音盤狂日録


10月30日(木): 

 

ピンカス・スタインバーグ(指揮) ウィーン放送響 ほか
ウィーン放送響名演集(ORF)
パレーの名盤で知られるフローラン・シュミット;「サロメの悲劇」の抜粋が収録されているというので、某オークションにて落札。
BMGが企画したフランス管弦楽曲集のために録音したものの、リストラの煽りを喰らって、お蔵入りした音源を収録したものという。
演奏時間は14分ほど、これが録音されたすべてなのか抜粋なのかは、あまりにも簡単なライナーノートからは、わからない。
非売品のプロモーション用CDということで、11あるトラックの中には既発売音源から流用したものもあるが、珍しそうなものとしては、
ミヒャエル・ボーダー(指揮) マーラー;交響曲第7番第5楽章
ウェイン・マーシャル(指揮) レッサー;ガイズ・アンド・ドールズより抜粋
後者はライヴ録音、せっかくマーシャルの指揮なのに僅か3分半ほどなのが残念。斉諧生は全く知らなかったが、ブロードウェイの定番曲なのだそうで、フランク・シナトラで映画化されたり、宝塚歌劇で取り上げられることもあるらしい。
作曲者の公式Webpageも見つかった。
 
ボロディンQ
ショスタコーヴィッチ;弦楽四重奏曲第8番 ほか(Russian Disc)
バルシャイによる弦楽合奏編曲も含めて、標記のショスタコーヴィッチ作品は愛好している。
その曲を十八番にしていたボロディンQのライヴが某オークションに出品されていたので、いつも参照する工藤さんのショスタコーヴィッチ・ページを見ると、
圧倒的なライヴ録音。この曲を完全に自分達のものとしており、弦楽四重奏のありとあらゆる技巧を駆使して驚くほど密度の高い音楽を奏でている。鳴っている音だけではなく、休符も含めた全ての時間が演奏者の支配下にある。第2楽章など確かに荒いが、そうした些細な瑕が耳に入らないほど凄い演奏。
と絶讃しておられ、満点星5つを与えておられる。
これは聴かざるべからずと落札したもの。
1991年12月12日、サンクト・ペテルブルクでの収録と記されており、同日に演奏されたベートーヴェン;大フーガショスタコーヴィッチ;弦楽四重奏のためのエレジーをカプリング。

10月29日(水): 

 

ヤープ・ファン・ツヴェーデン(Vn) アムステルダム・サキソフォンQ
バーンスタイン;「ウェストサイド物語」 & ガーシュウィン;「パリのアメリカ人」(BMG)
ツヴェーデンに、こんな録音があったとは…!
某オークションを見ていて吃驚、慌てて落札したもの。
独奏Vnとサキソフォン四重奏という非常に珍しい編成だが、なかなか面白いサウンドになっている。意外に「いける」組合せかもしれない。
サキソフォン奏者は知らない人ばかり、ダフェーヌ・バルヴェールロブ・ハウザーバルト・コックヘンク・ファン・トゥヴィレルトという名前を記録しておく。
両作品とも編曲はヘンク・ホイジンガという人で、バーンスタイン作品はプロローグからフィナーレまで20曲を演奏している。
1994年、オランダ・ヒルヴェルスムで録音されたもの。
なお、これは国内盤(1995年4月発売)。

10月27日(月): 

 

ジャン・ピエール・ワレーズ(Vn) ジャン・クロード・カサドシュス(指揮) フランス国立リル管
ベートーヴェン;Vn協・ロマンス第1・2番(FORLANE)
現在活躍中のフランス系指揮者で贔屓にしている1人、JCCの未架蔵盤。
以前はよく見かけた盤で、いつでも買えると思っているうちに姿を消してしまい、気懸かりになっていたところ、某オークションに出品された。
国内盤ではあったが安価だったので落札に踏み切る。
1985年7月の録音。
 
フランツ・バルトロメイ(Vc) 乾まどか(P)
ブラームス;Vcソナタ第1番 & R・シュトラウス;Vcソナタ ほか(BMG)
ウィーン・フィルの首席奏者バルトロメイのソロ・アルバム、発売時から気になっていたが買いそびれていたところ、某オークションに安く出品されていたので落札。
2001年2月にウィーンで録音されたもの。
日本人ピアニストが共演しているが国内製作ではなく、輸入盤を買って正解であった。

10月26日(日): 

 

ロヴロ・フォン・マタチッチ(指揮) スロヴェニア・フィル ほか
ブルックナー;交響曲第7番 & ワーグナー;「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死(スロヴェニア・フィル自主製作)
スロヴェニア・フィルの自主製作CDは、以前、苦労して海外送金して入手したものだが、いまやタワーレコードが扱うようになった。
2枚組で4,000円弱、CD代金だけを比較すればともかく、送金手数料や手間を考えれば、まあ妥当な値段だろう。
ブルックナーは1984年6月22日、スロヴェニア放送局による録音で、以前、DENONから発売されたことがある。
初回は1988年1月、交響曲をCD1枚に、第3楽章のリハーサル約16分をシングルCDに収録した2枚組で発売された。
斉諧生が架蔵しているのは2回目、1991年4月にリリースされたもので、リハーサル録音が附属していない。
今回は、ワーグナーと合わせて2枚組。1枚目に「トリスタン」と交響曲の第1楽章、残りの楽章を2枚目に収めている。
音質的には大差なく(弦合奏がシャリシャリするのは残念)、敢えて特徴づければ、国内盤は自然な響きだが少しオフ気味、自主製作盤は鮮明で力強いが硬い感じがする…といったところか。
なお、国内盤では収録日を「6月19〜22日」と表記し、「最晩年の正式なスタジオ録音」とされていた。
当盤のブックレットには、「マタチッチが我々のオーケストラを指揮した最後のコンサートと、リハーサル録音を編集したもの」と書かれている。
詳細には比較していないが、同じ音源と考えても良いのではなかろうか。
「トリスタン」は1972年6月2日のライヴ録音だが、音質は極めて鮮明。最新録音といって通るかもしれない。独唱はヴァンダ・ゲルロヴィッチ(原綴 "Vanda Gerlovic" 、仮名表記には自信なし)。
 
アレクサンダー・ギブソン(指揮) スコットランド・ナショナル管
ベルリオーズ;序曲集(CHANDOS)
指揮列伝で取り上げたいと考えている「逸匠」ギブソンの代表盤の一つが、半額ワゴン・セールに入っていたので購入。
1982年頃のデジタル録音で、次の5曲を収めている。
「ロブ・ロイ」「リア王」「ローマの謝肉祭」「ベアトリスとベネディクト」「海賊」
なお、この指揮者のファン・ページが公開されている。
 
ヴォイチェフ・ミフニェフスキ(指揮) ポーランド室内管 ほか
カルウォーヴィチ;弦楽セレナード ほか(Sony Classical)
先だってネットサーフしていると、この曲を推奨しておられるWebpageを見つけた。
各楽章ともメロディにあふれ,マーチのチャーミングさ,ワルツでの低弦と高弦の掛け合いなど,最初の作品とは思えないほどの完成度で,彼の才能をうかがわせます.
とのこと、弦楽合奏曲は好きなジャンルなので、是非聴いてみたいと思い、Merlin.com.plで検索してオーダーしてみたところ、10日かからずに到着した。
ポーランド室内管は、日本ではシンフォニア・ヴァルソヴィアとして知られている団体。
指揮者(原綴 "Wojciech Michniewski" )は1947年生れ、主にポーランド国内で活躍している人らしい。
キラール;「白い霧」・「オラヴァ」をカプリング。前者はBr独唱が入り、後者は弦楽合奏による。
1988年の録音だが、CD自体は2003年に製作された新しいもの。
 
