイ・エローヒン(P)
ラフマニノフ;Vcソナタ & ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ ほか(LYRINX)
上記ラモン盤同様、気に懸かっていたCDをalapage.comにオーダーしたもの。
ラフマニノフとショスタコーヴィッチのカプリングとあらば、どうしても聴きたくなる。
ラフマニノフ;ヴォカリーズショスタコーヴィッチ;「黄金時代」よりポルカをフィルアップ。
2003年1月にマルセイユで録音されたもので、SACDハイブリッド盤。
ストゥルエフは1976年モスクワ生れ(現在はニューヨーク在住)、1992年にモスクワで開かれた「全ロシア・若い音楽家のためのコンクール」で第1位となり、翌年にはワシントンのケネディ・センターでアメリカ・デビュー(アイザック・スターンやバイロン・ジャニスに見いだされたとのこと)。その後、欧米の一流オーケストラと共演を重ねているという。
なお、公式Webpageがある。

9月27日(月): 

 

オルフェオ・デュオ
シューマン;Vnソナタ第1〜3番(UNACORDA)
シューマンの第2ソナタ、特に第3楽章のセンチメンタルな旋律は、斉諧生偏愛の音楽。
比較的録音の少ない曲なので、見かければ入手するよう努めているのだが、未架蔵盤が某オークションに出品されていたので落札。
オルフェオ・デュオは、ヴィタ・ウォレス(Vn)とイシュマエル・ウォレス(P)の姉弟からなる。以前、ブルーノ・ワルター;Vnソナタを録音していた。
古楽器による演奏ということで(Vnは1765年フィレンツェ製、フォルテピアノは1846年ウィーン製J.B.シュトライヒャーとのこと)、どういった響きになっているのか、楽しみである。
実際に聴いてみると、もう一つ冴えない演奏だったので残念。
ルネ・レイボヴィッツ(指揮) コンセール・パドルー管
ロッシーニ;序曲集(米URANIA、LP)
レイボヴィッツの未架蔵盤がeBayに出品されていたので落札したもの。
「アルジェのイタリア女」「セミラーミデ」「どろぼうカササギ」「ウィリアム・テル」の4曲が収められている。
このうち「セミラーミデ」のみCDを架蔵しているが、他は初めて聴く音源なので、非常に嬉しい。
ただし、レコード番号(USD1014)が初発時のものなのか、いつ頃プレスされた盤なのか、もう一つはっきりしない。
上記LPの情報をレイボヴィッツ・ディスコグラフィに掲載。

9月26日(日): 

 愛読させていただいているblogの一つ、えすどぅあさんによれば、今日サントリー・ホールで開催されたアラン・ギルバート(指揮) ストックホルム・フィルのコンサートで、ステーンハンマル;カンタータ「歌」より間奏曲がアンコール曲として演奏されたとのこと、誠に喜ばしい限り。
 以前にもパーヴォ・ヤルヴィ(指揮) 東京響ネーメ・ヤルヴィ(指揮) ヨェーテボリ響が取りあげているが、こうした演奏機会が重なって、この佳品が我が国のコンサートホールに定着することを願ってやまない。そして、いつか全曲演奏に接してみたいものである…。

 ストックホルム・フィルは、10月1日(金)、京都コンサートホールに登場するが、本業の状況等を考えると行けそうにない(泣)。曲目からするとアンコールはベールヴァルド;歌劇「エストレッラ・デ・ソリア」序曲1曲だけのパターンだが、気になる気になる気になる…。
 実際のステージに接した方がいらっしゃいましたら、是非々々コメントをお寄せください。
<(_ _)>


9月25日(土): 

最近聴いたコンサートの記録を演奏会出没表に掲載しました。

9月24日(金): 

 

チャールズ・マッケラス(指揮) スコットランド室内管
バルトーク;弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽 & ディヴェルティメント ほか(LINN)
この作曲家の作品中もっとも聴きたい2曲のカプリングゆえ、店頭に並ぶのを待ちきれずレーベルの公式Webpageからオンラインで注文したもの。
オーストラリア出身ながらプラハで学んだマッケラスが、ヤナーチェクマルティヌーなどチェコ(ないしスロヴァキア)系楽曲を得意にしていることは有名だが、バルトーク録音はあまり多くなかったと思う。
1925年生れというから彼ももうすぐ80歳、どんなバルトークか、楽しみである。
コダーイ;ガランタ舞曲をフィルアップ。
2004年2・3月エディンバラでの録音、SACDハイブリッド盤となっている。
漆原朝子(Vn) 韓伽耶*(P)
「ヴァイオリン+ピアノ音楽の20世紀」(fontec)
漆原姉妹の妹・朝子も、姉と同様(あるいはもしかしたら姉以上に)、実力のあるVn奏者。彼女の未架蔵盤が某オークションに格安で出品されていたので落札したもの。
表題どおり20世紀のヴァイオリン音楽を代表する硬派な曲が並んでおり、どう聴かせてくれるか楽しみである。
収録曲は(作曲年代順)
ウェーベルン;4つの小品 op.7(1910)
シェーンベルク;幻想曲(1949)
尹伊桑;ガーサ(歌詞)(1963)
武満徹;悲歌(1966)
ホリガー;無言歌 第2巻(1985-94)
細川俊夫;ヴァーティカル・タイム・スタディ III(1994)
というもの。
1997年12月、彩の国さいたま芸術劇場での録音。
(*ピアニストの名前の最後の文字はJIS外、本来は人偏が付く。)

9月22日(水): 

 

ヴェッセリン・パラシュケヴォフ(Vn)のリサイタルを聴く。
ピアノは村越知子
 
パラシュケヴォフ氏の実演には、一昨年から毎夏接しており、今日で3回目になる。
氏はブルガリア出身、レニングラードほかで学び、ヘンリク・シェリングの薫陶を受けた。
1973年からウィーン・フィルの、1975年からケルン放送響のコンサートマスターを務め、1980年から、サシュコ・ガヴリーロフの後任として、エッセン音楽大学の教授を務めている。
日本人の令室とともに毎夏来日、その機会に演奏会を開いたりしておられるとのこと。
 
今日の会場は金剛能楽堂。昨年6月に完成したばかりのホールで、いちど入ってみたいと思っていたので有り難かった。
なかなか珍しいロケーションだが、昨年の演奏会はお寺のホールだったから面白い。
どういう配置になるのかと考えていたのだが、能舞台の下、「目付柱」の外側あたりにピアノを置き、その向かって右側にヴァイオリニストが立たれた。
したがって照明は、奏者・客席(「見所 けんじょ」)の区別がなく、演奏中は明るいまま。
 
またピアノは能楽堂には備え付けられていないので、近隣の中学校から運び込まれた。
中学校のピアノとはいえニューヨーク・スタインウェイのグランド(ただし小ぶり)というからただものではない。何でも14年前に校舎の全面改築を記念して地域の後援会から寄贈されたものという(このあたりが明治以来京都市民らしいところ)。
もっとも主催者によると「長年表舞台での活躍がなかったスタインウェイにも光を当て」たいという話なので、楽器の状態は少々心配だった。
 
今日の曲目は
ヘンデル;Vnソナタ第4番 ニ長調
シューベルト;Vnソナチネ第3番 ト短調
ベートーヴェン;Vnソナタ第9番「クロイツェル」
 
ヘンデルの冒頭から、大げさな表情を排し、どこか淡愁の翳を宿した高雅な音楽が奏でられた。
毎回、この人の渋く暖かい音色には心を打たれる。重音の和声の美しさも特筆したい。
 
シューベルトでは、一節ひとふし音色に変化が与えられ、あたかも歌曲を聴くかのような趣。
会場の音響はかなりデッドで(素直な響きなので不快感はない)、音色の変化が手に取るようにわかる効果があった。
 
前々回から感じていることだが、パラシュケヴォフの音楽は、例えば定規で引いたような(CADで描かせたような、といった方が現代的?)完璧さを誇るものではなく、時に「かすれ」や「滲み」、微妙な「ぶれ」がある。
しかしながら、全体としての音楽にはまったく狂いというものがない。
かつて薬師寺東塔を「凍れる音楽」と評した美術史家があったが、あの三重塔も微細に見れば幾何学的な歪みを免れてはいないだろう。それが全体としては白鳳文化の粋とされる美として成り立っている。
パラシュケヴォフの音楽も同じことではないか…と、演奏者の背後に見える能舞台の檜皮葺の屋根を見ながら考えていた。
 
休憩後のベートーヴェンでは、そのことを一層強く感じさせられた。
第1楽章の激しい力感、第2楽章の雄大な変奏、第3楽章の明るい躍動が、まさに「かくあるべし」という存在感をもって現前している。
聴衆の集中も素晴らしく(客席が間近に演奏者を取り囲むような配置のおかげでもあろう)、今回もパラシュケヴォフ氏の演奏から「ほんとうの音楽を聴いた」という印象を強く受けたのである。
 
