音盤狂日録


10月30日(土): 

 

ヘニング・クラゲルード(Vn) ビャルテ・エンゲセット(指揮) ボーンマス響
シベリウス;Vn協 & シンディング;Vn協第1番 ほか(NAXOS)
北欧系の楽曲を演奏して声望高いクラゲルードが、ついにシベリウスを録音!
リリースを待ちかねてノルディックサウンド広島さんにオーダーしていたもの(もちろん一般の音盤店と同時の入荷なのだが)。
シンディング作品のカプリングも大歓迎。たしかNKFレーベルにテレフセン盤があったくらいではなかったか。
シベリウス;セレナード ト短調 op.69bシンディング;ロマンス  op.100をフィルアップ。後者は世界初録音とのこと。
2003年6月、イギリス・ドーセットでの録音。
カレヴィ・キヴィニエミ(Org)
シベリウス;Org曲全集(FUGA)
シベリウスがオルガン(ないしハルモニウム)のために書いた全作品(未出版のもの含む)を収録したCD。
収録曲の詳細は、当盤をオーダーしたノルディックサウンド広島ニューズレターに詳しい。
幻の第8交響曲の素材を流用したと言われる「葬送音楽」 op.111bや、アンダンテ・フェスティーヴォのオルガン版(この録音のための編曲)が含まれている。
スイス・ヴィンタートゥール市教会のWalckerオルガンによる、2004年5月の録音。
スティグ・ヴェステルベリ(指揮) スウェーデン放送響
ペッテション・ベリエル;交響曲第2番「旅は南風とともに」(瑞EMI、LP)
先日発売された『レコード芸術』11月号山尾敦史氏がペッタション・ベリエルの項で、
スウェーデンの名指揮者スティグ・ヴェステルベリが、スウェーデンEMIに録音した交響曲第2番《南風に乗っての旅》のレコードは、文字通りすり切れるまで聴いた
と書いておられた。
これは聴かざるべからずと、eBayで捜してみたところ、ちゃんと見つかるもので(笑)、落札したもの。
全3楽章で1枚を要しており、第2楽章が両面にまたがっている。
1977年5月ストックホルムでの録音で、Phono SueciaからCD化されている模様。CDではVn協がカプリングされているので、そちらが買い得だったかもしれない(苦笑)。
なお、標記邦題は上記リンク先、ノルディックサウンド広島さんに従った。
『200CD ベルリン・フィル物語』(学習研究社)を読了。
これまで立風書房から発行されてきた「200CD」シリーズが学研から出ていたので吃驚。
もっとも企画編集は同じプロダクションなので、体裁等は継続性を維持している。
このオーケストラを振った指揮者としてマルケヴィッチロスバウトといった、斉諧生好みの人が紹介されているが、いずれも1頁だけの小さな扱いなのが残念。
かつてカラヤンのアシスタントとしてベルリン・フィルに接した高関健のインタビューが最大の収穫である。
堂々17頁を占めているが、彼にはもっと喋らせてほしかったところ。元来、豊富な話題をよく整理して語ることができる人である上に、
少しマニアックな話ですけど、フルトヴェングラーの全録音の三分の二は持っています。
とも発言しているくらいなのだから。

10月28日(木): 

 

オスバルド・モンテス(バンドネオン) シロ・ペレス(G)
「EL TANGO - MI REFUGIO」(audite)
24日(日)夜、テレビ東京系の音楽番組「ミューズの楽譜(スコア)」小松亮太が出演するというので、視聴してみた。
川平慈英川井郁子が聞き手で、音楽家を含め各界の人の音楽にまつわるエピソード等を取りあげる、という番組。
放送の様子は、マネジメント会社レコード会社のWebpageで窺うことができる。
その中で小松氏が、人生を変えた出会いとして、オスバルド・モンテスの名を挙げた。
来日時にホテルを訪れた際、新しい録音を聴いてみてほしいと渡されたテープの演奏に衝撃を受けたという。「当たり前のことを当たり前にやることから、これほど豊かな音楽が生み出されるとは…!
その際、ピアソラ;リベルタンゴの冒頭が流されたのだが、なるほどスタイリッシュで、しかも滋味溢れる音楽。
これは是非CDで聴いてみたいとWebを検索してみたのだが、それらしい情報がヒットしない。
思いあぐねて、斎藤充正@『アストル・ピアソラ 闘うタンゴ』 氏に、失礼を顧みずメールを差し上げて(一面識もないのだ)、お尋ねしてみた。
折り返し御返信くださり、1990年頃発売の当盤であると御教示くださった。
auditeレーベルといえばクラシック・ファンにはクーベリックのライヴ盤で馴染み深いが、タンゴの音盤もリリースしていたとは知らなかった。
更に売っているところを捜したところ、公式Webpageからリンクされていたamazon.jpのマーケットプレイスで目出度く入手することができた。
18曲を収録しており、ピアソラは上記リベルタンゴのみ、その他アニバル・トロイロオスバルド・プグリエーセらの作品を演奏している。
録音データは記載されていないが、1990年頃発売とのこと。
ポール・パレー(指揮) デトロイト響
オッフェンバック;序曲集 & オーベール;序曲集(英Mercury、LP)
パレーのMercury録音の英プレス盤がeBayに安価で出品されていたので落札。
米盤LPで架蔵してきたが、おそらく後期プレスのものなので、盤質の良い英盤が入手できて幸いであった。
オッフェンバックでは「天国と地獄」序曲「美しきヘレナ」序曲「ホフマンの舟歌」、オーベールでは「青銅の騎士」序曲「フラ・ディアボロ」序曲「マサニエロ」序曲を収めている。
1959年4月の録音。

10月27日(水): 

 

ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮) ベルリン・ドイツ・オペラ管
フロトウ;歌劇「マルタ」抜粋(日TELEFUNKEN、SP)
イッセルシュテットのSP期録音の未架蔵盤が某オークションに出品されていたので落札。
ディスコグラフィには管弦楽がベルリン・フィルとされていたが、現物を見るとベルリン・ドイツ・オペラ管であった。
今日届いたLPの情報をイッセルシュテット・ディスコグラフィに追加。

10月26日(火): 