ダニエル・シュタープラヴァ(Vn & 指揮) カペラ・ビドゴスティエンシス
カルウォーヴィチ;弦楽セレナード ほか(CD Accord)
もう1枚、カルウォーヴィチをオーダーしてみた。
こちらの指揮者は、ベルリン・フィルのコンサートマスターとして知られている人。
また、カペラ・ビドゴスティエンシスは、ポーランド中部のビドゴシチという街(音大もある都市)に根拠を置く20人ほどの弦楽アンサンブルらしい。
グレツキ;古風な形式による3つの小品キラール;オラヴァを併録している。
前の盤にもカプリングされているキラールはポーランドの現代作曲家、紹介のページもある。
1998年2月の録音。
 
クリスチャン・テツラフ(Vn) ボリス・ペルガメンシチコフ(Vc) ザビーネ・マイヤー(Cl) ラルス・フォークト(P)
ブラームス;Vnソナタ・Vcソナタ・Clソナタ集 ほか(EMI)
湖畔の美しい旧・発電所の建物で開催されるシュパヌンゲン;ハイムバッハ室内楽音楽祭のライヴCD(3枚組)。
しばらく前から店頭に出ており、テツラフの新譜ゆえ買わざるべからざる盤なのだが、例のCCCDだと厭だな…と逡巡していた。
ドイツの通販サイトを見てもCCCDか通常のCDか、もうひとつ分明しないので、今日、意を決して店員に確認したところ、あれこれ調べて「CCCDではありません」と確言していただいたので購入に踏み切った。
封を切ってみても、やはりCCCD表示はなく、一安心。
収録曲は、
Vnソナタ第1〜3番・スケルツォ(2002年9月3〜5日)
Vcソナタ第1・2番 & シューマン;3つのロマンス・幻想小曲集(2002年9月6〜8日)
Clソナタ第1・2番 & ベルク;Pソナタ第1番・ClとPのための4つの小品(2002年9月9〜11日)
 
ファン・カルロス・リベラ(ビウエラ)
「ビウエラの音楽」(CANTUS)
リベラには、以前、キタローネ(大型のリュート)を用いてバッハ;無伴奏Vc組曲第1〜3番を弾いたCDがあり、優れた演奏だったので、続篇が出ないか公式Webpageを注視していた。
残念ながらバッハはまだなのだが、ルイス・ミランなどのビウエラ作品を集成した1枚に心惹かれた。
ビウエラとは、16世紀、ちょうどスペインが最盛期にあった頃に愛奏された、小ぶりのギターのような形をした楽器。
約20年前、LP時代のHISPAVOXレーベルに「スペイン古楽集成」というシリーズがあり、その中のミラン作品集を愛聴していたのである(皆川達夫『バロック名曲名盤100』(音楽之友社)に紹介されていた)。
曲目の詳細は省くが、ミランムダーラナルバエスらの作品28曲が収められている。著名な皇帝の歌(千々の悲しみ)を漏らしていないのは嬉しいところ。
2000年7月の録音で、80頁を超す大部なブックレットが附属している。
ルイス・ミラーン(1500頃-1561頃):
パバーナ第4番&第6番/ファンタシア第6番/パバーナ第2番
ファンタシア第11番(コンソナンシアスとレドブレス)/パバーナ第5番
ファンタシア第6番/同第13番(コンソナンシアスとレドブレス)
フランチェスコ・カノーヴァ・ダ・ミラノ(1497?-1543?):
レチェルカータ第14番/同第30番/同第21番/同第1番/同第31番/同第28番
ルイス・デ・ナルバエス(16世紀):
4つのディフェレンシア/皇帝の歌(千々の悲しみ)
アロンソ・ムダーラ(1510頃-1580):
3つの手法によるロマネスカ
エンリケス・デ・バルデラーバノ(16世紀):
ソネート第8番/同第9番/同第15番/同第19番/パバーナによる4つのディフェレンシア
ソネート「ベネディクト・セア・イル・ジョルノ」/ソネート・ロンバルド
ディエゴ・ピサドール(1510頃-1557以後):
Dezilde al cavallero/誰か私を呼ぶような
フランシスコ・パエス(16世紀):
「牛」による6つのディフェレンシア(I&II)
作曲者不詳:
フォリーアによるディフェレンシア

10月25日(土): 

 

リコ・サッカーニ(指揮) ブダペシュト・フィル ほか
マーラー;交響曲第1・3番(BPO LIVE)
オーケストラの創立150周年記念として、大量にリリースされた自主製作盤。
いつもお世話になっているユビュ王の食卓さんで情報を知り、Crotchet.co.ukにオーダーしていたもの。
入荷・発送までに時間がかかり、既にタワーレコードの店頭に並んでいる(^^;。
リリースの詳細は公式Webpageで見ることができ、多数のタイトルが発売されているが、曲目的に興味深いもの2点だけを注文した。
当盤は2枚組で、1枚目に第3番の第4楽章まで、2枚目に残りの楽章と第1番が収められている。斉諧生としては、もちろん第3番が目当て。
第1番は2002年5月20・21日、第3番は2000年4月3・4日に、ブダペシュトのハンガリー国立歌劇場で録音されたもの。
ジャケットやブックレットに歌劇場の写真があしらわれているが、この建物は本当に美しい。
7年前の夏に中欧を旅行したおり、シーズンオフだったのとパック旅行だったのとで、上演に接することはできなかったが、自由行動の時間に訪問して、売店で買物をし、内部見学ツアーに参加したのである。
戦後の一時期に音楽監督を務めたクレンペラーの胸像が飾られていたことは今も脳裡に鮮やか、再訪したいものである。
 
アデーレ・アンソニー(Vn) リコ・サッカーニ(指揮) ブダペシュト・フィル
シベリウス;交響曲第2番・Vn協(BPO LIVE)
ブダペシュト・フィル自主製作盤、続く。
イタリア系の指揮者がハンガリーのオーケストラを振ったシベリウス、半ば怖いもの見たさではあるが(笑)、オーダーしてみた。
独奏者はオーストラリア出身、ジュリアードで学び、1996年のカール・ニルセン国際ヴァイオリン・コンクールで第1位を獲たとのこと。
マネージメントのWebpageによれば、湯浅卓雄グラスの協奏曲をNAXOSに録音しているようだ。
2000年3月21日、これもハンガリー国立歌劇場で録音された。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) フィルハーモニア管
チャイコフスキー;組曲「胡桃割人形」 & プロコフィエフ;「ピーターと狼」(仏EMI、LP)
両曲ともマルケヴィッチが複数回レコーディングしたレパートリー。当盤は、それぞれ1回目に当たる、1950年の録音。
チャイコフスキーは未架蔵、プロコフィエフは英語版のみ架蔵していたところ、某オークションに仏盤LPが出ていたので落札したもの。
「ピーター〜」の語りは "André Reybaz" 、おそらく当時(1950年頃)フランスで活躍していた俳優と思われるが、詳細不明。
なお、「胡桃割〜」については、ディスコグラフィに「パ・ド・ドゥーと組曲op.71a」とあり、ディスコグラフィにもそう記してきたが、現物では組曲の8曲のみとなっているので、そのように改める。

 今日届いたLPの情報をマルケヴィッチ・ディスコグラフィに追加。


10月23日(木): 

 