残念だったのは、やはりピアノの状態が悪かったこと。
素人の見た目の印象なのでもしかしたら間違っているかもしれないが、ffが鳴らない、ppがコントロールできない、トリルが回らない等々、おそらくピアニストにとっては思った音楽の2割ほども出せなかったのではなかろうか。
 
アンコールの1曲目は、バッハ;無伴奏Vnパルティータ第3番より「ルール」
ここでヴァイオリニストは能舞台に上がり、「正先」の少し奥のあたりに立った。
その響きの素晴らしかったこと! それまでの近くてデッドな音響が一変、やや遠いが美しい響きが得られたのである。
このときは客席が暗くされ、舞台上だけが照明に浮き上がって、まことに幻想的な雰囲気。
一音一音を慈しむような演奏もまた素晴らしく、ぜひこのホールで無伴奏全曲が聴きたいものと、願わずにはいられなかった。
 
2曲目は元の位置へ戻ってヴィニャフスキ;スケルツォ・タランテラ
こうした技巧的な曲をサラサラと弾いてしまうところも凄いが、何より中間部の懐かしい響きが佳かった。
 
最後に演奏されたブラームス;Vnソナタ第3番より「アダージョ」が、また圧巻。
深いヴィブラートをかけた豊かな音色から、深い祈りの音楽が響き渡り、深く聴衆の心に染みいった。
曲が終わっても、しばらく拍手が起こらなかったほど。
 
来年以降もパラシュケヴォフ氏の「本物の音楽」を聴きたい、より多くの人に聴いていただきたいと切に願っている。

 

アレクサンダー・ギブソン(指揮) スコットランド・ナショナル管
ウォルトン;交響曲第1番(CHANDOS)
スコットランドの名匠ギブソンの未架蔵盤が某オークションに出品されていた。
けっこう録音の多い人で(伴奏盤がまた多い!)、なかなかすぐに全部を蒐集するわけにもいかないが、この盤はあまり見かけないので落札することにした。
1983年9月、グラスゴーでの録音。
1曲だけで収録時間43分強というところが初期のCDらしく、またレーベル面のデザインも現在のCHANDOSとは異なっている(プレスをポリグラムに委託していた頃だ)。
ネヴィル・マリナー(指揮) ASMF
レスピーギ;組曲「古代舞曲とアリア」第3番 ほか(Philips)
斉諧生は、クラシックを聴き始めて間もない頃から弦楽合奏曲というジャンルに淫してきたが、その嗜好を決定づけた作品の一つが標記の組曲、特に第3曲「シチリアーノ」。
当時(二十数年前)、NHK-FMのクラシック・ライヴ番組の後テーマに用いられており、よく耳にしたものだ。
イ・ムジチの旧録音を手始めにあれこれ聴き集めてきたが、買いそびれていた当盤が、某オークションに安く出品されていたので落札したもの。
「鳥」「風変わりな店」をカプリング。
1986年10月・87年1月にロンドンで録音されている。
海上自衛隊佐世保音楽隊
伊藤康英;吹奏楽のための交響詩「ぐるりよざ」 ほか(CROWN)
クラシック関係のメールマガジンをいくつか読んでいる中に、「爆音!クラシック突撃隊♪」がある。
その第何号だったか、標記の曲の管弦楽版が演奏されたコンサートの感想が掲載されていた。
冒頭から驚きの表現が、演奏者のうち半分ちょいが男性なんですが、彼らがトロンボーンと合わせてグレゴリオ聖歌を歌うんです。これはカッコ良いっすよ。(略)グレゴリオ風合唱にしばしの厳粛を味わう、そして音楽がシャコンヌ形式で始まる。キリスト受難を表わす13変奏がドラマティックで、この曲がCD化されたら即買いです。
実はそれまで題名を見かけたことしかなく、吹奏楽曲は守備範囲外と一顧だにしなかったのだが、これを拝読して吃驚。
所謂「隠れ切支丹」の「オラショ」については、中学校の修学旅行で佐世保・長崎を訪れ以来興味を持ち、皆川達夫先生の著作や録音、あるいは柴田南雄先生の作品「宇宙について」で親しんできたのである。
これは聴き逃すべからずと思い、管弦楽版がまだ録音されていないのであれば吹奏楽版で…と心に留めていたところ、某オークションに当盤が出品されたので落札したもの。
一般には東京や大阪の団体によるCDが行われているが、これは作曲を委嘱した団体による録音として貴重である。
指揮は初演(1990年2月16日)当時の隊長岩下章二氏ではなく、録音(2002年4月)当時の熊崎博幸3等海佐。
第2楽章「唄」で龍笛(岩亀裕子)が吹く旋律は、柴田作品にも引用される殉教者を悼む歌「だんじくさま」であろう。
なお、当盤には「吹奏楽のための交響曲」とあるが、ここでの表記は作曲者の公式Webpageに従った。
その他、瀬戸口藤吉;行進曲「軍艦」田中穂積;「美しき天然」古関裕而;「長崎の鐘」等を収める。
アイザック・スターン(Vn) ピーター・ゼルキン(P) クラウディオ・アバド(指揮) ほか
ベルク;Vn、Pと13管楽器の室内協奏曲 & Vn協(Sony Classical)
ベルクの室内協奏曲は、きっちり聴きこんでおきたいと考えている音楽の一つ。
代表盤の一つである当録音を買いそびれていたので、某オークションへの出品を見かけたのを機に落札したもの。
室内協は1985年10月ロンドンでの録音だが(管楽器はロンドン響の楽員)、Vn協はレナード・バーンスタイン(指揮) ニューヨーク・フィルの付けで、1959年12月に録音されている。
堤剛(Vc)
コダーイ;無伴奏Vcソナタ & 黛敏郎;文楽 ほか(Sony Classical)
コダーイ作品もさることながら、黛作品(これまで林峰男盤(Pavane)で愛聴してきた)を聴いてみたいと思い、某オークションで落札したもの。
武満徹;オリオン(犂)(この曲のみ関晴子(P)が加わる)、石井真木;螺旋IIをカプリングしている。
1985年9月、埼玉県新座市民会館での録音。

9月21日(火): 

 

ドビュッシー四重奏団フェニックス・ホールを聴く。
今日の目標はルクー作品の実演を聴くこと。
上記ホールのWebpageでも主催者のWebpageでも、ルクー;弦楽四重奏曲とアナウンスされているのだが、実際のプログラムは弦楽四重奏のためのモルト・アダージョだったので吃驚。
曲目変更の告知もお断りもなかったので、もしかしたら違う曲だという認識がなかったのかもしれない。Vnソナタ以外の知名度は非常に低いのであり得ないことではなさそうな気がする(汗)。
ルクー伝道にも励まねば…と決意した次第。
 
さてそのモルト・アダージョにしても実演を聴くのは初めて。
この作曲家の特徴である「熱に浮いた感じ」は控えめで、どちらかというと落ち着いた音楽になっていた。
特に第1Vn以外の3人の音楽に、その印象が強い。
したがって「暗さ」や「哀しみ」が前面にあらわれ、節目節目に現れるVaやVcによる探るような音型のソロからは、どこか無明の迷路を深くさまよい歩く趣を感じることになった。
 
ルクーの音楽は、もっともっとステージでも聴きたいものである。
VnソナタP四重奏はもちろん、弦楽のためのアダージョや、今日はボツになった(?)弦楽四重奏なども、ぜひぜひ実演で採り上げられてほしいもの。
 
2曲目はドビュッシー;弦楽四重奏曲
団体の名前に負っている作曲家の作品ゆえ、当代随一の演奏を聴かせてくれるのでは…と期待していたのだが、ちょっと違った。
上記したように彼らの音楽は生真面目な傾向が強く、このためドビュッシーの音楽本来の味わいには到達していなかったように思う。
第2楽章での「遊び」の感覚や終楽章のファンタジーなどが、もっともっと聴きたかった。
その生真面目さがプラスに出たのは第3楽章で、弱音の幽玄美が素晴らしく、結尾など、どこか遠いところへ連れ去られそうな感じを受けたのである。
 
休憩後はフランク;P五重奏曲
これも斉諧生偏愛の曲の一つだが、実はあまり期待していなかった。
というのも、この団体、毎日のように違うピアニストとこの曲を演奏しているのである。
本来なら一人のピアニストとリハーサルを重ね、彼(彼女)を帯同してツアーを行うべきところ、おそらくマネジメント側が集客上の配慮から地元の演奏者を起用することにしたのだろう。
ゲネプロで「はじめまして」、本番で「さようなら」のような関係では、ろくな音楽になるまい…と諦めていた。
 
この予想が裏切られて「斉諧生は浅はかであった」と反省できればよかったのだが、残念ながら、実際のステージは想像どおりの結果となってしまった。
弦楽の4人については、彼らの生真面目さがもっとも良い成果を上げていたのだが、ピアニストがまったく鈍感。
弦の燃焼にも沈潜にも我関せず、一本調子に音符を音に変換するだけ。何とも情けない思いで全曲を聴き通す羽目になった。
 