平林直哉『クラシック100バカ』(青弓社)を読了
しばらく前に許光俊氏がHMV.co.jpのWebpageで、内容よりも著者の覚悟を絶讃していた書籍。
あとがきに曰く
(本当の復讐以外の)どのような反応に対しても、私には受ける準備がある。私は業界人からバカ呼ばわりされるのは全く気にしない。怖いのはとにかく、読者から『あいつの書いていることはデタラメだ』とか『いつも内容が退屈だ』と思われることである。
許氏も上記Webpageで、この部分を引用し、
氏には妻があり、三人の子供がいる。(略)そう簡単に言い切れる言葉ではないのである。
と頌えている。
とはいえ、読んでみると意外に常識的というか、目新しい指摘はさほどない。
吃驚したのは、一部若手〜中堅評論家(又は音楽学者)を実名で批判していることぐらいだった。
(これに対して、大物については「某有名評論家」等と匿名にするのは残念な処置だ。例;225頁)。
まあ、斉諧生も「マイナーであればあるほど喜ぶバカ(180頁)」など、何点か思い当たるフシがあるので(笑)、あまり揚げ足や難癖をつけないでおこう。
ここでは、大いに共感した次のような指摘を挙げる。
東京文化会館は時代遅れの遺物だと思い込むバカ
全体の音も、ややデッドではあるものの、妙なくせがなく、全体像が捉えやすい。
廉価盤をパラダイスだと勘違いするバカ
ベルリン・クラシックスの音質も、私は好きになれない。輪郭だけが強調され、響きの豊かさが不足し、どれも似たような雰囲気になっている。
あきらめが早すぎるバカ
石の上にも三年というが、三年たって出てこないものはさらに三年探す覚悟でいることだ。
ロシアの演奏家を色メガネでしか見ないバカ
ロシア人がロシアの作品を、フランス人がフランスの作品をそれぞれ演奏するときは、『自国の演奏家の強み』とか『自然ににじみ出る味わい』とか、一見まっとうに思われるような表現に終始し、そうでない場合はいいかげんにけなす。
ザンデルリンクをほうっておいたバカ
(1990年のブラームス;交響曲全集から2002年のラスト・コンサートまでの)最後の十年以上の、おそらく最も実りの多い時期に録音が全くないのである。
曲の長短、編成の大小で優劣が決まると思っているバカ
クラウディオ・シモーネ指揮/イ・ソリスティ・ヴェネティ、ユハ・カンガス指揮/オストロボスニア室内管弦楽団、サウリュス・ソンデツキス指揮/リトアニア室内合奏団、ほかにも指揮者なしのフランツ・リスト室内合奏団やイタリア合奏団など、これらは並の有名ブランド・フル・オーケストラよりも、よっぽど素晴らしい感動を約束してくれる。

10月25日(月): 

 

カール・リヒター(指揮) ベルリン放送響
ブルックナー;交響曲第4番(Altus)
思いがけず早く退勤できたので、久しぶりに音盤屋に立ち寄ると、「1枚600円」セールをやっていた。
覆刻系レーベルから少し前にリリースされたCDが中心で、欲しいものは山のようにあるのだがとにかく絞り抜いて(汗)、それでも3点を購入(苦笑)。
これは、バッハの権威がブルックナーを振るとどうなるのか、新譜のときから興味津々だったのだが買いそびれていたもの。
金子建志氏のライナーノートによれば、「自らの感性に従ってスコアから独自のドラマを描き出す」ような指揮ぶりとのこと。
心情のすべてを吐露したかのように極限までブレーキをかけ」、「オルガニストが、ストップを全開して大オルガンを弾いているかのようなデフォルメ」といった評言が頻発する。
執筆しながら第4楽章を聴いているのだが、確かに面白いことは無類、しかも所謂爆演ではなく、音楽的な説得力が非常に強い。
大編成を扱い慣れていなかったのか、縦の線が危うい部分なきにしもあらずだが、ともかくリヒターのブルックナー演奏をもっと聴いてみたい気持ちに駆られてしまう。
1977年11月7日、ベルリンでのライヴ録音、少し堅めだが良好な音質。
なお、オーケストラは現・ベルリン・ドイツ響の方。
キリル・コンドラシン(指揮) モスクワ・フィル
マーラー;交響曲第9番(Altus)
同曲の日本初演(!)のライヴ録音ということで聴きたいと思っていたのだが、1960年代のものということで音質面に不安を感じ買いそびれていたもの。
600円ならばと思って購入、聴いてみると予想外に良好な音質(一部に傷がある)。
これも金子建志氏の充実したライナーノートが附されている。
1967年4月16日、東京文化会館での収録。
ルノー・カプソン(Vn) ジェラール・コセ(Va) ゴーティエ・カプソン(Vc) アロイス・ポッシュ(Cb) フランク・ブラレイ(P)
シューベルト;P五重奏曲「鱒」 ほか(Virgin)
先だってもメンデルスゾーン;Vn協ほかのディスクが素晴らしかったカプソンの新譜が出ていたので購入。
同曲には1997年にドーヴィル復活祭音楽祭で収録したライヴ盤があったが、これは2002年12月にスイス、ラ・ショー・ド・フォンで録音したスタジオ盤。
「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲  D.802「万霊節の連祷」  D.343(いずれもVn+P)をフィルアップ。
彼は来年1月にトッパンホールでリサイタルを開くのだが、東京まで聴きに行くのは難しいかもしれない…(嘆)。
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn) ジャック・ルヴィエ(P)
ラロ;Vnソナタ & プーランク;Vnソナタ ほか(DENON)
昨年DENONから1,000円で発売されたシリーズの中に、カントロフの未発売音源が埋もれていた!
先日某オークションの出品を見ていて、あれ、ラロのソナタって持ってたっけ?と思って調べてみると未架蔵だった。
1,000円盤にしては割高な値付けだったので落札は見送り、今日、音盤屋の15%引きセールに収まっていたものを購入。
帯を読んで吃驚、1994年に録音された演奏の初発売とのこと。音盤棚に見当たらないのも当然だったわけだ。
プーランク作品は数年前に京都で実演を聴いているので、その記憶が音盤架蔵済みと、混線していたのだろう。
スペインの詩人ガルシア・ロルカを哀悼する佳品、聴かざるべからず。
既発のサン・サーンス;Vnソナタ第1・2番をカプリング。
ダニイール・シャフラン(Vc)
バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(DOREMI)
昨年だったか、DOREMIとAulosの2つのレーベルからほぼ同時にCD覆刻されたシャフランのバッハ(録音は1969〜74年)。
その時はメロディアのライセンスを得ているということでAulos盤を買ったのだが、DOREMI盤との音質比較がずっと気になっていた。
とはいえ数千円を投じるのは気が重い…と指を銜えていたところ、1枚600円セールの2枚組で売られているのを見つけたので欣喜購入したもの。
DOREMI盤は板起こしだが、曲によっては、音の力、抜け、自然な空気感といった点でAulos盤を遙かに上回る(特に第1番)。
ただし種板の盤質に左右されるのか、他の曲ではAulos盤に一日の長があるように思われる(もちろん好みの問題はあるが)。
アルトゥール・グリュミオー(Vn) イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) アムステルダム・コンセルトヘボウ管 ほか
ベルク;Vn協 ほか(蘭Philips、LP)
マルケヴィッチのLPで未架蔵だったグリュミオーとのベルクが安価でeBayに出ていたので落札したもの。
1967年1月の録音。
カプリングはストラヴィンスキー;Vn協、指揮がエルネスト・ブールに代わっている。
アントニオ・ヤニグロ(Vc) エヴァ・ウォルマン(P)
ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ & プロコフィエフ;Vcソナタ(米Westminster、LP)
バロック・古典派中心に活動した人というイメージが強いヤニグロに、まさかショスタコーヴィッチ録音があったとは知らなかった。
eBayを見ていて吃驚、好きな曲なのでヤニグロがどう弾いているか聴かざるべからずと落札したもの。
番号はXWN18791。モノラル録音だがジャケットには「ステレオ・カートリッジでも再生できます」と書かれており、後年の再発盤であろうと思われる。
今日届いたLPの情報をマルケヴィッチ・ディスコグラフィに追加。