マルティン・ジークハルト(指揮) ブラティスラヴァ・モーツァルト・アカデミー
モーツァルト;交響曲第28・41番(LYDIAN)
独墺系指揮者の期待株と目しているジークハルト、少し前の録音(1988年)になるモーツァルトの交響曲が某オークションに出品されていたので落札。
Orfeoレーベルへの録音や、カメラータ東京でアイヒホルン没後のブルックナーを委ねられていた頃と違って、最近の録音活動がパッとしないのは残念である。
正月物の「ウィーン何とか管弦楽団」でシュトラウスを振っているだけの人ではないはず、今後の活躍を期待したい。
LYDIANのCDは初めて手に取るが、ジャケットデザインがNAXOSそっくり、同じHNHインターナショナル社傘下のレーベルであった。
 
石丸寛(指揮) 東京響
ブラームス;交響曲第4番(BMG)
1998年3月23日に亡くなった石丸寛の指揮生活45周年記念演奏会ライヴ(1997年4月17日、サントリー・ホール)。
演奏会後半の「ドイツ・レクイエム」は生前にCD化されており、その好評に押されて、没後1年を期して1999年3月25日に発売されたようだ。
残念ながら音質的には、会場の吊りマイクで収録されたものではないか…と思わせる程度、あまり優れたものではない。
もっともClassical CD Information & Reviewsさんのレビューにあるとおり、それを越えて、響いてくるものに耳を傾けるべきであろう。
これも某オークションで落札したもの。
なお、同じ曲を九州響定期で指揮した際のライヴ盤(1997年10月16日)も出ており、それは架蔵済み。

10月22日(水): 

 

チャールズ・グローヴズ(指揮) ロイヤル・リヴァプール・フィル
シベリウス;管弦楽曲集(EMI)
夕方から出張する案件があり、用務終了後に会場そばの音盤屋に立ち寄ると、EMIの廉価盤2枚組の新譜が並んでいた。
色々心惹かれるものもあったが、とりあえずシベリウスの比較的珍しい管弦楽小品を多数収めたグローヴズ盤のみ購入。
1973〜75年に録音されたもので、LP時代に「北欧の抒情」と銘打ったシリーズで国内盤が出ていたと記憶している。
当時は(申し訳ないことながら)ほとんど無視していた指揮者だったが、晩年の録音では暖かい音楽が素晴らしく(例えばエルガー;弦楽セレナード等)、名匠として見直しているところ。
有名曲は、1枚目の大半を占めている「レミンカイネン」組曲のみ。
組曲「テンペスト」第1・2番春の歌ロマンス森の精パンとエコーイン・メモリアム田園組曲等々、録音の少ない作品が並ぶ。
そして最後に名品アンダンテ・フェスティーヴォが置かれているのは、何とも床しい限りである。

10月21日(火): 

 

Various Artists
「ザ・シングルズ」(DGG)
ドイツ・グラモフォンの "The Originals" シリーズの新譜。
1953〜65年の間、同社は45回転7インチ盤(EP盤、シングル盤)で多くのタイトルを発売した。蓋し12インチLPが高価であったためである。
このフォーマットでリリースされた中から稀少な音源を集成したCD2枚組で、斉諧生的には、
ニカノール・サバレタ(Hp)独奏によるデュセック;Hpソナタ ハ短調が収録されていることが極めて重要。
この曲を愛惜佳曲書に掲げているのは、宇野功芳師のレコード・コンサートで、サバレタの演奏を耳にして以来、愛聴しているからである。
通常のLP等で再発されたことがあったのかなかったのか、とにかく長年探し求めて得られず、他のHp奏者で渇を癒してきた。
ようやく今回初めてCD化され、オリジナルのカプリングであったサルツェード;夜の歌とともに収められている。
1957年1月16日、ベルリン、イエズス・クリストゥス教会でのモノラル録音。
その他にも珍しい顔触れ・曲目が目白押し。もちろん小品ばかりだが、
オイゲン・ヨッフム(指揮) ベルリン・フィル R・シュトラウス;「薔薇の騎士」より第3幕のワルツ
フリッツ・レーマン(指揮) ベルリン・フィル ファリャ;恋は魔術師(抜粋)
フェレンツ・フリッチャイ(指揮) ベルリンRIAS響 リーバーマン;管弦楽曲集
ヴェーグQ 伝ハイドン;セレナード
その他、シューラ・チェルカスキーアンドール・フォルデシュアンドレス・セゴビアリタ・シュトライヒイルムガルト・ゼーフリートフリッツ・ヴンダーリヒレオポルト・シモノーキム・ボルイ等、錚々たる名演奏家が連なっている。

10月20日(月): 一昨日に書いたローラ・ボベスコの訃報が、今日発売の『レコード芸術』11月号に掲載されていた。


10月19日(日): 

 

オッコ・カム(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第6番(TDK)
骨太、雄渾な演奏である。
第1楽章冒頭、分割された第1・第2VnとVaが歌うコラール旋律からその特質は明らかで、やや遅めのテンポに乗って横の線が程よい緊張感で紡がれ、その上に姿を現すObやFlの訴えかけは「永遠」を思わせる深さをもつ。
動きを速めてからも音楽は力強く進行し、Flがアクセントを吹き抜く気合なども十分である。
楽章終結前(練習番号Kあたり)での弦のざわめきも森厳として趣深い。
第2楽章以降も、風土感のある木管の響きが心地よく、第4楽章の終わり近く、エスプレッシーヴォ指定の弦の歌は、朗々として力強い。
敢えて男性的と形容したいようなシベリウス演奏である。これはカムの特質か、あるいは一国の文化を担ったといっていい演奏旅行に懸けたオーケストラの意気込みか。
惜しむらくは、弦合奏の音色に少し硬さが感じられ、管楽器にも僅かにライヴ的な傷がある。また、録音技術の問題か会場(東京厚生年金会館)の音響の問題か、木管やハープが埋もれがちなのも残念だ。
 
サカリ・オラモ(指揮) バーミンガム市響
シベリウス;交響曲第6番(ERATO)
カムとは反対に第1楽章冒頭の弦合奏は速めのテンポで流麗に奏される。
第3楽章の "Poco vivace" の指定にふさわしいキッパリしたフレージング、更には第4楽章の決然とした fz と楽章終結へ向かう部分(練習番号MからN)における胸のすくようなスピード感が素晴らしい。
問題は、やはりオーケストラ。共感が不足するのか(あるいは指揮者の徹底不足なのか)、木管はキリっと決めてほしいフレーズをダラッと流すときがあるし、弦合奏はフィンランドの団体のような音色の統一感に欠け、強奏時に響きが粗くなる。
基本的にはシベリウスらしさを把握した指揮者と思えるので、いずれ母国のオーケストラによる再録音を期待したい。
 
レイフ・セーゲルスタム(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第6番(Ondine)
第1楽章冒頭の弦合奏が mf から p に音量を落としたところの、いじらしいまでの繊細さ!
髭面肥満の外見からは想像しづらい…と申しては失礼か(^^;。
木管も、「もののあはれ」さえ感じさせる、優しくはかなげな響き。カム盤とは随分違うが、ふたつの演奏の間に約20年、奏者も入れ替わり、音色の方向性にも変化があったのだろうか。
総じて、じっくり楽譜を読み込み、ベリルンド(ベルグルンド)流の「思い入れ」を排し純粋な音楽美を追求した演奏といえるだろう。
第1楽章終結近く、一般には強烈な印象を与えるティンパニの打込みを敢えて抑えて、そのあとの金管合奏の ff が楽章の頂点を築くように造型するところなどが好例。
ベリルンドの演奏に馴染んだ斉諧生にとっては、チト頼りない気がしないでもないが、シベリウスの音楽のもつ美しさを素直に味わえる好演、名演であると太鼓判を捺すことができる。
Ondineレーベルの優秀録音も特筆しておきたい。
 