また、アンコールがフランクの第2楽章結尾を繰り返すという…(泣)。

 

ウラディミール・スピヴァコフ(Vn & 指揮) モスクワ・ヴィルトゥオージ ほか
ハルトマン;葬送協 & シュニトケ;古い様式による組曲 ほか(BMG)
演奏会前に立ち寄った音盤店で中古CDコーナーを漁る。
スピヴァコフは最近CAPRICCIOレーベルから優れた音盤をリリースしているが、これは1989年4月の録音。
標記ハルトマン作品は現代音楽を得手にしているVn奏者によってしばしば録音される作品で、スピヴァコフでも聴いてみたいと思い購入したもの。
その他、ストラヴィンスキー;ニ調の協奏曲ペンデレツキ;カプリッチオプロコフィエフ;ヘブライの主題による序曲をカプリング。
プロコフィエフ作品ではエフゲニー・キーシンが参加しているのも目を惹く。
オリオン・ピアノ・クインテット
シューマン;P四重奏曲 & フォーレ;P四重奏曲第1番(自主製作)
デュオ・ハヤシ(林俊昭(Vc)、林由香子(P))の音盤はずっと蒐集している。
先だって関西音楽会情報で、標記名義で新譜が出ていることを知った。
いつもならすぐに駆けつけるところだが、扱いの音盤店が今日の演奏会場の近くにあることから、コンサートの前に立ち寄ることにした。
2002年5月、高知県中村市のヨンデンプラザ中村で録音されたもの。明記されてはいないが、四万十川国際音楽祭の一環として演奏されたものであろうか。
Vnはヤン・ヴァン・ワイエンベルク、Vaはファブリツィオ・メルリーニ
アミ・フラマー(Vn) ジャン・クロード・ペネティエ(P)
エネスコ;Vnソナタ第3番 & ヤナーチェク;Vnソナタ ほか(Thesis)
普段立ち寄らない中古音盤店に行くと買いたいものがありすぎて困るのだが、今日も今日とて…(汗)。
ほとんどは見送ったのだが、蒐集している標記エネスコ作品を収めた当盤は、あまり見かけない(というか知らなかった)盤なので、是非と購入することにした。
フラマーは1953年フランス・メッツ生れ、パリ音楽院を卒業後、ギンゴールドシェリングフェラスミルシテイン等の薫陶を受けたとのこと。1984年からは母校で教鞭を執っている、とブックレットに記されている。
その他、ウェーベルン;4つの小品 op.7シェーンベルク;幻想曲を収録。
1988年11月、パリで録音された。
ドビュッシーQ
ショスタコーヴィッチ;弦楽四重奏曲第4・8・13番(ARION)
今日の演奏者についてあれこれ調べていたとき、工藤さんのショスタコーヴィッチ・ページが検索にかかった。
コメントに曰く、
若干線が細いものの、素直で真摯な音楽作りが立派。知的に考え抜かれた表情には底の浅さが感じられない。技術的にも十分緻密な出来で、いわゆる現代的な演奏の中でも優れた仕上がりの一つと言うことができるだろう。
とのこと。
何曲か録音しているようだが、蒐集している室内交響曲 op.110aの原曲である第8番を含む当盤を是非聴いてみたいと考えた。
海外の通販サイトでも入手可能なのだが、おそらく会場販売があるだろうと待っていたところ、案の定だったので、シメシメと購入。
1998年7月、リヨンで録音されたもので、第2Vn奏者が今夜の人とは異なっている。
このところ工藤さんのページが閲覧できなくなって困っている。
サーバーのトラブルにしては長いのが不審。
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn) フィリップ・ミュレ(Vc) ジャック・ルヴィエ(P)
シューベルト;P三重奏曲第1番(FORLANE)
カントロフの未架蔵LPがeBayに出品されていたので落札したもの。
1982年2月、パリで録音されたアナログ末期の音源で、以前国内盤CDは入手したが是非輸入盤LPで聴きたいと願っていたところ、数か月経たないうちに巡り会うことができた。

9月20日(祝): 

 

最近注目の新譜が相次いだシベリウス;交響曲第3番を聴く。
レイフ・セーゲルスタム(指揮) デンマーク国立放送響(CHANDOS)
セーゲルスタムの旧全集は不出来という評価を下して以来、ほとんど顧みたことがなかったので、聴き比べのレファレンスを兼ねて聴き直してみる。
第一印象としては、「思いこんでいたほどには悪くない」という感じ。
雰囲気的には面白いところもあり、例えば第1楽章で第2主題が提示されるときに醸される憂愁の響きなど、指揮者の表現意欲・表現力をよく示すものだ。
ただやはり「緩さ」を感じる面がある。最初は録音のせいかと思ったが、弦合奏の響きの「幅」はおそらく音程の問題だろうし、木管の音色に抑制が欠けていたり管弦問わずフレージングがキッパリしていないのは、指揮者の責任だろう。
最大の問題は、第3楽章の後半、主題が全容を現す際の表情が優しすぎ(指定は "con energia")、かつ、そのあとの音楽の運びに推進力を欠く点であろう。
レイフ・セーゲルスタム(指揮) ヘルシンキ・フィル(Ondine)
旧盤よりもオーケストラの精度が格段に向上しているのは指揮者の力か、シベリウスへの習熟度の違いか。
弦合奏の立体感や木管の音色の精妙さ、これでこそシベリウス、と唸らせる響きである。
セーゲルスタムの「癖」のようなものが後退していて聴き易くなっているし、まだ残っている「減速」や「粘り」もこの程度であれば、アクセントというか香辛料として楽しむことができる。
例えば第2楽章中程、3分割されたチェロが高音域で美しいモチーフを絡み合わせる部分での温もりのある佳い音色など、この指揮者の魁偉な髭面の下には本当に暖かい心が宿っているに違いない…と思わせられた。
北欧の音色感とヒューマニスティックな味わいとが両立した、優れたシベリウス演奏の一つといえよう。
 
ただし、同レーベルのムストネン盤が聴かせた清明の極みに比べると、まだまだ…の感が強い。シベリウスの神髄の一端に触れるには、ぜひムストネン盤をお聴きいただきたい。
平成17(2005)年にはムストネン(指揮) ヘルシンキ祝祭管の来日公演が予定されている。
詳細の公演予定はまだ承知しないが、是非聴きに参じたいものである。
エフゲニー・ムラヴィンスキー(指揮) レニングラード・フィル(Altus)
音楽のまばゆい輝きという点では、他に冠絶した演奏。
音の強靱さ(管であれ弦であれ)、目くるめくようなスピード感、キリッと絞り上げられたフレージング、録音の不備を超えて、ぜひぜひ聴かれてほしい音楽である。
この演奏も、シベリウスの神髄の一端に触れるものといえよう(ただしムストネン盤とは反対側の端)。
 
ただ、斉諧生のシベリウス演奏に関する好みからすると、木管の音色感に違和感が強く、直ちにベストを争う盤として指を屈するには躊躇せざるを得ない。
(あるいは録音のせいかもしれず、もし当夜の演奏会場、すなわち1963年10月27日のレニングラード・フィルハーモニー大ホールに居合わせたならば、四の五の言わずにノックアウトされた可能性も十分考えられる。)

9月19日(日): 

 