10月24日(日): 

 

アレクサンドル・ルーディン(Vc) サウリュス・ソンデツキス(指揮) リトアニア室内管
ハイドン;Vc協第1・2番(MFSL)
このところ蒐集に努めているロシアの名チェリスト、ルーディンの未架蔵盤が某オークションに出品されていたので落札したもの。
ルーディンのハイドンは、以前にMANDALA盤を入手しているが、そちらは弾き振りで1990年の録音。
当盤はマルP1982年となっているので、ルーディン20歳代初めの演奏ということになる。
あるいは1982年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位を受賞した記念の録音か。
原盤MELODYA、アメリカで製作されたリマスター盤である。

10月23日(土): 

この間届いたLPの情報をレイボヴィッツ・ディスコグラフィアンゲルブレシュト・ディスコグラフィに追加。

10月21日(木): 

 

マリア・フェドートワ(Fl) ほか
「オケイジョン」(Classic Records)
今年1月ミラーズ・フェスティバルでのプーランク;Flソナタほかや5月モスクワ放送響来日公演での「牧神〜」で素晴らしい笛を吹いた、フェドートワさんの独奏盤がリリースされた。
ロシアのレーベルだが、マルCは彼女の名前になっているので、ほとんど自主製作のような音盤だろうと思われる。
幸いMMC-Japanで輸入販売されるというので、早速取り寄せたもの。
MMC-JapanのWebpageには熱い讃辞も掲載されている。
主な収録曲は、
ピアソラ;「タンゴの歴史」・「アヴェ・マリア」(後者は映画『エンリコ四世』への音楽から採られたとのこと)
ベルリオーズ;「キリストの幼時」より三重奏曲(ただしFl、Ob、Hp)
イベール;間奏曲(Fl、Hp)
これらの間にZgraja;フラメンコ・スタディ第1〜3番(無伴奏Fl)が挟まれる。
CDにフェドートワ自身が寄せた文章に、
海、美しく常に変化している海、地中海のような海。水平線と波のざわめき、フランス人やスペイン人がおしゃべりしている海辺の小さなカフェ、その海を見渡せる小さなホテル。ここでは、夢を見ることができ、人生を振り返ることができ、些細なことを考えることができる。騒々しい日常生活から離れて…。
とあり、そのような気分の選曲なのであろう。
CDの再生をスタートさせると、靴音や扉(?)を開ける音・波の音が聞こえてから「アヴェ・マリア」の演奏が始まり、「タンゴの歴史」の合間にはカフェ(?)の物音が挿入されているのも、このコンセプトから来ているのであろう。
ベルリオーズ作品では、この曲だけ木製の楽器で演奏されているが、LPのサーフェス・ノイズらしいプツ・プツというノイズが重ね合わされている。これも何かの趣向だろうが、多少耳障りだ。
もちろん演奏そのものは非常に素晴らしく、特にZgraja作品の力強い吹奏は感動的。
なお、「タンゴの歴史」は、本来のFl・GにP・Cbが加わっており、上記フェスティバルで共演したアレクサンドル・メルニコフらが共演している。
2003年モスクワでの録音。

10月20日(水): 

 

ルネ・レイボヴィッツ(指揮) ロイヤル・フィル
ベートーヴェン;交響曲第1・3番(MENUET)
レイボヴィッツのベートーヴェン録音がCHESKYレーベルから覆刻される以前、MENUETというレーベルから出ていたことは情報として知っていたが、音盤そのものは架蔵していなかった。
先だって某オークションに出品されているのを見つけ、覆刻の状態を確認してみたいと落札したもの。
SCRIBENDUM盤と英盤LPを加えて聴き比べてみた。CHESKY盤・SCRIBENDUM盤がADD表示なのに対して、MENUET盤はAAD表示。
MENUET盤は、音のエッジに少し荒れが感じられるのと、残響が多いこと(CD化の際に付加?)が気になるが、鮮度・抜けが良く力強い音がしており、なかなか気に入った。
CHESKY盤については、中高音が張り出した独特の音作りが善し悪しだが、客観的・物理的には最も優れた響きだと思われる。
SCRIBENDUM盤は、あまり評判が良くないらしいが、斉諧生宅の装置で聴く限り、LPの響きに最も近いように感じる(ただしLPより少し劣る)。
ファースト・チョイスはCHESKY盤だと思うが、斉諧生の好みとしてはMENUET盤も捨てがたい。このレーベルのレイボヴィッツは、今後の蒐集の一つの大きな目標である。
なお、MENUETレーベルからはベートーヴェン;交響曲全集のほかシューベルト;交響曲第9番ロイヤル・フィル盤も出ていたらしい。
モーリス・アッソン(Vn) ジェラール・ドゥヴォ(指揮) ニュー・フィルハーモニア管
パガニーニ;Vn協第1番 & プロコフィエフ;Vn協第2番(英CFP、LP)
贔屓にしているヴァイオリニストの一人、アッソンの未架蔵盤がeBayに出品されていたので落札。
これがソロ・デビューだったのか、ジャケット裏には師・シェリング自筆のメッセージが刷り込まれている。
1973年2月の録音。
『レコード芸術』11月号が発売された。
特集記事の一つが北欧の指揮者と交響曲、もちろんステーンハンマルも採り上げられている。
北欧指揮者界の名教師ヨルマ・パヌラのインタビューは快挙だが、スティグ・ヴェステルベリが紹介されていないのは寂しいところだ。