イェオリ(ゲオルク)・シュネーヴォイクト(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第6番(FINLANDIA)
1934年の世界初録音である。
シュネーヴォイクト(1872年生・1947年没)は、はじめユリウス・クレンゲルに学んだチェリストで、ヘルシンキ・フィルの首席奏者を務めた。
のち指揮者に転じ、キエフやリガ、ストックホルム等で活動し、1912年にはヘルシンキ響を組織。
翌々年、このオーケストラがヘルシンキ・フィルと統合されたことに伴い、ロベルト・カヤヌスとともに同フィルの指揮者となった。
何より驚くのが第3楽章の速いこと!
セーゲルスタム盤では3分57秒のところが、当盤では2分47秒。まさしくスケルツォの性格を帯びている。
第4楽章も速く、9分17秒となっている(セーゲルスタム盤では10分39秒)。
1枚当たりの収録時間が短い(4分程度)SPの時代には、レコードの枚数を増やさないためにテンポを速くとることがあったと言うし、また、当時は回転数が厳密には定まっていなかったことから、覆刻に際して録音時とは違うテンポになっている可能性が否定できないとされる。
したがって演奏時間を単純に比較することはできないものの、ここで聴ける、躍動感に満ちたアレグロは極めて魅力的
練習番号「J」の部分での振幅の大きなテンポ変動も、時代がかっていると言えなくはないが、説得力が感じられる。
ついでながら、この部分の後半から練習番号「K」を経て「L」の "Allgro assai" で弦が軽やかに疾走しだすまでのテンポ運びは、指揮者によって様々な処理があって面白い。
 
パーヴォ・ベリルンド(ベルグルンド)(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第6番(EMI)
この演奏については聴き比べに詳述した。
セーゲルスタム盤あたりと比べると、ちょっとしたアクセントの強調などに指揮者の強い個性を感じるが、シベリウスの音楽を血肉としている人の強みが感じられる。
演奏内容に関しては、やはり当盤をもって最上としたい
なお、録音(1986年)から十数年を経て、再生音に少し古さを感じるようになった。最新盤であった頃を知っているだけに今昔の思いが深い。
丁寧にリマスタリングしてもらえれば息を吹き返すのではあるまいか…と期待したいところ(斉諧生架蔵盤は国内盤CE33-5126)。

10月18日(土): 

 

ローラ・ボベスコ(Vn) ジャック・ジャンティ(P)
フランク;Vnソナタ & ルクー;Vnソナタ(日テイチク、LP)
1979年12月に発売され、ボベスコ久々の国内盤として、また当時は珍しかったルクー作品の録音として、『レコード芸術』誌で特選になるなど、話題になったLP。
斉諧生も、このレコードで彼女の名を強烈に印象づけられたのだが、貧乏学生のこととて購入することができず、その後も買いそびれたまま、今に至った。
できればオリジナルの輸入盤で聴きたいところだが、入手難はいかんともしがたく、某オークションで見つけた国内盤LPを落札。
録音データが明記されていないのが難。
というのは、ベルギーのPAVANEレーベルのCD2枚組が同じ音源なのに、1982年録音と明記されており、上記の発売時期と矛盾するのである。
1981年9月に日本で録音されたPhilips盤と比較する上でも、ぜひ正確なデータが知りたいところだ。
なお、このLPとPAVANE盤CDは、Vnの定位が逆になるなど(LPでは左、CDでは右)、マスタリングがかなり異なるので要注意。
 
どこかのサイトに録音データが掲載されていまいかとWebを検索していたら、なんと訃報を見つけてしまった。
先月4日、ティボール・ヴァルガと同じ日に亡くなったという。享年83。
ヴァルガの死亡記事は主要紙に掲載されたし、『レコード芸術』10月号でも報じられていたが、ボベスコについては、斉諧生の知る限りでは報道は何もない。
あれだけ日本の音楽ファンに愛されたヴァイオリニストだけに、その扱いが残念でならない。
 
藤田容子(Vn) 福田進一(G)
ファリャ;スペイン民謡組曲 ほか(AEOLUS)
先だって某オークションを眺めていて、ある非売品のコンピレーション盤に標記のファリャ作品が収録されているのに気がついた。
成る程この曲はギターの伴奏が似合うだろうと思い、先日の福田師匠の実演の記憶もあって、落札しようかと考えたのだが、他の収録曲目からして、おそらくオリジナルのCDは別にあるはずと推定した。
山野楽器のWebpageで検索したところ、案の定、この盤がヒットしたのでオーダーしたもの。注文から5日で到着した。
ヴァイオリニストは1980年代にバンベルク響に在籍しており、先年、ライヴCDとDVDが出た、1982年来日公演におけるヨッフムとのブルックナー;第8交響曲では、コンサートマスターの隣に席を占めておられた。
これはそれから10年後、1992年6月に東京・府中の森芸術劇場で録音されたもの。
ジュリアーニ;VnとGのための変奏曲パガニーニ;チェントーネ・ディ・ソナタ第2・4番をカプリング。
なお、ファリャ作品は元来M-SとPのための歌曲だが、むしろポーランドのヴァイオリニスト・コハンスキがVnとPのために編曲したものが有名になっている。
ここでは、コハンスキ版のピアノ・パートを、徳武正和がギターに再編した楽譜を使用しているとのこと。

10月17日(金): 

 

ジョルジュ・プレートル(指揮) フィルハーモニア管
R・シュトラウス;交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」(RCA)
プレートルといえばフランス音楽、特にプーランクのスペシャリストというのが通り相場だが、この人のドイツ音楽は悪くない、というより知られざる名演がある、と考えている。
こういう録音があるとも知らなかった、「ツァラ」が某オークションに安価で出ていたので落札してみた。
1983年6月、ロンドンでの録音で、BMGに吸収される前のRCAレーベルの盤。
それにしても37分でCD1枚とはもったいない。
 
ワルター・ブイケンス(Cl) ジャン・ジャック・カントロフ(Vn) ほか
ブラームス;Cl五重奏曲 ほか(WVH)
カントロフの未架蔵盤が某オークションに出ていたので落札。
ジャケット等がオランダ語のみのためよくわからないが、「ロッテルダム音楽院」の記念盤か何からしい。
Vaはいつものウラディミール・メンデルスゾーンだが、第2VnとVcは知らない名前である。
録音データも明記されていないが、マルCは1991年。
ベーレンス(原綴 Berens )という人の弦楽三重奏曲をカプリング。19世紀中葉に活躍した作曲家か。

10月16日(木): 

 

高関健(指揮) 群馬響
ブラームス;交響曲第1番 ほか(ALM)
大阪センチュリー響時代に贔屓にするようになった、高関健の音盤を少しずつ集めているところ、某オークションで安く出ていたので落札。
1997年11月3日、前橋市民文化会館でのライヴ録音で、その他に
武満徹;夢の時(1996年6月18日、群馬音楽センター)
細川俊夫;遠景II(1996年3月21日、東京芸術劇場)
を収録している。
高関のブラームスは、大阪センチュリー響との全集CDがあった。
そちらは1995年9月12日と1996年1月29日、いずみホールでのライヴ録音(曲別の収録日は不詳)。
1999年8月15日の項に試聴録を記しているが、ズッシリしたカロリーのある響きが一貫した、スケールの大きな演奏という印象なので、今回の群響盤にも期待したい。
 