ゾルタン・コチシュ(P) ヤーノシュ・ローラ(指揮) リスト室内管
モーツァルト;P協第12・23番(Hungaroton)
福島章恭氏の著書『モーツァルトをCDで究める』(毎日新聞社)に紹介されて以来、気になっていたディスク。曰く、
コチシュの若芽のような新鮮なピアノとロッラ指揮の躍動感溢れるオーケストラが、作品の魅力を余すところなく伝えてくれる。ハンガリーの弦の美しさは格別だ。」(第12番)
平成8(1996)年にブダペシュトを訪れたとき、市内の音盤屋にはこのシリーズが山積みされていたものだが、当時はコチシュにさほどの関心がなく、第27番ほかの1枚しか買い求めてこなかった(ペレーニ師がまったく眼中になかったのは汗顔の至り)。
最近では国内の音盤店等で見ることもなかったのだが、↓のアマディンダのHungaroton盤を捜しているときに思い出し、まとめてjpcにオーダーしたもの。
1983年7月の録音。
ヤン・フォーグラー(Vc) トマス・ザンデルリンク(指揮) ザールブリュッケン放送響
コルンゴルト;Vc協 & バーバー;Vc協 ほか(Berlin Classics)
斉諧生の日課の一つはjpcの新入荷情報をチェックすることだが(普段は十数〜数十枚程度だが旧譜がまとまって入ったときなど数百枚になって閉口する)、フォーグラーの新録音がリリースされたとあって、居ても立ってもいられず、オーダーしたもの。
今回は1940年代のアメリカにちなんだ企画とのこと。
最近Vn協が再評価されているコルンゴルトだが、このVc協は映画「愛憎の曲」の劇中音楽として書きおろされた十数分の作品。チェリストと作曲家とピアニストの三角関係の物語だったそうである。
複数ある先行盤は、独奏は良いが管弦楽が地味、管弦楽は派手だが独奏が頼りないなど、いずれも満足いかないものだったので、フォーグラーが決定盤になるのではないかと期待している。
シュレーカーの弟子で、アメリカ亡命後はメトロポリタン歌劇場の副指揮者を務めたユリウス・ビュルガー(英語読みするならジュリアス・バーガーか)のVc協より第2楽章アダージョと、バーバー;弦楽のためのアダージョ(これは管弦楽のみ)をフィルアップ。
2003年11月、ザールラント放送局での録音。
ジェローム・ペルノー(Vc)
バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(Ligia Digital)
いつも参考にさせていただいているT.S.さんの頁のコメントを拝読して是非聴きたくなった盤。
ライヴらしい勢いの感じられる,躍動感に溢れる演奏です。緩急強弱が自在で表現のレンジが広いのですが,それでいて癖がなく素直に感じられるところが好印象です。(略)弓が弦に吸い付くようであり,一つ一つの音がまるで生き物のように息づいています。
店頭で見かけた記憶もあるのだが、いざ捜し始めると見あたらず、地元フランスの通販サイトでも切らしていたりして、なかなか入手できなかったのだが、今回jpcで目出度く入荷したもの。
ペルノーはパリ音楽院出身、フィリップ・ミュレ等に学び、バロックから同時代音楽まで幅広く取り組んでいるとのこと。近年ではオリヴィエ・ボーモン(Cem)との二重奏や、ヘルムート・ラッヘンマンとの共同作業を行っているらしい。
使用楽器は1690年ミラノ製の"カルロ・ジュゼッペ・テストーレ"、1998年12月にベラルーシ・ミンスクの教会でライヴ録音したものとのこと。
ペーター・エトヴェシュ(指揮) アマディンダ・パーカッション・グループ ほか
ストラヴィンスキー;バレエ音楽「結婚」(1917年版 & 1923年版)(Hungaroton)
アマディンダの公式Webpageのディスコグラフィで未架蔵盤が多数見つかり、あちこちの通販サイトを捜してみたところ、jpcが最も充実していたので、まとめてオーダーしたもの。
「結婚」といえばピアノ4台と打楽器、4人の独唱者と合唱という特異な楽器編成で知られているが、それは1923年、バレエ・リュス@ディアギレフが初演したときの完成型(指揮者はアンセルメ)。
ストラヴィンスキーがロシアの農民の結婚式をテーマに着想したのが1912年、ディアギレフの前で試演したのが1915年(この稀代のインプレサリオは涙を流し「最も美しく、最も純粋にロシア的なバレエだ」と述懐したという)。
ところが作曲家は楽器編成に悩み続け、ツィンバロンを是非入れたいと考えて、1917年にこの楽器と室内管による版を書き上げた。
その後「2台のツィンバロンとピアノラ、ハルモニウム、打楽器」に書き直したものの特殊すぎて上演に適さないことがわかり、悩んだあげく初演の編成に落ち着いたらしい。
1917年版はサヴァリア響(公式Webpage)、1923年版はアマディンダと2人の打楽器奏者、4人のピアニスト(ゾルタン・コチシュイムレ・ローマンを含む)による。
4人の独唱者とスロヴァキア・フィル合唱団は両版に共通。
録音データ未詳だがマルPは1988年。
1923年版の録音に当たっては作曲者自演盤(1934年録音)を参照して出版譜を訂正したという。
なお、アリオン音楽財団のWebpageを参考にさせていただいた。
アマディンダ・パーカッション・グループ
「アマディンダ」(Hungaroton)
1984年に結成されたアマディンダのデビュー盤らしい(録音は1986年)。
ハンガリーの同時代作品に加え、ケージ;セカンド・コンストラクション(1940年)、ライヒ;ピアノ・フェーズ(1967年)、アフリカの伝統音楽やラグライム音楽を演奏している。
アマディンダ・パーカッション・グループ
「レガシーズ」(Hungaroton)
上記デビュー盤から12年後、1998年6〜7月に録音された結成15周年記念盤。
ポリネシア(トンガ、タヒチ)やアフリカ(ジンバブエ、マラウイ)の伝統音楽と、自作("beFORe JOHN"と題されたシリーズ)を演奏している。
前者では掛け声(というか奇声)も聴かれるが、ハンガリー人がスタジオで叫んでいるかと思うと、何とも可笑しい。

9月18日(土): 

 

マルク・グローウェルズ(Fl) ジョルジュ・デュモルティエ(指揮) ワロン室内管
モーツァルト(フォブス編);「魔笛」による幻想曲(カメラータ・トウキョウ)
グローウェルズはベルギーのFl奏者、日本ではあまり知られていないようだが、ピアソラ「タンゴの歴史」を委嘱したのはこの人である。
上記公式Webpageに膨大なディスコグラフィがあるが、国内盤が出たものはあまり多くない。ぜひ日本の会社からCDを出したいと、来日時に出会ったカメラータの井阪氏に直談判して録音を実現させたのが当盤(ライナーノートによる)。
収録曲は、いずれもオペラに関係する作品で、標記モーツァルトのほか
グレトリー;Fl協ショパン;ロッシーニの「シンデレラ」による変奏曲ビゼー(ボルン編);カルメン幻想曲ロッシーニ;Flソナタ(弦楽ソナタ第4番より)グルック;「精霊の踊り」
「魔笛」のアレンジものは種々蒐集しているので、その一環として某オークションで落札したもの。
1990年6月、ブリュッセルでの録音。
グローウェルズの公式Webpageを見ていたら、最新盤はフランクとルクーのソナタ
フランクのFl編曲は珍しくないが(あまり好きではないので多くは架蔵していない)、ルクーはおそらく世界初録音だろう。
これは入手せざるべからず、さっそく手配してみた。
古澤巌(Vn) セルジオ & オダイール・アサド(G)
「夏のアサド」(AM)
先日ふらふらWebを見ているときに古澤巌のファン・サイトを覗いてみると、一般販売していない音盤の情報を見つけた。
古澤氏のヴァイオリンは聴き逃せないので直ちにオーダー(郵便振替で代金送料を送金)、折り返し送付されてきたもの。
2004年7月にアサド兄弟と共演した際のプログラムから4曲を録音した、ミニアルバム(約15分半)ということである(ただしライヴ盤ではなく、ベルギーでのスタジオ収録)。
いずれも南米系の作品で、ビジョルド;エル・チョクロガルデル;想いの届く日ピシンギーニャ;アヒルの歌クラリス・アサド;感電!(クラリスはセルジオの愛嬢とのこと)。
モーリス・アッソン(Vn) マイケル・イサドール(P)
フォーレ;Vnソナタ第1番 & ドビュッシー;Vnソナタ(英CFP、LP)
アッソンはフランス生れ、パリ音楽院卒業後にシェリングと出会って師事するようになった。
師に心酔して自らも南米ベネズエラに渡り(シェリングは中米メキシコだったが)、現地の音楽教育に献身する。
この人がロッホラン(指揮) ハレ管と録音したブラームス;Vn協が師譲りの硬派な音楽で素晴らしく、爾来、蒐集に努めている(ブラームスは最近CD化された)。
未架蔵のLPがeBayに出品されていたので落札したもの。
1973年5月の録音、プロデューサーはジョン・ボイデン。

9月17日(金): 

また少し、blogのデザインを変更してみました。
ロゴの画像を復活させたのと、
サイドバーに「最近のコメント」を表示するようにしています。
 
なお、このあたりは、ひたすら
Techknow Weblog
のお世話になっています。

9月16日(木): 

 

ヴェーグQ
バルトーク;弦楽四重奏曲第1・2番(EMI)
ヴェーグQのバルトークにはステレオ録音もあるが、これはモノラル録音(1954年)。数年前にタワーレコードの企画でCD覆刻された全集の1枚である。
第3〜6番を前にEasySeekで安く買っており、残る2曲もいずれ…と思っていたところ、ようやく某オークションへの出品を見つけ、落札したもの。

9月15日(水): 

新譜情報を2点。
 
エリック・ハイドシェック(P) ジャン・ジャック・ヴェルナー(指揮) レオン・バージン管
ベートーヴェン;P協第5番「皇帝」・Pソナタ第5番(INTEGRAL CLASSIC)
レーベルの公式Webpageに掲載されていた。
今年2月のライヴ収録というのが楽しみである。
上記頁にはwww.maguelone.comで買えるように表示されているが、リンクを辿っても、当盤はカタログに出ていない。もうしばらく時間が必要なのだろう。
 
ドミニク・ド・ヴィリアンクール(Vc) エミール・ナウモフ(P)
ベートーヴェン;Vcソナタ全集(EA)
先だってペレーニ師のベートーヴェン全集発売の報を掲載したばかりだが、今度はヴィリアンクールも同じ曲集をリリースするという。ジャケット画像
また、公式Webpageによれば、それに続いてハイドン;Vc協集も発売予定というし、ドビュッシー;Vcソナタチャイコフスキー;P三重奏曲の録音予定も掲載されている。
とにかく楽しみである(^^)。