10月19日(火): 

 

ライナー・クスマウル(Vn) クリスティーネ・ショルンスハイム(Cem)
バッハ;無伴奏Vnパルティータ第2番 & Vnソナタ第2・6番(SIMPK)
愛読させていただいているblogSEEDS ON WHITESNOWの過去ログクスマウル&シュタイアーのデュオを聴くで取りあげられていたCD。
ライナーを本当に素晴らしいヴァイオリニストだと痛感したのは、ベルリンのフィルハーモニーに併設された楽器博物館オリジナルのバッハのソナタ集。(略)そこに納められた無伴奏のシャコンヌは、ライナーが作品に真摯にぶつかった本当に感動的な演奏です。
とのこと、これは是非聴いてみたいと、リンクされていたベルリン楽器博物館のページからオーダーしたもの。
1995年10月22日、同博物館における演奏会のライヴ録音。かなりオンマイクで収録されている様子で、楽器の響きがストレートに耳に入ってくる。
用いられている楽器は、もちろんどちらも博物館の収蔵品で、ヴァイオリンはジェナーロ・ガリアーノ(1750年頃)、チェンバロはゴットフリート・ジルバーマン(1740年頃)。
 
なお、オーダーはオンラインでできるが、支払いは折り返しメールで指示があり、銀行口座への振込になる(したがってかなり高くつく)。
口座名義など、どうやらドイツ政府の歳入への納付といった雰囲気だ。

10月18日(月): 

 

アリ・ラシライネン(指揮) ノルウェー放送管
「海へ向かって」(FINLANDIA)
以前グリーグ;「ペール・ギュント」組曲で感心した、ラシライネンとノルウェー放送管の音盤が某オークションに安価で出品されていたので落札。
標題は、最初に収録されているブレイン(1924〜1976、ノルウェー)の曲名から採られたもの。
国内盤では「北斗のラプソディ」とされていたが、収録曲に「狂詩曲」と名の付くものは一切なく、
グリーグ;抒情組曲スヴェンセン;祝祭ポロネーズラーション;田園組曲ロンビ;シャンペン・ギャロップニルセン;小組曲シベリウス;悲しきワルツ
といった北欧の抒情的・ロマンティックな名曲集になっている。
1995年2月、オスロでの録音。
野平一郎(P) 本名徹次(指揮) オーケストラ・ニッポニカ
大澤壽人;P協第3番「神風」 ほか(MITTENWALD)
今年6月にNAXOSからサランツェヴァ(P) ヤブロンスキー(指揮)が発売された「神風協奏曲」の、初演以来65年ぶりに蘇演された際のライヴ録音(2003年2月2日、紀尾井ホール)。
NAXOS盤の記事でうっかり「世界初録音」と書いてしまったことから(正確にはカプリングの交響曲第3番が世界初)、Web上の知人からMITTENWALD盤の存在を御指摘いただいた。
この「亜欧連絡記録大飛行」の通信機「神風」号に捧げられた作品の録音は聴き逃すべからず、ぜひ入手せねば…と思っていたところ、某オークションに出品されたので落札したもの。ピアノが野平氏というのも心強い。
日本人作品を中心に埋もれた名作を発見 & 演奏するために結成されたオーケストラの設立演奏会のライヴ録音で、大澤作品以外には、
橋本國彦;感傷的諧謔(1928年)
宮原禎次;交響曲第4番(1942年)
を収録している。
ルネ・レイボヴィッツ(指揮) ウィーン国立歌劇場管
シューベルト;交響曲第9番「グレート」(米Westminster、LP)
レイボヴィッツの未架蔵盤がArs Antiquaのカタログに出ていたのでオーダーしたもの。
Westminsterのディスコグラフィには詳しくないのだが、WST14051という番号でステレオ録音。この音源はモノラルかと思っていたが、聴いた感じでは擬似ステレオではなさそうだ。
レイボヴィッツの同曲には、ロイヤル・フィルとの再録音もあり、そちらもいずれ入手したいものである。
トマス・ツェートマイヤー(Vn) シプリアン・カツァリス(P)
シューマン;Vnソナタ第1・2番 ほか(独TELDEC、LP)
偏愛のVn曲の一つシューマンの第2ソナタの未架蔵盤がArs Antiquaのカタログに出ていたのでオーダーしたもの。ツェートマイヤーの録音があるとは知らなかった。
1987年7月にベルリンで録音されたもので、もちろんデジタル。CDになっているのだろうか?
更に驚くのは、ジャケットに写っているツェートマイヤーが、ルプーセーゲルスタムのような髯面になっていること! こういう写真も初めて見た。
Vaに持ち替えたおとぎの絵本 op.113をカプリング。
デジレ・エミール・アンゲルブレシュト(指揮) 放送オペラ管 ほか
ロッシーニ;歌劇「オリイ伯爵」(仏LE CHANT DU MONDE、LP)
以前CDで入手したアンゲルブレシュトのライヴ録音のLPがArs Antiquaのカタログに出ていたのでオーダーしたもの。
曲と演奏についてはミン吉さんのオペラ御殿に詳しい。
1959年9月21日、パリでのモノラル録音。LPとCDが同時に発売されたものらしい。

10月17日(日): 

 

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮) シンシナティ響
ニルセン;交響曲第5番 & ストラヴィンスキー;バレエ音楽「春の祭典」(Telarc)
本業がらみの所用で外出した帰りに音盤店に立ち寄る。気になるディスクは多数あれど、北欧系の2枚に絞った。
ニルセンの6つの交響曲の中で現在のところ一番好きなのは第5番。実演に接した第3・4番にも心動くものはあるのだが…。
その曲をパーヴォ・ヤルヴィが録音したとあっては聴かざるべからず。
何とも珍しいカプリングだが、ライナーノートによれば「音楽におけるバーバリズム」という共通項があるのだそうな。
もっとも、2人の作曲家が置かれていた文化や、第1次世界大戦以前・以後という時代の差から、まったく違った音楽になっているわけだが。
2004年1・2月、シンシナティでの録音。
オスモ・ヴァンスカ(指揮) ラハティ響 ほか
シベリウス;「スネフリード」 ほか(BIS)
BISの新譜は魅力的なものばかりだが、今後も安定して入手できるだろうと、ついつい後回しになってしまいがち。
とはいえ、ヴァンスカ・ラハティのコンビが「恋する人」「アンダンテ・フェスティーヴォ」をリリースしたとあっては聴かざるべからず。
前者ではヤーッコ・クーシストのソロもクレジットされているのだから…。
その他には、序曲(1902年)、戴冠式カンタータ(1896年)、カンタータ「わが祖国」  op.92といった、合唱(ユビラーテ合唱団)を加えた祝祭的な作品が収録されている。いずれも録音が比較的少ないものばかり。
2001年4月〜2003年1月、ラハティの本拠地シベリウス・ホールにおける4回のセッションでの録音。
ジョン・ハント(編)
『フランス人三人組;ミュンシュ、パレー、モントゥー』
先だってカデンツァさんのカタログを眺めていて、ハントがパレーとモントゥーのディスコグラフィを出したことに気づき、慌ててオーダーしたもの。
昨年に発行されていたものらしい。迂闊だった…(汗)。
データの異同など詳細はまたチェックしてディスコグラフィに加えたいが、とりあえず、未架蔵の音源は次のとおり。
フォーレ;組曲「ペレアスとメリザンド」
フランス国立放送フィル(録音;1971年・パリ)
 