オスカー・シュムスキー(Vn) チャールズ・カーティス(Vc) アール・ワイルド(P)
ベートーヴェン;Vnソナタ第9番 & チャイコフスキー;P三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」(IVORY CLASSICS)
シュムスキーとワイルドの共演、いずれ劣らぬ実力派同士ゆえ、聴かざるべからず。
標記両曲は、1979年11月19日、カーネギー・ホールでのライヴ録音。音質は極めて優秀。
シュムスキーは1917年生れ、62歳という円熟期の記録ゆえ、大いに期待したい。
一方、チェリストは飛び抜けて若く、録音時点で19歳とのこと。
ジュリアードでレナード・ローズハーヴェイ・シャピロに学び、この後、北ドイツ放送響の首席奏者を経て、現在は南カリフォルニア大サン・ディエゴ校で教授職にあるという。
カーティスとワイルドによるバーバー;Vcソナタ(1979年9月12日の放送録音)をフィルアップしている(CD2枚組)。
 
ララ・セント・ジョン(Vn) ほか
「リ・バッハ」(Sony)
演奏もジャケット(笑)も鮮烈な、バッハ;無伴奏や小品集で登場したセント・ジョン。
新譜はバッハにワールド・ミュージック系のアレンジを施したもの…というので、あまり感心しないが、ともかく聴かねばと買ってきた。
硬軟取り混ぜて15曲(ボーカルが入るものまである)、2002年3・7月にロンドンで収録されたもの。

10月15日(水): 

 

レイフ・セーゲルスタム(指揮) ヘルシンキ・フィル
シベリウス;交響曲第2・6番(Ondine)
セーゲルスタムのシベリウス全集再録音、前作第1・7番から約1年を経て、ようやく第2作がリリースされた。
レーベルの公式Webpageに掲載されたのを見て、即オーダー。ここは速くて1週間で到着、しかも送料が安く、日本の店頭で買うよりやや高いという程度で収まる。
第2番が2002年10月、第6番が同年12月、フィンランディア・ホールでの収録とある。
前者は一昨年9月29日の実演@シンフォニー・ホールの素晴らしさも記憶に新しく、名演を期待したい。
 
音楽之友社から『宇野功芳責任推薦・クラシック人生の100枚・異論反論vs返答付』という本が出た。
中味は相変わらず宇野師の名誉にならぬもの。
厳選100枚の推薦盤に、7人の評論家が「対抗盤」を提案し、それに師が返答(反論)を加えるという、作りとしては凝ったスタイルなのだが、再反論が
(対抗盤の)ヘープリチのK622は残念ながら聴いていないが、ぼくにはシフリンで十分だ。」(49頁)
などというお粗末さでは、企画倒れである。ダメ出しをできない編集者も、どうにかしている。
閑話休題、
この本の中で、シベリウス;交響曲全集のページがあり、宇野師推薦はベルグルンド(指揮) ヘルシンキ・フィル安田和信氏の対抗盤が同じ指揮者のヨーロッパ室内管盤。
それだけなら当たり前の成り行きだが、宇野師が第1番に関してはセーゲルスタム盤を推し、
表現はこの方がより鮮烈、よりドラマティック、よりカラフル、それでいて意味深く有機的、深い箴言を秘め
とコメントしていることを特記しておきたい。

10月14日(火): 

 

クリスチャン・テツラフ(Vn) ケント・ナガノ(指揮) ロシア・ナショナル管 ほか
チャイコフスキー;Vn協 ほか(PentaTone)
贔屓の若手ヴァイオリニスト、テツラフの新譜が出るというのでCrotchet.co.ukにオーダーしていたもの。
他の注文品の入荷が遅れているようで、1枚だけで配送されてきたが、値段的には店頭でレギュラー盤を買うのと大差ない程度。
カプリングはニコライ・ルガンスキー独奏のチャイコフスキー;P協第1番
2003年2月、モスクワ音楽院での録音とあり、SACDと通常のCDとのハイブリッド盤になっている。

10月13日(祝): 

 最近入手した音盤の情報をパレー・ディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。

 先週の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。


10月12日(日): 

 

ジャン・フルネ(指揮) コンセール・パドルー管
ショーソン;交響曲(英Philips、LP)
見れば買っている大好きなショーソンの交響曲、しかも、この作品を得意にしているフルネの指揮とあれば、聴き逃すことはできない。
録音データは未詳だが、おそらく1950年代初期のモノラル録音、10インチ盤LPである。
某オークションで落札したもの。
 
エレン・アドラー(Sop) ルネ・レイボヴィッツ(指揮) 器楽アンサンブル
シェーンベルク;ピエロ・リュネール(米dial、LP)
レイボヴィッツが遺した録音のうち、永年捜していたdial盤の「ピエロ〜」が、ようやく購入できた。
彼にとって、この曲は作曲家を志すきっかけとなったものであり、現代音楽諸作品の中で唯一、再録音しているものである。
それだけに以前から探求していたLPだったのだが、なかなか見つからず、見つけても入手できなかった。
おそらく、FlとPiccをジャン・ピエール・ランパルが吹いており、そちら方面のコレクターと競合するからだろう。
たしかに、少し聴いてみても、ランパルの音の存在感たるや、他を圧して素晴らしい。
なお、これは国内の通販業者から届いたもの。
 
ウルフ・ヘルシャー(Vn)
バルトーク;無伴奏Vnソナタ ほか(独EMI、LP)
最近あまり華々しい消息は聞かないが、ヘルシャーは、1970年代にピエール・デルヴォーと共演したサン・サーンス;Vn協第3番(EMI)以来、好きなヴァイオリニスト。
彼の無伴奏録音、しかも難解深遠をもって鳴るバルトークとあらば聴かざるべからずと、某オークションにて落札したるもの。
マルP1974と表示されており、1973〜74年頃の録音であろうか。
裏面には、プロコフィエフ;無伴奏Vnソナタパガニーニ;「ネル・コル・ピウ」変奏曲をカプリング。

10月11日(土): 

 このところ本業が超多忙化、今日も休日出勤なのだが、その道すがら音盤店を覗かずにはいられないのが懲りないところ。

オリヴィエ・シャルリエ(Vn) マーティン・ブラビンス(指揮) BBCフィル ほか
グレッグソン;Vn協・Cl協 ほか(CHANDOS)
好きなヴァイオリニスト、シャルリエの新録音が並んでいたので購入。
グレッグソンは1945年生れ、ロンドンの王立音楽院でアラン・バッシュに学び、1996年以来、現在は英国王立ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージックの校長を務めている。
Vn協は1999年作曲・2001年改訂。プロコフィエフウォルトンエルガーシマノフスキの響きが聴こえる、ネオロマンティックな作風とのこと。初演は、ケント・ナガノ(指揮) ハレ管ほか。
同じ作曲家の作品で、オーケストラのための「紋章」、弦楽合奏のための「ステッピング・アウト」マイケル・コリンズ独奏によるCl協をカプリング。
2002年2月、マンチェスター・新放送会館での録音。
録音活動が盛んなのはよいことだが、シャルリエには、まず、フランス系音楽の音盤をもっと作ってもらいたいところだ。
 
ブリュノ・コクセ(Vc)
バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(Alpha)
バッハ;無伴奏の未架蔵盤を購入。
山尾敦史氏が愛聴しておられるという記事を拝読し、心惹かれたもの。
この曲に関しては個人的に『誰もいない部屋で密やかに、儀式のように弾いている』というイメージが理想(略)コクセの演奏は変に力が入っていないため、聴いているこちらも構えなくていい。
とのこと。
コクセについては詳しいことがブックレットに掲載されていないのだが、Webで検索した範囲では、レザール・フロリサンエスペリオンXX等に所属していた人らしい。
シャルル・リシェという楽器製作家の手になる4種のバロック・チェロを使い分けての録音で、第6番ではチェロ・ピッコロを使用している。
2001年10月2〜7日、番号順に1日1曲ずつ録音したものという。

10月9日(木): 