 

チョン・キョンファ(Vn) リッカルド・ムーティ(指揮) フィラデルフィア管
ドヴォルザーク;Vn協・ロマンス(EMI)
確か初発時に宇野功芳師が扱き下ろしたか何かで買いそびれたままになっていたチョン・キョンファのドヴォルザークが、某オークションに格安で出品されていたので落札したもの。
1988年10月、フィラデルフィアでの録音。
サワリだけ聴いてみたが、なるほど絶不調という感じ(苦笑)。

9月14日(火): 

 

ゾルタン・コチシュ(P) デジュー・ラーンキ(P) ほか
バルトーク;2台Pと打楽器のソナタ ほか(Hungaroton)
先だって、コチシュ・ラーンキ・シフの「ハンガリー三羽烏」(当時そういう呼び方をしていた)によるモーツァルト;P協集を入手した。
これはそのうち2人によるバルトーク作品集だが、実際の狙いは打楽器奏者にゾルタン・ラチ(@アマディンダ)が加わっているところにある(もう一人はグスタフ・チェルという、アマディンダのメンバーではない奏者)。
この人が叩いたバルトークならば、是非聴いてみたいと思い、某オークションで落札したもの。
コチシュ編による2つの映像前奏曲とスケルツォの2台ピアノ版をカプリングしている。
1981年9月11日、リスト音楽院でのライヴ録音。
なお、アマディンダが打楽器を担当した標記バルトーク作品の録音には、もう1点、シフブルーノ・カニーノと共演したDECCA盤があるらしい(アマディンダ公式Webpageのディスコグラフィによる)。こちらも是非聴きたいものだ。

9月13日(月): 

 

武久源造(Fp) コンヴェルスム・ムジクム
シューベルト;P五重奏曲「鱒」 ほか(ALM)
そろそろ新譜が出ていやしないかと思い立って、桐山建志氏のWebpageを訪れてみると、案の定、当盤が掲載されており、通販を申し込んだもの。
フォルテピアノは武久氏、彼の音盤も聴き逃せないと思っているので、ちょうどよかった。
その他の奏者は深沢美奈(Va)、諸岡範澄(Vc)、諸岡典経(Cb)。
武久氏自撰のライナーノートによれば、シューベルトの創造画期の一つ1820年に注目してみるという企画で、標記5重奏曲に加え、弦楽四重奏曲第12番(第2楽章の断片含む)、歌曲「鱒」・「トゥーレの王」・「水の上で歌う」をカプリングしている。
歌曲の後2者は武久氏による弦楽器の伴奏が加えられている。
2002年6月、身延町総合文化会館での録音。
漆原啓子(Vn) 岩崎淑(P)
「マイ・フェヴァリット・メロディー」(fontec)
漆原さんがヴィニャフスキ国際コンクールで優勝したのは1981年、前年のエリーザベト王妃国際コンクールでの堀米ゆず子さんと併せ、ちょうど斉諧生がヴァイオリン音楽を中心としてクラシック音楽を聴きこみ始めた頃だったので、鮮烈な印象を持っている。
当盤は1990年5〜6月の録音、数多ある小品集の一つという認識しかなく、ずっと買いそびれていたのだが、先だって某オークションに出品されているのをつらつら見ると、シンディング;組曲op.10よりアダージョシベリウス;ロンディーノ op.81-2同;ワルツ op.81-3と、北欧系の楽曲が含まれていることに気がついた。
特にシンディング作品は愛惜佳曲書に掲げており、部分的な録音とはいえ聴き逃したくないと思い、落札した。
その他にはラフマニノフ;ヴォカリーズバルトーク;ルーマニア民俗舞曲エルガー;愛の挨拶クライスラーの有名小品などを含み、全13曲が演奏されている。

9月12日(日): 

 

奈良フィルハーモニー管(公式Webpage)の第15回定期演奏会を聴く。
会場は奈良県文化会館・国際ホール。
 
創立20周年記念演奏会ということで、指揮者に秋山和慶を招聘、オール・フランス・プログラム。
ラヴェル;組曲「マ・メール・ロワ」
サン・サーンス;Vn協第3番
ビゼー;交響曲第1番
 
サン・サーンスの独奏者はオリヴィエ・シャルリエ、この人を聴きたくて奈良まで出かけたのである。
シャルリエにノックアウトされたのは2002年1月奥田一夫(Cb)とのデュオ・リサイタルでのフランク;Vnソナタ(ピアノは児嶋一江)だった。
今日は1階中央の前から2列目に席を取り、オーケストラよりもヴァイオリンを聴く態勢。
 
とにかく独奏に関しては、全く間然とするところない素晴らしい演奏。
フランス風の美音と、洗練された節回し。完璧と思えるボウイング、音がよれたりぶれたりすることがない。
攻めるところは敢然と攻め、引くところはすっきりと引き、ヴァイオリンを聴く醍醐味を満喫できた。
第2楽章終結のフラジョレットの連続でも、まったく危なげないばかりか、本当に美しい音がする。
 
CD録音も少なくはない人だが、もっと知られてよいのではなかろうか。
もしかしたら、音そのものの強烈な魅力という点で一歩を譲る(美音ではあるのだけれど)のがマイナスなのかもしれない。
 
拍手に答えてアンコールにジャン・マルティノン;ソナチネ
作曲者は有名な指揮者と同一人物だろう。作品番号等は不詳。
シンコペーションを多用した無窮動風の急速な音楽で、胸がすいた。
更にもう1曲、弦楽合奏を従えて、文部省唱歌;紅葉(編曲者不詳)。
つまり"秋の夕日に照る山紅葉〜"、編曲者不詳。
これも暗譜で弾いていたのには感心させられた。
 
ラヴェルビゼーに関しては、さすがに秋山氏というべきか、骨格のしっかりした音楽で、ラヴェルのふんわりした味わいや、ビゼーのキビキビした推進力が、ちゃんと音になっていた。
ただ、オーケストラ側、特に管楽器の表現力が乏しく、良くいえば淡彩の音楽、敢えていえば作品の魅力を描き出せていなかったのは残念。
 
例えばビゼーの第1楽章でObの大きなソロがあるのだが、ちゃんと吹いてはいるのだが音が小さく抑揚を欠く。
指揮者が左手の掌を上に示して「もっと膨らませて!」と指示しているのだが、余裕がないのか、反応できない。
第2楽章で美しい主題を提示する、もっと長いソロでも似たような状態であった。
 
あるいは、サン・サーンス第3楽章のクライマックスでTrbが吹くワーグナーばりのコラールが、力も覇気もない吹奏。
独奏者が困ったような顔をして金管の方を眺めていたのが印象に残っている。
 
更にいえば同じ曲の第1楽章で、Hrnの首席奏者がプロとは思えないような大トチリを連発し、2回目にはそのあおりで木管が止まりかけるという大事故に発展していた。
 
このあたりは、もっとプロらしくしていただきたいところだ。
 
アンコールはビゼー;『アルルの女』より「ファランドール」
前記のような状態にいささか興醒めていたので、音楽は盛り上がっていたが、どうにも空虚に響く心地を禁じ得なかった。

9月11日(土): 

 

小林研一郎(指揮) チェコ・フィル ほか
マーラー;交響曲第3番(EXTON)
コバケンのマーラー、聴かざるべからず。
名手ミロスラフ・ケイマルのポストホルン吹奏も楽しみである。
録音は少し遡って1999年3月、プラハにて。ライヴとは表記されていないので、セッション録音であろう。
7月に発売されていたのだが、国内盤新譜の購入はどうしても後回しになってしまう(汗)。
朝比奈隆(指揮) 大阪フィル
マーラー;交響曲第9番(大阪フィル)
音盤店頭で、大阪フィルの自主製作盤を発見(たぶん新譜)。
朝比奈さんの音盤蒐集にはさほど熱心でない斉諧生だが、曲目がマーラー;第9となると聴かざるべからず。
昭和50(1975)年7月19日、東京文化会館での第14回東京定期演奏会のライヴ録音。FM東京が収録し「TDKオリジナル・コンサート」として放送された音源によるリリースである。
したがって音質は優秀(やや年代は感じるが)、悠然たる弦の流れを感じさせる終楽章など立派な演奏を堪能できる。

9月10日(金): 

 

ヤーノシュ・ローラ(リーダー) フランツ・リスト室内管
C.P.E.バッハ;シンフォニア集(TELDEC)
モダン楽器の室内オーケストラによる音楽史作品の演奏は昨今流行らないけれども、この団体の冴えた響きは贔屓にしたい。
母国Hungarotonレーベルにはけっこう録音があるようだが、TELDEC録音は珍しいのではないか。
シンフォニア4曲、第1〜3・5番(Wq.182-1・2・3・5)を収めている。
1982年頃の録音、某オークションで落札したもの。
 