プロコフィエフ;P協第3番
バイロン・ジャニス(P) フランス国立放送管(録音;1963年・パリ)
いずれも "unpublished video recording" と注してある。どこかDVD化して発売してくれないものだろうか。
なお、ハント氏のディスコグラフィの公式Webpageがあり、オンラインでオーダー可能なようだ。

10月15日(金): 

 

ダグラス・ボストック(指揮) ロイヤル・リヴァプール・フィル
ニルセン;交響曲全集(Quadromania)
以前、CLASSICOレーベルからリリースされていた音源がQuadromaniaから4枚組1,500円という安価で売られていたので購入。
ただし、初出時にフィルアップされていた管弦楽付き歌曲や組曲は、ほとんどが省かれている。
ションヴァント盤(dacapo)同様、新全集版に基づく演奏である。
1999〜2001年の録音。
モニク・コック(P) ジェリ・ルメール(指揮) リエージュ合奏団
ルクー;エスキース ほか(白Alpha、LP)
ルクーの未架蔵音源が通販業者のカタログに出ていたのでオーダーしたもの。
「ピアノと室内合奏のための『エスキース』」とは聞いたことのない作品名で、RICERCARレーベルの全集にも収録されていないので、ちょっと首をかしげていたのだが、ライナーノートを読んで疑問氷解。
当盤の指揮者ルメールが、ピアノ・ソナタ ト短調が演奏機会に恵まれないことを嘆いて、ピアノと弦楽合奏に編曲したものという。
音楽の書法としてもピアノ向きでない、との判断もあったようで、聴き比べてみるとなるほど弦楽の方がしっくりくるような気がしないでもない。
原曲は5楽章、約21分(RICERCAR盤)だが、第1・2・5楽章を中心に1楽章、約13分に短縮されている。
録音データは記載されていないが、上記カタログでは1960年代後半の録音とのこと。

10月10日(日): 

 

シャーンドル・ヴェーグ(指揮) カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク
ドヴォルザーク;弦楽セレナード(Orfeo)
音楽を聴く上で、斉諧生にとって最も重要なのは、いきいきした生命(いのち)の弾みを伝えてくれるかどうか、生きてあることの歓びが沸き立つような情感を胸に吹き込んでくれる演奏なのかどうか、ということである。
こう書くと非常に抽象的になるが、音楽は(特に音盤で聴く音楽は)耳から入ってくるものがすべてであるから、「それ」かどうかは、演奏者が発し(音盤やオーディオ装置を通じて)斉諧生の聴覚で検知する、具体的な「音」の姿に必ず反映されているはずである。
「それ」は、例えばリズムのちょっとした伸縮、例えば心もち強めのアクセント、例えば幾分大きいクレッシェンド、例えば和音を構成する一つの音の僅かな低さ、例えば楽器の振動に含まれる倍音成分のふくらみ…といった個別具体の要素に還元され、しかしそれらの総和・蓄積として、聴く者の感動を左右する。
一瞬の音でも解析するためには膨大な単語を要するゆえに、音楽の逐語的な描写は不可能だが、その一斑をすくい取ることは不可能ではないと考えている。
 
閑話休題、このヴェーグの演奏について、に「生命を掘り起こせずんば音楽にあらずと言わんばかりの勢い」と記した。
それを具体的に書けばどうなるか、というのが今日の課題。
第1楽章冒頭の美しいレガート(弦の音色の温かいこと!)、旋律の流れに沿ったクレッシェンドとデクレッシェンドの細かい扱いから生まれる優しい表情など。
第2楽章では、ワルツの旋律を奏でる第1Vnの下で、ドローンのような音型を弾く第2Vaに与えられた寂びの強い音色と強いアクセントが見事な効果を上げている(楽譜ではfz指定なのだから当然といえば当然だが、ここまではっきりさせているのは珍しい)。
内声部が生き生きしているのもこの演奏の特徴で、特にこの楽章のトリオ部でVcのピツィカートを強奏させる部分が目覚ましい。
第3楽章スケルツォは速めのテンポと強いアクセントで猛烈なスピード感を生み出す。
その一方で大きめのリタルダンドや美しいレガートを織り交ぜることで、音楽を立体的なものにしているのである。
第4楽章は、放っておいても美しいラルゲットだが、遅めのテンポ、暗めの音色、音符の末尾の僅かなディミヌエンドが、落ち着いた音楽、内省的な美感を生んでいる。
終楽章は、スケルツォ同様の疾走する音楽。
内声のリズムが実に良い。ジャズでいうスウィング感がある。
コーダの追い込みと、回想的に挿入される第1楽章の旋律との対比が、回想部末尾の大きなリタルダンドで更に強調され、猛然と駆け込んだ終結に、拍手大喝采が浴びせられたのも頷ける結果だ。
 
惜しむらくは、録音(又はマスタリング)が硬質で、弦合奏が強奏時に金属的に響く。
演奏にも多少のライヴ的な傷を免れていないところがあり、即座にこの曲のベスト盤として推すことはためらわれるものの、「音楽の生命感」を大事にする聴き手にとってはかけがえのない演奏(音盤)の一つである。
このところblogがサーバーに重くなってきたのか、トラックバック機能がちゃんと使えなくなってきて困っている。
当記事から購入時の記事へのトラックバックも張れない状況なので、上記本文中からリンクを張ることで代えさせていただきたい。
<(_ _)>

10月9日(土): 

 