 

内田光子(P) クルト・ザンデルリンク(指揮) バイエルン放送響
ベートーヴェン;P協第1・2番(Philips)
引退演奏会実況録音を昨年のベスト盤に挙げて以来、ザンデルリンク晩年の演奏は聴かざるべからずと追いかけている。
内田光子に付き合ったベートーヴェン;P協全集は、第3・4番以外を買いそびれていたところ、中古音盤屋に、このCDが安価で並んでいたので購入したもの。
1997年7月、ミュンヘン、ヘルクレス・ザールでの録音。
 
ソニア・ヴィーダー・アサートン(Vc) イモージェン・クーパー(P) ほか
名演集(BMG)
寂びの効いた音色が贔屓のアサートン、CD2枚組でミッドプライス1枚分というお徳用の名演集がリリースされた。
シューベルト;アルペジオーネ・ソナタラフマニノフ;Vcソナタは、いずれも聴き比べで採り上げた佳演ゆえ、この機会に広く聴かれることを期待したい。
オレグとの二重奏(グリエールコダーイラヴェル)も既出音源の再録だが、小品3曲は新録音。
シューベルト;連祷
リスト;悲しみのゴンドラ
アペルギス;プロフィル
アペルギスは1945年ギリシャ生れ、フランス・IRCAMあたりで活動している人らしい。この曲はVcとザルブ(イランの太鼓)のための作品。
 
ヘンリク・シェリング(Vn) ポール・パレー(指揮) パリ音楽院管 ほか
ブラームス;Vn協 ほか(EMI、DVD)
EMIの "classic archive" シリーズの新譜が並んでいた。
グリュミオーフェラスといったタイトルも魅力的なのだが、そちらは暫く辛抱することにして、絶対に見逃せないシェリング盤を購入。
1962年12月に収録されたブラームスの協奏曲は、パレー・ファンとして随喜の涙。
ライヴ収録されたものらしく、白黒で画質はあまりよろしくない。
カメラ・アングルも限られていて、指揮者のアップはあまりなく、管弦楽のここぞという聴かせどころでは、必ずといっていいほどロングに引いて正面遠方から舞台全体を撮す。
それでも、モントゥーミュンシュと同様、長い長い指揮棒でキッチリ振る端正な指揮姿を、たっぷりと拝むことが出来る。
その他、タッソ・ヤノプーロ(P)らとの小品11曲を収録。

10月8日(水): 

 

アルバン・ゲルハルト(Vc) ネーメ・ヤルヴィ(指揮) BBCフィル ほか
ドヴォルザーク;Vc協 ほか(BBC music magazine)
某オークションに、BBC music magazine の附録CDが出品されていた。
ゲルハルトは最近注目のチェリストなので落札してみた(なお、本人のWebpageあり)。
カプリングはグリーグ;P協で、ソリストはフランソワ・フレデリック・ギイ
ヤルヴィのグリーグというのも聴き逃しがたい。
ドヴォルザークが2001年3月5日、グリーグが同月6日、いずれもマンチェスター・新放送会館での録音。
いわゆるエンハンストCDで、曲や演奏者の紹介等をパソコン上で見ることができる。
 
ダニエル・バルギエ(指揮) ルーアン室内合唱団 ほか
デュリュフレ;レクイエム ほか(SOLSTICE)
大好きなレクイエムの未架蔵盤が某オークションに出品されていたので落札。
OrgとVcが伴奏する第2稿による演奏で、1995年4月に録音されたもの。
指揮者の姓は原綴 "Bargier" 、片仮名表記には自信なし。

10月6日(月): 

 

ヨッシ・ツィヴォーニ(Vn)
バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータ(全曲)(Meridian)
バッハ;無伴奏Vn曲集の未架蔵盤が安価で某オークションに出ており、落札。
ヴァイオリニストはテルアヴィヴ生まれ、パガニーニ・コンクールやエリーザベト王妃コンクール(1963年、7位)で入賞を果たしたという。現在は英国王立ノーザン・カレッジ・オブ・ミュージックで教鞭を執っているとのこと。
2枚組ではなく単売された2枚を集めて出品されたもので、曲の振り分け・演奏順は、
(1枚目) パルティータ第3番ソナタ第2番パルティータ第2番
(2枚目) ソナタ第1番パルティータ第1番ソナタ第3番
となっている。
録音年月日は明記されていないが、マルPは1枚目が1990年、2枚目は1994年。
この曲集に関し、いつも参考にさせていただいている、T.S.さんのWebpageのコメントは、
オーソドックスであり,一音一音丁寧に弾かれた落ち着きのある演奏です。(以下略)

10月5日(日): 

 ラハティ交響楽団@ザ・シンフォニー・ホールを聴く。指揮はオスモ・ヴァンスカ
 1999年、このオーケストラの初来日公演は、大阪だけでなく、東京まで出かけ、シベリウスの交響曲を1番から7番まで、実演で聴くことができた。
 「その「音」「響き」が、まさしくシベリウスの音楽そのものであり、それに包まれているだけでも至福の心地だった。」と書いたとおり、大感激したものである。

 4年ぶりの再来日では、「クッレルヴォ」を取り上げる、しかも合唱がヘルシンキ大学男声合唱団「YL」という。
 これを聴き逃したら、生きているうちに二度と耳にすることはできないかもしれない…と思ったのだが、嗚呼、宮仕えの悲しさ、10月2日(木)に「すみだトリフォニー」に参じることができない!
 不幸中の幸いというべきか、大阪公演が日曜日にあり、こちらは聴くことができた。
 とはいえ、幾度、幾十度、日程が逆だったら、「クッレルヴォ」が日曜日だったら…と嘆いたことであろうか。(涙)
 予想どおり、木曜日の夜は超名演が繰り広げられ、しかもアンコールでは、YLの合唱を加えての「フィンランディア」が演奏されたという。。。
さて、今日の曲目は、
シベリウス;交響曲第2番
シベリウス;交響詩「フィンランディア」
(休憩)
チャイコフスキー;交響曲第5番
というもの。
 
まず全般的な印象から述べると、オーケストラとしての機能は、この4年間で、かなり向上したと思う。
弦合奏の編成は12-10-8-7-5、前回の感想で、
ヴァイオリンの後ろの方のプルトや、ヴィオラについては、いくぶん鳴り方が悪いように感じられた。
と書いた不満が、ほぼ一掃された。
プログラム掲載のメンバー表を比較して、異同のある名前をチェックすると、
第1Vn…12人中3人
第2Vn…10人中5人
Va…8人中5人
Vc…7人中1人
Cb…5人中1人
という状況。ちょっと乱暴な議論かもしれないが、弱かったパートで楽員を入れ替え、更に訓練を徹底して、技術レベルが大きく向上したと言えるのではなかろうか。
これもプログラム掲載の新田ユリさんの文章によれば、ヴァンスカのリハーサルは「もう一度!」を繰り返して、確実に定着するまで追及を続け、時に楽員が爆発することさえあるという。
 
弦合奏、特にヴァイオリン群の一体感は素晴らしい
斉諧生の席が下手側3階バルコニーで、眼下よく見えたこともあるが。
全体の統一性が高く、音程の良さは申すに及ばず、音色感も同質で、一斉に音彩が変化するところなど、誠に見事としか言いようがない。
また、「必殺のピアニッシモ」と呼ばれた最弱奏も、使用される頻度こそ減ったものの、時にピリリと効果的に用いられていた。
大音量・速いテンポの演奏が「爆演」などと呼ばれて持て囃される昨今、耳をそばだて息をひそめるような弱奏が発揮する強い表現力に、あらためて心を打たれた。
 
では、まず、シベリウス;交響曲第2番について。
第1楽章は、少し落ち着かない感じに聴こえた。弦合奏も高音域での強奏が、少し粗く響く場面もあった。
ヴァンスカは、
この曲の冒頭は軽快に演奏されなければなりません。決して重々しく演奏してはならないのです。
と語っているが、その反映だったのだろうか(日本シベリウス協会会報『フィンランディア』第29号)。
あるいは、見当違いかもしれないが、演奏旅行の疲れが出ていた可能性もあろう。
2日(木);東京(すみだトリフォニー)、3日(金);松本(ハーモニーホール)、4日(土);東京(武蔵野市民文化会館)と、連日、長距離移動を続けていたのだから…。
それとも、こちらの気持ちが、まだ日常モードを引きずっていたせいだろうか?
 