レイフ・セーゲルスタム(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第3・5番(Ondine)
ずっと良い成果を上げている、Ondineレーベルへのセーゲルスタムのシベリウス録音、最新盤が公式Webpageに掲載されていたのでオーダーしたもの。
ここは本当に速く、例によって5日ほどで到着。送料を含めて2,700円程度なので、Webで購入するメリット感強し。
しかも曲が偏愛の第3番、大変に嬉しい。
第3番は2004年1月、第5番は2003年6月、それぞれフィンランディア・ホールでの録音。
この作品は、昨年、ムストネン(指揮) ヘルシンキ祝祭管の演奏でもリリースされた。「Ondineレーベルはシベリウス;交響曲全集をセーゲルスタムとムストネンに振り分けて完成させるのではないか」という説があり、両者とも素晴らしい内容だけに、2とおりの全集を録音してほしいものというのが北欧音楽ファンの声だった。
今回、セーゲルスタムで第3番を出したということは、その希望がかなえられる可能性があるわけで、これまた非常に喜ばしい。
ムストネンとヘルシンキ祝祭管は、2005年5月に来日公演が予定されており、演奏旅行に向けて録音セッションがあるかもしれないなどと皮算用に胸ふくらむ(笑)。
 
ミヒャエル・ギーレン(指揮) ウィーン国立歌劇場管 ほか
ベートーヴェン;交響曲第2番 ほか(米AUDIO FIDELITY、LP)
ギーレンの古いベートーヴェン録音がMikrokosmosのカタログに出ていたのでオーダーしてみたもの。
第2番はレイボヴィッツ盤も良かったし、同じく現代音楽振りとして知られた人の演奏がどのようなものか、期待したい。
録音データ等は明記されていないが、レーベル面にはマルP1959年とある。
カプリングがワルター・ゲール(指揮) フランクフルト歌劇場管による第1番というあたりからして、かなり古そうだ。
現品はアメリカ盤だが、オリジナルはコンサートホール・レーベルあたりだろうか?
クリスティアン・ツァハリアス(P) カジミシュ・コルト(指揮) 南西ドイツ放送響
ルトスワフスキ;交響曲第3番 & モーツァルト;P協第22番(独SWF自主製作、LP)
ポーランドの実力派指揮者の一人コルトが1980〜86年に首席指揮者を務めていた南西ドイツ放送響との録音がMikrokosmosのカタログに出ていたのでオーダー。
録音データ等は明記されていないが、ルトスワフスキの曲が1983年の作品というから、その少し後くらいに収録されたものであろうか。
ドイツではカリスマ的な人気がある(らしい)のに日本ではさっぱりな(シプリアン・カツァリスと混同されることもある)ツァハリアスのモーツァルトも楽しみである。
 
デーネシュ・コヴァーチュ(Vn) ランベルト・ガルデッリ(指揮) ハンガリー放送響
ヴィヴァルディ;「四季」(洪Qualiton、LP)
 
デーネシュ・コヴァーチュ(Vn) ジョルジ・レヘル(指揮) ハンガリー放送響
モーツァルト;Vn協第4番 & ベートーヴェン;ロマンス第1・2番(洪Hungaroton、LP)
 
デーネシュ・コヴァーチュ(Vn) アンドラーシュ・コローディ(指揮) ブダペシュト・フィル ほか
バルトーク;Vn協第2番 & ミハーイ;Vn協(洪Qualiton、LP)
 
デーネシュ・コヴァーチュ(Vn) エデ・バンダ(Vc) ヤーノシュ・シェベシュチェーン(Cem)
コレッリ;Vnソナタ op.5(洪Hungaroton、LP)
その暖かい音色に惹かれてこのところ蒐集しているコヴァーチュのLPが、まとまって届いた。
協奏曲3点はMikrokosmosへのオーダー、コレッリはeBayで落札したもの。
特にベートーヴェンのロマンスが、この人の音を満喫できそうで、楽しみである。
なお、ミハーイ作品ではエルヴィン・ルカーチ(指揮) ハンガリー放送響が付けていることと、コレッリのソナタ集(LP2枚組)は前半6曲がCDで出ており架蔵済み。
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn) アラン・プラーネス(P)
フォーレ;Vnソナタ第1・2番 ほか(日DENON、LP)
なぜか架蔵し損なっているカントロフのフォーレをMikrokosmosから購入。
国内盤LPの逆輸入というのは妙な気分で、ジャケットに入っていたはずの解説が脱落してしまっているのは残念。
子守歌 op.16をフィルアップしている。
1975年6月、スイスで収録されたDENONのデジタル初期録音。スタッフにピーター・ヴィルモースの名が見える。
ダニエル・ロベルト・グラーフ(Vc) ヴィヴィアーネ・ゲールゲン(P)
フランク;Vcソナタ & ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ(独FSM、LP)
蒐集しているショスタコーヴィッチ作品の未架蔵盤がMikrokosmosのカタログに出ていたのでオーダーしたもの。
工藤さんのショスタコーヴィッチ・ページには掲載されていない音源である。
フランク作品は、もちろんVnソナタからの編曲。
チェリストはスイス・バーゼル生れ、アウグスト・ヴェンツィンガーに学び、フルニエシュタルケルのもとで研鑽を積んだという。
ピアニストはパリ生れのルクセンブルク国籍というから、名前(原綴 "Viviane Goergen" )は別な読みをする方がいいのかもしれない。
1981年5月、ドイツ・フィアセンでの録音。
マルガレータ・ハリン(M-S) ロルフ・リンドブロム(P)
「ヘイデンスタムの詩による歌曲集」(瑞proprius、LP)
ステーンハンマル作品の未架蔵音源をArs Antiquaから購入。
「『孤独の思想』からの7つの詩」 op.7から3曲、「ヴェルナー・フォン・ヘイデンスタムによる4つの詩」 op.37から2曲が採られている。
ヘイデンスタム(1859〜1940)は、スウェーデンの国民的詩人。1916年のノーベル文学賞を受けたが、この年は他の分野に該当がなく、唯一の受賞者となった。
その他、ペッタション・ベリエルルーセンベリラングストレムの作品を収録。
1980年2月、ストックホルム郊外ブロムマでの録音。

9月8日(水): 

 

クリフォード・カーゾン(P) ハリー・ブレッヒ(指揮) ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ ほか
モーツァルト;P協第24番 ほか(BBC music magazine)
カーゾンのモーツァルトは、没後間もなくリリースされたブリテンとの第27番にいたく感動して以来、聴き逃せないと思っている。
録音に不熱心というか、なかなか発売を認めなかった奏者だったので、音盤はあまり多くない。貴重なライヴ音源がBBC music magazineの附録CDとして出ていたのを見つけ、某オークションで落札したもの。
1968年1月31日、ロイヤル・フェスティバル・ホールで収録されたもの。
オーケストラの創立50周年記念盤になっていて、マティアス・バーメルト(指揮)の交響曲第41番フェリシティ・ロット(Sop)のコンサート・アリア K.528をカプリング。
 

9月6日(月): 

 

アンドレ・プレヴィン(指揮) ロンドン響
「アンドレ・プレヴィンズ・ミュージック・ナイト 2」(英EMI、LP)
タイトルは、別に「アンドレ・プレヴィンの音楽夜話 第2集」と邦訳してもよいのだが、この人ならばやはりジャズ・アルバム風にと思い、片仮名にしてみた(笑)。
1970年代、プレヴィンは、ロンドン響の首席指揮者としてイギリスで絶大な人気を博していた(そして日本での評価は「バレエ音楽や協奏曲の伴奏が上手い人」程度だった)。
BBCテレビの人気番組をもとに製作されたLPの第2集で、
グリンカ;序曲「ルスランとリュドミラ」
バーバー;弦楽のためのアダージョ
ファリャ;「三角帽子」から3つの舞曲
ドビュッシー;牧神の午後への前奏曲(Fl独奏;ウィリアム・ベネット)
バターワース;青柳の堤
J.シュトラウス2世;皇帝円舞曲
を収録している。
斉諧生の目的は、夭折の音詩人バターワースの作品の蒐集。プレヴィンのディスコグラフィには詳しくないが、もしかしたらCD化されていなかったのではなかろうか。
録音は1976年頃、クオドラフォニック(4ch)・エンコード。
下記LPをeBayに出していた業者の店頭(?)在庫からオーダーしたもの。
 
コチシュ、ラーンキ、シフ(P) ヤーノシュ・フェレンチク(指揮) ハンガリー国立管
モーツァルト;3台P協K.242 & 2台P協K.365(洪Hungaroton、LP)
1970年代初め、3人ともまだ二十歳過ぎ、コンクールに入賞したばかりの頃に仲良く録音したLP。
フェレンチクのモーツァルトだから…という以上に、若い3人が並んで鍵盤に向かっている写真を使ったジャケットほしさに捜していたようなもの。とにかく若いというか幼いというか…(笑)。
K.242をコチシュ(1st)・ラーンキ(2nd)・シフ(3rd)、K.365をコチシュ(1st)・ラーンキ(2nd)で演奏している。当時のキャリアはそういう序列だったようだ。
以前某オークションで落札し損ね、ようやくeBayに格安で出品されたものを見つけて入手。
 