シャーンドル・ヴェーグ(Vn) アンドラーシュ・シフ(P)
ベートーヴェン;Vnソナタ全集(DECCA)
長年の探求盤が某オークションに出品されていたので落札したもの。
1983年12月、ザルツブルク・モーツァルテウムで収録された初期のデジタル録音で、当盤は1987年5月に発売された国内盤CD(4枚組)。
その時にはヴェーグの偉さを理解しておらず、買いそびれてしまった。気がついたときには廃盤、その後再発された形跡もない。
LPであれCDであれ輸入盤を見かけたこともないのは、ちょうどLPからCDに切り替わる頃だったことがわざわいしたのだろうか、あるいは録音時点で70歳を超えていたヴェーグにメカニカルな衰えがあって、積極的に販売できないような出来栄えだったのだろうか?
ともかくもこの卓越した音楽家の貴重な独奏記録であり、架蔵できて大変に嬉しい。
これを書きながら聴いた範囲では、確かに高齢を感じさせる音ではあるが、音楽の骨格に弛みはなく、あちこちから滲み溢れる滋味の豊かさに傾聴すべき佳演と評価すべきであろう。
なお、ブックレットに塩川悠子さんが師ヴェーグと夫君シフの交友について寄稿しているのが興味深い(これは国内盤でよかった)。
ミクローシュ・ペレーニ(Vc) アンドラーシュ・シフ(P)
ベートーヴェン;Vcソナタ全集(ECM)
昨日の記事で未着を嘆いたところ、「呼ぶより何とか」、今日の便で配達されたので狂喜乱舞。早速聴いてみる。
録音の傾向がHungaroton盤とはかなり異なり、ペレーニ師の音色はライヴでの印象に近い。
幾分残響が多く感じられるわりにピアノの音像が近め・大きめでチェロが遠めに聴こえ、少し違和感があるが、これは斉諧生宅のシステム(ないし部屋のアコースティック)のせいかもしれない。
十分な空間に大型のスピーカーが揃った環境があれば、舞台が現前するようなスケールで鳴りわたるのではなかろうか、という気がする。
まだ全曲は聴けていないが、旧全集(Hungaroton、ピアノはラーンキ)を凌駕し、この曲集のベストを争う演奏になることは間違いあるまい。
欠けているところがあるとすれば、喧嘩腰のような白熱ぶりであろうが、それをペレーニ師に求めるのは間違いだろう。
その代わりに、静けさに満ちた表情と自然な力感が備わっている。
シフのピアノもチェロに良く釣り合って、美感と熱気が両立している。
旧盤同様、Hrnソナタ ヘ長調 op.17からの編曲と、3つの変奏曲を含む。
2001年12月及び2002年8月、ノイマルクト・ライトシュターデル(シフがよく使うスタジオ)での録音。
ポール・パレー(指揮) デトロイト響
ラフマニノフ;交響曲第2番(英Mercury、LP)
パレーの英プレス盤がeBayに出品されており、少し傷があるということで極めて安価で落札できた(送料を含めて9.99ドル!)。
幸い傷は(音には出るものの)たいしたことがなく、音質的には架蔵品の米盤を遙かに上回る。これは掘り出し物だった(^^)。
今日届いたCDの情報をペレーニ・ディスコグラフィに追加。 http://edmund.exblog.jp/tb/1013178

10月8日(金): 

 

(various artists)
日本SP名盤復刻選集I(ロームミュージックファンデーション)
ロームは京都に本社を置く半導体等電子部品のメーカーで…と解説しておいたほうがよいのだろうか。
地元では大変に有名な「ハイテク企業」なのだが、全国的な知名度があるのかないのか、つまびらかにしないのである(汗)。
十数年来、財団法人ロームミュージックファンデーションを設立して、「京都・国際音楽学生フェスティバル」の開催、演奏会や研究への助成、奨学金の交付などを行っている。
今年度は事業予算が2億円を超えたそうだが、その一つが当盤、日本SP名盤復刻選集の発行。
平成21(2009)年までの6年間に4集各6枚(計24枚)のCDに、日本人演奏・日本人作品のSP音盤を覆刻する計画とのこと。
当盤はその第1集で、曲目等の詳細は公式Webpageに掲載されている。
斉諧生的に最重要なのは、ルクー;Vnソナタ
巌本眞理(Vn) 野辺地勝久(P)による1949年頃の録音である。
ルクーの音源なれば買わざるべからず、久しぶりにグッディーズさんから購入したもの。
覆刻作業は新忠篤の手になり、非常に生々しい音質に仕上がっている(ただし針音も盛大。ルクーは特に激しい)。
ジャケット装画に上村松園の美人画を用いているのも、京都人的には嬉しいところ。
当盤には、ルクー以外にも貴重な音源が目白押しだが、中でも
(1) 斎藤秀雄の独奏チェロが聴けるスッペ;序曲「詩人と農夫」(近衛秀麿(指揮) 新響、1933年)
(2) 倉田澄子の先考倉田高(Vc)によるカサド;愛の言葉(ピアノが後の歌謡曲作家高木東六というのに驚く、1944年)
(3) 朝比奈隆の初期録音(1943年)、深井史郎;ジャワの唄声
といったあたりが注目か。
 
なお、この財団からは一昨年に「日本の洋楽1923〜1944-杉浦雅太郎SPレコードコレクションより-」というセットも出ている。
こちらも凄い内容だが、一般発売されず、全国の図書館等に寄贈されただけなのが勿体ない。
今後発売される第2〜4集に、改めて収録してもらいたいものである。
上記CDの情報をルクー・作品表とディスコグラフィに掲載。
解説書に新忠篤氏が次のように書いておられる。
このソナタはSPレコード時代、作曲者と同郷のヴァイオリニスト、アンリ・コックの弾いたポリドール盤、天才少年と称賛されたユーディ・メニューインの弾いたビクター盤があり、クラシック愛好家の間によく知られていた曲だった。
メニューイン盤はCD化されているが(Biddulph)、コック盤は未覆刻の筈。
実はつい先日、eBayHenri Koch(Vn) Andre Dumortier(P)によるLP(仏LUMEN、LD 3.700)が出品され、一千数百ドル(!)で落札された(フランク;Vnソナタとのカプリング)。
あるいはこれが新氏のいうポリドール盤の覆刻LPだったのであろうか。
ともあれ、上記LPの情報もディスコグラフィに掲載しておく。

10月7日(木): 

 