そんな思いも、第2楽章の冒頭、Fgが素晴らしい寂びた音色で主題を吹き抜いたことによって、きれいに一掃された。
ここの音色感は、北欧、特にフィンランドのオーケストラの独擅場だ。同じ主題が、その後、Trpでも出るが、抑えに抑えた渋い音の感動的だったこと!
 
この楽章(特に前半)、じっくりしたテンポで、しかも音楽の呼吸が実に深かった。
 
ヴァンスカ自身は、多血質というか、けっこう、せわしない音楽をする傾向のある人だ。
読売日響に客演した時に聴いた第4・5番がそうだったし、この日後半のチャイコフスキーでも、それは明らかになった。
その彼が、これだけ息の長い音楽をする。オーケストラの力というものだろうか。
あるいは、ヴァンスカとラハティ響がシベリウスを演奏するとき、彼の音楽に通底する、人の世にあらざるもの、天地自然・宇宙の深淵が、ステージに臨むのであろうか
 
第3・4楽章も間然とするところのない出来。
前回来日公演同様、「その「音」「響き」が、まさしくシベリウスの音楽そのものであり、それに包まれているだけでも至福の心地だった」と書かざるべからず。
 
とりわけ金管の硬質で厳しい音色感は、まさにシベリウスにぴったりである。
一昨日のサンクト・ペテルブルク・フィルの、やや軟質なオルガントーンとは正反対。
バルト海を挟んで近接しているとは思えない、音色感の違いに少々驚いた。
機能性の面ではサンクト・ペテルブルク・フィルに一日の長があろうが、シベリウスにはラハティの響きがふさわしい。
 
4年前、ちょうどこのホールでこの曲を聴いたとき、終楽章で金管が息切れ、十全な昂揚感が得られなかったが、その雪辱を果たしたといえよう。
 
中型の編成で、内声や木管の動きがよく伝わり、シベリウスの音楽の緻密さが明らかにされたのも、この演奏の長所だった。
 
欲を申せば、もう一息、身を切るような緊張感に満ちておれば、というところ。
これも演奏旅行の疲れか…と思っていた。
 
ところが、2曲目「フィンランディア」の冒頭は、凄まじい気合いの入りよう!
金管とCbが、目の覚めるような、素晴らしいクレッシェンドを決めた。
さすが第二の国歌、この曲で緩い演奏はできないのだろうと感心する。
 
本当に素晴らしい、傷一つなく、中味のぎっしり詰まった音楽が進行してゆく。
 
アレグロになって(95小節)、シンバルが鳴る行進曲風のところ、演奏によっては多少浅薄にもなりがちな部分である。
そのとき、ふと、作曲当時、帝政ロシアの支配下にあり独立もしていなかったフィンランドに、シベリウスは、音楽の上で、まだ見ぬ勝利を、無形の勝利を与えたのだろう…という思いが心をよぎった。
また、ソ連の侵略から独立を守り抜いた過酷な戦争の中で、毎日をこの曲とともに過ごしていたフィンランド国民のことが、脳裡に浮かんだ。
あれは『君が代』か『海ゆかば』みたいなもので、(略)戦争中、毎日やってたんです。ソ連軍が侵入してきて、多勢に無勢で、きょうは五人死んだ、中隊が全滅した。そのたびに『フィンランディア』をやっては、『臨時ニュースを申し上げます。第○中隊は全滅……』とやってた。
(『朝比奈隆 わが回想』中公新書)
目頭に涙が浮かんできて、抑えきれなくなってしまった。
 
そして有名な讃歌主題。
まず木管が吹いて、次に弦合奏に出るところ、Vnの音色の、まろやかに暖かかったこと!
木曜日のアンコールで、YLの合唱が入った、その響きのイメージで演奏しているのではないか…と思わずにはいられなかった。
 
終結の盛り上がりも、交響曲に優るとも劣らず。
前回の来日公演で聴いた彼らの演奏も含め、実演で耳にした「フィンランディア」の中でも最高の演奏だった。
 
ここまでの音楽を聴かされると、休憩後のチャイコフスキーは、ちょっと言葉が悪いが、「長いアンコール曲」を聴いたようなもの。
ラハティ響が、シベリウス以外の音楽を奏でるのを、初めて聴くことになるので、期待していたのだが…。
 
ロシア風の泣き節や大見得とは無縁の、筋肉質に引き締まった両端楽章など、それはそれで面白かった。
同じチャイコフスキーでも、曲が第4番なら、それなりに真実味をもって響いたのかもしれないが、やや人工的な5番では、とても太刀打ちできない。
 
アンコールは、すべてシベリウスで、3曲。
「行列」(BIS-CD-1445所収、1905年作品)
冒頭の金管主題、それを受ける弦合奏、いずれも晴朗な響きで感心した。佳曲。
 
劇音楽「テンペスト」より「ミランダ」
これは聴き覚えがあった。清涼な弦合奏に魅了される。
 
「讃美歌」
コンサートマスター、ヤーッコ・クーシストによる管弦楽編曲とのこと。
曲中に配された彼のソロも美しかった。
(そういえば、前回の来日では、毎日、必ずといっていいほど、弓の毛を2本ほど切っていたが、今日は大丈夫だった。経験を積み、力みが抜けて、合理的な奏法になったのだろうか。)

10月4日(土): 

 

エマニュエル・クリヴィヌ(指揮) リヨン国立管 ほか
サン・サーンス;交響曲第3番 ほか(DENON)
米Amazonの "Marketplace"で捜したクリヴィヌの音盤が届く。
1991年12月、リヨンのモーリス・ラヴェル・オーディトリアムでの録音、Org独奏はミカエル・マテース
同じ作曲家の交響詩を3曲、「オンファールの糸車」「フェアトン」「死の舞踏」をカプリング。

 

カール・リステンパルト(指揮) ザール室内管
バッハ;フーガの技法(Accord)
一昨日購入したリステンパルトのバッハを、さっそく試聴してみた。
まず、1966年の録音とは思えない、ボディのしっかりした鮮明な音色に歓喜。
暖かく、厚みがあって、しかも威風を失わないバッハ。
前に聴いたヴァルヒャによるオルガン独奏盤では、抽象性が前面に出て、自ずから思弁を誘う趣があったが、この管弦楽編曲(ビッチュ & パスカル版)では、感覚的な喜びをも満たしてくれる。
この指揮者の「フーガの技法」は、先だって旧録音(ERATO盤)がCD化された。そちらも気になるが、この新盤も単売して、より広く聴かれてほしいものである。
なお、リステンパルトの伝記が数年前にドイツで発刊され、CDも付いているとか。それも是非入手したいものである。

 昨日の演奏会のデータを演奏会出没表に追加。

 音盤狂昔録平成15年9月分を追加。


10月3日(金): 