9月5日(日): 

愛読しているblogの一つ、メメンとモリ@New Yorkさんで、素晴らしい情報に接した。
ミクローシュ・ペレーニのベートーヴェン;Vcソナタ全集の新録音の発売が間近い、とのことである!
上記記事でも引用されている、HMVamazon.comの予告記事を参照。
一昨年末頃に録音が進んでいるとは仄聞していたが、いよいよリリースとは胸が弾む。
レーベル(ECM)の公式Webpageで直販も取り扱っているようなので、どうしたら最も早く入手できるか悩んでみることにしたい(嬉)。

 

神戸市を本拠に活動するアマチュア・オーケストラ、六甲フィルハーモニー管(公式Webpage)の第18回定期演奏会を聴く。
会場は神戸文化ホール・大ホール。
かなり広い会場だが、十分な入りでなかったのは残念。
 
今日の曲目は、
ニルセン;序曲「ヘリオス」 (指揮;松井真之介)
ハイドン;交響曲第104番「ロンドン」 (指揮;森康一)
ニルセン;交響曲第4番「消し難きもの」 (指揮;松井真之介)
という意欲的な選曲(指揮は両氏とも団員)。
京阪地区のプロ・オーケストラが嘆かわしいほど保守的なプログラムを組んでいる中、この団体や、ニルセン;交響曲第3番京都フィロムジカ管ステーンハンマル;セレナードかぶとやま響などの活動が頼もしい。
(もちろん、プログラムの保守性は、一般的な聴衆の嗜好を反映したものなのだろうが…。)
 
演奏の方も、そうした意欲を見事に映し出し、覇気に満ちた立派なもの。
特に、ニルセン;第4交響曲は素晴らしかった。
ニルセンがこの曲に託したヒューマニティへの信頼を、オーケストラ全体が熱く歌い上げていたといっていい。
この曲の聴きどころ(見どころ?)、ティンパニ2台の右顧左眄しない強打はもとより、第3楽章冒頭のヴァイオリン群の悲痛な旋律、第4楽章冒頭の弦合奏の猛スパートなど、入場無料では勿体ないような音楽である。
 
「ヘリオス」も、太陽神の名にふさわしい壮麗さを構築。
冒頭・結尾のチェロの音色も佳かった。
 
ハイドンも、ふっくらした響きを基本にした、暖かい音楽。
ただ、演奏力がもう一段上がらないと、この作曲家の音楽の歓び・生命感が湧き上がってこないように思う。
 
そして、アンコールがステーンハンマル;カンタータ「歌」より間奏曲
ふっくらした暖かい弦合奏の音色が素晴らしく、この曲を初めて耳にした人にも、音楽の美しさを満喫していただけたようだ。
 
全体を通じて、アマチュアゆえの技術的な限界はもちろん多々あったが、それを超えて感興が伝わってくる、良いコンサートだった。
しばしば幼児の叫声が音楽の静寂を破ったのは残念だったが…。

 

ルノー・カプソン(Vn) ダニエル・ハーディング(指揮) マーラー室内管
メンデルスゾーン;Vn協 & シューマン;Vn協(Virgin)
愛読しているblogの一つ、山尾好奇堂さんで当盤が店頭に並んでいることを知り、演奏会帰りに音盤店に立ち寄って購入。
一時期このレーベルは輸出用の盤をCCCD化していたので、CD規格でリリースしているイギリス本国の通販サイトにオーダーしていたりしたが、ようやく正道に復帰したようだ(規格についても上記山尾さんのblogで情報をいただいた)。
メンデルスゾーンの冒頭を聴きながら書いているのだが、カプソンの美音、ハーディングの意欲的な指揮ぶりなど、期待どおりの好演が聴けそうだ。
2003年11月、ウィーンでの録音。
 
フランク・ペーター・ツィンマーマン(Vn) パーヴォ・ベリルンド(指揮) ロイヤル・フィル ほか
チャイコフスキー;Vn協 & ブルッフ;Vn協第1番(Sony Classical)
FPZ待望の新譜が入荷しているというので、上記カプソン盤同様(いやそれ以上に)入手せざるべからずと意気込んで店頭へ赴き(笑)、購入したもの。
ずっとEMIに録音してきたツィンマーマンのSony移籍第1弾のはずだが、どうもドイツでしかリリースされていない模様で、日本へも全面的には入ってきておらず、タワーレコードの(一部)店舗に限られている模様。
また、チャイコフスキーはマンフレート・ホーネック(指揮) オスロ・フィル、ブルッフが標記ベリルンド(ベルグルンド)と指揮者団体を異にしており、また収録年月も前者の2001年6月に対し後者が1999年5月と離れている。
上記の販売体制の問題も併せ、レコード会社の姿勢について疑問がなくもないが、ともかくも当代随一のヴァイオリニストの新録音を歓迎したい。
特にブルッフは初めてのレパートリーで(チャイコフスキーはEMIにマゼールと録音していた)、嬉しい限りだ。
これもブルッフを聴きながら書いているが、演奏の素晴らしさは期待以上、録音も上乗(EMI末期の音に力のない録音は歯がゆかった)。
録音には慎重と伝えられるFPZだが、移籍を機に、バッハ;無伴奏やベートーヴェン;ソナタ集などファンが待望している音盤をどんどん送り出してもらいたいものである。
 
(various artists)
「木曽音楽祭30周年記念CD 第1〜4集」(木曽音楽祭実行委員会)
30周年を迎えた木曽音楽祭の記念盤。
今年の音楽祭(8月26〜29日)を聴きに行かれた知人の御厚意におすがりして、入手してきていただいたもの(改めて御礼申し上げます>Y様)。
CD4枚に10曲、最も遡るものは1985年から昨2003年の演奏までが収められている。
有名曲から珍曲まで曲目は多彩、メンバーは綺羅星のごとき実力者揃い(以下に詳述する)、試聴できた範囲では演奏内容も上乗で、限定1,000枚というのが勿体ないように感じられる。
「記録録音を音源として使用しているため、曲によって音質の差が生じております」と帯に断り書きがあるが、音の状態はいずれも良好。椅子のきしみまで聴こえるのは御愛敬だが、それだけリアルに録れているともいえよう。
(第1集)
モーツァルト;Fl四重奏曲第1番(1993年8月22日)
金昌国(Fl) 久保陽子(Vn) 白尾偕子(Va) 堀了介(Vc)
シューマン;P四重奏曲(1985年8月11日)
久保陽子(Vn) 店村眞積(Va) 安田謙一郎(Vc) 野島稔(P)
ドヴォルザーク;弦楽セレナード(1997年8月24日)
(演奏者詳細省略)
 
(第2集)
ベートーヴェン;六重奏曲(1996年8月24日)
数住岸子、鈴木理恵子(Vn) 菅沼準ニ(Va) 堀了介(Vc) 松崎裕、山本眞(Hrn)
ブリテン;ファンタジー(2003年8月22日)
古部賢一(Ob) 川田知子、篠崎友美(Vn) 堀了介(Vc)
ラハナー;九重奏曲(2000年8月25日)
佐久間由美子(Fl) 小畑善昭(Ob) 磯部周平(Cl) 山本眞(Hrn) 前田信吉(Fg) 加藤知子(Vn) 安藤裕子(Va) 山本裕康(Vc) 星秀樹(Cb)
 
(第3集)
ブラームス;セレナード第1番(九重奏版)(2000年8月26日)
佐久間由美子(Fl) 山本正治、磯部周平(Cl) 松崎裕(Hrn) 吉田将(Fg) 服部譲ニ(Vn) 廣狩亮(Va) 山崎伸子(Vc) 星秀樹(Cb)
ラヴェル;P三重奏曲(1997年8月22日)
漆原啓子(Vn) 花崎薫(Vc) 寺嶋陸也(P)
 
(第4集)
モーツァルト;協奏交響曲 K.297b(木管八重奏版)(2002年8月25日)
古部賢一、森枝繭子(Ob) 山本正治、磯部周平(Cl) 岡本正之、前田信吉(Fg) 松崎裕、山本眞(Hrn) 星秀樹(Cb)
ドホナーニ;六重奏曲第1番(1999年8月21日)
磯部周平(Cl) 山本眞(Hrn) 小林美恵(Vn) 廣狩亮(Va) 山本裕康(Vc) 若林顕(P)
 

9月3日(金): 

 