グリラーQ
ブロッホ;弦楽四重奏曲第1〜4番(DECCA)
以前読了したコリン・ハンプトン『チェリストの物語』(瀧川郁久訳、春秋社)は、この団体のメンバーによる著作。
20世紀音楽史を彩る作曲家、演奏家たちとの交流に多くの紙幅が割かれているが、中でも「私がめぐりあった人々の中で、いちばん偉大な人物」と特筆されているのがブロッホ。
ブロッホは、石像のような風貌で、岩から彫り出したような顔をしていた。いつも極度に興奮していて、怒鳴ったかと思うと、歌いだし、金切り声をあげる。背丈は五フィートしかなかったが、切り立った岩山のようで、そのくせとてもチャーミングだった。
弦楽四重奏曲第一番は、名作だと思う。私はこの曲を、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の論理的帰結と見ている。私の中でブロッホは、常にシューベルトやブラームスより上なのだ。
あまり馴染みのない作曲家だったが、これは是非聴いてみたいと考えていた。
先だって、"DECCA Original Masters" シリーズで出たばかりの2枚組が、中古格安(1枚分以下!)で並んでいたので思わず購入。
1954年6〜7月、ロンドンで録音されたもの。この団体は第5番も録音しているはずなのだが、漏れているのはどうしてだろう?
なお、ハンプトンの著作には、このような描写もある。
ある晩談話室でブロッホが、第一番もやってみてくれないかと言いだした。(略)曲が終わると、彼は立ち上がって、がっくりした様子でこう言った。
『なんで、こういう音楽が書けなくなってしまったんだろう。』
それは悲痛な叫びだった。

10月6日(水): 

 

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮) アムステルダム・コンセルトヘボウ管 ほか
ボロディン;だったん人の踊り ほか(Philips)
マルケヴィッチが指揮したポピュラー名曲を集成したCDが某オークションに出品されていた。
Philipsレーベルでの様々な録音からの寄せ集めだが、中にCDでは未架蔵の標記ボロディン作品が含まれていたので落札したもの。
この曲については、以前、読者の方からCD化されている旨を御教示いただいたが、それとはまた別な番号。おそらく何度も使い回されたのであろう。
その他、リムスキー・コルサコフ;スペイン奇想曲チャイコフスキー;序曲「1812年」ラヴェル;ボレロシャブリエ;スペイン狂詩曲が収録されている。
ダニイール・シャフラン(Vc) リディア・ペチェルスカヤ(P)
シューベルト;アルペジオーネ・ソナタ & ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ(日RVC、LP)
シャフランのディスコグラフィによれば、ショスタコーヴィッチのソナタには4種の正規録音がある。
そのうち3度目、1960年の初訪米時に米RCAのスタジオで録音した音源が某オークションに出品されていたので落札してみた。
国内廉価盤ではあるが、米オリジナル盤は見たことがないように思うし、eBayあたりに出ても高騰しそうな気がするので。
録音の直前に行われたカーネギー・ホールのリサイタルは大成功、「カザルス、フォイアマン以来の名チェリスト」と呼ばれた、とライナーノートにあるが、その割にはこの音盤は不遇だ。
"LIVING STEREO" シリーズで丁寧にCD化してもらいたいと思う。

10月5日(火): 

 

オーギュスタン・デュメイ(Vn) ジャン・フィリップ・コラール(P) ミュイールQ
ショーソン;Vn、Pと弦楽四重奏のための協奏曲 ほか(EMI)
このショーソンの佳曲はかねて蒐集の作品、国内盤CDは疾うに架蔵しているのだが、eBayに仏盤CDが出品されているのを見て、ついつい落札。
ジャケット・デザインは全く異なるとはいえ、聴き比べても音質に大差はなく(仏盤の方が高域の輝き・抜けに優る気がするが、ブラインドではおそらく区別が付かないだろう(^^; )、こういうことをそうそうしていては不可ないと、自戒をこめて記す。
絶筆となった未完の弦楽四重奏曲(第3楽章のコーダをダンディが補筆したとのこと)をカプリング、1985年10〜11月にパリのサル・ワグラムで録音された。

10月4日(月): 

 

シャーンドル・ヴェーグ(指揮) カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク
メンデルスゾーン;弦楽交響曲第9番 & ドヴォルザーク;弦楽セレナード ほか(Orfeo)
このところ本業が忙しく、しばらく音盤店に立ち寄れなかった。
久しぶりに店の開いている時間に退勤できたので覗いてみると、敬愛する指揮者の一人、ヴェーグの遺産が発売されていた。
曲目も標記のようにこれまで出ていなかったレパートリーなので嬉しい限り。
1986年8月の2回の演奏会から集成されたもので、指揮者は1912年生れだから74歳頃の記録ということになる。
ドヴォルザークの終楽章を聴いてみたが、好々爺然たる音楽とは全く異なり、精気溌剌、生命を掘り起こせずんば音楽にあらずと言わんばかりの勢いが凄まじい。
ヴェーグの演奏記録は、もっともっとCD化してもらいたいものである。
モーツァルト;セレナータ・ノットゥルナヴォルフ;イタリア風セレナードをカプリング。
なお、11月にクラシカジャパンウィーン・フィルを指揮した映像が放送される。これも非常に楽しみ。
レイフ・オーヴェ・アンスネス(P & 指揮) ノルウェー室内管
モーツァルト;P協第9・18番(EMI)
注目するピアニストの一人、アンスネスの新録音。モーツァルトの協奏曲とあらば買わざるべからず。
この記事を書きながら聴いているが、彼の弾き振りによる敏感な管弦楽も聴きものではなかろうか。
2003年8月、オスロでの録音。
イザベル・ファウスト(Vn) イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮) プラハ・フィル ほか
ドヴォルザーク;Vn協・P三重奏曲第3番(HMF)
バルトーク;無伴奏Vnソナタに腰を抜かして以来、その音盤はすべて聴かざるべからずと考えているファウストの新譜が出たので購入。
ドヴォルザークの協奏曲はグラズノフと裏表になっているのがLP時代の定番だったが、CDにそれでは短すぎるのだろう、カプリング曲が一定しない。そのためか、かえって録音が減ってしまったような気がする。
ここでは思い切って編成をピアノ・トリオに変えている。
その共演者がジャン・ギアン・ケラス(Vc)とアレクサンドル・メルニコフ(P)。
ピアニストとは今年1月に来日していたから頷ける組み合わせだが、その時のチェリストがアレクサンドル・ルーディン
ケラスの録音は、それはそれで嬉しいが、ここはルーディン氏でも良かったろうに、とやはり少々恨めしい。
2003年9月、プラハのルドルフィヌムでの録音。
彼女にはそろそろドイツ正統系の曲目を録音してほしいところだ。
ヤーノシュ・シュタルケル(Vc) ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ(指揮) インディアナ大学フィル ほか
ブラームス;二重協 ほか(EJMCC)
eBayで落札した2枚組CD、おそらく自主製作盤であろう。
シュタルケルの生誕75年を記念して、彼が教鞭を執ってきたインディアナ大学音楽芸術センターで開かれたコンサートのライヴ録音(1999年9月14日)。
指揮がロストロポーヴィッチ、チェロの両巨頭の顔合わせというのが驚き。更に堤剛マリア・クリーゲルらの高弟が錦上華を添えている。
シュタルケルはウィリアム・プレウシル(Vn、クリーヴランド四重奏団)と標記ブラームスを、堤はドヴォルザーク;「森の静けさ」・ロンド、クリーゲルはポッパー;ハンガリー狂詩曲を演奏している。
最後は門下生無慮170人超によるチェロ・アンサンブルでポッパー;組曲ハッピー・バースデー
なお、音質はあまり芳しくない。
いかにも会場の吊りマイク1本で録りましたという感じの、音場が狭く、埃っぽい音色である。
久保田巧(Vn)
バッハ;無伴奏Vnパルティータ集(EXTON)
昨年発売されたソナタ集が非常に素晴らしく、鶴首待望していたパルティータ集が発売されたので購入。
繰り返しを楽譜どおりに励行したため第1・2番だけでCD1枚70分を要し、第3番は2枚目へ。
更に無伴奏Flパルティータ BWV1013をヴァイオリンで演奏しているが、この優れた演奏家のバッハをもう1曲聴けることは大きな喜びである。
前作から2年後の2004年3月、同じ山形・余目町文化創造館・響ホールでの録音。
アンドルー・マンゼ(Vn) リチャード・エガー(Org・Cem) ほか
ビーバー;ロザリオのソナタ(HMF)
この曲集の掉尾を飾る無伴奏のパッサカリアは大好きな作品。古楽系Vn奏者の中で最も高く評価する一人、マンゼが録音を果たしたとあっては買わざるべからず。
彼の使用楽器は1700年頃のイタリアで製作されたもので、アマティのラベルがあるとのこと。
エガーはパッサカリアを除く15曲のソナタのうち9曲でオルガンを演奏している。
2003年1月、ロンドンでの録音。
なお、2枚目の最後に、この作品で用いられているスコルダトゥーラ(変則調弦)についてマンゼが解説したトラック(4分弱)を収録している。