 サンクト・ペテルブルク・フィル@京都コンサート・ホールを聴く。指揮はユーリ・テミルカーノフ
 このオーケストラの実演を聴くのは、昭和61(1986)年以来。もちろん「レニングラード・フィル」といった頃で、ムラヴィンスキーが(予想どおり)キャンセル、まだ若手で全然貫禄のなかったマリス・ヤンソンスが指揮したのを思い出す。

今日の曲目は、
R・コルサコフ;序曲「見えざる町キーテジの物語」
ラフマニノフ;P協第3番
ムソルグスキー(ラヴェル編);組曲「展覧会の絵」
というもの。
ピアノ独奏はエリソ・ヴィルサラーゼ
現代におけるロシアン・ピアニズムの体現者という、この人の評判に惹かれてチケットを買ったのである。
 
ムラヴィンスキー時代の伝統どおり、第1Vnの後ろにCb、そこから順にVc・Va・第2Vnという対向配置。
弦合奏の編成は18-15-12-11-8。
また、金管は上手奥に、Hrn・Trp・Trbの3列になって、まとまって着席。
上手側・ステージ寄りの3階バルコニー席が、斉諧生の好みなのだが、おかげでTrbなど爪先しか見えなかった(苦笑)。
 
R・コルサコフは、まさに遅刻者救済用、数分程度の小品。
しっとりした木質感ある弦合奏に乗ってきたObソロの、ピンと張った音色が、はかなげに美しい。
ムラヴィンスキー時代の余香を聞く思いがした。
 
お目当てのラフマニノフ、ステージに現れたピアニストは、思っていたよりも小柄で内気そうだったので吃驚。
チラシや広告等に掲載されているポートレートからは、気位の高いマダム然とした女性を想像していたのである。このあたりには勘が鈍く、いつも外してしまう。
技巧至難の大曲として名高い第3協奏曲だが、ヴィルサラーゼはうつむき加減の姿勢を崩さず、見かけ上は淡々と弾き進む。
 
しかし、その硬質で透明度の高い音色の美しさには瞠目せざるべからず。
低徊趣味を廃してセンチメンタルにならず、正面から堂々と弾ききった姿に圧倒された。
同席したピアノ音楽に造詣深い方々からは、「ときどき危ない場面もあったが、ぐっと引き戻す精神力の強さに感心した」とのコメントあり。
 
ソリストのアンコールは、なし。
 
休憩のあと、舞台に登場した指揮者が無造作に右手を振り回すや、「展覧会の絵」冒頭のTrpソロが瀏亮と鳴り渡った。
毛ほどの緊張も感じさせない自然な吹奏で、いつぞやマーラー;第5交響曲の冒頭を外したオーケストラのことを思い出した。
それを受ける金管合奏が、パイプオルガンもかくやとばかりの、見事な和音を築く。金管楽器をまとめて配置するのもむべなるかな。
音量も圧倒的、もの凄いパワー。
弦合奏もずっしりした、まさしく「燻し銀」の響き。和声感の共有が行き届いているのではなかろうか。
確認は出来なかったが、基本ピッチが低めなのかもしれない。
「古城」では、冒頭のFgの枯れきった音色に感心。
サキソフォン・ソロは、エキストラの日本人奏者が吹いていた。どこかで見かけた顔のようなのだが、思い出せない。もちろんプログラムにも名前はない。
 
テミルカーノフの音楽は、基本的に楽天的な感じ。「侏儒」「ビドロ」にあっても、深刻味を帯びない。
この人は指揮棒を持たず、掌を広げたまま、腕を円弧状に動かす傾向があり、時に振り始めが明確さを欠き、楽員がつんのめったりする様子が見られた。
とはいえ無能というのでは勿論なく、ところどころで「こだわり」を聴かせてくれる。
「ザムエル・ゴールデンベルク」でのTrpに合いの手を吹くClを強めに出す効果など、実に面白かった。
特に、遅めのテンポと念を押すようなフレージングで、実にじっくりと吹かれた「カタコンベ」冒頭の金管合奏と、そこから「キエフの大門」へ、基本テンポをじわじわ上げていって、熱狂的な終結を構築するのは、なかなかの遣り口であった。
もちろん、金管群が圧倒的な吹奏を聴かせたことは、申すまでもない。
 
アンコールは、「胡桃割人形」から「葦笛の踊り」「トレパーク」
ここでも、遅めのテンポでメルヘンチックに奏された前者と、急速な上にも急速に追い上げた後者との対比、あざといまでの業師ぶり。
 

10月2日(木): 

 

カール・リステンパルト(指揮) ザール室内管
バッハ;管弦楽作品集(Accord)
先だってクラシック招き猫に、「フーガの技法」についてのスレッドが立った。
その際、このリステンパルト1966年録音盤について、演奏者の顔触れが紹介されており、
ミシェル・デボスト(Fl)、モーリス・ブールグ(コール・アングレ)、モーリス・アラール(バソン)、アンドレ・ナヴァラ(Vc)
等々というのに吃驚。
爾来、通販サイトで眺めては6枚組の値段に溜息をついていたのだが(カプリングのブランデンブルク協管弦楽組曲は架蔵済みなので、コストパフォーマンスが悪いのである)、今日立ち寄った中古音盤屋で格安のセットを見つけ、シメシメと購入。
 
ヤーノシュ・ローラ(指揮) リスト室内管
モーツァルト;セレナード第9番「ポストホルン」(HUNGAROTON)
このアンサンブルは、ジャン・ピエール・ランパル等と共演したK.297b & 299(Sony)での美演に刮目して以来、なるべく買い逃さないようにしている。
今日立ち寄った中古音盤屋で、上記Sony盤と同時期に録音された「ポストホルン〜」を見つけたので購入。
独奏者としてアダム・フリートリッヒの名がクレジットされている。
 
芥川也寸志(指揮) 新響 ほか
芥川也寸志;交響三章 ほか(fontec)
「管弦楽選集 2」というタイトルの音盤で、第1巻は架蔵済み。
標記の出世作(1979年8月4日ライヴ)を含んでおり、以前から気になっていたところ、中古音盤屋で格安のものを見つけ、購入した。
自演のアレグロ・オスティナート武蔵坊弁慶安田謙一郎(Vc) 山岡重信(指揮)によるコンチェルト・オスティナートをカプリング。
 
ミハイル・ルディ(P) マリス・ヤンソンス(指揮) サンクト・ペテルブルク・フィル
ラフマニノフ;P協第1・4番(EMI)
ルディとヤンソンスのラフマニノフは、第2番を架蔵しており、かねて残り3曲も…と考えていたところ、中古音盤屋で見つけ、貯まったポイントを利用して超安価で入手。
第4番については、第2稿(1927年)の第3楽章を併録している(この点についてはかとちぇんこさんのWebpageに詳しい)。
1993年9月、サンクト・ペテルブルクでの録音。
 
ミヒャエル・リシェ(P) ウェイン・マーシャル(指揮) ベルリン放送響 ほか
ガーシュウィン;P協 & アンタイル;ジャズ・シンフォニー ほか(Arte Nova)
ガーシュウィンといえばこの人、マーシャルの新録音が出たので購入。
ドイツ人ピアニストとドイツのオーケストラというのが少々不安だが、とりあえず聴いてみないと。
シュルホフ;P協(1927年)をカプリング、こちらはガンサー・シュラー(指揮) ケルン放送響の付けで、どうも以前KOCHレーベルで出ていた音源らしい。

平成15年8月24日(日): 倭匠列伝指揮者・宇野功芳を掲載。

平成15年8月24日(日): 50万件アクセスを記念して、ページデザインを全面改訂。

平成15年5月24日(日): 「逸匠列伝」にユッシ・ヤラスを掲載。
平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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