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) トリノ・イタリア放送管 ほか
チャイコフスキー;交響曲第4番 & マーラー;交響曲第1番 ほか(MEMORIES)
マルケヴィッチの未架蔵盤が某オークションに安価で出品されていたので落札したもの。
元来はイタリア製海賊盤(?)ということで見送っていたものだが、チャイコフスキー(1967年トリノでの録音)は他からリリースされていないので入手しようと思い立った。
CD2枚組のカプリング曲、マーラー(1967年トリノ)はStradivarius盤、メンデルスゾーン;「最初のワルプルギスの夜」(1952年ウィーン)はArchpel盤を架蔵済み。
 
小林研一郎(指揮) チェコ・フィル
チャイコフスキー;交響曲「マンフレッド」(EXTON)
初出時(2002年11月)にはSACDハイブリッド盤で5,000円もした小林研一郎の「マンフレッド」が、通常のCDとして2,800円で再発されたので購入。もっとも今ではハイブリッド盤が同価格でいいくらいかもしれないが(苦笑)。
この作品は、LP時代にマルケヴィッチ(指揮) ロンドン響の廉価盤で聴きなじんで以来、けっこう好きなのである。
2002年4月、ルドルフィヌムでのセッション録音とライヴ録音から製作されたもの。
 
アマディンダ・パーカッション・グループ
「レガシーズ 第5巻」(Hungaroton)
ケージ作品集以来、贔屓にしているハンガリーの打楽器アンサンブル、アマディンダの新譜が出ていたので購入。
このグループ、日本では(たぶん)ほとんど知られていないと思うが、ハンガリーでは絶大な人気を誇る団体で、Hungary Todayによれば、結成20周年に当たる今年、国からコシュート勲章(日本の文化勲章に当たるようだ)を授与されたとのこと。
当盤は1989〜99年のライヴ録音、全8曲からなるアルバムだが、半分はハンガリーの現代曲、半分はガーナやバリ、タヒチの民族音楽となっている。斉諧生的には後者が楽しみだ。
 

9月2日(木): 

 

フィリップ・ヘレヴェッヘ(指揮) シャンゼリゼ管
ブルックナー;交響曲第7番(HMF)
意外な人がブルックナーを録音した。
ピリオド・アプローチのブルックナーがどう響くのか、和声の透明感や対位法の表出という点では寧ろ期待できるのではないか…と思い、購入。
弦楽器の編成は初演(1881年)当時のゲヴァントハウス管(12-10-8-8-6)を参考にすべき旨、指揮者がライナーノートで述べているが、ブックレットに記載されたメンバー表では、13-12-10-9-7となっている。
管楽器は、Fl・Fg・Hrn・Trpが1880〜90年頃に製作されたもの、Ob・Cl・Trbはコピー。ワグナーチューバとバスチューバは1940〜70年頃の楽器になってしまったが、19世紀末の楽器と調和した響きになっているとのことである。
2004年4月、ユトレヒトでの録音。ノヴァーク版による。
なお、このところ愛読させていただいているTags of edmundさんに、いち早く試聴記が掲載されていた。
やはり「その響きの透明感は、過去にまったく耳にしたことのないものです。」とのこと、楽しみである。
 
ウラディミール・スピヴァコフ(指揮) モスクワ・ヴィルトゥオージ
シェーンベルク;「浄められた夜」 & バルトーク;ディヴェルティメント ほか(CAPRICCIO)
このところCAPRICCIOレーベルで活発に録音しているスピヴァコフの新譜が、バルトーク;ディヴェルティメントとあらば買わざるべからず。
ウェーベルン;緩徐楽章をフィルアップしている。
2003年12月、モスクワ・チャイコフスキー音楽院での録音。
 

9月1日(水): 

 

金子鈴太郎(Vc) 本田真奈(P)
ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ
バッハ;無伴奏Vc組曲第1番(予告されていた第5番から変更)
ドビュッシー;Vcソナタ
ブラームス;Vcソナタ第1番
もう何年も前になるが公式Webpageを拝読し始めた頃は、ハンガリーに留学中だった金子氏が、昨年秋から大阪シンフォニカーの首席Vc奏者に就任された。
まだオーケストラでの演奏に接したことはなく、今年2月の無伴奏リサイタルは本業の都合で逃してしまったのだが、ようやく実演を聴きに伺うことができた。
 
標記のように、かなり重量級のプログラム。
バッハが第1番に変更になってホッとした(笑)。
リスト音楽院でツァバ・オンツァイ教授に師事し、ミクローシュ・ペレーニマリオ・ブルネロジャン・ギアン・ケラスらのレッスンを受けてきた俊英の演奏が楽しみである。
 
会場は京都市・桂のバロック・ザール。座席数200の小さな、しかし美しいホールである。
入りは6〜7割といったところか。音楽学生ないし若手演奏家風の人が多かった。
 
ショスタコーヴィッチは、手堅いけれども少しスケールが小さくはないか…という感想。
「ここはもう少し音を張ってほしい」とか「ここはもう少し激しくアタックしてほしい」といったフラストレーションを覚える箇所が多かった。
奏者が「感じている」ことはよくわかったので、趣味の問題かもしれないが、この曲に関しては更に突き抜けた表現、ツボを押さえてメリハリを付けた演奏を求めたい。
 
金子氏は、先月、第八回松方ホール音楽賞を受賞されたばかりだが、その本選でバッハ;無伴奏Vc組曲第1番を演奏されたとのこと。
自撰のプログラム解説に、
本日のバッハは皆様に何かを語りかけたいと思います。
と書かれていたとおり、音楽を完全に手の内に収めた自在なダイナミクスやフレージングで、まさに語りかけるようなバッハ。
ときに聴き慣れない装飾音の処理等がみられたが、あるいは演奏者独自の工夫であろうか。
ただ、ちょっと音楽が内向きに過ぎるような印象を受けた。
速めのテンポや軽めの音作りだからといって直ちに否定するつもりはないが、バッハの音楽が持つ、いきいきとした生命感や、聴いていて胸の内に歓びが湧き上がってくるような心地を感得するには至らなかった。こちらの鈍感さのゆえかもしれないが…。
 
休憩後のドビュッシーでは前半の印象を払拭、多彩で大胆な表情を楽しめた。
またブラームスも、こみ上げる熱い思いがじわじわと伝わってくるような音楽、底光りのするロマンティシズムが、しっかり表現されていたと思う。
 
技術的には申し分なく、例えばショスタコーヴィッチ第2楽章など、鮮やかに弾きこなされ、間然とするところのない出来だった。
表現をスケールアップさせることや、音色を一層洗練させることなど、更に精進を求めたい部分は残っているが、将来の大成が期待できる若い奏者に出会えたことを素直に喜べる演奏会であった。
 
アンコールはガーシュウィン;3つの前奏曲より第1曲
ハイフェッツによるVn用編曲をもとに演奏されたとのこと。

 

トマス・ダウスゴー(指揮) スウェーデン室内管
ベートーヴェン;交響曲第6番・序曲「レオノーレ」第1〜3番(SIMAX)
ダウスゴーのベートーヴェン;交響曲チクルスは第5巻まで出ているが、2年ぶりに「田園」と「レオノーレ」序曲群のカプリングでリリースされた。
これまで入手に苦労させられたので、今回はアリアCDさんにオーダーしていたのだが、既に一般の音盤店頭にも並んでいる。
2001年5月(交響曲)・2002年6月(序曲)に、本拠地エレブロのコンサートホールで録音されたもの。
残るは交響曲第3・8・9番、P協第4・5番、Vn協(他の管弦楽曲も録音するのだろうか?)。
今夏にはP協第5番を実演にかけたそうなので(独奏は第1〜3番のCDでも共演したボリス・ベレゾフスキー)、更に製作・発売が進むことを期待したい。
 
ジャン・クロード・カサドシュス(指揮) 国立リル管 ほか
マーラー;交響曲第4番(FORLANE)
ぽつりぽつり集めてきたJCCのマーラーが、アリアCDさんのセールに出ていたのでオーダー。
格安で購入できたのは有り難いが、レーベルの活動停止(!)にあわせた在庫処分ということなので、ちょっと悲しい。まだ第1番が残っているのに…。
1986年9月の録音、Sop独唱はマーガレット・マーシャル
 
アレクサンドル・ルーディン(指揮) ムジカ・ヴィヴァ室内管 ほか
ハイドン;Vn & P協 & メンデルスゾーン;Vn & P協(SMC)
今年1月の実演でその実力に舌を巻き、以来音盤探求中のルーディン。
彼の指揮盤がアリアCDさんのカタログに出ていたのでオーダーしていたもの。
独奏者はセルゲイ・テスリア(Vn) エレナ・ノガエワ(P)、1998年頃の録音。
 

平成16年8月15日(日): 「提琴列伝」に和波孝禧を掲載。
平成16年1月4日(日): 「作曲世家」にルクー・ディスコグラフィを追加。
平成15年8月24日(日): 倭匠列伝指揮者・宇野功芳を掲載。
平成15年8月24日(日): 50万件アクセスを記念して、ページデザインを全面改訂。
平成15年5月24日(日): 「逸匠列伝」にユッシ・ヤラスを掲載。
平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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