10月2日(土): 

 

アレクサンドル・ルーディン(Vc) ボリス・ベレゾフスキー(P) ほか
ミヤスコフスキー;Vcソナタ第1番 ほか(自主製作)
 
アレクサンドル・ルーディン(Vc) キャスリン・ストット(P) ほか
シベリウス;マリンコニア ほか(自主製作)
今年1月に実演に接して以来、注目のチェリストの一人になっているルーディン。
メジャーレーベルには疎遠な風だが、実力派ゆえ、あちこちで活躍しておられる様子である。
その一つ、国際デルフト室内楽音楽祭でのライヴ録音が、知人の御厚意で入手できた。
ミヤスコフスキーほかの1枚は、1999年8月の第3回音楽祭から。
ルーディンは、ラフマニノフ;P三重奏曲第1番にも参加しており、そちらではイザベル・ファン・クーレン(Vn)、アレクサンダー・ロンクィッヒ(P)と共演している。
 
シベリウスが入っているのは2001年7〜8月の第5回音楽祭のライヴで、ショスタコーヴィッチ;P五重奏曲にも参加しているが、残念ながら全曲ではなく第4・5楽章だけが収録されている。
また、アンヌ・ガスティネルの名も見られ、カサド;無伴奏Vc組曲 より第3楽章等を演奏している。

10月1日(金): 

 

ヴァーノン・ハンドリー(指揮) ハレ管
ディーリアス;管弦楽曲集(EMI)
以前は等閑視していたが、このところエルガーやディーリアスの録音を注目しているハンドリー。
未架蔵のディーリアス作品集をeBayで見つけたので落札したもの。
収録曲は、「ブリッグの定期市」「夏の庭で」「おとぎ話」(原題 "Eventyr" )「夏の歌」
1981年9月、マンチェスターでのデジタル録音。
ゾルタン・コチシュ(P)
ドビュッシー;組曲「ベルガマスク」・「版画」 ほか(Philips)
最近、指揮者として注目しているコチシュだが、ピアノの響きが美しい人なので、ドビュッシー録音は是非聴いてみたいと気に懸けていた。
幸い某オークションに安価で出品されたので、落札したもの。
標記2曲のほか「映像」(1894年作曲の所謂「忘れられた『映像』」)と「ピアノのために」をフィルアップしている。
1983年9月、ロンドンでの録音。
立花隆『思索紀行』(書籍情報社)を読む。
大学生時代の著者が反核映画を担いでヨーロッパを放浪したときから、中東遍歴、あるいはアメリカ訪問まで、
旅行を契機として、いろいろ考えごとをした記録
を集成したもの。約500頁の大冊である。
斉諧生的に注目するのは「神のための音楽」と題された、1982年8月、ギリシャ正教の聖地アトス山を訪問した旅にまつわる一章。
初出は1984年2〜3月の『FMファン』(共同通信社、1984年2〜3月)だから、もう20年ほども前のことだが、これを読んだことから東方教会の音楽に関心を持ち、あれこれと音盤を買って聴くことになったのである。
雑誌の切り抜きはまだ保存しているが、ちゃんとした単行本で架蔵できるのは嬉しい。
音楽好き、オーディオ・マニアとして知られる立花なので、他の章でも音楽に関する話題が散見されるようだ。読み進めるのが楽しみである。
 
かつて『文學界』に連載された武満徹へのインタビューも、早く単行本にまとめてもらいたいものだ。

平成16年8月15日(日): 「提琴列伝」に和波孝禧を掲載。
平成16年1月4日(日): 「作曲世家」にルクー・ディスコグラフィを追加。
平成15年8月24日(日): 倭匠列伝指揮者・宇野功芳を掲載。
平成15年8月24日(日): 50万件アクセスを記念して、ページデザインを全面改訂。
平成15年5月24日(日): 「逸匠列伝」にユッシ・ヤラスを掲載。
平成14年10月14日(祝): 「名匠列伝」にハンス・シュミット・イッセルシュテットを掲載。
平成14年5月25日(土):黄金週間中のウィーン旅行の顛末を「維納旅行記」として公開。
平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。
平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。
平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。
平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。
平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。
平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。
平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。
平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。
平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。
平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。
平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。
平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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